(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5842006
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】補強土構造物
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20151217BHJP
【FI】
E02D17/18 A
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-529668(P2013-529668)
(86)(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公表番号】特表2013-540922(P2013-540922A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011066645
(87)【国際公開番号】WO2012038549
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】10306034.9
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509250087
【氏名又は名称】テール アルメ アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フライターグ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】モリゾー,ジャン−クロード
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−158087(JP,A)
【文献】
特開2003−003474(JP,A)
【文献】
特表2007−508474(JP,A)
【文献】
米国特許第04343571(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛り土(1)を含む補強土構造物であって、
当該補強土構造物の前面に沿って配置された外装(3)と、
前記外装に接合されている少なくとも1つの主補強部材(2、9、26)と、
前記外装から離れている少なくとも1つの副補強部材(6)と、を備え、
前記少なくとも1つの主補強部材(2、9、26)は、前記前面の裏に位置する前記盛り土の第1補強ゾーン(Z1)を通って延びており、
前記少なくとも1つの副補強部材(6)は、前記第1補強ゾーン(Z1)との共通部分(Ζ’)を有する前記盛り土の第2補強ゾーン(Z2)の中を延びており、
前記副補強部材(6)は、前記前面に対して、前記盛り土(1)の中を前記主補強部材(2、9、26)よりも実質的に短い距離まで延びており、
前記副補強部材(6)の剛性は、前記主補強部材(2、9、26)の剛性以上である、ことを特徴とする補強土構造物。
【請求項2】
前記主補強部材は、合成帯板、金属帯板、金属棒、帯板状の金属格子、シート状の金属格子、はしご状の金属格子、合成帯板、シート状の合成格子、はしご状の合成格子、ジオテキスタイル層およびジオセルからなるリストの中から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の補強土構造物。
【請求項3】
前記副補強部材は、合成帯板、金属帯板、金属棒、シート状の金属格子、はしご状の金属格子、合成帯板、シート状の合成格子、はしご状の合成格子、ジオセルおよびジオテキスタイル層からなるリストの中から選択されたものである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の補強土構造物。
【請求項4】
前記外装(3)が、前記主補強部材(2、9、26)が部分的に埋め込まれている複数のプレハブエレメント(4、14、24)を備える、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の補強土構造物。
【請求項5】
前記プレハブエレメント(4、14、24)はコンクリート製であり、
前記主補強部材(2、9、26)は可撓性を有する合成補強部材を含み、
前記合成補強部材の少なくとも一部が、前記複数のプレハブエレメント(4、14、24)のうち1つのプレハブエレメントのコンクリートに打設されている、ことを特徴とする請求項4に記載の補強土構造物。
【請求項6】
前記合成補強部材(26)の打設部分は、前記合成補強部材が前記盛り土(1)の前記第1補強ゾーン(Z1)に突き出る2つの部分を有するような態様で、前記複数のプレハブエレメント(4、14、24)のうちの1つのプレハブエレメントの中でループを成している、ことを特徴とする請求項5に記載の補強土構造物。
【請求項7】
前記ループは、前記合成補強部材の前記2つの部分が垂直方向にオフセットされた位置で前記外装から出て前記盛り土(1)へ入るような態様で、前記複数のプレハブエレメントのうちの1つのプレハブエレメント(14)の中に配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載の補強土構造物。
【請求項8】
前記ループは、前記合成補強部材の前記2つの部分(26A、26B)が、略同一水平面内において異なる角度で前記外装から出て前記盛り土(1)へ入るような態様で、前記複数のプレハブエレメントのうちの1つのプレハブエレメント(24)の中に配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載の補強土構造物。
【請求項9】
前記外装は主補強部材として土壌補強部材(56)が接合されるワイヤーメッシュパネル(54)を含んでいる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の補強土構造物。
【請求項10】
前記副補強部材(6)は前記第2補強ゾーン(Z2)においてジグザグ経路に沿って配置されている、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の補強土構造物。
【請求項11】
補強土構造物を構築するための方法であって、
盛り土をする容積(a volume to be filled)を区切る前記補強土構造物の前面に沿って外装(3)を配置する第1配置工程と、
前記容積の第1補強ゾーン(Z1)に、前記外装に接合され、前記第1補強ゾーン(Z1)を通って延びる主補強部材(2、9、26)を少なくとも1つ配置する第2配置工程と、
前記第1補強ゾーンとの共通部分(Ζ’)を有する、前記容積の第2補強ゾーン(Z2)に、前記主補強部材(2、9、26)以上の剛性を有する副補強部材(6)であって前記外装に永久的には接合されない副補強部材(6)を少なくとも1つ配置する第3配置工程と、
前記容積に盛り土材料を投入し、前記盛り土材料を締固める工程と、を含み、
前記第3配置工程にて、前記副補強部材(6)を、前記前面に対して、主補強部材(2、9、26)よりも実質的に短い距離まで設置する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1補強ゾーン(Z1)における複数の主補強部材(2、9、26)の最適な構成および密度と、前記第2補強ゾーン(Z2)における複数の副補強部材(6)の最適な構成および密度とをそれぞれ独立して決定する工程をさらに含んでいる、ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記盛り土材料を投入して締固める工程で壊れるように設計された仮連結装置によって、少なくとも一部の前記副補強部材(6)を前記外装(3)に接合する工程をさらに含んでいる、ことを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強土構造物の構築に関するものである。この建造技術は、一般に、擁壁、橋台などの建造物を生産するのに用いられる。
【背景技術】
【0002】
補強土構造物は、締固め盛り土、外装、および通常外装に接合される補強物を組み合わせたものである。
【0003】
金属(例えば、亜鉛メッキ鋼)、化学合成物(例えば、ポリエステル繊維に基づいたもの)などさまざまな種類の補強物を用いることができる。これらの補強物は、当該構造物にかかる可能性のある応力、すなわち、土と補強物との間の摩擦により反応される土壌の推力によって決まる密度で地中に配置される。
【0004】
外装は、通常、プレハブコンクリートエレメントからなり、パネルまたはブロックの形をとり、構造物の前面を覆うように並置される。
【0005】
この前面には、当該構造物に一つまたは複数の段丘を組み込む場合、外装のさまざまな高さの間に水平段差があってもよい。ある特定の構造物では、外装は、コンクリートや特殊セメントを流し込むことによって現場で建ててもよい。
【0006】
盛り土の中に配置された補強物は、さまざまな形態をとり得る機械的接合部材によって外装に固定されている。いったん構造物が完成すれば、盛り土の中に配置された補強物は、数トンにも及ぶことがある高荷重を伝達することになる。したがって、外装への補強物の接合部は、全体の結合力を維持するために、堅牢である必要がある。
【0007】
補強物間のこれらの接合部は、土壌が不等沈下を起こした場合や地震が発生した場合、補強物が耐えることのできる最大荷重を超過する危険を伴う。さらに、接合部材は劣化の危険性がある。補強物は、多くの場合、盛り土に存在するもしくは盛り土に浸透した水分や化学物質による腐食に敏感である。この欠点により、多くの場合は、金属製の接合部材を用いることを避けることになる。接合部材には、劣化しにくくなるように樹脂や複合材料に基づいているものもある。しかしながら、そうすると接合部材のコストが高くなり、金属部品に頼らずに接合部材に良好な機械的特性を付与するのは困難である。例えば、補強物が可撓性を有する帯板の形をとり、外装に固定された棒の裏でループを形成することによって連結する場合(特許文献1、特許文献2)、このような棒には、曲げ応力がかかるため、合成材料の場合は望ましくない。
【0008】
建設によって、プレハブ外装エレメントは、それぞれ、盛り土の補強物との接合位置を所定数有することになる。これにより、特に、補強物を配置することができる密度という点において、構造物の全体的な設計が制約を受ける。例えば、プレハブエレメントがそれぞれ4つの連結点を有する場合、設計者は、その分だけ、あるいはそれより少ない回数、そこで補強物を接合する想定をする必要がある。なお、この回数は、常に整数である。構造工学上考慮すべき事項として、例えば、プレハブエレメントごとに2.5組の主補強物が求められる場合、相当余分に補強物を設ける必要があり、コストに大きな影響を与える。一般的に、最適化に必要となる補強密度は盛り土中の場所によって異なり得るため、これらの考慮すべき事項により、構造の設計が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4343571号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1114896号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題の影響を低減することができる、外装と盛り土の中に配置された補強物との間の接合の新規な方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、盛り土と、補強土構造物の前面に沿って配置された外装と、前記外装に接合され、前記前面の裏に位置する前記盛り土の第1補強ゾーンを通って延びている少なくとも1つの主補強部材と、前記外装から離れており、前記第1補強ゾーンとの共通部分を有する前記盛り土の第2補強ゾーンの中を延びている少なくとも1つの副補強部材とを備えており、前記副補強部材が、前記前面に対して、前記盛り土の中を前記主補強部材よりも実質的に短い距離まで延びており、前記副補強部材が、前記主補強部材以上の剛性を有している、ことを特徴とする補強土構造物を提案する。
【0012】
この補強土構造物には大きな利点がある。
【0013】
特に、主補強部材と副補強部材は、盛り土材料による荷重が主補強部材と副補強部材との間で伝達されるように構成されている。したがって、補強土構造物は、少々の土壌移動が発生しても良好な保全性を保つことができる。
【0014】
さらに、第2の補強ゾーン(Z2)における補強土構造物の剛性が高いので、主補強物における外装との接合部にかかる応力が緩和する。
【0015】
都合のいいことに、外装に接合される主補強部材の数を増やすことを必要とせずに、補強土構造物が支えることが可能な荷重を大きくできるため、大きな経済的利益が得られる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明に係る補強土構造物は、以下の特徴を単独または組み合わせて備えてもよい。
−前記主補強部材は、合成帯板、金属帯板、金属棒、帯板状の金属格子、シート状の金属格子、はしご状の金属格子、合成帯板、シート状の合成格子、はしご状の合成格子、ジオテキスタイル層およびジオセルからなるリストの中から選択される。
−前記副補強部材は、合成帯板、金属帯板、金属棒、シート状の金属格子、はしご状の金属格子、合成帯板、シート状の合成格子、はしご状の合成格子、ジオセルおよびジオテキスタイル層からなるリストの中から選択される。
−前記外装は、前記主補強部材が部分的に埋め込まれているプレハブエレメントを複数備える。
−複数の前記プレハブエレメントはコンクリート製であり、前記主補強部材は、少なくとも一部が前記複数のプレハブエレメントのうちの1つのプレハブエレメントのコンクリートに打設された可撓性を有する合成補強部材を含む。
−前記可撓性を有する合成補強部材の打設部分は、前記合成補強部材が前記盛り土の前記第1補強ゾーンに突き出る2つの部分を有するような態様で、前記1つのプレハブエレメントの中でループを成す。
−前記ループは、前記可撓性を有する合成補強部材の前記2つの部分が垂直方向にオフセットされた位置で前記外装から出て前記盛り土へ入るような態様で、前記1つのプレハブエレメントの中に配置されている。
−前記ループは、前記可撓性を有する合成補強部材の前記2つの部分が略同一水平面内において異なる角度で前記外装から出て前記盛り土へ入るような態様で、前記1つのプレハブエレメントの中に配置されている。
−前記外装は、土壌補強部材が主補強部材として接合されるワイヤーメッシュパネルを備える。
−前記副補強部材は、前記第2補強ゾーンにおいてジグザグ経路に沿って配置されている。
【0017】
本発明は、既設の構造物の補修に適応できが、好ましい用途は、新しい構造物の生産への適用である。
【0018】
本発明は、さらに、補強土構造物を構築するための方法であって、
−盛り土をする容積を区切る前記構造物の前面に沿って外装を配置する第1配置工程と、
−前記容積の第1補強ゾーンに、前記外装に接合され、前記第1補強ゾーンを通って延びる主補強部材を少なくとも1つ配置する第2配置工程と、
−前記第1補強ゾーンとの共通部分を有する、前記容積の第2補強ゾーンに、前記主補強部材以上の剛性を有する副補強部材(6)であって前記外装に非永久的に接合された副補強部材(6)を少なくとも1つ配置する第3配置工程と、
−前記容積に盛り土材料を投入し、前記盛り土材料を締固める工程と、を含み、
前記第3配置工程にて、前記副補強部材(6)を、前記前面に対して、主補強部材(2、9、26)よりも実質的に短い距離まで設置する、ことを特徴とする方法に関する。
【0019】
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明に係る方法は、以下の特徴を単独または組み合わせて備えてもよい。
−前記第1補強ゾーンにおける複数の主補強部材の最適な構成および密度と、前記第2補強ゾーンにおける複数の副部材の最適な構成および密度とをそれぞれ独立して決定する工程を含む。
−前記盛り土材料を投入して締固める工程で壊れるように設計された仮連結装置によって、少なくとも一部の前記副補強帯板を前記外装に接合する工程を含む。
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明の非限定的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る補強土構造物の建設中における横断面の概略図である。
【
図3】本発明の実施形態において使用可能な外装エレメントの概略斜視図である。
【
図4】本発明の別の実施形態において使用可能な外装エレメントの概略立面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態において使用可能な外装エレメントの概略上面図である。
【
図6】本発明に係る構造物の別の実施形態を示す概略立面図である。
【
図7】本発明に係る構造物のさらに別の実施形態の概略立面図である。
【
図8】本発明に係る構造物のさらに別の実施形態の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態によれば、補強土構造物は、複数の主副補強部材を備えてもよい。補強土構造物が複数の主副補強部材を備えている場合の本発明という意味において、「主副補強部材の剛性」は、外装の単位領域あたりの主副補強部材の剛性として理解されるべきである。したがって、そのような実施形態よれば、「前記副補強部材の剛性は、前記主補強部材の剛性以上である」という特徴は、k2×n2がk1×n1以上であるとして理解されるべきである。ここで、k1およびk2は、それぞれ、主副補強部材の個々の剛性であり、n1およびn2は、それぞれ、外装の単位領域あたりの主副補強部材の密度である。
【0023】
補強土擁壁の建設への本発明の適用を図に示す。締固め盛り土1では、主補強部材2が配置されている。当該構造物の前側では、盛り土1は、外装3によって境界を画されている。外装3は、プレハブエレメント4を並置することによって形成されており、
図1および
図2に図示した実施形態では、プレハブエレメント4はパネルの形をとっている。そして、当該構造物の後側では、盛り土1は土5によって境界を画されている。土5に対して、擁壁が立設されている。
【0024】
図1は、主補強部材2で補強された盛り土のゾーンZ1を概略的に示す。
【0025】
擁壁の結合力を確保するために、主補強部材2は外装エレメント4に接合され、盛り土1内を一定の距離にわたって延びている。
【0026】
副補強部材6は、外装3に全く接合されず、そのため、特定の接合具に連結する必要がなくなる。これらの副補強部材6は、前面に対して、盛り土1の中を主補強部材2よりも実質的に短い距離に及んで延びている。
【0027】
本発明によれば、副補強部材6の剛性は、主補強部材2の剛性以上である。
【0028】
さらに、これらの副補強部材6は、ゾーンZ2における土壌の補強に資する。
【0029】
本発明の実施形態によれば、副補強部材6は、すべて略同じ長さを有し、外装から略同じ距離に配置される。
【0030】
本発明の実施形態によれば、補強土構造物は、少なくとも二組の副補強部材6を備えていてもよい。各組の副補強部材は、略同じ長さを有し、外装から略同じ距離を隔てて配置される。第1組の副補強部材は、外装から、第2組の副補強部材とは異なる距離を隔てて配置される。
【0031】
補強土構造物の結合力は、補強ゾーンZ1およびZ2が共通部分Ζ’において重なっているという事実に起因して生じる。この共通部分Ζ’では、盛り土1の材料は、補強部材2および補強部材6の両方によって補強されているため、良好な強度を有している。
【0032】
これにより、補強部材が受ける引張荷重の結果として作用するせん断応力に耐えることができる。この部分Ζ’は、当然、外装3を適正に保持するのに十分な厚さでなければならない。実際には、一般に1から数メートルの厚さで十分である。これとは対照的に、
図1に示すように、主補強部材2は、盛り土1中はるか深くに延びていてもよい。
【0033】
盛り土に副補強部材6を追加するだけで、第2補強ゾーン(Z2)と第1補強ゾーン(Z1)との共通部分(Ζ’)において土壌構造を補強することができる。
【0034】
共通部分Ζ’において主補強部材2と副補強部材6との間の接触を避けることが好ましい。これは、引張荷重を反応させるための補強部材間の摩擦力を完全に制御することが困難であることを考えると、そのような摩擦力に信頼が置けないためである。これとは対照的に、補強土壌技術では、補強部材と盛り土との間の境界面をより良く制御できるため、せん断で応力を受けた補強盛り土の強度特性が信頼できる。
【0035】
図示した例では、主補強部材2は、合成繊維系の帯板であってもよく、さまざまな方法で外装3に接合することができる。例えば、EP−A−1 114 896に記載されたような従来の接合具を用いて外装に連結されてもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、これらの主補強部材2は、外装エレメント4の製造時に組み込まれる。エレメント4がコンクリートに前もって組み込まれているというよくあるケースでは、エレメント4の打設コンクリートに主補強部材2の一部が埋設されていてもよい。この打設部分は、特に、エレメント4の補強コンクリートの棒鋼の周囲に1つまたは複数のループを形成してもよく、これにより、主補強部材2を外装にしっかりと固定する。
【0037】
図1および
図2に示した例示的構造物の構成では、当該構造物の高さ方向に交互に重ね合わせられた主補強部材2および副補強部材6が水平面内に配置されている。
図2では、読みやすさのため、二つの隣接した平面のみを示す。
【0038】
副補強部材6は、外装3の裏の水平面内でジグザグ経路を描く繊維系合成補強材料の帯板であってもよい。これらは、特に、「Freyssissol」という商標名で市販されている補強帯板であってもよい。このような帯板は、最大で20cmの幅を有することが都合よい。
【0039】
これらの副補強部材6は、二本の線の間に、該二本の線上で折り返されるようにジグザグ状に敷設された副補強部材6であってもよい。これらの二本の線の間の距離は、補強ゾーンZ1の容積のよって決まる。ジグザグパターンのピッチは、構造工学の計算によって必要とされる補強密度によって決まる。
【0040】
図2の例でも、主補強部材2は、それらが敷かれる各水平面内で櫛状のパターンを形成し、補強帯板は、二つの隣接する櫛の歯間の外装エレメント4の内部でループを形成する。
【0041】
図1および
図2に図示した構造を構築するための手順は以下の通りである。
【0042】
a)後で一定の深さにわたって盛り土材料を投入することができるように、外装エレメント4の一部を配置する。既知の方法では、外装エレメントの立設と位置決めは、それらの間に配置された組立部材によって容易に行うことができる。
【0043】
b)すでに存在している盛り土に副補強部材6を設置し、
図2に示すように副補強部材6をジグザグパターンにする。副補強部材6の二つの折り返し線の間には軽度の応力がかかる。例えば、これら二つの折り返し線に沿ってこれら二つの折り返し線の周りに配置された棒を用いると、各折り返し点で帯板が屈曲する。
【0044】
c)設置したばかりの副補強部材6の上から、外装エレメント4の後側の次の段の主補強部材2の高さまで盛り土材料を投入する。この盛り土材料は、投入しながら固める。
【0045】
d)上記段に位置する主補強部材2を盛り土の上に配置し、その上から軽度の応力をかける。
【0046】
e)この段の上から盛り土材料を投入し、副補強部材6を配置するために規定された次の段に達するまで、盛り土材料を漸次締固める。
【0047】
f)盛り土の上段に達するまで、工程a)から工程e)までを繰り返す。
【0048】
なお、多数の選択肢をこれまでに説明した構造物に適用してもよいし、その生産方法に適用してもよい。
【0049】
まず、主補強部材2は、副補強部材の剛性が主補強部材の剛性以上であれば、補強土壌技術で行われているように(合成帯板、金属棒、または、帯板状や層状、はしご状などの形状の金属もしくは合成格子)、織布または不織布ジオテキスタイルなど、非常にさまざまな形態をとることができる。
【0050】
同様に、パネル、ブロックなどの形をしたプレハブエレメント、金属格子、プランターなど、あらゆる種類の外装を用いてもよい。さらに、外装3は、現場で注意深く副エレメント6を接合しながら、コンクリートや特殊セメントを用いて現場で打設することによって建てることも十分に考えられる。
【0051】
また、盛り土1内における主補強帯板2と副要素6とは、非常にさまざまな三次元形態をとり得る。同じ水平面で(好ましくは、互いに接触を避けて)主補助部材2と副部材6を設けることが可能である。また、共通部分Ζ’において、主補助部材2の密度と副部材6の密度との比を変化させることが可能である。
【0052】
図3に示した実施形態では、外装エレメント14は、垂直断面で見たときに、C字型の経路15を描く補強帯板を備えている。帯板(経路の形状を表示するために図示せず)は、コンクリートを製造型に注ぎ込む際にコンクリートに埋設され、好ましくは、コンクリートエレメントを補強するために用いられた1つまたは複数の金属棒16の周囲を通る。C字型の経路15の両端は、外装エレメントの後側の高さで、帯板の突出部を水平方向にガイドする。このような帯板部は、垂直方向にオフセットされた位置で外装エレメント14から出て盛り土1へ入る1組の主補強部材を提供する。この配置は、各帯板部の両側における土とプラスチックとの間の摩擦を利用することで、ゾーンZ1における補強材料の使用を最適化する。
【0053】
図4および
図5に示された別の実施形態では、主補強部材26は、コンクリート外装エレメント24の金属補強ロッド27の周囲にループを形成する。その二つの突出部26Aおよび26Bは、略同一水平面において外装エレメント24の後側に現れるが、その面(
図5)内において、エレメントの裏面に対する角度が異なっている。帯板部26Aおよび26Bは、それらの間の角度を保つことによって、盛り土のある高さで同時に敷設される。この斜めのレイアウトも、各帯板部の両側における土とプラスチックとの間の摩擦を最大限に利用する。
【0054】
提案した構造の大きな利点の一つは、主補強部材2、9、26および副補強部材6として非常にさまざまな構成や配置密度を採用することを可能にするということである。これは、これら補強部材の間にある盛り土材料による荷重の伝達により、主補強部材と外装との間の接合方法に関連した構造上の制約のほとんどが取り除かれるためである。これにより、同一の構造において、主補強部材26および/または副補強部材6の相対密度が大きく変化する領域であって更に個々の相対密度が最適化された領域を設けることが可能である。
【0055】
副補強部材6として切れた帯板を用いることの重要な利点は、副増強部材の密度を調整するために非常に大きな能力を提供するということである。すなわち、(ジグザグ経路のピッチを変化させるなどして)、垂直方向における補強層の間隔と外装の裏における補強層の深さだけでなく、水平面内における補強層の密度を望みどおりに変化させることが可能であるということである。
【0056】
このような調整は、外装パネルの裏にある接合具の事前に定められた間隔の制約を受けない。補強量の完全な3D最適化が事実上実現されており、このことが、補強土構造物のコストの面で非常に重要な利点を提供する。加えて、帯板状の主補強部材は、土壌と補強部材との境界面における摩擦特性の良好な制御を保障する。
【0057】
図6に示す実施形態では、外装は、比較的小さな寸法の複数のブロック44で構成されている。これらのブロックは、個々に、主補強部材2によって安定化された土壌構造に接合されている。このような配置は、個々のブロックの安定性を確保し、隣接するブロック間の強く完全な接合を必要とすることなく、隣接するブロック間のオフセットを回避する。図に示すように、ゾーンZ1における副補強部材6の密度は、ゾーンZ2における主補強部材2の密度よりも低くてもよい。
【0058】
この応用では、ゾーンZ2における補強密度は、ブロック44の寸法によって設定されているので、本発明は、使用される副補強部材の量を最適化することができていることがわかるが、このことは重要な経済的利点である。
【0059】
本発明は、外装が
図8および
図9に示すように変形パネルで構成されている補強土構造物においても興味深いものである。このようなパネル54は、土壌補強部材56が直接または中間デバイスを介して接合される溶接ワイヤのメッシュから成ってもよい。通常、このようなワイヤーメッシュ外装の変形は、接合点と補強部材の数を増やすことによって制限される。さらにまた、外装を強固にするための要件によって使用する補強部材の費用が一層高くなってしまうという問題は、本発明によって回避される。主補強部材として用いられる土壌補強部材56による外装接合ゾーンZ1の設計とは別に、副補強部材6によるゾーンZ2の補強を設計することが可能になるからである。
【0060】
副補強部材6が盛り土の高さに配置されているとき(上記の工程b)、仮締め具によって、この補強帯板2を外装に接合することが可能である。仮締め具は、上に重なる土壌の量によってその構造に荷重が徐々にかかるにつれて壊れることが想定されている。このような仮締め具は、任意であり、主補強部材の正確な位置合わせを容易にするが、いったん構造物が完成すれば、外装と盛り土との境界面における荷重は、仮締め具に因らずに伝達されることになる。
【0061】
本発明は、一般的発明概念を限定することなく実施形態を用いて説明した。