特許第5841152号(P5841152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5841152アクチュエータ及びそれを用いたクランプ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5841152
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】アクチュエータ及びそれを用いたクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/16 20060101AFI20151217BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20151217BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   F15B15/16
   F15B15/14 345Z
   B23Q3/06 302B
   B23Q3/06 302H
   B23Q3/06 302L
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527840(P2013-527840)
(86)(22)【出願日】2012年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2012002076
(87)【国際公開番号】WO2013021520
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-173116(P2011-173116)
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】横田 英明
(72)【発明者】
【氏名】米澤 慶多朗
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−170133(JP,A)
【文献】 特開昭49−129072(JP,A)
【文献】 特開2004−223662(JP,A)
【文献】 米国特許第4784044(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第3018920(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14;15/26
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(18)に軸(CL)方向へ移動可能に挿入された高負荷用の第1ピストン(20)と、
その第1ピストン(20)に前記軸(CL)方向へ貫通された筒孔(40)に移動可能に挿入され、前記ハウジング(18)の外方に突出する出力部(22b)を先端部に有する低負荷用の第2ピストン(22)と、
前記第1ピストン(20)及び第2ピストン(22)で前記ハウジング(18)内を区画して形成された圧力流体室(46)及びバネ室(44)と、
前記第1ピストン(20)を前記圧力流体室(46)側へ付勢するように前記バネ室(44)に装着され、前記バネ室(44)の壁面に受け止められた高負荷用の第1バネ(24)と、
前記第2ピストン(22)を前記圧力流体室(46)側へ付勢するように前記バネ室(44)に装着され、前記壁面に受け止められた低負荷用の第2バネ(26)と、
前記第1ピストン(20)を前記ハウジング(18)と前記第2ピストン(22)とに選択的に連結するように前記圧力流体室(46)に配置された切替機構(27)と、を備え、
前記切替機構(27)は、前記圧力流体室(46)の圧力流体(L)が排出されたアクチュエータ作動時に、前記第1ピストン(20)が前記ハウジング(18)に連結された状態下で前記第2バネ(26)が前記第2ピストン(22)を前記圧力流体室(46)側へ所定ストロークだけ進出させたときに、前記第1ピストン(20)を前記第2ピストン(22)に連結すると共に前記第1ピストン(20)と前記ハウジング(18)との連結を解除させるように構成した、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1のアクチュエータにおいて、
前記切替機構(27)は、
前記第2ピストン(22)の外周に沿って周方向へ所定の間隔をあけて配置した複数の係合具(50)と、
前記第2ピストン(22)の外周面に前記圧力流体室(46)側から前記バネ室(44)側に向けて順に設けた外周ストレート面(22c)及び係合溝(66)と、
前記係合具(50)を前記圧力流体室(46)側へ押すように前記第1ピストン(20)に設けた第1押部(48)と、
前記外周ストレート面(22c)に接触した状態の前記係合具(50)を収容するように前記圧力流体室(46)の周壁に設けられた第2押部(68)であって、前記第2ピストン(22)が前記圧力流体室(46)側へ進出したときに前記係合溝(66)に前記係合具(50)を係合させる第2押部(68)と、
前記係合溝(66)に係合された状態の前記係合具(50)に接触するように前記圧力流体室(46)の周壁に設けられた内周ストレート面(33)と、を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2のアクチュエータにおいて、
前記係合具(50)を係合ボールによって構成し、
前記第1押部(48)は、前記係合ボール(50)に前記バネ室(44)側から接触する第1接触面(70)を備え、
前記第2押部(68)は、前記係合ボール(50)に前記圧力流体室(46)側から接触する第2接触面(72)を備えており、
前記第1接触面(70)と前記第2接触面(72)との交差角度(θ)は、前記第2ピストン(22)に向けて開かれており、かつ、10度から25度の範囲内に設定した、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータを用いたクランプ装置であって、
前記出力部(22b)を前記圧力流体室(46)方向へ突出させ、
前記出力部(22b)の先端部に、クランプアーム(14)の長手方向の基部を前記軸(CL)を含む平面内で揺動可能に支持し、
前記クランプアーム(14)の長手方向の途中部にリンク部材(16)の一端部(16a)を回転可能に支持すると共に、そのリンク部材(16)の他端部(16b)を前記ハウジング(18)に回転可能に支持した、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータを用いたクランプ装置であって、
前記出力部(22b)を前記バネ室(44)方向へ突出させ、
前記出力部(22b)の先端部にクランプアーム(14)を固定した、ことを特徴とするクランプ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バネ駆動式で圧力流体復帰形のアクチュエータに関し、さらには、そのアクチュエータを用いたクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアクチュエータには、従来では、特許文献1(日本国・特開平11−170133号公報)に記載されたものがある。その特許文献1の図1から図4に記載された従来技術は、次のように構成されている。
【0003】
ハウジングに挿入された高負荷用の第1ピストンの筒孔に低負荷用の第2ピストンが挿入され、その第2ピストンから出力部がハウジングの上方へ突出される。上記第1ピストン及び第2ピストンと上記ハウジングの上端壁との間に圧力流体室が形成される。また、上記ハウジングの下端壁と第1ピストンとの間に高負荷用の第1バネが装着されると共に、上記第1ピストンの下部と第2ピストンとの間に低負荷用の第2バネが装着される。さらに、上記ハウジングの下部内にボール式の切替機構が配置される。その切替機構は、上記第1ピストンをハウジングの下端壁と第2ピストンとに選択的に連結するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−170133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、圧力流体室へ供給した圧油が第1ピストン及び第2ピストンを下方へ後退させたときに、切替機構の係合ボールが第1ピストンをハウジングに連結させてこの第1ピストンが上方へ移動するのを阻止し、これに対して、上記圧油が排出されて第2バネが第2ピストンを上方へ所定ストロークだけ進出させたときに、上記係合ボールが第1ピストンを第2ピストンに連結させ、これにより、上記第1バネの付勢力が上記第1ピストンと係合ボールとを介して上記第2ピストンに作用する。
【0006】
しかしながら、前述したように、上記の第2バネは、第1ピストンと第2ピストンとの間に装着されているので、これら第1ピストン及び第2ピストンが係合ボールによって連結されて一体化した後では、その第2バネから第2ピストンに作用する付勢力が第1ピストンによって受け止められてしまい、第1バネの付勢力だけが第2ピストンを上方へ進出させることになる。このため、第2ピストンの進出力を大きくするうえでは改善の余地が残されていた。
本発明の目的は、第2ピストンの進出力を従来技術より大きくできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図4、又は図5に示すように、アクチュエータ10を次のように構成した。
即ち、ハウジング18に高負荷用の第1ピストン20を軸CL方向へ移動可能に挿入する。第1ピストン20に筒孔40を前記の軸CL方向へ貫通させ、その筒孔40に第2ピストン22を移動可能に挿入し、その第2ピストン22の先端部を、ハウジング18の外方に突出する出力部22bとする。第1ピストン20及び第2ピストン22でハウジング18内を区画して圧力流体室46及びバネ室44を形成する。第1ピストン20を圧力流体室46側へ付勢する高負荷用の第1バネ24をバネ室44の壁面に受け止められるように装着する。第2ピストン22を圧力流体室46側へ付勢する低負荷用の第2バネ26をバネ室44の壁面に受け止められるように装着する。第1ピストン20をハウジング18と第2ピストン22とに選択的に連結する切替機構27を、圧力流体室46に配置する。その切替機構27は、圧力流体室46の圧力流体Lが排出されたアクチュエータ作動時に、第1ピストン20がハウジング18に連結された状態下で第2バネ26が第2ピストン22を圧力流体室46側へ所定ストロークだけ進出させたときに、第1ピストン20を第2ピストン22に連結すると共に第1ピストン20とハウジング18との連結を解除させるようにする。
【0008】
本発明は、次の作用効果を奏する。
本発明では、上記第2バネは、ハウジングの内壁と第2ピストンとの間に装着されている。このため、上記第1ピストンと第2ピストンとが切替機構によって連結されて一体化した後でも、その第2バネの付勢力が第2ピストンを圧力流体室側へ進出させることになる。その結果、上記第1バネの付勢力に加えて第2バネの付勢力によっても第2ピストンを進出させることが可能となり、第2ピストンの進出力を大きくできた。
【0009】
ところで、前述した従来技術(特許文献1)では、係合ボール式の切替機構は、圧力流体室(油圧室)の外でハウジングの下部に配置されていることから、グリース等の潤滑剤を定期的に注入することが要求される。このため、切替機構のメンテナンスに手間がかかるという問題がある。
【0010】
これに対して、本発明では、切替機構27が圧力流体室46に配置される。このため、圧力流体として圧油(又は潤滑油入り圧縮空気)を使用した場合には、その圧油(又は潤滑油入り圧縮空気)によって切替機構27を十分に潤滑できる。その結果、切替機構27は、長期間にわたって円滑に使用でき、メンテナンスにも手間がかからない。
【0011】
本発明においては、前記の切替機構27を次のように構成することが好ましい。
即ち、第2ピストン22の外周に沿って複数の係合具50を周方向へ所定の間隔をあけて配置する。第2ピストン22の外周面に外周ストレート面22c及び係合溝66を圧力流体室46側からバネ室44側に向けて順に形成する。係合具50を圧力流体室46側へ押すように第1押部48を第1ピストン20に設ける。第2ピストン22が圧力流体室46側へ進出したときに係合溝66に係合具50を係合させる第2押部68を、外周ストレート面22cに接触した状態の係合具50を収容するように圧力流体室46の周壁に設ける。係合溝66に係合された状態の係合具50に接触するように、内周ストレート面33を圧力流体室46の周壁に設ける。
この場合、切替機構を簡素に構成できるという作用効果を奏する。
【0012】
また、本発明においては、次の構成を加えることが好ましい。
即ち、前記の係合具を係合ボール50によって構成し、係合ボール50にバネ室44側から接触する第1接触面70を第1押部48に形成する。係合ボール50に圧力流体室46側から接触する第2接触面72を第2押部68に形成する。第1接触面70と第2接触面72との交差角度θを、第2ピストン22に向けて開き、かつ、10度から25度の範囲内に設定する。
この場合、係合ボールを第2ピストン22の方向に移動させる力を、所定の小さな範囲内に設定できる。その結果、係合ボールを係合溝に嵌合させるときに必要な操作力を確保することと、その係合ボールから第2ピストンの外周ストレート面に作用する力を小さくして第2ピストンを円滑に進出させることとを両立できる。
【0013】
上記アクチュエータ10を用いたクランプ装置12は、例えば図4に示すように、次のように構成される。
即ち、前記の出力部22bを前記の圧力流体室46の方向へ突出させる。前記の出力部22bの先端部に、クランプアーム14の長手方向の基部を、前記の軸CL(図1を参照)を含む平面内で揺動可能に支持する。そのクランプアーム14の長手方向の途中部にリンク部材16の一端部16aを回転可能に支持すると共に、前記リンク部材16の他端部16bをハウジング18に回転可能に支持することが考えられる。
【0014】
さらに、上記アクチュエータ10を用いた他のクランプ装置12は、例えば図5Aから図5Dに示すように、次のように構成される。
即ち、前記の出力部22bを前記のバネ室44方向へ突出させ、その出力部22bの先端部にクランプアーム14を固定するというようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示し、アクチュエータの立面視の断面図である。
図2図2Aから図2Dは、上記アクチュエータの作動説明図である。
図3図3Aから図3Dは、それぞれ、上記図2Aから図2Dの主要部の拡大図であって、上記アクチュエータに設けた切替機構の作動説明図である。
図4図4は、上記アクチュエータを利用したクランプ装置を示し、そのクランプ装置のクランプ状態における立面視の断面図である。
図5図5Aから図5Dは、本発明の第2実施形態を示し、前記の図2Aから図2Dに類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図4は、本発明の第1実施形態を示している。まず、図1によって、本発明のアクチュエータの構造を説明する。
アクチュエータ10はハウジング18を有し、そのハウジング18が複数のボルトによってワークパレット等の固定側部材に固定されている(いずれも図示せず)。上記ハウジング18内にシリンダ孔28が上下方向(軸CLの方向)に形成されている。そのシリンダ孔28は、下から順に形成された大径の第1孔34と中径の第2孔32と小径の第3孔30とで構成されている。
【0017】
上記の第1孔34に、高負荷用の第1ピストン20のピストン本体20aが、パッキン42を介して上下方向へ移動可能に挿入され、そのピストン本体20aからロッド部材54が下向きに一体に突出されている。上記の第1ピストン20に筒孔40が上下方向へ貫通されている。また、前記ハウジング18の下壁18aの中央部から環状ストッパー38が上向きに突出され、その環状ストッパー38が上記ロッド部材54に下側から対面される。
【0018】
上記の第1ピストン20における上記の筒孔40に、低負荷用の第2ピストン22の大径部22aが、パッキン56を介して上下方向へ移動可能に挿入される。その大径部22aから小径部22eが上向きに一体に突出され、その小径部22eと前記の第3孔30との間にパッキン62が装着されている。上記の小径部22eの上端部(先端部)に出力部22bが設けられ、その出力部22bがハウジング18の上壁18bよりも上方へ突出されている。
【0019】
前記シリンダ孔28の内部空間は、上記の第1ピストン20及び第2ピストン22によって上下の二室に区画されている。上側の室は圧力流体室46として形成され、下側の室はバネ室44として形成される。
上記の圧力流体室46は、前記の第1孔34の上部と前記の第2孔32とで構成されている。その第2孔32の上部に開口された給排口37には、圧力流体としての圧油Lが供給及び排出可能になっている。
上記バネ室44は、第1ピストン20のピストン本体20aの下側に環状に形成された第1バネ室44aと、環状ストッパー38の筒孔36と第1ピストン20の筒孔40とにわたって形成された第2バネ室44bとを備える。
【0020】
第1バネ室44aに、圧縮コイルバネからなる高負荷用の第1バネ24が装着される。第1バネ24の下端24aがハウジング18の下壁18aに受け止められ、その第1バネ24の上端24bがピストン本体20aに受け止められる。また、第2バネ室44bに、圧縮コイルバネからなる低負荷用の第2バネ26が装着される。この第2バネ26の下端26aがハウジング18の下壁18aに受け止められ、その第2バネ26の上端26bが第2ピストン22の下部22dに受け止められる。
上記構成により、第1バネ24及び第2バネ26の各下端24a,26aは、バネ室44の壁面としての前記の下壁18aに受け止められると共に、各上端24b,26bがそれぞれ第1ピストン20及び第2ピストン22を上方へ付勢している。上記第1バネ24の付勢力は、第2バネ26の付勢力よりも大きな値に設定されている。なお、上記の第1バネ室44aの下部には呼吸孔64が連通されている。
【0021】
上記の第1ピストン20は、圧力流体室46に配置された切替機構27により、ハウジング18と第2ピストン22とに選択的に連結される。その切替機構27は、上記図1(及び図3Aから図3D)に示すように、次のように構成されている。
【0022】
第2ピストン22における前記の大径部22aの外周に沿って複数の鋼製の係合ボール50が周方向へ所定の間隔をあけて配置される。上記の大径部22aの外周面に、外周ストレート面22c及び係合溝66が上から順に設けられている。上記の外周ストレート面22cの上部から鍔部58が半径方向の外方へ突出される。その鍔部58において、参照数字58aは上端面を示し、参照数字58bは円弧状の外周面を示している。
【0023】
また、第1ピストン20の上部から環状の第1押部48が上方へ突出され、その第1押部48が上記の係合ボール50を上方へ押すように構成される。より詳しくいえば、上記の第1押部48の上部に、半径方向へ延びるU字状の溝49が周方向へ所定の間隔をあけて形成され、その溝49の底面によって第1接触面70が形成される。その第1接触面70は、下側(バネ室44側)から係合ボール50に接触される。なお、この実施形態では、上記の第1接触面70における外側部が水平に形成されるのに対して、その第1接触面70の内側部には、下向きの傾斜面70aが設けられている(図3Dを参照)。
【0024】
さらに、圧力流体室46の周壁としての前記第2孔32の周壁には、第2押部68と内周ストレート面33とが上方へ順に設けられる。
第2押部68は、上方へ向かうにつれて第2ピストン22に近づくように傾斜された第2接触面72と、ほぼ垂直に形成された保持面73とを備える。上記の第2接触面72は、上方(圧力流体室46側)から係合ボール50に接触される。また、上記の保持面73は、係合ボール50が半径方向の外方へ脱落するのを阻止するようになっている。
【0025】
上記の第2押部68は、第2ピストン22が下降したときには(図3Aを参照)、前記外周ストレート面22cに接触した状態の係合ボール50を収容する。また、その第2押部68は、第2ピストン22が上昇されたときに(図3B図3Cを参照)、上記の係合ボール50を半径方向の内方へ(即ち、第2ピストン22の方へ)押して係合溝66に係合させるように構成される。その係合溝66の上壁には、下方へ狭まるテーパ面66aが形成されている。なお、この実施形態では、前記の第1接触面70における前記の傾斜面70aは、上記テーパ面66aとほぼ同じ方向へ傾斜するように形成されているが、その構造に限定されるものではない。
前記の内周ストレート面33は、上記の係合溝66に係合された状態の係合ボール50に接触するように構成される(図3Dを参照)。
【0026】
上記構成のアクチュエータ10は、図2Aから図2D(及び図3Aから図3D)に示すように、次のように作動する。なお、図3Aから図3Dは、それぞれ、上記図2Aから図2Dの主要部の拡大図である。
【0027】
図2A(及び図3A)の非作動状態では、アクチュエータ10の圧力流体室46に圧油Lが供給されている。その圧油Lの圧力により、第2ピストン22が第2バネ26に抗して下降されると共に、第1ピストン20が第1バネ24に抗して下降され、その第1ピストン20のロッド部材54が環状ストッパー38に受け止められている。この状態で上記アクチュエータ10の上方に被押圧部材Mが搬入される。
上記の非作動状態では、図3Aに示すように、係合ボール50は、第1接触面70と第2接触面72と鍔部58の外周面58bとによって保持可能とされている。これにより、第1ピストン20が係合ボール50を介してハウジング18に連結可能とされ、その第1ピストン20が上方(圧力流体室46側)へ移動することが阻止可能とされている。
【0028】
上記図2Aの非作動状態から図2Dの作動状態へ切り替えるときには、その図2Aの状態で、圧力流体室46の圧油Lを外部へ排出する。すると、係合ボール50によって上昇が阻止された第1ピストン20に対して、第2バネ26の付勢力が第2ピストン22を低負荷で上昇させていく。
より詳しくいえば、第1バネ24の付勢力は、第1ピストン20の第1接触面70から係合ボール50を介して第2接触面72に作用する。このため、その第2接触面72から係合ボール50に反力が作用し、その反力の半径方向の分力が係合ボール50を第2ピストン22の外周ストレート面22cに押圧するので、その押圧力が第2ピストン22の摺動抵抗となる。さらには、第2ピストン22には前記パッキン56,62からも摺動抵抗が作用する。従って、上記の第2バネ26は、上記の比較的に小さな摺動抵抗に抗して第2ピストン22を低負荷で上昇させていくのである。
そして、図2B(及び図3B)に示す低負荷上昇の終期には、係合ボール50が係合溝66に係合し始める直前の状態となる。
【0029】
次いで、図2C(及び図3C)の高負荷上昇の初期に示すように、上記の第2ピストン22が所定ストロークだけ上昇したときに、第2接触面72から係合ボール50へ作用する前記の反力が係合ボール50を係合溝66の前記テーパ面66aに当接させ始める。これにより、第1ピストン20が第2ピストン22に連結されると共に第1ピストン20とハウジング18との連結が解除され(図3Dを参照)、第1バネ24の付勢力が第1ピストン20及び係合ボール50を介して第2ピストン22を強力に上昇させ始める。この場合、第2バネ26の付勢力も第2ピストン22に作用し続けているので、その第2ピストン22がさらに強力に上昇される。
【0030】
引き続いて、図2D(及び図3D)の作動状態に示すように、第1ピストン20及び第2ピストン22が僅かに上昇して前記の出力部22bが被押圧部材Mに当接し、上記第1バネ24の付勢力と第2バネ26の付勢力との合力が被押圧部材Mを強力に押圧する。
なお、上記の図2Dの状態では、第1ピストン20の上側には余裕ストロークαが残されている。
【0031】
上記図2D(及び図3D)の作動状態から図2A(及び図3A)の非作動状態へ切り替えるときには、その図2Dの状態で、圧力流体室46に圧油Lを供給する。すると、その圧油Lの圧力が、第1バネ24及び第2バネ26に抗して第1ピストン20及び第2ピストン22を下降させていく。
これにより、図2C(及び図3C)に示すように、係合溝66の前記テーパ面66aが係合ボール50を半径方向の外方へ押圧し始める。引き続いて、図2B(及び図3B)に示すように、第1ピストン20の下降が環状ストッパー38によって阻止され、これとほぼ同時に、上記テーパ面66aの上部が係合ボール50を第2押部68内へ円滑に押し出す。このため、第1ピストン20とハウジング18の第2押部68とが互いに連結されると共に、その第1ピストン20と第2ピストン22との連結状態が解除される。その後、図2A(及び図3A)に示すように、下降が阻止された第1ピストン20に対して第2ピストン22がさらに下降される。このとき、第2ピストン22の鍔部58が係合ボール50に上側から当接し、これにより第2ピストン22の下降が阻止される。
【0032】
上記構成のアクチュエータ10では、切替機構27の構成部材としての係合ボール50等が圧力流体室46内に配置されるので、その圧力流体室46に供給した圧油Lによって係合ボール50等を十分に潤滑できる。このため、その切替機構27を長期間にわたって円滑に使用でき、メンテナンスにも手間がかからない。
【0033】
なお、図3Aに示すように、前記の第1接触面70と第2接触面72との交差角度θは、シリンダ孔28の半径方向の内方に向けて(即ち、第2ピストン22に向けて)開かれており、10度から25度の範囲内に設定されることが好ましい。その理由は次のとおりである。
仮に、上記の交差角度θが10度よりも小さい場合には、第2接触面72から係合ボール50に作用する前記の反力の半径方向の分力が過度に小さくなるので、その第2接触面72が上記係合ボール50を係合溝66へ押し込む力が過度に小さくなり、係合ボール50が係合溝66に円滑に係合しなくなるおそれがある。また、上記の交差角度θが25度よりも大きい場合には、上記の半径方向の分力が過度に大きくなるので、その第2接触面72が上記の係合ボール50を第2ピストン22の外周ストレート面22cへ押圧する力が過度に大きくなり、その第2ピストン22が円滑に昇降しなくなるおそれがある。従って、上記の交差角度θは10度から25度の範囲内が好ましいのである。
【0034】
図4は、上記アクチュエータ10を利用したリンク式クランプ装置12を示している。このクランプ装置12は、以下に示すように構成されている。
アクチュエータ10の前記ハウジング18がワークパレットWPに固定される。前記第2ピストン22の上部に設けた前記の出力部22bは、上記ハウジング18の上方(圧力流体室46方向)へ突出されている。
上記出力部22bの上端部(先端部)に、連結ピン74を介して、クランプアーム14の長手方向の左部(基部)14aが、前記の軸CL(図1を参照)を含む平面内で上下方向に揺動可能に支持される。上記クランプアーム14の長手方向の途中部に、上ピン76を介してリンク部材16の上端部(一端部)16aが回転可能に支持されると共に、上記リンク部材16の下端部(他端部)16bが下ピン78を介して前記ハウジング18の上部に回転可能に支持される。
【0035】
上記図4の作動状態(クランプ状態)では、圧力流体室46の圧油Lが排出され、第1バネ24の付勢力と第2バネ26の付勢力との合力が第2ピストン22を上昇させている。これにより、上記クランプアーム14が時計回りの方向へ強力に揺動され、そのクランプアーム14の右部に設けた押ボルト14bがワークWをワークパレットWPの上面に対して強力に押圧する。
【0036】
図5Aから図5Dは、本発明の第2実施形態を示し、それぞれ、前記図2Aから図2Dに類似する図である。この第2実施形態は、アクチュエータ10を利用した旋回式クランプ装置12を示しており、前記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(又は類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。
【0037】
図5Aに示すように、第2ピストン22の大径部22aから出力部22bがバネ室44の方向へ突出されている。より詳しくいえば、この第2実施形態は、前記の第1実施形態と比べると、第1ピストン20と第2ピストン22とバネ室44と圧力流体室46と切替機構27が上下逆に配置されると共に、上記第2ピストン22の大径部22aから小径部22eが上方へ突出され、その小径部22eの上端部(先端部)に出力部22bが設けられる。その出力部22bにクランプアーム14の左端部(図5Bを参照)が固定されている。
【0038】
また、上記図5Aに示すように、上記の大径部22aからロッド22fが下方へ一体に突出され、そのロッド22fがハウジング18の下壁18aに嵌合される。また、上記ロッド22fにガイド溝84が形成される。そのガイド溝84は、上向きに連ねて設けた螺旋溝84aと直進溝84bとを備える。さらに、上記ガイド溝84に嵌合するガイドボール82が上記の下壁18aに支持されている。上記ガイドボール82と螺旋溝84aとによって旋回機構が構成されている。
【0039】
上記の旋回式クランプ装置12は次のように作動する。
図5Aの非作動状態(アンクランプ状態)では、圧力流体室46に供給した圧油Lにより、第2ピストン22及び第1ピストン20が上昇されている。その第1ピストン20は、係合ボール50を介してハウジング18に受け止め可能とされ、下方移動が阻止可能とされている。
【0040】
上記図5Aの非作動状態(アンクランプ状態)から図5Dの作動状態(クランプ状態)へ切り替えるときには、その図5Aの状態で、圧力流体室46の圧油Lを排出する。すると、係合ボール50によって下降が阻止された第1ピストン20に対して第2バネ26が第2ピストン22を下降させていく。
これにより、上記の第2ピストン22に形成された前記ロッド22fがガイドボール82に対して下降し、そのガイドボール82が、前記の螺旋溝84aを介して、第2ピストン22(及びクランプアーム14)を平面視で時計回りの方向へ旋回させながら下降させる(図5A図5Bを参照)。
【0041】
次いで、図5Cに示すように、上記の第2ピストン22が所定ストロークだけ下降したときに、前記の係合ボール50により、第1ピストン20が第2ピストン22に連結されると共に第1ピストン20とハウジング18との連結が解除され、前記の第1バネ24による付勢力が第1ピストン20及び係合ボール50を介して第2ピストン22を前記の直進溝84bに沿って強力に下降させ始める。この場合、前記の第2バネ26による付勢力も第2ピストン22に作用するので、その第2ピストン22がさらに強力に下降される。
【0042】
引き続いて、図5Dの作動状態(クランプ状態)に示すように、第1ピストン20及び第2ピストン22が僅かに下降して前記クランプアーム14の右部がワーク(図示せず)の上面に当接し、第1バネ24の付勢力と第2バネ26の付勢力との合力が上記ワークを強力に押圧する。
なお、図5Dの作動状態(クランプ状態)から図5Aの非作動状態(アンクランプ状態)への切り替えは、上記とはほぼ逆の手順で行われる。
【0043】
上記の第2実施形態においては、前記の旋回機構(ガイド溝84の螺旋溝84aとガイドボール82)を省略して、クランプアーム14を上下方向だけに移動させるようにしてもよい。この場合、直進溝84bも省略可能である。
【0044】
上記の各実施形態は、次のように変更可能である。
係合具50は、例示したボールに代えて、球面コロ等であってもよい。
圧力流体Lは、例示した圧油に代えて、他の液体であってもよく、圧縮空気等の気体であってもよい。
アクチュエータ10(及びクランプ装置12)の設置姿勢は、例示した姿勢とは上下逆の姿勢であってもよく、また、水平方向に設置したり斜め方向に設置してもよい。
前記の図1中の呼吸孔64を圧力流体Lの給排口に変更してもよい。この場合、第1ピストン20及び第2ピストン22の上昇時に、バネ室44に圧力流体Lを供給することにより、上記の2つのピストン20,22をさらに強力に駆動できる。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
10:アクチュエータ,12:クランプ装置,14:クランプアーム,16:リンク部材,18:ハウジング,20:第1ピストン,22:第2ピストン,22b:(第2ピストンの)出力部,22c:(第2ピストンの)外周ストレート面,24:第1バネ,26:第2バネ,27:切替機構,33:内周ストレート面,40:筒孔,44:バネ室,46:圧力流体室,48:第1押部,50:係合具(係合ボール),66:係合溝,68:第2押部,70:第1接触面,72:第2接触面,CL:軸,L:圧力流体(圧油),θ:交差角度。
図1
図2
図3
図4
図5