(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンピュータが、正極または負極の電位である電極電位を参照極を用いて測定することができる非水電解質二次電池の、前記電極電位を推定する電池電極電位推定方法であって、
所定の基準状態において、前記参照極を基準とした電極電位である第一電極電位を取得する第一取得ステップと、
前記基準状態以降の所定の劣化状態において、前記参照極を基準とした電極電位である第二電極電位を取得する第二取得ステップと、
取得された前記第一電極電位と前記第二電極電位とを用いて、前記劣化状態において前記参照極を基準として測定される電極電位を補正する電極電位補正ステップとを含み、
前記第一取得ステップでは、前記基準状態において取得された前記第一電極電位をメモリに書き込み、前記電極電位補正ステップでは、当該メモリから前記第一電極電位を読み出して、前記劣化状態における電極電位を補正する
電池電極電位推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0024】
(実施の形態)
まず、電池電極電位推定装置100を備える蓄電システム10の構成について、説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置100を備える蓄電システム10の外観斜視図である。
【0026】
同図に示すように、蓄電システム10は、電池電極電位推定装置100と、複数の二次電池200(同図では、10個の二次電池)と、電池電極電位推定装置100及び複数の二次電池200を収容する収容ケース300とを備えている。
【0027】
電池電極電位推定装置100は、複数の二次電池200の上方に配置され、二次電池200の電極電位を推定する回路を搭載した回路基板である。具体的には、電池電極電位推定装置100は、全ての二次電池200、または複数の二次電池200のうちのいずれかの二次電池200に接続されており、当該二次電池200からの情報を取得して、二次電池200の電極電位を推定する。
【0028】
なお、ここでは、電池電極電位推定装置100は複数の二次電池200の上方に配置されているが、電池電極電位推定装置100はどこに配置されていてもよい。この電池電極電位推定装置100の詳細な機能構成の説明については、後述する。
【0029】
また、同図では、10個の矩形状の二次電池200が配置されて蓄電システムを構成している。なお、二次電池200の個数は10個に限定されず、他の複数個数または1個であってもよい。また二次電池200の形状も特に限定されない。
【0030】
次に、電池電極電位推定装置100が接続されている二次電池200の構成について、説明する。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態に係る二次電池200の外観斜視図である。なお、同図は、電池ケース内部を透視した図となっている。
【0032】
二次電池200は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池である。同図に示すように、二次電池200は、電池容器210と、正極端子220と、負極端子230とを備え、電池容器210は、上壁であるふた板211を備えている。また、電池容器210内方には、発電要素212と、正極集電部材213と、負極集電部材214と、参照極215とが配置されている。なお、二次電池200の電池容器210の内部には電解液などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。
【0033】
なお、
図1に示された二次電池200のうち、電池電極電位推定装置100が接続されていない二次電池200については、参照極215は備えられていなくともよい。
【0034】
電池容器210は、金属からなる矩形筒状で底を備える筐体本体と、当該筐体本体の開口を閉塞する金属製のふた板211とで構成されている。また、電池容器210は、発電要素212等を内部に収容後、ふた板211と筐体本体とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。
【0035】
発電要素212は、詳細な図示は省略するが、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムからなる長尺帯状の正極集電体シートの表面に正極活物質層が形成されたものである。負極は、銅からなる長尺帯状の負極集電体シートの表面に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。そして、発電要素212は、負極と正極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように巻き回されて形成されている。
【0036】
ここで、正極活物質としては、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0037】
なお、本発明を適用するにあたり、検出の精度の観点から、電極電位特性が平坦な電位平坦部を有する正極活物質が用いられることが好ましい。具体的には、正極活物質として、LiFePO
4やLiMnPO
4、Li
3V
2(PO
4)
3、LiMn
0.8Fe
0.2PO
4などを用いたものであることが好ましい。なお、電位平坦部の詳細な説明については、後述する。
【0038】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−ケイ素、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
6O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0039】
なお、本発明を適用するにあたり、検出の精度の観点から、電極電位特性が平坦な電位平坦部を有する負極活物質が用いられることが好ましい。具体的には、負極活物質として、Li
4Ti
5O
12、黒鉛質炭素(Graphite)、ソフトカーボンやハードカーボンなどの炭素材料、LiMn
2O
4などを用いたものであることが好ましい。
【0040】
正極端子220は、発電要素212の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子230は、発電要素212の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子220及び負極端子230は、発電要素212に蓄えられている電気を二次電池200の外部回路に導出し、また、二次電池200内部の発電要素212に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子220及び負極端子230は、発電要素212の上方に配置されたふた板211に取り付けられている。
【0041】
発電要素212は、詳細な図示は省略するが、セパレータと負極と正極と備え、電気を蓄えることができる部材である。正極は、アルミニウムからなる長尺帯状の正極集電体シートの表面に正極活物質層が形成されたものである。負極は、銅からなる長尺帯状の負極集電体シートの表面に負極活物質層が形成されたものである。セパレータは、樹脂からなる微多孔性のシートである。そして、発電要素212は、負極と正極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを長さ方向に全体が長円形状となるように巻き回されて形成されている。
【0042】
さらに詳しくは、上記正極と上記負極は、上記セパレータを介し、長尺帯状の幅方向に互いにずらして、当該幅方向に沿う回転軸を中心に長円形状に巻回されている。そして、上記正極及び上記負極は、それぞれのずらす方向の端縁部を活物質の非形成部とすることにより、巻回軸の一端部には、活物質が形成されていない正極集電体であるアルミニウム箔が露出し、巻回軸の他端部には、活物質が形成されていない負極集電体である銅箔が露出している。また、発電要素212の巻回軸方向の両端部には正極集電部材213及び負極集電部材214が上記巻回軸方向と垂直方向に延びて配置されている。
【0043】
正極集電部材213は、発電要素212の正極と電池容器210の側壁との間に配置され、正極端子220と発電要素212の正極集電体とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電部材213は、発電要素212の正極集電体と同様、アルミニウムで形成されている。
【0044】
負極集電部材214は、発電要素212の負極集電体と電池容器210の側壁との間に配置され、負極端子230と発電要素212の負極集電体とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電部材214は、発電要素212の負極集電体と同様、銅で形成されている。
【0045】
参照極215は、二次電池200の正極又は負極の電位を測定するための第3の電極であり、発電要素212と電池容器210との間に配置されている。具体的には、参照極215は、ステンレス製の参照極リードの先に金属リチウムを貼付し、金属リチウムだけが露出するように加工されている。
【0046】
ここで、参照極215としては、金属リチウム、リチウム−アルミニウム合金やリチウム−錫合金などのリチウム合金、Li
4Ti
5O
12やLiFePO
4などの電位平坦を有する活物質を適宜Liを挿入すること等によって電位平坦を示す状態にしたものなど、安定した電位を示すものであれば、どのようなものであってもよい。
【0047】
また、参照極215の配置位置は、電池容器210内において発電要素212と参照極215との間で液絡があれば、どのような位置に配置されていてもよい。
【0048】
例えば、参照極215にセパレータを巻きつける構成でもよい。この場合、液絡を保持する観点から、発電要素212に用いられるセパレータを発電要素212からはみ出すようにし、これを参照極215を包むセパレータとして用いることが望ましい。
【0049】
また、電池容器210と正極端子220及び負極端子230との間で電気的絶縁がなされている場合には、電池容器210を参照極215とすることができる。この場合、電池容器210の材質としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルメッキ鋼板などの金属が挙げられる。また、電池容器210が鉄、ステンレス、ニッケルメッキ鋼板などの金属リチウムと反応しないものの場合には、参照極となる金属リチウム参照極を電気的に接続することもできる。
【0050】
次に、電極電位特性における電位平坦部について、説明する。
【0051】
図3A及び
図3Bは、電極電位特性における電位平坦部を説明するための図である。具体的には、
図3Aは、正極活物質としてLiFePO
4を用いた場合の正極電位を示すグラフであり、
図3Bは、負極活物質として黒鉛を用いた場合の負極電位を示すグラフである。
【0052】
まず、二次電池200の定格容量Q
0、電気量QにおいてDOD(Depth Of Discharge)をD=Q/Q
0と定義する。そして、D≧0.1となる区間におけるDの変化量ΔDと、正極または負極の開回路電位E(V)の平均変化率ΔEとの比率が、ΔE/ΔD≦0.05Vを満たす場合に、電極電位特性において電位平坦部を有するとするのが好ましい。また、ΔE/ΔD≦0.02Vを満たす場合に、当該電位平坦部を有するとするのがさらに好ましい。
【0053】
例えば、
図3Aに示すように、ΔD=0.2(DOD範囲:0.2〜0.4)とした場合に、LiFePO
4正極におけるΔE/ΔDは、0.010Vであった。このため、LiFePO
4正極においてDOD範囲が0.2〜0.4の区間については、電位平坦部を有している。
【0054】
また、
図3Bに示すように、ΔD=0.2(DOD範囲:0.1〜0.3)とした場合に、黒鉛負極におけるΔE/ΔDは、0.015Vであった。このため、黒鉛負極においてDOD範囲が0.1〜0.3の区間については、電位平坦部を有している。
【0055】
なお、二次電池の定格容量Q
0(Ah)は、十分に小さい電流値で放電させたときの放電容量を指すものとし、次のようにして測定されたものを用いることができる。
【0056】
(1)二次電池をあらかじめ1/20CAで放電カット電圧3.0Vまで放電する。
(2)二次電池を1/20CAで充電カット電圧4.2Vまで定電流充電したのち、4.2Vでの定電圧充電を総充電時間30時間となるまで継続して行う。
(3)二次電池を1/20CAで放電カット電圧3.0Vまで放電し、得られた放電容量をQ
0(Ah)とする。
【0057】
ただし、1CAの電流値は二次電池の公称容量を基準にするものであり、公称容量1Ahの二次電池においては、1CA=1Aである。
【0058】
また、開回路電位特性(開回路電位曲線)は、二次電池に参照極を設けた状態で上記工程(1)および(2)を実施したのち、以下に示す(3)’の工程を25回繰り返すことによって得ることができる。
【0059】
(3)’二次電池を1/20CAで1時間または放電カット電圧3.0Vとなるまで放電したのち、3時間開回路状態で放置し、得られた電位を開回路電位とする。
【0060】
なお、二次電池から負極を取り出して、別途3端子式セルを組み立てて、単極での開回路電位測定を行うこともできる。
【0061】
次に、電池電極電位推定装置100の詳細な機能構成について、説明する。
【0062】
図4は、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
【0063】
電池電極電位推定装置100は、二次電池200に接続され、二次電池200の正極または負極の電位である電極電位を推定する装置である。同図に示すように、電池電極電位推定装置100は、第一取得部110、第二取得部120、電極電位補正部130及び記憶部140を備えている。
【0064】
第一取得部110は、所定の基準状態において、参照極215を基準とした電極電位である第一電極電位を取得する。ここで、正極または負極は、電極電位と電気量との関係を示す電極電位特性において電位平坦部を有しているのか好ましく、第一取得部110は、当該電位平坦部に対応する充電状態において測定される第一電極電位を取得する。
【0065】
なお、基準状態とは、二次電池200の電極電位を推定する計算の基準となる状態である。ここで、当該基準状態はどのような状態でもよいが、例えば、二次電池200の工場出荷時や充放電を開始する時点での状態である。
【0066】
第二取得部120は、基準状態以降の所定の劣化状態において、参照極215を基準とした電極電位である第二電極電位を取得する。具体的には、第二取得部120は、電位平坦部に対応する充電状態において測定される第二電極電位を取得する。
【0067】
なお、劣化状態とは、基準状態から二次電池200が充放電を開始して所定の期間が経過した場合の状態であり、二次電池200の電極電位を推定したい状態である。
【0068】
電極電位補正部130は、第一取得部110が取得した第一電極電位と、第二取得部120が取得した第二電極電位とを用いて、劣化状態において参照極215を基準として測定される電極電位を補正する。
【0069】
具体的には、電極電位補正部130は、第一電極電位から第二電極電位を減じた値を電位補正量として算出する。そして、電極電位補正部130は、劣化状態における参照極215を基準として計測される電極電位に、当該電位補正量を加算することで、劣化状態における電極電位を補正する。
【0070】
記憶部140は、二次電池200の電極電位を推定するための情報を記憶しているメモリである。具体的には、記憶部140は、電極電位を補正するための補正用データ141を記憶している。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態に係る補正用データ141の一例を示す図である。
【0072】
補正用データ141は、電極電位を補正するための情報を示すデータの集まりである。つまり、同図に示すように、補正用データ141は、「第一電極電位」及び「第二電極電位」を含むデータテーブルである。
【0073】
第一取得部110は、第一電極電位を取得し、取得した第一電極電位を記憶部140に書き込むことで、補正用データ141を更新する。また、第二取得部120は、第二電極電位を取得し、取得した第二電極電位を記憶部140に書き込むことで、補正用データ141を更新する。また、電極電位補正部130は、記憶部140に記憶されている補正用データ141から、第一電極電位及び第二電極電位を読み出して、電極電位を補正する。
【0074】
次に、電池電極電位推定装置100が二次電池200の電極電位を推定する処理について説明する。
【0075】
図6は、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置100が二次電池200の電極電位を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
【0076】
図7は、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置100が二次電池200の電極電位を推定する処理を説明するための図である。
【0077】
まず、
図6に示すように、第一取得部110は、所定の基準状態において、参照極215を基準とした電極電位である第一電極電位を取得する(S102)。
【0078】
具体的には、
図7に示すように、負極は、電極電位特性において電位平坦部を有しており、第一取得部110は、当該電位平坦部に対応する充電状態の電気量q1において測定される第一電極電位E1を取得する。つまり、基準状態においては、参照極215の電位は0Vであるため、第一取得部110は、0Vを基準とした第一電極電位E1を取得する。
【0079】
なお、同図では、電気量がQの区間が電位平坦部を有する区間であり、電気量q1は、当該Qの区間に含まれる任意の点である。
【0080】
ここで、上記のQの区間の具体例について、以下に説明する。
【0081】
図8A及び
図8Bは、負極における電位平坦部の具体例を示す図である。具体的には、
図8Aは、負極活物質として黒鉛質炭素(Graphite)を用いた場合の負極電位を示すグラフであり、
図8Bは、負極活物質としてLi
4Ti
5O
12(LTO)を用いた場合の負極電位を示すグラフである。
【0082】
図8Aに示すように、Gr負極の場合は、Stage1において比較的長い電位平坦部を有する。また、
図8Bに示すように、LTO負極の場合は、電位平坦部が非常に長いaの範囲を有する。
【0083】
次に、
図6に戻り、第二取得部120は、所定の劣化状態において、参照極215を基準とした電極電位である第二電極電位を取得する(S104)。
【0084】
具体的には、
図7に示すように、第二取得部120は、電位平坦部に対応する充電状態の電気量q2において測定される第二電極電位E2を取得する。つまり、劣化状態においては、参照極215の電位はXVであるため、第一取得部110は、XVを基準とした第二電極電位E2を取得する。
【0085】
なお、電気量q2は、電気量がQの区間に含まれる点であればよく、電気量q1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0086】
次に、
図6に戻り、電極電位補正部130は、第一電極電位と第二電極電位とを用いて、劣化状態において参照極215を基準として測定される電極電位を補正する(S106)。この電極電位補正部130が電極電位を補正する処理の詳細な説明については、後述する。
【0087】
以上により、電池電極電位推定装置100が二次電池200の電極電位を推定する処理は、終了する。
【0088】
次に、電極電位補正部130が電極電位を補正する処理(
図6のS106)について、詳細に説明する。
【0089】
図9は、本発明の実施の形態に係る電極電位補正部130が電極電位を補正する処理の一例を示すフローチャートである。
【0090】
まず、同図に示すように、電極電位補正部130は、第一電極電位から第二電極電位を減じた値を電位補正量として算出する(S202)。具体的には、
図7に示すように、電極電位補正部130は、第一電極電位E1から第二電極電位E2を減じた値を、電位補正量D(=E1−E2)として算出する。
【0091】
そして、
図9に戻り、電極電位補正部130は、劣化状態における参照極215を基準として計測される電極電位に、当該電位補正量を加算することで、劣化状態における電極電位を補正する(S204)。なお、本実施の形態では、電極電位補正部130は、劣化状態において電極電位を計測するたびに、当該電極電位を補正する。
【0092】
以上により、電極電位補正部130が電極電位を補正する処理(
図6のS106)は、終了する。
【0093】
以上のように、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置100によれば、基準状態において参照極215を基準とした電極電位である第一電極電位と、劣化状態において参照極215を基準とした電極電位である第二電極電位とを取得し、当該第一電極電位と第二電極電位とを用いて、劣化状態において参照極215を基準として測定される電極電位を補正する。これにより、電池電極電位推定装置100は、基準状態から劣化状態までに参照極215本来が有する電位が変化した場合でも、参照極215を基準として測定される電極電位を補正することで、正確に電極電位を推定することができる。
【0094】
また、正極または負極は、電極電位特性において電位平坦部を有しており、電池電極電位推定装置100は、当該電位平坦部に対応する充電状態において測定される第一電極電位と第二電極電位とを取得する。つまり、電位平坦部では、測定される電極電位は一定の値をとるため、電位平坦部において電極電位を測定することで、ばらつきのない値の電極電位を取得することができる。このため、電池電極電位推定装置100は、基準状態及び劣化状態において、電位平坦部において測定される第一電極電位と第二電極電位とを測定することで、ばらつきのない第一電極電位と第二電極電位とを取得することができ、電極電位を正確に補正することができる。
【0095】
また、電池電極電位推定装置100は、第一電極電位から第二電極電位を減じた値を電位補正量として算出し、劣化状態における参照極215を基準として計測される電極電位に、当該電位補正量を加算することで、劣化状態における電極電位を補正する。これにより、電池電極電位推定装置100は、複雑な計算を必要とせず、簡易に、劣化状態における電極電位を補正することができる。
【0096】
そして、このように、劣化状態における電極電位を正確に補正することで、正確な電極電位を取得することができるため、二次電池200の劣化状態を正確に把握したり、二次電池200の充放電制御を精度良く行ったりと、様々なことを行うことが可能になる。
【0097】
(変形例)
次に、本実施の形態の変形例について、説明する。上記実施の形態では、電極電位補正部130は、劣化状態において電極電位を計測するたびに、当該電極電位を補正することとした。しかし、本変形例では、電極電位補正部130は、電位補正量が所定の閾値を超えた場合に、劣化状態における電極電位を補正する。
【0098】
なお、本変形例における電池電極電位推定装置100の構成は、上記の実施の形態における電池電極電位推定装置100の構成とほぼ同じであるため、詳細な説明は省略し、以下では、異なる点を中心に説明を行う。
【0099】
まず、記憶部140に記憶されている補正用データ142について、説明する。
【0100】
図10は、本発明の実施の形態の変形例に係る補正用データ142の一例を示す図である。
【0101】
同図に示すように、補正用データ142は、
図5に示した補正用データ141の「第一電極電位」及び「第二電極電位」に加えて、「閾値」を含むデータテーブルである。
【0102】
ここで、「閾値」は、電極電位補正部130が電極電位を補正するか否かを判断するための値である。つまり、電極電位補正部130は、記憶部140に記憶されている補正用データ142から閾値を読み出して、電位補正量と比較することで、電極電位を補正する。
【0103】
次に、本変形例における電池電極電位推定装置100が二次電池200の電極電位を推定する処理について、説明する。なお、本変形例では、
図6に示された上記実施の形態の電池電極電位推定装置100が行う処理のうち、電極電位補正部130が電極電位を補正する処理(
図6のS106)が異なるため、当該処理について、詳細に説明する。
【0104】
図11は、本発明の実施の形態の変形例に係る電極電位補正部130が電極電位を補正する処理の一例を示すフローチャートである。
【0105】
まず、同図に示すように、電極電位補正部130は、第一電極電位から第二電極電位を減じた値を電位補正量として算出する(S302)。なお、当該処理は、
図9において電極電位補正部130が電位補正量を算出する処理(S202)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0106】
次に、電極電位補正部130は、算出した電位補正量が所定の閾値を超えたか否かを判断する(S304)。つまり、電極電位補正部130は、記憶部140に記憶されている補正用データ142から閾値を読み出して、電位補正量と比較することで、電位補正量が所定の閾値を超えたか否かを判断する。
【0107】
そして、電極電位補正部130は、電位補正量が当該閾値を超えたと判断した場合(S304でYes)、劣化状態における電極電位を補正する(S306)。つまり、電極電位補正部130は、劣化状態における参照極215を基準として計測される電極電位に、当該電位補正量を加算することで、劣化状態における電極電位を補正する。
【0108】
また、電極電位補正部130は、電位補正量が当該閾値を超えていないと判断した場合には(S304でNo)、電極電位を補正することなく、処理を終了する。
【0109】
以上により、電極電位補正部130が電極電位を補正する処理(
図6のS106)は、終了する。
【0110】
以上のように、本実施の形態の変形例に係る電池電極電位推定装置100によれば、算出した電位補正量が所定の閾値を超えた場合に、劣化状態における電極電位を補正する。つまり、電池電極電位推定装置100は、参照極215本来が有する電位が許容できる値よりも変化した場合に、電極電位を補正する。これにより、電池電極電位推定装置100は、電極電位の推定の精度を維持したまま、電極電位の推定の計算にかかる負荷を低減させることができる。
【0111】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る電池電極電位推定装置100について説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
【0112】
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0113】
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、電池電極電位推定装置100は、負極の電位平坦部において、第一電極電位及び第二電極電位を取得することで、二次電池200の電極電位を推定することとした。しかし、電池電極電位推定装置100は、正極の電位平坦部において、第一電極電位及び第二電極電位を取得することで、二次電池200の電極電位を推定することにしてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態及びその変形例では、電池電極電位推定装置100は、電位平坦部において第一電極電位及び第二電極電位を取得することで、二次電池200の電極電位を推定することとした。しかし、電池電極電位推定装置100は、電位平坦部でなくとも、同じ電気量のときの第一電極電位及び第二電極電位を取得することで、二次電池200の電極電位を推定することにしてもよい。つまり、電池電極電位推定装置100は、同じ電気量のときの第一電極電位及び第二電極電位を取得することができれば、電位補正量を正確に算出することができるため、当該電極電位を正確に推定することができる。
【0115】
また、上記実施の形態及びその変形例では、電極電位補正部130は、劣化状態において電極電位を計測するたびに、または電位補正量が所定の閾値を超えた場合に、電極電位を補正することとした。しかし、電極電位補正部130は、電極電位の計測回数が所定の閾値を超えた場合に電極電位を補正することにしてもよいし、基準状態から所定の期間が経過した場合に電極電位を補正することにしてもよい。
【0116】
また、本発明は、二次電池200と、二次電池200の電極電位を推定する電池電極電位推定装置100とを備える蓄電システム10として実現することもできる。
【0117】
また、本発明は、このような電池電極電位推定装置100として実現することができるだけでなく、電池電極電位推定装置100が備える特徴的な処理部の処理をステップとする電池電極電位推定方法としても実現することができる。
【0118】
また、本発明は、電池電極電位推定方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0119】
また、本発明に係る電池電極電位推定装置100が備える各処理部は、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。例えば、
図12に示すように、本発明は、第一取得部110、第二取得部120及び電極電位補正部130を備える集積回路150として実現することができる。
図12は、本発明の実施の形態に係る電池電極電位推定装置100を集積回路で実現する構成を示すブロック図である。
【0120】
なお、集積回路150が備える各処理部は、個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。
【0121】
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0122】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
【0123】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。