(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<(A)アルカリ剤>
本発明において用いられる(A)アルカリ剤は、油汚れの除去性を確保するため、水溶性のアルカリ剤であればいずれのものも使用できる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム等のアルカリ金属の珪酸塩、リン酸三ナトリウム等のアルカリ金属のリン酸塩、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ホウ酸ナトリウム等のアルカリ金属のホウ酸塩等が挙げられる。二種以上の水溶性アルカリ剤を組み合わせてもよい。油汚れの除去性を確保し洗浄性を高める観点から、好ましくはアルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の珪酸塩であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ珪酸ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムであり、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。
【0012】
本発明のアルカリ洗浄剤において、(A)アルカリ剤の含有量は、洗浄性及び抑泡性を確保する観点から、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。(A)アルカリ剤の含有量は、アルカリ洗浄剤の保存安定性の観点から、10重量%以下が好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、3.0重量%以下が更に好ましい。これら両者の観点から、(A)アルカリ剤の含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.1〜5.0重量%がより好ましく、0.5〜3.0重量%が更に好ましい。
【0013】
<(B)マレイン酸及び/又はシュウ酸>
鉄粉除去性を確保するために、マレイン酸及びシュウ酸から選ばれる一種以上が使用できる。本発明のアルカリ洗浄剤において、マレイン酸及びシュウ酸の含有量は、鉄粉除去性の観点から、0.01重量%以上が好ましく、0.03重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上が更に好ましく、0.15重量%以上がより更に好ましい。また、マレイン酸及びシュウ酸の含有量は、油汚れの除去性の観点から、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下が更に好ましく、0.50重量%以下がより更に好ましい。両者の観点から、マレイン酸及びシュウ酸の含有量は、0.01〜5.0重量%が好ましく、0.03〜3.0重量%がより好ましく、0.05〜1.0重量%が更に好ましく、0.15〜0.50重量%がより更に好ましい。
【0014】
<(C)非イオン性界面活性剤>
本発明の(C)非イオン性界面活性剤としては、前記一般式(1)で示される化合物及び前記一般式(2)で示される化合物から選ばれるいずれか少なくとも1種が用いられる。
【0015】
前記一般式(1)で示される化合物は、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、R
1である炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基としては、直鎖や分岐鎖が挙げられ、鉄粉除去性の観点から、直鎖が好ましい。また、R
1の脂肪族炭化水素基としては、飽和(アルキル基)及び不飽和(アルケニル基)が挙げられる。R
1の炭素数は好ましくは8〜18であり、より好ましくは10〜14である。前記一般式(1)で示される化合物の具体例としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルが挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)で示される化合物において、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基である。エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基は、付加モル数による分布を有するが、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、エチレンオキシ基の平均付加モル数nは1〜20であり、プロピレンオキシ基の平均付加モル数mは1〜20である。エチレンオキシ基の平均付加モル数nは、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、好ましくは5〜18、より好ましくは8〜16、更に好ましくは12〜16である。プロピレンオキシ基の平均付加モル数mは、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3である。また、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、エチレンオキシ基の平均付加モル数nがプロピレンオキシ基の平均付加モル数mよりも大きいことが好ましい。
【0017】
前記一般式(1)中の、{(EO)
n/(PO)
m}は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の配列に制限はなく、ブロック体でも、ランダム体でもよいことを示す。油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、ブロック体が好ましく、なかでも、−(EO)
n1−(PO)
m−(EO)
n2−(但し、n1+n2=n)の3段ブロック体がより好ましい。
【0018】
前記一般式(2)で示される化合物は、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、R
2は炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基であり、直鎖や分岐鎖が挙げられ、鉄粉除去性の観点から、直鎖が好ましい。また、R
2の脂肪族炭化水素基としては、飽和(アルキル基)及び不飽和(アルケニル基)が挙げられる。R
2の炭素数は好ましくは14〜22、より好ましくは16〜18である。前記一般式(2)で示される化合物の具体例としてはポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルケニルアミンが挙げられる。
【0019】
前記一般式(2)で示される化合物において、EOはエチレンオキシ基であり、付加モル数による分布を有するが、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、エチレンオキシ基の平均付加モル数pは1〜20、であり、好ましくは5〜12である。また、一般式(2)において、R
3は−Hまたは−(EO)
q−H、であるが、p及びqは合計で1〜20であり、好ましくは5〜12である。R
3が−(EO)
q−Hの場合には、p、qはそれぞれ1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。p及びqは同じであっても異なってもよい。
【0020】
本発明のアルカリ洗浄剤において、(C)前記一般式(1)で示される化合物及び前記一般式(2)で示される化合物から選ばれるいずれか少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の含有量(併用する場合はその合計含有量)は、油の洗浄性及び鉄粉除去性を確保する観点から、0.01重量%以上が好ましく、0.02重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上が更に好ましい。また、前記非イオン性界面活性剤の含有量は、抑泡性の観点から、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下が更に好ましく、0.5重量%以下がより更に好ましい。両者の観点から、前記非イオン性界面活性剤の含有量は、0.01〜5.0重量%が好ましく、0.01〜3.0重量%がより好ましく、0.02〜1.0重量%が更に好ましく、0.1〜0.5重量%がより更に好ましい。
【0021】
また、本発明のアルカリ洗浄剤において、(B)マレイン酸及び/又はシュウ酸と、(C)前記一般式(1)で示される化合物及び前記一般式(2)で示される化合物から選ばれるいずれか少なくとも1種の非イオン性界面活性剤の各含有量の重量比〔(B)/(C)〕は、油の洗浄性及び鉄粉除去性を確保する観点から、0.1〜20が好ましく、0.3〜15がより好ましく、0.4〜10が更に好ましく、0.5〜8がより更に好ましい。
【0022】
<(D)キレート剤>
本発明において用いられるキレート剤(D)は、鉄石けん等の汚れに作用して鉄イオン等をキレートし、脂肪酸ナトリウム石けんにして汚れを溶解し易くして、油の洗浄性を向上させると考えられている。キレート剤(D)としては、グルコン酸、グルコヘプトン酸、グリセリン酸、テトロン酸、ペントン酸、ヘキソン酸、ヘプトン酸等のアルドン酸又はそのアルカリ金属塩若しくは炭素数1〜4の低級アミン塩;ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、テトラエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸のアルカリ金属塩若しくは低級アミン塩;クエン酸、リンゴ酸等又はそのオキシカルボン酸のアルカリ金属塩若しくは低級アミン塩;アミノトリメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等のホスホン酸又はそのアルカリ金属塩若しくは低級アミン塩;その他、前記のモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。これらキレート剤(D)としては、アルドン酸又はその塩が好ましく、アルカリ金属塩又は低級アミン塩が好ましい。なかでも、油の洗浄性の観点から、グルコン酸、グルコヘプトン酸のアルカリ金属塩若しくは低級アミン塩が好ましく、グルコン酸ナトリウムがより好ましい。キレート剤(D)は少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができるが、油の洗浄性の観点から、2種以上を組み合わせることが好ましく、アルドン酸又はその塩と、エチレンジアミン四酢酸等のアミノカルボン酸のアルカリ金属塩を組み合わせるのが好ましく、グルコン酸ナトリウムとエチレンジアミン四酢酸ナトリウムの組み合わせがより好ましい。本発明ではマレイン酸及びシュウ酸は(B)成分であり、キレート剤(D)には該当しないとする。
【0023】
本発明のアルカリ洗浄剤において、キレート剤(D)の含有量は、油の洗浄性及び鉄粉除去性を確保とその効果の向上度の観点から、0.01〜10重量%が好ましく、0.01〜5.0重量%がより好ましく、0.05〜1.0重量%が更に好ましい。また、アルドン酸又はその塩と、エチレンジアミン四酢酸等のアミノカルボン酸のアルカリ金属塩を組み合わせる場合には、油の洗浄性の観点から、アルドン酸又はその塩を、エチレンジアミン四酢酸等のアミノカルボン酸のアルカリ金属塩より多く含有させることが好ましい。
【0024】
本発明の鋼板用洗浄剤は、(A)アルカリ剤、(B)マレイン酸及び/又はシュウ酸、(C)前記一般式(1)で示される化合物及び前記一般式(2)で示される化合物から選ばれるいずれか少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及び(D)キレート剤に、更に水を配合することにより調製される水系組成物である。当該水系組成物は、油の洗浄性を確保する観点からpHが好ましくは12以上であり、より好ましくはpHが13以上、更に好ましくはpHが14以上になるように調整される。pHはアルカリ剤(A)の種類及び量より調整することができる。なお、本発明の鋼板用洗浄剤には、前記成分の他に、任意の添加剤を加えることができるが、当該添加剤は、(A)アルカリ剤によりpHを有効に調整できるように、pHへの緩衝作用の小さいものが好ましい。
【0025】
また、本発明の鋼板用洗浄剤における(A)アルカリ剤、(B)マレイン酸及び/又はシュウ酸、(C)前記一般式(1)で示される化合物及び前記一般式(2)で示される化合物から選ばれるいずれか少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及び(D)キレート剤の合計の含有量は、油の洗浄性及び鉄粉除去性を確保とその効果の向上度の観点と保存安定性の観点から、0.1〜25重量%が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。
【0026】
本発明の鋼板用洗浄剤において、前記(A)乃至(D)成分以外の成分として、水が挙げられる。本発明の鋼板用洗浄剤が、前記(A)乃至(D)成分以外の成分を含まない場合には、鋼板用洗浄剤中の水の含有量は、前記成分の残部である。前記水としては、水道水、工業用水、脱イオン水が挙げられ、脱イオン水が好ましい。水により、鋼板用洗浄剤(水系組成物)中の濃度を制御できる。また、本発明の鋼板用洗浄剤は、前記(A)乃至(D)成分を含有し、水の含有量が少ない濃縮された組成物を、使用時に水で希釈により各成分の濃度を調製して用いることができる。前記(A)乃至(D)成分、水以外の成分のその他の成分としては、消泡剤、ポリアクリル酸等の分散剤、増粘剤等が挙げられる。これらのその他の成分の含有量は水の一部として置き換えることができる。
【0027】
本発明の鋼板用洗浄剤の調製方法は、特に制限されないが、例えば、(D)キレート剤を水へ溶解させる観点から、容器に(D)キレート剤と水を混合し完全に(D)キレート剤が溶解するまで攪拌して混合液を調製する。前記攪拌は、混合液が均一に混ざり合えばどのような攪拌でもよい。次いで、(D)キレート剤を含んだ混合液に(A)アルカリ剤を配合し攪拌した混合液に、さらに(C)前記一般式(1)で示される化合物及び前記一般式(2)で示される化合物から選ばれるいずれか少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と(B)マレイン酸、シュウ酸又はクエン酸を配合する調整方法をとることが挙げられる。
【0028】
本発明の鋼板用洗浄剤は、油汚れ及び鉄粉などの固体汚れが付着した鋼板から、汚れを洗浄して除去する洗浄剤として用いられる。
【0029】
本発明の鋼板用洗浄剤は、例えば、鋼板を圧延油の存在下で冷間圧延する工程と、圧延された鋼板に付着する圧延油を洗浄剤により洗浄する工程を含む冷間圧延鋼板の製造方法における、前記洗浄工程において、アルカリ洗浄剤として用いることができる。即ち、前記冷間圧延鋼板の製造方法の前記洗浄工程において、アルカリ洗浄剤として本発明の鋼板用洗浄剤を用いること以外は、従来と同様の方法を採用することができる。
【0030】
前記冷間圧延する工程は、製鉄所等において鋼板を圧延油の存在下で冷間圧延する加工処理工程である。この圧延工程では、高温の鋼板にロールによって高い圧力がかけられるため鋼板上に鉄粉が発生する。
【0031】
本発明の鋼板用洗浄剤が対象とする好ましい鋼板としては、例えば、パーム油を含有する合成エステル系圧延油で冷間圧延された鋼板が挙げられる。
【0032】
本発明の鋼板用洗浄剤が対象とする洗浄工程は、連続洗浄、即ち浸漬洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、電解洗浄等が挙げられ、圧延油等の油汚れ及び鉄粉などの固体汚れを洗浄除去することができる。本発明の鋼板用洗浄剤は、洗浄工程が浸漬ならびに電解洗浄であることが好ましく、圧延された鋼板を、アルカリ浸漬洗浄槽ならびにアルカリ電解洗浄槽内にロールにより通過させる場合に好適に適用される。
【0033】
電解洗浄は洗浄液中で鋼板をプラス(又はマイナス)にし、直流電流を流す洗浄方法であり、電流により鋼板から発生する酸素(又は水素)の気泡を利用し、物理力により鋼板に付着した油汚れや鉄粉などの固体汚れを取る工程である。本発明の鋼板用洗浄剤を用いた電解洗浄は、本発明の鋼板用洗浄剤に鋼板を浸漬して行い、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、鋼板用洗浄剤のpHが12以上で行うことが好ましく、13以上がより好ましく、14以上が更に好ましい。温度は、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、30〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。電解洗浄時の電流密度は、0.5〜30A/dm
2が好ましく、1〜20A/dm
2がより好ましい。
【0034】
洗浄工程の後には、リンス工程を行うことができる。リンス工程における温度や浸漬時間の条件は適宜調整することができる。温度は、油の洗浄性及び鉄粉除去性の観点から、5〜95℃が好ましく、15〜90℃がより好ましい。浸漬時間は0.1〜15秒が好ましく、0.5〜10秒がより好ましい。
【0035】
洗浄後に得られる鋼板は自動車用鋼板や缶詰などの飲料用鋼板、家電用鋼板など様々な用途に用いることができる。洗浄後の鋼板表面の鉄粉などの固体汚れの付着量は、鋼板の用途により異なるが、洗浄前の鋼板の鉄粉付着重量を100%とした時、洗浄後に14%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0036】
実施例1〜15及び比較例1〜7
<洗浄剤の調製>
洗浄剤は、表1及び2に示した配合量で全て以下の手順で300g調製した。表1、2の配合量は重量%である。
1. 300mlのビーカーに(D)キレート剤と水を混合攪拌して混合液を得た。
2. 1.で得られた混合液に(A)アルカリ剤を配合して、攪拌した。
3. 2.で得られた混合液に(C)非イオン性解明活性剤と、(B)多価カルボン酸として、マレイン酸、シュウ酸、又はクエン酸を配合し、攪拌して洗浄剤を得た。
【0037】
<鋼板洗浄試験>
(1)被洗浄鋼板
被洗浄鋼板は全て以下の手順で調整した。即ち、パーム油を含有する合成エステル系圧延油で冷間圧延された厚さ0.8mmの鋼板を、70mm×100mmの大きさに切断したものを洗浄試験に用いた。鉄粉付着量を測定した結果、230mg/m
2であった。なお、鉄粉付着量を測定は、下記(3)残存鉄粉付着量測定方法と同じである。なお、洗浄剤1種に対して、9枚の被洗浄鋼板を用いた。
【0038】
(2)洗浄試験手順
洗浄試験は全て以下の手順で行った。即ち、300mlビーカー中に洗浄剤300gを入れた後に、洗浄剤を60℃に加温した。次いで、前記洗浄剤中に縦160mm×横80mmの大きさの鉄製電極板1対(電極間距離は50mm)を設置した。電極間の等距離かつ中心に被洗浄鋼板をほぼ平行に1秒間浸漬し、その後続けて電流密度5A/dm
2で鋼板電位を負から正にそれぞれ0.5秒ずつ一度切り替えて電解洗浄した。その後、ブラシ洗浄機(昭和工業社製)に鋼板をセットし回転するブラシ(150mpm)(素材:ナイロン,ナイロン線径:0.5mm・0.02mm混合,大きさ:幅120mm,直径300mm)にスプレーで60℃の温水を吹きかけながら回転方向とは逆向きに鋼板を50m/分で(速度管理可能なテーブルに鋼板を固定し)走らせてブラシ洗浄し、その後に鋼板を60℃の温水で5秒間浸漬リンスした後に乾燥した。
【0039】
(3)残存鉄粉付着量測定方法
洗浄試験後の鋼板表面鉄粉量は、溶剤(n−ヘキサン)を含ませたペーパー(日本製紙クレシア株式会社製,キムワイプ120mm×215mm)により鋼板表面を、ピンセットを用いて拭き取り、拭き取り後のペーパーを酸分解した。酸分解は、被洗浄鋼板3枚それぞれを拭き取ったペーパー3枚を1サンプルとして、硫酸と熱(液温が120℃以上になるように加温)により有機物を灰化・燃焼蒸発させた。残留物(金属分)に塩酸を加え塩化物溶液とした。酸分解で得られた塩化物溶液をICPで鉄濃度として定量した。その濃度を鋼板拭き取り面積当たりに換算し、3サンプルの平均値を鉄粉付着量とした。結果を表1に示す。表1には、被洗浄鋼板の鉄粉付着量に対する残存鉄粉付着量の割合(%)を併せて示す。洗浄性の判断基準としては、残存鉄粉付着量は値が高い程、鋼板表面に鉄粉が残るために洗浄性が悪く、その反対に値が小さい程、鋼板表面に鉄粉が残っておらず洗浄性が優れることとなる。
【0040】
ICPの測定条件は、PerkinElmer社製のOptiam5300DVを使用し、プラズマ出力1300W、プラズマガス15L/min、キャリヤーガス(アルゴン)0.7L/min、補助ガス0.2L/min、測定波長(Fe)238.204nmで行なった。
【0041】
【表1】
【0042】
表1中、(C)非イオン性界面活性剤のなかの、非イオン性界面活性剤5は本発明の一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルに含まれないが、便宜上、(C)成分欄に記載した。また、クエン酸は本発明の(B)成分に含まれないが、便宜上、(B)多価カルボン酸として記載した。
【0043】
(C)非イオン性界面活性剤のなかの、非イオン性界面活性剤1乃至3、5は詳細には下記の構造の非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤4は、下記商品を用いた。
非イオン性界面活性剤1:C
6H
13(C
6H
13)CH-O-(EO)
5-(PO)
2-(EO)
5-H;(下記製造例1に従い製造)(一般式(1)において、R
1=炭素数11のアルキル基、n=10、m=2、3段ブロック体);
非イオン性界面活性剤2:C
12H
25,C
14H
29-O-(EO)
7-(PO)
1.5-(EO)
7-H、但し、C
12H
25,C
14H
29-はC
12H
25-とC
14H
29-の混合物を示す;(下記製造例2に従い製造)(一般式(1)において、R
1=炭素数12と14のアルキル基の混合物、n=14、m=1.5、3段ブロック体);
非イオン性界面活性剤3:C
10H
21-O-(EO)
8-(PO)
4-H;(下記製造例3に従い製造)(一般式(1)において、R
1=炭素数10のアルキル基、n=8、m=4、2段ブロック体);
非イオン性界面活性剤4:ポリオキシエチレンオレイルアミン〔平均付加モル数9モル〕(商品名 ブラウノンO−209、青木油脂工業(株)製)(一般式(2)において、R
2=炭素数18のアルケニル基、R
3=(EO)q−H、p+q=9);
非イオン性界面活性剤5:C
12H
25-O-(EO)
9-H;(下記製造例4に従い製造)(一般式(1)において、R
1=炭素数12のアルキル基、n=9、m=0);を示す。
【0044】
製造例1(非イオン性界面活性剤1の製造例)
オートクレーブに7−トリデカノール200.4g(1モル)及びKOH(触媒)0.30g(0.4重量%)を仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、7−トリデカノールを攪拌しながらオートクレーブ内の温度を130℃に昇温した。エチレンオキサイド220g(5モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまで7−トリデカノールとエチレンオキサイドとを反応させた後、オートクレーブ内の温度を120℃まで下げた。次いで、プロピレンオキサイド116g(2モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入した。前記圧力が低下して一定になるまでとプロピレンオキサイドを反応させた後、オートクレーブ内の温度を130℃まで昇温した。エチレンオキサイド220g(5モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまでエチレンオキサイドを反応させた後、オートクレーブ内の温度を室温まで低下させて、非イオン活性剤1を約750g得た。
【0045】
製造例2(非イオン性界面活性剤2の製造例)
オートクレーブにn−ドデカノール93.2g(0.5モル)、n−テトラデカノール107.2g(0.5モル)、及びKOH(触媒)0.30g(0.4重量%)を仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、n−ドデカノールとn−テトラデカノールを攪拌しながらオートクレーブ内の温度を130℃に昇温した。エチレンオキサイド308g(7モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまでn−ドデカノールとn−テトラデカノールとエチレンオキサイドとを反応させた後、オートクレーブ内の温度を120℃まで下げた。次いで、プロピレンオキサイド87g(1.5モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入した。前記圧力が低下して一定になるまでプロピレンオキサイドを反応させた後、オートクレーブ内の温度を130℃まで昇温した。エチレンオキサイド308g(7モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまでエチレンオキサイドを反応させた後、オートクレーブ内の温度を室温まで低下させて、非イオン性界面活性剤2を約900g得た。
【0046】
製造例3(非イオン性界面活性剤3の製造例)
オートクレーブにn−デカノール158.2g(1モル)及びKOH(触媒)0.30g(0.4重量%)を仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、n−デカノールを攪拌しながらオートクレーブ内の温度を130℃に昇温した。エチレンオキサイド352g(8モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまでn−デカノールとエチレンオキサイドとを反応させた後、オートクレーブ内の温度を120℃まで下げた。次いで、プロピレンオキサイド232g(4モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入した。前記圧力が低下して一定になるまでプロピレンオキサイドを反応させた後、オートクレーブ内の温度を室温まで低下させて、非イオン性界面活性剤3を約740g得た。
【0047】
製造例4(非イオン性界面活性剤5の製造例)
オートクレーブにn−ドデカノール186.4g(1モル)及びKOH(触媒)0.30g(0.4重量%)を仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、n−ドデカノールを攪拌しながらオートクレーブ内の温度を130℃に昇温した。エチレンオキサイド396g(9モル)を3.5kg/cm
2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまでn−ドデカノールとエチレンオキサイドとを反応させた後、オートクレーブ内の温度を室温まで低下させて、非イオン性界面活性剤5を約580g得た。
【0048】
表1の結果から、本発明の洗浄剤組成物は、比較例に比べ、鋼板表面に付着している鉄粉に対する良好な洗浄性を有していることが確認された。表1からマレイン酸やシュウ酸を配合することで、鉄粉除去性が向上することがわかる。具体的には、実施例1〜4及び実施例8〜10と比較例1〜3とを対比、さらに実施例11及び実施例12と比較例4、実施例13及び実施例14と比較例5、実施例15と比較例6とを対比することで、同じ(C)非イオン界面活性剤を用いている条件にて、マレイン酸又はシュウ酸を含有することにより鉄粉除去性が向上することがわかる。また、実施例2及び実施例11〜15と比較例7を対比することにより、マレイン酸又はシュウ酸の鉄粉除去性は、特定の(C)非イオン性界面活性剤を配合することにより発現することがわかる。また、実施例及び比較例のいずれのサンプルにおいても目視観察で油が洗浄されていることを確認した。