(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843262
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】被覆用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 161/28 20060101AFI20151217BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20151217BHJP
C08L 61/28 20060101ALI20151217BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20151217BHJP
A47G 19/00 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
C09D161/28
C09D7/12
C08L61/28
C08K9/00
A47G19/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-11545(P2012-11545)
(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2013-147623(P2013-147623A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勝則
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘明
(72)【発明者】
【氏名】砂子 治
【審査官】
村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−171033(JP,A)
【文献】
特開2007−182524(JP,A)
【文献】
特開2001−220546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00;
101/00−201/10
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン系樹脂組成物と、内層から順にメラミン系樹脂層(A)、シリカ層(B)およびメラミン系樹脂層(C)を有する球状体とを含むことを特徴とする被覆用樹脂組成物。
【請求項2】
前記メラミン系樹脂組成物100質量部に対し、前記球状体が5〜30質量部であることを特徴とする請求項1に記載の被覆用樹脂組成物。
【請求項3】
前記球状体は、径が6〜15μmであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の被覆用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆用樹脂組成物を用いた食器類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皿、茶碗、盆等の食器類の被覆用樹脂組成物に関する。
【0002】
メラミン系樹脂成形材料は、耐熱性、耐溶剤性、および耐摩耗性に優れるため、皿、茶碗、盆等の食器類に使用されている。食器類は、色、柄模様、つや消し等の意匠性が求められる。
【0003】
メラミン系樹脂成形材料を用いた食器類に樹脂組成物を被覆して表面特性を変化させることで意匠性を改善する方法は、グレーズ法として知られている。たとえば、特許文献1は、食器類の意匠性を改善する目的で、メラミン樹脂に、グアナミン類、およびマイカ粒子及び/又はアルミナ粒子表面を酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆した被覆顔料を配合した成形被覆用組成物を開示している。
【0004】
また、メラミン系樹脂成形材料を用いた食器類は、メラミン系樹脂成形材料を用いた食器類の成形時にシボ加工した金型を用いて食器類の表面にシボを転写することで、意匠性の改善およびすべり防止のためのつや消し処理を行う方法が知られている。たとえば、特許文献2は、再生メラミン樹脂成形品の粉砕粉末を主成分として含まない使用済メラミン樹脂成形品の粉砕粉末と、再生メラミン樹脂材料を含まないメラミン樹脂材料とが混合され、黒色着色剤を含み、成形後の表面全体につや消しシボ加工し、さらにグレーズ処理した食器類を開示している。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の食器類の意匠性は、改善の余地がある。メラミン系樹脂成形材料を用いた食器類の作製時、成形時の金型表面をシボ加工し、食器類の表面にシボを転写する方法は、金型のショット数が増えるにつれ、金型が摩耗することで転写の不良が発生し食器類の意匠性が劣る不具合がある。さらに、表面を微細凹凸加工した金型の清掃は困難である。十分に清掃されず表面に汚れが付着したままの金型を成形に用いると、成形した食器類の外観は不良となる。したがって、食器類の表面にシボを転写する方法で、安定して食器類の意匠性を得ることは困難であった。
【0006】
さらに、メラミン系樹脂を含む光散乱剤を添加したグレーズを用いた食器類は、グレーズと光散乱剤との屈折率がほぼ同じであり、光が散乱しないため意匠性が劣る。一方、シリカ等を含む光散乱剤をグレーズに添加した食器類は、光は散乱するものの、光散乱剤の添加によりグレーズが白濁するため、食器類の外観は不良となる。さらに、グレーズと光散乱剤との密着が悪いと、繰り返し洗浄使用した食器類の外観は不良となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−182524号公報
【特許文献2】特開2010−195871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、食器類を繰り返し洗浄使用しても外観不良が発生せず、かつ食器類の意匠性を容易に改善できる被覆用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の被覆用樹脂組成物は、メラミン系樹脂組成物と、内層から順に、メラミン系樹脂層(A)およびシリカ層(B)を有する球状体とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の被覆用樹脂組成物の別の形態は、前記メラミン系樹脂組成物100質量部に対し、前記球状体が5〜30質量部であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の被覆用樹脂組成物の別の形態は、前記球状体は、径が6〜15μmであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の被覆用樹脂組成物の別の形態は、前記球状体は、内層から順に、メラミン系樹脂層(A)、シリカ層(B)およびメラミン系樹脂層(C)を有する球状体であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の別の形態は、前記いずれかに記載の被覆用樹脂組成物を用いた食器類である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の被覆用樹脂組成物を食器類に被覆することで、食器類の意匠性は容易に改善することができる。また、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、繰り返し洗浄使用しても外観不良が発生しない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の被覆用樹脂組成物、および前記被覆用樹脂組成物を用いた食器類について詳細に述べる。
【0016】
本発明の被覆用樹脂組成物は、メラミン系樹脂組成物を含む。本発明の被覆用樹脂組成物と、メラミン系樹脂成形材料を用いた食器類とは密着がよいため、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、繰り返し洗浄使用しても外観不良が発生しない。本発明の被覆用樹脂組成物は、特にメラミン系樹脂成形材料を用いた食器類に被覆成形することに用いられる。
【0017】
本発明においてメラミン系樹脂組成物とは、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて得られるメラミン/ホルムアルデヒド樹脂である。前記メラミン系樹脂組成物は、メラミンとホルムアルデヒドとをモル比1:1.5〜1:4.5、好ましくは1:2〜1:3の範囲で、水溶液中で反応させて初期縮合物水溶液を製造する。その際、メラミン濃度20〜60%、反応温度40〜100℃、弱酸性〜弱アルカリ性で反応させることにより、10〜100分間程度で反応は完了する。得られた初期縮合物水溶液をスプレードライ等により、固形粉末状のメラミン樹脂とする。
【0018】
メラミン樹脂に配合するグアナミン類は、例えば、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン、フェニルアセトグアナミン、CTUグアナミン等を挙げることができる。中でも耐水性や光沢等の特性から、ベンゾグアナミンは、本発明の被覆用樹脂組成物用途に好ましい。前記メラミン系樹脂組成物のメラミン樹脂へのグアナミン類の配合量は、メラミン樹脂100質量部に対してグアナミン類5〜100質量部である。グアナミン類の配合量は、5質量部未満では、耐汚染性や可撓性が悪くなるので好ましくなく、100質量部超では、表面硬度や流動性が低下し、成形性が悪くなるので好ましくない。
【0019】
本発明の被覆用樹脂組成物が含む前記球状体は、内層から順にメラミン系樹脂層(A)およびシリカ層(B)を有する球状体である。前記被覆用樹脂組成物は、このような構成であるため、前記メラミン系樹脂組成物と、前記球状体とを混合しても、被覆用樹脂組成物が白濁するなどの外観不良が起きないため好ましい。また、前記被覆用樹脂組成物は、前記メラミン系樹脂組成物と、前記球状体とが互いに密着性がよく、本発明の被覆用樹脂組成物により被覆した食器類を繰り返し洗浄使用しても外観不良が発生しないため好ましい。さらに、前記被覆用樹脂組成物は、前記メラミン系樹脂組成物と、前記球状体との比重の差が小さいため、食器類へ被覆した際に、前記メラミン系樹脂組成物と、前記球状体とが分離することがなく、略均一になり、外観が良好になるため好ましい。
【0020】
前記球状体は、コアシェル構造である。コアであるメラミン系樹脂層(A)の屈折率(nD)は約1.65 であり、シェルであるシリカ層(B)の屈折率(nD)は、約1.46である。前記球状体は、コアとシェルとの屈折率差を有するため、可視光が球状体の最外層とコア−シェル界面の両方とで反射することにより、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器は、意匠性を容易に改善できる特徴を有する。
【0021】
前記球状体は、たとえば特開2005-171033号に記載の方法に従い作製することができる。具体的には、前記球状体は、メラミン、37%ホルマリン、水性シリカゾル、硫酸ナトリウムおよび水を各所定量仕込み、条件を整えこれらを反応させた後、乾燥粉砕して得られる。
【0022】
本発明の被覆用樹脂組成物は、前記メラミン系樹脂組成物100質量部に対し、前記球状体を5〜30質量部、好ましくは15〜20質量部含むことが好ましい。前記球状体を5質量部以上含むと、本発明の被覆用樹脂組成物により被覆した食器は、意匠性をより良好に改善することができる。また、前記球状体を30質量部以下含むと、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、前記被覆用樹脂組成物と被覆される食器類との密着性をより改善することができる。さらに、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、過度に光が反射せず、つや消し効果が優れている。
【0023】
前記球状体は、径が6〜15μm、好ましくは9〜12μmであることが好ましい。前記球状体の径は、電子顕微鏡(SEM)において1つの視野に30個の球状体を含む状態で、異なる5視野において合計150個の球状体の径を直接測定し、その平均値を求めることで決定することができる。前記球状体の径が6μm以上であるため、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、意匠性がより良好に改善されている。また、前記球状体の径が15μm以下であるため、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、前記被覆用樹脂組成物と被覆される食器類との密着性をより改善することができる。さらに、本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、過度に光が反射せず、つや消し効果が優れている。
【0024】
前記球状体の径は、分散が小さいことが好ましい。前記球状体の径は、標準偏差を平均粒径で割った変動係数で10%以下であることが好ましい。
【0025】
前記球状体は、略球状である。略球状とは、たとえば、SEMにより目視で球状に近い形状が確認できることを意味する。本発明の被覆用樹脂組成物を被覆した食器類は、被覆用樹脂組成物が略球状の光散乱剤を含むため、被覆した食器の目視する位置によりつや消し効果が変化する外観不良が起きず好ましい。たとえば、不定形の光散乱剤を含む被覆用樹脂組成物を被覆成形した食器類は、目視する位置によりつや消し効果が変化する不具合がある。
【0026】
さらに、前記球状体は、内層から順にメラミン系樹脂層(A)、シリカ層(B)およびメラミン系樹脂層(C)を有する球状体であることが好ましい。前記球状体の最外層がメラミン系樹脂層(C)であれば、前記メラミン系樹脂組成物と、前記球状体との密着性がさらに改善できるため、本発明の被覆用樹脂組成物により被覆した食器類は、繰り返し洗浄使用しても外観不良が発生しない。なお、前記球状体のメラミン系樹脂層(A)およびメラミン系樹脂層(C)の組成は、同一であってもよく、また互いに異なっていてもよい。
【0027】
前記内層から順にメラミン系樹脂層(A)、シリカ層(B)およびメラミン系樹脂層(C)を有する球状体は、たとえば日産化学工業株式会社製 製品名オプトビーズなどが市販されている。
【0028】
本発明の被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、被覆表面の凹凸が小さいにも関わらず、優れたつや消し効果を示す。たとえば、成形時の金型表面をシボ加工し表面にシボを転写した食器類は、意匠性はあるが、表面に凹凸があるため、食器類の表面に汚れが残りやすいという不具合がある。また、シボ加工した食器類は、繰り返し洗浄使用することで表面の凹凸が消失し、つや消し効果が低減する不具合がある。本発明の被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、表面の凹凸が小さいため、汚れが残らず、また、永続的なつや消し効果が得られる。さらに、本発明の被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、専用の金型を用いなくても容易につや消し効果が得られる。
【0029】
本発明の被覆用樹脂組成物は、前記のメラミン系樹脂組成物、および前記球状体の他に、例えば、安息香酸、無水フタル酸、p−トルエンスルホン酸等の硬化触媒、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等の滑剤、各種染顔料、その他の添加剤を含有することができる。
【0030】
本発明の被覆用樹脂組成物は、メラミン系樹脂組成物、球状体およびその他の添加剤を均一に混合可能な任意の手段、例えば、ニーダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ロール練り、らいかい機、タンブラー等の混合機を用いて作製することができる。
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0032】
(製造例1)
メラミン(三菱化学株式会社製:油化メラミン)3000gとホルマリン3431.2g、および水880.3gを還流冷却器付きフラスコに入れ、攪拌しつつ90℃で加熱反応させて、白濁点が60℃になった時、0.3gのNaOHを導入して冷却し、メラミン樹脂初期縮合物を得た。本発明に用いる粉末状メラミン樹脂は、得られたメラミン樹脂初期縮合物をスプレードライヤー装置により約200℃で乾燥し得た。
【0033】
(実施例1)
メラミン系樹脂組成物は、製造例1で得られた粉末状メラミン樹脂350質量部、ベンゾグアナミン粉末150質量部、安息香酸9質量部、ステアリン酸亜鉛2.5質量部、およびポリエチレングリコール0.5質量部をボールミルにて8時間粉砕して内容物を充分に均一に混合することで得た。被覆用樹脂組成物は、メラミン系樹脂組成物に、内層から順にメラミン系樹脂層(A)、シリカ層(B)およびメラミン系樹脂層(C)を有する球状体である日産化学工業株式会社製 商品名「オプトビーズ10500M」を90.4質量部添加し、更に30分間ボールミルを運転することにより得た。被覆成形した食器類は、得られた被覆用樹脂組成物と、下記の条件で作製した試験片とを用いて作製することで得た。得られた食器類は別に示した方法で評価した。
【0034】
(実施例2〜5)
各実施例の被覆用樹脂組成物および被覆成形した食器類は、表1に示した組成にした以外実施例1と同様の手順で作製することで得た。さらに、各実施例の食器類は、実施例1と同様に評価した。
【0035】
(比較例1)
比較例1の被覆用樹脂組成物および被覆成形した食器類は、球状体を含まない以外実施例1と同様の手順で作製することで得た。さらに、比較例1の食器類は、実施例1と同様に評価した。
【0036】
(比較例2)
比較例2の被覆用樹脂組成物および被覆成形した食器類は、無色透明の再生メラミン樹脂を粉砕しおおよそ10〜20μmの大きさの不定形にしたものを球状体のかわりに用いた以外実施例1と同様の手順で作製することで得た。このとき用いた再生メラミン樹脂粉砕体は、アスペクト比が1.7であり、形状が不定形であることを顕微鏡で確認した。さらに、比較例2の食器類は、実施例1と同様に評価した。
【0037】
(比較例3)
比較例3の被覆成形した食器類は、成形時の金型表面をシボ加工し表面にシボを転写した試験片を用い、その表面上に比較例1で用いた被覆用樹脂組成物を被覆成形することで得た。さらに、比較例3の食器類は、実施例1と同様に評価した。
【0039】
(試験片の作製)
以下の条件により、被覆成形に供する試験片を作製した。
成形機: 45トンプレス機
金型: 汁椀
下地の成形材料:日本カーバイド工業株式会社製 商品名ニカレットMC
HE3180
金型温度(上型/下型) : 170 ℃ /170 ℃
成形圧および時間: 8.3 MPa × 120秒
【0040】
(被覆成形条件)
食器類は、上記条件にて試験片を成形後、以下の条件により、試験片上に評価する被覆用樹脂組成物を被覆成形することで作製した。
成形機: 45トンプレス機
金型: 汁椀
金型温度(上型/下型) : 170 ℃ /170 ℃
成形圧および時間: 9.8 MPa × 60秒
【0041】
実施例および比較例のそれぞれの被覆用樹脂組成物および食器類は、以下に示す方法で評価した。
【0042】
(つや消し効果と意匠性)
つや消し効果は、次の方法で光沢度を求めることで評価した。光沢度は、日本電色工業株式会社製 光沢計VG−2000を用いて、入射角20°、受光角20°、および入射角60°、受光角60°の条件でそれぞれ5点測定し、その平均値とした。つや消し効果の評価は、入射角20°、受光角20°の条件で光沢度が65以下であることが好ましい。また、意匠性の評価は、目視により、つや消し効果が明確に認められるものは「優」、「優」よりもつや消し効果は小さいがつや消し効果があるものを「可」、つや消し効果が視認できないものを「劣」とそれぞれ判定した。
【0043】
(繰り返し洗浄試験)
繰り返し洗浄性の評価は、食器類の繰り返し洗浄性の促進評価後の外観を目視判定することで行った。評価は、食器類を沸騰水中で1時間煮沸した後、80℃で1時間乾燥する工程を1サイクルとし、10サイクルの試験後の食器類表面のクラックや被覆用樹脂組成物のはがれの有無を確認することで行った。繰り返し洗浄性の評価は、外観が良好なものを「優」、「優」よりも外観は劣るが採用可能であるものを「可」、クラックやはがれにより外観不良がみられるものを「劣」とそれぞれ判定した。
【0044】
(評価)
実施例1で作製した被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、表1に示したように、入射角20°、受光角20°の条件で光沢度が26であり、いずれの方向からもつや消し効果を目視確認できる意匠性に優れたものであった。また、繰り返し洗浄性の評価結果は、10サイクルの試験後、食器類表面にクラックや被覆用樹脂組成物のはがれがなく、優れていた。また、実施例2から5でそれぞれ作製した食器類の評価結果は、表1に示したとおりであった。
【0045】
比較例1で作製した被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、入射角20°、受光角20°の条件で光沢度が87であり、いずれの方向からもつや消し効果が目視確認できず意匠性に劣るものであった。また、繰り返し洗浄性の評価結果は、10サイクルの試験後、食器類表面にクラックや被覆用樹脂組成物のはがれがなく、優れていた。
【0046】
比較例2で作製した被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、入射角20°、受光角20°の条件で光沢度が83であり、目視確認したところ、いずれの方向からも、つや消し効果が確認できず、意匠性に劣るものであった。また、比較例2で作製した被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、表面に凹凸があった。さらに、繰り返し洗浄性の評価結果は、10サイクルの試験後、食器類表面の被覆用樹脂組成物で再生メラミン粉砕体の欠落が確認でき、劣るものであった。
【0047】
比較例3で作製した被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、入射角20°、受光角20°の条件で光沢度が17であった。比較例3で作製した被覆用樹脂組成物を用いた食器類の意匠性は、光沢度が小さいにも関わらず、目視確認したところ、つや消し効果は小さく実施例1よりも劣るものであった。また、表面に凹凸があることを確認した。さらに、繰り返し洗浄性の評価結果は、10サイクルの試験後、食器類表面の被覆用樹脂組成物にクラックがあり、劣っていた。
【0048】
以上、本発明の被覆用樹脂組成物を用いることで、食器類の意匠性は容易に改善できることがわかった。さらに、本発明の被覆用樹脂組成物を用いた食器類は、繰り返し洗浄使用しても外観不良が発生しない優れた特性を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の被覆用樹脂組成物は、メラミン系樹脂成形材料を用いた食器類の表面上に被覆することで、食器類の意匠性を容易に改善することができる。