(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の円管部は、杭本体部及び第1の円管部で構成される形鋼杭が地盤に打ち込まれた後に該杭本体部の杭頭側となる端部に取付けられることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の形鋼杭。
前記杭本体部は、2つの板体部を有し且つ軸線と直交する断面の形状がL字形である一対の山形鋼を、これらの一対の山形鋼の各頂部側を相互に当接させ、軸線と直交する断面が十字形となるように形成された構成であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の形鋼杭。
前記杭本体部は、板状のウェブと該ウェブの両端側に形成されてウェブの一方の板面側にのみ突出する一対の板状のフランジとを有する一対の溝形鋼を、各溝形鋼のウェブにおけるフランジの突出方向とは逆方向の板面同士を当接させることにより形成された構成であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の形鋼杭。
前記杭本体部は、板状のウェブと該ウェブの一端に形成された板状のフランジとを有する断面T字形の一対のCT鋼を、これらのフランジにおけるウェブ側とは反対側の面同士を相互に当接させて、軸線と直交する断面が十字形となるように形成された構成であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の形鋼杭。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明するに、
図1及び
図2は本発明に係る形鋼杭1Aの第1の実施の形態を示すものである。
具体的に、この実施の形態の形鋼杭1Aは、長尺の杭本体部2と、該杭本体部2において杭先端側となる端部に取付けられた第1の円管部3と、杭本体部2において杭頭側となる端部に取付けられた第2の円管部4とを有している。
なお、この実施の形態においては、前記杭本体部2は上下方向に延びており、前記第1の円管部3は杭本体部2の上端側に、第2の円管部4は杭本体部2の下端側にそれぞれ取付けられている。
【0025】
前記杭本体部2は、前記第1及び第2の円管部3,4を連結すると共に、施工時や供用時においては、杭先端側にある前記第1の円管部3に対する軸力伝達の機能を果たすものである。また、この杭本体部2は、前記第1の円管部3及び第2の円管部4の取付部分以外、即ち、第1の円管部3と第2の円管部4との間の中間部分は、外部に露出させた状態となっている。
この実施の形態においては、前記杭本体部2は、板状のウェブ5と、該ウェブ5の両端に形成された一対の板状のフランジ6,6とを一体に備えた単一のH形鋼により形成されていて、平面視においてウェブ5を挟んで対称(即ち、軸線と直交する断面の形状が点対称)の形状となっている。
このように、この杭本体部2を軸線と直交する断面の形状が点対称となる形状とすることにより、施工時や供用時に軸力伝達する際、杭全体として偏心しないようにすることができる。
【0026】
ここで、杭本体部2における第1の円管部3と第2の円管部4との間の中間部分を露出させたのは、この中間部分は地中に埋設された場合には専ら軸力伝達に供され、曲げモーメントが作用しにくい状態となるためである。つまり、この杭本体部2の中間部分は、後で詳述する第1の円管部3及び第2の円管部4のように必ずしも大きな水平方向の投影面積を確保する必要がなく、したがって、露出していても問題が少ない。
この結果、基本的に長尺である形鋼杭であっても、第1及び第2の円管部3,4のような鋼管等の管材の材料の使用量を最低限度に抑えることができ、施工コストを抑制することが可能となる。
さらには、前記第1円筒部3及び第2の円管部4が取付けられた杭先端側と杭頭側との間、即ち、第1の円管部3と杭本体部2の露出部分との間、及び杭本体部2の露出部分と第2の円管部4との間で断面積の変化が生じるため、この断面積の変化が引き抜き方向の抵抗力の向上に寄与する。これにより、このような断面積の変化がない杭に場合に比べて、より大きな引き抜き抵抗を確保できるという利点もある。
【0027】
前記第1の円管部3は、内周径及び外周径が軸線方向に亘って一定である断面略円形状の鋼管等により形成された、軸線方向の両端側、即ち上下両端側が開口する略円筒形のもので、杭本体部2の杭先端側の端部に位置不動に固定されている。
この第1の円管部3は、形鋼杭1Aの先端側の水平方向の投影面積を広げ、地盤に対する接触面積を大きくことにより、該形鋼杭1Aの地中埋設時における先端支持力の増大と、アンカー効果とを確保している。さらには、第1の円管部3の内周面に取込まれた土や石、等との摩擦力による引き抜き抵抗力の向上をも図っている。
【0028】
この実施の形態においては、前記第1の円管部3は、
図2(b)に示すように、内周面側に前記杭本体部2を嵌挿できる程度の内周径を有している。そして、杭本体部2の杭先端側の一部を、この第1の円管部3の一方側の開口、即ち上端側の開口から内周面側に嵌挿させた状態となっている。その上で、第1の円管部3の内周面と杭本体部2のフランジ6,6の端部との当接部分が溶接等によって相互に接合されることにより、第1の円管部3が該杭本体部2の杭先端側の端部に、相互の位置が不動となるように固定されている。
なお、この第1の円管部3の肉厚は、施工時の荷重や上部構造物などより受ける荷重に対して十分な強度を確保することができる範囲内で任意に設定することができる。
【0029】
ここで、前記第1の円管部3の軸線方向長さは、この第1の円管部3の外周径の2〜5倍の長さとすることが好ましい。
この第1の円管部3の軸線方向長さを外周径の2倍以上としたのは、2倍未満であるとH形鋼杭の先端側での水平方向の投影面積拡大の効果が小さく、所望の高い先端支持力を得ることができないためである。
一方、第1の円管部3の軸線方向長さを外周径の5倍以下としたのは次の理由からである。即ち、支持層への根入れ長を外周径の5倍以上確保することで、杭全長にわたって同径の閉端の杭とほぼ同等の先端支持力を得ることができる一方、5倍超となると先端支持力が飽和することが一般に知られている(例えば、「道路橋示方書・同解説 IV株構造 平成14年3月 社団法人日本道路協会)」の356頁〜357頁参照)ことから、軸線方向長さを長くする意義が失われると共に、第1の円管部を形成する鋼管等の管材の材料が無駄になるためである。
【0030】
一方、前記第2の円管部4は、前記第1の円管部3と同様、断面略円形状の鋼管等により形成された、軸線方向の両端側、即ち上下両端側が開口する略円筒形のもので、杭本体部2の杭頭側の端部に位置不動に固定されている。
この第2の円管部4は、形鋼杭1Aの杭頭側の水平方向の投影面積を広げ、地盤に対する接触面積を大きくことにより、該形鋼杭1Aの地中埋設時における地盤に対する水平抵抗力の増大させる機能を有している。
この実施の形態においては、前記第2の円管部4は、前記第1の円管部3とほぼ同じ内周径を有していて、杭本体部2の杭頭側の一部を、この第2の円管部4の下端側の開口から内周面側に嵌挿させている。そして、その状態において、該第2の円管部4の内周面と杭本体部2のフランジ6,6の端部との当接部分が溶接等によって相互に接合されることにより、第2の円管部4全体が該杭本体部2の杭頭側の端部に、相互の位置が不動となるように固定されている。
なお、この実施の形態の第2の円管部4の肉厚は、前記第1の円管部3と同等としているが、土木用の杭としての強度を確保することができる範囲内で任意に設定することができる。
【0031】
ここで、前記第2の円管部4の軸線方向長さは、水平方向の抵抗に大きく寄与する長さである1/β以上であることが好ましく、さらに好ましくは1/β〜3/βとすることである。最も好ましいのは3/βとすることである。
このとき、前記βは杭の特性値であり、このβの値は、地盤の水平反力係数kh,鋼管の幅B,ヤング係数E,断面2次モーメントIを用いて下記(1)式により算定される。
β={(kh・B)/(4・E・I)}
0.25 (1/m) ・・・(1)
このように、第2の円管部の軸線方向長さを1/β以上、さらには1/β〜3/βとすることにより、杭頭側において高い水平抵抗力を確保することができる一方で、第2の円管部を形成する鋼管等の管材の材料の使用量を可及的に抑えることできる。
【0032】
なお、一般に、杭の水平抵抗はバネ定数により表されるため、このバネ定数が大きくなるほど水平方向の力による変位量が抑えられることになる。
前記バネ定数は、地盤の水平反力係数を用いて弾性床上のはりの理論に基づき算出することができ、算出方法も一般に広く知られている(例えば、「道路橋示方書・同解説 IV株構造 平成14年3月 社団法人日本道路協会)」の375頁〜377頁参照)。
このバネ定数の算出に際しては、杭の埋設部分の軸線方向長さが3/β以上あれば半無限長の杭として扱うことできるが知られている。したがって、第2の円管部4の軸線方向長さが3/βであれば、最低限の長さで半無限長の杭として扱うことができることから、水平投影面積の大きな第2の円管部4の部分で非常に大きな水平抵抗を確保でき、きわめて高い水平抵抗力を安定的且つ確実に確保することができることになる。
また、杭の埋設部分の軸線方向長さが1/β超、3/β未満である場合は、所定のバネ定数に対して補正係数φ(ただしφ>1)を乗じた形で計算をすることができることが知られている。したがって、第2の円管部4の軸線方向長さが1/β超、3/β未満である場合でも、H
形鋼杭の打設深さや杭先端側の支持条件等にもよるが、この第2の円管部4の部分で大きな水平抵抗を確保でき、高い水平抵抗力を得ることができる。
【0033】
さらに、前記第1及び第2の円管部3,4は、これらの第1の円管部3及び第2の円管部4の各軸線L2,L3が、前記杭本体部の軸線L1と同一線上となるように該杭本体部にそれぞれ取付けられている。
このように、これらの杭本体部2の軸線L1と、第1の円管部3の軸線L2及び第2の鋼管4の軸線L3とが同一線上となることにより、形鋼杭1Aは、杭先端側及び杭頭側において軸対称の形状となる。これにより、施工時や供用時の軸力伝達時において、杭全体として偏心を生じさせないというメリットがある。
【0034】
前記構成を有する形鋼杭1Aを地盤に打ち込むに際しては、種々の公知の工法を用いることができ、例えば、土木工事で一般的に用いられる油圧ハンマやディーゼルハンマ、モンケンといった打ち込み機械で土中に打ち込む打撃工法を適用することができる。
また、形鋼杭1Aの杭頭側に装着したバイブロハンマによる振動によって該形鋼杭1Aを地盤に打設する振動工法を適用することができる。
さらには、形鋼杭1Aの杭先端側に打設方向に高圧の水を噴射するノズルを取付けると共に、杭頭側に前記バイブロハンマを装着して、該バイブロハンマによる振動と、前記ノズルからの高圧の水の力による地盤の切削(ウォータージェット)とにより、該形鋼杭1Aを支持層まで打設する、ウォータージェット併用振動工法を適用することができる。この場合には、形鋼杭1Aの打設時における騒音や振動を著しく低減することができる上、排土量についても抑制できるという利点がある。また、必要に応じて、前記ノズルを通じて形鋼杭1Aの周面にセメントミルク等の流動性固化材を充填し、根固めをすることにより該形鋼杭1Aの周面摩擦力を増大させてもよく、これによって引き抜き抵抗力のさらなる向上を図ることができる。
【0035】
また、既設の杭の引き抜き抵抗を利用して、埋設する形鋼杭に油圧による静荷重で地盤に対する押し込み力を付与することにより該形鋼杭を地盤に押し込む圧入工法や、先端にオーガ掘削ヘッドを有する掘削ロッドでオーガ掘削と形鋼杭1Aの圧入とを同時に行ういわゆる芯抜き同時圧入工法を適用することができる。あるいは、先行掘削ヘッドで先行掘削してオーガ引抜きをしてからオーガ掘削と形鋼杭1Aの圧入を同時に行ういわゆる先行切削圧入工法等、各種圧入工法適用することができる。この場合、形鋼杭1Aの杭先端側にノズルを設けて高圧による水噴射による切削(ウォータージェット)を併用してもよい。
さらに、前記杭本体部2の前記フランジ部6,6の間における第1の円管部3内部の空間に掘削ヘッドを有する掘削ロッドを挿入し、該切削ヘッドで地盤を掘削しながら形鋼杭1Aを埋設する、中堀工法にも適用することができる。
この場合においては、形鋼杭1Aの先端側に設けたノズルによるウォータージェットを利用した切削を併用することができ、また、該ノズルを通じて形鋼杭1Aの周面にセメントミルク等の流動性固化材を充填し、根固めを行うようにしてもよい。
【0036】
以上のように、前記構成を有する形鋼杭1Aによれば、杭本体部2の杭先端側となる端部に第1の円管部3を、杭頭側となる端部に第2の円管部4をそれぞれ配設し、これら第1の円管部3及び第2の円管部4を、各軸線L2,L3が前記杭本体部の軸線L1と同一線上となるように該杭本体部2にそれぞれ取付け、軸対称の形状としたため、施工時や供用時の軸力伝達時において偏心が生じず、形鋼杭1A全体を適切に地中に埋設することができる。
さらに、第1の円管部3による杭先端側の水平方向の投影面積の拡大に伴って高い先端支持力と、アンカー効果による高い引き抜き抵抗力とを確保できると共に、第2の円管部4による杭頭側の水平方向の投影面積の拡大に伴って高い水平方向の抵抗力を確保することができる。
【0037】
その一方で、杭本体部2の杭先端側及び杭頭側の各端部にのみ第1の円管部3及び第2の円管部4をそれぞれ取付け、これらの第1の円管部3及び第2の円管部4の間、即ち、杭本体部2の中間部分には何も取付けない構成としたため、鋼管等の管材の材料の使用量を低減でき、施工コストを低減できる。
また、前記形鋼杭1Aは、上述の打撃工法や振動工法、圧入工法、中堀工法、さらにはいわゆるウォータージェット併用による振動工法、圧入工法、中堀工法の各種工法を問題なく用いることができるため、高い施工性を安定的に確保することができる。
【0038】
さらに、この実施の形態の形鋼杭1Aは、単一のH形鋼により杭本体部を形成し、この杭本体部に前記第1の円管部や第2の円管部を取付けた、比較的に簡単な構成であるため、形鋼杭全体としての形成が比較的容易であり、現場においても組立てが可能である。
しかも、H形鋼や各円管部に使用する鋼管等の各構成部材は、市場に一般に流通しているものを使用可能であるため調達が容易である上、杭本体部となるH形鋼は、トラック等による搬送が比較的容易で大量に輸送でき、また円筒部についても、杭本体部に取付けて運搬する場合に比べて大量に輸送できる。したがって、現地で組立て可能であることにより、完成品である形鋼杭を運搬する場合に比べて効率よく施工を行うことができるというメリットがある。
【0039】
前記実施の形態においては、前記第1の円管部7や第2の円管部の杭本体部2への取付けを、第1の円管部7や第2の円管部の内周面と杭本体部2との当接部分を溶接等により相互に固定することにより行っている。
しかしながら、第1の円管部や第2の円管部の杭本体部への取付けは、例えば、第1の円管部や第2の円管部の内周面と杭本体部2との間の空間に、これら第1の円管部や第2の円管部の内周面と杭本体部2とを相互に連結する板状のリブを設ける等、任意の手段を用いることができる。
【0040】
前記第1の実施の形態においては、第1の円管部3が単純な円筒状となっていたが、次に述べる第2の実施の形態においては、この第1の円管部が先細る筒状となっている。
即ち、
図3及び
図4は本発明の形鋼杭の第2の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Bは、杭本体部2における杭先端側に設けられた第1の円管部7が、その内周面及び外周面に杭先端方向に行くに従って次第に先細りとなるテーパ面7aを備えた筒状の構成となっている。
なお、第1の円管部7以外の構成、即ち、杭本体部及び第2の円管部については、基本的に前記第1の実施の形態と同じであり、同等の作用効果を奏するため、図面に同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
前記第1の円管部7は、
図3(a),(b)に示すように、全体として一定の肉厚を備えていて、この実施の形態においては、杭頭側の開口、即ち
図3及び
図4における上端側の開口が、該杭本体部2を内周面側に挿入可能な内周径を有している。一方、杭先端側、即ち下端側は杭本体部2を挿通できない程度の内周径を有している。
この第1の円管部7は、内周面及び外周面全体にそれぞれ先細りのテーパ面7a,7bが形成された、全体として先細った構成となっていて、前記杭本体部2の杭先端側の一部が上端側の開口から内周面側に挿入されている。そして、その状態において、この杭本体部2のフランジ6,6の端部と内周面のテーパ面7aとの当接部分が溶接等により相互に接合され、これにより、第1の円管部7全体が該杭本体部2に位置不動に固定されている。
また、この第1の円管部7としては、軸線方向の一端側に行くに従って次第に先細りとなるLP鋼管を適用してもよく、あるいは、鋼板等の金属板をロールベンディングまたは専用金型により少しずつプレスする方法等を用いてテーパ面7aを形成したものを用いることができる。
【0042】
ここで、前記テーパ面7a,7bのテーパ角は、打設する地盤等に応じて任意に設定することができるが、0.5〜10°程度が好ましい。
このテーパ角に関して、発明者らは、
図5(a)に示すような杭先端にテーパ角βのテーパ面を備えた鋼管杭を用いて回転圧入試験を実施した。
この結果、
図5(b)に示すように、テーパ角βの角度が0.5〜10°の範囲内において、支持力を施工荷重で割った値(支持力/施工荷重)がテーパ面を有さない一般的なストレート杭に比べて良好であることがわかった。ここでの施工荷重は、回転圧入施工時の、圧入力を示す。
一般に、支持力/施工荷重の値が大きいほど、同一の施工荷重に対して高い支持力を得られるため、杭本数の削減などにより材料費を低減することができ、また、同一の支持力に対して必要な施工荷重を低減することができる。これにより、施工機械のスペックダウンや施工時間の短縮などにより施工費を低減することが可能となることから、本発明においても、前記テーパ面7a,7bのテーパ角はこの0.5〜10°の範囲で設定することが好ましいといえる。
【0043】
前記構成を有する形鋼杭1Bは、第1の実施の形態と同様の工法により地盤に打ち込むことができ、また、基本的に前記第1の実施の形態の形鋼杭1Aと同様の効果を有する。
しかしながら、形鋼杭1Bは、前記第1の円管部7を、杭先端方向に行くに従って次第に先細りとなるテーパ面7a,7bを備えた構成としたことにより、形鋼杭1Bを地中に埋設するに際して、該形鋼杭1Bの杭先端側を地盤中の硬質な支持層に貫入する場合には、少ない根入れ長であっても通常の鋼管杭(テーパ面を形成していない鋼管杭)と同等以上の先端支持力を確保することができるという利点がある。
即ち、前記第1の円管部7が、外周面に先細りのテーパ面7bを有することにより、水平方向の投影面積だけでなく、支持層に支持される該第1の円管部7の鉛直方向の投影面積が大きくなる。これにより、この第1の円管部7の外周面のテーパ面7bが支持層地盤を押し拡げようとする力が生じるため、まわりの土や石等からの反力や拘束力を効率良く受けることができ、この結果、少ない根入れ長であっても高い先端支持力を確保することが可能となる。
【0044】
さらに、第1の円管部7の内周面のテーパ面7aにより、地盤に打ち込まれる際に該第1の円管部内に取込まれる土等の量を、テーパ面がない場合に比べて低減させることができ、且つ土や石等が拡径側、即ち上端側に行くに従ってそれらの土や石の密度が上昇するのを抑えることができる。これにより、打設抵抗を大きく軽減させることができるため、施工性を一層向上させることができる。
さらには、第1の円管部7が杭頭側に行くに従って拡径するため、このテーパ面7a,7bの形状に起因するアンカー効果によって、引き抜き抵抗力を著しく向上させることができる。
【0045】
前記第2の実施の形態においては、前記第1の円管部7の杭本体部2への取付けを、杭本体部2のフランジ6,6の端部と第1の円管部の内周面のテーパ面7aとの当接部分を溶接等により相互に固定することにより行っていた。
しかしながら、第1の円管部の杭本体部への取付けは、第1の円管部の内周面と杭本体部2との間の空間に、これら第1の円管部の内周面と杭本体部2とを相互に連結する板状のリブを設けることにより行ってもよい。
この場合、例えば、前記リブを、その板幅方向の一端側に第1の円管部の内周面側のテーパ面の傾きとほぼ同じ傾きの傾斜面を有し、他端側に杭本体部のフランジの外方側の板面に沿う平坦面を有する形状とすることが好ましい。このとき、該リブの傾斜面と第1の円管部の内周面、及び平坦面と杭本体部のフランジの外方側の板面をそれぞれ面接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、第1の円管部を該リブを介して杭本体部に強固に取付けることが可能となる。
【0046】
図6及び
図7は、本発明の第3の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Cは、前記第2の実施の形態では第1の円管部にのみテーパ面を設けた構成としているのに対し、さらに第2の円管部にもテーパ面を設けた構成としている。
即ち、この第3の実施の形態の形鋼杭1Cは、杭本体部2の杭頭側に取付けられた第2の円管部8が、形鋼杭1Cの杭頭方向に行くに従って次第に拡径するテーパ面9a,9bを備えた構成となっている。
なお、この実施の形態の形鋼杭1Cは、第2の円管部以外の構成、つまり杭本体部及び第1の円管部については、基本的に前記第2の実施の形態と同じであり、同等の作用効果を奏するため、図面に同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
具体的に、前記第2の円管部8は、杭先端側、即ち
図6及び
図7における下端側が前記杭本体部2と連結された、前記テーパ面9a,9bを有するテーパ面部10と、該テーパ面部10の杭本体部2との連結側とは反対側の端部側、即ち
図6及び
図7におけるテーパ面部10の上端側に配設された円筒部11とを一体に備えた構成となっている。
前記テーパ面部10は、杭頭側、即ち上端側に行くに従って全体として拡径(逆に、杭先端側に行くに従って全体として先細る)し、内周面及び外周面全体にそれぞれ前記テーパ面9a,9bが形成されたものとなっている。また、このテーパ面部は、
図7(a),(b)に示すように、全体として一定の肉厚を有していて、下端側の開口が、杭本体部2の杭頭側を内周面側に挿入可能な内周径を備えている。
そして、該下端側の開口から杭本体部2の一部が挿入された状態で、このテーパ面部10の内周面と杭本体部2のフランジ6,6との当接部分が溶接等により相互に接合されていて、これにより第2の円管部8全体が該杭本体部2の杭頭側に位置不動に固定された状態となっている。
【0048】
なお、前記テーパ面部10におけるテーパ面9a,9bのテーパ角は、打設する地盤等に応じて任意に設定することができるが、このテーパ面9a,9bのテーパ角については、施工時の抵抗が大きくならないように45°以下が好ましい。
また、このテーパ面部10としては、軸線方向の一端側に行くに従って次第に先細りとなるLP鋼管を適用してもよく、あるいは、鋼板等の金属板をロールベンディングまたは専用金型により少しずつプレスする方法等を用いてテーパ面を形成したものを用いることができる。
【0049】
一方、前記円筒部11は、
図7(a),(b)に示すように、前記テーパ面部10と同等の肉厚を有していて、前記テーパ面部10における拡径した一端側、即ち上端側とほぼ同じ内周径及び外周径となるように形成されたものである。この円筒部11は、前記テーパ面部10とは対向する端面同士が溶接等によって相互に接合、固定されたものとなっている。
なお、この円筒部11としては、鋼管等の円筒状の管材を用いることができる。また、この円筒部11の軸線方向長さについては、上述した第1の実施の形態に係る第2の円管部4の軸線方向長さと同様の理由により、1/β以上であることが好ましく、さらに好ましくは1/β〜3/βであり、3/βが最も好ましい。
【0050】
前記構成を有する形鋼杭1Cは、第1及び第2の実施の形態と同様の工法により地盤に打ち込むことができ、また、基本的に前記第1及び第2の実施の形態の形鋼杭1Aと同様の効果を有する。
しかしながら、この第3の実施の形態の形鋼杭1Cの場合、第2の円管部8に、杭頭方向に行くに従って次第に拡径するテーパ面9a,9bを設けた構成としたことから、形鋼杭1Cの杭頭側の水平方向の投影面積を拡大させることができる。これにより、形鋼杭1Cの杭頭側の水平抵抗力を一層高めることができるという利点がある。
その一方で、第1の円管部7は、先端方向に行くに従って次第に先細りとなるテーパ面7a,7bを備えた構成であるため、前記第2の実施の形態と同様に、高い先端支持力や引き抜き抵抗力を確保することができる。その上、形鋼杭1C全体としての施工性もきわめて良好である。
【0051】
前記第3の実施の形態においては、第1の円管部7及び第2の円管部8の両方にテーパ面7a・7b,9a・9bをそれぞれ設けた構成としているが、第2の円管部にのみにテーパ面を設け、第1の円管部はテーパ面のない円筒状とした構成としてもよい。
この場合、第2の円管部については、第3の実施の形態の第2の円管部と同等の効果を、第1の円管部については第1の実施の形態の第1の円管部と同等の効果をそれぞれ独立に有することなる。
【0052】
また、前記第3の実施の形態においては、第2の円管部8の杭本体部2への取付けを、杭本体部2の杭頭側のフランジ6,6の端部と第1の円管部の内周面のテーパ面7aとの当接部分を溶接等により相互に固定することにより行っていた。
しかしながら、第2の円管部の内周面と杭本体部2との間の空間に、これら第2の円管部の内周面と杭本体部2とを相互に連結する板状のリブを設け、第2の円管部を該リブを介して杭本体部に取付けるようしてもよい。
この場合、例えば前記リブを、その板幅方向の一端側が第2の円管部の内周面に沿い、他端側が杭本体部のフランジの外方側の板面に沿う形状とすることが好ましい。このとき、該リブの一端側と第2の円管部の内周面、及びリブの他端側と杭本体部のフランジの外方側の板面をそれぞれ面接触させ、その当接部分を線状に溶接することにより、第2の円管部と杭本体部とをこのリブを介して強固に接合することができる。
なお、第1の円管部についても、該第1の円管部の内周面と杭本体部との間にリブを設けて、第1の円管部をリブを介して杭本体部に固定してもよいことは、前記第2の実施の形態と同様である。
【0053】
前記第1〜第3の実施の形態では、杭本体部2における杭先端側となる端部及び杭頭側となる端部の両方に第1の円管部3,7及び第2の円管部4,8を設けた構成なっているが、次に述べる第4の実施の形態に係る形鋼杭は、杭本体部の杭頭側となる端部には円筒部を設けていない構成となっている。
即ち、
図8及び
図9は本発明に係る形鋼杭の第4の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Dは、単一のH形鋼からなる杭本体部2の杭先端側となる端部に、内周径及び外周径が軸線方向に亘って一定である断面略円形状に形成された第1の円管部3のみが設けられた構成となっている。
なお、この実施の形態の形鋼杭1Dは、第2の円管部を有しない点以外は基本的に前記第1の実施の形態と同じ構成であり、また杭本体部2及び第1の円管部3の各構成は前記第1の実施の形態とほぼ同じで同等の作用効果を奏するため、図面に同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
前記構成を有する形鋼杭1Dは、基本的には、前記第1〜第3の実施の形態と同様の工法により地盤に打設することができる。
また、前記第1の実施の形態において第1の円管部3の機能によって得ることができる効果と同等の効果を得ることができる。さらに、第1の円管部3を設けたことにより、形鋼杭1Dの杭先端側においては軸対称の形状となるので、円筒部を有しない単なる形鋼杭に比べ、施工時や供用時の軸力伝達時において偏心の発生を飛躍的に抑えることができる。
逆に、第2の円管部を設けない分、鋼管等の管材の材料の使用量がさらに少なくなるため、前記第1の実施の形態の構成に比べて形鋼杭に係るコストを一層低減することが可能となる。
【0055】
なお、第1の円管部3の杭本体部2への取付けは、該第1の円管部3の内周面と杭本体部2との間にリブを設け、該リブを介して第1の円管部3と杭本体部2とを相互に接合することにより行ってもよいことは、前記第1の実施の形態と同様である。
【0056】
さらに、
図10及び
図11は、本発明の形鋼杭の第5の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Eは、前記第4の実施の形態の形鋼杭における第1の円管部の構成に代えて、前記第2の実施の形態の形鋼杭の第1の円管部と同様の、先細る筒状としたものを採用している。
より具体的に、この実施の形態の形鋼杭1Eは、単一のH形鋼からなる杭本体部2の杭先端側となる端部に第1の円管部7のみが設けられていて、該第1の円管部7は、その内周面及び外周面に、杭先端方向に行くに従って次第に先細りとなるテーパ面7a,7bが形成された筒状の構成となっている。
なお、この実施の形態の形鋼杭1Eについては、第2の円管部を有しない点以外は基本的に前記第2の実施の形態と同じ構成であり、また杭本体部及び第1の円管部の各構成は前記第2の実施の形態とほぼ同じで同等の作用効果を奏するため、図面に同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
前記構成を有する形鋼杭1Eは、基本的には、前記第1〜第4の実施の形態と同様の工法により地盤に打設することができる。
また、前記第4の実施の形態の形鋼杭1Dと同等の効果を得ることができる上、第1の円管部7にテーパ面7a,7bを形成したことにより、前記第2の実施の形態の形鋼杭1Bにおける第1の円管部の機能によって得ることができる効果と同等の効果を得ることができる。
したがって、コストを抑えながらも、テーパ面による高い先端支持力及び引抜抵抗力を獲得することが可能となる。
【0058】
なお、第1の円管部7の杭本体部2への取付けは、該第1の円管部7の内周面と杭本体部2との間にリブを設け、該リブを介して第1の円管部7と杭本体部2とを相互に接合することにより行ってもよいことは、前記第2の実施の形態と同様である。
【0059】
ところで、前記第4及び第5の実施の形態に係る形鋼杭1D,1Eにおいては、前記各種工法によりそのまま打設してもよいことは当然であるが、
図12に示すように、これらの第4及び第5の実施の形態に係る形鋼杭1D,1Eを一旦地盤に打設して地中に埋設した後に、杭頭側となる端部に円筒部(即ち、第2の円管部)を事後的に取付けることができる。
これについて、前記第4の実施の形態の形鋼杭1Dを用いて具体的に説明すると、まず、
図12(a)に示すように、形鋼杭1Dを前述した各種工法により、通常通り地盤12に打設する。
次に、
図12(b)に示すように、地盤に打設、埋設された形鋼杭1Dの杭頭側の周辺を掘削して、該形鋼杭1Dの杭本体部2の杭頭側を所定長さだけ外部に露出させる。
そして、
図12(c)に示すように、露出させた該形鋼杭1Dの杭本体部2の杭頭側の端部に、第2の円管部4’を取付ける。これにより、実質的に前記第1の実施の形態に係る形鋼杭1Aとほぼ同じ構成となる。
【0060】
このとき、第2の円管部4’の杭本体部2への取付けは、該第2の円管部4’内に杭本体部2の杭頭側の端部を挿入させた上で、溶接等によって第2の円管部4’を直接的に杭本体部に接合、固定してもよい。
しかしながら、
図12(c)示すように、第2の円管部4’の内周面と杭本体部2との間の空間を含めた掘削部分の空間12a内に、モルタルやコンクリート等の時経硬化材13を注入することにより、該時経硬化材13を介して第2の円管部4’と杭本体部2とを相互に固定するようにしてもよい。
【0061】
また、前記時経硬化材13を用いた取付けを行う場合においては、前記第2の円管部4’は、
図13に示すような、内周面に周方向あるいはスパイラル状に延びる凸部4’aが設けられた円管状のものを用いることが好ましい。これにより、前記第2の円管部4’に対する時経硬化材13の付着が高められ、第2の円管部4’と杭本体部2との固定がより強固になる。なお、この場合の第2の円管部4’としては、例えば、突起付き素管の形成に用いる鋼帯を管状に形成したものや、円管の内周面に鉄筋や平鋼等を周方向に延びるように固定したもの等を採用することができる。
【0062】
さらに、
図14に示すように、前記杭本体部2の杭頭側にボルト等、あるいは鉄筋や平鋼等によるずれ止め手段14(なお、
図14の場合、ボルトによるスタッド)を設けてもよく、これにより、前記時経硬化材12との付着が高められて第2の円管部4’と杭本体部2との固定がより強固になる。
この場合、内周面に凸部4’aが設けられた前述の第2の円管部4’と合わせて用いれば、非常に効果的である。
【0063】
このように、前記第4及び第5の形態のような第2の円管部を有しない形鋼杭であっても、打設後に第2の円管部を杭本体部の杭頭側の端部に取付けることにより、実質的に前記第1の実施の形態に係る形鋼杭1Aと同じ構成となるため、該形鋼杭1Aと同等の効果、特に、第2の円管部の機能に起因する効果を得ることができる。
即ち、形鋼杭の杭頭側の水平方向の投影面積を広げて地盤に対する接触面積を大きくし、地中埋設時における地盤に対する水平抵抗力の増大させる機能を事後的に付与することができる。
したがって、打設後の形鋼杭の水平抵抗力が不足していると考えられる場合や、さら現状よりも増大させたい場合等、事後的に水平抵抗力を向上させる必要がある場合にはきわめて有効である。
なお、
図12に示すものの場合、第2の円管部4’を、前記第1の実施の形態のような単純な円筒状にものとしているが、前記第3の実施の形態のような、テーパ面部及び円筒部を備えた構成のものを用いてもよいことはもちろんである。
【0064】
前記第1〜第5の実施の形態においては、いずれも、杭本体部として単一のH形鋼を用いているが、杭本体部は、第1〜第5の実施の形態の形鋼杭のような単一の形鋼により形成したものでなくてもよい。
即ち、以下に述べる第6〜第8の実施の形態のように、複数の同形の形鋼を組み合わせて、軸線と直交する断面の形状が点対称となるように形成された杭本体部を用いることができる。
【0065】
図15〜
図17は、本発明の形鋼杭の第6の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Fは、一対の同形の山形鋼16,16から形成された杭本体部15と、該杭本体部15の杭先端側の端部に取付けられた第1の円管部7と、杭本体部15の杭頭側の端部に取付けられた第2の円管部8とを有している。
前記第1の円管部7は、基本的には前記第2及び第3、第5の実施の形態と同様に、先細る筒状、即ち、該第1の円管部7の内周面及び外周面に杭先端方向に行くに従って次第に先細りとなるテーパ面7a,7bが形成された筒状の構成となっている。
また、前記第2の円管部8は、前記第3の実施の形態と同様、杭先端側(下端側)が杭本体部に連結され、形鋼杭1Fの杭頭方向に行くに従って次第に拡径するテーパ面9a,9bを備えたテーパ面部10と、該テーパ面部10の杭本体部15との連結側とは反対側の端部側(テーパ面部10の上端側)に配設された円筒状の円筒部11とを備えた構成となっている。
【0066】
なお、この第6の実施の形態の形鋼杭1Fは、杭本体部が単一のH形鋼により形成されていない点以外の構成、即ち第1の円管部及び第2の円管部の構成は、基本的に前記第3の実施の形態と同じ構成であり、また同等の作用効果を奏するため、同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
前記杭本体部15は、2つの板体部16a,16bを有し且つ軸線と直交する断面の形状がL字形である一対の山形鋼(アングル)16,16を、これらの一対の山形鋼16,16の各頂部16c側を相互に当接させて、軸線L1と直交する断面が十字形となるように構成されたものである。これにより、杭本体部15は、軸線L1と直交する断面の形状が点対称となっている。
【0068】
この第6の実施の形態においては、
図15及び
図17(a),(b)に示すように、前記山形鋼16として、前記板体部16a,16bの板幅が異なる幅である不等辺山形鋼(なお、符号16aは長辺側の板体部、符号16bは短辺側の板体部としている。)を用いている。そして、前記杭本体部15は、この一対の山形鋼16,16の各頂部16c,16c部同士を対向させて、一方の山形鋼16における頂部16c側の面と、他方の山形鋼16の頂部16c側の面とが直角となった状態で、溶接等により相対的な位置が不動となるように固定させた構成としている。
【0069】
ここで、この実施の形態における前記第1の円管部7の杭本体部15への取付けは、
図15及び
図17(b)に示すように、複数の板状のリブを用いて行っている。
即ち、杭本体部15の杭先端側の一部が第1の円管部7の上端側の開口から内周面側に挿入された状態において、第1の円管部7の内周面と杭本体部2との間の空間に、これら第1の円管部の内周面と杭本体部2とを相互に連結する4枚のリブ17,18を配設している。
【0070】
具体的に、前記各リブ17,18は、いずれも、その板幅方向の一端側に、第1の円管部7の内周面側のテーパ面7aの傾きとほぼ同じ傾きの傾斜面17a,18aを有し、他端側に、杭本体部15の軸線方向と平行な方向に延びる平坦面17b,18bを有している。
したがって、各リブ17,18は、板面が下端側に行くに従って先細る略直角台形状となっている。
【0071】
また、これらのリブ17,18は、
図17(b)に示すように、杭本体部15を形成する一対の山形鋼16,16の各板体部16a,16bに1枚ずつあてがわれている。
そして、杭本体部15の各板体部16a,16bにおける頂部16c側の面と、これらのリブ17,18の平坦面17b,18b側の板面とをそれぞれ面接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、杭本体部15に接合されている。さらに、これらリブ17,18の傾斜面17a,18aと第1の円管部7の内周面とを面接触させ、その当接部分をそれぞれ線状に溶接することにより、リブ17,18と第1の円管部7とがそれぞれ相互に接合されている。なお、図中、符号19は溶接部分を示している。
これにより、第1の円管部7は、これらの4枚のリブ17,18を介して杭本体部15に固定されることとなる。
【0072】
なお、この実施の形態においては、上述のように杭本体部15が不等辺山形鋼により形成されているため、長辺側の板体部16aと短辺側の板体部16bとでは板幅が異なり、外方への突出長さが異なる。
そのため、長辺側の板体部16aと接合されるリブ17は、第1の円管部7の内周面までの距離との関係から、短辺側の板体部16bと接合されるリブ18の板幅よりも小さい板幅となっている。
【0073】
また、この実施の形態における前記第2の円管部8の杭本体部15への取付けは、
図15及び
図17(a)に示すように、複数の板状のリブを用いて行っている。
即ち、杭本体部15の杭頭側の一部が第2の円管部8の下端側の開口から内周面側に挿入された状態において、第2の円管部8の内周面と杭本体部2との間の空間に、これら第2の円管部の内周面と杭本体部2とを相互に連結する4枚のリブ19,20を配設している。
【0074】
具体的に、前記各リブ20,21は、いずれも、その板幅方向の一端側に、第2の円管部におけるテーパ面部10の内周面側のテーパ面9aの傾きとほぼ同じ傾きの傾斜面20a,21aを有し、他端側に、杭本体部15の軸線方向と平行な方向に延びる平坦面20b,21bを有している。
したがって、各リブ20,21は、板面が下端側に行くに従って先細る略直角台形状となっている。
【0075】
また、
図17(a)に示すように、これらのリブ20,21は、杭本体部15を形成する一対の山形鋼16,16の各板体部16a,16bに1枚ずつあてがわれている。
そして、杭本体部15の各板体部16a,16bにおける頂部側16cの面と、これらのリブ20,21の平坦面20b,21b方向の端部側の板面とをそれぞれ面接触させている。その上で、その当接部分を線状に溶接することにより、杭本体部15に接合されている。また、これらのリブ20,21の傾斜面20a,21aと第2の円管部8のテーパ面部10の内周面とを面接触させて、その接触部分を線状に溶接することにより、リブ20,21と第2の円管部8とがそれぞれ相互に接合されている。なお、図中、符号22は溶接部分を示す。
これにより、第2の円管部8は、これらの4枚のリブ20,21を介して杭本体部15に固定されることとなる。
なお、この第2の円管部8の杭本体部15への取付けに用いられるリブ20,21についても、第1の円管部7の杭本体部15への取付けに用いられるリブ17,18と同様に、長辺側の板体部16aと接合されるリブ20は、短辺側の板体部16bと接合されるリブ21の板幅よりも小さい板幅となっている。
【0076】
このように、第1の円管部7及び第2の円管部8の杭本体部15への取付けを、リブ17,18・20,21を用いて行うことにより、杭本体部15とリブ、及び第1の円管部7や第2の円管部8とリブを面接触させて、それぞれの当接部分を線状に溶接することができるため、取付けを強固に行うことができる。
特に、第1の円管部7及び第2の円管部8の各内周面はテーパ面となっていて、杭本体部15との当接部分は点接触であることから、第1の円管部7及び第2の円管部8を杭本体部15とのこの当接部分で溶接する場合に比べて、取付け強度を格段に向上させることが可能となる。
【0077】
前記構成を有する形鋼杭1Fは、前記第1〜第5の実施の形態と同様の工法により地盤に打ち込むことができ、また、基本的に前記第3の実施の形態の形鋼杭1Cと同様の効果を有する。
一方、この実施の形態の形鋼杭1Fの場合、杭本体部15を、一対の山形鋼16,16により形成した構成としているが、山形鋼16自体は、幾重にも積み重ねてコンパクトに大量に輸送することが可能である。そのため、H形鋼の場合比べてトラック等による大量輸送がより容易であり、搬送面では優位である。
したがって、現地で順次組立てることにより、完成品としての形鋼杭を大量に確保した状態で施工を行うことができるため、一層効率よく施工を行うことが可能となる。
【0078】
前記第6の実施の形態の形鋼杭においては、第1の円管部を、該第1の円管部の内周面及び外周面に杭先端方向に行くに従って次第に先細りとなるテーパ面7a,7bが形成された筒状の構成し、第2の円管部を、形鋼杭1Fの杭頭方向に行くに従って次第に拡径するテーパ面9a,9bを備えたテーパ面部10と、円筒状の円筒部11とを備えた構成としている。
しかしながら、第1の円管部や第2の円管部は、第1の実施の形態のように、第1の円管部及び第2の円管部の両方を単純な円筒状の構成としてもよく、また、第2の実施の形態のように第1の円管部のみにテーパ面を形成し、第2の円管部は単純な円筒状とした構成であってもよい。
さらには、第4及び第5の実施の形態のように、第1の円管部のみを設けて、第2の円管部を設けない構成としてもよい。なお、この場合には、形鋼杭を埋設した後に第2の円管部を事後的に杭本体部に取付けてもよいことはもちろんである。
【0079】
また、前記第6の実施の形態においては、第1の円管部7の杭本体部15への取付け、さらには第2の円管部8の杭本体部15への取付けは、それぞれリブ17,18・19,20を用いて行っていた。
しかしながら、
図18に示すように、短辺側の板体部との接合にのみリブを用い、長辺側の板体部は、リブを用いることなく第1の円管部の内周面や第2の円管部の内周面に直接溶接等により接合するようにしてもよい。
特に、第1の円管部や第2の円管部が、
図18に示すもののような単純な円筒状である場合(なお、
図18中の第1の円管部は、第1の実施の形態における第1の円管部3を用いている。)には、各円管部と杭本体部とを直接的に線接合することができるため接合強度を容易に確保可能である一方で、リブを必要としない分、接合が容易であるため、形鋼杭の組立ての観点からは有利である。
【0080】
さらに、前記第6の実施の形態においては、杭本体部15を一対の山形鋼16,16の各頂部16c,16c同士を対向させて形成した構成としているが、必ずしもこのような構成とする必要はない。
即ち、
図19(a)に示す杭本体部15’ように、一対の山形鋼16,16の各頂部16c、16c同士を対向させることなく、各山形鋼16,16の短辺側の板体部16bにおける頂部16c側の面同士を一部面接触させた状態で、その当接部分を線状に溶接することにより、相対的な位置が不動となるように固定した構成としてもよい。
【0081】
また、前記第6の実施の形態においては、杭本体部15とリブ17,18・19,20との接合を溶接により行っていたが、これら杭本体部とリブとを確実且つ強固に接合できれば、
図19(b)に示すように、ボルト23及びナット24を用いた接合等、任意の手段により接合を行うことができる。
なお、
図19(b)は、
図19(a)に示す構成の杭本体部15’を用いた場合を示している。
【0082】
さらに、前記第6の実施の形態においては、杭本体部15を形成する山形鋼16として、不等辺山形鋼を用いていたが、2つの板体部が相互に同じ板幅である等辺山形鋼を用いてもよい。
なお、この場合における杭本体部への第1の円管部や第2の円管部の取付けは、基本的に不等辺山形鋼の場合と同様の手段を用いることができる。
【0083】
図20〜
図22は、本発明の形鋼杭の第7の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Gは、杭本体部25が、一対の溝形鋼(チャンネル)26,26を組み合わせることにより形成されたものとなっている。
なお、この第7の実施の形態の形鋼杭1Gは、杭本体部25が一対の溝形鋼26,26により形成されている点以外の構成、即ち第1の円管部及び第2の円管部の構成は、基本的に前記第3及び第6の実施の形態と同じ構成であり、また同等の作用効果を奏するため、同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0084】
前記杭本体部25は、
図20及び
図22に示すように、板状のウェブ27と、該ウェブ27の両端側に形成されてこのウェブ27の一方の板面側にのみ突出する一対の板状のフランジ28,28とを有する、略凹状に形成された同大同形の一対の溝形鋼26,26を組合わせて、軸線L1と直交する断面の形状が点対称となった構成となっている。
具体的に、この杭本体部25は、各溝形鋼26,26のウェブ27における、フランジ28の突出方向とは逆方向の板面同士を当接させて、それぞれの溝形鋼26,26の一対のフランジ28,28が相反する方向に延びた構成となっている。したがって、これらの一対の溝形鋼26,26は、ウェブ27と一対のフランジ28,28とで形成されるそれぞれの溝が、相反する方向に開口した状態となっている。
【0085】
なお、この実施の形態において前記杭本体部25を形成する溝形鋼26は、一対のフランジ28,28の各先端側に、溝の内方側に折れ曲がって突出する板状のリップ部28a,28aがそれぞれ設けられた、いわゆるリップ付き溝形鋼を用いている。
【0086】
ここで、この実施の形態における前記第1の円管部7の杭本体部25への取付けは、
図21及び
図22(b)に示すように、第1の円管部7の内周面と杭本体部25との間の空間に設けられた一対の平板状の取付用板によって行っている。
即ち、杭本体部25の杭先端側の一部が第1の円管部7の上端側の開口から内周面側に挿入された状態において、第1の円管部7の内周面と杭本体部25との間の空間に、これら第1の円管部7の内周面と杭本体部25とを相互に連結する一対の取付用板29,29を配設している。
具体的に、これらの一対の取付用板29,29は、相互に同大同形の平板状もので、板幅方向の両端側が前記第1の円管部7の内周面(テーパ面7a)に線接触するよう、板面が下方側に行くに従って先細る略等脚台形状にそれぞれ形成されている。
【0087】
そして、これらの一対の取付用板29,29は、杭本体部25を形成する一対の溝形鋼26,26における、隣接する他方の溝形鋼26のフランジ28との共通の外方側の面に、これらの隣接するフランジ28と面接触し且つこれらの両フランジ28を跨ぐようにあてがわれている。その上で、各取付用板29,29と当接する溝形鋼26の各フランジ28の先端部分とをそれぞれ線状に溶接することにより、平面視において杭本体部25を挟むように該杭本体部25とそれぞれ接合されている。
一方、各取付用板26,26の両端部は、第1の円管部7の内周面と線接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、該第1の円管部7と接合されている。なお、図中符号30は溶接部分を示している。
このように、第1の円管部7は、これら一対の取付用板29,29を介して杭本体部25に固定されることとなる。
【0088】
なお、この実施の形態においては、前記一対の溝形鋼26,26の杭先端側は、これらの溝形鋼26,26の各フランジ28,28が取付用板29,29に溶接されることにより、相対的な位置が不動となるように固定される。
これにより、これら取付用板29,29を介して間接的に接合されることから、溝形鋼26,26同士は直接的には溶接されていない。ただし、必要に応じて、溝形鋼26,26同士を溶接等により直接的に接合してもよい。
【0089】
また、この実施の形態における前記第2の円管部8の杭本体部25への取付けは、
図21及び
図22(a)に示すように、第2の円管部8の内周面と杭本体部25との間の空間に設けられた一対の平板状の取付用板によって行っている。
即ち、杭本体部25の杭頭側の一部が第2の円管部8の下端側の開口から内周面側に挿入された状態において、第2の円管部8の内周面と杭本体部25との間の空間に、これら第2の円管部8の内周面と杭本体部25とを相互に連結する一対の取付用板31,31を配設している。
具体的に、これらの一対の取付用板31,31は、相互に同大同形の平板状のもので、板幅方向の両端側が前記第2の円管部8のテーパ面部10の内周面(テーパ面9a)に線接触するよう、板面が下方側に行くに従って先細る略等脚台形状にそれぞれ形成されている。
【0090】
そして、これらの一対の取付用板31,31は、杭本体部25を形成する一対の溝形鋼26,26における、隣接する他方の溝形鋼26のフランジ28との共通の外方側の面に、これらの隣接するフランジ28と面接触し且つこれらの両フランジ28を跨ぐようにあてがわれている。その上で、各取付用板31,31と当接する溝形鋼26の各フランジ28の先端部分とをそれぞれ線状に溶接することにより、平面視において杭本体部25を挟むように該杭本体部25とそれぞれ接合されている。
一方、各取付用板31,31の両端部は、第2の円管部8の内周面と線接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、該第2の円管部8と接合されている。なお、図中、符号32は溶接部分を示している。
このように、第2の円管部8は、これら一対の取付用板31,31を介して杭本体部25に固定されることとなる。
【0091】
なお、この実施の形態においては、一対の溝形鋼26,26の杭頭側は、これらの溝形鋼26,26の各フランジ28.28が取付用板31,31に溶接されることにより、相対的な位置が不動となるように固定され、該取付用板31,31を介して間接的に接合されることとなるため、溝形26,26鋼同士は直接的には溶接されない。
したがって、これらの一対の溝形鋼26,26は、この杭頭側の取付用板31,31、及び杭先端側における前記取付用板29,29により、杭頭側及び杭先端側が間接的に接合されて、一本の杭本体部25として一体不可分な構成となる。
ただし、杭頭側においても、必要に応じて、溝形鋼26,26同士を溶接等により直接的に接合してもよい点は、杭先端側と同様である。また、溝形鋼26,26の杭頭側及び杭先端側以外の部分において溶接等により直接接合するようにしてもよい。
【0092】
このように、第1の円管部7及び第2の円管部8の杭本体部15への取付けを、取付用板29,31を用いて行うことにより、杭本体部25と取付用板29,31とを面接触させると共に、第1の円管部7や第2の円管部8と取付用板29,31とを線接触させて、それぞれの当接部分を線状に溶接することができる。
そのため、杭本体部25と第1の円管部7及び第2の円管部8とを点接触させて溶接するような場合に比べて、第1の円管部7及び第2の円管部8の杭本体部15への取付けを強固に行うことができる。
【0093】
前記構成を有する形鋼杭1Gは、前記第1〜第6の実施の形態と同様の工法により地盤に打ち込むことができ、また、基本的に前記第3の実施の形態と同様の効果を有する。
さらに、この実施の形態の形鋼杭1Gの場合も、第6の実施の形態の山形鋼16の場合と同様に、杭本体部を形成する山形鋼26,26が、コンパクト且つ大量に輸送することが可能であるため、大量輸送が容易であるという利点がある。したがって、現地で順次組立てることにより完成品としての形鋼を大量に確保した状態で施工を行うことができるため、効率よく施工を行うことが可能となる。
【0094】
前記第7の実施の形態の形鋼杭1Gにおいては、第1の実施の形態のように、第1の円管部及び第2の円管部の両方を単純な円筒状の構成としたり、第2の実施の形態のように第1の円管部のみにテーパ面を形成し、第2の円管部は単純な円筒状とした構成としたりしてもよい点は、前記第6の実施の形態と同様である。
さらには、第4及び第5の実施の形態のように、第1の円管部のみを設けて、第2の円管部を設けない構成としてもよい点や、この場合に形鋼杭を埋設した後に第2の円管部を事後的に杭本体部に取付けてもよい点についても、第6の実施の形態と同様である。
【0095】
また、前記第7の実施の形態においては、第1の円管部7及び第2の円管部8の杭本体部25への取付けは、それぞれ取付用板29,31を用いて行っていた。
しかしながらが、
図23に示すように、このような取付用板を用いることなく、一対の溝形鋼を相互に溶接して固定した上で、1の円管部の内周面や第2の円管部の内周面に直接溶接等により接合するようにしてもよい。なお、
図23は、第1の実施の形態における第1の円管部3を杭本体部25に取付けた状態を示している。
特に、第1の円管部や第2の円管部が、第1の実施の形態のような単純な円筒状である場合には、各円管部と杭本体部とを直接的に線接合することができるため接合強度を容易に確保可能であり、また取付用板を必要としない分、接合が容易である。
【0096】
さらに、前記第7の実施の形態においては、杭本体部25を構成する溝形鋼として、いわゆるリップ付き溝形鋼を用いているが、これ以外にも、
図24に示すような、リップ部を有さない単純な溝形鋼26’を用いることができる。なお、
図24(a)は前記第7の実施の形態の第1の円管部7を、
図24(a)は前記第1の実施の形態の第1の円管部3を、それぞれリップ部のない溝形鋼26’からなる杭本体部25’に取付けた状態を示している。また、図中の符号30’は溶接部分を示す。
【0097】
この場合においても、第1の円管部や第2の円管部の杭本体部への取付けは、基本的にリップ付き溝形鋼の場合と同様に、
図24(a)に示すような取付用板29’,29’を介して行うことができる。あるいは、
図24(b)に示すように、第1の円管部や第2の円管部と杭本体部とを直接溶接する等、任意の手段を用いることができる。
【0098】
図25〜
図27は、本発明の形鋼杭の第8の実施の形態を示すもので、この実施の形態の形鋼杭1Hは、杭本体部35が、H形鋼をウェブの中央で2つに切断することにより形成された一対のCT鋼(カットティー)36,36により構成されたものとなっている。
なお、この第8の実施の形態の形鋼杭1Hは、杭本体部が一対のCT鋼により形成されている点以外の構成、即ち第1の円管部7及び第2の円管部8の構成は、基本的に前記第3及び第6、第7の各実施の形態と同じ構成であり、また同等の作用効果を奏するため、同様の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0099】
前記杭本体部35は、
図25及び
図27に示すように、板状のウェブ37と、該ウェブ37の一端側に形成された板状のフランジ38とを有する、断面T字形に形成された同形同大の一対のCT鋼36,36を組合わせた構成となっている。
具体的に、この杭本体部35は、一対のCT鋼36,36の各フランジ38における、ウェブ37側とは反対側の面同士を相互に当接させて、軸線L1と直交する断面が十字形となるように構成されている。これにより、杭本体部35は、軸線L1と直交する断面の形状が点対称となっている。
なお、この実施の形態における各CT鋼36,36は、ウェブ37の突出長さと、フランジ38におけるウェブ37からの突出長さ(ウェブ37との連結部分から一端までの長さ)とが、ほぼ同じ長さに形成された態様となっている。
【0100】
ここで、この実施の形態における前記第1の円管部7の杭本体部35への取付けは、
図27(b)に示すように、第1の円管部7の内周面(テーパ面7a)と杭本体部35との間の空間に設けられた複数の板状のリブによって行われている。
即ち、杭本体部35の杭先端側の一部が第1の円管部7の上端側の開口から内周面側に挿入された状態において、第1の円管部7の内周面と杭本体部35との間の空間に、これら第1の円管部7の内周面と杭本体部2とを相互に連結する4枚のリブ39,40が配設されている。
前記各リブ39,40の構成は、基本的に前記第6の実施の形態における第1の円管部の取付けに用いるリブ17,18とほぼ同じ構成の、下端に行くに従って先細る直角台形状に形成されている。
【0101】
前記リブ39,40は、杭本体部35の杭先端側における、CT鋼36のウェブ37やフランジ38の部分に1枚ずつあてがわれている。
そして、それらのウェブ37やフランジ38の部分の板面とこのリブ39,40の平坦面39b,40b方向の端部側の板面とを面接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、杭本体部35に接合されている。さらに、各リブ39,40の傾斜面39a,40aと第1の円管部7の内周面とを面接触させた上で、線状に溶接することにより、該第1の円管部7とリブ39,40とを接合している。なお、図中の符号41は溶接部分を示している。
これにより、第1の円管部7は、これらの4枚のリブ39,40を介して杭本体部35に固定されることとなる。
【0102】
なお、この実施の形態においては、杭本体部35は、該杭本体部35を形成するCT鋼のウェブ37の先端と、これに対向する第1の円管部7の内周面との間の距離が、フランジ38の一端側とこれに対向する第1の円管部7の内周面との間の距離よりも、フランジ38の厚さ分だけ近い。
そのため、ウェブ37に接合されるリブ39は、フランジに接合されるリブ40よりも板幅が小さくなっている。
【0103】
また、この実施の形態における前記第2の円管部8の杭本体部35への取付けは、
図27(a)に示すように、第2の円管部8の内周面と杭本体部35との間の空間に設けられた複数の板状のリブによって行われている。
即ち、杭本体部35の杭頭側の一部が第2の円管部8の下端側の開口から内周面側に挿入された状態において、第2の円管部8の内周面(テーパ部10の内周面側のテーパ面9aと杭本体部2との間の空間に、これら第2の円管部8の内周面と杭本体部2とを相互に連結する4枚のリブ42,43が配設されている。
これらのリブ42,43は、基本的に前記第6の実施の形態における第2の円管部の取付けの際に用いるリブ20,21とほぼ同じ構成の、下端に行くに従って先細る直角台形状に形成されている。
【0104】
前記リブ42,43は、杭本体部35の杭頭側における、CT鋼36,36のウェブ37やフランジ38の部分に1枚ずつあてがわれている。
そして、それらのウェブ37やフランジ38の部分の板面とこのリブ42,43の平坦面42b,43b方向の端部側の板面とを面接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、杭本体部35に接合されている。さらに、リブ42,43の傾斜面42a,43aと第2の円管部8のテーパ面部10の内周面とを面接触させた上で、その当接部分を線状に溶接することにより、第2の円管部8とリブ42,43とを相互に接合している。なお、図中の符号44は溶接部分を示している。
これにより、第2の円管部8は、これらの4枚のリブ42,43を介して杭本体部35に固定されることとなる。
なお、この実施の形態においては、第1の円管部7の場合と同様に、ウェブ37に接合されるリブ42は、フランジ38に接合されるリブ43よりも板幅が小さくなっている。
【0105】
前記構成を有する形鋼杭1Hは、前記第1〜第7の実施の形態と同様の工法により地盤に打ち込むことができ、また、基本的に前記第3の実施の形態と同様の効果を有する。
さらに、この実施の形態の形鋼杭1Hの場合も、第6及び第7の実施の形態の山形鋼16及び溝形鋼26やの場合と同様に、杭本体部35を形成するCT鋼36が、コンパクト且つ大量に輸送することが可能であるため、大量輸送が容易であるという利点がある。したがって、現地で順次組立てることにより完成品としての形鋼を大量に確保した状態で施工を行うことができるため、効率よく施工を行うことが可能となる。
【0106】
前記第8の実施の形態の形鋼杭1Hにおいては、第1の実施の形態のように、第1の円管部及び第2の円管部の両方を単純な円筒状の構成としたり、第2の実施の形態のように第1の円管部のみにテーパ面を形成し、第2の円管部は単純な円筒状とした構成としたりしてもよい点は、前記第6及び第7の実施の形態と同様である。
さらには、第4及び第5の実施の形態のように、第1の円管部のみを設けて、第2の円管部を設けない構成としてもよい点や、この場合に形鋼杭を埋設した後に第2の円管部を事後的に杭本体部に取付けてもよい点についても、第6及び第7の実施の形態と同様である。
【0107】
また、前記第8の実施の形態においては、第1の円管部7や第2の円管部8の杭本体部35への取付けは、杭本体部35を形成するCT鋼36のウェブ37やフランジ38の部分にそれぞれリブ39,40・42,43を設けることによりそれぞれ行っていた。
しかしながら、第1の円管部7や第2の円管部8の杭本体部35への取付けは、任意の手段を用いることができ、例えば、ウェブの部分に比べて第1の円管部や第2の円管部の内周面との距離が長いフランジの部分にのみリブを設けて、ウェブの部分は、第1の円管部や第2の円管部の内周面との当接部分において直接溶接するようにしてもよい。あるいは、リブ一切を用いることなく、杭本体部と第1の円管部や第2の円管部の内周面との当接部分を直接溶接して取付けてもよい。
また、前記各リブと杭本体部との接合は、必ずしも溶接である必要はなく、ボルトとナットによる接合等、任意の手段を用いることができる。
【0108】
なお、前記第1〜第8の実施の形態の形鋼杭を含めた本発明に係る形鋼杭においては、地盤への打設後、第1の円管部の内周面側にセメントミルク等の流動性固化剤を充填してもよく、これにより、より高い先端支持力を確保することができる。
さらに、第2の円管部には、その外周面に矢板爪を設けてもよく、これにより、施工後あるいは供用時においてこの矢板爪に矢板を連結して、本発明に係る形鋼杭を堅固な壁構造に供させることができる。
【0109】
また、本発明の形鋼杭においては、
図28に示すように、第1の円管部や第2の円管部の外周部には、形鋼杭の軸線方向に延びる断面略C字形に形成された連結用継手50を設けてもよい。これにより、この連家用継手50内に矢板の端部を挿入させて頑丈な壁構造に供させたり、あるいは隣接する各種形鋼杭の連結用継手と係合させて相互に連結させたりすることができ、各種構造物の構築に際して矢板や他の形鋼杭と安定的且つ確実、しかも容易に連結を行うこと可能となる。
なお、
図28に示すものは、前記第1の実施の形態に係る形鋼杭1Aに連結用継手50を設けた例をしており、該連結用継手50以外の符号については第1の実施の形態と同じものを付している。しかしながら、前記第2〜第8の実施の形態に係る形鋼杭1B〜1Hについても、この連結用継手を設けてもよいことはもちろんである。