(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高解像力の撮像レンズ系を実現するためには、撮像レンズ系を構成するレンズ枚数を単純に増加させることが最も簡便である。レンズ枚数の増加に伴い、撮像レンズ系のコストは上昇してしまうが、撮像レンズ系の製造が複雑化してしまうことを抑制することができる。しかしながら、レンズ枚数を単純に増加させると、撮像レンズ系が大型化してしまうため、高解像力を具備するとしても小型化の要請を満足することはなく、結局、解像力/小型化をある程度犠牲とせざるを得なくなる。
【0007】
このように、撮像レンズ系の大型化を抑制する態様にて撮像レンズ系に対して高解像力を具備させることが強く要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像レンズ系は、少なくとも、物体側に凸状の第1レンズを含む第1レンズ群、結像側に凹状の第2レンズを含む第2レンズ群、物体側に凹面が配されたメニスカス形状の第3レンズを含む第3レンズ群、物体側に凹面が配されたメニスカス形状の第4レンズを含む第4レンズ群、及び物体側に変曲点を有する非球面が配されたメニスカス形状の第5レンズを含む第5レンズ群が物体側からこの順に配置された撮像レンズ系であって、前記第5レンズは、光軸を含む平面において当該第5レンズを断面視したとき、当該第5レンズの中心から当該第5レンズの外周方向へ離間する方向において当該第5レンズの輪郭線の延在方向が最初に変化する第1及び第2変曲点夫々を物体側の物体側面及び結像側の結像側面夫々に有する非球面レンズである。ここに、当該撮像レンズ系の焦点距離をf、前記光軸からの前記第1変曲点の高さをi1、前記光軸からの前記第2変曲点の高さをi2としたとき、i1/f<0.20を満足し、かつi2/f<0.26を満足する、と良い。また、本発明に係る撮像レンズ系は、正のパワーを有する第1レンズ、負のパワーを有する第2レンズ、正のパワーを有する第3レンズ、負のパワーを有する第4レンズ、及び物体側に変曲点を有する非球面が配されたメニスカス形状の第5レンズが物体側からこの順に配置された撮像レンズ系であって、前記第5レンズは、光軸を含む平面において当該第5レンズを断面視したとき、当該第5レンズの中心から当該第5レンズの外周方向へ離間する方向において、物体側面に第1変曲点、結像側面に第2変曲点を有し、結像側へのサグ量を正の値とし物体側へのサグ量を負の値とする条件を前提とし、前記物体側面上の光軸位置から前記第1変曲点までのサグ量をSL1とし、前記第1変曲点から前記物体側面の有効径位置までのサグ量をSH1とし、前記結像側面上の光軸位置から前記第2変曲点までのサグ量をSL2とし、前記第2変曲点から前記結像側面の有効径位置までのサグ量をSH2としたとき、SL1及びSL2は正の値であり、SH1及びSH2は負の値であり、|SH1/SL1|>2、かつ|SH2/SL2|>2.5を満足する、と良い。
【0009】
前記物体側面を構成する前記輪郭線は、前記第1変曲点から前記第5レンズの外周方向へ延在するに応じて物体側へ近づき、かつ前記結像側面を構成する前記輪郭線は、前記第2変曲点から前記第5レンズの外周方向へ延在するに応じて物体側へ近づく、と良い。
【0010】
結像側へのサグ量を正の値とし物体側へのサグ量を負の値とする条件を前提とし、前記物体側面上の光軸位置から前記第1変曲点までのサグ量をSL1とし、前記第1変曲点から前記物体側面の有効径位置までのサグ量をSH1とし、前記結像側面上の光軸位置から前記第2変曲点までのサグ量をSL2とし、前記第2変曲点から前記結像側面の有効径位置までのサグ量をSH2としたとき、SL1及びSL2は正の値であり、SH1及びSH2は負の値である、と良い。
【0011】
|SH1/SL1|>2を満足し、かつ|SH2/SL2|>2.5を満足する、と良い。
【0012】
前記第2変曲点は、前記第1変曲点よりも前記第5レンズの外周側に位置する、と良い。
【0013】
当該撮像レンズ系の焦点距離をf、前記第1レンズの焦点距離をf1としたとき、0.45<f1/f<0.60を満足する、と良い。
【0014】
当該撮像レンズ系の焦点距離をf、前記第2レンズの焦点距離をf2としたとき、−0.75<f1/f2<−0.60を満足する、と良い。
【0015】
当該撮像レンズ系の焦点距離をf、前記第3レンズの焦点距離をf3としたとき、1.50<f3/f<3.50を満足する、と良い。
【0016】
前記第1レンズは正のパワーを有し、前記第2レンズは負のパワーを有し、前記第3レンズは正のパワーを有し、前記第4レンズは負のパワーを有し、かつ前記第5レンズは、正又は負のパワーを有する、と良い。
【0017】
前記第5レンズは、当該撮像レンズ系に含まれるレンズの中で最もレンズ径が大きくなると良い。前記第3乃至第5レンズは、この順で、レンズ径が大きくなる、と良い。前記第1レンズ群は、複数のレンズから構成される、と良い。また、本発明に係るカメラモジュールは、上述の撮像レンズ系と、前記複数のレンズを介して結像された像を撮像するイメージセンサと、を有する、と良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撮像レンズ系の大型化を抑制する態様にて撮像レンズ系に対して高解像力を具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る撮像レンズ系に含まれるレンズの概略的な構成模式図である。
【
図3】本発明の第1実施例に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図4】本発明の第1実施例に係る撮像レンズ系の諸条件を示す表である。
【
図5】本発明の第1実施例に係る非球面レンズの非球面係数を示す表である。
【
図6】本発明の第1実施例に係る撮像レンズ系の横収差を示す収差図である。
【
図7】本発明の第1実施例に係る撮像レンズ系の球面収差を示す収差図である。
【
図8】本発明の第1実施例に係る撮像レンズ系の像面湾曲、歪曲を示す特性図である。
【
図9】本発明の第1実施例に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図10】本発明の第2実施例に係る撮像レンズ系の諸条件を示す表である。
【
図11】本発明の第2実施例に係る非球面レンズの非球面係数を示す表である。
【
図12】本発明の第2実施例に係る撮像レンズ系の横収差を示す収差図である。
【
図13】本発明の第2実施例に係る撮像レンズ系の球面収差を示す収差図である。
【
図14】本発明の第2実施例に係る撮像レンズ系の像面湾曲、歪曲を示す特性図である。
【
図15】本発明の第3実施例に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図16】本発明の第3実施例に係る撮像レンズ系の諸条件を示す表である。
【
図17】本発明の第3実施例に係る非球面レンズの非球面係数を示す表である。
【
図18】本発明の第3実施例に係る撮像レンズ系の横収差を示す収差図である。
【
図19】本発明の第3実施例に係る撮像レンズ系の球面収差を示す収差図である。
【
図20】本発明の第3実施例に係る撮像レンズ系の像面湾曲、歪曲を示す特性図である。
【
図21】本発明の第4実施例に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図22】本発明の第4実施例に係る撮像レンズ系の諸条件を示す表である。
【
図23】本発明の第4実施例に係る非球面レンズの非球面係数を示す表である。
【
図24】本発明の第4実施例に係る撮像レンズ系の横収差を示す収差図である。
【
図25】本発明の第4実施例に係る撮像レンズ系の球面収差を示す収差図である。
【
図26】本発明の第4実施例に係る撮像レンズ系の像面湾曲、歪曲を示す特性図である。
【
図27】本発明の比較例に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図28】本発明の第5実施例に係るカメラモジュールの概略的な構成模式図である。
【
図29】本発明の第5実施例に係る撮像レンズ系の諸条件を示す表である。
【
図30】本発明の第5実施例に係る非球面レンズの非球面係数を示す表である。
【
図31】本発明の第5実施例に係る撮像レンズ系の横収差を示す収差図である。
【
図32】本発明の第5実施例に係る撮像レンズ系の球面収差を示す収差図である。
【
図33】本発明の第5実施例に係る撮像レンズ系の像面湾曲、歪曲を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。
【0021】
[第1実施形態]
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0022】
図1に示すように、カメラモジュール(画像取得装置)100は、絞り部材50、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4、レンズ5、透明基板10、及びイメージセンサ(撮像素子)20を有する。
【0023】
絞り部材50、レンズ1、レンズ2、レンズ3、レンズ4、レンズ5、透明基板10、及びイメージセンサ20は、光軸AXに沿って、この順で配置されている。レンズ1〜レンズ5は、レンズホルダ(不図示)に対して固定されており、互いに隣り合うレンズ間には空間(空気層)が設けられている。つまり、レンズ1〜レンズ5は、互いに離間して配置され、一方が他方のレンズに対して接合等により固着(一体化)されていない。
【0024】
物体側から到来する光束は、絞り部材50の開口OP50、レンズ1〜5、及び透明基板10を介して、イメージセンサ20の撮像面25に到達する。イメージセンサ20の撮像面25には、zy平面にてマトリクス状に複数の画素が配置されている。各画素は、入力光を光電変換し、入力光の強度に応じて電荷量の電荷を蓄積/生成する。各画素で蓄積/生成された電荷を各画素からリードし、リードしたアナログ値をデジタル値に変換することによって、イメージセンサ20の撮像面25上に結像された光像は画像データに変換される。
【0025】
絞り部材50は、光軸AXに対応する位置に開口OP50を有する。絞り部材50は、例えば、黒色樹脂が成型された輪状部材である。
【0026】
レンズ1は、第1レンズ群を構成する非球面レンズである。レンズ1は、物体側に凸状のレンズ面を有する。レンズ1は、正のパワーを有する。レンズ1は、例えば、ガラス、プラスチック等の材料の成型により製造される。
【0027】
レンズ2は、第2レンズ群を構成する非球面レンズである。レンズ2は、結像側に凹状のレンズ面を有する。レンズ2は、負のパワーを有する。レンズ2は、例えば、ガラス、プラスチック等の材料の成型により製造される。
【0028】
レンズ3は、第3レンズ群を構成する非球面レンズである。レンズ3は、物体側に凹状のレンズ面を有し、結像側に凸状のレンズ面を有する。つまり、レンズ3は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズである。レンズ3は、正のパワーを有する。レンズ3は、例えば、ガラス、プラスチック等の材料の成型により製造される。
【0029】
レンズ4は、第4レンズ群を構成する非球面レンズである。レンズ4は、物体側に凹状のレンズ面を有し、結像側に凸状のレンズ面を有する。つまり、レンズ4は、物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズである。レンズ4は、負のパワーを有する。レンズ4は、例えば、ガラス、プラスチック等の材料の成型により製造される。
【0030】
レンズ5は、第5レンズ群を構成する非球面レンズである。レンズ5は、物体側に凸状のレンズ面5aを有し、結像側に凹状のレンズ面5bを有する。つまり、レンズ5は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズである。換言すれば、レンズ5は、物体側に変曲点を有する非球面が配されたメニスカス形状のレンズである。なお、レンズ面5aは、光軸AXに対応する位置において凸状であるが、全体としては凹状のレンズ面を有する。また、レンズ面5bは、全体としては凸状のレンズ面であるが、光軸AXに対応する位置に凹状のレンズ面を有する。レンズ5は、正又は負のパワーを有する。レンズ5は、例
えば、ガラス、プラスチック等の材料の成型により製造される。なお、一般的には、上型と下型とを積層し、上型と下型間に形成される空間内に樹脂又はガラスを充填し、これらを冷却することによって、個々のレンズは一括して製造される。
【0031】
図1に模式的に示すように、光軸AXを含む平面(光軸AXに対して平行、かつ光軸AXを含む平面)においてレンズ5を断面視すると、レンズ5は、変曲点5p、変曲点5qを有し、かつ中心点5r、中心点5sを有する。変曲点5pは、光軸AXに平行な軸線とレンズ面5aとの交点に対応する。変曲点5qは、光軸AXに平行な軸線x4とレンズ面5bとの交点に対応する。中心点5rは、光軸AXとレンズ面5aとの交点に対応する。
中心点5sは、光軸AXとレンズ面5bとの交点に対応する。
【0032】
変曲点は、光軸AXからレンズの外周方向へ延在するレンズの輪郭線が方向変換する位置にある。換言すると、変曲点は、レンズの輪郭線の曲がる方向が変化する位置にある。
輪郭線は、光軸AXを含む平面において、レンズを断面視したときに現われる。
【0033】
輪郭線は、次のように延在する。レンズ5のレンズ面5aを構成する輪郭線は、中心点5rを始点として上側(外周側)へ延在する。まず、輪郭線は、中心点5rから変曲点5pへ結像側に近づきながら延在する。次に、輪郭線は、変曲点5pから上側へ物体側に近づきながら延在する。下側(外周側)についても同様の説明があてはまる。
【0034】
レンズ5のレンズ面5bを構成する輪郭線は、中心点5sを始点として上側(外周側)へ延在する。まず、輪郭線は、中心点5sから変曲点5qへ結像側へ近づきながら延在する。次に、輪郭線は、変曲点5qから上側へ物体側へ近づきながら延在する。下側(外周側)についても同様の説明があてはまる。
【0035】
変曲点5pは、変曲点5qよりも光軸AX側に位置する。変曲点5qは、変曲点5pよりもレンズ5の外周側に位置する。換言すると、光軸AXからの変曲点5pの高さi1は、光軸AXからの変曲点5qの高さi2よりも小さい。このように変曲点の位置を設定することによって、所望のレンズ特性を維持しつつ、レンズ5の大きさを効果的に小さくすることが可能になる。
【0036】
なお、変曲点5pの高さi1は、光軸AXと軸線x2間の距離(軸線x1の長さ)に対応する。同様に、変曲点5qの高さi2は、光軸AXと軸線x4間の距離(軸線x3の長さ)に対応する。軸線x1は、光軸AXの垂線であり、軸線x2との交点まで延在する。軸線x3は、光軸AXの垂線であり、軸線x4との交点まで延在する。
【0037】
図1を正面視して光軸AXの下半分の部分にある変曲点については、変曲点5p、5qと同様の説明があてはまるため、重複する説明は省略する。
【0038】
本実施形態では、
図1に模式的に示すように、レンズ1〜レンズ5の全系の焦点距離をfとし、光軸AXからの変曲点5pまでの高さをi1とし、光軸AXからの変曲点5qまでの高さをi2としたとき、次の条件式(1)、条件式(2)を満足する。
i1/f<0.20 (1)
i2/f<0.26 (2)
【0039】
なお、レンズ全系の焦点距離fは、
図1に模式的に示すように、レンズ全系の後側主点位置とイメージセンサ20の撮像面間の距離に相当する。光軸AXからの変曲点までの高さは、上述したとおりである。
【0040】
このように、レンズ面5a、5bに対して変曲点を持たせ、かつ条件式(1)、条件式(2)を満足させることによって、レンズ5を効果的に小型化することが可能になる。条件式(1)(2)の上限値を超えると、レンズ5のレンズ径が大きくならざるを得ず、撮像レンズ系を十分に小型化することが困難になってしまう。
【0041】
図1から明らかなように、レンズ5は、最もレンズ径が大きなレンズである。最もレンズ径が大きいレンズ5の小型化を可能とすることによって、仮にレンズ5枚を単純配置する構成を採用するとしても、それが許容範囲外に大型化してしまうことを抑制し、高解像度を有し、コンパクトな大きさの撮像レンズ系を簡易に実現することが可能になる。レンズ1〜レンズ5を接合等する必要もなく、単純にレンズホルダに対して取り付ければ良く、その製造時のハンドリング性も良好なものとすることができる。
【0043】
図2に示すように、結像側のサグ量を正(+)の値とし、物体側のサグ量を負(−)の値としたとき、次のように説明できる。中心点5rから変曲点5pのサグ量SL1は、正の値となる。変曲点5pから有効径位置5tまでのサグ量SH1は、負の値となる。中心点5sから変曲点5qのサグ量SL2は、正の値となる。変曲点5qから有効径位置5uまでのサグ量SH2は、負の値となる。
【0044】
このとき、次の条件式(3)(4)を満足すると良い。
|SH1/SL1|>2 (3)
|SH2/SL2|>2.5 (4)
【0045】
条件式(3)、(4)を満足することによって、レンズ5のレンズ系を効果的に小さくすることが可能になる。これによって、撮像レンズ系の小型化を十分に図ることが可能になる。なお、有効径位置は、有効径上の点に相当する。
【0046】
サグ量SL1は、軸線x5と軸線x6間の間隔に相当する。サグ量SL2は、軸線x8と軸線x9間の間隔に相当する。サグ量SH1は、軸線x6と軸線x7間の間隔に相当する。サグ量SH2は、軸線x9と軸線x10間の間隔に相当する。
【0047】
軸線x5は、中心点5r上に存在し、光軸AXに対して垂直に交差する。軸線x6は、変曲点5p上に存在し、光軸AXに対して垂直に交差する。軸線x7は、有効径位置5t上に存在し、光軸AXに対して垂直に交差する。軸線x8は、中心点5s上に存在し、光軸AXに対して垂直に交差する。軸線x9は、変曲点5q上に存在し、光軸AXに対して垂直に交差する。軸線x10は、有効径位置5u上に存在し、光軸AXに対して垂直に交差する。
【0048】
図1に戻って説明する。
図1に示すように、レンズ1のレンズ面1aの中心点1pからイメージセンサ20の撮像面25間の距離をTLとし、レンズ1のレンズ面1aの中心点1pからレンズ5のレンズ面5bの中心点5s間の間隔をLLとすると、次の条件式(5)、(6)を満足する。
1.05<TL/f<1.14 (5)
0.70<LL/f<0.80 (6)
【0049】
条件式(5)の上限値を超えると、カメラモジュール100の全長が長くなり、カメラモジュール100の薄型化が困難になってしまう。条件式(5)の下限値を下回ると焦点距離fが長くなり、十分な画角を得られなくなり、かつ撮像レンズ系の性能確保が困難になってしまう。更に、各レンズの肉厚、コバ厚が薄くなり、その製造が困難になってしまう。
【0050】
条件式(6)の上限値を超えると、各レンズのレンズ系が大きくなり、撮像レンズ系の小型化が困難になってしまう。条件式(6)の下限値を下回ると、撮像レンズ系の性能確保が困難になってしまう。更に、各レンズの肉厚、コバ厚が薄くなり、その製造が困難になってしまう。
【0051】
本実施形態では、条件式(5)、(6)を満足することによって、撮像レンズ系の性能劣化を抑制しつつ、カメラモジュール100の小型化/薄型化を図ることができる。
【0052】
また、レンズ1の焦点距離をf1とし、レンズ2の焦点距離をf2とし、レンズ3の焦点距離をf3としたとき、次の条件式(7)、(8)、及び(9)を満足する。
0.45<f1/f<0.60 (7)
−0.75<f1/f2<−0.60 (8)
1.50<f3/f<3.50 (9)
【0053】
条件式(7)の上限値を超えると、撮像レンズ系の全長が長くなり、カメラモジュール100の薄型化を図ることが困難になってしまう。条件式(7)の下限値を下回ると、撮像レンズ系の下方コマ収差が増大し、その補正が困難になってしまう。条件式(8)を満足しない場合、色収差を適切に補正することが困難になってしまう。条件式(9)を満足しない場合、像面湾曲(Field Curvature)を適切に補正することが困難になってしまう。
【0054】
本実施形態では、条件式(7)(8)(9)を満足することによって、撮像レンズ系の所望の特性とすることが可能になる。このような条件式(7)乃至(9)を満足することによって、撮像レンズ系の性能劣化を抑制しつつ、撮像レンズ系の小型化を図り、ひいては、これを内蔵するカメラモジュール100の小型化/薄型化を図ることが可能になる。
【0055】
[第1実施例]
図3乃至
図8を参照して第1実施例について説明する。
図3に示すように、第1実施例に係るカメラモジュール100は、第1実施形態と同様の構成を有する。第1実施例に係るカメラモジュール100は、条件式(1)〜(9)をすべて満足する。
【0056】
本実施例に係る撮像レンズ系は、
図4に示す条件で構成される。なお、面番号が、物体側から順にi=1、i=2、・・・と設定されている。i=1の面は、レンズ1の物体側レンズ面である。i=2の面は、レンズ1の結像側レンズ面である。i=3の面は、レンズ2の物体側レンズ面である。i=4の面は、レンズ2の結像側レンズ面である。他の面番号についても同様である。ただし、i=11の面は、透明基板10の前面(入力面)である。i=12の面は、透明基板10の後面(出力面)である。
【0057】
面間隔は、直後の面までの距離である。例えば、i=2の面間隔Diは、i=2のレンズ面からi=3のレンズ面までの距離である。ただし、i=12の面間隔Diは、レンズ面i=12から撮像面までの距離を示す。
【0058】
レンズ1〜5は、非球面レンズであり、
図5に示すような非球面係数により表現される。なお、非球面形状は、次式(10)により表現される。
ただし、サグ量:Z、光軸からの高さ:h、曲率:c、円錐係数:k、非球面係数:α
2iとする。
【0059】
図6に、撮像レンズ系の横収差を表す収差図を示す。
図7に、撮像レンズ系の球面収差を表す収差図を示す。
図8に、撮像レンズ系の像面湾曲(Field Curvature)を示す特性図(紙面に向かって左側)、その歪曲(Distortion)を表す特性図(紙面に向かって右側)を示す。これらの図から明らかなように、本実施形態に係る撮像レンズ系は、近時の高画素化に対応するのに十分な性能を有する。なお、
図6乃至
図8では、実線は、波長546nmの場合を示す。より粗い破線は、波長656nmの場合を示す。よりきめ細かい破線は、波長486nmの場合を示す。これらの点は、後述の実施形態においても同様である。
また、
図6の左上の部分は、半画角:0.00DEGの場合の横収差を示す。
図6の右上の部分は、半画角:24.10DEGの場合の横収差を示す。
図6の下部分は、半画角:32.80DEGの場合の横収差を示す。
【0060】
[第2実施例]
図9乃至
図14を参照して第2実施例について説明する。
図9に示すように、第2実施例に係るカメラモジュール100は、第1実施形態と同様の構成を有する。第2実施例に係るカメラモジュール100は、条件式(1)〜(9)をすべて満足する。
【0061】
本実施例に係る撮像レンズ系は、
図10に示す条件で構成される。なお、面番号は、上述の場合と同様、物体側から順にi=1、i=2、・・・と設定されている。面間隔についても、上述の場合と同様である。
【0062】
レンズ1〜5は、非球面レンズであり、
図11に示すような非球面係数により表現される。非球面形状は、上述の式(10)と同様である。
【0063】
図12に、撮像レンズ系の横収差を表す収差図を示す。
図13に、撮像レンズ系の球面収差を表す収差図を示す。
図14に、撮像レンズ系の像面湾曲を示す特性図(紙面に向かって左側)、その歪曲を表す特性図(紙面に向かって右側)を示す。これらの図から明らかなように、本実施系に係る撮像レンズ系は、近時の高画素化に対応するのに十分な性能を有する。なお、
図12の左上の部分は、半画角:0.00DEGの場合の横収差を示す。
図12の右上の部分は、半画角:23.50DEGの場合の横収差を示す。
図12の下部分は、半画角:32.00DEGの場合の横収差を示す。
【0064】
[第3実施例]
図15乃至
図20を参照して第3実施例について説明する。
図15に示すように、第3実施例に係るカメラモジュール100は、第1実施形態と同様の構成を有する。第3実施例に係るカメラモジュール100は、条件式(1)〜(9)をすべて満足する。
【0065】
本実施例に係る撮像レンズ系は、
図16に示す条件で構成される。なお、面番号は、上述の場合と同様、物体側から順にi=1、i=2、・・・と設定されている。面間隔についても、上述の場合と同様である。
【0066】
レンズ1〜5は、非球面レンズであり、
図17に示すような非球面係数により表現される。非球面形状は、上述の式(10)と同様である。
【0067】
図18に、撮像レンズ系の横収差を表す収差図を示す。
図19に、撮像レンズ系の球面収差を表す収差図を示す。
図20に、撮像レンズ系の像面湾曲を示す特性図(紙面に向かって左側)、その歪曲を表す特性図(紙面に向かって右側)を示す。これらの図から明らかなように、本実施系に係る撮像レンズ系は、近時の高画素化に対応するのに十分な性能を有する。なお、
図18の左上の部分は、半画角:0.00DEGの場合の横収差を示す。
図18の右上の部分は、半画角:23.80DEGの場合の横収差を示す。
図18の下部分は、半画角:32.30DEGの場合の横収差を示す。
【0068】
[第4実施例]
図21乃至
図26を参照して第4実施例について説明する。
図21に示すように、第4実施例に係るカメラモジュール100は、第1実施形態と同様の構成を有する。第4実施例に係るカメラモジュール100は、条件式(1)〜(9)をすべて満足する。
【0069】
本実施例に係る撮像レンズ系は、
図22に示す条件で構成される。なお、面番号は、上述の場合と同様、物体側から順にi=1、i=2、・・・と設定されている。面間隔についても、上述の場合と同様である。
【0070】
レンズ1〜5は、非球面レンズであり、
図23に示すような非球面係数により表現される。非球面形状は、上述の式(10)と同様である。
【0071】
図24に、撮像レンズ系の横収差を表す収差図を示す。
図25に、撮像レンズ系の球面収差を表す収差図を示す。
図26に、撮像レンズ系の像面湾曲を示す特性図(紙面に向かって左側)、その歪曲を表す特性図(紙面に向かって右側)を示す。これらの図から明らかなように、本実施系に係る撮像レンズ系は、近時の高画素化に対応するのに十分な性能を有する。なお、
図24の左上の部分は、半画角:0.00DEGの場合の横収差を示す。
図24の右上の部分は、半画角:24.30DEGの場合の横収差を示す。
図24の下部分は、半画角:33.00DEGの場合の横収差を示す。
【0072】
[比較例]
図27を参照して、比較例について説明する。
図27に示すように、比較系に係る撮像レンズ系は、第1実施形態とは異なり、条件式(1)〜(6)を満足しない。このような場合、レンズ5の小型化を図ることができず、撮像レンズ系全体の長さが増大し、カメラモジュール100の薄型化/小型化を図ることが困難になってしまう。なお、比較例の場合にも、条件式(7)〜(9)は満足している。
【0073】
[第5実施例]
図28乃至
図33を参照して第5実施例について説明する。
図28に示すように、第5実施例に係るカメラモジュール100は、第1実施形態とは異なり、6つのレンズ群から構成される。このような場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
すなわち、レンズ群の数が5つ以上の場合であっても同様の効果を得ることができる。なお、第5実施例に係るカメラモジュール100は、条件式(1)〜(9)をすべて満足する。
【0074】
図28に示すように、レンズ1の物体側には新たにレンズ6が配置されている。レンズ6は、第1レンズ群を構成する非球面レンズである。レンズ6は、物体側に僅かに凸状のレンズ面を有し、結像側に僅かに凹状のレンズ面を有する。レンズ6は、正のパワーを有する。レンズ6は、例えば、ガラス、プラスチック等の材料の成型により製造される。
【0075】
本実施例に係る撮像レンズ系は、
図29に示す条件で構成される。なお、面番号は、上述の場合と同様、物体側から順にi=1、i=2、・・・と設定されている。面間隔についても、上述の場合と同様である。
【0076】
レンズ1〜6は、非球面レンズであり、
図30に示すような非球面係数により表現される。非球面形状は、上述の式(10)と同様である。
【0077】
図31に、撮像レンズ系の横収差を表す収差図を示す。
図32に、撮像レンズ系の球面収差を表す収差図を示す。
図33に、撮像レンズ系の像面湾曲を示す特性図(紙面に向かって左側)、及びその歪曲を表す特性図(紙面に向かって右側)を示す。これらの図から明らかなように、本実施系に係る撮像レンズ系は、近時の高画素化に対応するのに十分な性能を有する。なお、
図31の左上の部分は、半画角:0.00DEGの場合の横収差を示す。
図31の右上の部分は、半画角:23.00DEGの場合の横収差を示す。
図31の下部分は、半画角:31.30DEGの場合の横収差を示す。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。撮像レンズ系の具体的な構成は任意である。レンズの材質は任意である。レンズ群を構成するレンズ枚数は任意である。
また、絞り50の位置は、目的に応じて変更しうるものであり、本実施の形態及び実施例に限られるものではない。
具体的には、上述した第1実施例乃至第4実施例では、絞り50は第1レンズ1の物体側に配置した。これは、イメージセンサ20への光線の入射角度が大きくなりすぎないようにするためである。したがって、光線の入射角度が大きくてもかまわないイメージセンサを使用する場合には、絞り50は第1レンズ1の物体側に配置する必要はなく、例えば、第1レンズ1と第2レンズ2の間等、レンズ系の間に配置しても良い。
また、第5実施例においては、絞りは、第6レンズ6と第1レンズ1との間に配置されている。第6レンズ6の物体側に絞りを配置すると、レンズ径が大きくなってしまうという欠点があるが、イメージセンサ20への入射角度が小さくなるというメリットがある。