(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
光反応は、光照射により分子(すなわちラジカル反応剤)にエネルギーを吸収させて、分子をエネルギー準位の高い状態(いわゆる励起状態)とし、励起された分子により反応を起こさせる化学反応全般を指す。光反応は光化学反応とも呼ばれる。非特許文献1によれば、光反応には、光による酸化・還元反応、光による置換・付加反応などの種類がある。光反応の適用用途としては、写真工業、コピー技術、光起電力の誘起の他、有機化合物の合成にも利用されることが知られている。また、非意図的な光化学反応としては、光化学スモッグなども、光化学反応に属する。
【0004】
特許文献1や非特許文献2に記載の通り、光化学反応により、シクロヘキサノンオキシムを合成する技術が知られている。また、シクロアルカノンオキシムの反応に有効な波長として、400〜760nmが望ましいことが知られている。このように特定の波長に特化したエネルギー出力特性を持つ発光体として、発光ダイオードやレーザー、有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)などの光源がある。
【0005】
発光ダイオードには、半導体を用いて電気エネルギーを直接光に転換できるという利点がある。発光ダイオードは、熱の発生が少ないこと、エネルギーの効率的な利用、長寿命等の点で、注目されている。近年では、高効率、高出力なLEDが開発されている。その結果、一般的な照明の用途においては、白熱灯、蛍光灯などに代えて、LEDに切り替えることが可能となっている。工業的な用途についても、数年以内に実用化が可能なレベルに到達すると予想される。
【0006】
このような環境下、特許文献1では、以下の点を特徴としたシクロアルカノンオキシムの製造方法が提唱されている。(i)前記光源の波長に対する発光エネルギー分布において、波長400nmよりも波長が短い領域における発光エネルギーが、発光エネルギーの最大値の5%以下であり、かつ、波長760nmよりも波長が長い領域における発光エネルギーが、前記発光エネルギーの最大値の5%以下であることが望ましいこと。(ii)前記発光ダイオードとして、エネルギー変換効率が3%以上のものを使用すること。(iii)光反応液を含む光化学反応器の側面に沿って面状に配列した複数の発光ダイオードを使用して、透過性の光化学反応器を介して光反応液に光を照射すること。
【0007】
さらに、特許文献2の技術においては、以下のような条件で、シクロヘキサノンオキシムが合成される。光源として発光ダイオードが使用される。光源の波長に対する発光エネルギー分布の中で、発光エネルギーの最大値を示す波長が400nm〜760nmの範囲にある。さらに、光源の裏面に冷却ジャケットを設けて、冷却ジャケットに冷媒を連続的に導入して、光源を強制的に間接冷却する。前記光源の波長に対する発光エネルギー分布において、発光エネルギーの最大値を示す波長が、430nm〜650nmの範囲内にある。波長300nm〜830nmの発光エネルギーに対して波長400nm〜760nmの発光エネルギーの積算値が、95%以上である。特許文献2においては、その他、前記冷却ジャケットに導入する冷媒の温度、発光ダイオードの配列方法、前記発光ダイオードと光化学反応器の側面との照射の最短距離に関する記載がなされている。
【0008】
さらに特許文献3の技術においては、発光ダイオードを用いてマイクロリアクターによるシクロアルカノンオキシムの光ニトロソ化をごく微小な空間で実施する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
本発明の実施形態で用いる光源は、発光ダイオードである。発光ダイオードは、エレクトロルミネセンス(EL)効果を利用して発光する半導体素子である。発光ダイオードは、順方向に電圧を加えた際に発光する。発光ダイオードは、LED(Light Emitting Diode)とも呼ばれる。ただし、以下では、光源として発光ダイオードを用いた態様を説明するが、光源としては、上記(1)の条件を満たすものである限り、レーザー、有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)など他の光源を採用することもできる。
【0023】
本発明の実施形態で用いる発光ダイオードにおける波長に対する発光エネルギー分布の好ましい形態を、
図1を用いて説明する。「発光エネルギー分布」とは、たとえば
図1のように、横軸として波長、縦軸として発光エネルギーをとって示したスペクトル分布のことである。
図1は、波長615nm付近に発光エネルギーの最大値を有する、本発明の実施形態に用いられる発光ダイオードの発光エネルギー分布の一例を表すグラフである。
図1において、縦軸の単位はワット(W)であり、横軸の単位はナノメートル(nm)である。
【0024】
本実施形態において「発光エネルギーの最大値」とは、5nmの波長範囲ごとに測定した、波長に対する発光エネルギー分布における、発光エネルギーの最大値のことである。以下、発光エネルギーの最大値を「ピーク強度」と呼ぶことがあり、Emaxで示す。また、発光エネルギーの最大値を示す波長を「ピーク波長」という。「ピーク波長」は、5nmの範囲ごとに測定した発光エネルギー分布において、「ピーク強度」を示す波長範囲の中央値である。
【0025】
本実施形態では、波長に対する発光エネルギー分布において、ピーク波長が550nmから700nmの範囲内にあり、かつ、ピーク波長を含む範囲であってピーク強度Emaxの5%強度以上のエネルギーを出力する連続した波長の範囲の幅が150nm以下である光(
図1参照)を射出する発光ダイオードを用いる。なお、ピーク波長は、600nmから650nmの範囲内であることがより好ましく、610nmから620nmの範囲内であることがより好ましい。また、発光エネルギー分布において、ピーク波長を含む範囲であってピーク強度Emaxの5%強度以上のエネルギーを出力する連続した波長の範囲の幅は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
【0026】
なお、「ピーク強度Emaxの5%強度以上のエネルギーを出力する連続した波長の範囲の幅」とは、5nmの波長範囲ごとに測定した波長に対する発光エネルギー分布において、エネルギーがピーク強度Emaxの5%強度以上である連続した1以上の波長範囲における、両端の波長範囲の中央値の間隔である。ただし、5nmの波長範囲ごとに測定した波長に対する発光エネルギー分布において、「ピーク波長を含む範囲であってピーク強度Emaxの5%強度以上のエネルギーを出力する連続した波長の範囲」の数が一つである場合には、「ピーク強度Emaxの5%強度以上のエネルギーを出力する連続した波長の範囲の幅」は5nmであるものとする。
【0027】
上記のような発光エネルギー分布が好ましい理由は、理論的には、以下のとおりである。すなわち、ニトロソ化剤、具体的には塩化ニトロシルを、ラジカル解離させるのに必要な光子エネルギーは、760nm以下の波長を有する光によって得られる。発光エネルギー分布において、(i)Emaxを示すピーク波長を含む範囲であって、Emaxの5%以上の強度のエネルギーを出力する波長の範囲(幅)が50〜100nm以下で、かつ(ii)ピーク波長が700nm以下であれば、ほぼ全ての光子波長が760nm以下となる。その結果、ほぼ全てのエネルギーをラジカル解離に有効な波長範囲とすることができる。なお、照射される光の波長が小さくなりすぎると、副反応が生じやすくなる。このため、本実施形態においては、発光エネルギーの最大値を示すピーク波長が550nm以上である発光ダイオードを採用する。
【0028】
本実施形態において、発光エネルギー分布および光変換効率ηは、後述する方法により測定することができる。複数の発光ダイオードを使用する場合の発光エネルギー分布は、使用される各発光ダイオードの発光エネルギー分布を測定した後、使用されるすべての発光ダイオードの発光エネルギー分布を足し合わせて得られる。そのようにして得た発光エネルギー分布における発光エネルギーの最大値(Emax)を示す波長が、550nmから700nmの範囲内にあればよい。用いられる複数の発光ダイオードが単一ロットの発光ダイオードであり、質が均質であることが明らかな場合には、簡便法として、任意の発光ダイオードの発光エネルギー分布を測定して、分布形状が上記の条件を満たすか否かを判断することも可能である。また、複数種類の発光ダイオードを使用する場合には、簡便法として、質の等しいグループごとにサンプルの発光ダイオードの発光エネルギー分布を測定し、各グループの発光ダイオードの数に応じた重み付けをして、測定された各発光エネルギー分布を足し合わせて、全体の発光エネルギー分布を求めることも可能である。
【0029】
ここで、発光エネルギー分布における波長領域は、紫外線、可視光線、近赤外線の領域である。本実施形態においては、少なくとも一般的な発光スペクトル測定器にて検出可能な300〜830nmの領域におけるエネルギースペクトルに基づいて、上記条件が満たされるか否かを確認しても差し支えない。通常製造されている可視光発生用の発光ダイオードでは、300nm〜830nmの間に99%以上の発光エネルギーを出力するものが一般的であるためである。
【0030】
発光ダイオードの照射特性は駆動電流値や温度の影響を受ける。このため、発光エネルギー分布の測定は、光化学反応で光照射させる時と同様の駆動電流および温度条件で行うものとする。すなわち、発光エネルギー分布を測定する際には、発光エネルギー分布を測定する発光ダイオードにかける駆動電流は、光化学反応で光を照射させる時にかける発光ダイオード1個あたりの平均駆動電流値と同様の駆動電流値とする。光化学反応に使用する際の電流量は、使用される発光ダイオードの定格電流値の0.1%〜100%であることが望ましい。また、発光ダイオードの裏面側の表面温度が、光化学反応の際に発光ダイオードで光を照射するときの発光ダイオードの平均温度と同様となる温度条件で、測定は行われる。なお、発光ダイオードの裏面に放熱板、放熱基板、ヒートシンク等が設けられている場合は、それらの表面温度が、光化学反応の際の平均温度と同様となる温度条件で、測定は行われる。また、発光ダイオードが基板等にマウントされている場合は、その基板等の表面温度が、光化学反応の際の平均温度と同様となる温度条件で、測定は行われる。
【0031】
発光ダイオードの裏面に設ける放熱板、放熱基板、ヒートシンク等としては、熱伝導性の良いアルミニウムや銅製のものなどが挙げられる。測定の際、光化学反応の際と同様の温度となるよう、放熱板、放熱基板、ヒートシンク等を発光ダイオードに設けて、放熱を行ってもよいし、場合により発光ダイオードを冷却してもよい。発光ダイオードは、駆動時に発熱により温度が上昇する。このため、温度上昇が1℃以内になるようにして、測定時間は10〜300msの範囲内とする。光化学反応で光照射させる時の温度は、発光ダイオードの放熱板、放熱基板、ヒートシンク等の表面温度の平均温度を用いる。
【0032】
発光エネルギー分布は、波長5nmごとの集計出力による分布とする。さらに精度よく測定する必要がある場合には、発光エネルギー分布は、波長0.5〜1nmごとの集計出力による分布とすることが好ましい。ピーク波長、Emaxの5%以上の強度のエネルギーを出力する波長の範囲(幅)などの波長の評価は、集計出力の波長帯の中心値を用いて行う。光化学反応を行う前に測定を行う場合には、光化学反応を行う予定の温度、駆動電流値を用いて測定を行うものとする。本実施形態においては、反応が液中で行われるのに支障のない範囲で−20℃〜50℃の範囲で温度設定することが望ましい。なお、発光ダイオード自体は液と接触しない。このため、設定される温度範囲は、発光ダイオードからの光が照射される面の液体が固化しない範囲であれば良い。設定される温度範囲は、−10℃〜40℃であることがより望ましい。このような温度範囲であれば、シクロアルカノンオキシムの製造に使用されるシクロアルカンの一例としてのシクロヘキサンは、蒸発しない。但し、より低温の方が発光ダイオードの特性からエネルギー変換効率が高い。
【0033】
本実施形態で用いる発光ダイオードは、エネルギー変換効率η、すなわち発光ダイオード1個あたりの投入電力に対する400〜760nmの波長領域の発光エネルギー積算値(有効エネルギー)が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに望ましい。エネルギー変換効率ηの上限については特に制限はないが、外部量子効率(投入電子数に対して外部に取り出される光量子数の比率)の理論上の上限により、上記400〜760nmの波長領域のうち、たとえば400nm近傍の波長においては、エネルギー変換効率は75%が上限となる。しかし、エネルギー変換効率が75%であっても十分な効果が得られ、エネルギー変換効率が60%以下であっても、放電灯よりも発熱量を抑えることができ、十分な効果が得られる。なお特許文献3に用いられているLED(ルミレッズ製Luxeon LXML-PL01-0030)はエネルギー変換効率が7%と低く、投入電力に対して効率的な反応成績を上げることができているとはいえない。
【0034】
本実施形態において発光エネルギーの波長分布およびエネルギー変換効率ηの測定装置としては、積分球(浜松ホトニクス社製、PMA-12)を用いる。積分球によれば、各波長の発光エネルギーの絶対値が測定できる。
【0035】
積分球は、小型分光器と高感度マルチチャンネル光検出素子、電流・電圧調整装置およびコントローラーから構成される。まず発光ダイオードに流す電流をある一定値に設定して、各波長範囲における光エネルギーを光検出素子により検出する。検出する波長範囲を順にシフトさせることで、各波長範囲のエネルギー分布を測定することができる。その電流値における波長シフトおよび検出が完了すると、コントローラーが次の電流値に設定を変更し、前述の通り波長シフトおよび検出を繰り返す。積分球は、このような方法で電流と波長の分布を自動測定することができる。なお、電流値の変更幅(電流スパン)、ならびに波長の範囲および変更幅(波長スパン)は、自由に変更することができる。本検討では電流スパンを100mA、波長スパンは1nmとして測定した。しかし、このスパンは検討の目的に応じて変更が可能である。
【0036】
本実施形態では、積分球は、内径として3inch(7.6cm)以上のものを用いる。しかし、測定が困難な場合には、10inch(25.4cm)以上のものを用いる。各波長の測定幅は5nm以下が好ましく、さらに0.5〜1nmが望ましい。また投入した電力を測定し、上記測定方法により測定した全発光エネルギーの絶対値を割った値がηと定義される。
【0037】
本実施形態で用いる「選択率」とは、目的生成物であるシクロアルカノンオキシム生成量が、不純物も含めたシクロアルカン転化量に対して、どれだけの割合であるかを示すものである。「選択率」は、シクロアルカノンオキシムおよび不純物生成量の合計モル量を分母とし、オキシム生成モル量を分子として算出した値である。この値が100%に近いほど、シクロアルカンは有効に利用され、目的生成物を効率的に得られたことになる。測定方法はガスクロマトグラフィーによる分析値を用いる。
【0038】
次に、発光ダイオードを用いた光化学反応の一例を、
図2を参照して説明する。
図2は、発光ダイオードを用いた光化学反応装置の一例を示す断面概念図である。
【0039】
本実施形態の光源である発光ダイオード1は、一般的な砲弾型や表面実装型、チップ型等のいずれでも良い。しかし、発光ダイオード1の光照射方向にある光化学反応器2内の光反応液の温度上昇を抑制するには、発光ダイオード1の裏面から広く放熱できるものが望ましい。
【0040】
光源からの光照射の方式は、光反応液であるシクロアルカンと光ニトロソ化剤あるいはそれらの反応物で構成される光反応液に有効に照射出来ればいずれであっても良い。光照射の方式としては、例えば、
図2のように光化学反応器2の外側から光反応液に光を照射するような外部照射型や、光反応液に光源を直接あるいは間接的に浸漬させて光化学反応器2の内部から光を照射する内部照射型がある。従来の放電灯、蛍光灯等のランプは、球状あるいは棒状の光源が多い。そのような光源の光を有効に活用するために、従来の光照射の方式は、内部照射が主流であった。また、同じ発光体を用いて反応液に照射する距離を自由に変更できるという点でも内部照射が有利である。
【0041】
しかし、発光ダイオードのように小さな点源を多数配置する場合には、反応器の形状はどのような形でもよく、反応率や施工の容易さの点で最も有利な形状を選択すればよい。発光ダイオードは、ヒートシンク3に熱伝導性接着剤などを用いて接着され、熱を発光ダイオード1の外に放出する。シクロアルカンはシクロアルカン導入ライン4から光化学反応器2に供給され、反応生成物ライン10から比重の重い生成物と一緒に排出される。本実施形態で使用される光ニトロソ化剤はガス状である。光ニトロソ化剤は、光ニトロソ化剤導入ライン5から光化学反応器2に供給され、ニトロソ化剤を液に吸収させた後、未反応ガスライン9により排出される。なお、本実施形態では、光ニトロソ化剤としてはガス状のものを用いるが、光ニトロソ化剤は、トリクロロニトロソメタンなど液状のものを用いることもできる。反応槽温度は、反応冷却水導入ライン7により冷却器6内に冷却水を流し、冷却後の水を反応冷却水排出ライン8により排出することにより、制御される。反応槽温度を10℃以上に保つ場合は、冷媒は10℃以下の水を用いることが望ましい。
【0042】
「反応容量」とは、シクロアルカンと光ニトロソ化剤とにより光化学反応を行うための空間の容量をいう。「反応容量」は、(i)光が反応器の透明材料の壁面を通過して内部に照射され、障害物や壁面などに到達して散逸するに至るまでの光照射領域を含む反応原料液が保持されている部分の容量と、(ii)前記(i)の部分に繋がり容易に前記(i)の部分と液の交換が行われる部分の容量と、の合計である。例えば、
図2の場合は、反応中に原料液の周囲とのやりとりが無いことから、反応容量は、光化学反応器2が備えるガラス製の反応槽内部全体の液容量である。後述の
図4の場合には、反応中に光化学反応器(反応器の容量変更型)11の液容量と分離器24の間でポンプによる原料液のやりとりが容易に行われることから、反応容量は、これらの液容量の合計である。反応容量は、光吸収の面では、本来長ければ長いほど望ましく、照射した光をすべて吸収するのに必要な距離以上を取る事が望ましいと考えられる。しかし、実際には光吸収に関するLambert-Beerの法則から、下記式(1)に従い吸収が進むことから、照射距離、すなわち反応容量を膨大に与えても効果的ではない。光吸収率は高いほど望ましいが、実用面から50%以上が望ましい。
(光吸収率)=1−exp(−α×c×L) ・・・ (1)
α:係数、L:照射距離、c:ニトロソ化剤濃度(モル%)
【0043】
一方、光ニトロソ化剤は、高濃度になるほど照射された光を多く吸収するので望ましいと考えられる。しかし、光ニトロソ化剤が高濃度である場合には、副反応が生じやすくなるため、不純物が増加して後述の選択率を低下させる現象が見られる。また、光ニトロソ化剤の濃度が低すぎると、光の吸収が悪い為に光の消費が不十分となって、単位エネルギー当たりのシクロアルカノンオキシムの生成量が低くなる傾向にある。以上のことから、光ニトロソ化剤の濃度は、不純化が進まない範囲で濃くし、光吸収率を高くすることが好ましい。
【0044】
さらに望ましい反応器の容量を設定するためには、例えば、
図3に示すような、反応器の容量を変更できる光化学反応器(反応容量変更型)11を備えた反応装置を準備し、光化学反応器11の光照射方向の長さを種々変更することで、反応容量を調整して検討することも可能である。なお、かかる反応装置を工業生産に用いることも何ら差し支えない。但し本実施形態の特徴はこの装置形状に限定されない。
【0045】
図3は、後述の実施例において反応容量を変更して行った光反応実験に用いた反応装置の詳細に関する一例を示す側面概念図である。発光ダイオード14を搭載し、回路接続のための電極を発光体外部に導出させた形状の複数個の発光ダイオード照射電極基板13を、光化学反応器11に対して同じ側に設置した。このような構成により、照射光が光化学反応器11に導入される。なお、発光ダイオード(発光部)14は非常に小型の光源であるため、回路を構成することが可能であれば、複数の発光ダイオードを配列した発光体、すなわちモジュールを、どのように組み合わせることもできる。その結果、放電灯では困難な種々の光照射形態を取ることができる。よって、平面、曲面等、様々な形状の対象に対して光の照射が可能となる。また、発光ダイオードは指向性の強いため、複数の発光ダイオードを発光体(モジュール)として配列することにより、発光体(モジュール)を均一に発光させることが可能である。
【0046】
透過性の光化学反応器11の側面の材質は、用いられる発光ダイオードが発する光の透過性が良好な材質であればどのようなものでも良く、例えば、ガラスや石英製、アクリル等の透明樹脂製が挙げられる。光を透過させない部分については、照射光が散逸しないようアルミ箔などで覆うことが望ましい。但し、反応器内部に存在する液が腐食性を有するものである場合には、反応器はガラス製とすることが望ましい。また、光透過部分以外を別材料で製作する場合は、チタンやタンタルなども使用できる。
【0047】
発光ダイオード(発光部)14の発光のためには、特に温度は制限されない。しかし、発光ダイオード(発光部)14の発光は、例えば外気温等の周囲温度や、発光ダイオードの接合部分や基板や放熱板等の温度の影響を受ける。一般には、温度が高いほど、単位電力あたりの発光エネルギーは低下する。このため、発光ダイオードの温度上昇を抑制することが望ましい。そして、光ニトロソ化反応が可能であれば、発光ダイオードの温度は低いほど良い。発光ダイオード14の発光の際の温度上昇を抑制する方法としては、外気温が一定で十分に発光ダイオードの発熱を抑えられ、発光ダイオードの発光させるときの温度上昇を抑制できるならは、空冷とすることができる。例えば、発光ダイオード照射電極基板13または発光ダイオード照射用回路基板12の裏面にアルミニウムや銅等の金属製のヒートシンクを設ける。そして、外気との接触面積を向上するために、ヒートシンクフィン等を設けて、放熱する態様とすることができる。また、冷媒による冷却を行う方式としても良い。ただし、実用性から、温度制御の目標温度は、0℃以上であることが好ましい。冷媒としては、水、有機冷媒液、無機冷媒液、空気、窒素など何でも利用可能である。ただし、シクロヘキサンを使用する場合、シクロヘキサンの融点との関係から、4℃〜10℃のチルド水を使用することが望ましい。
【0048】
本実施形態で用いるシクロアルカンは、特にその炭素数には限定しないが、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンが好ましい。特に、カプロラクタムの原料となるシクロヘキサン、ラウリルラクタムの原料となるシクロドデカンが好ましい。
【0049】
例えば、シクロアルカンは反応器入原料循環ライン15より光化学反応器11に導入できる(
図3参照)。この導入液として、予めシクロアルカンにガス状の光ニトロソ化剤を吹き込んで、所定の濃度に調整したものを用いることで、反応器で消費される光ニトロソ化剤の補給が可能となる。あるいは、この導入液に連続的に光ニトロソ化剤を導入しながら反応を行ってもよい。この際、反応液中の光ニトロソ化剤濃度をモニターしながら、導入する光ニトロソ化剤の量を制御することが好ましい。
【0050】
光ニトロソ化剤としては、塩化ニトロシルやトリクロロニトロソメタンなどが挙げられる。しかし、反応して光ニトロソ化剤を発生するガスを採用することもできる。たとえば、塩化ニトロシルと塩化水素との混合ガスや、一酸化窒素と塩素との混合ガス、一酸化窒素と塩素と塩化水素との混合ガス、ニトローゼガス(N
2O
3)と塩素との混合ガス等のいずれも、光反応系にて反応して塩化ニトロシルとして作用する。よって、ニトロソ化剤の供給形態は限定されない。また、塩化ニトロシルとクロロホルムを光反応させて得られるようなトリクロロニトロソメタンをニトロソ化剤として用いても良い。光ニトロソ化剤の濃度は後述の通り、ヨウ素発色およびチオ硫酸ナトリウムによる滴定を用いて液をサンプリングして測定しても良いし、光透過率により簡易的に求めても良い。光ニトロソ化剤濃度は、反応液中の塩化ニトロシルの流通量を調整することで調整する。
【0051】
上記のシクロアルカンおよび光ニトロソ化剤を用いて発光ダイオードの光照射による光化学反応の結果、シクロアルカンの炭素数に応じたシクロアルカノンオキシムを得ることができる。
【0052】
光化学反応を塩化水素の存在下で行う場合、シクロアルカノンオキシムはシクロアルカノンオキシムの塩酸塩となるが、そのまま塩酸塩の形態でも良い。例えば、シクロヘキサンを用いた塩化ニトロシルによる光ニトロソ化反応では、シクロヘキサノンオキシムが得られる。反応により得られたシクロアルカノンオキシムは、光化学反応器11の槽内で沈降し、油状物として蓄積される。この油状物は反応液循環ライン16から抜き出される(
図3参照)。未反応液は、油状物と共に未反応シクロヘキサン+シクロヘキサノンオキシム循環ライン16から排出され、系外で比重の差により油状物から分離された後、多くの場合未反応物は再度原料として光反応槽に再供給される。
【0053】
図4は、光反応実験を行う
図3の装置の周辺装置の一例である。未反応物としての未反応シクロヘキサンと油状物としてのシクロヘキサノンオキシムとは、光化学反応器11から反応液循環ライン16を介して分離器24へ、反応液循環ラインポンプ18を用いて排出される。分離器24において、シクロヘキサンは油状物から比重分離された後、反応器入原料循環ラインポンプ17を用いて、反応器入原料循環ライン15を介して光化学反応器11に返送される。分離器24では、塩化ニトロシル吹き込みライン21により塩化ニトロシルが吹き込まれ、塩化ニトロシルをシクロヘキサンに吸収させる。未反応ガスは塩化ニトロシル未反応ガス抜き出しライン22を用いて排出される。生成物としてのシクロヘキサノンオキシムは、生成油状物抜き出しライン23を用いて抜き出される。生成物の抜き出しによる減少分に相当するシクロヘキサンを、原料供給ライン25から補給することができる。
【0054】
反応器を円筒形として、複数の発光ダイオードを1本の円筒に外側向けに多数接着した発光体集合体(すなわち発光体モジュール)を反応器内に配した装置を用いて、光化学反応をさせることもできる。そのような場合には、反応容量、すなわち光を照射する際に光が反応液中を通過する距離については、反応容量を反応器外筒の径によって調整しても良い。また、照射方向に邪魔板や冷却板を設置して、光の照射を適当に妨げる手法によって、反応容量を調整しても良い。複数の発光体モジュールを用いて反応させる場合は、上記外筒、邪魔板または冷却板の他、発光体モジュール同士の距離を最適な値に調整することで、反応容量を調整しても良い。厳密にはモジュールの周辺に存在する隣接発光体モジュール間には隙間が存在するが、これら隙間から漏洩する光の影響は限定的である。複数の発光体モジュールの水平面内における配列には特に制限は無い。しかし、各発光体モジュールの位置が正三角形の頂点に対応する三角配列にすることで、発光体同士の距離を均一にでき、なおかつ限られた面積に多くの発光体を設置することができる。
【実施例】
【0055】
以下実施例により、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0056】
実施例、比較例におけるシクロアルカノンオキシムの生成条件は、基本操作としては下記のとおりである。そして、一部の条件を、各実施例および比較例において特記した条件に変更して、シクロアルカノンオキシムを製造した。
【0057】
光反応試験には、
図3および
図4に示すものと同じ形態の光化学反応装置を用いた。円筒型の光化学反応器11は円筒の内径がいずれも10cmであり、長さが4.5cm、9cm、22.5cm、45cmの4種類の“パイレックス(登録商標)”ガラス製円筒型のものを用いた。実験条件として設定した反応容量に応じて光反応槽を交換し、各反応容量を使用してデータを測定した。光源である発光ダイオード照射電極基板13および発光ダイオード照射回路基板12と発光ダイオード(発光部)14は、市販の一体製品である。発光ダイオード14として、波長615nmに最大エネルギーピークを有したもの(CREE社製発光ダイオードRedOrange XPERDO-L1-0000-00701、XPERDO-L1-0000-00801、またはPhillips Lumileds製LXML-PH01-0050)を、発光ダイオード照射用回路基板12であるアルミニウム製円形基板(イフェクト社製 TR-RE90φ75)に実装したものを用いた。なお発光ダイオード照射電極基板13、発光ダイオード14はすべて同一ロットの製品を使用した。それぞれ発光ダイオード14を備えた90個の発光ダイオード照射電極基板13を、7.5cmφの円形の板の上に四角形状に配置して、発光体モジュールを構成した。その発光体モジュールに対して、発光ダイオード照射電極基板13が配されている側とは逆の側に、冷却用のアルミニウム製ヒートシンクを取り付けた。そして、各発光ダイオード14の光照射面が、光化学反応器(照射距離変更型)11の円柱の一方の端面(円形)に対して外側から向かい合うように、配した。ヒートシンクには外部から水を通して間接的に冷却した。冷却水温度は10℃とした。
【0058】
発光ダイオードによる光照射の方式としては、光化学反応器11の外側から光化学反応器11の円筒端面(円形)の外壁ガラスを通して光反応液に照射する照射方式を用いた。30個ずつの発光ダイオードを直列に繋いで合計3列からなる並列とし、それらで構成される1セットの直流電源装置を用いて発光させた。発光ダイオード1個あたりの平均駆動電流値は0.35〜0.45A/個であり、全発光ダイオードへの総投入電力は65〜85wであった。
【0059】
光化学反応器11および分離器24に、原料供給ライン25を用いてシクロヘキサン(特級試薬、片山化学社製)を、表1の通り、適宜、量を変更して仕込み、反応温度を20℃に維持した。また、塩化ニトロシル吹き込みライン21を用いて、塩化水素(鶴見曹達社製)ガスを2000ml/minの流量で供給し、塩化ニトロシルガス(ニトロシル硫酸を塩化水素と反応させて合成し、蒸留精製して得た)を50〜300mL/minの流量で供給して、分離器24下部より分離器24に連続的に吹き込んだ。その後10mL/minにて光化学反応器11と分離器24の間を循環させた。これによりシクロヘキサンは分離器24にて塩化ニトロシルガスと接触した後、反応器入原料循環ライン15を通して光化学反応器11に送られる。塩化ニトロシル濃度は、以下のように測定した。すなわち、吹き込み開始後30分ごとに反応液を分離器24からサンプルを抜き出して、ヨウ化カリウムのメタノール溶液中に分散してヨウ素を生成させた後、チオ硫酸ナトリウム水溶液により酸化還元滴定を行った。
【0060】
反応が開始すると光化学反応器11の底部に反応生成物が油状物として蓄積する。底部の油状物に光照射が直接当たらないように、底部油状物を未反応物と一緒に
図4の反応液循環ラインポンプ18により反応液循環ライン16を通して抜き出し、分離器24にて比重差により油状物を分離した。分離した油状物は定期的に生成油状物抜き出しライン23から抜き出して、テスト終了後に油状物総質量を測定した。
【0061】
光反応液の温度は、光化学反応器11から反応液循環ライン16を介してポンプにより抜き出される液の温度を測定することにより、得た。放電灯を用いる場合、放電灯の発熱のため、光照射面を冷却する必要があるが、発光ダイオード1では光照射面への発熱が非常に低いので、光照射面での冷却は必要としない。
【0062】
発光ダイオード14を点灯して反応を開始した。分離器に送られた後、比重差により油状物のみが分離器24に堆積し、未反応のシクロヘキサンは塩化ニトロシルと接触の後、再び光化学反応器11に送られた。
【0063】
排ガスは、塩化ニトロシル未反応ガス抜き出しライン22より排出して、スクラバーにて水吸収し、吸収液をソーダ灰にて中和した。
【0064】
安定測定の為、発光ダイオードの点灯開始後120分〜180分の時点における油状物より評価を行った。
【0065】
シクロヘキサノンオキシムおよび不純物は、抜き出した油状物を、エタノール溶液に溶解し、粉末重炭酸ソーダで中和後、GC分析(島津製作所社製、GC−14Bによる)にて測定した。GC分析の検量線よりシクロヘキサノンオキシムの濃度(質量%)を求めた。油状物の質量(g)から反応で得られたシクロヘキサノンオキシムの生成量(g)を求め、必要によりモル換算した。GC分析条件は、以下のとおりである。すなわち、固定相液体は、Thermon−3000、7%。固定相担体は、Chromosorb W−AW(DMCS)、80〜100mesh。カラムは、内径3.2mmガラス2.1m。キャリアーガスは、窒素25ml/分。温度は、カラム恒温槽にて180℃、注入口にて240℃。検出器には、FID(水素炎イオン化型検出器)を使用した。内部標準物質は、ジフェニルエーテルである。
【0066】
シクロヘキサノンオキシムの収量(g/kWh)は、1h当たりの投入電力(kWh)に対するシクロヘキサノンオキシムの生成量(g)で算出した。
【0067】
実施例1
光化学反応器の長さ、すなわち光の照射距離を4.5cmとし、シクロヘキサンを2L仕込み、光を照射する発光ダイオードとしてCREE社製発光ダイオードRedOrange XPERDO-L1-0000-00701(エネルギー変換効率35%)を用いて(実施例2〜4においても同じ)、反応させた。なお、CREE社製発光ダイオードRedOrange XPERDO-L1-0000-00701は、光の波長に対する発光エネルギー分布において、発光エネルギーの最大値を示す波長が600nmから650nmの範囲内にあり、かつ最大値を示す波長を含む範囲であって、最大値の5%以上のエネルギーを出力する波長の連続した範囲が150nm以下である光を射出する。分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の反応液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は前述の基本操作および表1記載の通りである。結果を表1に示す。
【0068】
実施例2
光の照射距離、すなわち円筒の長さが9cmの光化学反応器を用いた。シクロヘキサンを2.3L仕込み、分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は実施例1と同じである。このときの結果を表1に示す。
【0069】
実施例3
光の照射距離、すなわち円筒の長さが22.5cmの光化学反応器を用いた。シクロヘキサンを3.2L仕込み、分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は実施例1と同じである。このときの結果を表1に示す。
【0070】
実施例4
光の照射距離、すなわち円筒の長さが45cmの光化学反応器を用いた。シクロヘキサンを5.4L仕込み、分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は実施例1と同じである。このときの結果を表1に示す。
【0071】
[0000]
実施例5
発光ダイオードとして実施例2〜4のXPERDO-L1-0000-00701よりも高性能のCree社製XPRDO-L1-0000-00801を用い、光の照射距離、すなわち円筒の長さが9cmの光化学反応器を用いた。なお、CREE社製発光ダイオードRedOrange XPERDO-L1-0000-00801は、光の波長に対する発光エネルギー分布において、発光エネルギーの最大値を示す波長が600nmから650nmの範囲内にあり、かつ最大値を示す波長を含む範囲であって、最大値の5%以上のエネルギーを出力する波長の連続した範囲が150nm以下である光を射出する。シクロヘキサンを2.3L仕込み、分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は実施例1と同じである。このときの結果を表1に示す。
【0072】
比較例1
光の照射距離、すなわち円筒の長さが22.5cmの光化学反応器を用い、光を照射する発光ダイオードとしてPhillips Lumileds社製発光ダイオードRedOrange LXML-PH01-0050(エネルギー変換効率20%)を用いて反応させた。なお、Phillips Lumileds社製発光ダイオードRedOrange LXML-PH01-0050が射出する光は、以下の条件を満たさない;光の波長に対する発光エネルギー分布において、(i)発光エネルギーの最大値を示す波長が600nmから650nmの範囲内にあり、かつ(ii)最大値を示す波長を含む範囲であって、最大値の5%以上のエネルギーを出力する波長の連続した範囲が150nm以下である。分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の反応液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.3モル%であった。その他の条件は前述の基本操作および表1記載の通りである。このときの結果を表1に示す。
【0073】
比較例2
光の照射距離、すなわち円筒の長さが45cmの光化学反応器を用いた。分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.3モル%であった。その他の条件は前述の基本操作および表1記載の通りである。このときの結果を表1に示す。
【0074】
比較例3
光の照射距離、すなわち円筒の長さが22.5cmの光化学反応器を用い、光を照射する発光ダイオードとしてCREE社製発光ダイオードRedOrange XPERDO-L1-0000-00701(エネルギー変換効率35%)に変更して、反応させた。分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は前述の基本操作および表1記載の通りである。このときの結果を表1に示す。
【0075】
比較例4
光の照射距離、すなわち円筒の長さが45cmの光化学反応器を用いた。分離器に吹き込む塩化ニトロシル量を調整した上で、120分後〜180分後の液中の塩化ニトロシル濃度を測定したところ、0.4モル%であった。その他の条件は前述の基本操作および表1記載の通りである。このときの結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1〜4においては、照射距離に関わらず、単位容量当たりのエネルギー照射量ηE/Vが5.5w/L以上のとき、選択率は85.1〜87.6%と高効率となることが表されている。またこのときオキシム収量も高効率を維持した。
【0078】
比較例1〜4においては、照射距離を22.5cm〜45cmで変化させたが、選択率は79.0〜82.8%と効率の低下が見られた。オキシム収量は同じエネルギー変換効率であれば同等の値が得られている。
【0079】
以上の結果から、単位容積当たりのエネルギー照射量ηE/Vが5.5w/L以上のとき、オキシム収量を維持しながら選択率を改善することができることが確認された。
【0080】
以上では、本願発明をその好ましい例示的な実施例を参照して詳細に説明した。しかし、本願発明は、以上で説明した実施例や構成に限定されるものではない。そして、本願発明は、様々な変形や均等な構成を含むものである。さらに、開示された発明の様々な要素は、様々な組み合わせおよび構成で開示されたが、それらは例示的な物であり、各要素はより多くてもよく、また少なくてもよい。そして、要素は一つであってもよい。それらの態様は本願発明の範囲に含まれるものである。