【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する透明粘着テープであって、前記粘着剤層は、周波数10Hzでの動的粘弾性スペクトルの損失正接が−20〜20℃の温度領域に極大値を有しており、200℃における剪断貯蔵弾性率が2.5×10
4Pa以上であり、かつ、ゲル分率が70重量%以上である透明粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の透明粘着テープの粘着剤層は、周波数10Hzでの動的粘弾性スペクトルの損失正接(tanδ)が−20〜20℃の温度領域に極大値を有する。上記損失正接の極大値がこの範囲内にあることにより、貼り合わせを行う際の被着体への密着性が高くなり、高温環境下における浮き剥がれの発生を防止することができる。上記損失正接の極大値は、−15〜15℃の温度領域にあることが好ましく、−10〜10℃の温度領域にあることがより好ましい。
高温条件下において、ポリカーボネート板、アクリル板等の高温環境下でアウトガスを発生する被着体と粘着剤層との界面に発生する浮き剥がれは、該被着体からアウトガスが生じ、そのガス圧力により気泡が成長することによって起こると考えられる。そのため、粘着剤層のポリカーボネート板及びアクリル板に対する密着性又は粘着力を高めることにより、ポリカーボネート板又はアクリル板との界面における気泡の成長を妨げることができるものと考えられる。
【0011】
上記損失正接が極大値をとる温度は、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、DVA−200等)を用いて、周波数10Hz、昇温速度5℃/分の条件で−50〜200℃における剪断貯蔵弾性率(G’)及び剪断損失弾性率(G’’)を測定し、横軸を温度、縦軸を損失正接(tanδ)としてグラフを作成することにより求めることができる。
【0012】
本発明の透明粘着テープの粘着剤層は、200℃の剪断貯蔵弾性率(G’)が2.5×10
4Pa以上である。200℃の剪断貯蔵弾性率を2.5×10
4Pa以上とすることにより、浮き剥がれの発生を防止することができる。200℃の剪断貯蔵弾性率は、3.0×10
4Pa以上であることが好ましく、4.0×10
4Pa以上であることがより好ましい。
本発明者は、高温環境下において発生する浮き剥がれが、粘着剤層の高温条件において測定した剪断貯蔵弾性率と相関することを見出した。即ち、高温環境下においてポリカーボネート板、アクリル板等と粘着剤層との界面に発生する浮き剥がれは、測定周波数10Hz、200℃における粘着剤層の剪断貯蔵弾性率が大きいほど少なく、剪断貯蔵弾性率が小さくなるほど多くなる傾向にある。本発明者は、更に鋭意検討の結果、粘着剤の200℃における剪断貯蔵弾性率を2.5×10
4Pa以上とすることにより、浮き剥がれの発生を防止できることを見出した。
高温環境下における浮き剥がれは、被着体から発生するアウトガスの圧力に粘着剤層が耐えられなくなり、変形しながら剥離することが原因であると考えられる。粘着剤層の200℃における剪断貯蔵弾性率を高くすることにより、高温環境下でも粘着剤層が変形し難くなることから、浮き剥がれの発生を防止できるものと考えられる。
なお、上記粘着剤層の200℃の剪断貯蔵弾性率(G’)の上限は特に限定されないが、好ましい上限は4.0×10
6Paである。200℃の剪断貯蔵弾性率(G’)が4.0×10
6Paを超えると、被着体への粘着性が劣る傾向になり浮き剥がれの発生が起こる可能性がある。
【0013】
200℃における剪断貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、DVA−200)を用いて、測定モードを剪断モードとし、周波数10Hz、昇温速度5℃/分の条件にて測定することができる。
【0014】
本発明の透明粘着テープの粘着剤層は、ゲル分率が70重量%以上である。上記粘着剤層のゲル分率を70重量%以上とすることにより、高温環境下において被着体から発生するアウトガスの圧力による粘着剤層の変形が抑制され、気泡の成長を抑えることができる。また、金属薄膜を劣化させる成分の金属薄膜接着界面への移行を抑制し、金属薄膜の劣化を抑えることができる。上記粘着剤層のゲル分率の好ましい下限は75重量%、より好ましい下限は80重量%である。なお、上記粘着剤層のゲル分率の上限は特に限定されず、100重量%であってもよい。
【0015】
上記ゲル分率は、例えば、以下の方法により測定することができる。
まず、本発明の透明粘着テープを一定の大きさに切断して試験片を作製する。得られた試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、200メッシュのステンレスメッシュを介して試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。そして、乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。
【0016】
ゲル分率(重量%)=100×(W
2−W
0)/(W
1−W
0)
式中、W
0は基材の重量を表し、W
1は浸漬前の試験片の重量を表し、W
2は浸漬し乾燥した後の試験片の重量を表す。透明粘着テープが基材を有さない場合はW
0=0である。
【0017】
本発明の透明粘着テープの粘着剤層は、ゾル成分の重量換算分子量が下記式(a)を満たし、ゾル成分全体に対する分子量10万以下のゾル成分量が重量換算含有率において下記式(b)を満たすことが好ましい。
【0018】
250000≧A≧2000×(100−B)
1.5 (a)
C≦100−3×(100−B) (b)
式中、Aはゾル成分の重量換算分子量を表し、Bは粘着剤層のゲル分率(重量%)を表し、Cはゾル成分中に含まれる分子量10万以下のゾル成分のゾル成分全体に対する重量換算含有率(重量%)を表す。
【0019】
上記粘着剤層のゾル成分の重量平均分子量が(a)式の右辺の値未満であると、高温環境下において、被着体から発生するアウトガスの圧力による粘着剤層の変形が起こり、気泡の成長を抑えることができない。上記粘着剤層のゾル成分の重量平均分子量が(a)式の左辺の値(25万)を超えると、被着体への密着が悪化することがある。上記粘着剤層のゾル成分の重量平均分子量の好ましい上限は23万である。
上記粘着剤層のゾル成分中に含まれる分子量10万以下のゾル成分が、式(b)右辺の値を超えると、高温環境下において、被着体から発生するアウトガスの圧力による粘着剤層の変形が起こり、気泡の成長を抑えることができない。
従って、高温環境下において、被着体から発生するアウトガスの圧力による粘着剤層の変形による気泡の成長を抑えるには、式(a)、式(b)の少なくともどちらか一方の式を満たすことが好ましく、式(a)、式(b)の両式満たすことがより好ましい。
【0020】
上記ゾル成分の重量換算分子量等は、例えば、以下の方法により測定することができる。
まず、本発明の透明粘着テープを一定の大きさに切断して試験片を作製する。得られた試験片をテトラヒドロフラン中に23℃にて24時間浸漬した後、フィルターにより溶液のみを分取する。分取した溶液について、カラムとして例えばWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算によるゾル成分の重量平均分子量、分子量分布を測定する。なお、このポリスチレン換算による重量平均分子量を、重量換算分子量とした。
【0021】
以下に、上記周波数10Hzにおける動的粘弾性スペクトルの損失正接、200℃における剪断貯蔵弾性率、ゲル分率、及び、ゾル成分の分子量等を満たす粘着剤層を有する本発明の透明粘着テープの構成要素について、より具体的に説明する。
なお、本明細書では、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0022】
上記粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする。
なお、本明細書において「主成分とする」とは、上記粘着剤が(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、下記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位と、下記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位とを有することが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がこれらの(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を有することで、得られる粘着剤層の200℃の剪断貯蔵弾性率及びゲル分率を所定範囲内に入るようにすることができる。
【0024】
【化1】
【0025】
一般式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素数4〜14のアルキル基を表す。R
2のアルキル基の水素原子は、シクロアルキル基に置換されていてもよい。上記シクロアルキル基は特に限定されず、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0026】
【化2】
【0027】
一般式(2)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を含有することにより、得られる粘着剤層の周波数10Hzにおける動的粘弾性スペクトルの損失正接を所定の範囲内とすることができ、粘着剤層の耐発泡性を向上させることができる。
一方、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を含有することにより、周波数10Hzにおける動的粘弾性スペクトルの損失正接を所定の範囲内としたまま、200℃の剪断貯蔵弾性率を所定の範囲内に調整することができる。これは、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の主鎖の分子鎖長が長くなることにより、分子鎖同士の絡み合いが増すためであると考えられる。
【0029】
上記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されないが、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好適であり、n−ブチル(メタ)アクリレートがより好適である。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が、上記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい下限が20重量%、好ましい上限が95重量%である。上記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位の割合のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は90重量%であり、更に好ましい下限は35重量%、更に好ましい上限は85重量%である。
【0031】
上記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好適であり、エチル(メタ)アクリレートがより好適である。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が60重量%である。上記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位の割合のより好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は50重量%であり、更に好ましい下限は5重量%、更に好ましい上限は40重量%であり、特に好ましい下限は10重量%、特に好ましい上限は35重量%である。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、更に、ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成成分を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成成分を含有することにより、得られる粘着剤層は、ポリカーボネート板又はアクリル板に対する粘着力が劇的に向上する。このように粘着力が向上することにより、高温環境下における浮き剥がれの発生をよりいっそう防止することができる。
【0034】
上記ビシクロ環構造は特に限定されず、上記ビシクロ環構造を有する官能基として、例えば、ビシクロ[1.1.0]ブチル基、ビシクロ[1.1.1]ペンチル基、ビシクロ[2.1.0]ペンチル基、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル基、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル基、ビシクロ[2.2.0]ヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル基、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル基、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.1]オクチル基、ビシクロ[3.3.0]オクチル基、ビシクロ[4.1.1]オクチル基、ビシクロ[4.2.0]オクチル基、ビシクロ[5.1.0]オクチル基、ビシクロ[3.2.2]ノニル基、ビシクロ[3.3.1]ノニル基、ビシクロ[4.2.1]ノニル基、ビシクロ[4.3.0]ノニル基、ビシクロ[5.1.1]ノニル基、ビシクロ[5.2.0]ノニル基、ビシクロ[6.1.0]ノニル基、ビシクロ[4.3.1]デシル基、及び、これらの水素原子の一部を鎖状アルキル基又は環状アルキル基で置換した構造を有する官能基等が挙げられる。なお、上記置換は1箇所であってもよく、複数箇所であってもよい。なかでも、上記ビシクロ環構造は、ノルボルニル環、イソボルニル環であることが好ましく、イソボルニル環であることが特に好ましい。
【0035】
上記オレフィン性二重結合は特に限定されず、上記オレフィン性二重結合を有する官能基として、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。なかでも、オレフィン性二重結合は、(メタ)アクリロイル基の二重結合であることが好ましく、アクリロイル基の二重結合であることが特に好ましい。
【0036】
上記ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーとして、具体的には、例えば、イソボルニル基と(メタ)アクリロイル基とを有するイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル基とアクリロイル基とを有するイソボルニルアクリレートが特に好ましい。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が60重量%である。上記ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位が10重量%未満であると、被着体に対する粘着力向上効果が得られないことがあり、60重量%を超えると、得られる粘着剤層は、周波数10Hzでの動的粘弾性スペクトルの損失正接、200℃の剪断貯蔵弾性率が所定範囲に入らないことがある。上記ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位の割合のより好ましい下限は12重量%、より好ましい上限は50重量%であり、更に好ましい下限は14重量%、更に好ましい上限は45重量%であり、特に好ましい下限は15重量%、特に好ましい上限は40重量%である。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、更に、エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成成分を含有することが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がエチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成成分を含有することにより、得られる粘着剤層は、高温高湿下に曝された後に室温に戻された場合にでも、水を微分散させることができ、その結果、白化するのを抑制することができる。とりわけ、銀、銅、ITO、ZnO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜付のフィルムを被着体とした場合にアクリル系粘着剤の白化は顕著となるが、エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成成分を含有することにより、本発明の透明粘着テープは、ITO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とした場合にも高温高湿下で生じる白化を抑制することができる。
【0039】
上記ポリエチレンオキサイド鎖において、エチレンオキサイドの繰り返し数は、上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8未満であると、得られる粘着剤層は、高温高湿下で生じる白化を充分に抑制することができない。上記エチレンオキサイドの繰り返し数が45を超えると、得られる粘着剤は、高温高湿下で生じる白化を充分に抑制することができない。また、上記エチレンオキサイドの繰り返し数が45を超えると、ポリエチレンオキサイド鎖を有するモノマーと他の主成分となるモノマー等との相溶性が低下し、得られる粘着剤層は、粘着力が低下する。
【0040】
上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーは特に限定されないが、高温高湿下で生じる白化をより効果的に抑制することができることから、下記一般式(3)で表される構造を有するモノマーであることが好ましい。
【0041】
【化3】
【0042】
一般式(3)中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は炭素数1〜30のアルキル基を表し、nは8〜45の整数を表す。
【0043】
また、上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーは、特に高温高湿下で生じる白化を抑制する効果が高いため、上記一般式(3)中、R
5は水素原子又はメチル基であり、R
6は炭素数18のアルキル基であり、nは30であるモノマーであるか、一般式(3)中、R
5は水素原子又はメチル基であり、R
6は炭素数1のアルキル基であり、nは23であることが特に好ましい。上記の特定のエチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーは少量での添加によって白化を抑制できることから、前記アクリル共重合体のガラス転移温度(Tg)を必要以上に上昇させることがなく、そのため本発明の透明粘着テープの信頼性に悪影響を及ぼすことがない。
【0044】
上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖を有するモノマーのうち、市販品として、例えば、ブレンマーPME−1000(エチレンオキサイドの繰り返し数=23、末端メチル基、日油社製)、ブレンマーPME−400(エチレンオキサイドの繰り返し数=9、末端メチル基、日油社製)、ブレンマーPME−2000(エチレンオキサイドの繰り返し数=45、末端メチル基、日油社製)、NKエステルAM−130G(エチレンオキサイドの繰り返し数=13、末端メチル基、新中村化学工業社製)、ライトエステル041MA(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端メチル基、共栄社化学社製)、ブレンマーPSE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端オクタデシル基、日油社製)、ブレンマーAE−400(エチレンオキサイドの繰り返し数=10、末端水酸基、日油社製)、ブレンマーANE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端ノニルフェニル基、日油社製)等が挙げられる。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が10重量%である。上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成単位が0.5重量%未満であると、白化してしまうことがあり、10重量%を超えると、得られる粘着剤層は、周波数10Hzでの動的粘弾性スペクトルの損失正接、200℃の剪断貯蔵弾性率が所定範囲に入らないことがある。上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成単位の割合のより好ましい下限は0.7重量%、より好ましい上限は8重量%であり、更に好ましい下限は0.9重量%、更に好ましい上限は6重量%であり、特に好ましい下限は1重量%、特に好ましい上限は5重量%である。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位を含有していてもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がカルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位を含有することにより、分子間相互作用が増大して、粘着剤層の凝集力が向上する。
【0047】
上記カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイル酢酸、(メタ)アクリロイルプロピオン酸、(メタ)アクリロイル酪酸、(メタ)アクリロイルペンタン酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。
【0048】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい上限が3重量%である。上記カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位が3重量%を超えると、ITO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とする場合に、該金属薄膜を劣化させやすくなることがある。上記カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位の割合のより好ましい上限は1.5重量%であり、更に好ましい上限は0.5重量%である。
【0049】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、下記一般式(4)で表される構造を有するモノマーに由来する構成単位を含有していてもよい。このような水酸基を有するモノマーに由来する構成部分を含有することにより、得られる透明粘着テープのガラス板に対する接着力を向上させることができる。透明粘着テープの粘着剤層中の水酸基と、ガラス板の表面に存在する水酸基との間に水素結合が形成されるため接着力が向上するものと考えられる。
【0050】
【化4】
【0051】
一般式(4)中、R
7は水素原子又はメチル基を表し、R
8は水酸基を含有するアルキル基を表す。
【0052】
上記一般式(4)で表される構造を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアッシドホスフェート等が挙げられる。また、上記一般式(4)で表される構造を有するモノマーの市販品としては、例えば、プラクセルFA2D(ダイセル社製)、ブレンマーAE90、ブレンマーAE200、ブレンマーAE400(日油社製)等が挙げられる。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が上記一般式(4)で表される構造を有するモノマーに由来する構成単位を含有する場合、上記一般式(4)で表される構造を有するモノマーに由来する構成単位の割合は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の水酸基価が10〜150mgKOH/gの範囲となるように含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の水酸基価が10mgKOH/g未満であると、ガラス板に対する接着性が充分に発揮できないことがあり、150mgKOH/gを超えると、上記一般式(4)で表される構造を有するモノマーに含まれる不純物のために重合時に樹脂がゲル化してしまうことがある。より好ましくは、15〜100mgKOH/gの範囲である。
なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の水酸基価は、下記の式より計算される。
【0054】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の水酸基価(mgKOH/g)
=56110×n×W/M
M:水酸基含有モノマーの分子量(−)
n:水酸基含有モノマー一分子中の水酸基数(個)
W:(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中の
水酸基含有モノマーの重量含有割合(wt%)
【0055】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量は、好ましい下限が60万、好ましい上限が150万である。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が60万未満であると、得られる粘着剤層は、高温弾性率が低下して200℃の剪断貯蔵弾性率が所定範囲に入らず、信頼性が低下することがある。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が150万を超えると、流動性が低下し、被着体に対する密着性が低下してしまうことがある。上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は70万、より好ましい上限は140万であり、更に好ましい下限は80万、更に好ましい上限は130万である。
【0056】
なお、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算により測定した値を意味する。具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をテトラヒドロフラン(THF)により100倍に希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液について、カラム(例えば、Waters社製の商品名「2690 Separations Model」等)を用いたGPC法にて測定することにより、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量を求めることができる。
【0057】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記の各モノマーを含有する混合モノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。
上記重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられる。なかでも、溶液重合が好適である。
上記溶液重合に用いる溶媒は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
【0058】
上記溶液重合に用いる溶媒の配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が25重量部、好ましい上限が300重量部である。上記溶媒の配合量が25重量部未満であると、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子量分布が広くなることがある。このような(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する粘着剤からなる粘着剤層は、被着体に対する粘着力及び凝集力が低下して、信頼性が低下することがある。上記溶媒の配合量が300重量部を超えると、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いて粘着剤を調製し、粘着剤層を形成する際に、溶媒を除去する手間が必要となることがある。
【0059】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。なかでも、ITO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とする場合に該金属薄膜に与える影響を考慮すると、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましい。
上記過硫酸塩は特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。上記有機過酸化物は特に限定されず、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。
これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.5重量部である。上記重合開始剤の配合量が0.02重量部未満であると、重合反応が不充分となったり、重合反応に長時間を要したりすることがある。上記重合開始剤の配合量が0.5重量部を超えると、得られる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が低くなりすぎたり、分子量分布が広くなりすぎたりすることがある。このような(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する粘着剤からなる粘着剤層は、被着体に対する粘着力及び凝集力が低下して、信頼性が低下することがある。
【0061】
上記粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。上記架橋剤を含有することで、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に架橋構造を形成することができる。また、上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することで、得られる粘着剤のゲル分率を所定範囲に調整することができる。
【0062】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び耐久性等の性能を発現しやすいことから、イソシアネート系架橋剤及び/又はエポキシ系架橋剤が好適である。
【0063】
上記イソシアネート系架橋剤は特に限定されないが、脂肪族イソシアネート系架橋剤が好ましい。上記脂肪族イソシアネート系架橋剤のうち、市販品として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ系架橋剤は特に限定されないが、脂肪族エポキシ系架橋剤が好ましい。上記脂肪族エポキシ系架橋剤のうち、市販品として、例えば、デナコールEX212、デナコールEX214(いずれもナガセケムテックス社製)、E−5C(綜研化学社製)等が挙げられ、その他のエポキシ系架橋剤としては、例えば、E−AX(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0064】
上記架橋剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記架橋剤の配合量が0.01重量部未満であると、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の架橋が不充分となり、得られる粘着剤層の凝集力が低下して加工性が低下することがある。上記架橋剤の配合量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0065】
上記粘着組成物は、防錆剤を含有することが好ましい。防錆剤を含有することにより、本発明の透明粘着テープをタッチパネルの貼り合わせに用い、粘着剤層が金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜付のフィルムの金属箔膜面に対して直接接触した場合にでも、金属薄膜の劣化をより防止することができる。
【0066】
上記防錆剤は特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール、アルキルベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、アミン塩類、低級脂肪酸及びこれらの塩類、エチランジアミンテトラ酢酸、グルコン酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸ソーダ等の従来公知の防錆剤を用いることができる。なかでも、ベンゾトリアゾール、アルキルベンゾトリアゾールが好ましい。
【0067】
上記防錆剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記防錆剤の配合量が0.01重量部未満であると、金属の防錆硬化が不充分となり、上記防錆剤の配合量が10重量部を超えると得られる粘着剤層は、被着体に対する粘着力が低下して、信頼性が低下することがある。上記防錆剤のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5.0重量部である。
【0068】
上記粘着剤組成物は、更に、粘着付与樹脂を含有してもよい。
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、例えば、キシレン樹脂、フェノール樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、キシレン樹脂が好ましく、キシレン樹脂のアルキルフェノール反応物がより好ましい。
また、上記粘着付与樹脂として、水素添加された樹脂が好ましく、このような水素添加された樹脂を用いることで、得られる粘着剤層の透明性が高まる。
【0069】
上記粘着剤組成物は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。通常、ITO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とした場合にアクリル系粘着剤を用いると金属薄膜の劣化による抵抗値の低下が起こるが、上記粘着剤組成物がシランカップリング剤を含有することにより、ITO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とした場合にも高温高湿下で生じる金属薄膜の劣化による抵抗値の低下を抑制することができる。また、上記シランカップリング剤を含有することで、得られる粘着剤層は、被着体に対する密着性が向上する。
【0070】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤が好適である。
【0071】
上記シランカップリング剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記シランカップリング剤の配合量が0.01重量部未満であると、被着体に対する密着性が低下して剥がれが発生したり、金属薄膜の劣化による抵抗値の低下を抑制する効果が充分に得られないことがあり、5重量部を超えると、離型紙又は離型フィルムの剥離性が低下し、離型紙又は離型フィルムが剥離できなくなったり、剥離できたとしても粘着剤層の表面荒れが発生したりすることがある。上記シランカップリング剤の配合量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0072】
上記粘着剤組成物は、更に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて充てん剤、老化防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0073】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、架橋剤、防錆剤及びシランカップリング剤を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する透明粘着テープであって、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、上記一般式(1)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を20〜95重量%、上記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位を1〜60重量%、上記ビシクロ環構造と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーに由来する構成単位を10〜60重量%、上記エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖及び1つのオレフィン性二重結合を有するモノマーに由来する構成単位を0.5〜10重量%有し、上記一般式(4)で表される構造を有するモノマーに由来する構成単位を含有し、そのモノマーに由来する(メタ)アクリル酸エステル共重合体の水酸基価が10〜150mgKOH/gであり、かつ、重量平均分子量が60万〜150万である透明粘着テープもまた、本発明の1つである。
【0074】
上記粘着剤組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、及び、必要に応じて添加する上記架橋剤、上記粘着付与樹脂、上記シランカップリング剤、上記添加剤等を混合し、攪拌する方法が挙げられる。
【0075】
本発明の透明粘着テープの上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が5μm、好ましい上限が1mmである。上記粘着剤層の厚みが5μm未満であると、粘着剤層は、被着体に対する粘着力が低下して、信頼性が低下することがある。上記粘着剤層の厚みが1mmを超えると、粘着剤成分の染み出し等が生じ、取扱性が低下することがある。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は20μmであり、より好ましい上限は500μm、更に好ましい上限は300μmである。
【0076】
本発明の透明粘着テープは、基材を有さないノンサポートタイプであってもよいし、基材の両面に粘着剤層が形成されたサポートタイプであってもよい。
上記基材は、透明性を有する基材であれば特に限定されず、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0077】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が2μm、好ましい上限が200μmである。上記基材の厚みが2μm未満であると、得られる透明粘着テープの強度が不足し、破れたり、取り扱いが困難になったりすることがある。上記基材の厚みが200μmを超えると、基材の腰が強すぎて、得られる透明粘着テープの段差への追従性が悪くなることがある。上記基材の厚みのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は100μmである。
【0078】
本発明の透明粘着テープを製造する方法は特に限定されない。ノンサポートタイプの透明粘着テープを製造する方法として、例えば、上記粘着剤組成物を離型紙又は離型フィルムの離型処理面に塗工することによって粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層の上に、離型処理面が粘着剤層に接するようにして新たに用意した離型紙又は離型フィルムを重ね合わせて積層体を得た後、得られた積層体をゴムローラ等により加圧する方法等が挙げられる。
【0079】
また、本発明の透明粘着テープを製造する方法として、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となる上記の各モノマーを含有する混合モノマーを、塊状重合によってラジカル重合させ、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造すると同時にテープ化まで行う方法も用いることができる。
【0080】
上記塊状重合は、重合熱の除去がしやすく、反応制御がしやすいことから、光重合であることが好ましい。
特に、本発明の透明粘着テープを製造する方法として、上記混合モノマー、光重合開始剤、及び、必要に応じて添加剤等を含有し、かつ、溶剤を含有しないモノマー組成物を、一方の面が離型処理された透明な合成樹脂フィルムの離型処理面に塗工してモノマー層を形成した後、このモノマー層上に、一方の面が離型処理された別の透明な合成樹脂フィルムの離型処理面を重ね合わせ、合成樹脂フィルムを透してモノマー層に紫外線照射等の光照射を行うことにより、上記混合モノマーをラジカル重合させる方法が好適に用いられる。
ただし、ベンゾトリアゾールのような防錆剤の存在下で光重合を行った場合には、重合阻害により高い分子量を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を得ることができないことがある。従って、防錆剤の存在下で重合を行う場合には、溶液重合等の光重合以外の手段を採用することが好ましい。
なお、上記透明な合成樹脂フィルムは特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0081】
また、本発明の透明粘着テープを光重合によって製造する場合には、重合と同時に架橋構造を形成できることから、上記混合モノマーは、重合性官能基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、得られる粘着剤層の応力分散性の低下が小さく粘着性能に優れる点から、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、水添ポリブタジエンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートが好ましい。
【0082】
上記混合モノマーが上記多官能(メタ)アクリレートを含有する場合、上記多官能(メタ)アクリレートの配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー中の好ましい下限が0.02重量%、好ましい上限が5重量%である。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が0.02重量%未満であると、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の架橋が不充分となり、得られる粘着剤層は、凝集力が低下して加工性が低下することがある。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が5重量%を超えると、得られる粘着剤層は、被着体に対する粘着力及び初期接着性が低下して、信頼性が低下することがある。
上記多官能(メタ)アクリレートの配合量は、上記混合モノマー中のより好ましい下限が0.05重量%、より好ましい上限が3重量%である。
【0083】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(メルク社製、商品名「ダロキュア2959」)等のケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチル−アセトフェノン(メルク社製、商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェン(日本チバガイギー社製、商品名「イルガキュア651」)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(日本チバガイギー社製、商品名「イルガキュア184」)等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0084】
上記光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記光重合開始剤の配合量が0.01重量部未満であると、上記混合モノマーの重合が不完全となり、得られる粘着剤層は、凝集力の低下が原因となって必要な物性が得られないことがある。上記光重合開始剤の配合量が5重量部を超えると、光照射時にラジカル発生量が多くなり、得られるアクリル共重合体の数平均分子量が低下したり、粘着剤層のゲル分率が低下したりすることにより、高温高湿下で生じる粘着剤層の白化を充分に抑制することができないことがある。
上記光重合開始剤の配合量は、上記混合モノマー100重量部に対するより好ましい下限が0.03重量部、より好ましい上限が1重量部である。
【0085】
上記光照射に用いられるランプは特に限定されず、例えば、波長400nm以下に発光分布を有するランプ等が挙げられる。
上記波長400nm以下に発光分布を有するランプとして、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。なかでも、上記光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、上記モノマー層に含まれる上記光重合開始剤以外の成分の光吸収が少なく、上記モノマー層の内部にまで光が充分に到達して上記混合モノマーを効果的に重合させることができることから、ケミカルランプが好ましい。
【0086】
上記光照射における光照射強度は特に限定されず、得られるアクリル共重合体の重合度を左右する因子であることから、目的とするアルリル共重合体の重合度又は粘着剤層の性能等に合わせて、適宜調整される。
例えば、上記光重合開始剤としてアセトフェノン系光重合開始剤を用いた場合、該アセトフェノン系光重合開始剤の光分解に有効な波長領域の光照射強度は、0.1〜100mW/cm
2であることが好ましい。なお、上記アセトフェノン系光重合開始剤の光分解に有効な波長領域は、光重合開始剤によって異なるが、通常、365nm〜420nm程度である。
【0087】
本発明の透明粘着テープを用いれば、高温環境下でアウトガスを発生する被着体、例えばポリカーボネート板やアクリル板を被着体として用いた場合にでも接着界面での発泡や浮き剥がれが抑えられる。また、金属薄膜付フィルムの金属薄膜面に対して直接貼着した場合にでも金属薄膜の劣化を抑制することができる。更に、高温環境下から常温に戻した際の白化の発生も抑制することができる。
【0088】
本発明の透明粘着テープは、ポリカーボネート板と金属薄膜付フィルムの金属薄膜面とを貼り合せた積層体、アクリル板と金属薄膜付フィルムの金属薄膜面とを貼り合せた積層体、又は、2枚の金属薄膜付フィルムの金属薄膜面同士を貼り合せた積層体を、温度85℃、相対湿度85%の環境に240時間放置した後に発生する直径10μm以上の気泡の個数がいずれも0個であることが好ましい。
【0089】
本発明の透明粘着テープは、金属薄膜付フィルムの金属薄膜面に貼り合わせた後に、温度85℃、相対湿度85%の環境に240時間放置した後の金属薄膜の抵抗値が、放置前と比較して±10%以内であることが好ましい。
【0090】
本発明の透明粘着テープは、ポリカーボネート板と金属薄膜付フィルムの金属薄膜面とを貼り合せた積層体、アクリル板と金属薄膜付フィルムの金属薄膜面とを貼り合せた積層体、又は、2枚の金属薄膜付フィルムのITO面同士を貼り合せた積層体を、温度85℃、相対湿度85%の環境に240時間放置した後に取り出してから20分後のヘーズ値が、放置前と比較して±1%以内であることが好ましい。
【0091】
本発明の透明粘着テープの用途は特に限定されないが、携帯電話、携帯情報端末等の画像表示装置を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着したり、カバーパネルとディスプレイパネルモジュールとを接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするのに好適に用いることができる(
図1参照)。とりわけ、上記カバーパネルがポリカーボネート板又はアクリル板である場合に好適である。
本発明の透明粘着テープを介してカバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されたカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、本発明の透明粘着テープを介してカバーパネルとディスプレイパネルモジュールとが接着されたカバーパネル−ディスプレイパネルモジュール積層体、本発明の透明粘着テープを介して、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとが接着されたタッチパネルモジュール−ディスプレイパネルモジュール積層体もまた、本発明の1つである。
【0092】
本発明の透明粘着テープは、2枚の金属薄膜付フィルムの貼り合せにも好適に用いることができる(
図1参照)。
本発明の透明粘着テープを介して、2枚の金属薄膜付フィルムを積層してなる金属薄膜付フィルム積層体もまた、本発明の1つである。
本発明のITOフィルム積層体、本発明のカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、本発明のカバーパネル−ディスプレイパネルモジュール積層体、又は、本発明のタッチパネルモジュール−ディスプレイパネルモジュール積層体を有する画像表示装置もまた、本発明の1つである。