(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検知部は、前記第1特徴量として、前記弁を閉じる前の前記流体供給装置の消費電力量と前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量との差を算出し、算出した差が第2閾値以上である場合に、前記弁の下流側の管路において流体漏れが発生していると検知することを特徴とする請求項3に記載の検知装置。
前記検知部は、前記第1特徴量として、前記弁を閉じる前の前記流体供給装置の消費電力量に対する前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量の比を算出し、算出した比が第3閾値以下である場合に、前記弁の下流側の管路において流体漏れが発生していると検知することを特徴とする請求項3に記載の検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
(検知システムの全体構成)
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る検知システムの概略構成を示す模式図である。
【0014】
本実施形態の検知システム1は、コンプレッサ10と、エアータンク20と、管路30と、射出成型機40A・40Bと、圧縮エアー(圧縮気体)を利用する装置(圧縮エアー利用装置)であるエアーエジェクタ50A・50B、取り出しロボット60A・60B、パレットチェンジャ70A・70Bおよび樹脂乾燥機80A・80Bと、検知装置90とを備える。
【0015】
このように、本実施形態の検知システム1は、樹脂乾燥機80A・80Bにより成形材料(ペレット)を乾燥させ、射出成型機40A・40Bにより金型を用いてワーク(例えば金属端子)を乾燥させた成形材料と伴にインサート成形することにより製品を生産するシステムである。
図1では、2台の射出成型機40A・40Bが示されているが、検知システムが備える射出成型機の台数はこれに限定されるものではなく、数台〜数十台であってもよい。射出成型機40A・40Bの各々は、当該射出成型機で消費された電力量を計測する電力計41A・41Bを備えている。
【0016】
また、射出成型機40A・40Bの各々に対応して、エアーエジェクタ50A・50B、取り出しロボット60A・60B、パレットチェンジャ70A・70Bおよび樹脂乾燥機80A・80Bが設置されている。エアーエジェクタ50A・50Bは、射出成型機40A・40Bの金型から成型品を取り出すためのものである。取り出しロボット60A・60Bは、エアーエジェクタ50A・50Bにより取り出された成型品をコンベアに搬送するためのものである。パレットチェンジャ70A・70Bは、コンベア上にパレットを供給するためのものである。樹脂乾燥機80A・80Bは、射出成型機40A・40Bにより成形される材料(成形材料)を乾燥するためのものである。
【0017】
本実施形態では、各射出成型機に対応する、エアーエジェクタ、取り出しロボット、パレットチェンジャおよび樹脂乾燥機が、圧縮エアーを利用して動作する装置(圧縮エアー利用装置)である。
【0018】
エアータンク20は、圧縮されたエアーを貯蔵するタンクである。エアータンク20には、エアータンク内の圧力を計測する圧力計21が設置されている。
【0019】
コンプレッサ10は、圧縮エアーを生成し、エアータンク20を介して、生成した圧縮エアーを圧縮エアー利用装置に供給する装置である。コンプレッサ10は、エアータンク20に設置された圧力計21により計測された圧力を監視しており、計測される圧力が設定値以上を保つように動作する。具体的には、コンプレッサ10は、(1)圧力計21で計測された圧力が設定値未満である場合に圧縮エアーの生成処理を実行し、圧縮エアーをエアータンク20に供給するON/OFF制御動作、もしくは(2)圧力計21で計測された圧力が設定値未満である場合に圧縮力を上げて圧縮エアーを生成し、圧縮エアーをエアータンク20に供給するインバータ制御動作、の何れかの動作を行う。なお、本実施形態ではインバータ制御動作を行うものとする。
【0020】
また、コンプレッサ10は、当該コンプレッサで消費された電力量を計測する電力計11を備えている。
【0021】
管路30は、エアータンク20内の圧縮エアーを、圧縮エアー利用装置であるエアーエジェクタ50A・50B、取り出しロボット60A・60B、パレットチェンジャ70A・70Bおよび樹脂乾燥機80A・80Bに供給するために設置されている配管である。管路30の始端はエアータンク20に接続されており、管路の途中に圧縮エアー利用装置のレイアウトに応じた分岐部(分岐点)31が設けられている。複数の末端の各々は、エアーエジェクタ50A・50B、取り出しロボット60A・60B、パレットチェンジャ70A・70Bおよび樹脂乾燥機80A・80Bのいずれかに接続されている。
【0022】
また、管路30の途中には、管路の開閉を行うための複数の電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bが設置されている。また、本実施形態では、各電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bに対して、当該電磁弁よりも管路30の下流側に管路30内の圧力を計測する圧力センサ120A・120B・120C・121A・121Bが設置されている。
【0023】
検知装置90は、電力計11により計測されたコンプレッサ10の消費電力量に基づいて、エアー漏れを検知するための装置である。
【0024】
(検知装置の構成)
次に検知装置90の内部構成について説明する。
図2は、検知装置90の内部構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、検知装置90は、電源管理テーブル記憶部91と、電源制御部92と、電磁弁管理テーブル記憶部93と、電磁弁制御部94と、第1閾値記憶部95と、第1漏れ検知部96と、電磁弁−センサ対応テーブル記憶部97と、第2漏れ検知部98と、通知処理部99と、閾値設定部100とを備えている。
【0025】
電源管理テーブル記憶部91は、各射出成型機40A・40Bについて、当該射出成型機を識別する監視対象情報と、当該射出成型機と連動して動作する圧縮エアー利用装置を識別する制御対象情報と、停止条件閾値とを対応付けた電源管理テーブルを記憶するものである。なお、停止条件閾値は、射出成型機が停止しているときの所定期間における消費電力量よりもわずかに大きく、かつ、射出成型機が動作しているときの所定期間における消費電力量よりも小さい値が設定されている。
【0026】
図3は、電源管理テーブルの一例を示す図である。
図3に示されるように、射出成型機40Aを示す監視対象情報と、当該射出成型機40Aと連動するエアーエジェクタ50A、取り出しロボット60A、パレットチェンジャ70Aおよび樹脂乾燥機80Aを識別する制御対象情報と、停止条件閾値「2kW」とが対応付けられている。
【0027】
電源制御部92は、電源管理テーブルを参照して、装置の電源を制御するものである。電源制御部92は、各射出成型機40A・40Bについて、当該射出成型機に設置されている電力計41A(または41B)から取得した所定期間内の第1積算電力量と、当該射出成型機を示す監視対象情報に対応する停止条件閾値とを比較する。ここで、所定期間とは、例えば、現時刻から過去に5分間遡った期間である。電源制御部92は、所定の単位時間(例えば1分)の間隔で電力計41A・41Bの計測値を監視することにより、所定期間の第1積算電力量を算出することができる。
【0028】
第1積算電力量が停止条件閾値以下である場合、電源制御部92は、監視対象情報に対応する制御対象情報で示される装置の電源をオンからオフに制御するとともに、当該第1積算電力量に対応する監視対象情報を電磁弁制御部94に出力する。
【0029】
ここで、停止条件閾値は、射出成型機40A(または40B)の停止しているときの所定期間における消費電力量よりもわずかに大きく、かつ、当該射出成型機が動作しているときの所定期間における消費電力量よりも小さい値が設定されている。そのため、第1積算電力量が停止条件閾値以下である場合、電源制御部92は、射出成型機40A(または40B)が停止しているものと判断し、当該射出成型機40A(または40B)と連動する装置の電源をオンからオフとし、停止させることができる。
【0030】
電磁弁管理テーブル記憶部93は、各射出成型機40A・40Bについて、当該射出成型機を識別する監視対象情報と、当該射出成型機と連動する装置の上流側に位置する電磁弁を識別する電磁弁識別情報とを対応付けた電磁弁管理テーブルを記憶するものである。
図4は、電磁弁管理テーブルの一例を示す図である。
図4に示されるように、射出成型機40Aと、当該射出成型機40Aと連動するエアーエジェクタ50A、取り出しロボット60Aおよびパレットチェンジャ70Aの上流側に位置する電磁弁110Aおよび樹脂乾燥機80Aの上流側に位置する電磁弁111Aとが対応付けられている。
【0031】
電磁弁制御部94は、電磁弁管理テーブルを参照して、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの開閉を制御するものである。電磁弁制御部94は、電源制御部92から監視対象情報を受けると、当該監視対象情報に対応する電磁弁識別情報で示される電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bを閉じる制御(閉制御)を行う。
【0032】
また、電磁弁制御部94は、いずれかの電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの閉制御を行ったとき、当該閉制御後の各電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの開閉状態を示す開閉情報と当該閉制御により閉じられた電磁弁を示す閉対象情報とが付加された検知開始指示を第1漏れ検知部96および第2漏れ検知部98に出力する。
【0033】
電磁弁制御部94は、各電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの開閉状態を監視しており、その監視結果に応じて開閉情報を生成することができる。
【0034】
第1閾値記憶部95は、閉じられている電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの組合せごとに、当該組合せを示す組合せ情報と、第1検知用閾値(第1閾値)とを対応付けた第1検知用閾値テーブルを記憶するものである。
図5は、第1検知用閾値テーブルの一例を示す図である。
図5では、電磁弁110A・111Aのみが閉じられているときの第1検知用閾値として「100kW」が示されている。
【0035】
第1漏れ検知部96は、コンプレッサ10の消費電力量に基づいて、エアー漏れを検知するものである。コンプレッサ10の消費電力量は、エアー漏れが発生している場合には余分な圧縮エアーを生成する必要があるため増大してしまう。そのため、エアー漏れが生じていない状態でのコンプレッサ10の所定期間における消費電力量を閾値として予め定めておき、実際の所定期間における消費電力量と比較することにより、エアー漏れを検知することができる。
【0036】
具体的には、第1漏れ検知部96は、電磁弁制御部94から検知開始指示を受けると、コンプレッサ10に設置されている電力計11の計測値から所定期間(例えば、検知開始指示を受けてから30分間)の第2積算電力量を算出する。また、第1漏れ検知部96は、検知開始指示に付加されている開閉情報を確認し、閉じられている電磁弁を特定する。そして、第1漏れ検知部96は、特定した電磁弁の組合せを示す組合せ情報に対応する第1検知用閾値を第1検知用閾値テーブルから読み出し、読み出した第1検知用閾値と第2積算電力量とを比較する。第2積算電力量が第1検知用閾値以下である場合、第1漏れ検知部96は、エアー漏れがないものと判断する。また、第2積算電力量が第1検知用閾値よりも大きい場合、第1漏れ検知部96は、開閉情報に基づいて特定した、閉じられている電磁弁から下流側(末端側)の部分を除く管路30(電磁弁の上流側の管路30)においてエアー漏れが発生していると判断し、その判断結果を通知処理部99に出力する。
【0037】
電磁弁−センサ対応テーブル記憶部97は、電磁弁を識別する電磁弁識別情報と、当該電磁弁よりも管路30の下流側に設置されている圧力センサを識別するセンサ識別情報とを対応付けた電磁弁−センサ対応テーブルを記憶するものである。
図6は、電磁弁−センサ対応テーブルの一例を示す図である。
図6に示されるように、例えば、電磁弁110Aと、当該電磁弁110Aの下流側に設置されている圧力センサ120Aとが対応付けられている。
【0038】
第2漏れ検知部98は、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bに対して管路30の下流側に設置された圧力センサ120A・120B・120C・121A・121Bによる計測値に基づいて、管路30のエアー漏れを検知するものである。
【0039】
第2漏れ検知部98は、電磁弁制御部94から検知開始指示を受けると、検知開始指示に付加されている閉対象情報で示される電磁弁(すなわち、今回閉じられた電磁弁)の1つを検知対象電磁弁とする。そして、第2漏れ検知部98は、当該検知対象電磁弁を示す電磁弁識別情報に対応するセンサ識別情報を電磁弁−センサ対応テーブルから読み出す。第2漏れ検知部98は、読み出したセンサ識別情報で示される圧力センサ120A(または、120B,120C,121A,121B)の計測値を確認し、その計測値の単位時間当たりの変化量を算出する。算出した変化量が予め設定されている第2検知用閾値よりも小さい場合、第2漏れ検知部98は、エアー漏れがないものと判断する。また、変化量が第2検知用閾値よりも大きい場合、第2漏れ検知部98は、検知対象電磁弁から下流側(下流側)の管路30においてエアー漏れが発生していると判断し、その判断結果を通知処理部99に出力する。
【0040】
通知処理部99は、第1漏れ検知部96または第2漏れ検知部98から判断結果を受けると、当該判断結果をユーザに通知する。通知の方法としては、表示装置に判断結果を表示する方法、スピーカを用いて音声により判断結果を出力する方法、判断結果に応じて警告灯を点灯させる方法、判断結果を示す情報を外部の装置に送信する方法などが考えられる。
【0041】
閾値設定部100は、第1閾値記憶部95が記憶する第1検知用閾値テーブルを設定するものである。閾値設定部100は、ユーザ入力に応じて第1検知用閾値を設定してもよい。また、閾値設定部100は、第1漏れ検知部96により算出された第2積算電力量に基づいて、開閉情報により特定される、閉じられている電磁弁の組合せに対応する第1検知用閾値を更新してもよい。
【0042】
例えば、管路30を設置した初期状態の際には、ユーザが適当な値を入力し、閾値設定部100は、ユーザ入力に従って第1検知用閾値を設定する。その後、各電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの開閉の組合せを適宜変えて運転を行うことで、閾値設定部100は、第1漏れ検知部96により算出された第2積算電力量により、様々な組合せに対する第1検知用閾値を設定することができる。初期状態の際には、従来のように音によるエアー漏れがないことを確認することが好ましい。これにより、エアー漏れがない状態での消費電力量が第1検知用閾値として設定される。
【0043】
第2積算電力量を用いて閾値設定部100による第1検知用閾値の更新方法としては、以下のいずれかの方法を用いればよい。
【0044】
(a)第1漏れ検知部96によりエアー漏れがないと判断された場合、第1漏れ検知部96により算出された第2積算電力量を、開閉情報により特定される、閉じられている電磁弁の組合せに対応する第1検知用閾値として更新する。
【0045】
(b)第1漏れ検知部96によりエアー漏れがないと判断された場合、第1漏れ検知部96により算出された第2積算電力量に所定値だけ加算した値を、開閉情報により特定される、閉じられている電磁弁の組合せに対応する第1検知用閾値として更新する。所定値としては、コンプレッサ10の所定期間における消費電力量の計測誤差等を考慮した値であり、エアー漏れにより生じる消費電力量の増加分よりも小さい値が予め設定されている。
【0046】
(c)第1漏れ検知部96によりエアー漏れがないと判断されたときの第2積算電力量を過去の所定回数または過去の所定期間分だけ蓄積しておく。そして、第1漏れ検知部96によりエアー漏れがないと判断された場合、蓄積しておいた過去の第2積算電力量の代表値(最大値、平均値など)または代表値に所定値を加算した値を、開閉情報により特定される、閉じられている電磁弁の組合せに対応する第1検知用閾値として更新する。
【0047】
なお、第1漏れ検知部96によりエアー漏れがあると判断された場合には、第1検知用閾値を更新しない。
【0048】
上記の(a)の場合、前回の第2積算電力量が第1検知用閾値として設定される。そのため、前回の第2積算電力量よりも大きくなった場合、エアー漏れと判断し通知される。この際、ユーザは、管路を確認しながら、本当にエアー漏れが発生しているか否かを検証することができ、エアー漏れを早期に発見することができる。
【0049】
上記の(b)の場合には、前回の第2積算電力量に所定値だけ加算した値が第1検知用閾値として設定される。そのため、電力計による測定誤差や外部環境の変化によってわずかに第2積算電力量が前回の第2積算電力量よりも増大したとしても、エアー漏れと検知されない。これにより、不要なエアー漏れの通知を防止することができる。
【0050】
上記の(c)の場合、過去の第2積算電力量の代表値が第1検知用閾値として設定される。これにより、過去の第2積算電力量の変動を考慮して閾値を設定することができる。
【0051】
(エアー漏れの検知処理の流れ)
次に本実施形態におけるエアー漏れの検知処理の一例について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態のエアー漏れの検知処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
まず、電源制御部92および電磁弁制御部94は、各射出成型機40A・40Bに設置されている電力計41A・41Bの計測値に基づいて、現時刻から過去の所定期間(例えば5分間)の第1積算電力量を射出成型機40A・40Bごとに算出する。また、電源制御部92は、各射出成型機40A・40Bについて、当該射出成型機40A(または40B)に対応する停止条件閾値を電源管理テーブルから読み出す。そして、電源制御部92は、各射出成型機40A・40Bについて、算出した第1積算電力量が停止条件閾値以下になったか否かを判断する(S1)。第1積算電力量が停止条件閾値以下になった場合、電源制御部92は、当該第1積算電力量に対応する射出成型機が停止したものと判断する。
【0053】
第1積算電力量が停止条件閾値以下になった場合(S1でYes)、電源制御部92は、当該第1積算電力量に対応する射出成型機が停止したものと判断し、当該射出成型機に対応する制御対象情報を電源管理テーブルから読み出す。そして、電源制御部92は、制御対象情報で示される各装置(エアーエジェクタ、取り出しロボット、パレットチェンジャおよび樹脂乾燥機)の電源をオンからオフに切り換え、停止させる(S2)。すなわち、電源制御部92は、停止された射出成型機40A(または40B)と連動していたエアーエジェクタ50A(または50B)、取り出しロボット60A(または60B)、パレットチェンジャ70A(または70B)および樹脂乾燥機80A(または80B)を停止させることができる。
【0054】
次に、電源制御部92は、停止条件閾値以下となった第1積算電力量に対応する監視対象情報を電磁弁制御部94に出力する。電磁弁制御部94は、電源制御部92から受けた監視対象情報に対応する電磁弁識別情報を電磁弁管理テーブルから読み出し、読み出した電磁弁識別情報で示される電磁弁の閉制御を行う(S3)。
【0055】
ここでは、S1において、射出成型機40Aが停止したものと判断され、S2において、射出成型機40Aと連動していたエアーエジェクタ50A、取り出しロボット60A、パレットチェンジャ70Aおよび樹脂乾燥機80Aが停止され、S3において、電磁弁110A・111Aが閉じられたものとする。また、この段階では、既に電磁弁110Cが閉じられており、他の電磁弁110B・111Bが開いていたものとする。
【0056】
電磁弁制御部94は、閉制御を行った電磁弁110A・111Aを示す閉対象情報と、電磁弁110A・111A・110Cが閉じられており、その他の電磁弁110B・111Bが開いていることを示す開閉情報とを付加した検知開始指示を第1漏れ検知部96および第2漏れ検知部98に出力する。
【0057】
第2漏れ検知部98は、閉対象情報で示される電磁弁110A・111Aのそれぞれを検知対象電磁弁とし、当該検知対象電磁弁を示す電磁弁識別情報に対応するセンサ識別情報を電磁弁−センサ対応テーブルから読み出す。第2漏れ検知部98は、センサ識別情報で示される圧力センサ120A(または121A)による計測値の単位時間当たりの変化量と第2検知用閾値とを比較する(S4)。
【0058】
圧力センサ120A(または121A)の変化量が第2検知用閾値以下である場合(S4でYes)、第2漏れ検知部98は、エアー漏れがないものと判断し、S6の処理に移行する。電磁弁110Aから下流側の管路30においてエアー漏れがない場合、電磁弁110Aを閉じると、当該管路30においてエアーの流入および流出がなくなる。そのため、電磁弁110Aから管路30の下流側に設置された圧力センサ120Aの計測値には変化がない。よって、圧力センサ120Aの変化量が第2検知用閾値以下である場合、エアー漏れがないと判断することができる。電磁弁111Aについても同様である。
【0059】
一方、圧力センサ120A(または121A)の変化量が第2検知用閾値よりも大きい場合(S4でNo)、第2漏れ検知部98は、検知対象電磁弁から下流側の管路30においてエアー漏れが発生していると判断し、その判断結果を通知処理部99に出力する(S5)。例えば、電磁弁110Aから下流側の管路30においてエアー漏れが発生していたとする。この場合、電磁弁110Aを閉じると、電磁弁110Aから下流側の管路30においてエアーの外部への流出が生じる。そのため、電磁弁110Aよりも管路30の下流側に設置された圧力センサ120Aの計測値は大きく低下していき、その変化量が大きくなる。そのため、圧力センサ120Aの変化量が第2検知用閾値よりも大きい場合、第2漏れ検知部98は、当該圧力センサ120Aに対応する検知対象電磁弁である電磁弁110Aから下流側の管路30においてエアー漏れが発生していると判断することができる。
【0060】
次に、第1漏れ検知部96は、電磁弁制御部94から検知開始指示を受けると、コンプレッサ10に設置されている電力計11の計測値から所定期間(例えば、検知開始指示を受けてから30分間)の第2積算電力量を算出する。また、第1漏れ検知部96は、開閉情報を基に閉じられている電磁弁110A・110C・111Aの組合せを特定し、特定した電磁弁の組合せを示す組合せ情報に対応する第1検知用閾値を第1検知用閾値テーブルから読み出す。その後、第1漏れ検知部96は、第1検知用閾値と第2積算電力量とを比較する(S6)。
【0061】
第2積算電力量が第1検知用閾値以下である場合(S6でYes)、第1漏れ検知部96は、エアー漏れがないものと判断する(S7)。その後、閾値設定部100は、第1検知用閾値の更新処理を行う(S8)。
【0062】
一方、第2積算電力量が第1検知用閾値よりも大きい場合(S6でNo)、第1漏れ検知部96は、開閉情報に基づいて特定した、閉じられている電磁弁から下流側の部分を除く管路30においてエアー漏れが発生していると判断し、その判断結果を通知処理部99に出力する(S9)。ここでは、電磁弁110A・110C・111Aから下流側の部分を除く管路においてエアー漏れが発生している旨が通知される。これにより処理を終了する。
【0063】
エアー漏れが発生している場合、コンプレッサ10は、漏れているエアーの分だけ余計に稼動する必要があり、消費電力量が増大する。一方、エアー漏れが発生していない場合、コンプレッサ10の消費電力量が略一定である。
【0064】
そのため、第2積算電力量が第1検知用閾値以下である場合にエアー漏れがないものと判断することができる。一方、第2積算電力量が第1検知用閾値よりも大きい場合、閉じられている電磁弁から下流側の部分を除く管路においてエアー漏れが発生していると判断することができる。
【0065】
このように、第1漏れ検知部96は、エアーを供給するための装置であるコンプレッサ10の第2積算電力量と第1検知用閾値とを比較するだけで、簡易にエアー漏れを検知することができる。
【0066】
また、エアー漏れがないと判断されたとき、閾値設定部100は、第1検知用閾値を更新する。上記のS2からS9の処理は、いずれかの射出成型機40A・40Bが停止したタイミングごとに繰り返される。このタイミングは、故障による停止、終業時の停止、段取り待ちによる停止など頻繁に繰り返される。そのため、精度の高い第1検知用閾値を早期に設定することができる。なお、ある程度精度の高い第1検知用閾値が設定できた段階で、S8の処理を省略してもよい。そして、管路の増設等を行ったタイミングで、S8の処理を再開してもよい。
【0067】
このように、本実施形態1の検知装置90は、圧縮エアー(流体)を利用するエアーエジェクタ(流体利用装置)50A・50B、取り出しロボット(流体利用装置)60A・60B、パレットチェンジャ(流体利用装置)70A・70Bおよび樹脂乾燥機(流体利用装置)80A・80Bと、圧縮エアーを圧縮エアー利用装置に供給するためのコンプレッサ(流体供給装置)10とを有するシステムにおけるエアー漏れを検知する。そして、検知装置90は、コンプレッサ10の消費電力量に基づいて、エアー漏れの有無を検知する第1漏れ検知部96を備える。
【0068】
エアー漏れが発生している場合、コンプレッサ10は、漏れたエアーの量だけ余計に供給する必要がある。そのため、コンプレッサ10の消費電力量は、エアー漏れの有無に応じて変化することとなる。よって、上記のようにコンプレッサ10の消費電力量に基づいてエアー漏れの有無を検知することができる。この場合、従来のような音ではなく消費電力量に基づくため、振動音等の雑音があっても簡易に流体漏れを検知できる。また、圧力センサ等を多数必要としないため、低コスト化を図ることができる。
【0069】
さらに、第1漏れ検知部96は、コンプレッサ10の消費電力量が第1検知用閾値以上である場合、エアー漏れが発生していると検知する。例えば、管路30には電磁弁110Aが設けられており、第1漏れ検知部96は、電磁弁110Aを閉じた後のコンプレッサ10の消費電力量が第1検知用閾値以上である場合に、電磁弁110Aの上流側の管路30において流体漏れが発生していると検知する。これにより、管路30の一部である、電磁弁110Aの上流側の管路30におけるエアー漏れを簡易に検知することができる。
【0070】
<実施形態2>
上記の実施形態1では、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bから下流側の管路30におけるエアー漏れを、圧力センサ120A・120B・120C・121A・121Bを用いて検知していた。しかしながら、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bから下流側の管路におけるエアー漏れについても、コンプレッサ10の消費電力量に基づいて検知してもよい。本実施形態は、圧力センサ120A・120B・120C・121A・121Bを用いることなく、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bから下流側の管路におけるエアー漏れをコンプレッサ10の消費電力量に基づいて検知する形態である。
【0071】
本実施形態におけるシステム構成は、
図1に示すシステムと同様である。ただし、
図1に示す圧力センサ120A・120B・120C・121A・121Bは省略してもよい。
【0072】
図8は、本実施形態における検知装置の構成を示す図である。
図8に示されるように、検知装置90は、
図2に示す検知装置と比較して、第2漏れ検知部98、電磁弁−センサ対応テーブル記憶部97および閾値設定部100の代わりに第3閾値記憶部101、第3漏れ検知部102および閾値設定部103を備える点で異なる。それ以外の構成については実施形態1と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0073】
なお、本実施形態において、電磁弁制御部94は、検知開始指示を第1漏れ検知部96および第3漏れ検知部102に出力するものとする。
【0074】
第3閾値記憶部101は、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bごとに設定された第3検知用閾値(第2閾値)を記憶している。ここで、第3検知用閾値としては、対応する電磁弁よりも下流側においてエアー漏れがない状態で当該電磁弁を閉じる前後におけるコンプレッサ10の消費電力の変化量の標準値が設定される。
図9は、第3閾値記憶部の一記憶例を示す図である。
【0075】
第3漏れ検知部102は、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bを閉じる前後におけるコンプレッサ10の消費電力量の差に基づいて、閉じられた電磁弁から下流側の管路におけるエアー漏れを検知するものである。コンプレッサ10の消費電力量は、管路30においてエアー漏れが発生している場合には余分な圧縮エアーを生成する必要があるため増大してしまう。従って、電磁弁110A・110B・110C・111A・111Bの何れかから下流側においてエアー漏れが発生している場合、当該電磁弁を閉じる前のコンプレッサ10の消費電力量と当該電磁弁を閉じた後のコンプレッサ10の消費電力量との差が、エアー漏れが発生していない場合と比べて大きくなる。そのため、電磁弁を閉じる前後におけるコンプレッサ10の消費電力量の差と第3検知用閾値とを比較することにより、エアー漏れを検知することができる。
【0076】
具体的には、第3漏れ検知部102は、電磁弁制御部94から検知開始指示を受けると、コンプレッサ10に設置されている電力計11の計測値に基づき、検知開始指示を受ける前の所定期間(例えば30分間)の積算電力量と、検知開始指示を受けた後の所定期間(例えば、30分間)の積算電力量との差(閉前後差)を算出する。なお、第3漏れ検知部102は、電力計11の単位時間ごとの計測値を過去の一定期間分だけ蓄積している。そのため、第3漏れ検知部102は、検知開始指示を受ける前の所定期間(例えば30分間)の積算電力量を算出することができる。
【0077】
また、第3漏れ検知部102は、検知開始指示に付加されている閉対象情報で示される電磁弁(すなわち、今回閉じられた電磁弁)の1つを検知対象電磁弁とし、当該検知対象電磁弁に対応する第3検知用閾値を第3閾値記憶部101から読み出す。
【0078】
そして、第3漏れ検知部102は、算出した閉前後差と第3検知用閾値とを比較する。閉前後差が第3検知用閾値以下である場合、第3漏れ検知部102は、エアー漏れがないものと判断する。また、閉前後差が第3検知用閾値よりも大きい場合、第3漏れ検知部102は、検知対象電磁弁から下流側の管路においてエアー漏れが発生していると判断し、その判断結果を通知処理部99に出力する。
【0079】
閾値設定部103は、実施形態1と同様の第1検知用閾値を設定する機能に加えて、第3検知用閾値を設定する機能も備えている。閾値設定部103は、ユーザ入力に応じて第3検知用閾値を設定してもよい。また、閾値設定部103は、第3漏れ検知部102により算出された閉前後差に基づいて、閉対象情報で示される電磁弁に対応する第3検知用閾値を更新してもよい。
【0080】
例えば、管路30を設置した初期状態の際には、ユーザが適当な値を入力し、閾値設定部103は、ユーザ入力に従って第3検知用閾値を設定する。その後、各電磁弁の開閉の組合せを適宜変えて運転を行うことで、閾値設定部103は、第3漏れ検知部102により算出された閉前後差により、各電磁弁に対する第3検知用閾値を設定することができる。初期状態の際には、従来のように音によるエアー漏れがないことを確認することが好ましい。これにより、エアー漏れがない状態での閉前後差が第3検知用閾値として設定される。
【0081】
閾値設定部103による第3検知用閾値の更新方法としては、以下のいずれかの方法を用いればよい。
【0082】
(a)第3漏れ検知部102によりエアー漏れがないと判断された場合、第3漏れ検知部102により算出された閉前後差を、閉対象情報で示される検知対象電磁弁に対応する第3検知用閾値として更新する。
【0083】
(b)第3漏れ検知部102によりエアー漏れがないと判断された場合、第3漏れ検知部102により算出された閉前後差に所定値だけ加算した値を、閉対象情報で示される検知対象電磁弁に対応する第3検知用閾値として更新する。所定値としては、コンプレッサの消費電力量の計測誤差等を考慮した値であり、エアー漏れにより生じる消費電力量の増加分よりも小さい値が予め設定されている。
【0084】
(c)第3漏れ検知部102によりエアー漏れがないと判断されたときの閉前後差を過去の所定回数または過去の所定期間分だけ蓄積しておく。そして、第3漏れ検知部102によりエアー漏れがないと判断された場合、蓄積しておいた過去の閉前後差の代表値(最大値、平均値など)または代表値に所定値を加算した値を、閉対象情報で示される検知対象電磁弁に対応する第3検知用閾値として更新する。
【0085】
なお、第3漏れ検知部102によりエアー漏れがあると判断された場合には、第3検知用閾値を更新しない。
【0086】
(エアー漏れの検知処理の流れ)
次に本実施形態におけるエアー漏れの検知処理の一例について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態のエアー漏れの検知処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図7のフローチャートで示した処理と同一の内容については同じステップ番号を付け、説明を省略する。
【0087】
図10に示されるように、S1〜S3,S6〜S9は、
図1と同様の処理である。S8の処理が終了すると、第3漏れ検知部102は、コンプレッサ10に設置されている電力計11の計測値に基づき、検知開始指示を受ける前後の所定期間(例えば、30分間)の積算電力量との差(閉前後差)を算出する。また、第3漏れ検知部102は、検知開始指示に付加されている閉対象情報で示される検知対象電磁弁に対応する第3検知用閾値を第3閾値記憶部101から読み出す。そして、第3漏れ検知部102は、算出した閉前後差と第3検知用閾値とを比較する(S10)。
【0088】
例えば、コンプレッサの電力計が、
図11に示されるような電力量を計測したとする。第3漏れ検知部102は、
図11に示される電力計の計測結果に基づいて、閉前後差0.326kWを算出する。
【0089】
閉前後差が第3検知用閾値以下である場合(S10でYes)、第3漏れ検知部102は、エアー漏れがないものと判断する(S11)。その後、閾値設定部103は、第3検知用閾値の更新処理を行う(S12)。
【0090】
また、閉前後差が第3検知用閾値よりも大きい場合(S10でNo)、第3漏れ検知部102は、検知対象電磁弁から下流側の管路においてエアー漏れが発生していると判断し、その判断結果を通知処理部99に出力する(S13)。通知処理部99は、検知対象電磁弁から下流側の管路においてエアー漏れが発生している旨を通知する。これにより、処理を終了する。
【0091】
一方、S9の後においても、S10からS13と同様のS14からS17の処理が実行される。
【0092】
検知対象電磁弁を閉じると、検知対象電磁弁から下流側の管路におけるエアーの消費がなくなる。仮に検知対象電磁弁から下流側の管路30でエアー漏れが発生している場合、検知対象電磁弁を閉じることによりなくなるエアーの消費量には、検知対象電磁弁から管路30の下流側に接続されている圧縮エアー利用装置における消費量に加えて、漏れていたエアー量が含まれる。そのため、検知対象電磁弁を閉じたときの前後の消費電力量の低下量は、エアー漏れの分だけ大きくなる。よって、閉前後差と第3検知用閾値とを比較することにより、検知対象電磁弁から下流側の管路30におけるエアー漏れを検知できる。
【0093】
例えば、電磁弁110Aを閉じたときに、第3漏れ検知部102により算出された閉前後差が
図11に示すように0.326kWであるとする。一方、電磁弁110Aに対応する第3検知用閾値として、0.280kWが設定されていたとする。この0.280kWは、エアー漏れがない場合に電磁弁110Aを閉じたときの閉前後差に基づいて設定されている。この場合、算出した閉前後差が第3検知用閾値よりも大きいことから、電磁弁110Aを閉じる前において、エアー漏れの分だけ余計にコンプレッサ10が電力を消費していたことを示している。よって、第3漏れ検知部102は、電磁弁110Aから下流側の管路30においてエアー漏れが発生していると検知することができる。
【0094】
また、エアー漏れがないと判断されたとき、閾値設定部103は、第3検知用閾値を更新する。上記のS10からS17の処理は、いずれかの射出成型機40A・40Bが停止したタイミングごとに繰り返される。このタイミングは、故障による停止、終業時の停止、段取り待ちによる停止など頻繁に繰り返される。そのため、精度の高い第3検知用閾値を早期に設定することができる。なお、ある程度精度の高い第3検知用閾値が設定できた段階で、S12・S16の処理を省略してもよい。そして、管路の増設等を行ったタイミングで、S12・S16の処理を再開してもよい。
【0095】
また、上記の説明では、第3漏れ検知部102は、検知開始指示を受ける前の所定期間(例えば30分間)のコンプレッサ10の積算電力量と、検知開始指示を受けた後の所定期間(例えば、30分間)のコンプレッサ10の積算電力量との差である閉前後差を算出するものとした。
【0096】
しかしながら、第3漏れ検知部102は、閉前後差の代わりに、検知開始指示を受ける前の所定期間(例えば30分間)のコンプレッサ10の積算電力量に対する、検知開始指示を受けた後の所定期間(例えば、30分間)のコンプレッサ10の積算電力量の比(閉前後比)を算出してもよい。仮に電磁弁110Aの下流側においてエアー漏れが発生している場合、電磁弁110Aを閉じる前後の閉前後比は、エアー漏れが発生していない場合に比べて相対的に小さくなる。そのため、第3漏れ検知部102は、算出した閉前後比と第3検知用閾値(第3閾値)とを比較し、算出した比が第3検知用閾値以下である場合、エアー漏れが発生していると判断すればよい。
【0097】
このように、第3漏れ検知部102は、閉前後差や閉前後比のように、電磁弁を閉じる前のコンプレッサ10の積算電力量と、電磁弁を閉じた後のコンプレッサ10の積算電力量との相互関係を示す第1特徴量を算出し、第3検知用閾値と比較することでエアー漏れを検知すればよい。
【0098】
<変形例>
(変形例1)
上記の説明では、閾値設定部100・103は、エアー漏れが検知された場合、閾値の設定を行わないものとした。しかしながら、閾値設定部100・103は、エアー漏れが検知された場合、以下のような処理を行ってもよい。
【0099】
閾値設定部100・103は、第1漏れ検知部96または第3漏れ検知部102によりエアー漏れがあると検知された場合、閾値の更新を行うか否かの指示の入力をユーザに促す。そして、更新を行う旨の指示が入力されるときにのみ、上記(a)〜(c)の何れかの方法と同様にして、第1検知用閾値または第3検知用閾値を更新する。
【0100】
製造ラインの増設により、圧縮エアーの管路30も増設されることがある。このような場合、増設された管路30のために、エアー漏れがなくてもコンプレッサ10の消費電力量が増大する可能性が高い。そのため、ユーザは、管路30の増設のためにエアー漏れが誤って検知されたとしても、閾値の更新を行う旨の指示を入力することにより、管路30の増設後の消費電力量に基づいた閾値を設定することができる。
【0101】
(変形例2)
上記の実施形態1・2では、エアー漏れがない状態の消費電力量に基づいて閾値が設定されることにより、エアー漏れを検知している。そのため、管路30を設置した初期状態の際に、音や圧力センサなどを確認しながらときにエアー漏れがないことを確認して閾値を設定することが好ましい。しかしながら、初期状態の際の音や圧力センサによるエアー漏れの確認が不足し、エアー漏れがある状態の消費電力量に基づいて閾値が設定される可能性も少なからずある。
【0102】
また、上記のように、エアー漏れがあると検知されたが、閾値の更新を行う旨のユーザ入力がされたために閾値を更新する変形例の場合、ユーザがエアー漏れがあるのにそれに気付かず、誤って閾値の更新を行ってしまうことも考えられる。この場合、エアー漏れがある状態の消費電力量に基づいて閾値が設定されることとなる。
【0103】
このように、エアー漏れがある状態の消費電力量に基づいて閾値が設定されると、その後適切にエアー漏れを検知できない可能性がある。このような問題を解決するために、検知装置90は、
図12に示されるように、第4漏れ検知部104および同一ライン情報記憶部105を備えていてもよい。
【0104】
同一ライン情報記憶部105は、下流側(末端側)の管路30の状態が略同一である電磁弁を示す電磁弁識別情報を対応付けた同一ライン情報を記憶している。下流側の管路の状態が同一である電磁弁とは、例えば
図1のような製造ラインの場合、同種類の射出成型機40A・40B、エアーエジェクタ50A・50B、取り出しロボット60A・60Bおよびパレットチェンジャ70A・70Bが略同じ距離だけ離れた管路30の位置で接続されている電磁弁110Aと電磁弁110Bである。
図13は、同一ライン情報記憶部の一記憶例を示す図である。
【0105】
下流側の管路30の状態が同一である電磁弁110A・110Bの場合、エアー漏れがなければ、当該電磁弁110A・110Bから下流側の装置で消費されるエアーの量が略同一である。そのため、下流側の管路30の状態が同一である電磁弁110A・110Bの各々について、当該電磁弁を閉じる前後におけるコンプレッサ10の消費電力量の差は、略同一となる。しかしながら、何れかの電磁弁110A・110Bの下流側の管路30においてエアー漏れが発生している場合、当該電磁弁を閉じる前後におけるコンプレッサ10の消費電力量の差は相対的に大きくなる。これは、電磁弁を閉じる前においては、漏れているエアーの分だけ余計にコンプレッサ10が稼動しなければいけないためである。
【0106】
そこで、第4漏れ検知部104は、同一ライン情報記憶部105が記憶する同一ライン情報で対応付けられ複数の電磁弁の各々について、第3漏れ検知部102が算出した最新の閉前後差を取得する。そして、第4漏れ検知部104は、取得した複数の閉前後差の平均値(または最低値)を基準値とし、当該基準値と各閉前後差とを比較する。閉前後差が基準値から所定値以上である場合に、第4漏れ検知部104は、当該閉前後差に対応する電磁弁の下流側の管路30においてエアー漏れが生じていると判断し、その判断結果を通知処理部99に通知する。
【0107】
もしくは、第4漏れ検知部104は、同一ライン情報記憶部105が記憶する同一ライン情報で対応付けられ複数の電磁弁の各々について、第3検知用閾値を第3閾値記憶部101から読み出してもよい。そして、第4漏れ検知部104は、取得した複数の第3検知用閾値の平均値(または最低値)を基準値とし、当該基準値と各第3検知用閾値とを比較する。第3検知用閾値が基準値から所定値以上である場合に、第4漏れ検知部104は、当該第3検知用閾値に対応する電磁弁の下流側の管路30においてエアー漏れが生じていると判断してもよい。
【0108】
なお、第4漏れ検知部104は、予め定められたタイミングで検知処理を実行すればよい。例えば、電磁弁制御部94が検知開始指示を第1漏れ検知部96および第3漏れ検知部102に出力するタイミングでも良いし、一定周期(例えば、1日に1回)のタイミングで行ってもよい。
【0109】
このように、本変形例によれば、第4漏れ検知部104は、(1)射出成型機40A・40Bの各々について、当該射出成型機と管路30の分岐部31との間に設けられた電磁弁110A・110Bを閉じる前後でのコンプレッサ10の消費電力量の閉前後差を求め、(2)射出成型機40A・40Bの各々について求めた閉前後差に基づいて、電磁弁110A・110Bの下流側の管路におけるエアー漏れの有無を検知する。これにより、簡易にエアー漏れを検知することができる。
【0110】
(その他)
上記の説明では、エアーを管路30に流すものとした。しかしながら、管路30に流す流体はエアーに限定されるものではない。例えば、空気以外の気体である、窒素やアルゴンなどの不活性ガスなどでもよい。また、水などの液体であってもよい。
【0111】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0112】
なお、上記した各実施形態における検知装置90の各部は、CPU(Central Processing Unit)などの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、デ
ィスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、本実施形態の検知装置90の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0113】
この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読み取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0114】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0115】
また、上記プログラムメディアとしては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等がある。
【0116】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0117】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0118】
以上のように、本発明の検知装置は、流体を利用する流体利用装置と、流体を前記流体利用装置に供給するための流体供給装置とを有するシステムにおける流体漏れを検知する検知装置であって、前記流体供給装置の消費電力量に基づいて、前記システムにおける流体漏れの有無を検知する検知部を備えることを特徴とする。
【0119】
上記の構成によれば、流体供給装置の消費電力量に基づいて、前記システムにおける流体漏れの有無を検知する。流体漏れが発生している場合、流体供給装置は、漏れた流体の量だけ余計に供給する必要がある。そのため、流体供給装置の消費電力量は、流体漏れの有無に応じて変化することとなる。よって、上記のように流体供給装置の消費電力量に基づいて流体漏れの有無を検知することができる。この場合、従来のような音ではなく消費電力量に基づくため、振動音等の雑音があっても簡易に流体漏れを検知できる。また、圧力センサ等を多数必要としないため、低コスト化を図ることができる。
【0120】
このように本発明によれば、流体漏れを低コストで簡易に検知できる検知装置を実現することができる。
【0121】
さらに、本発明において、前記検知部は、前記流体供給装置の消費電力量が第1閾値以上である場合、流体漏れが発生していると検知することが好ましい。
【0122】
上記の構成によれば、流体供給装置の消費電力量と第1閾値との比較により簡易に流体漏れを検知することができる。
【0123】
さらに、本発明において、前記流体利用装置に流体を流すための管路には弁が設けられており、前記検知部は、前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量が第1閾値以上である場合に、前記弁の上流側の管路において流体漏れが発生していると検知することが好ましい。
【0124】
上記の構成によれば、管路の一部である、弁の上流側の管路における流体漏れを簡易に検知することができる。
【0125】
さらに、本発明において、前記流体利用装置に流体を流すための管路には弁が設けられており、前記検知部は、前記弁を閉じる前の前記流体供給装置の消費電力量と、前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量との相互関係を示す第1特徴量に基づいて、前記弁の下流側の管路において流体漏れが発生していると検知することが好ましい。
【0126】
例えば、前記検知部は、前記第1特徴量として、前記弁を閉じる前の前記流体供給装置の消費電力量と前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量との差を算出し、算出した差が第2閾値以上である場合に、前記弁の下流側の管路において流体漏れが発生していると検知する。
【0127】
もしくは、前記検知部は、前記第1特徴量として、前記弁を閉じる前の前記流体供給装置の消費電力量に対する前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量の比を算出し、算出した比が第3閾値以下である場合に、前記弁の下流側の管路において流体漏れが発生していると検知してもよい。
【0128】
上記の構成によれば、前記弁を閉じる前の前記流体供給装置の消費電力量と、前記弁を閉じた後の前記流体供給装置の消費電力量との相互関係を示す第1特徴量に基づいて、前記弁の下流側の管路において流体漏れが発生していると検知する。弁の下流側の管路において流体漏れが発生している場合、弁を閉じる前においては漏れた流体の量だけ余計に流体を供給する必要があり、流体供給装置の消費電力量が多くなる。そのため、第1特徴量は、弁の下流側の管路における流体漏れの有無に応じて変化することとなる。その結果、第1特徴量を用いることにより、前記弁の下流側の管路において流体漏れを簡易に検知することができる。
【0129】
なお、本発明において、前記流体利用装置の運転が停止したときに、当該流体利用装置の上流側に位置する前記弁を閉じる制御部を備えていてもよい。
【0130】
また、本発明において、前記流体利用装置は複数であり、前記管路は、前記複数の流体利用装置の各々に接続されるように分岐しており、前記複数の流体利用装置の各々について、当該流体利用装置と前記管路の分岐点との間で前記弁が設けられており、前記制御部は、前記流体利用装置の運転が停止されたときに、当該流体利用装置と前記管路の分岐点との間に設けられた前記弁を閉じてもよい。
【0131】
さらに、本発明において、前記流体利用装置は、他の主装置と連動して稼動し、前記制御部は、前記主装置の運転停止を検知したときに、前記主装置と連動して稼動する前記流体利用装置の運転を停止してもよい。
【0132】
これにより、弁を閉じる制御を自動的に行うことができる。そして、自動で弁を閉じたタイミングで、流体漏れの検知処理を実行させることができる。すなわち、流体利用装置の運転停止のタイミングで流体漏れの検知処理を実行させることができる。流体利用装置の運転停止は、通常の停止処理に加えて、故障やメンテナンスでも起きる。そのため、流体漏れの検知処理を頻繁に実行することができ、流体漏れを長期間放置することを避けることができる。
【0133】
さらに、本発明において、前記流体利用装置は複数あり、前記管路は、前記複数の流体利用装置の各々に接続されるように分岐しており、前記複数の流体利用装置の各々について、当該流体利用装置と前記管路の分岐点との間で弁が設けられており、前記検知部は、(1)前記複数の流体利用装置の各々について、当該流体利用装置と前記管路の分岐点との間に設けられた前記弁を閉じる前後での前記流体供給装置の消費電力量の変化量を求め、(2)前記複数の流体利用装置の各々について求めた前記変化量の相互関係に基づいて、前記複数の流体利用装置の各々について、当該流体利用装置と前記管路の分岐点との間に設けられた前記弁の下流側の管路における流体漏れの有無を検知してもよい。
【0134】
また、本発明において、前記弁が電磁弁であってもよい。さらには、前記流体が気体であり、前記流体供給装置が圧縮気体を生成するコンプレッサであってもよい。
【0135】
また、本発明に係る検知装置は、流体供給装置の消費電力量に基づいて、流体漏れの有無を検知する検知部を備えることを特徴とする。
【0136】
上記の構成によれば、流体漏れを低コストで簡易に検知できる検知装置を実現することができる。
【0137】
さらに、前記検知装置は、コンピュータによって実現されてもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置の各部として機能させるプログラム、および、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。