(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843375
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】スプロケットの成形方法
(51)【国際特許分類】
B23P 15/14 20060101AFI20151217BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20151217BHJP
F16H 55/30 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
B23P15/14
F16H55/17 Z
F16H55/30 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-510299(P2015-510299)
(86)(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公表番号】特表2015-522429(P2015-522429A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】US2013036694
(87)【国際公開番号】WO2013169440
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】13/465,248
(32)【優先日】2012年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】キャダレット,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,キャシー ピーク
(72)【発明者】
【氏名】ホジャート,ヤーヤ
【審査官】
長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−035146(JP,U)
【文献】
特開2001−293792(JP,A)
【文献】
特開平01−171934(JP,A)
【文献】
実開平04−017551(JP,U)
【文献】
特許第3751563(JP,B2)
【文献】
特公昭60−014223(JP,B2)
【文献】
特開2011−206953(JP,A)
【文献】
実開昭49−007342(JP,U)
【文献】
特開平10−025592(JP,A)
【文献】
実開昭56−145601(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 15/14
F16H 55/17
F16H 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる歯部を有する複数の長尺のスプロケット部材を成形し、
前記スプロケット部材の前記歯部とは反対側の面に溝を成形し、
マンドレルの外周面の円周方向に沿って形成され、前記マンドレルの軸方向に延びるマンドレル溝内に、前記複数のスプロケット部材の歯部を装着して組立て体を成形し、
隣接するスプロケット部材の間に長尺のエラストマ部材を挿入し、
前記スプロケット部材と前記エラストマ部材の周囲に張力部材を巻き付け、
前記組立て体を加硫し、
前記マンドレルから前記組立て体を外す
スプロケットを成形する方法。
【請求項2】
前記組立て体を反転し、前記組立て体を剛体の芯部材に組み付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加硫の前に前記組立て体の外周面にエラストマ層を貼り付ける請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組立て体を切断して、所定の寸法の少なくとも2つのスプロケットを成形する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
固定具を用いて、前記組立て体を剛体の芯部材に結合する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプロケットを成形する方法に関し、より詳しくは、マンドレルに要素を組み付けて組立て体を形成し、この組立て体を剛体の芯部材に結合することにより、スプロケットを成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯付きベルトの動力伝達システムに用いられるスプロケットは、適切に作動するために非常に厳しい公差を有しなければならない。スプロケットの直径が増加すると、厳しい公差(幾何学的効果)を保持することがより困難になるだけでなく、スプロケットの金属材料の膨張収縮が公差に逆の影響を与える。現代の大きな風力発電機のようなアプリケーションでは、動力伝達スプロケットの直径と幅は1.5メートルを超えなければならず、ウィンドタワーの上部のハウジング内の温度変化は100℃を超えた範囲になりうる。したがって、スプロケットの公差が変化しすぎると、ベルト駆動システムを用いることは非常に難題となる。
【0003】
この技術の代表は、米国特許第5704406号明細書であり、これは、コンベアベルトを駆動するために接触面積を増加させるスプロケットの構成を開示する。このスプロケットは特に、モジュラープラスチックベルトを有する摩擦応用および/または利用に適している。このスプロケットは、多数の薄い実質的にディスク形状のスプロケットの薄板を積み重ねて整列させ、単にボルトまたは溶接することにより、重合整列された薄板を結合させている。各スプロケットの薄板は駆動軸に取付けるために中心穴を有する。歯または他の駆動面はまた、各薄板の周囲に形成される。薄板は互いに接触して積み重ねられ、またいくつかのアプリケーションでは、駆動されるベルトと協働するように、重合された薄板の選択されたものを分離するためにスペースを用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
必要とされるのは、マンドレルに要素を組み付け、組立て体を成形し、この組立て体を剛体の芯部材に結合させることによってスプロケットを成形する方法である。本発明はこの必要に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な特徴は、マンドレルに要素を組み付け、組立て体を成形し、この組立て体を剛体の芯部材に結合させることによってスプロケットを成形する方法である。
【0006】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記述と添付した図面により説明され、明らかになる。
【0007】
本発明は、形状を有するスプロケット部材を成形し、スプロケット部材の基部に溝を成形し、マンドレルに複数のスプロケット部材を装着して組立て体を成形し、隣接するスプロケット部材の間にエラストマを挿入し、スプロケット部材とエラストマ部材の周囲に張力部材を巻き付け、組立て体を加硫し、マンドレルから組立て体を外し、組立て体を反転し、組立て体を剛体の芯部材に組み付ける、スプロケットを成形する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図5】スプロケット部材が装着されたベルトマンドレルの斜視図である。
【
図6】エラストマが付加された状態におけるスプロケット部材の斜視図である。
【
図7】エラストマを含む、全てのスプロケット部材が装着されたベルトマンドレルの斜視図である。
【
図8】エラストマと張力コードを含む、全てのスプロケット部材が装着されたベルトマンドレルの斜視図である。
【
図9】エラストマ層が組立て体の上に設けられた状態の斜視図である。
【
図10】マンドレルが外された状態の斜視図である。
【
図11】組立て体が反転された状態の斜視図である。
【
図12】分離した部材に切断された組立て体の斜視図である。
【
図13】他の実施形態のスプロケット部材の斜視図である。
【
図14】スプロケット部材が剛体の芯部材に装着された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はスプロケット歯部の斜視図である。好ましくはステンレス鋼材料であるワイヤ10は、ワイヤ引抜工程によって引抜き加工され、この工程により、ワイヤはスプロケット部材の形状に成形される。
図2参照。ワイヤ引抜工程は、適切な速さ、価格、および精度において好ましい工程であるが、機械加工と鋳造を含み、他の工程もスプロケット部材を製造するために利用できる。
図2はスプロケット部材の形状である。必要であればスプロケット部材は、スプロケット歯の許容誤差に合致するように、引き続き公知の方法で連続的に研削される。
【0010】
部材10は歯領域12の下側に、僅かに凹陥した端部11を備える。端部11は、横断(幅)方向に切断あるいは研削処理をされ、これにより、張力コードを受容する溝110が生成される。
図3はスプロケット部材の斜視図である。溝110は好ましくは、張力コードの連続的な巻き回しを許容するために角度αで設けられる。歯領域12は歯付きベルトに係合するために適当な輪郭形状を有する。
【0011】
各スプロケット部材は、部材10の各側部に配置された、協働するポケット13を備える。ポケット13はエラストマ部分のための保持機構として利用される。またポケットにより、完成されたスプロケットは少量の膨張収縮性あるいは横方向の可撓性を有する。
【0012】
そしてスプロケット部材10は所望の長さに切断される。好ましい長さは、一般的にはマンドレル(M)の長さである。マンドレル(M)はベルトを製造するときに用いられるものと同様である。
【0013】
図4はマンドレルの斜視図である。マンドレルは、マンドレルの外周部に配置され、長手軸方向の主軸に沿って延びる複数の溝21を備える。スプロケット部材10は、歯部12が溝21に挿入され、かつ端部11が径方向の外側を向いた状態で、マンドレル溝21の内側に受容される。
【0014】
図5はスプロケット部材が装着されたベルトマンドレルの斜視図である。部材10が溝21から外れることを防止するために全ての部材10が装着されるまで、各スプロケット部材10はテンプレート(図示せず)によって所定位置に一時的に保持される。
【0015】
図6はエラストマが付加された状態におけるスプロケット部材の斜視図である。エラストマ30のストリップは部材10の間において、隣接するポケット13内に挿入される。
【0016】
図7は、エラストマを含む、全てのスプロケット部材が装着されたベルトマンドレルの斜視図である。完成された組立品は、部材10とエラストマ30が交互に並んだ連続である。
【0017】
図8は、エラストマと張力コードを含む、全てのスプロケット部材が装着されたベルトマンドレルの斜視図である。この段階において、張力コード50はマンドレルの周りに巻回される。張力コードは単一の連続的な線部材であり、溝110に係合する。
【0018】
エラストマ材料40は張力コード50に積層される。エラストマ材料40は、部材10において、隣接するポケット13によって形成されるスペースにわたって充填される。この構成はまた、マンドレルの精密な精度により、エラストマ材料30を所定位置にロックする。
【0019】
エラストマと金属の組み合わせの場合、金属表面は、必要であれば、公知の方法でエラストマの接着のために処理されなければならない。張力コードはまた、必要であれば、公知の方法で接着のためにコーティングされてもよい。
【0020】
張力コード50が金属の歯溝110に接触しないことを保証するために、エラストマ40の少なくとも1つの層が張力コードの巻き付けの前後に貼り付けられ、張力コードはエラストマによって覆われる。
【0021】
溝110がマンドレルの長手方向の長さに対して90°で研削されるならば、各溝110内に別々の張力コードを個々に巻き付けることが必要である。したがって、単一の張力コードの連続的な巻き付けを可能にするために、幅に対して僅かに角度(α)を付けた溝を研削することが好ましい。各溝は、張力コードに加えてエラストマを充填できるようにするために十分に大きくなければならず、これにより張力コードはエラストマによって各溝110の内側に囲まれる。
【0022】
このスプロケットに用いられるエラストマの剛性は、動力伝達システムの要求とスプロケット歯の望ましい可撓性に従って、非常に硬いものから柔らかい材料まで変化する。
【0023】
図9はエラストマ層が組立て体の上に設けられた状態の斜視図である。最終的なエラストマ層60は組立て体の周囲に巻き付けられる。
【0024】
さらに、望ましい付加的な外皮材料が層60の周囲に巻き付けられてもよい。外側のエラストマ層60はまた、必要であれば、振動の減衰と遮断を高めるために、要求される厚さの材料から成形され、設計される。必要であれば、金属歯、張力コード、または外側のエラストマ層の上面のさらなる外周層61は、エラストマ外皮を減衰あるいは遮断する、いかなるタイプの布製外皮または層を有してもよい。したがって、結果として得られるスプロケットは減衰スプロケットあるいは遮断スプロケットである。
【0025】
マンドレルは加硫窯に設置され、エラストマ層は公知の方法で加硫される。加硫されると、組立て体はマンドレルから外され、冷却される。
【0026】
図10はマンドレルが外された状態の斜視図である。組立て体は、望ましい幅の少なくとも2以上のスプロケットに切断される。
【0027】
図11は組立て体が反転された状態の斜視図である。次の工程では、組立て体が組み付け位置において切断されなければ、スプロケットの組立て体は内側が外になるように反転され、あるいは反転される他の方法がとられる。反転は、組立て体の組立ての間に歯が内方に突出するので必要である。スプロケットとして機能するために、歯は外側を向かなければならず、したがって剛体の芯部材に結合される前に組立て体を反転することが必要である。
【0028】
長い金属部材から得られる長手方向における組立て体の剛性のために、反転は、組立て体の直径が一般的には長手方向の長さよりも大きいときだけ実行される。組立て体がその直径よりも長いとき、最終的な製品の寸法が許すならば、組立て体は反転の前に最終的な直径になるよう切れ目をつけられる。他の代替は、外側の代わりにマンドレルの内側に製品を形成することである。
【0029】
他の代替的な実施形態において、完成された組立て体は、端部を有するストリップを形成するよう、所定の長さに切断される。そして切断されたストリップは、
図14に示されるように剛体の芯部材の周りに巻き付けられ、固定される。
【0030】
図12は分離した部材に切断された組立て体の斜視図である。代替的な実施形態において、組立て体は反転されず、その代わりに、
図12に示されるように、マンドレルから外された最初の位置に維持される。組立て体は所望の幅を有する部品に切断される。代替的な実施形態において、組立て体の側面は内包角βに研削される。この処理により、CVTベルトが得られる。組立て体の金属歯は、優れた圧縮剛性と耐摩耗性をもたらす。
図13は他の実施形態のスプロケット部材の斜視図である。
【0031】
図14はスプロケット部材が剛体の芯部材70に装着された状態を示す斜視図である。剛体の芯部材70は通常、打抜き加工または鋳造された鉄金属、鋳造アルミニウム、または鋳造マグネシウムまたはあらゆるタイプの樹脂から成形される。低摩擦のアプリケーションのため、スプロケットの芯部材70は押出し成形されたアルミニウムであってもよい。芯部材70は1つの固定フランジ72を備えていてもよく、望まれるのであれば、第2の取外し可能なフランジを備えてもよい。本発明のスプロケットは接着剤あるいは機械的な固定具によって中心部に固定されるか、フランジの内側に機械的に保持されてもよい。
【0032】
代替的な実施形態において、特に、スプロケット歯に可撓性がないことが望まれ、または要求されるとき、歯は、固定具または隣接するフランジ72によって剛体の芯部材70の所定位置にロックされる。張力コード50と溝110はこの実施形態では必要ではない。これは部材10のコストを低減させ(スロットの研削が不要)、張力コードと、張力コードの処理と、張力コードの巻付け処理を不要とする。
【0033】
さらに他の代替的な実施形態では、最初の工程において、スプロケット部材10は、幅広のマンドレル内における組立て体の代わりに、スプロケットの剛体の芯部材70の幅に合致した寸法に切断される。各フランジと各スプロケット部材に固定具を収容するために穴73が穿設される。エラストマ30は用いられない。スプロケット部材10は固定具を利用してフランジ72、74の間に組み付けられ、これにより隣接する溝の間に開口を有する全ての金属スプロケットを成形する。開口は、破片がスプロケットの溝から排出される泥ポートとなる。泥ポートは、上述した実施形態においてエラストマ30の位置を占め、このエラストマはこの実施形態では省略される。
【0034】
さらに他の代替的な実施形態では、組立て体は剛体の芯部材に組み付けられない。さらに、組立て体は反転されず、その代わりに、反転されることなく組立て工程と同じ状態で使用される。組立て体の側面は所定の角度βに研削される。
図13参照。この実施形態はCVTベルトとして使用可能である。このアプリケーションでは各部材がその主軸に沿って圧縮負荷を受けるので、各部材10はベルトの優れた横方向剛性に寄与する。これは、CVTベルトにおいて、ベルトの側面が圧縮方向に負荷を受けるからである。
【0035】
本発明の形態が説明されたが、ここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と関連した部分に種々の変形を施すことは、当業者にとって自明である。