特許第5842012号(P5842012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5842012靴、スポーツシューズのアッパーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5842012
(24)【登録日】2015年11月20日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】靴、スポーツシューズのアッパーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 35/00 20100101AFI20151217BHJP
【FI】
   A43B10/00 101Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-550798(P2013-550798)
(86)(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公表番号】特表2014-503397(P2014-503397A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2012000135
(87)【国際公開番号】WO2012100912
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】102011009641.8
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】シギスムンド、アンドレアス
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−001401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0115284(US,A1)
【文献】 実公昭37−022819(JP,Y1)
【文献】 特開昭63−309648(JP,A)
【文献】 特表2006−511306(JP,A)
【文献】 特開昭62−292181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴、スポーツシューズのアッパー(1)を製造する方法であって、
a)製造される前記靴の前記アッパー(1)の内部形状に対応する少なくとも1つの足型(2)を提供するステップと、
b)3軸に沿って織り、および/または編むように設計される環状クリール(4)を有する放射状の編み機(3)を適用するステップと、

c)前記少なくとも1つの足型(2)を前記クリール(4)の中心(5)を通して誘導し、同時に繊維素材を用いて3軸に沿って織り、および/または編み、それによって織られた素材および/または編まれた素材を前記足型(2)の外周の回りに配置するステップと、
)前記織ることおよび/または編むことを終了し、前記織られた素材および/または編まれた素材を前記足型(2)から取り外すステップと、
e)さらに前記織られた素材および/または編まれた素材を処理して前記靴を完成するステップと、を備え、
前記少なくとも1つの足型(2)は、マニピュレータ(7)のマニピュレータアーム(6)の端部に直接または間接的に配置され、前記足型(2)は前記ステップc)の実施時に前記マニピュレータ(7)によって誘導される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップc)を実施する前に、内張りが前記足型(2)上に配置され、前記内張りは、前記ステップc)にしたがって製造される前記織られた素材および/または編まれた素材によって囲まれる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内張りは、前記環状クリール(4)の前記中心(5)を通して前記足型(2)を誘導することによって製造され、それと同時に前記3軸織り工程および/または編み工程を実施し、特に、前記ステップc)を実施する際に用いる素材よりも柔軟な別の繊維素材を用いる
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記織られた素材および/または編まれた素材の密度は、前記足型(2)の前記靴(L)の前記長手方向に沿って変化する
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記密度は、前記足型(2)が前記環状クリール(4)の前記中心(5)を通って移動する速度を変更することによって、および/または前記環状クリール(4)およびそのボビンの回転速度それぞれを変化することによって、変化する
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップd)にしたがって、前記織られた素材を前記足型(2)から取り外す前に、前記織られた素材および/または編まれた素材を固定媒体でスプレーし、前記固定媒体は前記個々の繊維間の接着接続を実現する
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
いくつかの足型(2)は、前記靴(L)の長手方向に連続して配置されることを特徴とし、前記織り工程および/または編み工程を中断せずに、前記いくつかの足型(2)は前記環状クリール(4)の前記中心(5)を通して誘導される
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ステップe)にしたがって、前記織られた素材または編まれた素材の前記工程を継続することは、ソール(8)を、前記アッパー(1)の前記織られた素材または編まれた素材の底側に少なくとも取り付ける、特に糊付けする
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記靴のアッパー(1)を製造するための繊維素材として、カーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバである素材、またはカーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバを備える素材を用いる
請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴のアッパー、具体的にはスポーツシューズのアッパーを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靴のアッパーを伝統的な方法で積層素材、たとえば革または織物素材から製造することは既知である。これに関連して、素材は足型に取り付けられ、素材の対応する部分を切断後に縫われる。特許文献1では、靴のアッパーを管状のニット生地から切り出し、次に靴に取り付ける。
【0003】
靴のアッパーを縫うことは一定の努力が必要となり、この努力によって対応するコストが生じる。さらに、縫い目部分に当然ながら不快な区域が生じ、そのため、縫い目部分によって装着時の快適性が損なわれることが不利である。
【0004】
さらに、切断した素材を組み合わせることによって、靴のアッパーの安定性は限定されることになる。
【0005】
さらに、たとえばカーボンファイバ素材、グラスファイバ素材またはプラスチックファイバ素材などの特別な素材が場合によっては望ましいが、靴のアッパーを製造するための既知の方法では、これらの素材を適用することが少なくとも困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国公開特許第2003/0089000号
【特許文献2】国際公開第03/016036号
【特許文献3】ドイツ公開特許第2319822号
【特許文献4】ドイツ公開特許第2441839号
【特許文献5】ドイツ特許明細書第2548129号
【特許文献6】欧州公開特許第0736624号
【特許文献7】米国特許第3985159号
【特許文献8】フランス特許第776638号
【特許文献9】米国特許第3985159号
【特許文献10】米国公開特許第2010/107443号
【特許文献11】欧州公開特許第0736624号
【特許文献12】フランス公開特許第2306649号
【特許文献13】ドイツ公開特許第2441839号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、前述の不利点を備えない、靴のアッパーを製造するための方法を生成することである。
したがって、製造工程を非常に費用効率の高いものにすることが可能である。さらに、靴のアッパーの縫い目部分をできるだけ設けないような方法で、装着時の快適性が向上する。靴のアッパーの安定性、およびそれに伴い、靴全体の安定性が高まる。繊維素材、具体的にはカーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバを使用することも可能となる。
【0008】
本発明による目的の解決策は、靴のアッパーの製造方法が、
a)製造する靴のアッパーの内部形状に、少なくとも大まかに対応する足型を提供するステップと、
b)3軸に沿って織り、および/または編むように設計される、環状クリールを有する放射状の編み機を適用するステップと、
c)少なくとも1つの足型をクリールの中心を通して誘導し、同時に繊維素材を用いて3軸に沿って織り、および/または編み、それによって織られた素材および/または編まれた素材自体を足型の外周の回りに配置するステップと、
d)少なくとも1つの足型がクリールの中心を通して誘導されると、織ることおよび/または編むことを終了し、織られた素材および/または編まれた素材を足型から取り外すステップと、
e)織られた素材および/または編まれた素材をさらに処理して靴を完成するステップと、
を備えることを特徴とし、さらに、
少なくとも1つの足型はマニピュレータのマニピュレータアームの端部に直接的にまたは間接的に配置され、足型はステップc)の実施時にマニピュレータによって誘導される。
【0009】
ステップc)を実施する前に内張りを足型上に配置することもでき、内張りはステップc)にしたがって製造される織られた素材および/または編まれた素材によって囲まれる。この内張りは、たとえば編む、または縫うなどして前もって製造することもできる。特別な解決法策は、環状クリールの中心を通して足型を誘導し、同時に3軸織り工程および/または編み工程を実施することによって内張りを製造し、特に、ステップc)を実施する際に用いる素材よりも柔軟な別の繊維素材を用いることを提案する。したがって、内張りはこのように、靴のアッパー製造の前操作として、靴のアッパーと同じ方法で製造することができる。それによって、内張りは、清浄作業を別として、縫う作業を全く用いずに行うことができる。
【0010】
本方法の別の実施形態によれば、織られた素材および/または編まれた素材の密度は、足型の靴の長手方向に沿って変更することができる。たとえば、高密度な織物および靴のアッパーはそれぞれ靴の中間領域よりも足の前部領域および踵領域を対象とすることができる。それによって、足型が環状クリールの中心を通って移動する速度を変動させることによって、および/または環状クリールおよびその上に配置されるボビンの回転速度それぞれを変化することによって、密度を変化させることができる。
【0011】
ステップd)にしたがって、織られた素材を足型から取り外す前に、織られた素材および/または編まれた素材を固定媒体でスプレーすることができ、この固定媒体は個々の繊維間を接着して接続する。このようにして、靴のアッパーの高い剛性を実現することができ、足型から取り外す間および別の工程中に靴のアッパーが崩れることを防ぐことができる。
【0012】
本発明の特別な実施形態は、いくつかの足型を靴の長手方向に縦に一列に提供し、これらの足型は、織り工程および/または編み工程を中断せずに、環状クリールの中心を通して誘導される。そのため、いくつかの靴のアッパーは複数の足型と同時に製造される。
【0013】
ステップe)にしたがって、織られた素材または編まれた素材の処理を継続することは、ソールを、靴のアッパーの織られた素材または編まれた素材の底側に少なくとも取り付ける、具体的には糊付けすることを備える。
【0014】
靴のアッパーを製造するための繊維素材として、カーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバである素材、またはカーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバを備える素材を用いることができる。
【0015】
このように、本発明は足型が好ましくはマニピュレータによって誘導され、したがって自動的に放射状の編み機の中心を通して誘導されるというアイデアを持つ。放射状の編み機は3軸の織り工程または編み工程を実施し、織られた素材または編まれた素材で足型を囲み、この素材を足型に正確に装着して取り付ける。この素材を足型から取り外した後に、このように製造されたアッパーは、靴が完成するまで行程中で作業が続けられる。アッパーはしたがって縫い目を持たない。
【0016】
3軸の織り方法または編み方法自体は、本アイデアの目的ではなく、既知であることが強調されるべきである。そのため、前述の方法が詳細な方法で記載されている刊行物を明示的に参照する。
具体的には、特許文献2〜7を参照する。
【0017】
別の解決策は特許文献8〜13に示されている。
【0018】
有利な方法において、靴のアッパーを略縫い目なしに、1つの単一の製造ステップにおいて製造することができる(素材を封鎖または終了しなければならない織られた素材の開始区域および終了区域をおそらく除く)。製造される靴のアッパーは、一体として製造される限りにおいて、縫い目を全く備えないため、装着時に高い快適性が得られる。
【0019】
また、靴のアッパーが一体型に設計されることによって、高い安定性が提供される。
【0020】
いくつかの連続して配置される足型が密着して放射状の編み機の中心を通して誘導されるとき、特定の経済的な製造が可能となる。
【0021】
アッパー素材の密度は靴の長手方向軸に沿って変動し、所望の数値に調整可能であることはさらに有利である。
【0022】
糸は、好ましくは、織り工程または編み工程のために用いられる。糸はカーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバを備え、およびカーボンファイバ、グラスファイバまたはプラスチックファイバからそれぞれ形成される。本方法はもちろん、伝統的な織物繊維(より糸など)を用いても実施することができる。
【0023】
足型は、挿入すべき靴要素に対して、たとえば足の甲の区域の靴の舌革に対して、十分な素材が提供されるような方法で、その形状を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】マニピュレータのマニピュレータアームの端部に配置される足型の斜視図
図2】織り工程および/または編み工程を3軸に沿って実施するための放射状の編み機とマニピュレータの斜視図
図3】靴の分解図
図4図3の靴の完成状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を用い、本発明の実施形態を例示する。
【0026】
図1および2では、図3で見ることができる靴のアッパー1を製造するために機能する装置を示す。装置は放射状の編み機3を備える。放射状の編み機3は、編み機の構造および機能を規定する上記の刊行物を参照して既知である。
【0027】
放射状の編み機3は、円形の環状クリール4を備える。円形の環状クリール4の円周の回りにはいくつかのボビンが配置され、各ボビンには糸が巻かれる。様々なボビンの糸は中心5に誘導され、3軸の編み工程が生じる。
【0028】
機器の別の構成部品はマニピュレータ7であり、マニピュレータ7はマニピュレータアーム6を備える。マニピュレータアーム6の端部には図1に示すように、足型2が配置される。足型2は靴Lの長手方向を規定する。
【0029】
靴のアッパー1を3軸編みによって製造する際には、マニピュレータアーム6に配置される足型2を放射状の編み機の中心5に向かって駆動するような方法で行う。それによって、マニピュレータの個々の軸は足型2が中心5を通して誘導され、足型2は靴の長手方向Lにおいて中心5の中央に前方に押され、その間同時に編み工程が終了するような方法で制御される。
【0030】
それにしたがって、ボビンの繊維および/または糸それぞれは足型2の外周上に巻かれる。それによってアッパー1は生成され、正確に足型2に装着され、かつ縫い目を有さない。
【0031】
編み工程中に、中心5を通して足型2をさらに押しながら、マニピュレータアーム6の足型2を靴の長手方向Lを少しずつ上方に回転するような方法で移動させることも可能である。
【0032】
編み工程後、足型2は完全に編まれた素材で囲まれる。
【0033】
図3および4の概要から、完成した靴にアッパーをさらに製造する方法が分かる。図3では、アッパー1の一定の区域を切り取り、そのアッパー1を保存する方法が分かる。このように、切込み9がアッパー1上に存在し、切込みは踵から靴の中心付近まで延在する。同様に切込み10が足の甲部分に実現されてきた。
【0034】
ここで、先端部分11および12を、たとえば糊付けして固定することができ、それによって、きれいで柔軟な端部が得られる。
【0035】
切込みを入れる前に、接着媒体をアッパーにスプレーして安定化することができる。それによって、アッパーの素材が切断区域で繊維状になることを防ぐことができる。接着媒体は可能であれば、アッパーおよび靴それぞれが完成後の、後の工程で除去することもできる。
【0036】
最後に、弾性素材からなる上部13および台座部14を、たとえば糊付けして取り付ける。上部13および台座部14として可能性のある素材は天然ゴムである。この工程を実施後、ソール8を底側からアッパー1に取り付け、糊付け工程を再び行うことができる。
【0037】
このようにして、図4から分かるように、靴が完成する。
【0038】
靴が内張りを有する場合は、内張りを前述の3軸編み工程前に足形に取り付けることができる。代替的に可能な方法は、前述の編み工程をまず柔軟な糸で行い、内張りを足型に編めるようにする。その後、編み工程を強い糸、たとえばカーボンファイバ糸、グラスファイバ糸またはプラスチックファイバ糸(織物糸ももちろん可能である)で繰り返し、編まれた内張りを今や備えた足型2は、規定した方法で、再び放射状の編み機3を通して誘導される。
【0039】
前述のカーボンファイバ糸、グラスファイバ糸またはプラスチックファイバ糸は、靴のアッパーを製造するための単に好ましい可能性にすぎず、プラスチックファイバ糸に関しては、ポリアミド糸が特に好ましいことが分かっている。さらに好ましい素材は天然亜麻繊維であり、これを用いて靴のアッパーを製造することができる。また、靴に対して十分に既知である伝統的な糸を用いることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 アッパー
2 足型
3 放射状編み機
4 環状クリール
5 中心
6 マニピュレータアーム
7 マニピュレータ
8 ソール
9 切込み
10 切込み
11 先端部分
12 先端部分
13 上部
14 台座部
L 靴の長手方向
図1
図2
図3
図4