特許第5841171号(P5841171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5841171
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】殺生物性サイジング乳化物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20151217BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20151217BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20151217BHJP
   E04B 1/64 20060101ALN20151217BHJP
【FI】
   A01N25/04 101
   A01N33/12 101
   A01P3/00
   !E04B1/64 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-547507(P2013-547507)
(86)(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公表番号】特表2014-502618(P2014-502618A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】US2011064312
(87)【国際公開番号】WO2012091891
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月9日
(31)【優先権主張番号】61/428,080
(32)【優先日】2010年12月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100145355
【弁理士】
【氏名又は名称】石堂 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン・ヴィー・ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ビー・スカルフ
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−541609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
D21H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内添サイジング剤と殺生物性乳化剤とを含み、
前記殺生物性乳化剤が、非デンプン質の第四アンモニウム化合物を含み、
前記内添サイジング剤および前記殺生物性乳化剤が水中で乳化され、
非デンプン質の第四アンモニウム化合物以外の乳化剤を含まない、
殺生物性サイジング乳化物。
【請求項2】
前記殺生物性乳化剤が、非デンプン質の陽イオン性第四アンモニウム化合物を含む、請求項1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
【請求項3】
前記内添サイジング剤が、アルケニルコハク酸無水物およびアルキルケテンダイマーからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
【請求項4】
前記第四アンモニウム化合物が、アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム、アルキルジメチルエチルベンジル塩化アンモニウム、ジアルキルジメチル塩化アンモニウム、ジデシルジメチル塩化アンモニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
【請求項5】
前記内添サイジング剤がアルケニルコハク酸無水物を含む、請求項1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
【請求項6】
前記殺生物性乳化剤が、塩化デクアリニウム、ジデシルジメチル塩化ホスホニウム、ジドデシル−エチル−イソブチルホスホニウム、ジヘキシルデシル−エチル−イソブチルホスホニウム、長鎖アルキルアミン、グアニジン、ビス(3−アミノプロピル)ドデシルアミン、ポリアミノプロピルビグアニド、ヨードプロピニルブチルカルバマートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
【請求項7】
前記内添サイジング剤がアルケニルコハク酸無水物であり、前記内添サイジング剤:前記殺生物性乳化剤の比率が、1:2分の1〜1:1である、請求項1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年12月29日に出願された米国仮特許出願第61/428080号の優先権を米国特許法119(e)に基づき主張する。
【0002】
本発明の分野
本発明は、アルケニルコハク酸無水物紙サイズ剤(「ASA」)またはアルキルケテンダイマー(「AKD」)紙サイズ剤および殺生物剤の乳化物に関し、殺生物剤は殺生物剤および乳化剤として二重の機能を有する。
【背景技術】
【0003】
石膏パネル、乾式壁および壁板として公知の石膏ボードは室内用途のために所望される特性を備えた人気のある建設資材である。それらは耐久性があり経済的であり難燃性である。加えて、これらのボードは優れた圧縮強度特性および比較的低い密度を提供する。それらは容易に装飾され、特に室内建造物のための表面として好ましい。
【0004】
石膏ボードの製造は、硫酸カルシウム半水化物、水および添加物のスラリーを形成すること、およびコンベヤーベルトまたは形成テーブル上でスラリーを連続的に堆積させることを含む。多くの場合、フェイサーとして公知の紙カバーシートはミキサーの下のコンベアー上で移動して、スラリーをフェイサー上に連続的に堆積させる。多くの場合、第2の紙カバーシートまたはフェイサーをスラリーの上に適用する。生じた組立品をパネルの形状へと形成する。硫酸カルシウム半水化物はスラリー中の水と反応し、半水化物は連結した硫酸カルシウム二水塩結晶のマトリックスへと転換され、スラリーの凝結を引き起こし強固になる。これは、任意で、カバーシートがないか、前面カバーシートおよび裏面カバーシート、またはパネルの前面もしくは裏面上のいずれかでただ1つのカバーシートを有する、連続的なストリップ硬化物を形成する。焼石膏が取り扱いおよびコンベアーから炉等の他の場所への移動に耐えるように十分に凝結されるまで、連続的なストリップはコンベアー上で移動し、その後ストリップを切断して所望される長さのボードを形成する。焼石膏の水和で必要とされる量を超える水は、炉中で石膏パネルから除去される。
【0005】
石膏パネル製造者は、多くの場合殺生物剤を使用して、紙カバーの処理によって微生物(カビおよび菌類等)による攻撃からパネルを保護する。しかしながら、処理した紙だけでは、大抵の場合多数の理由のためにカビ増殖を制御するには不十分である。多くの殺生物剤が炉中の乾燥プロセスを介して高温のために効力を失う。パネルを形成するプロセスの間に使用される水から、そして空気からの胞子と合わせて、石膏および紙の中へ取り込まれる大量のカビ胞子は、殺生物剤を凌駕し得る。いくつかの事例において、環境条例あたりの紙の表面上に存在可能な殺生物剤の濃度には限界がある。最大許容の殺生物剤濃度は、すべての事例において紙および凝結した石膏コアの両方を保護するのに十分ではないようである。
【0006】
微生物増殖は、胞子が代謝する湿気および栄養物質が見出される環境を好む。温度も1つの要因であるが、微生物の多数の種は、石膏ボードが最も多くの場合使用されるヒト居住に必要とされる温度で繁殖する。したがって、微生物増殖を制御する機会は、主として湿気および栄養物質の利用可能性の制御からなる。石膏パネルまたはフェイサー中でまたはその上で増殖し始める微生物を死滅させるための機構を有することが所望される。たとえ通常石膏ボードが室内建造物において使用されても、水蒸気および胞子は石膏パネルが使用される環境においては避けられない。環境中に存在する湿気に加えて、室内建造物において使用される製品は、屋根またはパイプの浸出または漏洩に起因する水、洪水、結露および同種のものに時には遭遇する。これらの曝露は石膏ボード製造または使用の欠陥なしに起こることである。一旦湿気に曝露されると、従来の石膏パネル製品は微生物が増殖しやすいことが認められている。
【0007】
デンプンは微生物が成長する栄養物質の一例である。石膏パネル中で、デンプンは多数の目的のためにしばしば使用される。デンプンを焼石膏スラリーに添加して、コアおよびフェイサーとの間の接着を促進することができる。多くの場合、フェイサーは紙から作製する。デンプンは一般に石膏パネルのカバーに使用される紙の成分であり得る。デンプン(糖)によりコートされた硫酸カルシウム二水塩の粒子は、多くの場合焼石膏スラリー中で凝結促進剤として使用される。他のデンプンを使用して凝結した石膏組成物の異なる特性を修飾することもできる。デンプンがカバー材または石膏パネルの石膏コア中に存在する場合、一旦胞子が穀粉を含むパネルの栄養になる培地と接触すると微生物増殖が可能となる十分な栄養がある。
【0008】
石膏パネルのためのカバーシート(フェイサーとしても公知)、フェイシング材、紙フェイサーなどは、繊維の希釈パルプ、化学添加物および水の調製から始まる製紙プロセスによって作製される。パルプはスクリーンを通して排出されてランダムに絡み合った繊維のマットを形成する。追加の水はマットの圧迫または吸収の適用によって除去される。略式には、「ウェットエンド」は水除去前の製紙プロセスを指し、過剰水が除去された後のプロセスのステージは「ドライエンド」と呼ばれる。サイズ剤等の添加物はこれらのステージのいずれかまたは両方の間に添加することができる。
【0009】
紙サイズ剤は、紙の強度および液体(水およびインク等)による浸透への耐性を改善する疎水性化合物である。アルキルケテンダイマー(「AKD」)およびアルケニルコハク酸無水物(「ASA」)(両方とも疎水性である)は、一般的なサイジング剤である。ロジンおよびロジンの誘導体は、製紙業において公知の他のクラスの紙サイジング剤である。良好なサイジング効率のために、サイズ剤は非常に小さな粒子として適用される。このことおよび疎水性特性から、紙の繊維にサイジングを適切に導入しアンカーするためには、ASAおよび/またはAKDが水溶液中で乳化されることが必要とされる。内添サイズ剤は製造プロセスのウェットエンドの間に紙それ自体の中へ取り込まれる。外添サイズ剤はドライエンドコーティングプロセス(浸漬、噴霧またはローリング等)によって完成した紙製品の表面に適用される。
【0010】
ASA内添サイズ剤は、参照として本明細書に援用される米国特許第6159339号明細書中で記載されるような陽イオン性デンプン安定剤との乳化物によって通常製紙プラントの現場で調製される。高荷電性低分子量ポリマーも水中で内添紙サイズ剤の乳化剤として使用することができる。あるいは、AKD乳化物は、水中でリン酸デンプン誘導体を最初に分散させて、乳化物の連続相にすることによって調製することができる。次いで、AKDを添加し、完全に滑らかで均質の乳化物が達成されるまで約140°F〜160°Fの温度で混合した。高剪断混合機器を使用してケテンダイマーおよび水性リン酸デンプン混合物を撹拌し、所望される乳化物を達成する。
【0011】
公知のAKD乳化実践に関連する短所は、AKDを現場外で乳化し完全に配合された乳化物として製紙業者に供給することによって典型的には克服される。AKDの乳化は通常高価で、高度に専門化された機器を必要とする、難しいプロセスである。AKD乳化物の安定化の目的のために、添加物(界面活性剤および保護コロイド等)は乳化物の組成物中に存在し得る。AKDはこれらの添加物のいくつかと反応し、それによって利用可能な活性成分の量を減少させることによりサイズ剤の効率を減少させる。AKD乳化物中に存在する陰イオン性界面活性剤はサイズ剤の効率をさらに減少させる。これは、サイズ剤がアンカーすると予想されるセルロース系材料も陰イオン性であり、それによってセルロース系繊維へのサイズ剤の導入を支援するよりむしろサイズ剤粒子を反発するからである。AKD乳化物の一部である多量の水を製紙業者へ輸送することが高価であるので、典型的なAKD乳化物供給の他の短所は経済的なものである。
【0012】
ASA乳化物は不安定であり、最大保管期間は作製に使用した水のpHおよび温度に応じて6〜8時間の間である。典型的には、ASA乳化物は使用の前に30分間保存される。ASAの油を非常に乾燥させておき、水性乳化物を調製する最後の可能な瞬間まで待つことが所望される。多くの場合、製紙業者は溶液が完成紙料へ添加される30分前に所望される量のASA乳化物を調製する。水性ASAサイズ剤乳化物の調製において利用される陽イオン性デンプン乳化剤は、各々のASAの液滴の周囲に陽イオン性のデンプンの鞘を提供し、陰イオン性セルロース系紙繊維へサイズ剤をアンカーする。ASAの大部分がプロセス水と共に繊維から流れる可能性がまだある。これは加水分解によって分解する時間をASAに与え、ASAサイジング効率を損ない、抄紙機上で形成される堆積、より高い操作価格および紙品質問題を引き起こす。サイズ剤の十分な保持の達成に複雑で高価なウェットエンド化学が多くの場合必要である。ドライエンド試験(高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)等)は、ASAサイズ剤の保持が十分であり、一定していることを保証するのに一般的である。
【0013】
石膏ボード上の微生物増殖を減少させる先行技術の試みは、紙フェイシングを、繊維ガラスベースのフェイシングと置き換えること、デンプン栄養のソースを消失させること、およびボード表面上の微生物増殖を防止することを含む。参照として本明細書に援用され、「Mold Resistant Gypsum Panel and Method of Making Same」と題された米国特許第6,893752号明細書中で示されるように、石膏ボードを微生物増殖に対して耐性があるようにする試みは、コア、フェイサーまたはその両方の中への殺生物剤(ピリチオンの塩等)の取り込みによって行われた。
【0014】
第四アンモニウム化合物は、一般的には式R−N(式中、基は同じか、異なるか、または環の一部であり、Yはカウンター陰イオンである)を有する化合物のクラスとして大まかに定義される。典型的には、しかし必ずしもではないが、基の1つは長鎖アルキル基である。特定の第四アンモニウム化合物は殺生物特性を保持する。先行技術は、噴霧、浸漬、ローリングまたは他のドライエンドコーティング法によって適用されるかにかかわらず、石膏コア中の、または紙フェイサーの表面コーティングとしての殺生物性第四アンモニウム化合物の使用を教示する。
【0015】
第四アンモニウム化合物は微生物の増殖を制御する能力について認識されているが、それらは低濃度ででさえ泡を生産するので製紙において多くの場合回避される。泡は、ピンホールの形成、紙上の円形の跡、紙の低強度および生産の減少によって、最終的な紙製品の質に対して有害な効果を有する。多くの場合、泡問題に対する解決策は、抗発泡化合物により泡形成を防止するか、または脱発泡化合物により紙完成紙料を脱発泡する複雑なウェットエンド化学を含む。参照として本明細書に援用され、「Controlled Foam Aqueous Quaternary Ammonium And Phosphonium Compositions」題された国際公開番号第2008/049616号明細書中で開示されるように、第四アンモニウム化合物の水溶液中の泡を制御する他の方法は、溶液へ陰イオン性界面活性剤の添加によるものである。この公報において指摘されるように、第四アンモニウム化合物の殺生物効力は陰イオン性界面活性剤の添加によって損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
有益な特性を損なわずに、微生物増殖への感受性が減少した石膏ボード製品についての現実的な必要性がある。加えて、かかる製品の商業的に実現可能な製造法についての現実的な必要性がある。製紙において使用される殺生物剤化合物の保持の改善に加えて、AKDおよびASA紙サイズ剤の効率および実行可能性における改善についての必要性も残っている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つまたは複数のこれら必要性は、水中のサイズ剤および殺生物性乳化剤の殺生物性サイジング乳化物を特色とする本発明によって満たされる。殺生物性サイジング乳化物を使用して石膏パネル上での使用のための殺生物性紙を作製する。さらに他の実施形態は、殺生物性サイジング乳化物を含む紙フェイサーを備えた殺生物性石膏パネルである。
【0018】
意外にも、サイズ剤および殺生物剤の両方によって提供される有益な特性を備えた紙は、個別の乳化剤および殺生物性化合物なしに作製することができる。殺生物性乳化剤は製紙製造プロセスの完成紙料への添加のための内添紙サイズ剤を乳化することが予想外に見出された。製紙プロセスにおける効率および価格削減は、殺生物剤の二重機能に起因して導入される。
【0019】
内添紙サイズ剤乳化剤として殺生物性乳化剤を使用できることの結果として、最終的な紙製品はより強くより耐久性になる。強度は効果的なサイジングを介して液体に対する耐性を改善することによって達成される。耐久性は微生物に対する耐性の改善によって達成される。
【0020】
デンプン、ポリマーおよび界面活性剤を組み合わせる乳化剤を利用する先行技術内添紙サイズ剤乳化物と比較して、請求された殺生物性サイジング乳化物は製紙プロセスの効率を改善することに寄与する。これは1つの化合物(殺生物剤)が複数の化学添加物に代わるという事実に起因する。デンプン、ポリマーまたは界面活性剤は必要とされず、さらに殺生物性サイジング乳化物により作製されたサイズ剤処理された紙は、サイズ剤乳化剤とは別の添加物の添加なしで微生物の増殖に対する耐性のあるという有益な特性も有する。
【0021】
さらに、非デンプン質の陽イオン性第四アンモニウム化合物が殺生物性乳化剤として選択される場合、製紙プロセス効率の追加の驚くべき改善が成し遂げられる。泡(それは紙完成紙料中で利用される第四アンモニウム化合物と通常関連する)は減少するか、または著しく不安定になる。発泡の制御には、抗発泡剤および脱発泡剤のどちらも必要とされない。したがって、少なくとも3つの個別の化合物を必要とすることが従来知られている3つの機能の遂行に利用される1つの化合物に関連する効率性は、殺生物性サイジング乳化物中で使用される殺生物性乳化剤に帰着される。
【0022】
殺生物性サイジング乳化物中で使用される殺生物性乳化剤は陽イオン性であり、良好な保持が紙シート中で提供され、複雑なウェットエンド保持化学についての必要性を減少させる。適切で一貫した殺生物剤用量のためのドライエンド品質管理試験も最小限にされる。製紙プロセスのこれらの改善は、紙フェイサーおよび紙フェイサーがカバーする石膏パネルの製造の複雑でない安価な一貫した手順および結果をもたらすことが予想される。
【0023】
殺生物性乳化剤を利用するASA乳化物はより長い間安定したままであり、ASA紙サイズ剤の製造効率および実行可能性を改善する。AKDにより作製された殺生物性サイジング乳化物も製紙工場または石膏製造プラントで作製することができ、それによって前乳化したAKDおよびそれに関連する大量の水を輸送する費用を減少させることが意図される。
【0024】
本発明の他の重要な特色は、繊維ガラスまたは他の望されない紙でないフェイサーに頼らずに、殺生物性石膏パネルを作製することができるということである。それは、紙カバーシート(大部分のカビ、白カビまたは菌類の汚損問題が生じる可能性が最も高い石膏パネルの表面に近い紙の層である)中に多くの殺生物剤を提供するという改善でもある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、1つの相が内添紙サイジング剤および殺生物性乳化剤である殺生物性サイジング乳化物を提供する。第2の連続相は水である。他の殺生物剤または乳化剤は、本発明の殺生物性サイジング乳化物中に存在する必要はない。殺生物性サイジング乳化物を、石膏ボードのための紙フェイサーの製造において利用することができる。殺生物性サイジング乳化物は、より効果的で商業的に実現可能な改善された製造方法に加えて、製品(紙フェイサー等)中により良好に保持される殺生物性乳化剤を含む改善された製品を提供する。
【0026】
本明細書において「殺生物性乳化剤」と称される化合物は、抗微生物特性が紙製品に与えられるように、内添紙サイズ剤を乳化し、完成した紙製品の一部となる殺生物剤に限定されている。紙に対する殺生物性添加物(「殺生物剤」)は、壁板パネルおよびそれらのフェイサー上での微生物増殖の減少に効果的である。微生物、細菌、カビ、白カビおよび菌類という用語は互換的に使用されて、これらの表面上で増殖する可能性がある多くの微生物を指す。
【0027】
好ましい内添サイジング剤は、アルケニルコハク酸無水物(「ASA」)およびアルキルケテンダイマー(「AKD」)である。ASA内添サイズ剤は室温で油性液体である。それは非常に不安定なので、乾燥を保てるところで保存される。それは水または水蒸気と反応して加水分解し、内添サイジング剤として使用不可能になる。本発明において効果的なASAサイズ剤の一例はBubond 650(Buckman Laboratories、Memphis、TN)である。さらに、Prequel(登録商標)1000/Prequel(登録商標)630(Ashland Hercules、Wilmington、DE)およびNalco(登録商標)7548/Nalco(登録商標)7540(Nalco、Naperville、IL)は、ASAサイズ剤の追加の例である。
【0028】
一実施形態において、内添紙サイズ剤の殺生物性サイジング乳化物は殺生物性乳化剤および水により作製される。好ましくは、ASA内添紙サイズ剤は、非デンプン質の陽イオン性第四アンモニウム化合物である殺生物性乳化剤により乳化される。より具体的には、この殺生物性サイジング乳化物において有用な第四アンモニウム化合物は、アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム(ADBAC)、アルキルジメチルエチルベンジル塩化アンモニウム(EBC)、ジアルキルジメチル塩化アンモニウム、ジデシルジメチル塩化アンモニウム、およびその組み合わせである。別の実施形態において、非デンプン質の陽イオン性殺生物剤は、塩化デクアリニウム、ジデシルジメチル塩化ホスホニウム、ジドデシル−エチル−イソブチルホスホニウム、ジヘキシルデシル−エチル−イソブチルホスホニウム、長鎖アルキルアミン、グアニジン、ビス(3−アミノプロピル)ドデシルアミン、ポリアミノプロピルビグアニドまたはヨードプロピニルブチルカルバマートの1つまたは組み合わせである。これらの殺生物性乳化剤の1つを選択して内添紙サイズ剤を乳化する場合、追加の乳化剤は必要とされない。ポリマー、界面活性剤、デンプン、ならびにASAおよびAKDを乳化または安定化することが公知の他の化合物は省くことができる。
【0029】
内添サイズ剤の乳化は、紙パルプ繊維へのサイズ剤の効果的なアンカリングを可能にする小液滴を提供する。ASAサイズ剤は典型的には100%の固形物である疎水性油性液体である。殺生物性乳化剤は典型的には20%〜80%の固形物であり、最初に静的ミキサー中の一次水により希釈される。殺生物性乳化剤の希釈のために使用された一次水の量は、40%の固形物の殺生物剤のための全乳化プロセス水要求の約10%である。殺生物性乳化剤が固形物で40%未満の場合、ほとんどまたはまったく水は必要とされなくてもよい。希釈した殺生物性乳化剤のストリームを100%の固形物ASAのストリームと組み合わせ、生じた溶液を200〜230psiの間の差圧でタービンポンプを介して送って、殺生物性サイジング乳化物を作製する。殺生物性サイジング乳化物中の液滴の大きさは直径で0.5ミクロン〜1.5ミクロンにわたる。殺生物性サイジング乳化物のストリームは、二次水によりさらに希釈される。乳化したASAの固形物を約1%の濃度に調整し、製紙完成紙料の中へポンプで送り込むことができる。操作の条件に応じて、乳化したASAの最終的な固形物濃度を1%未満または以上に調整することができるが;一旦乳化希釈水が特定の抄紙機のための決定されれば調整する必要はない。
【0030】
殺生物性サイジング乳化物中で利用される殺生物性乳化剤の量は、微生物増殖の制御に必要とされる殺生物剤の量およびサイズ剤の乳化に必要とされる量に直接関連する。異なる組成物を含む紙は異なる環境における用途のために作製され、したがって抗菌性要求は、微生物の増殖を促進する十分な栄養、湿気および他の因子が存在する可能性に応じて、増加または減少させることができる。同様に、サイズ剤は、作製された紙の液体からの十分な保護の達成に必要とされるサイズ剤の量に応じて、異なる量の乳化剤を要求し得る。次いで、殺生物性乳化剤のこの許容可能な用量または濃度を使用してASAを乳化し、粒子の大きさ、発泡および乳化物安定性についてチェックされるだろう。
【0031】
サイズ剤用量は、紙のグレードまたはタイプの生産に必要とされる耐水性の評価によって決定される。一般的には、耐カビ性および耐水性の両方がこれらのグレードのために必要とされるので、これらのグレードは耐水性においてより高い。内添サイズ剤(サイジング剤としても公知)対殺生物性乳化剤の比率は、好ましくは1部のサイズ剤対1部の殺生物性乳化剤である。比率は1:1〜1:0.5のサイズ剤対殺生物性乳化剤にわたり得る。サイズ剤の量は変動するが、一般的には2ポンド/トン〜20ポンド/トン風乾紙の間;より典型的には5ポンド/トン〜10ポンド/トンの間である。例えば、5000ppmのASA乳化サイズ剤は41.2%の殺生物剤乳化剤(または2060ppm)を含み、残りの材料はASAサイズ剤である。
【0032】
以下の実施例2において、殺生物性乳化剤の濃度を選択する方法が実証される。例えば、上記の2060ppmの殺生物性乳化剤は、0.25%のASAサイズ剤混合物により標準的な1%のCMC溶液を処理した後にカビ増殖を示してはならない。
【0033】
AKD内添サイズ剤は、本発明の殺生物性サイジング乳化物中のASAについて代わりの使用可能な代替物になることが意図される。製紙工場または石膏パネル製造プラントでAKD殺生物性サイジング乳化物を作製することができ、それによって前乳化したAKDおよびそれに関連する大量の水を輸送する費用を減少させる。さらに、界面活性剤またはポリマーは本発明の殺生物性サイジング乳化物と共に利用できることが意図される。一実施形態は、殺生物性サイジング乳化物中に非陰イオン性界面活性剤またはポリマーの利用を含む。
【0034】
殺生物性乳化剤によるASAまたはAKDサイジング剤の乳化は、公知の乳化方法の利用によって遂行される。標準的な装置に対する変化は必要とされないが、フロー率またはタービン背圧の小さな変化を行なって、好適な質(すなわち粒子の大きさ、分布および安定性)の殺生物性サイジング乳化物を生産することができる。
【0035】
実験室におけるASAサイズ剤の乳化のために利用される例示的な方法を記載する。最初に、Sencoミニブレンダーカップの風袋を差し引いて、1グラムのASAサイズ剤をカップへ添加する。次いでASAサイズ剤と共にカップへ0.7グラムの殺生物性乳化剤を添加し、十分な水を添加して、上記の2つの成分により100グラムの殺生物性サイジング乳化物を作製する。ブレンダー上にSencoカップを置いて、90秒間最高値でブレンダーを回転させる。100グラム量のASAサイズ剤は、紙繊維の希釈懸濁物を処理できる。必要とあれば、乳化剤比率は固形物および乳化物の質に応じて調整することができる。
【0036】
別の実施形態において、サイズ剤処理された多層の紙が生産される。製紙装置休止時間を最小限にするために、任意で2つの乳化ユニットがある。1つまたは複数の紙層を殺生物性乳化剤およびサイズ剤ブレンドにより作製してカビを防止し、第2の乳化剤を使用して通常の乳化手順下でサイズ剤処理された紙を生産する。これはサイジング価格を低下させて、殺生物剤がカビ胞子に曝露される外側の紙層だけを処理することを可能にする。殺生物性サイジング乳化物は、ファンポンプの吸込み側へそれを添加することによって紙完成紙料へ任意で添加されるが、ポンプ加圧側で加えることもできる。
【0037】
製紙プロセスのための殺生物性乳化剤の選択は、殺生物性サイジング乳化物のための殺生物性乳化剤の選択へ適用されているのと同じ基準を利用する。どれだけの水を添加するのかと抄紙機中での最終的な希釈とのバランスがある。多くの水が添加されるので、サイズ剤はより良好に分散され。より一様に分布する。しかしながら、水は典型的には軟水化されるので、追加の水は追加費用が加わる。これは製紙プロセスの水バランスを変化させ、その結果プラントは相当のプロセス水を排出する。
【0038】
1%の固形物の殺生物性サイジング乳化物を、加水分解を最小限にするために30〜60分ごとにをひっくり返される小さなタンク中に保存する。低圧力(20〜25psi)で遠心分離機を使用して、サイズ剤をファンポンプへ送る。稠度、繊維のフロー率およびパーセント固形物に加えて、希釈サイズ剤のフロー率の測定によって、紙完成紙料へサイジング溶液を添加して、製紙プロセスは任意の従来の製紙機械で完了することができる。多くの場合、紙フェイサーは複数の層またはレイヤーにより作製される。時にはわずか2層が使用される。他の場合は7以上もの層が利用される。紙添加物またはサイズ剤は、ヘッドボックスを通してまたは精錬機の前に紙完成紙料へ添加することができるが、通常はヘッドボックスへ希釈完成紙料を供給するファンポンプへ添加される。
【0039】
本発明のさらに他の実施形態は、耐カビ性石膏パネルを作製する方法において上記乳化物および紙を利用し、その方法は殺生物性乳化剤を選択すること、殺生物性乳化剤によりASAまたはAKD内添サイジング剤を乳化して殺生物性サイジング乳化物を形成すること、殺生物性サイジング乳化物を加工される紙完成紙料へ添加して紙フェイサーを形成し、その上に石膏スラリーを置き凝結させることを含む。紙フェイサーは、石膏ボード製造プロセスの一部として石膏ボード製造者によって多くの場合製造される。
【0040】
硫酸カルシウム半水化物および水のスラリーの調製は従来の石膏スラリー方法に従って作製される。硫酸カルシウム半水化物および硫酸カルシウム半水化物の再水和に必要とされる量を超過する水を混合して、フロー可能なスラリーを形成する。添加物(デンプン、泡、促進剤、分散剤など)は石膏スラリーの一部として意図される。添加物と殺生物性紙フェイサーとの間に有害または所望される相互作用はない。
【0041】
殺生物性サイジング乳化物によって向上した完成紙料により作製される抗菌性紙フェイサーを、コンベヤーベルト上の形成テーブルに沿ってロールへと作製する。石膏スラリーを連続的にフェイサー上に堆積させる。紙およびスラリーがコンベアーを横切るので、凝結する前に第2の紙フェイサーを石膏スラリーの上の表面上に置くことができる。石膏スラリーの凝結は発熱性の反応を含み、その反応によって水は硫酸カルシウム半水化物によって取り込まれ、石膏結晶が形成される。ますます多くの結晶が起こるので、スラリーはますます堅くなる。凝結進行はスラリーの温度の上昇によって測定される。石膏ボード製造プラントにおいて、所望される大きさのボード片へとナイフによって切断されるポイントで、コンベアー上の材料の温度をとることは有用である。完成した石膏ボードは、少なくとも1つの抗菌性紙フェイシングを有する結果として耐微生物耐性である。殺生物性乳化剤を石膏スラリーへ添加し、したがって石膏コア中に同様に存在することが意図される。
【0042】
以下の実施例は本発明について説明および示すことをさらに意味する。実施例は本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0043】
実施例1
実験用紙の手すき紙は様々な内添サイズ剤乳化物により生産された。シートは、吸水に対する優れた耐性に加えて、微生物増殖に対する良好な耐性を示した。紙シートのためのサイズ剤乳化物は、NALCO(登録商標)7540 ASAサイズ剤(Naperville、ILにおいて製造された)により作製された。サイズ剤を、ASAサイズ剤対殺生物性乳化剤の10:1の重量比で、表IおよびII中の抗菌性成分の各々と組み合わせた。
【0044】
殺生物性乳化剤は、Joliet、ILのMason Chemical Companyから得られた第四アンモニウム塩素化合物であった。MAQUAT(登録商標)MC1416およびMAQUAT(登録商標)MC1412は、両方とも80%の活性のあるアルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム(ADBAC)化合物である。MAQUAT(登録商標)MQ2525は、アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウムおよびアルキルジメチルエチルベンジル塩化アンモニウムの80%の活性のある組み合わせであった。MAQUAT(登録商標)MQ624Mは80%の活性のある殺生物性乳化剤として受け入れられたが、アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウムおよびジアルキルジメチル塩化アンモニウムの45%の活性のある組み合わせとして実験室において希釈され利用された。MAQUAT(登録商標)4480E(ジデシルジメチル塩化アンモニウム)は、80%〜45%に同様に希釈された殺生物性活性化合物である。
【0045】
4グラムの2層手すき紙を、British laboratoryの手すき紙型を利用した実験室手順で作製した。100%の段ボール古紙(「OCC」)完成紙料を粉砕して、線維状のパルプを作製した。表I中で示される様々な殺生物剤中のASA殺生物性サイジング乳化物は、上で説明されたASAサイズ剤を乳化する実験室での方法に従って、サイズ剤と共に殺生物性乳化剤の水溶液を添加して作製し、乳化ASAの適切な大きさの液滴を達成した。この水性殺生物性サイジング乳化物を追加の水によりさらに希釈して、ASAサイズ剤および殺生物性乳化剤の1%未満の希釈物を得た。次いで、パルプ、水および乳化されたサイズ剤の紙完成紙料スラリーを、Adirondackロールプレス中で20psiで圧迫し、生じたシートを実験室のドラム乾燥機中で240°Fで2.5分間乾燥した。
【0046】
次いでこれらの手すき紙は水および耐カビ性について試験された。耐水性試験は、TAPPI T441の標準的なCobb試験(参照として本明細書に援用される)および沸騰ボート試験(沸騰水が紙シートの50%を通して染み込むのにどのくらいの時間(最大1000秒まで)かかるかを測定する)を含んでいた。Cobb試験は3分間120°Fで操作された。
【0047】
沸騰ボート試験は沸騰水上に1片の紙を浮かべて水反発性の程度を決定することを含んでいた。紙サンプルは、12’’×12’’の試験される紙片の切断によって調製した。紙サンプルは、平らな表面上に結合側(結合側は石膏パネルへ付着されている側面である)を下にして置いた。6’’×6’’の治具または堅い平らな物体を紙の中心に直接置いた。補助として治具を用いて、紙の外側に立体的なボート様の構造を形成するように、治具の各々の端に沿っておよび角を横切って、折り目を作製した。紙サンプルの1つの角を折り畳み、隣接する側面へ重ね、次いで適所にステープルで留めた。各々の角について2つのステープルで良好に留められた。この折り畳みおよびステープル留めを各々の側面について反復してボートを作製し、ボート形態に紙を保持する。4’×4’のゴム印を使用して、紙ボートの底部の中心(または中心へ可能な限り近い)にグリッドの印影を付ける。
【0048】
アルミニウムまたはステンレス鋼のトレー(10’’の正方形および3’’の深さの測定値)を、少なくとも10’’の正方形のホットプレート上に置いた。トレーは全体の約2/3を水で満たし、温度計を水の中へ入れ、ホットプレート熱を「高」にした。水が97℃±3℃に到達した時に、ストップウォッチをスタートさせながら紙ボートを水の中へ置いた。紙または紙の一部が濡れた状態になった時に、濡れた領域は暗くなり観察可能であった。もし紙が50%濡れるところまで到達しなかったならば、ボートの底部上のグリッド中の暗くなった測定可能な領域を5および15分後に測定した。50%(12〜13のグリッドの正方形)が濡れた場合、または15分(1000秒)後に、試験を中止した。
【0049】
ボートの底部の濡れを測定するために、濡れたグリッド正方形の数をカウントした。1/4正方形の概数に対する推定を行なった。正方形の数に4を掛けて濡れのパーセントを決定する。
【0050】
表Iは、様々な殺生物性サイジング乳化物中のASAサイズ剤のサイズ剤効力についてのCobbおよび沸騰ボート試験結果を示す。試験結果の両方のセットは、紙の非常に良好なサイジングを示す。B1からF3まで文字および数のコードによりラベルされたこれらのサンプル中にポリマーは含まれていなかった。サンプルAは、殺生物性乳化剤なしでASA内添サイズ剤およびポリマー(NALCO(登録商標)7541)乳化剤のみを含む対照であった。
【0051】
表IIは、NALCO(登録商標)7541ポリマー乳化物中のASAサイズ剤のサイズ効力についてのCobb(および沸騰ボート試験結果を示す。Cobbおよび沸騰ボート試験結果の比較はすべてのサンプルの非常に良好なサイジングを示す。この結論は、沸騰ボート試験において紙が50%濡れるまで1,000秒(17分)以上かかったという事実によって支持された。Cobb試験結果も非常に良好であった。ASAの内添サイズ剤を殺生物性乳化剤により乳化した場合、標準的な実践に従ってポリマーにより乳化された場合とまさに同様に効果的だったのは驚くべきことであった。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表IおよびII中で示されるすべてのサンプル(A〜H3)+他の対照について、修飾されたASTM G21菌類汚損試験を行なった。対照により、試験でカビが増殖し、サイジング性能が対照に類似することが保証された。2つの1平方インチの紙サンプルを各々の手すき紙から切断し、ペトリ皿中で固化した栄養−塩寒天上に置き、そうして各々の紙側面を試験した。紙サンプルを含むペトリ皿を85%を超える相対的湿度で28〜30℃で一定の期間の間インキュベーションし、その後観察した。紙サンプルは滅菌水により濡らし、空気からのカビ胞子のみを含む。
【0055】
7および14日で、紙シートサンプルの前面および裏面の表面微生物増殖の有無を検査した。結果を表IV中に示す。「0」の値は、サンプル表面上で微生物増殖がないことを示す。「1」の値は1〜10%の増殖を示し;「2」は11〜30%の増殖を示し;「3」は31〜60%の増殖を示し;「4」は61%以上の増殖を示す。表IV中の紙サンプルのレーティングは、以下のように表III中に示される。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
表IV中のサンプルコードは、表IおよびII中の同じサンプルコードを指す。サンプルAは対照であった。殺生物性効果は、添加された殺生物性乳化剤を含むサンプルにおいて観察される。殺生物性乳化剤の濃度を増加させることは、紙の抗微生物性能を改善するだろうことが意図される。
【0059】
実施例2
殺生物性サイズ剤乳化物は、殺生物性乳化剤の選択を含む耐カビ性紙フェイサーを作製する方法において利用された。単数または複数の殺生物性乳化剤のブレンドの濃度を選択する1つの方法は、ASAの乳化または紙の処理前に成分の1シリーズの希釈を完了することであった。1%の中程度の分子量から低分子量のカルボキシルメチルセルロース(「CMC」)(乳化安定剤)および0.25%のASAサイズ剤を標準的な溶液としてビーカー中でブレンドした。この5ミリリットルの標準的な溶液を、8本の異なる滅菌試験管の中へピペットで移した。試験殺生物性乳化剤を希釈して2.5%の溶液を作製した。表Vを参照されたい。
【0060】
【表5】
【0061】
1mlのアリコートをペトリ皿中に置き、3、5または7日後に観察した。カビコロニーを各々のペトリ皿上でカウントして、菌類コロニーのない最低の殺生物性乳化剤濃度を得た。これらの試験が完了した後、ASAサイズ剤の乳化に殺生物剤を使用して標準的な手すき紙を作製した。サイジング性能を評価し、紙特性を測定し、ASTM G21菌類試験を紙上で完了した。
【0062】
より多量の殺生物性乳化剤は紙製品のサイジング特性または他の特性を損なわずに、耐微生物性を改善するだろうことが意図される。
【0063】
殺生物性サイズ剤乳化、殺生物性紙フェイサーおよび殺生物性石膏パネルについての特定の実施形態が示され記載されたが、より広範囲の態様の本発明から逸脱せずに、および以下の請求項において記載されるように、それに対して変化および修飾を行なえることは当業者によって認識されるだろう。
[付記1]
内添サイジング剤と;
殺生物性乳化剤とを含み、
前記内添サイジング剤および殺生物性乳化剤が水中で乳化される、殺生物性サイジング乳化物。
[付記2]
前記殺生物性乳化剤が、非デンプン質の陽イオン性第四アンモニウム化合物である、付記1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
[付記3]
前記内添サイジング剤が、アルケニルコハク酸無水物およびアルキルケテンダイマーからなる群から選択される、付記1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
[付記4]
前記内添サイジング剤対前記殺生物性乳化剤の比率が、1部のASAのサイズ剤および2分の1〜1部の殺生物性乳化剤である、付記1に記載の殺生物性サイジング乳化物。
[付記5]
石膏コアと;
少なくとも1つのフェイサーとを含み、
該フェイサーが紙サイジング乳化物を含む完成紙料から作製された紙を含み、
該紙サイジング乳化物が殺生物性乳化剤および内添サイジング剤の乳化物を含む、
石膏パネル。
[付記6]
前記内添サイジング薬剤が、アルケニルコハク酸無水物およびアルキルケテンダイマーからなる群から選択される、付記5に記載の石膏パネル。
[付記7]
前記殺生物性乳化剤が、非デンプン質の陽イオン性第四アンモニウム化合物である、付記6に記載の石膏パネル。
[付記8]
殺生物性乳化剤を選択することと;
前記殺生物性乳化剤によりアルケニルコハク酸無水物またはアルキルケテンダイマー内添サイジング剤を乳化して殺生物性サイジング乳化物を形成することと;
前記殺生物性サイジング乳化物を紙完成紙料へ添加することと;
前記紙完成紙料からフェイサーを作製することと;
硫酸カルシウム半水化物および水のスラリーを調製することと;
前記フェイサー上に前記スラリーを堆積させることと;
前記スラリーを耐微生物性石膏ボードへと形成することと;
前記スラリーを凝結させることと
を含む、耐カビ性石膏ボードを作製する方法。
[付記9]
前記殺生物性乳化剤が、非デンプン質の陽イオン性第四アンモニウム化合物である、付記8に記載の方法。
[付記10]
前記第四アンモニウム化合物が、アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム、アルキルジメチルエチルベンジル塩化アンモニウム、ジアルキルジメチル塩化アンモニウム、ジデシルジメチル塩化アンモニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、付記9に記載の方法。