(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トランスファクラッチ制御手段は、前記自動ニュートラルクラッチの締結が開始され、前記変速機構側への駆動力伝達が可能になるまでに、前記トランスファクラッチを解放し、前記変速機構側への駆動力伝達が可能になった後、前記自動ニュートラルクラッチの締結が完了するまでに、前記トランスファクラッチの締結を完了させることを特徴とする請求項1に記載のパワートレインの制御装置。
前記トランスファクラッチ制御手段は、前記トランスファクラッチのトルク容量が略ゼロの状態になるまでは、応答可能な最大の傾きで前記トランスファクラッチの解放を行い、その後は、前記自動ニュートラルクラッチがトルク容量を持つまでにトランスファクラッチトルクを抜くことができる傾きの内で最も緩い傾きで、前記トランスファクラッチの解放を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のパワートレインの制御装置。
前記自動ニュートラルクラッチ制御手段は、前記自動ニュートラルクラッチの締結途中に、前記エンジンと前記自動ニュートラルクラッチとの間に配設されたトルクコンバータを構成するタービンライナの回転数が所定値以下になったときに、前記自動ニュートラルクラッチの締結圧を上昇させる傾きを緩やかにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパワートレインの制御装置。
前記トランスファクラッチ制御手段は、前記自動ニュートラルクラッチの締結途中に、前記トルクコンバータを構成するタービンライナの回転数が前記所定値以下になった後に、前記トランスファクラッチの締結を行うことを特徴とする請求項4に記載のパワートレインの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動変速機を搭載したパートタイム式AWD車に自動ニュートラル制御を適用した場合、自動ニュートラル制御からの復帰時、すなわち走行クラッチ(自動ニュートラル制御対象クラッチ)が締結される際に、ジャダーが生じることがあり、その低減が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、自動ニュートラル機能を有する自動変速機を搭載したパートタイム式AWD車のパワートレインの制御装置であって、自動ニュートラル制御から復帰する際のジャダーを抑制することが可能なパワートレインの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題点につき鋭意検討を重ねた結果、パートタイム式AWD車の場合、自動ニュートラル制御から復帰する際に、走行クラッチ(自動ニュートラル制御対象クラッチ)の締結時振動が従駆動輪側の駆動系にも伝播され、その振動がパワートレイン全体(車両全体)を揺らす結果、自動ニュートラル制御からの復帰時ジャダーが生じるとの知見を得た。
【0008】
そこで、本発明に係るパワートレインの制御装置は、自動ニュートラル機能を有する自動変速機を搭載したパートタイム式全輪駆動車のパワートレインの制御装置において、エンジンから自動変速機を構成する変速機構に伝達される駆動力を調節する自動ニュートラルクラッチと、自動変速機を構成する変速機構から従駆動輪側の駆動系に伝達される駆動力を調節するトランスファクラッチと、所定の自動ニュートラル制御条件が成立した場合に、自動ニュートラルクラッチを解放する自動ニュートラルクラッチ制御手段と、車両の運転状態に基づいて、トランスファクラッチの締結力を制御するトランスファクラッチ制御手段とを備え、トランスファクラッチ制御手段が、自動ニュートラル制御から復帰する際に、自動ニュートラルクラッチの締結が開始されてから締結が完了するまでの間に、トランスファクラッチを一旦解放した後、再締結することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るパワートレインの制御装置によれば、自動ニュートラル制御から復帰する際に、自動ニュートラルクラッチの締結動作が開始されてから締結動作が完了するまで間に、トランスファクラッチが一旦(一時的に)解放された後、再締結される。そのため、自動ニュートラル復帰時のクラッチ締結ジャダーが従駆動輪側へ伝達されることを抑制することができる。その結果、自動ニュートラル制御から復帰する際のジャダーを抑制することが可能となる。
【0010】
本発明に係るパワートレインの制御装置では、トランスファクラッチ制御手段が、自動ニュートラルクラッチの締結が開始され、変速機構側への駆動力伝達が可能になるまでに、トランスファクラッチを解放し、変速機構側への駆動力伝達が可能になった後、自動ニュートラルクラッチの締結が完了するまでに、トランスファクラッチの締結を完了させることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、自動ニュートラルクラッチが締結状態に向かい、変速機構へのトルク伝達が可能となる前に、トランスファクラッチトルクが低下される。また、自動ニュートラルクラッチが完全締結されるまでに、トランスファクラッチトルクが上昇される。よって、自動ニュートラル復帰時のクラッチ締結ジャダーが従駆動輪側へ伝達されることを確実に抑制しつつ、AWD性能を損なわずに車両を発進させることが可能となる。
【0012】
本発明に係るパワートレインの制御装置では、トランスファクラッチ制御手段が、トランスファクラッチのトルク容量が略ゼロの状態になるまでは、応答可能な最大の傾きでトランスファクラッチの解放を行い、その後は、自動ニュートラルクラッチがトルク容量を持つまでにトランスファクラッチトルクを抜くことができる傾きの内で最も緩い傾きで、トランスファクラッチの解放を行うことが好ましい。
【0013】
このようにすれば、自動ニュートラルクラッチがトルク容量を持つまでに、トランスファクラッチの締結を、迅速かつ円滑に解除することができる。
【0014】
本発明に係るパワートレインの制御装置では、自動ニュートラルクラッチ制御手段が、自動ニュートラルクラッチの締結途中に、エンジンと自動ニュートラルクラッチとの間に配設されたトルクコンバータを構成するタービンライナの回転数が所定値以下になった場合に、自動ニュートラルクラッチの締結圧を上昇させる傾きを緩やかにすることが好ましい。
【0015】
この場合、トルクコンバータのタービン回転数が所定値以下になった場合に、自動ニュートラルクラッチの締結圧を上昇させる傾き(上昇角度)が緩やかな傾きに変更される。よって、変速機構側へのトルク伝達が可能となるまでは、比較的急な傾きで早く自動ニュートラルクラッチの締結圧を上昇させるとともに、変速機構側へのトルク伝達が可能となった後は、締結圧を上昇させる傾きを緩やかにすることにより、自動ニュートラルクラッチの締結ショックを緩和することができる。
【0016】
本発明に係るパワートレインの制御装置では、トランスファクラッチ制御手段が、自動ニュートラルクラッチの締結途中に、トルクコンバータを構成するタービンライナの回転数が所定値以下になった後に、トランスファクラッチの締結を行うことが好ましい。
【0017】
この場合、トルクコンバータのタービン回転数が所定値以下になった後にトランスファクラッチの締結が行われる。そのため、タービン回転数の低下状態に基づいて従駆動輪へのトルク伝達が可能となるタイミングを判断することにより、適切にトランスファクラッチの締結動作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動ニュートラル機能を有する自動変速機を搭載したパートタイム式AWD車(全輪駆動車)において、自動ニュートラル制御から復帰する際のジャダーを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るパワートレインの制御装置1の構成について説明する。
図1は、パワートレインの制御装置1が搭載されたAWD(All Wheel Drive:全輪駆動)車4のパワートレイン及び駆動力伝達系の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るAWD車4は、自動ニュートラル機能を有する無段変速機(CVT)30を搭載したパートタイム式AWD車である。特に、AWD車4は、FF(Front engine Front drive)ベースのパートタイム式AWD車である。
【0022】
エンジン20は、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。エンジン20の出力軸(クランクシャフト)21には、クラッチ機能とトルク増幅機能を持つトルクコンバータ22を介して、エンジン20からの駆動力を変換して出力する無段変速機(特許請求の範囲に記載の自動変速機に相当)30が接続されている。
【0023】
トルクコンバータ22は、主として、ポンプインペラ23、タービンライナ24、及びステータ25から構成されている。出力軸21に接続されたポンプインペラ23がオイルの流れを生み出し、ポンプインペラ23に対向して配置されたタービンライナ24がオイルを介してエンジン20の動力を受けて出力軸を駆動する。両者の間に位置するステータ25は、タービンライナ24からの排出流(戻り)を整流し、ポンプインペラ23に還元することでトルク増幅作用を発生させる。また、トルクコンバータ22は、入力と出力とを直結状態にするロックアップクラッチ26を有している。トルクコンバータ22は、非ロックアップ状態のときはエンジン20の駆動力をトルク増幅して無段変速機30に伝達し、ロックアップ時はエンジン20の駆動力を無段変速機30に直接伝達する。なお、トルクコンバータ22を構成するタービンライナ24の回転数(タービン回転数)は、タービン回転数センサ27により検出される。検出されたタービン回転数は、後述するTCU70に出力される。
【0024】
無段変速機30は、車両の運転状態に応じて変速比を自動的かつ無段階に変速する。無段変速機30は、トルクコンバータ22の出力軸に接続され、トルクコンバータ22から無段変速機30に伝達される駆動力を調節して無段変速機30をニュートラル状態にし得る入力クラッチ31(特許請求の範囲に記載の自動ニュートラルクラッチに相当)を有し、この入力クラッチ31の出力軸(プライマリ軸)32に変速機構33が設けられている。
【0025】
入力クラッチ31では、供給される油圧に応じて締結力が調節され、無段変速機30(変速機構33)に伝達される駆動力が調節される。すなわち、供給油圧の押圧力がクラッチスプリングの付勢力よりも大きくなると、入力クラッチ31が締結され、逆に、供給油圧の押圧力がクラッチスプリングの付勢力よりも小さくなると入力クラッチ31が解放される。入力クラッチ31が締結されると、トルクコンバータ22の駆動力が変速機構33に伝達される。また、入力クラッチ31が解放されると、トルクコンバータ22の駆動力の伝達が遮断される。入力クラッチ31は、セレクトレバーがD(Drive)レンジにセットされている状態で、所定の運転条件が満足された場合に、トルクコンバータ22から変速機構33へ伝達される駆動力を制限して(半クラッチ状態にして)、擬似的なニュートラル状態を作り出す。
【0026】
変速機構33は、入力クラッチ31と接続されるプライマリ軸32と、該プライマリ軸32と平行に配設されたセカンダリ軸37とを有している。プライマリ軸32には、プライマリプーリ34が設けられている。プライマリプーリ34は、プライマリ軸32に接合された固定プーリ34aと、該固定プーリ34aに対向して、プライマリ軸32の軸方向に摺動自在に装着された可動プーリ34bとを有し、それぞれのプーリ34a,34bのコーン面間隔、すなわちプーリ溝幅を変更できるように構成されている。一方、セカンダリ軸37には、セカンダリプーリ35が設けられている。セカンダリプーリ35は、セカンダリ軸37に接合された固定プーリ35aと、該固定プーリ35aに対向して、セカンダリ軸37の軸方向に摺動自在に装着された可動プーリ35bとを有し、プーリ溝幅を変更できるように構成されている。
【0027】
プライマリプーリ34とセカンダリプーリ35との間には駆動力を伝達するチェーン36が掛け渡されている。プライマリプーリ34及びセカンダリプーリ35の溝幅を変化させて、各プーリ34,35に対するチェーン36の巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることにより、変速比が無段階に変更される。
【0028】
ここでプライマリプーリ34(可動プーリ34b)には油圧室34cが形成されている。一方、セカンダリプーリ35(可動プーリ35b)には油圧室35cが形成されている。プライマリプーリ34、セカンダリプーリ35それぞれの溝幅は、プライマリプーリ34の油圧室34cに導入されるプライマリ油圧と、セカンダリプーリ35の油圧室35cに導入されるセカンダリ油圧とを調節することにより設定・変更される。
【0029】
変速機構33のセカンダリ軸37は、一対のギヤ(リダクションドライブギヤ、リダクションドリブンギヤ)からなるリダクションギヤ38を介して、カウンタ軸39につながれており、変速機構33で変換された駆動力は、リダクションギヤ38を介して、カウンタ軸39に伝達される。カウンタ軸39は、一対のギヤ(カウンタドライブギヤ、カウンタドリブンギヤ)からなるカウンタギヤ40を介して、フロントドライブシャフト43につながれている。カウンタ軸39に伝達された駆動力は、カウンタギヤ40、及び、フロントドライブシャフト43を介してフロントディファレンシャル(以下「フロントデフ」ともいう)44に伝達される。フロントデフ44は、例えば、ベベルギヤ式の差動装置である。フロントデフ44からの駆動力は、左前輪ドライブシャフト45Lを介して左前輪10FLに伝達されるとともに、右前輪ドライブシャフト45Rを介して右前輪10FRに伝達される。
【0030】
一方、上述したカウンタ軸39上のカウンタギヤ40(カウンタドライブギヤ)の後段には、リヤディファレンシャル50に伝達される駆動力を調節するトランスファクラッチ41が介装されている。トランスファクラッチ41は、4輪の駆動状態(例えば前輪10FL,10FRのスリップ状態等)やエンジントルクなどに応じて締結力(すなわち後輪10RL,10RR(特許請求の範囲の従駆動輪に相当)へのトルク分配率)が制御される。よって、カウンタ軸39に伝達された駆動力は、トランスファクラッチ41の締結力に応じて分配され、後輪10RL,10RR側にも伝達される。
【0031】
より具体的には、カウンタ軸39の後端は、一対のギヤ(トランスファドライブギヤ、トランスファドリブンギヤ)からなるトランスファギヤ42を介して、車両後方へ延在するプロペラシャフト46とつながれている。よって、カウンタ軸39に伝達され、トランスファクラッチ41によって調節(分配)された駆動力は、トランスファギヤ42(トランスファドリブンギヤ)から、プロペラシャフト46を介してリヤディファレンシャル50に伝達される。
【0032】
リヤディファレンシャル50には左後輪ドライブシャフト51L及び右後輪ドライブシャフト51Rが接続されている。リヤデフ50からの駆動力は、左後輪ドライブシャフト51Lを介して左後輪10RLに伝達されるとともに、右後輪ドライブシャフト51Rを介して右後輪10RRに伝達される。
【0033】
上述したようにパワートレインの駆動力伝達系が構成されることにより、例えば、セレクトレバーがDレンジに操作された場合には、入力クラッチ31が係合され、エンジン駆動力が無段変速機30のプライマリ軸32に入力される。無段変速機30により変換された駆動力は、セカンダリ軸37から出力され、リダクションギヤ38、カウンタ軸39、カウンタギヤ40を介してフロントドライブシャフト43に伝達される。そして、フロントディファレンシャル44によって駆動力が左右に分配され、左右の前輪10FL,10FRに伝達される。したがって、左右の前輪10FL,10FRは、車両4が走行状態にあるときには、常に駆動される。
【0034】
一方、カウンタ軸39に伝達された駆動力の一部は、トランスファクラッチ41、及びトランスファギヤ42を介してプロペラシャフト46に伝達される。ここで、トランスファクラッチ41に所定のクラッチトルクが付与されると、そのクラッチトルクに応じて分配された駆動力がプロペラシャフト46に出力される。そして、リヤディファレンシャル50を介して駆動力が後輪10RL,10RRにも伝達される。これにより、AWD車4では、FFベースのパートタイム式AWD車としての機能が発揮される。
【0035】
無段変速機30を変速させるための油圧、すなわち、上述したプライマリ油圧及びセカンダリ油圧は、バルブボディ(コントロールバルブ)60によってコントロールされる。バルブボディ60は、スプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いてバルブボディ60内に形成された油路を開閉することで、オイルポンプから吐出された油圧を調整して、プライマリプーリ34の油圧室34c及びセカンダリプーリ35の油圧室35cに供給する。同様に、バルブボディ60は、スプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブを用いてバルブボディ60内に形成された油路を開閉することで、オイルポンプから吐出された油圧を調整して、入力クラッチ31、及びトランスファクラッチ41に各クラッチを締結/解放するための油圧を供給する。
【0036】
無段変速機30の変速制御は、トランスミッション制御装置(以下「TCU」ともいう)70によって実行される。すなわち、TCU70は、上述したバルブボディ60を構成するソレノイドバルブ(電磁弁)の駆動を制御することにより、プライマリプーリ34の油圧室34c及びセカンダリプーリ35の油圧室35cに供給する油圧を調節して、無段変速機30の変速比を変更する。同様に、TCU70は、上述したバルブボディ60を構成するソレノイドバルブの駆動を制御することにより、入力クラッチ31及びトランスファクラッチ41に供給する油圧を調節して、入力クラッチ31の締結力、及び後輪10RL,10RRへ伝達される駆動力の分配比率を調節する。さらに、TCU70は、自動ニュートラル制御からの復帰時に、入力クラッチ31とトランスファクラッチ41とを協調制御することにより、自動ニュートラル制御の復帰時ジャダーの抑制を図る。
【0037】
ここで、TCU70は、CAN(Controller Area Network)90を通して、エンジンを総合的に制御するエンジン制御装置(以下「ECU」という)80に接続されている。TCU70は、CAN90を介して、ECU80から送信されるエンジン回転数、アクセルペダル開度、エンジントルク、及び車速等の情報を受信する。また、TCU70は、CAN90を介して、ブレーキペダルの踏み込み状態(ブレーキスイッチの状態)や操舵角等の情報も受信する。
【0038】
一方、TCU70には、無段変速機30の出力軸(セカンダリ軸37)近傍に取り付けられ、該出力軸の回転数を検出する出力軸回転センサ(車速センサ)91、及びプライマリプーリ34の回転数を検出するプライマリプーリ回転センサ92が接続されている。また、TCU70には、シフトレバーの選択位置を検出するレンジスイッチ93が接続されている。さらに、TCU70には、車輪10FL,10FR,10RL,10RRそれぞれの回転状態を検出する4つの車輪速センサ94なども接続されている。
【0039】
TCU70は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムや変速マップ等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。
【0040】
TCU70は、変速マップに従い、車両の運転状態(例えばアクセルペダル開度、車速、あるいはエンジン回転数)に応じて自動で変速比を無段階に変速する。なお、変速マップはTCU70内のROMに格納されている。
【0041】
また、TCU70は、上述した各種センサ等から取得した各種情報に基づいて、自動ニュートラル制御、及びトランスファクラッチ制御(AWD制御)を実行する。さらに、TCU70は、自動ニュートラル制御から復帰する際のジャダーを抑制するようにトランスファクラッチ41の油圧を制御する機能を有している。そのため、TCU70は、入力クラッチ制御部71、及びトランスファクラッチ制御部72を機能的に有している。TCU70では、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、入力クラッチ制御部71、及びトランスファクラッチ制御部72の各機能が実現される。
【0042】
入力クラッチ制御部71は、所定の自動ニュートラル制御条件が成立した場合に、入力クラッチ31を解放する。すなわち、入力クラッチ制御部71は、特許請求の範囲に記載の自動ニュートラルクラッチ制御手段として機能する。より具体的には、入力クラッチ制御部71は、ブレーキスイッチがONであり(ブレーキペダルが踏み込まれており)、アクセル開度がアクセル開度判定しきい値未満であり(アクセルペダルが解放されており)、車速が停車判定しきい値未満であり(停車しており)、かつ、セレクトレバーが走行レンジ(Pレンジ、Nレンジ以外)にセットされている場合に、エンジン回転数Neとタービン回転速度Ntの差分から差回転速度Netを算出し、該差回転速度Netが目標差回転速度Ntgに収束するように入力クラッチ31を制御する。すなわち、入力クラッチ31を半係合状態(半クラッチ状態)にする。
【0043】
一方、上述した自動ニュートラル制御条件のうち、いずれか1つ以上の条件が満足されなかった場合には、入力クラッチ制御部71は、自動ニュートラル制御(入力クラッチ31の解放)を停止する。なお、入力クラッチ制御部71は、解放していた入力クラッチ31を締結する際、すなわち入力クラッチ31の締結途中(締結圧増大中)において、トルクコンバータ22を構成するタービンライナ24の回転数が所定値よりも高いときには、比較的急な傾きで入力クラッチ31の締結圧を上昇させ、タービンライナ24の回転数が上記所定値以下になったときには、入力クラッチ31の締結圧を上昇させる傾き(上昇角度)をより緩やかな傾きに変更する。これは、最終的な締結ショックを緩和することを目的とするものである。
【0044】
トランスファクラッチ制御部72は、AWD車4の運転状態(例えば、4輪の駆動状態やエンジントルク等)に基づいて、トランスファクラッチ41の締結力(すなわち後輪10RL,10RRへの駆動力分配率)をリアルタイムに制御する。すなわち、トランスファクラッチ制御部72は、特許請求の範囲に記載のトランスファクラッチ制御手段として機能する。
【0045】
特に、トランスファクラッチ制御部72は、自動ニュートラル制御から復帰する際に、入力クラッチ31の締結動作が開始されてから締結動作が完了するまで間に、トランスファクラッチ41を一旦(一時的に)解放した後、再締結する。
【0046】
より具体的には、トランスファクラッチ制御部72は、入力クラッチ31の締結動作が開始され、入力クラッチ31による変速機構33へのトルク伝達が可能になるまでに、トランスファクラッチ41を解放し、変速機構33へのトルク伝達が可能になった後、入力クラッチ31の締結が完了するまでに(すなわち伝達トルク容量≒クラッチトルク容量となるまでに)、トランスファクラッチ41の締結を完了させる(すなわちトランスファクラッチトルクを機能上必要な量まで上昇させる)。
【0047】
その際に、トランスファクラッチ制御部72は、トランスファクラッチ41のトルク容量が略ゼロ、かつピストンストロークが略ゼロの状態になるまでは、油圧応答の限界の傾き(応答可能な最大の傾き)でトランスファクラッチ41の解放を行い、その後は、入力クラッチ31がトルク容量を持つまでにトランスファクラッチトルクを抜くことができる傾きの内で最も緩い傾きで、トランスファクラッチ41の解放を行う。
【0048】
また、トランスファクラッチ制御部72は、入力クラッチ31の締結途中(締結圧増大中)に、トルクコンバータ22を構成するタービンライナ24の回転数が所定値以下になった後に、トランスファクラッチ41の締結を行う。
【0049】
次に、
図2を参照しつつ、パワートレインの制御装置1の動作について説明する。
図2は、パワートレインの制御装置1による自動ニュートラル制御の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、TCU70において、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0050】
ステップS100では、自動ニュートラル制御中であるか否かについての判断が行われる。ここで、自動ニュートラル制御中である場合には、ステップS104に処理が移行する。一方、自動ニュートラル制御中でないときには、ステップS102に処理が移行する。ステップS102では、トランスファクラッチトルクとして、AWD車4の運転状態に基づいて定められる必要値(Nm)が設定される(後述する
図3の時刻t0〜t1、時刻t7〜参照)。その後、本処理から一旦抜ける。
【0051】
自動ニュートラル制御中の場合、ステップS104では、入力クラッチ31の解放が開始されたか否かについての判断が行われる。ここで、入力クラッチ31の解放が開始されていない場合には、ステップS108に処理が移行する。一方、入力クラッチ31の解放が開始されたときには、ステップS106に処理が移行する。ステップS106では、トランスファクラッチトルクとして、前回値が保持(設定)される(後述する
図3の時刻t1〜t2参照)。その後、本処理から一旦抜ける。
【0052】
入力クラッチ31の解放が開始されていない場合、ステップS108では、入力クラッチ31の締結が開始されたか否かについての判断が行われる。ここで、入力クラッチ31の締結が開始されていない場合には、ステップS106において、トランスファクラッチトルクとして、前回値が保持(設定)された後、本処理から一旦抜ける(後述する
図3の時刻t2〜t3参照)。一方、入力クラッチ31の解放が開始されたときには、ステップS110に処理が移行する。
【0053】
ステップS110では、トルクコンバータ22のタービン回転数に基づいて、締結第1段階であるか否か(タービン回転数が所定値以上か否か)についての判断が行われる。ここで、締結第1段階である場合(タービン回転数が所定値以上の場合)には、ステップS112に処理が移行する。一方、締結第1段階でないとき(タービン回転数が所定値未満のとき)には、ステップS114に処理が移行する。
【0054】
ステップS112では、トランスファクラッチトルクとして略ゼロ(Nm)が設定される。すなわち、トランスファクラッチ41が解放される(後述する
図3の時刻t3〜t4参照)。その後、本処理から一旦抜ける。
【0055】
一方、ステップS114では、締結第2段階であるか否か(タービン回転数が所定値未満になった後所定時間経過したか否か)についての判断が行われる。ここで、締結第2段階でないとき(タービン回転数が所定値未満になった後所定時間経過していないとき)には、ステップS106において、トランスファクラッチトルクとして、前回値が保持(設定)された後、本処理から一旦抜ける(後述する
図3の時刻t4〜t5参照)。
【0056】
一方、締結第2段階である場合(タービン回転数が所定値未満になった後所定時間経過した場合)には、ステップS102に処理が移行する。ステップS102では、トランスファクラッチトルクとして、AWD車4の運転状態に基づいて定められる必要値(Nm)が設定される(後述する
図3の時刻t5〜t6参照)。すなわち、トランスファクラッチ41の再締結が行われる。その後、本処理から一旦抜ける。このようにして、自動ニュートラル制御から復帰する際に、入力クラッチ31の締結動作が開始されてから完了するまで間に、トランスファクラッチ41が一旦解放された後、再締結される。
【0057】
上述したフローチャートに従って処理が実行されたときの入力クラッチ制御圧、及びトランスファクラッチトルク等の変化(タイミングチャート)を
図3に示す。ここで、
図3では、横軸を時刻とし、上段から順に、自動ニュートラル制御実行中フラグ、自動ニュートラル制御要求(判定)フラグ、タービン回転速度、入力クラッチ制御圧、トランスファクラッチトルクが示されている。
【0058】
まず、時刻t0〜t1の間は、自動ニュートラル要求(判定)フラグ、及び自動ニュートラル制御実行中フラグがOFFの状態である。よって、時刻t0〜t1では、自動ニュートラル制御は通常制御状態にあり、入力クラッチ31が締結状態にされている。また、トランスファクラッチ41も締結状態(運転状態に応じた必要クラッチトルク)にされている。
【0059】
そして、時刻t1において、所定の自動ニュートラル制御条件が満足され、自動ニュートラル要求(判定)フラグがOFFからONに変化し、自動ニュートラル制御実行中フラグがOFFからONに変化すると、自動ニュートラル制御が開始(すなわち入力クラッチ31の解放動作が開始)される。よって、時刻t1〜t2の間で、入力クラッチ31の解放制御が実行されることにより、入力クラッチ31の制御圧が低下され、入力クラッチ31が解放される。ここで、入力クラッチ31の解放(制御圧の低下)に伴い、トルクコンバータ22のタービン回転速度が上昇する。なお、トランスファクラッチ41は締結状態(必要クラッチトルク)に保持される。
【0060】
続く時刻t2〜t3の区間では、自動ニュートラル制御が定常制御状態(タービン回転に基づいたフィードバック制御状態)にされる。すなわち、エンジン回転数Neとタービン回転速度Ntとの差回転速度Netが目標差回転速度Ntgに収束するように入力クラッチ31の油圧が制御される。その結果、入力クラッチ31が半係合状態(半クラッチ状態)に制御される。なお、トランスファクラッチ41は締結状態(必要クラッチトルク)に保持される。
【0061】
次に、時刻t3において、所定の自動ニュートラル制御条件が満足されなくなり、自動ニュートラル要求(判定)フラグがONからOFFに変化すると、時刻t3〜t4〜t5〜t6,t7において、入力クラッチ31の締結制御が実行される。ここでは、まず、タービン回転数が所定のしきい値未満に低下するまでの間(時刻t3〜t4:第1段階)において、入力クラッチ31の締結動作が開始される。一方、入力クラッチ31による変速機構33側へのトルク伝達が可能になるまでに、トランスファクラッチ41が解放される。より詳細には、トランスファクラッチ41のトルク容量が略ゼロ、かつピストンストロークが略ゼロの状態になるまでは、油圧応答の限界の傾き(応答可能な最大の傾き)でトランスファクラッチ41の解放が行われ、その後は、入力クラッチ31がトルク容量を持つまでにトランスファクラッチトルクを抜くことができる傾きの内で最も緩い傾きで、トランスファクラッチ41の解放が行われる。
【0062】
次に、トルクコンバータ22のタービン回転数が所定のしきい値未満に低下した後(時刻t4〜t5〜t6:第2段階)は、入力クラッチ31の締結圧(油圧)を上昇させる傾き(上昇角度)が、上述した第1段階よりも緩やかな傾きに変更され、当該緩やかな傾きで入力クラッチ31の制御圧が上昇される。一方、タービン回転数が所定値以下になった場合、所定のディレイ時間(時刻t4〜t5)が経過した後に、トランスファクラッチ41の締結が行われる。すなわち、後輪10RL,10RR側へのトルク伝達が可能になった後、入力クラッチ31の締結が完了するまでに、トランスファクラッチ41の締結が完了される。
【0063】
そして、時刻t7において、自動ニュートラル制御実行中フラグがOFFになると、入力クラッチ31の制御状態が通常制御に戻される。また、トランスファクラッチ41も締結状態(必要クラッチトルク)に制御される。
【0064】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、自動ニュートラル制御から復帰する際に、入力クラッチ31の締結動作が開始されてから締結動作が完了するまで間に、トランスファクラッチ41が一旦(一時的に)解放された後、再締結される。そのため、自動ニュートラル復帰時のクラッチ締結ジャダーが後輪10RL,10RR側へ伝達されることを抑制することができる。その結果、自動ニュートラル制御から復帰する際のジャダーを抑制することが可能となる。
【0065】
本実施形態によれば、入力クラッチ31の締結動作が開始され、変速機構33側への駆動力伝達が可能になるまでに、トランスファクラッチ41が解放され、後輪10RL,10RR側への駆動力伝達が可能になった後、入力クラッチ31の締結が完了するまでに、トランスファクラッチ41の締結が完了される。そのため、入力クラッチ31が締結状態に向かい、変速機構33へのトルク伝達が可能となる前に、トランスファクラッチトルクが低下される。また、入力クラッチ31が完全締結されるまでに、トランスファクラッチトルクが上昇される。よって、自動ニュートラル復帰時のクラッチ締結ジャダーが後輪10RL,10RR側へ伝達されることを確実に抑制しつつ、AWD性能を損なわずに車両4を発進させることができる。
【0066】
本実施形態によれば、トランスファクラッチ41のトルク容量が略ゼロ、かつピストンストロークが略ゼロの状態になるまでは、油圧応答の限界の傾き(応答可能な最大の傾き)でトランスファクラッチ41の解放が行われ、その後は、入力クラッチ31がトルク容量を持つまでにトランスファクラッチトルクを抜くことができる傾きの内で最も緩い傾きで、トランスファクラッチ41の解放が行われる。そのため、入力クラッチ31がトルク容量を持つまでに、トランスファクラッチ41の締結を、迅速かつ円滑に解除することができる。
【0067】
本実施形態によれば、トルクコンバータ22のタービン回転数が所定値以下になった場合に、入力クラッチ31の締結圧を上昇させる傾き(上昇角度)が緩やかな傾きに変更される。よって、後輪10RL,10RRへのトルク伝達が可能となるまでは、比較的急な傾きで早く入力クラッチ31の締結圧を上昇させるとともに、後輪10RL,10RRへのトルク伝達が可能となった後は、締結圧を上昇させる傾きを緩やかにすることにより、入力クラッチ31の締結ショックを緩和することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、トルクコンバータ22のタービン回転数が所定値以下になった後に、トランスファクラッチ41の締結が行われる。そのため、タービン回転数の低下状態に基づいて後輪10RL,10RRへのトルク伝達が可能となるタイミングを判断することにより、適切にトランスファクラッチ41の締結動作を行うことができる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をチェーン式の無段変速機(CVT)に適用したが、チェーン式の無段変速機に代えて、例えば、ベルト式の無段変速機や、トロイダル式の無段変速機等にも適用することができる。また、無段変速機に代えて、有段自動変速機(AT)にも適用することができる。
【0070】
上記実施形態では、入力クラッチ31をトルクコンバータ22とプライマリプーリ34の間に配置しているが、入力クラッチ31の位置はこれに限定されるものではなく、エンジン20と駆動輪との間の動力伝達経路上に配置すれば良く、他の機構に対する前後の位置関係が問われるものではない。また、自動ニュートラル対象クラッチとして入力クラッチ31を用いたが、擬似ニュートラル状態を作ることができれば、入力クラッチ31に限られることなく、他のクラッチ等を用いてもよい。さらに、上記実施形態では、トランスファクラッチ41として油圧式のものを用いたが、電磁ソレノイド式のクラッチを用いてもよい。
【0071】
また、上述した駆動力伝達系の構成(例えばギヤや軸等の配置等)は一例であり、上記実施形態には限られない。
【0072】
さらに、上記実施形態では、トランスファクラッチ41の制御をTCU70によって行ったが、TCU70から独立した専用のAWDコントローラによって制御する構成としてもよい。