特許第5842762号(P5842762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5842762焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5842762
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20151217BHJP
   F27B 21/14 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   C22B1/20 U
   C22B1/20 C
   F27B21/14 A
   F27B21/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-174994(P2012-174994)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-34686(P2014-34686A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 貴司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 功
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−177787(JP,A)
【文献】 特開2010−007904(JP,A)
【文献】 特開平07−126763(JP,A)
【文献】 特開平01−188636(JP,A)
【文献】 特開昭61−133327(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
F27B 21/00
F27B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料装入部、複数のパレット及び排鉱部を有するドワイトロイド式焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法であって、
前記焼結機は、
ドワイトロイド式焼結機を構成する複数のパレットのそれぞれに設けられ、それぞれのパレットの識別情報を担持した複数のRFIDタグと、
前記複数のパレットの走行路を形成する筐体に設けられ、周回する各パレットに設けられた前記RFIDタグとの間で電波を送受信可能な位置に設けられたアンテナと、
前記アンテナに接続され、各RFIDタグから送信された識別情報を受信するリーダ/ライタと、
前記リーダ/ライタで受信された識別情報に基づいて、前記識別情報に係るパレットの位置を認識するパレット位置認識手段と、
前記排鉱部に設置され、排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を監視する排鉱部監視手段と
前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を調節する原料装入手段とを備え、
前記パレット位置認識手段により、前記排鉱部及び前記原料装入部においてパレットを認識する工程と、
前記排鉱部監視手段により、前記排鉱部において認識したパレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を測定する工程と、
前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記排鉱部において認識したパレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を測定した同じパレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程とを実施することを特徴とする焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程が、パレットの幅方向の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更することを特徴とする請求項1に記載の焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程が、前記焼結鉱の破断面の温度分布が750℃を超える割合が10%以下となるように変更することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程が、前記焼結鉱の破断面の温度分布がパレットの幅方向で平準化するように変更することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の高炉は、コークス及び石炭を燃焼し、発生したCOガスにより鉄鉱石を還元して銑鉄を製造する。鉄鉱石としては、主に、粉鉄鉱石を焼成した焼結鉱が用いられる。
焼結鉱の製造方法としては、一般に、下方吸引型焼結機を用いた焼成方法が用いられ、次のようにして行われる。
【0003】
焼結原料は、主原料である鉄鉱石と、製鉄プロセスで発生する製鉄ダストなどの鉄含有原料と、焼結反応に必要となる石灰石および蛇紋岩などの副原料と、熱源としての粉コークス等の固体燃料とを配合して形成される。
【0004】
焼結原料は、下方吸引型焼結機に装入する前に、ドラム型ミキサーなどの混合・造粒機を用いて、水添加しながら混合、造粒され、主として、粒径1mm以上の核粒子と、その周囲に付着した粒径0.5mm以下の付着粉とからなる擬似粒子となる。
【0005】
擬似粒子化された焼結原料は、焼結パレット内に装入され、原料充填層を形成した後、点火炉4で、その表面のコークス粉に点火されるとともに、焼結機下部に空気吸引することにより、コークス粉の燃焼点を下方に移動させる。
【0006】
燃焼熱により、原料充填層の上層から下層にかけての焼結反応は順次進行し、焼結パレットが移動し排鉱部に到達するまでに焼結は完了する。
焼結パレット内の焼結ケーキ(塊)は、排鉱部から排出された後、破砕され、所定粒度の高炉用の焼結鉱が製造される。
【0007】
ここで、下方吸引型焼結機においては、パレット毎の漏風の相違、又は、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析によりパレット毎の、又は、パレット幅方向の吸引風量が変動することがある。吸引風量が少ない場合、焼成反応が未完了のまま、焼結鉱は焼結機からは排鉱されてしまい、焼結鉱の品質にバラツキが発生し、品質低下や焼結鉱歩留まりが低下する。
【0008】
焼結鉱の焼成状況を把握するために、焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルを測定して、この熱レベルに基づいて焼結鉱を製造する方法が提案されている。
【0009】
焼結機排鉱部で焼結鉱が破断落下するときに発生する振動を検知し、この信号を熱画像用カメラに取り込み、該カメラにて破断面を撮影する。撮影信号を画像処理装置にとり込み、破断面の熱レベルを把握して、この結果に基づいて装入原料の装入層高や風箱群の吸引量等を制御することを特徴とする、焼結機排鉱部の熱レベル測定および制御方法の提案がある(特許文献1)。
【0010】
又、焼結機の排鉱部において、連続的に焼成され移動してくる焼結ベッドの断面の温度分布を撮影し、その映像を画像解析することにより焼結ベッドの高さ方向別の焼成状態を推定する。その推定結果に基づき、焼結機の給鉱部において、パレット内で原料が堆積している部分への炭材吹き込み量を原料の堆積高さ方向別に調整して焼結ベッドの焼成状態を制御することを特徴とする焼結鉱の製造方法の提案がある(特許文献2)。
【0011】
撮像画像データから、撮像画像全体に対する温度が360℃以上1000℃以下の面積比率SH(T)(%)、および、パレットの幅方向及び高さ方向の温度の標準偏差値の総和ΣσXY(T)を算出する。該面積比率SH(T)(%)が予め定めた基準値A以上となり、標準偏差値の総和ΣσXY(T)が基準値B以下となるように、焼結操業条件のうち、少なくともパレットの移動速度を調整する焼結鉱の製造方法の提案がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−126763号公報
【特許文献2】特開平10−310828号公報
【特許文献3】特開2009−280837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
下方吸引型焼結機においては、パレット底面に装備されたグレートバーの破損、パレットシールバーの磨耗等により、焼結の焼成に寄与しない無駄な空気(漏風)がある。
漏風が多いパレットでは、焼結充填層の粉コークスを燃焼させる空気量が不足し、焼成不十分のまま排鉱部に到達し、焼結が完了してしまうため、当該パレットの焼結鉱の品質低下や歩留低下となる。
又、パレット幅方向では、側壁に沿って風量が流れやすいため、中心部と比較し、側壁部の焼結速度が速くなる。さらに、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析により、パレットの中心部と端部では、焼結鉱の焼成進行が相違し、焼結鉱の品質低下や歩留低下となる。パレット毎の漏風の相違、又は、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析による焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルのパレット毎の変動を抑制する技術が望まれる。
【0014】
特許文献1乃至特許文献3に記載の発明は、焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルを測定して、焼結反応の進行を把握する点では効果を発揮するものと考えられる。しかし、パレット毎の漏風の相違、又は、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析による焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルの変動に対して、パレット毎に対処することができないという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、パレット毎の漏風の相違、又は、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析による焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルの変動に対して、パレット毎の変動を抑制する焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルの変動を抑制する焼成鉱の製造方法を鋭意検討した。
【0017】
その結果、パレット位置認識手段により、排鉱部で排鉱されつつあるパレットを認識し、排鉱部で排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を測定し、測定した破断面の温度分布に応じて、当該パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更することにより、焼結鉱の熱レベルの変動を抑制することができることの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、その発明の要旨は、以下のとおりである。
【0018】
(1)原料装入部、複数のパレット及び排鉱部を有するドワイトロイド式焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法であって、
前記焼結機は、
ドワイトロイド式焼結機を構成する複数のパレットのそれぞれに設けられ、それぞれのパレットの識別情報を担持した複数のRFIDタグと、
前記複数のパレットの走行路を形成する筐体に設けられ、周回する各パレットに設けられた前記RFIDタグとの間で電波を送受信可能な位置に設けられたアンテナと、
前記アンテナに接続され、各RFIDタグから送信された識別情報を受信するリーダ/ライタと、
前記リーダ/ライタで受信された識別情報に基づいて、前記識別情報に係るパレットの位置を認識するパレット位置認識手段と、
前記排鉱部に設置され、排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を監視する排鉱部監視手段と
前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を調節する原料装入手段とを備え、
前記パレット位置認識手段により、前記排鉱部及び前記原料装入部においてパレットを認識する工程と、
前記排鉱部監視手段により、前記排鉱部において認識したパレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を測定する工程と、
前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記排鉱部において認識したパレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を測定した同じパレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程とを実施することを特徴とする焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
【0019】
(2)前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程が、前記パレットの幅方向の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更することを特徴とする(1)に記載の焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
(3)前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程が、前記焼結鉱の破断面の温度分布が750℃を超える割合が10%以下となるように変更することを特徴とする(1)又は(2)に記載の焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
(4)前記原料装入手段により、前記パレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布に対応して、前記パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する工程が、前記焼結鉱の破断面の温度分布がパレットの幅方向で平準化するように変更することを特徴とする(1)乃至(3)に記載の焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
パレット毎の漏風の相違、又は、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析による焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルの変動に対して、パレット毎の変動を抑制する焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のパレット位置認識装置及び排鉱部監視装置を設けた焼結機を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図2図1のA−A線から見た断面図である。
図3】本発明のパレット位置認識装置の構成概略を示す図である。
図4】カメラによる撮影を説明する図である。
図5】カメラ撮影画像処理を示す図である。
図6】原料装入装置の概略を示す図である。
図7】排鉱部の焼結鉱の破断面のパレット幅方向の温度分布と、原料装入装置のゲートのパレット幅方向の分割の対応を説明する図である。
図8】本発明の実施形態のフローを示す図である。
図9】本発明のシステム構成の概略を示す図である。
図10】排鉱時の焼結鉱破断面のパレット幅中央部の温度推移を示す図である。
図11】排鉱時の焼結鉱破断面のパレット幅端部の温度推移を示す図である。
図12】原料装入条件変更と排鉱時の焼結鉱破断面のパレット端部の温度推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(パレットの位置認識について)
本発明は、排鉱部におけるパレットから排鉱される焼結鉱の破断面の温度分布を測定し、測定した破断面の温度分布に応じて、当該パレットに装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更することにより、焼結鉱の熱レベルの変動を抑制することを課題としている。排鉱部で排鉱される焼結鉱が焼成不良の場合に、そのパレットへ装入する原料の原料充填密度、又は、原料装入層高を変更することを特徴とする。したがって、排鉱部で排鉱するパレットが、どのパレットであるかの認定が必要である。そこで、まず、本発明のパレット位置認識装置の概略について説明する。尚、その詳細は、本出願人による前記特許文献1に記載している。
【0023】
図1図2に、本発明のパレット位置認識装置を設けた焼結機を示す。図1で、パレット1に、原料30が充填されており、RFIDタグ11は、パレット1の側面部に装着される。アンテナ12(RFIDタグの信号読み取り装置)は、RFIDタグ11に正対する向きに焼結機5の筐体に固定して設置する。
アンテナ12から発信する送信波に対し、応答信号としてRFIDタグ11から返ってくる送信波をアンテナ12が受信する。そしてアンテナ12からリーダ/ライタ13へ受信信号が入力される。次に受信信号は、リーダ/ライタ13からパレット位置認識信号処理部14に送られ、識別信号に含まれる情報から、RFIDタグ番号すなわちパレット番号を認識する。以上より、アンテナ12の前を通過するRFIDタグ11が取り付けられたパレット番号が認識できる。図3のパレット位置認識信号処理部14において、あらかじめ記憶したパレット1の配置順およびパレット番号の配列順により、焼結機上の各パレットの位置が認識できる。
【0024】
また、パレット1の位置確認は、パレットの速度検出器により、以下の方法で確認することもできる。あらかじめ記憶したパレット1の配置順およびパレット番号の配列順と一連のパレット1の操業の初期状態である初期位置とを基に、速度検出器15によるパレット速度に基づいて、各パレット1の焼結機5の長手方向における位置を認識する。例えば、一連のパレット1が100台のパレットで構成され、それぞれのパレット1に順に1番から100番までの番号付けをしておく。そして、操業の初期状態として、ある時刻T0に1番パレットの前端が焼結機5の入り側の基準位置にあるとする。以上の一連のパレット1の配置状態の情報を基にして、ある時刻TMにおいてパレット1に装着しているRFIDタグ11による位置認識を実施するのに際して、速度検出器15による速度検出値VMと時間(TM−T0)とから、当該パレットの焼結機5内での進行距離LM(LM=VM×(TM−T0))が算出でき、進行距離LMと1番パレットと当該パレットとの距離とから、上記基準位置に対する当該パレット1の位置を導出することができる。
RFIDタグ11による位置認識とパレット1の速度検出による位置認識に一定の差異が生じた場合は、それぞれのパレット番号を照合する。アンテナ12が、RFIDタグ11のパレット番号を読み飛ばした場合等のトラブルを補完し、誤認識を防止する。
【0025】
図3は、本発明のパレット位置認識装置の構成概略を示す。リーダ/ライタ13からの信号は、RFID入力部19に入力され、パレット位置演算部23で処理され、パレット位置情報は、出力部25から次の工程である原料装入サブゲート制御部51に送信される。一方、速度検出器15で検出された信号は、速度信号入力部20に入力され、認識防止部22で、RFIDタグによる位置情報との照合を行い、位置の誤認識を防止する。尚、上記のリーダ/ライタ13、RFID入力部19、および、信号処理部14に含まれる各部が備える測定のための機能は、測定制御部24による制御に基づいて実行される。
【0026】
(排鉱部焼結鉱の破断面の温度測定)
本発明では、排鉱部で焼結鉱が破断する際に、破断面の赤熱部をCCDカメラ等で測定する。図1に排鉱部監視装置6を示す。光度計7、CCDカメラ8、フィルタ切り替えユニット9、フィルタ10から成る。
排鉱部で焼結鉱が破断する際に、破断面の赤熱部をCCDカメラ8等で測定するのに問題となるのは、まず、測定のタイミングである。焼結機排鉱部で破断落下した焼結鉱の落下振動を検出して、測定のタイミングとする発明がある(特許文献1)。しかし、外乱の影響が大きく、焼結鉱破断面の赤熱部の正確な測定は困難である。
本発明者は、光度計により光の光度を連続して測定しておき、測定値が急激に上昇したポイントをシャッタータイミングとした。そして、エラーを避けるため、2回連続して光量が得られた時に初めてトリッガーを入れることにした。
【0027】
次に、焼結鉱の排鉱部は、焼結鉱の排鉱落下により粉塵が著しく、粉塵の影響により、明るさが変化する。これに対しては2色温度計の原理より、2枚のフィルタ10を用いることで解決した。2枚のフィルタ10を通した明るさの比は、粉塵量の影響を受けないから、粉塵が無いところで「輝度比―温度」の校正表を作っておけば粉塵がある場所での温度分布も粉塵が無い場合に換算することができる。カメラにより撮像された画像データは、構成するすべてのピクセル信号強度について低温領域測定フィルタ(L1,L2)及び高温領域測定フィルタ(L3,L4)を通過したそれぞれの各信号強度の比を求め、温度分布画像を作成することができる。
【0028】
カメラの撮影素子としては、CCD(Charge Coupled Device)に限らずCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)でも良い。
図4(A)に、排鉱部においてCCDカメラ8が、焼結の破断面を撮影する状況を模式的に示した。図4(B)で、Mは、焼結鉱断面であり、M1は、Mの上方で焼成が完了した焼結鉱であり、M2は、Mの下方で、まだ焼成中の赤熱帯であり、未焼結鉱の部分である。
【0029】
図5に、排鉱部焼結鉱の破断面の温度をCCDカメラ8により測定した例を示す。カメラ画像は、パレット1の幅方向に分割して解析する。この例では、パレット幅方向に13分割し、赤熱帯の高温領域は750℃〜1200℃と1200℃以上の2分割とした。
750℃以上の高温部分は、パレット1の中央部分が多く、パレット1の端近傍は少なくなっている。これは、端部分は、側壁効果により風量が流れやすく、焼結速度が速くなり焼結完了が早まったものと考えられる。
【0030】
(原料装入サブゲート制御)
図6に原料装入装置の概略を示す。焼結原料は、原料装入装置により定量に切り出され、パレット1の上に装入される。原料装入ホッパー61からドラムフィーダー62により切り出された原料は、原料装入サブゲート63、原料装入シュート64を経てパレット1の上に堆積する。原料装入サブゲート63は、パレット幅方向に分割されており、幅方向の装入量の調整を行う。押さえ込み板65は、パレットの底にあるグレート表面から一定の距離にセットされており、パレット1の上に堆積した原料を所定の層厚に押さえ込む。原料の堆積量が多い場合は、原料の押さえ込みにより原料充填密度が大きくなる。
【0031】
前記図5において、パレット1の幅方向の中央部分で、750℃以上の高温部分の面積比率が多くなっている。このことは、中央部分の焼結鉱が未だ焼成中で、焼成不十分のまま排鉱されていることを意味する。この場合、このパレット1が原料装入装置の位置に周回されてきたときに、原料装入装置の原料装入サブゲート63のうち、パレット1の中央部分のサブゲートの開度を狭め、原料装入量を少なくすれば、中央部分の原料装入密度が低下し、当該パレットの中央部分の焼成が十分に行われると考えられる。
但し、排鉱部で破断面の温度分布を測定したパレット1と、原料装入サブゲート63の開度を調整したパレット1の同定が必要である。本発明では、RFIDタグ情報により排鉱部位置と原料装入位置のパレット1を認識することにより、排鉱部で破断面の温度分布に応じたパレット1の幅方向の装入密度又は装入層厚をコントロールすることができる。
【0032】
図7に、排鉱部の焼結鉱の破断面のパレット1の幅方向の温度分布と、原料装入装置のゲートのパレット1の幅方向の分割の対応を示している。
#5サブゲートの開度を調整することにより、パレット1の幅中央部(#6,7)の温度分布をコントロールすることができる。
【0033】
(本発明のフロー)
本願発明は、パレット位置認識手段により、排鉱部と原料装入部におけるパレット1を認定し、当該パレットの排鉱時の焼結鉱の破断面の温度測定により、当該パレットの焼成特性を把握し、当該パレットへの原料充填密度、又は、原料装入層高を変更することを特徴としている。
図8に本発明の実施形態のフローを示す。各パレットに取り付けたRFID11のタグは、タグ情報を送信し(S1)、アンテナ12が受信し(S2)、受信信号は、リーダ/ライタ13から信号送信され(S3)、パレット位置認識データが作成される(S5)。又、速度検出情報が送信され(S4)、パレット位置認識情報の作成の誤認識を防止する(S5)。
カメラによる画像データ情報が取得され(S6)、光学フィルタを透過した互いに異なる波長信号の強度比をピクセル毎に算出し(S7)、ピクセル毎に温度を算出し(S8)、温度分布画像を作成する(S9)。排鉱部で認定し、温度分布画像が作製されたパレット1が、焼結機を周回し、原料装入装置に到達したときに、原料装入サブゲート制御演算をし(S10)、原料装入サブゲート開度処理により(S11)、当該パレットへの原料充填密度、又は、原料装入層高を変更する。
【0034】
本発明の構成を図9に示す。RFIDタグ11によるパレットの位置認識は、前記図3と同様である。パレットの速度検出による位置認識は、アンテナ12が、RFIDタグ11のパレット番号を読み飛ばした場合等のトラブルを補完し、誤認識を防止する。
排鉱部焼結鉱の破断面の温度測定は、光度計7の光度信号の急激な上昇を撮像制御部44が受け、撮影開始信号をカメラ8及びフィルタ切り替えユニット9に送り、撮影を開始する。フィルタ10は、フィルタ切り替えユニット9により1秒間に1回転し、30分間に30枚〜50枚の画像が撮影される。画像データ情報は、画像データ処理部41の画像データ入力部42に入力され、温度分布画像演算部43で、ピクセル温度を算出し、温度分布画像を作成する。作成された温度分布画像は、温度分布画像データ出力部45から、原料装入サブゲート制御部51に送られる。
原料装入サブゲート制御部51においては、パレット位置信号及び画像データの入力部52に入力されたデータは、原料装入サブゲート制御演算部53でゲート調整量を演算された後、原料装入サブゲート処理部54からの信号により、各サブゲートの開閉処理が行われる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
(実施例1)
焼成面積700mの大型焼結機に、パレット位置認識装置及び排鉱部監視装置を設置した。全194のパレットの全ての側面部にRFIDタグ11を取り付け、ウィンドボックス35個のうち給鉱部から14番目のウィンドボックスの位置にRFIDタグの信号読み取り装置(アンテナ12)を取り付けた。排鉱部にCCDカメラ8とフィルタ10及びフィルタ切り替えユニット9を設置した。
【0036】
図10に、排鉱時の焼結鉱破断面のパレット幅中央部の温度変化を示す。30分間に撮影する30枚〜50枚の映像のうち高温領域(>750℃)の比率が10%以上である撮影枚数の比率を示した。図7に示す如く、パレット幅方向の中央部に占めるのは、#6、#7セクションであるが、図10で、4時から5時にかけて当該セクションの高温領域が多くなっている。この場合、パレット幅中央部の通気が不良となり、原料はまだ焼成中であり、未焼成のまま排鉱されたと考えられる。原料装入のパレット幅中央部に相当する#5サブゲートの開度を狭め、原料装入密度を低減することにより5時以降は、未焼成のままの排鉱が減少した。
【0037】
(実施例2)
図11は、排鉱時の焼結鉱破断面のパレット幅端部の温度推移を示す図である。パレット幅端部である#11〜#12セクションの高温領域(>750℃)の比率が少ない。側壁効果により側壁近傍に風量が抜けたものと考えられる。この場合、原料装入のパレット幅端部に対応する#8〜#9サブゲートの開度を広げ、端部の原料装入密度を増加することにより風量の抜けを防止することができた。一方、パレット中心部である#6〜#7セクションの高温領域(>750℃)の比率が高いので、原料装入のパレット中心部に対応する#5サブゲートの開度を狭め、中心部の原料装入密度を減少することにより中心部の焼成促進を図った。その結果、パレットの幅方向の焼結鉱の破断面の温度分布を平準化することができた。この場合のパレット幅方向の中央部と周辺部の風量及び原料装入密度を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例3)
原料装入装置で位置を認識し、排鉱部で認識した同一パレットのトレーステストを行った。図12は、原料装入条件変更と排鉱時の焼結鉱破断面のパレット端部の温度推移を示す図である。焼成面積700mの大型焼結機の全194のパレットの中の#1パレットに装入する原料充填密度を幅方向平均1.8kg/tとした。当該パレットが30分後に排鉱する焼結鉱のパレット幅端部である#11〜#12セクション赤熱帯高温領域(>750℃)の比率は、2%であった。#1〜#50パレットは同じ原料充填密度で操業し、#11〜#12セクション赤熱帯高温領域(>750℃)の比率は、1.5%〜5.0%であった。#51〜#190パレットに装入するパレット幅端部である#11〜#12セクションに装入する原料充填密度を2.15kg/tに増加したところ、当該#51パレットが30分後に排鉱する焼結鉱の赤熱帯高温領域(>750℃)の比率は、9%〜11%に増加し、焼成が不十分となった。そこで、#1パレット以降のパレットにパレット幅端部である#11〜#12セクションに装入する原料充填密度を1.95kg/tとした。その結果、#1パレット以降のパレットが30分後に排鉱する焼結鉱の赤熱帯高温領域(>750℃)の比率は、平均して7%になり焼結鉱の焼成が適正となった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
パレット毎の漏風の相違、又は、パレット幅方向の原料の粒度、密度等の偏析による焼結機排鉱部の焼結鉱の熱レベルの変動に対して、パレット毎の変動を抑制する焼結機のパレット位置認識装置を用いた焼結鉱の製造方法を提供することできる。
【符号の説明】
【0041】
1…パレット、2…ウィンドボックス、3…原料装入装置、4…点火炉、5…焼結機、6…排鉱部監視装置、7…光度計、8…CCDカメラ、9…フィルタ切り替えユニット、10…フィルタ、11…RFIDタグ、12…アンテナ、13…リーダ/ライタ、14…パレット位置認識信号処理部、15…速度検出器、19…RFID入力部、20…速度信号入力部、22…誤認識防止部、23…パレット位置演算部、24…測定制御部、25…出力部、30…原料、41…画像データ処理部、42…画像データ入力部、43…温度分布画像演算部、44…撮像制御部、45…光度計、51…原料装入サブゲート制御部、52…画像データ入力部、53…原料装入サブゲート制御演算部、54…原料装入サブゲート処理部、61…原料装入ホッパー、62…ドラムフィーダー、63…原料装入サブゲート、64…原料装入シュート、65…押さえ込み板。
図1
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図5