(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した日本再興戦略、エネルギー基本計画、及びエコまち法によれば、地域エネルギーの地産地消が求められるが、その実現のための具体的な方案が乏しい。特に、事業用途だけでなく、戸建て住宅での未利用熱エネルギーの利用には、全国的に途上であり、革新的な利用技術の確立が望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、地域エネルギーの地産地消を可能にする地中熱の地域面的活用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、地中の帯水層に達する穴に埋設され、前記帯水層から浸入する水で満たされる筒体と、前記筒体の内部に引き込まれて下方に向けて通されてから、上方に折り返して前記筒体の外部に引き出され、前記筒体内の水との間で熱を移動させる液体を流す熱交換管と、所定の地域に埋設され、前記熱交換管から送り出された前記液体を流し前記熱交換管へ送り戻す循環管と、前記循環管を流れる前記液体と、熱利用機器から循環する媒体と、の間で熱を移動させる熱交換ユニットと、
前記熱交換管と前記循環管との間に設けられ、前記熱交換管又は前記循環管を流れた前記液体を蓄える貯留槽と、前記熱交換管内の前記液体に動力を付与する熱交換管用ポンプと、前記循環管内の前記液体に動力を付与する循環管用ポンプと、を備え
、前記熱交換管用ポンプ及び前記循環管用ポンプは、互いに独立して動作することを特徴とする地中熱の地域面的活用システムである。
【0009】
本発明によれば、希望者は、地中熱交換器を設置せずに、熱交換ユニットを設置するだけで地中熱を利用できる。すなわち、地域エネルギーの地産地消が可能になり、安全で安心な自立した環境を実現できる。これにより、食糧・エネルギー・水の他者依存と、災害に対する不安がある現代において、地中熱の利用を可能にする地域の未来に安心のインフラを構築し、新しい基盤技術と新しい価値観で新産業を創出できる。
【0011】
また、地中熱の取得と供給とを別個独立に行える。例えば、地中熱の利用が少ない時間帯において、消費エネルギーを抑えて熱交換管用ポンプを稼働させる一方で、循環管用ポンプをフル稼働させられる。
【0012】
(
2)本発明はまた、前記貯留槽は、前記貯留槽に蓄えた前記液体の液位よりも低い位置に、前記循環管に繋がる供給口を有し、前記貯留槽に蓄えた前記液体を、前記供給口から前記循環管に流すことを特徴とする上記(
1)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0013】
上記発明によれば、循環管内に空気が入ることを防止し、循環管内を液体で満たした満管の状態にすることができる。これにより、熱交換ユニットにおける熱交換効率の低下を防止できる。
【0014】
(
3)本発明はまた、前記筒体内の水温を計測する水温計と、前記水温計の計測結果に基づいて前記筒体内の水をくみ上げて、前記帯水層から前記筒体内に水を浸入させることで、前記筒体内の水温を調節する揚水機と、を備えることを特徴とする上記(
1)又は(
2)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0015】
上記発明によれば、筒体内の水をくみ上げて、当該筒体内に帯水層からの新たな水を浸入させることで、当該筒体内の水温を調節できる。これにより、筒体内の水との間で熱を移動させる熱交換管内の液温を調節できる。例えば、筒体内の熱量不足の場合、このままでは熱交換管内の液温を調節できないが、筒体内の水をくみ上げることで、筒体内の熱量不足を解消し、熱交換管内の液温を調節できる。
【0016】
(
4)本発明はまた、前記貯留槽は、前記揚水機がくみ上げた水を前記貯留槽に流入させる流入口と、前記貯留槽に蓄えた前記液体を排出する排出口と、を有することを特徴とする上記(
3)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0017】
上記発明によれば、例えば、数年に1回の大寒波で熱の使用量が急激に増えたり、数年に1回の猛暑で冷熱の使用量が急激に増えたりして、貯留槽内の液温が所望する温度からかけ離れた場合に、貯留槽内の液体を排出すると共に貯留槽内に地下水を供給することで、貯留槽内の液温をリセットすることができる。これにより、異常気象で熱又は冷熱の使用量が急激に増えた場合であっても、地中熱の地域面的活用システムを継続して利用することができる。
【0018】
(
5)本発明はまた、前記水温計の計測結果に基づいて前記筒体内に水を注ぎ足して、前記筒体内の水温を調節する注水機を備えることを特徴とする上記(
3)又は(
4)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0019】
上記発明によれば、筒体内に水を注ぎ足すことで、当該筒体内の水温を調節できる。これにより、筒体内の水との間で熱を移動させる熱交換管内の液温を調節できる。例えば、筒体内の熱量不足の場合、このままでは熱交換管内の液温を調節できないが、筒体内に水を注ぎ足すことで、筒体内の熱量不足を解消し、熱交換管内の液温を調節できる。
【0020】
(
6)本発明はまた、前記揚水機がくみ上げた水を前記注水機が注ぎ足す水として蓄えるストレージタンクを備えることを特徴とする上記(
5)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0021】
上記発明によれば、揚水機がくみ上げた水を有効に活用することができる。
【0022】
(
7)本発明はまた、前記熱交換ユニットは、前記循環管の途中に設けられるカートリッジであることを特徴とする上記(1)〜(
6)のいずれかに記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0023】
上記発明によれば、熱交換ユニットを簡単に設置できる。これにより、地中熱の地域面的活用システムの普及が促進される。
【0024】
(
8)本発明はまた、前記熱交換管内の液温を計測する熱交換管用液温計を備え、前記熱交換管用ポンプは、前記熱交換管用液温計の計測結果に基づいて動作することを特徴とする上記(
1)〜(
7)のいずれかに記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0025】
(
9)本発明はまた、前記循環管内の液温を計測する循環管用液温計を備え、前記循環管用ポンプは、前記循環管用液温計の計測結果に基づいて動作することを特徴とする上記(
1)〜(
8)のいずれかに記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0026】
(
10)本発明はまた、前記熱交換ユニットと前記熱利用機器との間に設けられ、前記熱交換ユニットと前記熱利用機器との間でやり取りされる熱量の積算量を計測する積算熱量計と、前記積算熱量計の計測結果を所定の数式に代入することで、熱の取引額を算出する取引額算出部と、を備えることを特徴とする上記(1)〜(
9)のいずれかに記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0027】
上記発明によれば、取引額算出部によって、熱の取引額が算出される。この算出結果を利用することで、利便性が高まり、地中熱の地域面的活用システムの普及が促進される。
【0028】
(
11)本発明はまた、前記取引額算出部の算出結果を出力する出力部を備えることを特徴とする上記(
10)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0029】
上記発明によれば、利用者は、熱の取引額を容易に把握でき、利便性が高い。これにより、地中熱の地域面的活用システムの普及が促進される。
【0030】
(
12)本発明はまた、前記取引額算出部の算出結果を収集するサーバーを備えることを特徴とする上記(
10)又は(
11)に記載の地中熱の地域面的活用システムである。
【0031】
上記発明によれば、地中熱の地域面的活用システムを管理する事業者などは、サーバーに収集したデータに基づいて、容易に課金することができ、利便性が高い。具体的に、事業者などは、各利用者の地中熱の利用額と、各利用者の排熱の売却額と、を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の上記(1)〜(
12)に記載の地中熱の地域面的活用システムによれば、地域エネルギーの地産地消が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る地中熱の地域面的活用システムについて詳細に説明する。
【0035】
まず、
図1〜
図3を用いて、地中熱の地域面的活用システム1の構成について説明する。
図1は、地中熱の地域面的活用システム1の概略図である。
図2は、地中GRDを上方から視た断面図である。
図2(A)は、
図1におけるIIA−IIA断面を示す。
図2(B)は、
図1におけるIIB−IIB断面を示す。
図3は、制御盤5の構成を示すブロック図である。
図4は、課金システム6の構成を示すブロック図である。なお、各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。
【0036】
図1に示すように、地中熱の地域面的活用システム1は、熱交換システム2と、貯留槽3と、循環システム4と、温度調節システム40と、制御盤5(
図3参照)と、課金システム6(
図4参照)と、を備えている。
【0037】
熱交換システム2は、地中熱を利用したヒートポンプシステムである。この熱交換システム2は、制御盤5によって統括的に制御される。すなわち、熱交換システム2は、制御盤5の制御下において動作して、その動作状況が制御盤5によって管理される。具体的に、熱交換システム2は、各所に配置された温度計や流量計の計測結果などに基づいて、各部の動作が所望する状況となるようにフィードバック制御される。
【0038】
このような熱交換システム2は、古井戸7と、熱交換管8と、熱交換管用ポンプ9と、熱交換管用液温計10と、揚水機11と、注水機12と、水温計測管13と、を備えている。
【0039】
古井戸7は、地中GRDの帯水層WBLに達する穴(符号省略)に埋設された筒体14を備えている。帯水層WBLは、地下水を含む地層である。帯水層WBLの上面は、一般的に、地上から50m以上100以下程度の深さDに位置する。このため、筒体14の長さは、帯水層WBLに達するように50m以上100m以下程度の範囲で適宜設定されている。
【0040】
図1及び
図2に示すように、筒体14は、相対的に径が大きい円形鋼管(SGP管やステンレス鋼管等。以下同様。)からなる大径部15と、相対的に径が小さい円形鋼管からなる小径部16と、が上から順に連続する。小径部16の下方側面には、帯水層WBLからの水を浸入させる浸水部17が形成されている。浸水部17は、複数の小孔又は複数の小スリットから構成されている(符号省略)。浸水部17からの地下水の浸入によって、筒体14内は水で満たされている。筒体14内に満たされている水の自然水位hは、一般的に、地表面から10m以内の深さとなる。小径部16の下端は、図示するように、開口させていてもよいし、あるいは、鋼製プレート(図示省略)等で塞がれていてもよい。鋼製プレートには、浸水部として、複数の小孔又は複数の小スリットが形成されていてもよい。
【0041】
大径部15の内径φ
1は、180mm以上250mm以下であることが好ましく、200mmであることがより好ましい。大径部15の長さは、15m以上30m以下であることが好ましく、20mであることが好ましい。小径部16の内径φ
2は、120mm以上150mm以下であることが好ましく、140mmであることがより好ましい。浸水部17は、帯水層WBLに達する箇所に位置している。浸水部17の範囲は、小径部16の下端から3m以上7m以下の範囲であることが好ましく、小径部16の下端から5mを含む範囲であることがより好ましい。
【0042】
筒体14には、熱交換管8と、揚水機11の揚水管18と、注水機12の注水管19と、水温計測管13と、が挿入されている。なお、熱交換管8は、筒体14に挿入される箇所が2本に分かれたポリエチレン製のUチューブであり、熱交換の効率を高めている。
【0043】
図1に戻って説明する。熱交換管8は、貯留槽3から筒体14の内部に引き込まれて下方の小径部16に向けて通され、それから、小径部16で上方に折り返して筒体14の外部に引き出されて貯留槽3に戻る。この熱交換管8は、筒体14内の水との間で熱を移動させる水などの液体を、貯留槽3から取り込んで流し、貯留槽3に戻す。これにより、筒体14内の水が熱交換管8を流れる液体よりも低温の場合、熱交換管8を流れる液体は冷却され、貯留槽3に供給される。そして、筒体14内の水が熱交換管8を流れる液体よりも高温の場合、熱交換管8を流れる液体は加熱され、貯留槽3に供給される。
【0044】
熱交換管用ポンプ9は、熱交換管8内の液体に動力を付与する。この熱交換管用ポンプ9は、熱交換管用液温計10の計測結果などに基づいて動作する。そして、循環管用ポンプ23と独立して動作する。
【0045】
熱交換管用液温計10は、熱交換管8内の液体の温度を計測し、その計測結果を信号にして制御盤5に出力する。
【0046】
揚水機11は、揚水管18と、揚水量を調節する弁(図示省略)と、揚水量を計測する流量計(図示省略)と、を備えている。揚水管18は、その先端が大径部15に位置して筒体14内の水に浸かるように、当該筒体14の内部に引き込まれている。揚水機11は、水温計測管13が備える水温計21の計測結果などに基づいて筒体14内の水をくみ上げて、当該筒体14内の水温を調節する。
【0047】
具体的に、揚水機11は、図示を省略するポンプの動力によって、揚水管18の先端から筒体14内の水をくみ上げる。これと同時に、帯水層WBLの地下水が、浸水部17を介して筒体14内に浸入して、自然水位hが保たれる。これにより、筒体14内の水温が調節される。すなわち、揚水機11は、帯水層WBLの地下水が筒体14内の水よりも低温の場合、地下水との混合によって筒体14内の水を冷却する。そして、揚水機11は、帯水層WBLの地下水が筒体14内の水よりも高温の場合、地下水との混合によって筒体14内の水を加熱する。
【0048】
注水機12は、注水管19と、注水量を調節する弁(図示省略)と、注水量を計測する流量計(図示省略)と、を備えている。注水管19は、その先端が大径部15に位置するように、筒体14の内部に引き込まれている。注水機12は、水温計測管13が備える水温計21の計測結果などに基づいて筒体14内に水を注ぎ足して、当該筒体14内の水温を調節する。
【0049】
具体的に、注水機12は、図示を省略するポンプの動力によって、注水管19の先端から注水し、筒体14内に水を注ぎ足す。これにより、筒体14内の水温が調節される。すなわち、注水機12は、注ぎ足す水が筒体14内の水よりも低温の場合、注水との混合によって筒体14内の水を冷却する。そして、注水機12は、注ぎ足す水が筒体14内の水よりも高温の場合、注水との混合によって筒体14内の水を加熱する。
【0050】
なお、注水機12は、水を加熱する加熱手段を備えるようにし、所望の温度に加熱した水を注入できるようにしてもよい。また、注水機12は、水を冷却する冷却手段を備えるようにし、所望の温度に冷却した水を注入できるようにしてもよい。
【0051】
ところで、筒体14は、上下方向に50m以上100m以下程度の長さを有するので、当該筒体14内の水温は、上方と下方とで温度差(例えば、10℃の差)が生じている。すなわち、筒体14内の水温は、上方であるほど高く、下方であるほど低い。このため、必要な水温調節に応じて、揚水機11及び注水機12の双方を機能させたり、あるいは、揚水機11及び注水機12のうちの選択した一方のみを機能させたりできる。これにより、筒体14内の水温調節を効率よく行える。
【0052】
水温計測管13は、その先端が小径部16における下方に位置するように、筒体14内の内部に引き込まれている。この水温計測管13は、管本体20と、複数の水温計21と、を備えている。複数の水温計21は、互いに所定の間隔(例えば、10m間隔)をおいて管本体20に取付けられている。各水温計21は、筒体14内の水温を計測し、その計測結果を信号にして制御盤5に出力する。
【0053】
貯留槽3は、熱交換管8と循環システム4の循環管22との間に設けられ、熱交換管8又は循環管22を流れた水などの液体を蓄える。この貯留槽3は、地中GRDに設けられ、蓄えた液体の熱を溜める。具体的に、貯留槽3は、熱交換システム2で採取された地中熱を蓄えると共に、循環システム4で回収された排熱を蓄える。
【0054】
この貯留槽3は、供給口3aと、回収口3bと、流入口3cと、排出口3dと、などを有する。
【0055】
供給口3a及び回収口3bは、それぞれ、貯水槽3に蓄えた液体の液位よりも低い位置に設けられている。これら供給口3a及び回収口3bは、それぞれ、循環管22に繋がる。これにより貯留槽3は、貯留槽3に蓄えた液体を、供給口3aから循環管22に流す。そして、貯留槽3には、循環管22を流れた液体が回収口3bから流入する。
【0056】
流入口3cは、送水管41に繋がる。これにより、貯留槽3には、送水管41を流れた水が流入口3cから流入する。
【0057】
排出口3dは、ドレンパイプ48に繋がる。これにより、貯留槽3は、貯留槽3に蓄えた液体を、排出口3dからドレンパイプ48に流す。
【0058】
なお、貯留槽3は、株式会社プラント・ツリース(埼玉県蕨市)が開発したスーパージオ(登録商標)工法で埋設される人工地盤の雨水槽を兼ねるものであってもよい。スーパージオ(登録商標)工法の詳細は、特開2008−231900号公報、特開2009−007926号公報、及び特開2012−137211号公報を参照されたい。
【0059】
循環システム4は、貯留槽3に溜められた熱を所定の地域に循環させるシステムであり、インフラとして機能する。この循環システム4は、制御盤5によって統括的に制御される。すなわち、循環システム4は、制御盤5の制御下において動作して、その動作状況が制御盤5によって管理される。具体的に、循環システム4は、各所に配置された温度計や流量計の計測結果などに基づいて、各部の動作が所望する状況となるようにフィードバック制御される。
【0060】
このような循環システム4は、循環管22と、循環管用ポンプ23と、循環管用液温計24と、複数の熱交換ユニット25と、を備えている。
【0061】
循環管22は、所定の地域に埋設され、熱交換管8から送り出され貯留槽3に蓄えられた水などの液体を流し熱交換管8へ送り戻す。
【0062】
循環管用ポンプ23は、循環管22内の液体に動力を付与する。この循環管用ポンプ23は、循環管用液温計24の計測結果などに基づいて動作する。そして、循環管用ポンプ23は、熱交換管用ポンプ9と独立して動作する。
【0063】
循環管用液温計24は、循環管22内の液体の温度を計測し、その計測結果を信号にして制御盤5に出力する。
【0064】
複数の熱交換ユニット25は、それぞれ、循環管22の途中に設けられるカートリッジである。各熱交換ユニット25は、循環管22を流れる液体と、熱利用機器であるヒートポンプHPから引込管26によって循環するガスなどの媒体と、の間で熱を移動させる。
【0065】
例えば、暖房や給湯などのために、温熱である地中熱がヒートポンプHPで利用される場合、熱交換ユニット25は、循環管22を流れる液体の温熱を、引込管26によって循環する媒体に移動させる。一方、冷房などのために、冷熱である地中熱がヒートポンプHPで利用される場合、熱交換ユニット25は、循環管22を流れる液体の冷熱を、引込管26によって循環する媒体に移動させる。すなわち、この場合、熱交換ユニット25は、引込管26によって循環する媒体の排熱を、循環管22を流れる液体に移動させる。
【0066】
このような熱交換ユニット25には、シェルアンドコイル型の熱交換器を適用できる。例えば、MDI株式会社(神奈川県川崎市)が市販するMDI−TSC熱交換器(商品名)を応用することで、熱交換ユニット25は実現できる。
【0067】
温度調節ユニット40は、貯留槽3内の液温を調節するシステムであり、非常時などに機能する。この温度調節ユニット40は、制御盤5によって統括的に制御される。すなわち、温度調節ユニット40は、制御盤5の制御下において動作して、その動作状況が制御盤5によって管理される。具体的に、温度制御ユニット40は、各所に配置された温度計の計測結果などに基づいて、各部の動作が所望する状況となるようにフィードバック制御される。
【0068】
このような温度調節ユニット40は、送水管41と、送水管用ポンプ42と、水温計43と、三方バルブ44と、ろ過装置45と、回収管46と、ストレージタンク47と、ドレンパイプ48と、ドレンパイプ用バルブ49と、を備えている。
【0069】
送水管41は、揚水機11と貯水槽3の流入口3cとを繋ぎ、揚水機11がくみ上げた水を流し、貯水槽3に送る。
【0070】
送水管用ポンプ42は、送水管41内の水に動力を付与する。この送水管用ポンプ42は、水温計21,43の計測結果などに基づいて動作する。
【0071】
水温計43は、貯水槽3内の液体の温度を計測し、その計測結果を信号にして制御盤5に出力する。
【0072】
三方バルブ44は、送水管41から回収管46が分岐する箇所に設けられている。この三方バルブ44は、水温計21,43の計測結果などに基づいて動作することで、送水の態様を切り替える。具体的に、三方バルブ44は、全ての送水を停止する第1態様と、送水管41の一方から他方に送水する第2態様と、送水管41から回収管46に送水する第3態様と、を切り替える。
【0073】
ろ過装置45は、送水管41の途中に設けられている。このろ過装置45は、送水管41を流れる水をろ過する。ろ過装置45を通過した水は、ろ過装置45によるろ過により、鉄やマンガンなどが除去される。
【0074】
回収管46は、三方バルブ44と注水機13とを繋ぎ、揚水機11がくみ上げた水を回収し、ストレージタンク47を経由して注水機12に送る。
【0075】
ストレージタンク47は、回収管46の途中に設けられている。このストレージタンク47は、揚水機11がくみ上げた水を注水機12が注ぎ足す水として蓄える。
【0076】
ドレンパイプ48は、貯水槽3の排出口3dと下水管DPとを繋ぎ、貯水槽3内の液体を下水管DPに送る。
【0077】
ドレンパイプ用バルブ49は、ドレンパイプ48の途中に設けられている。このドレンパイプ用バルブ49は、水温計43の計測結果などに基づいて開閉する。
【0078】
図3に示すように、制御盤5は、記憶部27とCPU(Central Processing Unit)28とを有する。
【0079】
記憶部27は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記録媒体によって構成されている。この記憶部27には、CPU28が各種処理を実行するための処理プログラムと各種処理を実行する際に用いる各種データ(判定部30が判定に用いるデータを含む。)及び各種フラグが記憶されている。
【0080】
CPU28は、記憶部27に記憶された処理プログラムを実行することによって、通信部29、判定部30及び制御部31として機能する。
【0081】
通信部29は、熱交換システム2の各部及び循環システム4の各部との間で信号を送受信する。具体的に、通信部29は、通信部29は、熱交換管用液温計10、水温計21及び循環管用液温計24から出力される信号を、判定部30に転送する。そして、制御部31が出力する制御信号を、熱交換管用ポンプ9、揚水機11、注水機12及び循環管用ポンプ23に転送する。
【0082】
判定部30は、熱交換管用液温計10、水温計21及び循環管用液温計24から出力された信号に基づいて各種判定を行うことで、熱交換管用ポンプ9、揚水機11、注水機12及び循環管用ポンプ23のそれぞれの運転状態を決定する。そして、判定部30は、判定結果を信号にして制御部31に出力する。
【0083】
制御部31は、熱交換管用ポンプ9、揚水機11、注水機12及び循環管用ポンプ23のそれぞれに対して、通信部29を介して、判定部30から出力された信号に基づく制御信号を出力し、それぞれの運転状態を制御する。
【0084】
図4に示すように、課金システム6は、各熱交換ユニット25に一対一で設けられている。課金システム6は、積算熱量計32と、制御ユニット33と、モニター34と、を備えている。
【0085】
積算熱量計32は、熱交換ユニット25とヒートポンプHPとの間にある引込管26の途中に設けられている(
図1参照)。この積算熱量計32は、熱交換ユニット25とヒートポンプHPとの間でやり取りされる熱量の積算量を計測し、その計測結果を信号にして制御ユニット33に出力する。具体的に、積算熱量計32は、ヒートポンプHPで利用される熱量の積算量と、ヒートポンプHPから放出される熱量の積算量と、を別々に計測し、各計測結果を信号にして制御ユニット33に出力する。
【0086】
制御ユニット33は、記憶部35とCPU(Central Processing Unit)36とを有する。
【0087】
記憶部35は、例えばRAM(Random Access Memory)などの記録媒体によって構成されている。この記憶部35には、CPU36が各種処理を実行するための処理プログラムと各種処理を実行する際に用いる各種データ(取引額算出部38が計算に用いる数式のデータを含む。)及び各種フラグが記憶されている。
【0088】
CPU36は、記憶部35に記憶された処理プログラムを実行することによって、通信部37、取引額算出部38及び制御部39として機能する。
【0089】
通信部37は、積算熱量計32、モニター34及び課金サーバーSVとの間で信号を送受信する。具体的に、通信部37は、積算熱量計32が出力する信号を、取引額算出部38に転送する。そして、通信部37は、制御部39が出力する制御信号を、モニター34に転送すると共に、インターネット回線NWを利用して、事業者などの課金サーバーSVに転送する。なお、課金サーバーSVは、取引額算出部38の算出結果を収集するサーバーとして機能する。
【0090】
取引額算出部38は、積算熱量計32から出力された信号を所定の数式に代入することで、熱の取引額を算出する。すなわち、取引額算出部38は、積算熱量計32の計測結果を所定の数式に代入することで、熱の取引額を算出する。そして、取引額算出部38は、算出結果を信号にして制御部39に出力する。
【0091】
制御部39は、モニター34に対して、通信部37を介して取引額算出部38から出力された信号に基づく制御信号を出力し、モニター34の出力状態を制御する。そして、制御部39は、課金サーバーSVに対して、通信部37及びインターネット回線NWを介して、取引額算出部38から出力された信号を出力する。
【0092】
モニター34は、利用者が確認しやすい箇所、例えば室内の壁に設けられている。このモニター34は、制御部39から出力された制御信号に基づいて、取引額算出部38の算出結果を出力する出力部として機能する。具体的に、モニター34には、利用者の支出となる地中熱の利用額と、利用者の収入となる排熱の売却額と、が表示される。
【0093】
次に、地中熱の地域面的活用システム1における熱の流れを、
図1に基づいて説明する。
【0094】
まず、夏季などに冷房を行う場合を説明する。熱交換システム2では、熱交換管8内の液体から、筒体14内の水に熱が移動する。これにより、熱交換管8内の液体が冷却される。なお、筒体14内の水は、揚水機11の揚水に伴う地下水の浸入、注水機12による注水、あるいは大気との接触などによって冷却されることで、再び、熱交換管8内の液体の冷却が可能になる。
【0095】
冷却された液体は、熱交換管用ポンプ9の動力により、熱交換管8から貯留槽3に放出される。これにより、貯留槽3内の液体が冷却される。
【0096】
循環システム4では、熱交換システム2で冷却された貯留槽3内の液体が、循環管用ポンプ23の動力により、循環管22を循環する。そして、熱交換ユニット25において、引込管26内の媒体から、循環管22内の液体に熱が移動する。これにより、引込管26内の媒体が冷却される。結果、ヒートポンプHPを介して、冷房を行うことができる。
【0097】
続いて、給湯や、冬季などに暖房を行う場合を説明する。熱交換システム2では、筒体14内の水から、熱交換管8内の液体に熱が移動する。これにより、熱交換管8内の液体が加熱される。なお、筒体14内の水は、揚水機11の揚水に伴う地下水の浸入、注水機12による注水、あるいは大気との接触などによって加熱されることで、再び、熱交換管8内の液体の加熱が可能になる。
【0098】
加熱された液体は、熱交換管用ポンプ9の動力により、熱交換管8から貯留槽3に放出される。これにより、貯留槽3内の液体が加熱される。
【0099】
循環システム4では、熱交換システム2で加熱された貯留槽3内の液体が、循環管用ポンプ23の動力により、循環管22を循環する。そして、熱交換ユニット25において、循環管22内の液体から、引込管26内の媒体に熱が移動する。これにより、引込管26内の媒体が加熱される。結果、ヒートポンプHPを介して、給湯や暖房を行うことができる。
【0100】
次に、温度調節ユニット40による貯留槽3内の液温のリセットを、
図1に基づいて説明する。
【0101】
まず、三方バルブ44が、送水管41の一方から他方に送水する第2態様に切り替えられる。そして、揚水機11が動作して、筒体14内の水をくみ上げると共に、送水管用ポンプ42が動作して、揚水機11がくみ上げた水が送水管41を流れる。これにより、帯水層WBLの地下水が、ろ過装置45でろ過されてから貯留槽3に送られる。
【0102】
また、ドレンパイプ用バルブ49が開き、貯留槽3内の液体が、ドレンパイプ48を伝って下水管DPに排出される。
【0103】
次に、ストレージタンク47の周囲の水の流れを、
図1に基づいて説明する。
【0104】
まず、三方バルブ44が、送水管41から回収管46に送水する第3態様に切り替えられる。そして、揚水機11が動作して、筒体14内の水をくみ上げると共に、送水管用ポンプ42が動作して、揚水機11がくみ上げた水が送水管41、回収管46の順に流れる。これにより、筒体14内の水がストレージタンク47に送られて蓄えられる。
【0105】
注水機12が動作して、筒体14内に水が注ぎ足される。筒体14内に注ぎ足される水は、ストレージタンク47に蓄えられた水であり、ストレージタンク47から回収管46を流れて注水機12に送られる。
【0106】
このように、地中熱の地域面的活用システム1によれば、希望者は、地中熱交換器を設置せずに、熱交換ユニット25を設置するだけで地中熱を利用できる。すなわち、地域エネルギーの地産地消が可能となり、安全で安心な自立した環境を実現できる。これにより、食糧・エネルギー・水の他者依存と、災害に対する不安がある現代において、地中熱の利用を可能にする地域の未来に安心のインフラを構築し、新しい基盤技術と新しい価値観で新産業を創出できる。
【0107】
そして、熱交換管用ポンプ9及び循環管用ポンプ23が互いに独立して動作するので、地中熱の取得と供給とを別個独立に行える。例えば、地中熱の利用が少ない時間帯において消費エネルギーを抑えて熱交換管用ポンプ9を稼働させる一方で、循環管用ポンプ23をフル稼働させられる。
【0108】
また、貯留槽3が、貯留槽3に蓄えた液体の液位よりも低い位置に、循環管22に繋がる供給口3aを有しているので、循環管22内に空気が入ることを防止し、循環管22内を液体で満たした状態にすることができる。これにより、熱交換ユニット25における熱交換効率の低下を防止できる。
【0109】
さらに、揚水機11を備えているので、筒体14内の水をくみ上げて、当該筒体14内に帯水層WBLからの新たな水を浸入させることで、当該筒体14内の水温を調節できる。これにより、筒体14内の水との間で熱を移動させる熱交換管8内の液温を調節できる。例えば、筒体14内の熱量不足の場合、このままでは熱交換管8内の液温を調節できないが、筒体14内の水をくみ上げることで、筒体14内の熱量不足を解消し、熱交換管8内の液温を調節できる。
【0110】
そして、貯留槽3が、揚水機11がくみ上げた水を貯留槽3に流入させる流入口3cと、貯留槽3に蓄えた液体を排出する排出口3dと、を有しているので、例えば、数年に1回の大寒波で熱の使用量が急激に増えたり、数年に1回の猛暑で冷熱の使用量が急激に増えたりして、貯留槽3内の液体が所望する温度からかけ離れた場合に、貯留槽3内の液体を排出すると共に貯留槽3内に地下水を供給することで、貯留槽3内の液温をリセットすることができる。これにより、異常気象で熱又は冷熱の使用量が急激に増えた場合であっても、地中熱の地域面的活用システム1を継続して利用することができる。
【0111】
また、注水機12を備えているので、筒体14内に水を注ぎ足すことで、当該筒体14内の水温を調節できる。これにより、筒体14内の水との間で熱を移動させる熱交換管8内の液温を調節できる。例えば、筒体14内の熱量不足の場合、このままでは熱交換管8内の液温を調節できないが、筒体14内に水を注ぎ足すことで、筒体14内の熱量不足を解消し、熱交換管8内の液温を調節できる。
【0112】
さらに、揚水機11がくみ上げた水を注水機12が注ぎ足す水として蓄えるストレージタンク47を備えているので、揚水機11がくみ上げた水を有効に活用することができる。
【0113】
そして、熱交換ユニット25がカートリッジであるので、熱交換ユニット25を簡単に設置できる。これにより、地中熱の地域面的活用システム1の普及が促進される。
【0114】
また、熱の取引額が算出されるので、この算出結果を利用することで、利便性が高まり、地中熱の地域面的活用システム1の普及が促進される。
【0115】
さらに、熱の取引額がモニター34に出力されるので、利用者は、熱の取引額を容易に把握でき、利便性が高い。これにより、地中熱の地域面的活用システム1の普及が促進される。
【0116】
そして、地中熱の地域面的活用システム1を管理する事業者などは、課金サーバーSVに収集したデータに基づいて、容易に課金することができ、利便性が高い。具体的に、事業者などは、各利用者の地中熱の利用額と、各利用者の排熱の売却額と、を容易に把握することができる。
【0117】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0118】
すなわち、上記実施形態において、地中熱及び排熱を溜める貯留槽3を備えている場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、貯留槽3を備えず、熱交換管8及び循環管22を互いに直接接続するようにしてもよい。
【0119】
あるいは、上記実施形態において、古井戸7を利用した熱交換システム2の場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、地中GRDの帯水層WBLに達する穴を新規に掘削し、当該穴に筒体14を埋設することで熱交換システム2を構成するようにしてもよい。
【0120】
あるいは、上記実施形態において、熱交換ユニット25によって、循環管22内の液体の熱を取得する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、循環管22内の液体を直接引き込んで、当該液体の熱を取得するようにしてもよい。
【解決手段】地中熱の地域面的活用システム1は、地中GRDの帯水層WBLに達する穴に埋設され、帯水層WBLから浸入する水で満たされる筒体14と、この筒体14の内部に引き込まれて下方に向けて通されてから、上方に折り返して筒体14の外部に引き出され、筒体14内の水との間で熱を移動させる水などの液体を流す熱交換管8と、所定の地域に埋設され、熱交換管8から送り出された水などの液体を流し熱交換管8へ送り戻す循環管22と、この循環管22を循環する水などの液体と、ヒートポンプHPから循環する不凍液などの媒体と、の間で熱を移動させる熱交換ユニット25と、を備えている。