特許第5842341号(P5842341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5842341
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】頂部燃焼式熱風炉
(51)【国際特許分類】
   C21B 9/10 20060101AFI20151217BHJP
【FI】
   C21B9/10 303
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-34517(P2011-34517)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-172187(P2012-172187A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】大石 邦央
(72)【発明者】
【氏名】平田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】深谷 智章
(72)【発明者】
【氏名】藤森 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】ディアク リーヒェルマン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮一郎
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−533241(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1680608(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101392957(CN,A)
【文献】 特開昭55−011150(JP,A)
【文献】 特開昭48−079105(JP,A)
【文献】 特開昭54−153705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にバーナー部を兼ねる混合室を有した混合部と、前記混合室の下方に配置され縮流部及びスロート部を介して前記混合室に連通する蓄熱室と、を備え、
前記混合部の周囲には、該混合部を囲んで燃料ガス用分岐管と空気用分岐管とが設けられ、
前記燃料ガス用分岐管には、該燃料ガス用分岐管内に燃料ガスを供給するための燃料供給用配管が接続されるとともに、前記混合部に接続して前記混合室内に燃料ガスを吹き込むための複数の燃料用ノズル管が接続され、
前記空気用分岐管には、該空気用分岐管内に燃焼用空気を供給するための空気供給用配管が接続されるとともに、前記混合部に接続して前記混合室内に燃焼用空気を吹き込むための複数の空気用ノズル管が接続され、
前記燃料用ノズル管と前記空気用ノズル管とは、最も近距離で隣り合って上下に重なる一対から吹き出された燃料ガスと燃焼用空気とが互いに衝突するように斜めに配置されていることを特徴とする頂部燃焼式熱風炉。
【請求項2】
前記燃料用ノズル管には、それぞれ開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1記載の頂部燃焼式熱風炉。
【請求項3】
前記混合部には、その外壁と前記混合室との間に耐火物層が設けられ、該耐火物層には、前記燃料用ノズル管に連通し、かつ前記混合室内に通じる燃料用孔と、前記空気用ノズル管に連通し、かつ前記混合室内に通じる空気用孔とが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頂部燃焼式熱風炉。
【請求項4】
前記燃料ガス用分岐管および空気用分岐管は、いずれも円環状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の頂部燃焼式熱風炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂部燃焼式熱風炉に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉に熱風(高温空気)を常時安定して送るための設備として、熱風炉が知られている。このような熱風炉としては、従来、外燃式(二筒式)と内燃式(単筒式内部分割型)の、二つのタイプのものが、高炉の容量に合わせて用いられている。
外燃式熱風炉は、燃焼筒と蓄熱筒とが炉頂部で互いに接続する構造のものである(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような外燃式熱風炉では、高温送風が可能であるものの、二筒式であるため内燃式に比べ物量が大きく、設備が大型になりやすい。また、燃焼部と蓄熱部とで内部温度が異なることから、炉頂接続部において熱膨張差が発生し、内部の耐火物が損傷する可能性がある。
【0003】
内燃式熱風炉は、一つの鉄筒を耐火物の隔壁によって二室に分割し、燃焼部と蓄熱部とを形成した構造である(例えば、特許文献2参照)。しかし、このような内燃式熱風炉では、外燃式に比べ高温送風や大容量化(大型化)が困難である。また、隔壁が燃焼部と蓄熱部との温度差によって損傷する可能性がある。
【0004】
そこで、近年では、これら外燃式熱風炉や内燃式熱風炉の問題を解決する技術として、頂部燃焼型単筒式の熱風炉が提案されており、代表的なものとしてKalugin型の熱風炉(例えば、特許文献3参照)が知られている。この熱風炉は、燃焼と蓄熱を一つの容器(筒)内で行う内燃式のもので、頂部にバーナー部を設置してここで燃焼を起こさせるようにしたものであり、大型化が可能でかつ高温送風が可能であるなどの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−131906号公報
【特許文献2】特開昭52−141404号公報
【特許文献3】国際公開第2009/008758号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献3に記載された頂部燃焼型単筒式の熱風炉では、バーナー部のチャネルなどの構造が複雑なため、設計、製作、据付が非常に困難である。さらに、前記特許文献3の熱風炉では、供給する燃料ガスや燃焼用空気の圧損が非常に大きい。
また、その他の上部燃焼型単筒式の熱風炉にあっても、燃焼状態や寿命などの点で、満足なものが提供されていないのが現状である。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡易な構成からなり、しかも供給する燃料ガスや燃焼用空気の圧損の低減化も可能にした、頂部燃焼式熱風炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の頂部燃焼式熱風炉は、内部にバーナー部を兼ねる混合室を有した混合部と、前記混合室の下方に配置されて該混合室に連通する蓄熱室とを備え、
前記混合部の周囲には、該混合部を囲んで燃料ガス用分岐管と空気用分岐管とが設けられ、
前記燃料ガス用分岐管には、該燃料ガス用分岐管内に燃料ガスを供給するための燃料供給用配管が接続されるとともに、前記混合部に接続して前記混合室内に燃料ガスを吹き込むための複数の燃料用ノズル管が接続され、
前記空気用分岐管には、該空気用分岐管内に燃焼用空気を供給するための空気供給用配管が接続されるとともに、前記混合部に接続して前記混合室内に燃焼用空気を吹き込むための複数の空気用ノズル管が接続されていることを特徴としている。
【0009】
この頂部燃焼式熱風炉によれば、特にバーナー部を兼ねる混合室の構造が、複数の燃料用ノズル管と複数の空気用ノズル管とに連通するようにしただけの、簡易な構成からなるため、設計や製作などの点で有利になる。また、燃料ガス用分岐管を介して燃料供給用配管に複数の燃料用ノズル管を接続し、空気用分岐管を介して空気供給用配管に複数の空気用ノズル管を接続しているので、燃料供給用配管と燃料ガス用分岐管と複数の燃料用ノズル管との間の各接続部、および空気供給用配管と空気用分岐管と複数の空気用ノズル管との間の各接続部については、全て混合部の外側で加工が可能になる。したがって、混合部内の構造に関係なく、各管間の接続について、圧損が低くなる構造を採用することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成からなり、しかも供給する燃料ガスや燃焼用空気の圧損の低減化も可能にした、頂部燃焼式熱風炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の頂部燃焼式熱風炉の一実施形態の概略構成を示す、一部断面視した側面図である。
図2】本発明の頂部燃焼式熱風炉の一実施形態を示す図であり、(a)は側断面図、(b)は平面図である。
図3】混合部の外壁側の要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施形態の頂部燃焼式熱風炉を詳しく説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
頂部燃焼式熱風炉1は、図1図2(a)に示すように全体が有蓋有底円筒状の熱風炉であって、特に頂部(上部)に有蓋筒状の混合部2を有し、該混合部2の下方に有底円筒状の蓄熱部3を有したものである。蓄熱部3は、混合部2に対し、縮流部4及びスロート部5を介して接続されたものである。また、混合部2には、燃料ガスおよび燃焼用空気を導入するための配管系30が接続されている。なお、この頂部燃焼式熱風炉1は、外燃式(2筒式)と内燃式(単筒式)とに大きく分けた場合、内燃式に分類されるものである。
【0014】
混合部2は、ドーム形状の天蓋部2aと、その下方に設けられた円筒部2bと、該円筒部2bの底部から内側(中心側)に延びて円筒部2bの下部開口を小さくする縮径部2cと、からなるもので、内部に混合室6を形成したものである。なお、混合部2には、その外壁と混合室6との間に、混合室6を囲んで煉瓦等の耐火物からなる耐火物層7が設けられている。
【0015】
混合部2には、図1図2(b)に示すようにその円筒部2bの周囲に、該混合部2を囲んだ状態で燃料ガス用分岐管8と空気用分岐管9とが配設されている。これら燃料ガス用分岐管8および空気用分岐管9は、前記配管系30を構成するもので、共に同じ大きさの円環状(リング状)のものであり、本実施形態では燃料ガス用分岐管8が上側に配置され、空気用分岐管9が下側に配置されている。
【0016】
燃料ガス用分岐管8には燃料供給用配管10が接続されており、燃料供給用配管10には図1に示すようには燃料ガス供給源11が接続されている。また、燃料供給用配管10にはパージ用配管12が分岐して接続されており、パージ用配管12には、不活性ガスである窒素をパージガスとして供給するパージガス供給源13が接続されている。燃料供給用配管10には、第1開閉弁14がパージ用配管12と燃料ガス供給源11との間に設けられており、パージ用配管12には、第2開閉弁15が設けられている。
【0017】
ここで、燃料ガス供給源11は混合部2から遠い位置に配設されており、したがって燃料供給用配管10はその長さが例えば10数mから数十m程度の長い配管となっている。また、頂部燃焼式熱風炉1の容量等にもよるものの、燃料供給用配管10はその外径が1400A程度の大きな配管となっている。したがって、この燃料供給用配管10に配置される第1開閉弁14は、非常に大きなものとなっており、重量が数トンの重量物となっている。
一方、空気用分岐管9には空気供給用配管16が接続されており、空気供給用配管16には空気供給源17が接続されている。また、空気供給用配管16には第3開閉弁18が設けられている。
【0018】
なお、燃料供給用配管10によって混合室6内に供給する燃料ガスの、燃料供給源11側での供給圧は、本実施形態の頂部燃焼式熱風炉1が適用される高炉プラントの仕様によって決まっている。したがって、特に燃料供給用配管10や燃料ガス用分岐管8、後述する燃料用ノズル管19での圧損は、混合室6内に供給する燃料ガスの流量に大きく影響する。すなわち、十分でかつ安定した流量の燃料ガスを混合室6内に供給するためには、燃料ガスの供給系全体での圧損を小さくすることが重要になっている。また、同様に燃焼用空気の供給系全体での圧損についても、小さくすることが求められている。
【0019】
前記燃料ガス用分岐管8には複数の燃料用ノズル管19が接続され、前記空気用分岐管9には複数の空気用ノズル管20が接続されている。燃料用ノズル管19は、図2(b)に示すように円環状の燃料ガス用分岐管8から混合室6(混合部2)の中心に向かって延び、図1に示すように混合部2の円筒部2bの外壁面に接続したものである。また、これら燃料用ノズル管19には、その全てにそれぞれノズル用開閉弁19aが設けられている。
【0020】
ノズル用開閉弁19aは、例えば電磁弁からなるもので、全て図示しない制御部に電気的に接続され、該制御部によって開閉動作が制御されるようになっている。ここで、燃料用ノズル管19はその外径が150Aから200Aとなっており、したがってノズル用開閉弁19aもこの燃料用ノズル管19の外径に対応して比較的小さく、軽量な弁からなっている。
【0021】
空気用ノズル管20は、平面視した状態で前記燃料用ノズル管19に重なるように配置されたもので、円環状の空気用分岐管9から混合室6(混合部2)の中心に向かって延び、混合部2の円筒部2bの外壁面に接続したものである。なお、空気用ノズル管20には開閉弁が設けられておらず、したがって空気用分岐管9内と混合部2内の混合室6とは空気用ノズル管20を介して直接連通している。
【0022】
また、これら燃料用ノズル管19や空気用ノズル管20は、図3に示すように、混合部2の円筒部2bの外壁部にのみ接続している。ここで、これら燃料用ノズル管19と空気用ノズル管20とは、上下に重なる一対の各ノズル管19、20が、その吹き込み方向を互いに相手側のノズル管の吹き込み方向に交差するように斜めに配置されている。すなわち、燃料用ノズル管19はその先端側を斜め下方に向けて配置されており、空気用ノズル管20はその先端側を斜め上方に向けて配置されている。
【0023】
なお、燃料用ノズル管19および空気用ノズル管20の本数については、複数であれば特に限定されないものの、燃料ガスおよび燃焼用空気を混合室6内に均一に導入するためには、4本以上であるのが好ましく、8本以上であるのがさらに好ましい。ただし、これら燃料用ノズル管19および空気用ノズル管20の、燃料ガス用分岐管8や空気用分岐管9に対する接続位置については、当然ながら、これら燃料ガス用分岐管8や空気用分岐管9の周方向において、等間隔で配置されるものとする。
【0024】
また、耐火物層7には、燃料用ノズル管19に連通し、かつ混合室6内に通じる燃料用孔21と、空気用ノズル管20に連通し、かつ混合室6内に通じる空気用孔22とが、それぞれ形成されている。ここで、耐火物層7は、煉瓦等の耐火物が外壁の内面の面方向に沿って上下方向に積層され、かつ、外壁側と混合室6側との二重構造に形成されたものである。したがって、燃料用孔21および空気用孔22は、前記二重構造の外側および内側の両方に形成されている。なお、このような燃料用孔21や空気用孔22については、単純な貫通孔であるため、その加工が比較的容易になっている。
【0025】
また、これら燃料用孔21および空気用孔22は、それぞれ燃料用ノズル管19や空気用ノズル管20の吹き込み方向に沿って形成されている。したがって、燃料用ノズル管19から燃焼用孔21を通って混合室6内に吹き込まれた燃料ガスと、空気用ノズル管20から空気用孔22を通って混合室6内に吹き込まれた燃焼用空気とは、混合室6内にて衝突し、これによって互いに混合するようになっている。
【0026】
このような構成のもとに混合部2は、その混合室6内がバーナー部として機能するようになっている。すなわち、本実施形態の頂部燃焼式熱風炉1は、常時1400℃〜1500℃程度に加熱されるため、燃料ガスと燃焼用空気とが混合室6内に供給され、これらが所定の混合度に混合されると、自然発火するようになっている。つまり、これらノズル管19、20の開口部のやや下方から、後述する縮流部4、スロート部5にかけて、燃焼が起こるようになっている。ここで、燃料供給用配管10から混合室6内に供給される燃料ガスの量(供給流量)と、空気供給用配管16から混合室6内に供給される燃焼用空気の量(供給流量)との比は、特に限定されないものの、本実施形態では例えばほぼ1:1となるように設定される。
【0027】
なお、図1に示すように前記の燃料供給用配管10、燃料ガス用分岐管8、燃料用ノズル管19、および空気供給用配管16、空気用分岐管9、空気用ノズル管20により、前記配管系30が構成されている。これら配管系30については、混合部2に対して安定した接続構造が保持されるよう、例えばスロート部5または蓄熱部3の外壁に複数の補強支持柱(図示せず)が設けられ、これら補強柱で例えば燃料ガス用分岐管8および空気用分岐管9が支持されるようになっている。
【0028】
縮流部4は、混合部2の縮径部2cに接続した円筒状のもので、混合室6に連通する縮流路4aを内部に形成したものである。スロート部5は、縮流部4に接続した円錐台形状のもので、縮流路4aに連通する拡径路5aを内部に形成したものである。このような構成によって縮流路4aおよび拡径路5aは、混合室6の内径を一旦縮めた後、再度拡径することにより、燃料ガスと燃焼用空気との混合度を高め、かつ、燃焼による熱膨張の影響を抑えて燃焼ガスを均一な流速で下降させるようになっている。
【0029】
蓄熱部3は、スロート部5に接続した円筒状のもので、内部に蓄熱室3aを形成し、さらに上部(スロート部5側)に熱風供給管23を接続し、底部に煙道管24を接続したものである。蓄熱室3aには、その底部に設けられた蓄熱用煉瓦受金物25上に、蓄熱用煉瓦26が積層されており、混合室6側での燃焼によって生じた熱が、蓄熱用煉瓦26に蓄積されるようになっている。熱風供給管23は、高炉側に接続するもので、後述するように蓄熱用煉瓦26に蓄積された熱を有する熱風を、高炉側に供給するためのものである。
【0030】
煙道管24は、蓄熱用煉瓦受金物25の側方に配置されたもので、煙道弁27を有し、さらに排気ダクト(図示せず)に接続したものである。また、この煙道管24には、煙道弁27より蓄熱部3側に、送風管28が分岐して設けられている。この送風管28には、送風弁29、送風機(図示せず)が設けられている。
【0031】
このような構成からなる頂部燃焼式熱風炉1では、まず、送風弁29を閉じ、煙道弁27を開いた状態で、かつ、前記燃料用ノズル管19のノズル用開閉弁19aを開いた状態で、燃料供給用配管10から燃料ガス用分岐管8、燃料用ノズル管19を介して燃料ガスを混合室6に供給する。同時に、空気供給用配管16から空気用分岐管9、空気用ノズル管20を介して燃焼用空気を混合室6に供給する。
【0032】
すると、これら燃料ガスおよび燃焼用空気は、耐火物層7に形成された燃料用孔21、空気用孔22をそれぞれ通って混合室6内に導入される。そして、上下に位置するノズル管19、20から導入された燃料ガスと燃焼用空気とが互いに衝突して混ざり合い、さらには他のノズル管19、20から導入された燃料ガスおよび燃焼用空気とも混ざり合うことにより、燃焼する。また、このような燃焼は、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスが蓄熱部3側に流動しつつ起こるため、燃焼ガスは蓄熱室3a内の蓄熱用煉瓦26と接触し、熱交換する。したがって、蓄熱用煉瓦26は、燃焼ガスと熱交換して得た熱を蓄積する。また、熱交換後の燃焼ガス(排ガス)は、煙道管24を通って排気ダクトに案内される。
【0033】
このようにして蓄熱用煉瓦26への蓄熱を行った後、高炉側へ熱風を送るには、送風弁29を開き、煙道弁27を閉じ、さらに前記燃料用ノズル管19のノズル用開閉弁19aを閉じた状態で、送風機を作動させる。すると、送風管28から煙道管24を通って蓄熱室3aに流入した空気は、蓄熱用煉瓦26と熱交換することで蓄熱用煉瓦26に蓄積された熱を受け、熱風となって熱風供給管23から排出され、高炉側に供給される。
【0034】
ここで、従来ではこのように混合室6内に燃料ガスと燃焼用空気とを導入して混合室6内で燃焼を起こさせた後、送風運転に切り換える際には、混合室6内に燃料ガスが残留していると発火するおそれがあるため、不活性ガスによるパージを行っている。具体的には、図1に示す燃料供給用配管10に設けた第1開閉弁14を閉じ、パージ用配管12に設けた第2開閉弁15を開いてパージガス供給源13からパージガスとしての窒素を圧送する。その際、燃料供給用配管10は大径であり、かつ長さが長いので、パージに時間がかかって工程の時間的ロスが大きくなっている。また、パージに用いる窒素等のコストも、コスト低減化を妨げる一因になっている。
【0035】
これに対して本実施形態では、燃料用ノズル管19にそれぞれノズル用開閉弁19aを設けているので、燃焼運転後、送風運転に切り換える際、前記のパージ操作を行うことなく単にノズル開閉弁19aを閉じるだけで、燃焼運転に続いて送風運転を行うことができる。すなわち、ノズル開閉弁19aより混合室6側に残留する燃料ガスは僅かであるため、この残留燃料ガスによって発火するおそれはほとんどなく、また、仮に発火が起こってもほとんど僅かにしか起こらず、すぐに残留燃料ガスが燃え尽きるからである。
【0036】
以上説明したように本実施形態の頂部燃焼式熱風炉にあっては、バーナー部として機能し、したがってバーナー部を兼ねる混合室6の構造を、複数の燃料用ノズル管19と複数の空気用ノズル管20とに連通するようにしただけの簡易な構成としているため、設計や製作などの点で有利になり、長寿命化やメンテナンス性の向上を図ることができるとともに、製造コストの低減化を図ることもできる。
【0037】
また、燃料ガス用分岐管8を介して燃料供給用配管10に複数の燃料用ノズル管19を接続し、空気用分岐管を9介して空気供給用配管16に複数の空気用ノズル管20を接続しているので、燃料供給用配管10と燃料ガス用分岐管8と複数の燃料用ノズル管19との間の各接続部、および空気供給用配管16と空気用分岐管9と複数の空気用ノズル管20との間の各接続部については、全て混合部2の外側で加工が可能になっている。したがって、混合部2内の構造、例えば耐火物層7に関係なく、各管間の接続について、圧損が低くなる構造を採用することができる。よって、供給する燃料ガスや燃焼用空気の圧損を低減化することができるため、良好な混合を行うことができ、燃焼の高効率化を図ることができる。
【0038】
また、燃料用ノズル管19にそれぞれノズル用開閉弁19aを設け、燃焼運転後、送風運転に切り換える際、パージ操作を行うことなく単にノズル開閉弁19aを閉じるだけで、燃焼運転に続いて送風運転を行うことができるようにしたので、パージによる工程の時間的ロスをなくし、さらにパージに用いる窒素等のコストについてもこれを大幅に削減し、熱風炉1の運転に要するコストの低減化を図ることができる。
【0039】
また、耐火物層7に単に燃料用孔21と空気用孔22とを形成し、これら各孔21、22に燃料用ノズル管19、空気用ノズル管20をそれぞれ連通させているので、耐火物層7については、複雑な流路を形成することなく単なる孔(燃料用孔21、空気用孔22)を形成するだけでよく、したがって耐火物層7の構造を簡易にすることができるとともに、このような耐火物層7や混合室6を含む混合部2の構成をより簡易にすることができる。また、耐火物層7における圧損も、複雑な流路を形成する場合に比べ、十分に小さくすることができる。
【0040】
また、燃料ガス用分岐管8および空気用分岐管9を、共に円環状に形成しているので、燃料供給用配管10と燃料ガス用分岐管8との間や空気供給用配管16と空気用分岐管9との間の圧損、さらには燃料ガス用分岐管8と燃料用ノズル間19との間や空気用分岐管9と空気用ノズル管20との間の圧損を十分に低減化することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、燃料用ノズル管19と空気用ノズル管20とを、それぞれ混合室6の中心に向かって延びるように配置し、したがってその吹き込み方向が混合室6の中心に向かうように配置したが、各ノズル管19、20から導入する燃料ガス、燃焼用空気が、それぞれ混合室6の内周面(耐火物層7の内周面)に沿って流れ、これによって旋回流を形成するようにしてもよい。
【0042】
このようにすれば、混合室6内に導入された燃料ガスと燃焼用空気とが旋回流を形成することで良好に混合するようになり、したがってより良好に燃焼が起こることで燃焼領域において均一な温度分布が得られるようになる。よって、温度差や熱膨張差によって内部の耐火物が損傷するのが抑制され、耐久性が向上する。
【0043】
また、このように旋回流を形成するように燃料用ノズル管19と空気用ノズル管20とを配置する場合、これら各ノズル管19、20から導入された燃料ガスと燃焼用空気とが、前記したように導入後直ちに衝突するように構成することなく、旋回流を形成することで徐々に混合されるように構成してもよい。
また、前記実施形態では、燃料ガス用分岐管8を上側に配置し、空気用分岐管9を下側に配置したが、逆に、燃料ガス用分岐管8を下側に配置し、空気用分岐管9を上側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…頂部燃焼式熱風炉、2…混合部、3…蓄熱部、3a…蓄熱室、6…混合室、7…耐火物層、8…燃料ガス用分岐管、9…空気用分岐管、10…燃料供給用配管、16…空気供給用配管、19…燃料用ノズル管、19a…ノズル用開閉弁、20…空気用ノズル管、21…燃料用孔、22…空気用孔
図1
図2
図3