(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単位表示画像を書き換える時間である1フレーム時間内に前記信号線制御回路が前記初期化電圧を前記データ線に出力する回数は、前記1フレーム時間内に前記信号線制御回路が前記データ電圧を前記データ線に出力する回数よりも少ない
請求項1または2に記載の表示装置。
前記電流駆動トランジスタ、前記電流スイッチトランジスタ、前記選択トランジスタ、前記第1スイッチトランジスタ及び前記第2スイッチトランジスタは、全て同一の導電型のチャネルを有する薄膜トランジスタである
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の表示装置。
前記電流駆動トランジスタ、前記電流スイッチトランジスタ、前記選択トランジスタ、前記第1スイッチトランジスタ及び前記第2スイッチトランジスタは、全てn型のチャネルを有する薄膜トランジスタである
請求項4に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態1及び2について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施の形態1)
<表示装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る表示装置の機能ブロック図である。同図に記載された表示装置1は、ディジタル階調制御方式で輝度を変動させるアクティブマトリクス型ディスプレイ装置であり、制御回路2と、走査線制御回路4と、信号線制御回路5と、表示部6とを備える。
【0038】
制御回路2は、入力された映像信号に応じて、表示部6の画素ごとに発光させるサブフレームを割り当て、走査線制御回路4及び信号線制御回路5に制御信号を出力する。
【0039】
走査線制御回路4は、表示部6に走査電圧を印加し、信号線制御回路5は表示部にデータ電圧及び初期化電圧を印加する。以下、上述した表示装置1の構成要素について詳細に説明する。
【0040】
図2は、本発明の実施の形態に係る表示装置が有する表示部の回路構成図である。表示部6は、ディスプレイの解像度(m×n)に応じた、マトリクス状に配置された複数の発光画素が配置された表示部であるが、
図2には、表示部6の一部である、1つの発光画素が記載されている。
図2に記載された表示部6の発光画素は、電流スイッチトランジスタ11と、スイッチトランジスタ23及び24と、コンデンサ12及び22と、選択トランジスタ13と、有機EL素子14と、電流駆動トランジスタ21と、画素列ごとに配置されたデータ線DTと、画素行ごとに配置された走査線SCNと、制御線BLKと、初期化電源線PIと、電源線PSとを備える。
【0041】
また、表示部6が有する複数の発光画素は、全て同じ回路構成となっている。
【0042】
表示部6が有する発光画素は、有機EL素子14に供給する発光電流である定電流を発生させる定電流駆動部と、当該定電流駆動部から有機EL素子14へ供給される上記定電流の電流径路を導通及び遮断する定電流スイッチ部とに大別される。
【0043】
定電流駆動部は、電流駆動トランジスタ21と、コンデンサ22と、スイッチトランジスタ23及び24とで構成される。定電流駆動部は、電流駆動トランジスタ21を飽和領域で動作させることにより、電流駆動トランジスタ21のソース−ドレイン間電圧Vdsが変動しても定電流を発生し、当該定電流を定電流スイッチ部へ安定供給する。
【0044】
定電流スイッチ部は、電流スイッチトランジスタ11と、コンデンサ12と、選択トランジスタ13とで構成される。データ線DTから供給される2値のデータ電圧(オン電圧及びオフ電圧)が電流スイッチトランジスタ11のゲート端子に印加されることより、電流スイッチトランジスタ11のソース−ドレイン間は、導通状態または非導通状態となる。これにより、定電流駆動部からの定電流を有機EL素子14へ流す、または、流さないという動作がサブフィールド単位で実行され、ディジタル階調制御がなされる。ここで、電流スイッチトランジスタ11のオンオフ制御におけるスイッチング損失を低減させるため、電流スイッチトランジスタ11は、低オン抵抗である線形領域で動作させることが望ましい。一方、薄膜トランジスタを線形領域で動作させた場合、ソース−ドレイン間電圧Vdsの変動により、薄膜トランジスタのドレイン−ソース電流Idsが変動しやすいという課題がある。上記課題を解消するため、上述した定電流駆動部によりVdsが変動してもIdsが変動しない定電流が供給される。
【0045】
つまり、飽和領域で動作する電流駆動トランジスタ21を有する定電流駆動部により、電源電圧やソース電位の変動などがあっても安定して定電流を供給することができ、線形領域で動作する電流スイッチトランジスタ11を有する定電流スイッチ部により、低損失なスイッチングによるディジタル階調表示が可能となる。
【0046】
以下、発光画素の各構成要素及びそれらの接続状態を説明する。
【0047】
電源線PSは、すべての画素行に配置され、電流駆動トランジスタ21のドレインに接続され、正の電源電圧V
TFTを当該接続点に印加することにより、電源電圧を複数の発光画素に供給する。
【0048】
なお、本実施の形態では、全ての発光画素に対して、同じ電源電圧V
TFTが同じタイミングで印加されるので、電源線PSは、全ての電源線が接続された共通線となっていてもよい。
【0049】
走査線SCNは、画素行ごとに配置され、映像信号に対応したデータ電圧を書き込む発光画素を選択する。
【0050】
制御線BLKは、すべての画素行に配置され、定電流駆動部を初期化するための機能を有する。
【0051】
初期化電源線PIは、すべての画素行に配置され、全ての発光画素を初期化するための参照電圧V
REFを、全ての発光画素に供給する機能を有する。具体的には、初期化電源線PIは、定電流駆動部を初期化する場合にコンデンサ22の一方の電極に参照電圧V
REFを供給する。なお、本実施の形態では、全ての発光画素に対して、同じ参照電圧V
REFが同じタイミングで印加されるので、各画素行に配置された初期化電源線PIは共通線となっている。よって、駆動回路などの外部周辺回路を簡略化できる。
【0052】
データ線DTは、画素列ごとに配置され、選択された発光画素にデータ電圧を書き込むための機能を有する。
【0053】
有機EL素子14は、電流駆動型の発光素子であり、アノード端子が電流スイッチトランジスタ11のソース端子及びコンデンサ12の一方の電極と接続され、カソード端子が基準端子(基準電圧V
EL)に接続されている。
【0054】
電流駆動トランジスタ21は、ドレイン端子が電源線PSに接続され、ゲート端子がコンデンサ22の他方の電極と接続され、ソース端子がコンデンサ22の一方の電極と接続され、電源線PSからの電流を駆動する。電流駆動トランジスタ21は、ドレイン−ソース間電圧Vdsがゲート−ソース間電圧Vgsに比べて十分大きい領域である飽和領域にて動作させることにより、Vgsに応じて、電源電圧から一定の電流を供給する定電流駆動用の薄膜トランジスタである。なお、電流駆動トランジスタ21は、上述したように、Vdsの変動を受けない安定したIdsを有機EL素子14へ供給するが、映像信号に基づく表示階調の傾向により、フレーム単位で、後述する初期化電圧Vdata2を調整することによりVgsを変化させてIdsの大きさを調整することが可能となる。これにより、全ての階調を高精度に表示することが可能となる。
【0055】
コンデンサ22は、電流駆動トランジスタ21のゲート電極及びソース電極に接続され、電流駆動トランジスタ21のゲート−ソース間電圧を保持する第1コンデンサである。
【0056】
電流スイッチトランジスタ11は、ドレイン端子が電流駆動トランジスタ21のソース端子と接続され、ゲート端子がコンデンサ12の他方の端子と接続され、ソース端子がコンデンサ12の一方の端子及び有機EL素子14のアノード端子と接続され、ゲート−ソース間電圧Vgsがドレイン−ソース間電圧Vdsに比べて十分大きい領域である線形領域にて動作する、定電流スイッチング用の薄膜トランジスタである。電流スイッチトランジスタ11は、電流駆動トランジスタ21により駆動される定電流を有機EL素子14へ流すための電流径路を導通及び遮断する。
【0057】
コンデンサ12は、電流スイッチトランジスタ11のゲート電極とソース電極との間の電圧を保持する第2コンデンサである。
【0058】
選択トランジスタ13は、ドレイン端子が電流スイッチトランジスタ11のゲート端子と接続され、ゲート端子が走査線SCNと接続され、ソース端子がデータ線DTと接続され、有機EL素子14の発光を決定するデータ電圧を書き込むべき発光画素を選択する。つまり、選択トランジスタ13は、電流スイッチトランジスタ11のゲート電極とデータ線DTとの導通及び非導通を切り換える。
【0059】
スイッチトランジスタ23は、ドレイン端子がデータ線DTと接続され、ゲート端子が制御線BLKと接続され、ソース端子が電流駆動トランジスタ21のゲート端子及びコンデンサ22の他方の電極と接続された第1スイッチトランジスタであり、スイッチトランジスタ24と同期制御されることにより、コンデンサ22の両端電圧である電流駆動トランジスタ21のVgsを確定させる。
【0060】
スイッチトランジスタ24は、ドレイン端子が電流駆動トランジスタ21のソース端子及びコンデンサ22の一方の電極と接続され、ゲート端子が制御線BLKと接続され、ソース端子が初期化電源線PIと接続された第2スイッチトランジスタであり、スイッチトランジスタ23と同期制御されることにより、コンデンサ22の両端電圧である電流駆動トランジスタ21のVgsを確定させる。
【0061】
電流スイッチトランジスタ11、スイッチトランジスタ23及び24、ならびに選択トランジスタ13は、入力された映像信号に基づいてゲート−ソース間に閾値電圧以上の電圧が印加されることにより、ドレイン−ソース間を導通状態とするスイッチ素子である。
【0062】
電流駆動トランジスタ21、電流スイッチトランジスタ11、スイッチトランジスタ23及び24、ならびに選択トランジスタ13は、同一の導電型のチャネルを有する薄膜トランジスタであることが好ましく、さらには、nチャネルのMOSFETで形成されていることが望ましい。上記トランジスタが、全て、nチャネルのMOSFETで形成されることにより、n型トランジスタのみを用いて画素回路を構成できるので、アモルファスシリコンTFTを用いて安価かつ簡易的に表示パネルを製造することが可能となる。
【0063】
上記回路構成において、データ線DTがHIGHレベル(Vdata1)となり走査線SCNがHIGHレベル(V
SCN)となることで、選択トランジスタ13のゲート−ソース間に、閾値電圧よりも十分大きい信号電圧が印加される。これにより、選択トランジスタ13は線形領域で動作しドレイン−ソース間はオン抵抗の低い導通状態となる。そして、選択トランジスタ13が導通状態になった後、データ線DTから選択トランジスタ13を経由してコンデンサ12が充電される。これにより、電流スイッチトランジスタ11のゲート−ソース間に、閾値電圧よりも十分大きい電圧が印加され、電流スイッチトランジスタ11は線形領域で動作しドレイン−ソース間はオン抵抗の低い導通状態となる。このとき、電源線PS→電流駆動トランジスタ21→電流スイッチトランジスタ11→有機EL素子14の経路で上述した電流駆動トランジスタ21による定電流が流れ有機EL素子14が発光する。
【0064】
また、本実施の形態では、発光素子として有機EL素子を用いているが、当該発光素子は電流駆動型の発光素子であればよく、例えば、無機EL素子であってもよい。
【0065】
<走査線制御回路>
次に、走査線制御回路4について説明する。走査線制御回路4は、制御回路2からの制御信号により、データ電圧書き込み期間において、発光画素行を選択するための走査信号を、走査線SCNを介して発光画素を有する表示部6に出力する。また、走査線制御回路4は、制御回路2からの制御信号により、初期化期間において、各発光画素の定電流値を定電流駆動部に設定するための初期化信号を、制御線BLKを介して発光画素を有する表示部6に出力する。
【0066】
図3は、本発明の表示装置が有する走査線制御回路の内部回路図である。走査線制御回路4は、走査信号の選択電圧であるV
SCNまたは非選択電圧V
Lを選択し、画素行ごとに配置された走査線SCN1〜SCNmに印加する。
【0067】
画素行数がmである場合には、走査線制御回路4は、m本の走査線SCN1〜SCNmを介して表示部6に接続されている。走査線制御回路4は、任意の順序で1ライン毎に走査線SCN1〜SCNmに対して選択電圧V
SCNまたは非選択電圧V
Lを供給することが可能である。もちろん、走査線SCN1、SCN2、・・・SCNmという様に、行順次に走査電圧を印加することも可能であり、あるいは、全ての走査線に対し同時にV
SCNまたはV
Lを供給することも可能である。
【0068】
図3に記載された回路において、例えば、走査線SCN1に選択電圧V
SCNを印加し、その他の走査線に非選択電圧V
Lを印加する場合には、走査線制御回路4は、スイッチSW41A及びスイッチSW42B、SW43B、・・・SW4mBをON状態とし、スイッチSW41B及びスイッチSW42A、SW43A、・・・SW4mAをOFF状態とする。
【0069】
さらに、図示しないが、走査線制御回路4は、初期化信号の選択電圧であるV
BLKまたは非選択電圧を選択し、制御線BLKに印加する。制御線BLKに選択電圧V
BLKまたは非選択電圧を印加する回路についても、選択電圧V
SCNまたは非選択電圧V
Lを印加する回路と同様の構成である。
【0070】
つまり、走査線制御回路4は、複数の走査線SCN及び制御線BLKに接続され、スイッチトランジスタ23及び24ならびに選択トランジスタ13の導通及び非導通を制御する。
【0071】
なお、選択電圧V
SCN及びV
BLKを印加するタイミングについては、後述する。
【0072】
また、制御線BLKは、全ての発光画素に共通した制御線であってもよく、また、画素行ごとに配置された制御線BLK1〜BLKmであってもよい。
【0073】
<信号線制御回路>
次に、信号線制御回路5について説明する。信号線制御回路5は、データ電圧書き込み期間において、制御回路2からの制御信号により、走査線制御回路4から出力される走査信号に同期して、映像信号に対応したデータ電圧(オン電圧及びオフ電圧)を、データ線DTを介して電流スイッチトランジスタ11のゲート端子に出力する。また、信号線制御回路5は、初期化期間において、走査線制御回路4から制御線BLKを介して出力される初期化信号の選択電圧V
BLKに同期して、定電流駆動部から定電流スイッチ部へ供給される定電流の電流値を決定するための初期化電圧Vdata2を、データ線DTを介して電流駆動トランジスタ21のゲート端子に出力する。信号線制御回路5も走査線制御回路4とほぼ同様の回路構成であるが、印加する電圧値を電流駆動トランジスタ21のゲート電圧として設定する初期化電圧Vdata2と、電流スイッチトランジスタ11のオン電圧Vdata1とを選択できる構成となっている。
【0074】
図4は、本発明の表示装置が有する信号線制御回路の内部回路図である。信号線制御回路5は、スイッチSWDによる切替え機能により、初期化電圧Vdata2またはオン電圧Vdata1を選択し、画素列ごとに配置されたデータ線DT1〜DTnに印加する。また、データ信号のオフ電位を供給するためのスイッチをライン毎に配置した回路構成となっている。
【0075】
画素列数がnである場合には、信号線制御回路5は、n本のデータ線DT1〜DTnを介して表示部6に接続されている。各データ線には、信号線制御回路5の信号に応じて、1ライン毎にデータ線DT1〜DTnにオン電圧Vdata1またはオフ電圧を供給することが可能である。また、全てのデータ線に対し同時に初期化電圧Vdata2またはオフ電圧を供給することも可能である。初期化電圧Vdata2、オン電圧Vdata1またはオフ電圧を印加するタイミングについては、後述する。
【0076】
以上のように、信号線制御回路5は、制御回路2からの制御信号により、初期化期間において電流駆動トランジスタ21のソース電圧となる初期化電圧Vdata2を出力し、データ電圧書き込み期間においてデータ電圧であるオン電圧またはオフ電圧を、データ線DTを介して表示部6に出力する。また、映像信号に応じた駆動信号により、表示部6の解像度に応じた画素列数n本のデータ線を同時に制御可能とするためのメモリ機能を有している。
【0077】
つまり、信号線制御回路5は、複数のデータ線DTに接続され、走査線制御回路4により選択トランジスタ13が導通状態となった場合、電流スイッチトランジスタ11のゲート−ソース間電圧を決定するデータ電圧をデータ線DTに出力し、走査線制御回路4によりスイッチトランジスタ23及び24が導通状態となった場合、電流駆動トランジスタ21のゲート−ソース間電圧を決定する初期化電圧Vdata2をデータ線DTに出力する。
【0078】
なお、制御回路2は、発光画素の表示期間の長さを、電流スイッチトランジスタ11のオンオフ制御により変化させることで、有機EL素子14の発光輝度を制御する制御部として機能する。
【0079】
<表示装置の動作>
以下、
図5〜7を用いて、表示装置1の動作について述べる。
図5は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の駆動タイミングチャートである。
図5の駆動タイミングチャートは、例として、走査線SCN1より行順次に走査した場合の表示装置の動作を表したものであり、上から順に、コンデンサ22の両端電圧V22、コンデンサ12の両端電圧V12、電流駆動トランジスタ21の状態TFT21、電流スイッチトランジスタ11の導通状態TFT11、選択トランジスタ13のゲート電圧V13、スイッチトランジスタ23のゲート電圧V23、スイッチトランジスタ24のゲート電圧V24、制御線BLKの電圧、データ線DTの電圧、走査線SCN1の電圧、・・・、走査線SCN1080の電圧を表している。なお、V22〜V24は、走査線SCN1に接続された画素行に属する発光画素についての動作を表している。また、上記電流駆動トランジスタ21の状態TFT21とは、スイッチトランジスタ23及び24が導通状態でありコンデンサ22が充電状態である場合をハイレベルとし、その他の場合をローレベルとして表している。また、上記電流スイッチトランジスタ11の導通状態TFT11とは、電流スイッチトランジスタ11のドレイン−ソース間が導通状態である場合をハイレベルとし、非導通状態である場合をローレベルとして表している。
【0080】
以下説明する表示装置1の動作は、初期化動作、書き込み動作及び発光動作という一連の単位を1サブフィールドとし、当該サブフィールドを繰り返し実行する。
【0081】
[初期化期間(電流源設定期間)]
定電流駆動部から供給される定電流を設定する初期化期間(電流源設定期間)における動作は、入力された映像信号に基づき、各画素の電流源となる電流駆動トランジスタ21のゲート−ソース間電圧Vgsを設定するステップである。
【0082】
まず、時刻t01〜時刻t02において、電流駆動トランジスタ21のVgsを設定するために、書き込み対象の電流駆動トランジスタ21に直列に接続されている電流スイッチトランジスタ11をオフさせる。オフさせる方法としては、
図5のように、行順次に走査線SCNに走査電圧パルスを印加し、データ線DTにオフ電圧を印加して行毎にオフさせてもよいし、全ライン一斉に走査電圧パルスを印加してもよい。また、上記走査電圧パルスの長さは、初期化期間より前の発光期間の長さに応じて変化させてもよい。
【0083】
初期化期間の準備段階として上記動作を行うことにより、電流駆動トランジスタ21のソース電位が電流スイッチトランジスタ11及び有機EL素子14から切り離されてフローティング状態となるため、時刻t02以降での電流駆動トランジスタ21のソース電位をデータ線DTから任意に設定でき、これによりVgsを任意に調整することが可能となる。
【0084】
次に、時刻t02において、制御線BLKに正の電圧V
BLKを印加し、スイッチトランジスタ23及び24のゲート電圧を閾値電圧以上としドレイン−ソース間の抵抗を下げオンさせる。この動作により、電流駆動トランジスタ21のVgsは、データ線DTと初期化電源線PIとの電位差により設定される。
【0085】
図6は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の電流源設定動作を説明する状態遷移図である。同図は、行列間で隣接する4つの発光画素6A〜6Dの時刻t02における電気的状態を表している。なお、本実施の形態では、電源線PS、制御線BLK及び初期化電源線PIが全ての発光画素で共通化されている。これらの配線の共通化、及び、初期化電源線PIによる参照電圧V
REFの電圧値が初期化電圧Vdata2との電位差のみにより決定できることから参照電圧V
REFを低く設定できること、により駆動回路などの外部周辺回路を簡略化できる。
【0086】
時刻t02において、信号線制御回路5は、データ線DT1及びDT2に対して初期化電圧Vdata2を出力する。また、走査線制御回路4は、制御線BLKに対してHIGHレベルの選択電圧V
BLKを出力する。これにより、スイッチトランジスタ23及び24が導通状態となり、電流駆動トランジスタ21のVgsは、(Vdata2−V
REF)となる。
図6において、矢印(破線)は電圧印加経路を示したものである。
【0087】
ここで、有機EL表示パネルの場合を想定して具体例にて説明する。例えば、電源線PSの電源電圧V
TFTは10V、基準電圧V
ELは−2Vに設定される。また、電流駆動トランジスタ21のドレイン−ソース間電圧Vdsは5V程度、電流スイッチトランジスタ11のVdsは1V程度となる。かかる場合において、前述したように、電流駆動トランジスタ21を、安定した定電流源として動作させるためには、Vds>>VgsとなるようVgsを設定して飽和領域にて動作させる必要がある。つまり、Vdata2とV
REFとの電位差の絶対値は、電流駆動トランジスタ21のドレイン−ソース間電圧Vdsの絶対値より小さい。本具体例において、電流駆動トランジスタ21のVdsが5V程度であることから、電流駆動トランジスタ21のVgsを1V程度に設定することが望ましい。これより、初期化電圧Vdata2を2V、参照電圧V
REFを1Vと設定すればよい。
【0088】
上述した時刻t02における走査線制御回路4及び信号線制御回路5の動作により、定電流駆動部の設定が完了する。
【0089】
その後、時刻t02〜時刻t03の期間において、走査線制御回路4は、制御線BLKをLOWレベルとして、スイッチトランジスタ23及び24のゲート電圧を閾値電圧以下とすることにより、電流駆動トランジスタ21のVgsを保持するコンデンサ22の両電極は、データ線DT及び初期化電源線PIから電気的に切り離される。なお、このとき、スイッチトランジスタ23及び24が十分なオフ状態となるまでにデータ線DTの電圧を変動させると、電流駆動トランジスタ21のVgs電圧が変動してしまう。これを回避するため、データ線DTの電圧をVdata2から立ち下げるタイミングは、制御線BLKの立ち下がりタイミングよりも遅延させた方がよい。
【0090】
[書き込み期間(ON/OFF設定期間)]
データ電圧を、選択された発光画素へ書き込む書き込み期間(ON/OFF設定期間)における動作は、各発光画素が有する電流スイッチトランジスタ11の導通状態及び非導通状態を切り換えるステップである。このため、走査線制御回路4は、走査線SCNごとに、選択電圧V
SCNまたは非選択電圧V
Lを印加する。これにより、選択された走査線SCNが接続された画素行に属する発光画素に対して、対応するデータ線DTからのデータ電圧が印加され、電流スイッチトランジスタ11のゲート電圧が制御される。
【0091】
なお、
図5では、制御回路2による処理により、サブフィールド期間t03〜t04及び期間t05〜t06では、1行目の発光画素が発光状態であり、サブフィールド期間t04〜t05では、1行目の発光画素が非発光状態であるものと仮定している。
【0092】
まず、時刻t03〜時刻t04のサブフィールド期間において、走査線制御回路4は、走査線SCN1〜SCNmに対して、走査信号パルスを印加する。ここで、走査線SCN1に接続された1行目の発光画素について、より具体的に説明する。
【0093】
図7は、本発明の実施の形態1に係る表示装置が有する画素への書き込み動作を説明する状態遷移図である。同図は、行列間で隣接する4つの発光画素6A〜6Dの時刻t03における電気的状態を表している。
【0094】
時刻t03において、走査線制御回路4は、走査線SCN1に対して、選択トランジスタ13の閾値電圧以上となる選択電圧V
SCNを出力する。これにより、選択トランジスタ13のドレイン−ソース間の抵抗が下がり、選択トランジスタ13が導通状態となる。また、信号線制御回路5は、データ線DTに対し、オン電圧Vdata1を出力する。これにより、電流スイッチトランジスタ11のゲート電圧が閾値電圧以上となり電流スイッチトランジスタ11が導通状態となる。
図7において、矢印(破線)は電圧印加経路を示したものであり、矢印(実線)は電流の流れを示したものである。
【0095】
なお、本実施の形態において、例えば、走査線SCN及び制御線BLKのHIGHレベルの電圧V
SCN及びV
BLKは+20Vであり、LOWレベルの電圧V
Lは−10Vに設定されている。また、前述したように、電流スイッチトランジスタ11を、スイッチング損失の小さいスイッチ素子として動作させるためには、Vgs>>VdsとなるようVgsを設定して線形領域にて動作させる必要がある。つまり、電流スイッチトランジスタ11が導通状態となる場合のデータ電圧の絶対値は、電流スイッチトランジスタ11のドレイン−ソース間電圧Vdsの絶対値より大きい。本具体例において、電流スイッチトランジスタ11のVdsが1V程度であることから、電流スイッチトランジスタ11のVgsを8V程度に設定することが望ましい。また、有機EL素子14に印加される電圧は、6V程度であることから、有機EL素子14のアノード電位、つまり電流スイッチトランジスタ11のソース電位は4V程度となる。上記電流スイッチトランジスタ11のVgs及びソース電位より、電流スイッチトランジスタ11に印加されるデータ電圧は、オン電圧として12V、オフ電圧として2V程度に設定すればよい。なお、この場合、オフ電圧とVdata2の電圧とを同じ電圧値に設定しているが、
図5に記載された駆動タイミングチャートのように、異なる電圧値とすることも可能であり、本実施の形態の係る表示装置1における各設定電圧値は、上記例示電圧値に限られない。
図5に記載された駆動タイミングチャートでは、各配線の電圧の挙動を明確にするため、オフ電圧の電圧値とVdata2電圧の電圧値とが異なっている例を示している。
【0096】
次に、時刻t03〜時刻t04において、走査線SCN1の走査電圧をV
SCNからV
Lに変化させて選択トランジスタ13を非導通状態とし、電流スイッチトランジスタ11のゲート端子とデータ線DTとを電気的に切り離しても、電流スイッチトランジスタ11のゲート−ソース間に接続されたコンデンサ12により、電流スイッチトランジスタ11のVgs電位は保持される。このときのコンデンサ12の容量は、電流スイッチトランジスタ11をオンさせている最大時間幅が経過しても、電流スイッチトランジスタ11の閾値電圧以上の電位を保持できる容量以上とすることが望ましい。
【0097】
上記動作により電流スイッチトランジスタ11が導通状態となると、電源線PS→電流駆動トランジスタ21→電流スイッチトランジスタ11→有機EL素子14→基準端子の経路で電流が流れ、発光画素6A及び6Bの発光期間が開始する。発光期間は電流スイッチトランジスタ11が非導通状態になるまで継続する。
【0098】
その後、走査線SCN2、走査線SCN3、・・・、と順次走査することで、すべての発光画素に対して、所望のタイミングで電流スイッチトランジスタ11をオンさせることが可能となる。
【0099】
以上のように、時刻t03以降において、所望の発光画素に対し走査線ごとに書き込み動作を行うことで、サブフィールドごとに全ての発光画素に対して書き込み及び発光制御を行うことが可能となる。
【0100】
なお、
図5に記載された一連の表示動作では、初期化動作を一度しか行っていないが、サブフィールドごとに行ってもよい。ただし、サブフィールド間で、定電流駆動部の電流設定値を変化させる必要が無い場合は初期化動作を行う必要が無く、サブフィールド間での初期化動作を省略することにより駆動時間を大幅に短縮することが可能となる。つまり、単位表示画像を書き換える時間である1フレーム時間内に信号線制御回路5が初期化電圧Vdata2をデータ線DTに出力する回数は、1フレーム時間内に信号線制御回路5がデータ電圧(オン電圧及びオフ電圧)をデータ線DTに出力する回数よりも少ないことが好ましい。これにより、電流源としての電流駆動トランジスタの条件設定に必要な時間が短縮されるため、結果的に発光期間を長く確保することが可能となる。よって、高精細な表示パネルを提供でき、また、有機EL素子に流れる電流のピーク値を低くすることができるので、高効率な輝度制御を実行することが可能となる。
【0101】
また、サブフィールド時分割式で輝度を変調する場合、電流スイッチトランジスタ11のオン/オフ時間比率の最大値または最小値によって最大輝度と最小輝度の制約が生ずるが、電流駆動部における電流設定値を変化させることで、輝度調節範囲を広げることが可能である。具体的には、例えば、電流駆動トランジスタ21のVgsの設定値を調整することにより、輝度調節範囲を広げることが可能である。
【0102】
また、初期化動作に必要な最大時間間隔に応じて、電流駆動トランジスタ21のVgsを保持するコンデンサ22の容量を設定することにより、電流駆動トランジスタ21のVgsを所望の値に保持することが可能となる。
【0103】
以上、本実施の形態によれば、画素回路に定電流源として機能する定電流駆動部が配置されたことにより、定電流スイッチ部を構成する電流スイッチトランジスタ11は、定電流源である必要はなく、画素回路のオンオフ状態を切り換えるスイッチ機能を有していればよい。よって、例えば、電流スイッチトランジスタ11に印加するデータ電圧、つまり、ゲート−ソース間電圧Vgsを、ドレイン−ソース間電圧Vdsに対して十分大きく設定しておくことにより、薄膜トランジスタの線形領域を利用することができるので、ドレイン−ソース電流Idsのオン抵抗を小さくすることが可能となる。よって、電流スイッチトランジスタ11のドレイン−ソース間に発光電流が流れるときの電圧降下を低減でき、表示パネルの電力損失を大幅に低減することができる。
【0104】
また、本実施の形態によれば、基本的な書き込み動作及び発光動作に必要な配線の電位を変化させるドライバ回路に対し、制御線BLKの電位を変化させるドライバ動作のみが新たに必要となるだけであり、外部周辺回路の構成を簡略化できる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、電流駆動トランジスタ21のVgsを設定するための初期化期間において、電流はデータ線DTから初期化電源線PIへと流れる。初期化電源線PIの参照電圧V
REFは、駆動信号に応じて電圧を変化させる必要は無く一定電圧とできるため、電流が流れ込むことによる損失を低減させることが可能である。また、電流駆動トランジスタ21のVgsを電源線PSとデータ線DTとの間で設定する場合と比較して、初期化電圧Vdata2および参照電圧V
REFの電圧値を電源電圧に規制されずに必要最小値に設定することが可能であるため、流れる電流値を最小に抑え、上記電流による損失を最小限にすることができる。
【0106】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る表示装置が有する画素回路は、実施の形態1に係る画素回路と比較して、定電流駆動部及び定電流スイッチ部の回路構成はそれぞれ同じであるが、定電流駆動部と定電流スイッチ部との配置関係のみが異なる。以下、実施の形態1に係る画素回路と同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0107】
図8は、本発明の実施の形態2に係る表示装置が有する表示部の回路構成図である。
図8に記載された表示部6の発光画素は、電流スイッチトランジスタ31と、スイッチトランジスタ43及び44と、コンデンサ32及び42と、選択トランジスタ33と、有機EL素子34と、電流駆動トランジスタ41と、画素列ごとに配置されたデータ線DTと、画素行ごとに配置された走査線SCNと、制御線BLKと、初期化電源線PIと、電源線PSとを備える。
【0108】
表示部6が有する発光画素は、有機EL素子34に供給する発光電流である定電流を発生させる定電流駆動部と、当該定電流駆動部から有機EL素子34へ供給される上記定電流の電流径路を導通及び遮断する定電流スイッチ部とに大別される。
【0109】
定電流駆動部は、電流駆動トランジスタ41と、コンデンサ42と、スイッチトランジスタ43及び44とで構成される。定電流駆動部は、電流駆動トランジスタ41を飽和領域で動作させることにより、電流駆動トランジスタ41のVdsが変動しても定電流を発生し、当該定電流を定電流スイッチ部へ安定供給する。
【0110】
定電流スイッチ部は、電流スイッチトランジスタ31と、コンデンサ32と、選択トランジスタ33とで構成される。データ線DTから供給される2値のデータ電圧(オン電圧及びオフ電圧)が電流スイッチトランジスタ31のゲート端子に印加されることより、電流スイッチトランジスタ31のソース−ドレイン間は、導通状態または非導通状態となる。これにより、定電流駆動部からの定電流を有機EL素子34へ流す、または、流さないという動作がサブフィールド単位で実行され、ディジタル階調制御がなされる。ここで、電流スイッチトランジスタ31のオンオフ制御におけるスイッチング損失を低減させるため、電流スイッチトランジスタ31は、低オン抵抗である線形領域で動作させることが望ましい。一方、薄膜トランジスタを線形領域で動作させた場合、ソース−ドレイン間電圧Vdsの変動により、薄膜トランジスタのドレイン−ソース電流Idsが変動しやすいという課題がある。上記課題を解消するため、上述した定電流駆動部によりVdsが変動してもIdsが変動しない定電流が供給される。
【0111】
つまり、飽和領域で動作する電流駆動トランジスタ41を有する定電流駆動部により、電源電圧やソース電位の変動などがあっても安定して定電流を供給することができ、線形領域で動作する電流スイッチトランジスタ31を有する定電流スイッチ部により、低損失なスイッチングによるディジタル階調表示が可能となる。
【0112】
以下、発光画素の各構成要素及びそれらの接続状態を説明する。
【0113】
電源線PSは、すべての画素行に配置され、電流スイッチトランジスタ31を介して、電流駆動トランジスタ41のドレインに接続されている。
【0114】
なお、本実施の形態では、全ての発光画素に対して、同じ電源電圧V
TFTが同じタイミングで印加されるので、電源線PSは、全ての電源線が接続された共通線となっていてもよい。
【0115】
有機EL素子34は、電流駆動型の発光素子であり、アノード端子が電流駆動トランジスタ41のソース端子及びコンデンサ42の一方の電極と接続され、カソード端子が基準端子(基準電圧V
EL)に接続されている。
【0116】
電流駆動トランジスタ41は、ドレイン端子が電流スイッチトランジスタ31のソース端子に接続され、ゲート端子がコンデンサ42の他方の電極と接続され、ソース端子がコンデンサ42の一方の電極と接続され、電源線PSからの電流を駆動する。電流駆動トランジスタ41は、VdsがVgsに比べて十分大きい領域である飽和領域にて動作させることにより、Vgsに応じて、電源電圧から一定の電流を供給する定電流駆動用の薄膜トランジスタである。なお、電流駆動トランジスタ41は、上述したように、Vdsの変動を受けない安定したIdsを有機EL素子34へ供給するが、映像信号に基づく表示階調の傾向により、フレーム単位で、後述する初期化電圧Vdata2を調整することによりVgsを変化させてIdsの大きさを調整することが可能となる。これにより、全ての階調を高精度に表示することが可能となる。
【0117】
コンデンサ42は、電流駆動トランジスタ41のゲート電極及びソース電極に接続され、電流駆動トランジスタ41のゲート−ソース間電圧を保持する第1コンデンサである。
【0118】
電流スイッチトランジスタ31は、ドレイン端子が電源線PSと接続され、ゲート端子がコンデンサ32の他方の端子と接続され、ソース端子が電流駆動トランジスタ41のドレイン端子と接続され、VgsがVdsに比べて十分大きい領域である線形領域にて動作する、定電流スイッチング用の薄膜トランジスタである。電流スイッチトランジスタ31は、電流駆動トランジスタ41により駆動される定電流を有機EL素子34へ流すための電流径路を導通及び遮断する。
【0119】
コンデンサ32は、電流スイッチトランジスタ31のゲート電極とドレイン電極との間の電圧を保持する第2コンデンサである。
【0120】
選択トランジスタ33は、ドレイン端子が電流スイッチトランジスタ31のゲート端子と接続され、ゲート端子が走査線SCNと接続され、ソース端子がデータ線DTと接続され、有機EL素子34の発光を決定するデータ電圧を書き込むべき発光画素を選択する。つまり、選択トランジスタ33は、電流スイッチトランジスタ31のゲート電極とデータ線DTとの導通及び非導通を切り換える。
【0121】
スイッチトランジスタ43は、ドレイン端子がデータ線DTと接続され、ゲート端子が制御線BLKと接続され、ソース端子が電流駆動トランジスタ41のゲート端子及びコンデンサ42の他方の電極と接続された第1スイッチトランジスタであり、スイッチトランジスタ44と同期制御されることにより、コンデンサ42の両端電圧である電流駆動トランジスタ41のVgsを確定させる。
【0122】
スイッチトランジスタ44は、ドレイン端子が電流駆動トランジスタ41のソース端子及びコンデンサ42の一方の電極と接続され、ゲート端子が制御線BLKと接続され、ソース端子が初期化電源線PIと接続された第2スイッチトランジスタであり、スイッチトランジスタ43と同期制御されることにより、コンデンサ42の両端電圧である電流駆動トランジスタ41のVgsを確定させる。
【0123】
電流スイッチトランジスタ31、スイッチトランジスタ43及び44、ならびに選択トランジスタ33は、入力された映像信号に基づいてゲート−ソース間に閾値電圧以上の電圧が印加されることにより、ドレイン−ソース間を導通状態とするスイッチ素子である。
【0124】
電流駆動トランジスタ41、電流スイッチトランジスタ31、スイッチトランジスタ43及び44、ならびに選択トランジスタ33は、同一の導電型のチャネルを有する薄膜トランジスタであることが好ましく、さらには、nチャネルのMOSFETで形成されていることが望ましい。上記トランジスタが、全て、nチャネルのMOSFETで形成されることにより、n型トランジスタのみを用いて画素回路を構成できるので、アモルファスシリコンTFTを用いて安価かつ簡易的に表示パネルを製造することが可能となる。
【0125】
上記回路構成において、データ線DTがHIGHレベル(Vdata1)となり走査線SCNがHIGHレベル(V
SCN)となることで、選択トランジスタ33のゲート−ソース間に、閾値電圧よりも十分大きい信号電圧が印加される。これにより、選択トランジスタ33は線形領域で動作しドレイン−ソース間はオン抵抗の低い導通状態となる。そして、選択トランジスタ33が導通状態になった後、データ線DTから選択トランジスタ33を経由してコンデンサ32が充電される。これにより、電流スイッチトランジスタ31のゲート−ソース間に、閾値電圧よりも十分大きい電圧が印加され、電流スイッチトランジスタ31は線形領域で動作しドレイン−ソース間はオン抵抗の低い導通状態となる。このとき、電源線PS→電流スイッチトランジスタ31→電流駆動トランジスタ41→有機EL素子34の経路で上述した電流駆動トランジスタ41による定電流が流れ有機EL素子34が発光する。
【0126】
なお、
図8では、コンデンサ32が電流スイッチトランジスタ31のゲート−ドレイン間に接続されているが、電流スイッチトランジスタ31のゲート−ソース間にも寄生容量が生ずる(図示せず)。電流スイッチトランジスタ31のゲート−ソース間電圧及びゲート−ドレイン間電圧の合計がドレイン−ソース間電圧と一致する。よって、前述のドレイン−ゲート間電圧をコンデンサ32で保持することは、ゲート−ソース間電圧を保持することと等価的である。
【0127】
<表示装置の動作>
以下、
図9〜11を用いて、実施の形態2に係る表示装置の動作について述べる。
図9は、本発明の実施の形態に係る表示装置の駆動タイミングチャートである。
図9の駆動タイミングチャートは、
図5に記載された実施の形態1に係る表示装置の駆動タイミングチャートと同様に、上から順に、V42、V32、TFT41、TFT31、V33、V43、V44、制御線BLKの電圧、データ線DTの電圧、走査線SCN1の電圧、・・・、走査線SCN1080の電圧を表している。
【0128】
[初期化期間(電流源設定期間)]
定電流駆動部から供給される定電流を設定する初期化期間(電流源設定期間)における動作は、入力された映像信号に基づき、各画素の電流源となる電流駆動トランジスタ41のゲート−ソース間電圧Vgsを設定するステップである。
【0129】
まず、時刻t11〜時刻t12において、電流駆動トランジスタ41のVgsを設定するために、書き込み対象の電流駆動トランジスタ41に直列に接続されている電流スイッチトランジスタ31をオフさせる。オフさせる方法としては、
図9のように、行順次に走査線SCNに走査電圧パルスを印加し、データ線DTにオフ電圧を印加して行毎にオフさせてもよいし、全ライン一斉に走査電圧パルスを印加してもよい。また、上記走査電圧パルスの長さは、初期化期間より前の発光期間の長さに応じて変化させてもよい。
【0130】
初期化期間の準備段階として上記動作を行うことにより、電流駆動トランジスタ41のドレイン電位が電源線PSから切り離されてフローティング状態となるため、時刻t12以降での電流駆動トランジスタ41のVgsを任意に調整することが可能となる。
【0131】
次に、時刻t12において、制御線BLKに正の電圧V
BLKを印加し、スイッチトランジスタ43及び44のゲート電圧を閾値電圧以上としドレイン−ソース間の抵抗を下げオンさせる。この動作により、電流駆動トランジスタ41のVgsは、データ線DTと初期化電源線PIとの電位差により設定される。上述したように、電流駆動トランジスタ41のVgsを設定する際に、電流スイッチトランジスタ31をオフ状態としているため、電流駆動トランジスタ41のドレイン端子は切り離されている。このため、データ線DTや初期化電源線PIへの不要な電流の流入が無いので、書き込みに必要な電力を最小にすることが可能となり、低損失な表示装置が実現可能である。
【0132】
図10は、本発明の実施の形態2に係る表示装置の電流源設定動作を説明する状態遷移図である。同図は、行列間で隣接する4つの発光画素6A〜6Dの時刻t12における電気的状態を表している。なお、本実施の形態では、電源線PS、制御線BLK及び初期化電源線PIが全ての発光画素で共通化されている。これらの配線の共通化、及び、初期化電源線PIによる参照電圧V
REFの電圧値が初期化電圧Vdata2との電位差のみにより決定できることから参照電圧V
REFを低く設定できること、により駆動回路などの外部周辺回路を簡略化できる。
【0133】
時刻t12において、信号線制御回路5は、データ線DT1及びDT2に対して初期化電圧Vdata2を出力する。また、走査線制御回路4は、制御線BLKに対してHIGHレベルの選択電圧V
BLKを出力する。また、走査線制御回路4は、走査線SCNに対してLOWレベルの非選択電圧V
Lを出力する。これにより、スイッチトランジスタ43及び44が導通状態となり、電流駆動トランジスタ41のVgsは、(Vdata2−V
REF)となる。
図10において、矢印(破線)は電圧印加経路を示したものである。
【0134】
ここで、前述したように、電流駆動トランジスタ41を、安定した定電流源として動作させるためには、Vds>>VgsとなるようVgsを設定して飽和領域にて動作させる必要がある。つまり、Vdata2とV
REFとの電位差の絶対値は、電流駆動トランジスタ41のドレイン−ソース間電圧Vdsの絶対値より小さい。
【0135】
但し、時刻t12〜時刻t13の初期化期間において、スイッチトランジスタ44が導通状態であることから、初期化電源線PIからスイッチトランジスタ44を介して有機EL素子34へ電流が流れ込んで有機EL素子34が発光してしまう恐れがある。また同様に、スイッチトランジスタ43が導通状態であることから、データ線DTからスイッチトランジスタ43を介して有機EL素子34へ電流が流れ込んで有機EL素子34が発光してしまう恐れがある。これを回避するため、初期化電源線PIの参照電圧V
REF及びデータ線DTの初期化電圧Vdata2は、基準電位V
ELに有機EL素子34の順方向降下電圧を足した電圧よりも小さくなるよう設定される必要がある。この条件を確保することにより、有機EL素子34のpn接合部が逆バイアスとなり、初期化電源線PI→スイッチトランジスタ44→有機EL素子34、及び、データ線DT→スイッチトランジスタ43→有機EL素子34の経路で不要な電流は流れず、電流駆動トランジスタ41のVgsを任意に設定することが可能となる。
【0136】
ここで、有機EL表示パネルの場合を想定して具体例にて説明する。例えば、電源線PSの電源電圧V
TFTは10V、基準電圧V
ELは―2Vに設定される。また、電流駆動トランジスタ41のドレイン−ソース間電圧Vdsは5V程度、電流スイッチトランジスタ31のVdsは1V程度となる。この場合、電流駆動トランジスタ41のVgsを1V程度に設定する、つまり、初期化電圧Vdata2を3V、及び参照電圧V
REFを2Vと設定すれば、上述したように電流駆動トランジスタ41のVds>>Vgsとなる。
【0137】
上述した時刻t12における走査線制御回路4及び信号線制御回路5の動作により、定電流駆動部の設定が完了する。
【0138】
その後、時刻t12〜時刻t13の期間において、走査線制御回路4は、制御線BLKをLOWレベルとして、スイッチトランジスタ43及び44のゲート電圧を閾値電圧以下とすることにより、電流駆動トランジスタ41のVgsを保持するコンデンサ42の両電極は、データ線DT及び初期化電源線PIから電気的に切り離される。なお、このとき、スイッチトランジスタ43及び44が十分なオフ状態となるまでにデータ線DTの電圧を変動させると、電流駆動トランジスタ41のVgs電圧が変動してしまう。これを回避するため、データ線DTの電圧をVdata2から立ち下げるタイミングは、制御線BLKの立ち下がりタイミングよりも遅延させた方がよい。
【0139】
[書き込み期間(ON/OFF設定期間)]
データ電圧を、選択された発光画素へ書き込む書き込み期間(ON/OFF設定期間)における動作は、各発光画素が有する電流スイッチトランジスタ31の導通状態及び非導通状態を切り換えるステップである。このため、走査線制御回路4は、走査線SCNごとに、選択電圧V
SCNまたは非選択電圧V
Lを印加する。これにより、選択された走査線SCNが接続された画素行に属する発光画素に対して、対応するデータ線DTからのデータ電圧が印加され、電流スイッチトランジスタ31のゲート電圧が制御される。
【0140】
なお、
図9では、制御回路2による処理により、サブフィールド期間t13〜t14及び期間t15〜t16では、1行目の発光画素が発光状態であり、サブフィールド期間t14〜t15では、1行目の発光画素が非発光状態であるものと仮定している。
【0141】
まず、時刻t13〜時刻t14のサブフィールド期間において、走査線制御回路4は、走査線SCN1〜SCNmに対して、走査信号パルスを印加する。ここで、走査線SCN1に接続された1行目の発光画素について、より具体的に説明する。
【0142】
図11は、本発明の実施の形態2に係る表示装置が有する画素への書き込み動作を説明する状態遷移図である。同図は、行列間で隣接する4つの発光画素6A〜6Dの時刻t13における電気的状態を表している。
【0143】
時刻t13において、走査線制御回路4は、走査線SCN1に対して、選択トランジスタ33の閾値電圧以上となる選択電圧V
SCNを出力する。また、信号線制御回路5は、データ線DTに対し、オン電圧Vdata1を出力する。これにより、電流スイッチトランジスタ31のゲート電圧が閾値電圧以上となり電流スイッチトランジスタ31が導通状態となる。このとき、スイッチトランジスタ43のドレイン電圧も変化するが、スイッチトランジスタ43のゲート電圧が閾値電圧以下であるため、電流駆動トランジスタ41のVgsに影響は無い。
図11において、矢印(破線)は電圧印加経路を示したものであり、矢印(実線)は電流の流れを示したものである。
【0144】
なお、本実施の形態において、例えば、走査線SCN及び制御線BLKのHIGHレベルの電圧V
SCN及びV
BLKは+20Vであり、LOWレベルの電圧V
Lは−10Vに設定されている。また、前述したように、電流スイッチトランジスタ31を、スイッチング損失の小さいスイッチ素子として動作させるためには、Vgs>>VdsとなるようVgsを設定して線形領域にて動作させる必要がある。つまり、電流スイッチトランジスタ31が導通状態となる場合のデータ電圧の絶対値は、電流スイッチトランジスタ31のドレイン−ソース間電圧Vdsの絶対値より大きい。本具体例において、電流スイッチトランジスタ31のVdsが1V程度であることから、電流スイッチトランジスタ31のVgsを8V程度に設定することが望ましい。また、有機EL素子34に印加される電圧は、6V程度であり、電流駆動トランジスタ41のVdsが5Vであることから、電流スイッチトランジスタ31のソース電位は9V程度となる。上記電流スイッチトランジスタ31のVgs及びソース電位より、電流スイッチトランジスタ31に印加されるデータ電圧は、オン電圧として17V、オフ電圧として3V程度に設定すればよい。なお、この場合、オフ電圧とVdata2の電圧とを同じ電圧値に設定しているが、
図9に記載された駆動タイミングチャートのように、異なる電圧値とすることも可能であり、例えば、オフ電圧を7Vと高く設定することも可能である。すなわち、本実施の形態の係る表示装置における各設定電圧値は、上記例示電圧値に限られない。
図9に記載された駆動タイミングチャートでは、各配線の電圧の挙動を明確にするため、オフ電圧の電圧値とVdata2電圧の電圧値とが異なっている例を示している。
【0145】
次に、時刻t13〜時刻t14において、走査線SCN1の走査電圧をV
SCNからV
Lに変化させて選択トランジスタ33を非導通状態とし、電流スイッチトランジスタ31のゲート端子とデータ線DTとを電気的に切り離しても、電流スイッチトランジスタ31のゲート−ソース間に接続されたコンデンサ32により、電流スイッチトランジスタ31のVgs電位は保持される。このときのコンデンサ32の容量は、電流スイッチトランジスタ31をオンさせている最大時間幅が経過しても、電流スイッチトランジスタ31の閾値電圧以上の電位を保持できる容量以上とすることが望ましい。
【0146】
上記動作により電流スイッチトランジスタ31が導通状態となると、電源線PS→電流スイッチトランジスタ31→電流駆動トランジスタ41→有機EL素子34→基準端子の経路で電流が流れ、発光画素6A及び6Bの発光期間が開始する。発光期間は電流スイッチトランジスタ31が非導通状態になるまで継続する。
【0147】
その後、走査線SCN2、走査線SCN3、・・・、と順次走査することで、すべての発光画素に対して、所望のタイミングで電流スイッチトランジスタ31をオンさせることが可能となる。
【0148】
以上のように、時刻t13以降において、所望の発光画素に対し走査線ごとに書き込み動作を行うことで、サブフィールドごとに全ての発光画素に対して書き込み及び発光制御を行うことが可能となる。
【0149】
なお、
図9に記載された一連の表示動作では、初期化動作を一度しか行っていないが、サブフィールドごとに行ってもよい。ただし、サブフィールド間で、定電流駆動部の電流設定値を変化させる必要が無い場合は初期化動作を行う必要が無く、サブフィールド間での初期化動作を省略することにより駆動時間を大幅に短縮することが可能となる。つまり、単位表示画像を書き換える時間である1フレーム時間内に信号線制御回路5が初期化電圧Vdata2をデータ線DTに出力する回数は、1フレーム時間内に信号線制御回路5がデータ電圧(オン電圧及びオフ電圧)をデータ線DTに出力する回数よりも少ないことが好ましい。これにより、電流源としての電流駆動トランジスタの条件設定に必要な時間が短縮されるため、結果的に発光期間を長く確保することが可能となる。よって、高精細な表示パネルを提供でき、また、有機EL素子に流れる電流のピーク値を低くすることができるので、高効率な輝度制御を実行することが可能となる。
【0150】
また、サブフィールド時分割式で輝度を変調する場合、電流スイッチトランジスタ31のオン/オフ時間比率の最大値または最小値によって最大輝度と最小輝度の制約が生ずるが、電流駆動部における電流設定値を変化させることで、輝度調節範囲を広げることが可能である。具体的には、例えば、電流駆動トランジスタ41のVgsの設定値を調整することにより、輝度調節範囲を広げることが可能である。
【0151】
また、初期化動作に必要な最大時間間隔に応じて、電流駆動トランジスタ41のVgsを保持するコンデンサ42の容量を設定することにより、電流駆動トランジスタ41のVgsを所望の値に保持することが可能となる。
【0152】
以上、本実施の形態によれば、画素回路に定電流源として機能する定電流駆動部が配置されたことにより、定電流スイッチ部を構成する電流スイッチトランジスタ31は、定電流源である必要はなく、画素回路のオンオフ状態を切り換えるスイッチ機能を有していればよい。よって、例えば、電流スイッチトランジスタ31に印加するデータ電圧、つまり、ゲート−ソース間電圧Vgsを、ドレイン−ソース間電圧Vdsに対して十分大きく設定しておくことにより、薄膜トランジスタの線形領域を利用することができるので、ドレイン−ソース電流Idsのオン抵抗を小さくすることが可能となる。よって、電流スイッチトランジスタ31のドレイン−ソース間に発光電流が流れるときの電圧降下を低減でき、表示パネルの電力損失を大幅に低減することができる。
【0153】
また、本実施の形態によれば、基本的な書き込み動作及び発光動作に必要な配線の電位を変化させるドライバ回路に対し、制御線BLKの電位を変化させるドライバ動作のみが新たに必要となるだけであり、外部周辺回路の構成を簡略化できる。
【0154】
また、本実施の形態によれば、電流駆動トランジスタ41のVgsを設定するための初期化期間において、電流はデータ線DTから初期化電源線PIへと流れる。初期化電源線PIの参照電圧V
REFは、駆動信号に応じて電圧を変化させる必要は無く一定電圧とできるため、電流が流れ込むことによる損失を少なくすることが可能である。また、電流駆動トランジスタ41のVgsを設定する参照電圧V
REF及び初期化電圧Vdata2の電圧値を、電源電圧に規制されずに必要最小値に設定することが可能であるため、流れる電流値を最小に抑え、上記電流による損失を最小限にすることができる。
【0155】
以上、本発明に係る表示装置について実施に形態1及び2に基づき説明したが、本発明に係る表示装置は、上述した実施の形態1及び2に限定されるものではない。実施の形態1及び2に対して、本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0156】
なお、飽和領域を利用した定電流源である電流駆動トランジスタ21及び41のチャネル幅を、電流スイッチトランジスタ11及び31よりも広くすることが好ましい。これにより、電流駆動トランジスタ21及び41のドレイン−ソース間に発光電流が流れるときの電圧降下を低減でき、表示パネルの電力損失を低減することが可能である。
【0157】
また、上記実施の形態1及び2では、各トランジスタのゲート電圧がHIGHレベルの場合にオン状態になるn型トランジスタとして記述しているが、これらをすべてp型トランジスタで形成し、走査線の極性を反転させた表示装置でも、上述した各実施の形態と同様の効果を奏する。あるいは、n型トランジスタ及びp型トランジスタが混在した構成の表示装置であってもよい。
【0158】
また、本発明に係る実施の形態1及び2では、各トランジスタは、ゲート、ソース及びドレインを有するFETであることを前提として説明してきたが、これらのトランジスタには、ベース、コレクタ及びエミッタを有するバイポーラトランジスタが適用されてもよい。この場合にも、本発明の目的が達成され同様の効果を奏する。