(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5842790
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】ガスホルダーシール材及びガスホルダーのシール構造
(51)【国際特許分類】
F17B 1/08 20060101AFI20151217BHJP
【FI】
F17B1/08
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-242397(P2012-242397)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-92210(P2014-92210A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2014年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】柴山 聡
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−234095(JP,A)
【文献】
米国特許第4902304(US,A)
【文献】
特開平7−260091(JP,A)
【文献】
特開2005−206164(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0023440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスホルダーを構成するタンクの内周面と、このタンク内を昇降する可動蓋と連動して該可動蓋の外周側でタンク内を昇降する緩衝部材の外縁部との間に介在して筒状に形成されるガスホルダーシール材において、
前記タンクの内周面に固定される側となるタンク側端部と、前記緩衝部材の外縁部に固定される側となる緩衝部材側端部のうちの少なくとも前記タンク側端部に対し、その端部の両面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆され、前記タンク側端部および前記緩衝部材側端部以外の部分に対してはエチレンプロピレンジエンゴムが非被覆の構成にしたことを特徴とするガスホルダーシール材。
【請求項2】
前記緩衝部材側端部の両面がエチレンプロプレンジエンゴムにより被覆されている請求項1に記載のガスホルダーシール材。
【請求項3】
前記エチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されている端部の一方の面と、他方の面とでエチレンプロピレンジエンゴムの被覆長さが異なっている請求項1又は2に記載のガスホルダーシール材。
【請求項4】
前記エチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されている端部の一方の面と、他方の面とでエチレンプロピレンジエンゴムの被覆厚さが異なっている請求項1,2又は3に記載のガスホルダーシール材。
【請求項5】
前記エチレンプロピレンジエンゴムの被覆厚さが1.2mm〜1.4mmである請求項1〜4のいずれかに記載のガスホルダーシール材。
【請求項6】
ガスホルダーを構成するタンクの内周面と、このタンク内を昇降する可動蓋と連動して該可動蓋の外周側でタンク内を昇降する緩衝部材の外縁部との間をシールする筒状に形成されたガスホルダーシール材を有するガスホルダーのシール構造において、
前記タンクの内周面に突設されて前記ガスホルダーシール材のタンク側端部を固定するタンク側固定部材と、前記緩衝部材の外縁部に設けられて前記ガスホルダーシール材の緩衝部材側端部を固定する緩衝部材側固定部材とを備え、前記タンク側端部と前記緩衝部材側端部のうちの少なくとも前記タンク側端部に対し、その端部の両面にエチレンプロピレンジエンゴムが被覆され、前記タンク側端部および前記緩衝部材側端部以外の部分に対してはエチレンプロピレンジエンゴムが非被覆の構成にし、前記ガスホルダーシール材のエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されていない部分の表面が、前記緩衝部材の上下位置に関わらず、前記タンクの内周面及び前記タンク側固定部材に接触しない構成にしたことを特徴とするガスホルダーのシール構造。
【請求項7】
前記緩衝部材側端部の両面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆され、前記ガスホルダーシール材のエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されていない部分の表面が、前記緩衝部材の上下位置に関わらず、前記緩衝部材に接触しない構成にした請求項6に記載のガスホルダーのシール構造。
【請求項8】
ガスホルダーを構成するタンクの内周面と、このタンク内を昇降する可動蓋と連動して該可動蓋の外周側でタンク内を昇降する緩衝部材の外縁部との間をシールする筒状に形成されたガスホルダーシール材を有するガスホルダーのシール構造において、
前記タンクの内周面に突設されてタンクの内周面との間に前記ガスホルダーシール材のタンク側端部を挟んで固定するタンク側固定部材と、前記緩衝部材の外縁部に設けられて前記ガスホルダーシール材の緩衝部材側端部を固定する緩衝部材側固定部材とを備え、前記タンク側端部の前記タンクの内周面に対向する表面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆され、前記タンク側固定部材の前記タンク側端部に対向する表面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されていることを特徴とするガスホルダーのシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスホルダーシール材及びガスホルダーのシール構造に関し、更に詳しくは、寒冷地の低温下での耐屈曲性を向上させつつ、優れた気密性を維持することが出来るガスホルダーシール材及びガスホルダーのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスを回収して貯蔵する装置としてはウィギンス・ガスホルダー等が知られている。このようなガスホルダーは、ガスを貯蔵するためのタンクと、このタンク内を昇降する可動蓋と、可動蓋と連動してタンク内を昇降する緩衝部材と、タンクと緩衝部材との間、及び緩衝部材と可動蓋との間をそれぞれ連結する筒状のシール材とを備えている。このシール材は、クロロプレンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴム等で形成されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
これら筒状のシール材のうちタンクと緩衝部材との間に介在するシール材では、一端部がタンクの内周面に固定され、他端部が緩衝部材の外縁部に固定される。そのため、シール材の一端部(タンク側端部)及び他端部(緩衝部材側端部)の近傍は、常に屈曲状態となると共に、可動蓋及び緩衝部材の上下移動に伴って屈曲状態が変化する。従って、シール材には、貯蔵するガスの漏れを防止する優れた気密性の他に耐屈曲性が要求される。
【0004】
ところで、ガスホルダーが寒冷地に配設される場合、シール材はそのゴムの脆化温度近傍まで冷却される可能性がある。特に、シール材のタンク側端部はタンクの壁面を通じて外気の低温が伝わり易い。シール材がクロロプレンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムで形成されていると耐寒性に劣るので、常温では屈曲部にクラックが発生しなくても、寒冷地の低温下ではクラックが生じ易くなるという問題がある。一方、シール材をクロロプレンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴム以外のゴムで形成すると、メタンガス等に対する耐久性(耐ガス性)に劣るため、シール材としての本質的な機能に支障が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−271994号公報
【特許文献2】特開2003−113366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、寒冷地の低温下での耐屈曲性を向上させつつ、優れた気密性を維持することが出来るガスホルダーシール材及びガスホルダーのシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のガスホルダーシール材は、ガスホルダーを構成するタンクの内周面と、このタンク内を昇降する可動蓋と連動して該可動蓋の外周側でタンク内を昇降する緩衝部材の外縁部との間に介在して筒状に形成されるガスホルダーシール材において、前記タンクの内周面に固定される側となるタンク側端部と、前記緩衝部材の外縁部に固定される側となる緩衝部材側端部のうちの少なくともタンク側端部に対し、その端部の両面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆され、前記タンク側端部および前記緩衝部材側端部以外の部分に対してはエチレンプロピレンジエンゴムが非被覆の構成にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明のガスホルダーのシール構造は、ガスホルダーを構成するタンクの内周面と、このタンク内を昇降する可動蓋と連動して該可動蓋の外周側でタンク内を昇降する緩衝部材の外縁部との間をシールする筒状に形成されたガスホルダーシール材を有するガスホルダーのシール構造において、前記タンクの内周面に突設されて前記ガスホルダーシール材のタンク側端部を固定するタンク側固定部材と、前記緩衝部材の外縁部に設けられて前記ガスホルダーシール材の緩衝部材側端部を固定する緩衝部材側固定部材とを備え、前記タンク側端部及び前記緩衝部材側端部のうちの少なくともタンク側端部に対し、その端部の両面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆され、前記タンク側端部および前記緩衝部材側端部以外の部分に対してはエチレンプロピレンジエンゴムが非被覆の構成にし、前記ガスホルダーシール材のエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されていない部分の表面が、前記緩衝部材の上下位置に関わらず、前記タンクの内周面及び前記タンク側固定部材に接触しない構成にしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の別のガスホルダーシール構造は、ガスホルダーを構成するタンクの内周面と、このタンク内を昇降する可動蓋と連動して該可動蓋の外周側でタンク内を昇降する緩衝部材の外縁部との間をシールする筒状に形成されたガスホルダーシール材を有するガスホルダーのシール構造において、前記タンクの内周面に突設されてタンクの内周面との間に前記ガスホルダーシール材のタンク側端部を挟んで固定するタンク側固定部材と、前記緩衝部材の外縁部に設けられて前記ガスホルダーシール材の緩衝部材側端部を固定する緩衝部材側固定部材とを備え、前記タンク側端部の前記タンクの内周面に対向する表面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆され、前記タンク側固定部材の前記タンク側端部に対向する表面がエチレンプロピレンジエンゴムにより被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガスホルダーシール材(以下、シール材という)は、上述のように、タンク側端部と緩衝部材側端部のうちの少なくともタンク側端部に対し、その端部の両面がエチレンプロピレンジエンゴム(以下、EPDMという)により被覆され、タンク側端部および緩衝部材側端部以外の部分に対してはEPDMが非被覆の構成にしているので、外気の低温が最も伝わり易いタンク側端部では耐寒性に優れたEPDMがタンクの内周面に当接することになる。これによりタンク側端部の低温下での耐屈曲性は向上する。また、EPDMが介在することで、他の部分に外気の低温が伝導し難くなるので、シール材全体としての低温下での耐屈曲性も向上する。従って、これにより、ガスホルダーが寒冷地に配設されても、低温下でシール材にクラックが発生する不具合を防止することが可能になる。また、シール材の端部のみがEPDMにより被覆されるため、シール材の本体部にはタンクに貯蔵されるガスに対する耐久性(耐ガス性)に優れる任意の材料を選択することが出来る。それ故、シール材としての本質的な機能(気密性)を損なうことなく良好に維持することが出来る。
【0011】
緩衝部材側端部の両面をEPDMにより被覆することも出来る。これにより、タンク側端部のように外気の低温を伝え易い緩衝部材側端部において、低温下での屈曲性が向上し、シール材全体としての低温下での耐屈曲性が益々向上する。よって、低温下でのクラック発生を防止するには一段と有利になる。
【0012】
EPDMにより被覆されている端部の一方の面と、他方の面とでEPDMの被覆長さを異ならせることも出来る。これにより、両面がEPDMにより被覆された部分と、EPDMにより被覆されない部分との境界部で曲げ剛性が急激に変化することを避けることが出来る。これにより、過大な応力集中が無くなり、耐屈曲性の向上には有利になる。また、必要な部分(長さ)にだけEPDMを使用するので、EPDMの使用量を最小限にして材料コストを抑えることが出来る。
【0013】
EPDMにより被覆されている端部の一方の面と、他方の面とでEPDMの被覆厚さを異ならせることも出来る。これにより、EPDMの被覆厚さを各面で必要最小限にして、EPDMにより被覆された端部の曲げ剛性が増大することを抑制することが出来る。これにより、耐屈曲性の向上には有利になる。また、EPDMの使用量を最小限にして材料コストを抑えることが出来る。
【0014】
ここで、EPDMの被覆厚さを、例えば、1.2mm〜1.4mmに設定する。これにより、外気の低温がシール材の本体部に伝わることを効果的に抑制しつつ耐屈曲性を向上することが出来る。
【0015】
本発明のガスホルダーのシール構造は、上述のように、タンク側固定部材と緩衝部材側固定部材とを備え、タンク側端部及び緩衝部材側端部のうちの少なくともタンク側端部に対し、その端部の両面がEPDMにより被覆され、タンク側端部および緩衝部材側端部以外の部分に対してはEPDMが非被覆の構成にし、シール材のEPDMにより被覆されていない部分の表面が、緩衝部材の上下位置に関わらず、タンクの内周面及びタンク側固定部材に接触しないので、シール材のEPDMにより被覆されていない部分に外気の低温が伝導され難くなり、シール材全体としての低温下での耐屈曲性を向上することが出来る。また、EPDMがタンクの内周面に当接することになるので、タンク側端部の低温下での耐屈曲性を向上することが出来る。従って、ガスホルダーが寒冷地に配設されても、低温下でシール材にクラックが発生する不具合を防止することが可能になる。
【0016】
緩衝部材側端部の両面がEPDMにより被覆され、シール材のEPDMにより被覆されていない部分の表面が、緩衝部材の上下位置に関わらず、緩衝部材に接触しない構成にすることも出来る。これにより、タンク側端部のように外気の低温を伝え易い緩衝部材側端部において、低温下での耐屈曲性が向上し、シール材全体としての低温下での耐屈曲性が益々向上する。よって、低温下でのクラック発生を防止するには一段と有利になる。
【0017】
本発明の別のガスホルダーのシール構造は、上述のように、タンク側固定部材と緩衝部材側固定部材とを備え、タンク側端部のタンクの内周面に対向する表面がEPDMにより被覆され、タンク側固定部材のタンク側端部に対向する表面がEPDMにより被覆されているので、シール材のEPDMにより被覆されていない部分に外気の低温が伝導され難くなり、シール材全体としての低温下での耐屈曲性を向上することが出来る。また、タンク側端部ではシール材自体がタンクの内周面及びタンク側固定部材に当接しないので、タンク側端部の低温下での耐屈曲性を向上することが出来る。従って、ガスホルダーが寒冷地に配設されても、低温下でシール材にクラックが発生する不具合を防止することが可能になる。更に、タンク側端部においてシール材自体は片面のみがEPDMにより被覆されるので、EPDMにより被覆された部分とEPDMにより被覆されない部分との境界部で曲げ剛性が急激に変化することが回避され、過大な応力集中を防ぎ、耐屈曲性を向上するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のガスホルダーシール材が使用されたガスホルダー(ガスを充填していない状態)の要部を示す断面図である。
【
図2】本発明のガスホルダーシール材が使用されたガスホルダー(ガスを最大容量の約1/3まで充填した状態)の要部を示す断面図である。
【
図3】本発明のガスホルダーシール材が使用されたガスホルダー(ガスを最大容量の約2/3まで充填した状態)の要部を示す断面図である。
【
図4】本発明のガスホルダーシール材が使用されたガスホルダー(ガスを最大容量まで充填した状態)の要部を示す断面図である。
【
図5】
図1のガスホルダーシール材のタンク側端部を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図4のガスホルダーシール材のタンク側端部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図1のガスホルダーシール材の緩衝部材側端部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図4のガスホルダーシール材の緩衝部材側端部を拡大して示す断面図である。
【
図9】本発明のシール構造の別の実施形態のガスホルダーシール材のタンク側端部(ガスを充填していない状態)を拡大して示す断面図である。
【
図10】本発明のシール構造の別の実施形態のガスホルダーシール材のタンク側端部(ガスを充填した状態)を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1〜
図4に例示するように、ガスホルダーは、ガスを貯留するための円筒状のタンク1と、このタンク1内を昇降する平面視で円形の可動蓋2と、可動蓋2と連動して可動蓋2の外周側でタンク1内を昇降する円筒状の緩衝部材3とを備えている。更に、可動蓋2と緩衝部材3との間を連結する円筒状のシール材4と、緩衝部材3とタンク1との間を連結する円筒状のシール材5とを備えている。本発明のシール材は、タンク1の内周面と緩衝部材3の外縁部との間に介在する筒状のシール材5である。
【0021】
可動蓋2の周縁部にはタンク上側に向けて突出する突起2aが設けられている。一方、円筒状の緩衝部材3の上端部にはタンク中心側に向けて突出するフランジ3aが設けられている。可動蓋2の突起2aは、可動蓋2が上昇する際に緩衝部材3のフランジ3aと当接するようになっている。
【0022】
円筒状のシール材4は、軸方向の一端が可動蓋2の周縁部に装着され、その他端が緩衝部材3の下端部に装着されている。本発明のシール材5は、軸方向の一端が緩衝部材3の下端部に装着され、その他端がタンク1の内周面に装着されている。これらシール材4,5は、可動蓋2及び緩衝部材3の挙動に追従するように可撓性を有すると共に、タンク1と可動蓋2とで囲まれるガス貯留空間11を気密的に封止するものである。
【0023】
次に、このガスホルダーの動作について説明する。先ず、タンク1内のガス貯留空間11にガスが全く充填されていない状態では、
図1に示すように、可動蓋2及び緩衝部材3がタンク1の底部に位置している。ガス貯留空間11内にガスが送り込まれると、
図2に示すように、可動蓋2がタンク1内で上昇し、可動蓋2の突起2aが緩衝部材3のフランジ3aに当接する。更にガス貯留空間11内にガスが送り込まれると、
図3に示すように、緩衝部材3が可動蓋2と共にタンク1内で上昇する。そして、
図4に示すように、緩衝部材3がタンク1の上部に当接すると、可動蓋2の上昇が規制され、ガス貯留空間11が最大容量となる。また、ガスを外部に放出する場合は、上記動作とは全く逆の動作となる。そのため、シール材4,5は可動蓋2や緩衝部材3の昇降に伴って屈曲状態が大きく変化する。
【0024】
本発明のシール材5は、シール材5の基部となる本体部6と、この本体部6の端部の両面に設けられた被覆部7a,7b,8a,8bとからなる。本体部6は、繊維素材からなる基布をゴム材料で被覆した構造になっている。基布を被覆するゴム材料としては、貯留されるガスに応じて、貯留されるガスを透過し難く、且つ、貯留されるガスとの接触による劣化を生じ難い性質のものが使用される。例えば、貯留されるガスがメタンガスである場合、クロロプレンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムを用いることが出来る。尚、本体部6の厚さは、例えば3mm程度である。
【0025】
被覆部7a,7b,8a,8bは、いずれもEPDMから構成される。被覆部7a,7bは、タンク1の内周面に固定される側となるタンク側端部7に設けられる。被覆部8a,8bは、緩衝部材3の外縁部に固定される側となる緩衝部材側端部8に設けられる。これら被覆部7a,7b,8a,8bは、例えば、EPDMからなるシートをシール材5の本体部6に対して加硫接着して被覆することが出来る。被覆部7a,7bについては、シール材5をタンク1の内周面に固定する際に、シール材5の本体部6と共にEPDMからなるシートをボルト締めして固定することで被覆することも出来る。尚、EPDMからなるシートは、強度を高めるために布入りにすることも出来る。
【0026】
被覆部7a,7b,8a,8bのうち、シール材5の緩衝部材側端部8に配置される被覆部8a,8bは必ずしも設ける必要はなく、少なくとも外気の低温を最も伝え易いタンク側端部7に被覆部7a,7bを設ける。
【0027】
本発明のシール構造は、上述したシール材5を有するものである。具体的には、
図5〜8に例示するように、タンク1の内周面に突設されるタンク側固定部材9と、緩衝部材3の外縁部に設けられる緩衝部材側固定部材10とを備えている。そして、タンク側端部7と緩衝部材側端部8のうちの少なくともタンク側端部7に対し、その端部の両面にEPDMが被覆され、タンク側端部7および緩衝部材側端部8以外の部分に対してはEPDMが非被覆の構成にし、シール材5のEPDMにより被覆されていない部分の表面が、緩衝部材3の上下位置に関わらず、タンク1の内周面及びタンク側固定部材9に接触しない構成になっている。
【0028】
上述のように、タンク側端部7の両面がEPDMからなる被覆部7a,7bにより被覆されているので、タンク側端部7では耐寒性に優れたEPDMがタンク1の内周面に当接することになり、タンク側固定部材9にはEPDMが当接する。このようにタンク側端部7が、外気の影響を受け易い部材に直接当接しないので、タンク側端部7の低温下での耐屈曲性は向上する。また、EPDMが介在することで、EPDMにより被覆されていない本体部6に外気の低温が伝導し難くなるので、シール材1全体としての低温下での耐屈曲性も向上する。従って、ガスホルダーが寒冷地に配設されても、低温下でシール材5にクラックが発生する不具合を防止することが可能になる。また、シール材5の端部のみがEPDMにより被覆されるため、シール材5の本体部6にはタンク1に貯蔵されるガスに対する耐久性(耐ガス性)に優れる任意の材料を選択することが出来る。それ故、シール材5としての本質的な機能(気密性)を損なうことなく良好に維持することが出来る。
【0029】
尚、タンク側固定部材9としては、例えば
図5,6に示すようにС字形状のクランプを用いる。С字形状のクランプは、タンク1の内周面の全周に亘って断続的に配置される。С字形状のクランプを用いることで、緩衝部材3が上昇した状態においては、シール材5がクランプの湾曲した面に沿うように屈曲するので、シール材5の屈曲部に負荷が掛かり難い。また、シール材5との接触面に角が存在しないのでシール材5を傷つけ難い。
【0030】
図7,8に例示するように、シール材5の緩衝部材側端部8は、緩衝部材側固定部材10により固定される。図示の例では、シール材5の緩衝部材側端部8を挟み込むようになっているが、この構成に限定されない。緩衝部材側端部8では、被覆部8a,8bを設けずに、シール材5の本体部6を直接、緩衝部材側固定部材10によって固定することも出来る。しかしながら、ガス貯留空間11の容積が増大した際に、タンク1内のガス貯留空間11を除いた部分の空気を排出するためにタンク1の上部に換気口12が設けられているので、緩衝部材3も外気の低温を伝え易くなっている。従って、
図7,8に例示するように、緩衝部材側端部8にも被覆部8a,8bを設け、緩衝部材側端部8の両面をEPDMにより被覆すると良い。これにより、緩衝部材3の上下位置に関わらず、シール材5の本体部6が緩衝部材3と緩衝部材側固定部材10とに接触しないようにすることが出来る。従って、タンク側端部7のように外気の低温を伝え易い緩衝部材側端部8においても、低温下での屈曲性が向上し、シール材5全体としての低温下での耐屈曲性が益々向上する。よって、低温下でのクラック発生を防止するには一段と有利になる。
【0031】
EPDMにより被覆されている端部の一方の面と、他方の面とでEPDMの被覆長さを異ならせることも出来る。具体的には、タンク側端部7では、タンク1に対向する面側の被覆部7aとタンク側固定部材9に対向する面側の被覆部7bとでEPDMの被覆長さを異ならせることが出来る。同様に、緩衝部材側端部8では、ガス貯留空間11に対向する面側の被覆部8aとその反対側の面の被覆部8bとでEPDMの被覆長さを異ならせることが出来る。これにより、両面がEPDMにより被覆された部分と、EPDMにより被覆されない部分との境界部に、片面のみがEPDMにより被覆された部分が存在するようになり、EPDMにより被覆された端部と被覆されていない部分との境界部で曲げ剛性が急激に変化することを回避することが出来る。これにより、過大な応力集中が無くなり、耐屈曲性の向上には有利になる。また、必要な部分(長さ)にだけEPDMを使用することが出来るので、EPDMの使用量を最小限にして材料コストを抑えることが出来る。
【0032】
このとき、被覆部7aの被覆長さは、例えば緩衝部材3が下降した状態のときにシール材5の本体部6がタンク1の内周面と接触しない長さにする。被覆部7bの被覆長さは、例えば緩衝部材3が上昇した状態のときにシール材5の本体部6がタンク側固定部材9と接触しない長さにする。また、被覆部8aの被覆長さは、例えば緩衝部材3が上昇した状態のときにシール材5の本体部6が緩衝部材3の外縁部と接触しない長さにする。被覆部8bの被覆長さは、例えば緩衝部材3が下降した状態のときにシール材5の本体部6が緩衝部材3の外縁部と接触しない長さにする。
【0033】
EPDMにより被覆されている端部の一方の面と、他方の面とでEPDMの被覆厚さを異ならせることも出来る。具体的には、タンク側端部7では、タンク1に対向する被覆部7aとタンク側固定部材9に対向する被覆部7bとでEPDMの被覆厚さを異ならせることが出来る。同様に、緩衝部材側端部8では、ガス貯留空間11に対向する被覆部8aとその反対側の被覆部8bとでEPDMの被覆厚さを異ならせることが出来る。これにより、EPDMの被覆厚さを各面で必要最小限にして、EPDMにより被覆された端部の曲げ剛性が増大することを抑制し、耐屈曲性を向上することが出来る。また、EPDMの使用量が必要最小限になるので材料コストを抑えることが出来る。
【0034】
EPDMの被覆厚さは、例えば、1.2mm〜1.4mmに設定する。これにより、外気の低温がシール材5の本体部6に伝わることを効果的に抑制することが出来る。これに伴って、低温下での耐屈曲性を向上することが出来る。
【0035】
シール材5の両面で被覆厚さを異ならせる場合、タンク側端部7では、外気の低温を最も伝え易いタンク1の内周面に当接する被覆部7aの被覆厚さを被覆部7bの被覆厚さよりも大きくして、シール材5が冷却されることを防ぐようにすると良い。緩衝部材側端部8では、緩衝部材3の外気に晒される側に当接する被覆部8bの被覆厚さを被覆部8aの被覆厚さよりも大きくして、シール材5が冷却されることを防ぐようにすると良い。
【0036】
図9,10に例示するシール構造の実施形態では、
図5,6に例示するシール構造の実施形態のシール材5のタンク側端部7のタンク側固定部材9に対向する面に被覆部7bを設ける代わりに、タンク側固定部材9のタンク側端部7に対向する表面にEPDMによる被覆部9aを設けている。尚、特に言及しない構成は、上述の実施形態と共通である。この構造によっても、シール材5のタンク側端部7は外気の影響により低温になり易いタンク1の内周面及びタンク側固定部材9に、緩衝部材3の上下位置に関わらず、直接当接することは無く、EPDMが介在する。よって、シール材5のEPDMにより被覆されていない本体部6に外気の低温が伝導され難くなり、シール材5全体としての低温下での耐屈曲性を向上することが出来る。また、タンク側端部7においてシール材5自体は片面のみが被覆されるので、EPDMにより被覆された部分とEPDMにより被覆されない部分との境界部で曲げ剛性が急激に変化することを避けることが出来る。従って、過大な応力集中を防ぎ、耐屈曲性を向上することが出来る。
【符号の説明】
【0037】
1 タンク
2 可動蓋
3 緩衝部材
4 シール材
5 シール材
6 シール材の本体部
7 タンク側端部
7a,7b 被覆部
8 緩衝部材側端部
8a,8b 被覆部
9 タンク側固定部材
9a 被覆部
10 緩衝部材側固定部材
11 ガス貯留空間
12 換気口