(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2工程でレーザ光の照射条件を調整する際、前記レーザ集光手段に収差補正環を設けて該収差補正環により調整することを特徴とする請求項1に記載の単結晶基板の製造方法。
前記第2工程でレーザ光の照射条件を調整する際、レーザ光として照射するパルスレーザ光の照射回数で調整することを特徴とする請求項1に記載の単結晶基板の製造方法。
前記第2工程でレーザ光の照射条件を調整する際、レーザ光として照射するパルスレーザ光の照射間隔を調整することを特徴とする請求項1に記載の単結晶基板の製造方法。
前記第2工程でレーザ光の照射条件を調整する際、前記レーザ集光手段と前記単結晶部材とのオフセットを調整することを特徴とする請求項1に記載の単結晶基板の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る単結晶基板の製造方法を説明する模式的鳥瞰図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る単結晶基板の製造方法を説明する模式的鳥瞰図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る単結晶基板の製造方法および内部改質層形成単結晶部材を説明する模式的斜視断面図。
【
図4】本発明の一実施形態で、レーザ光の照射により単結晶部材内部にクラックが形成されていることを示す模式的断面図。
【
図5】本発明の一実施形態で、内部改質層形成単結晶部材の側壁に改質層を露出させたことの模式的斜視断面図。
【
図6】本発明の一実施形態で、内部改質層形成単結晶部材の上下面に金属製基板を接着させて改質層から単結晶層を剥離させることを説明する模式的断面図。
【
図7】本発明の一実施形態で、内部改質層形成単結晶部材の上下面に金属製基板を接着させて改質層から単結晶層を剥離させることを説明する模式的断面図。
【
図8】本発明の一実施形態の変形例を説明する模式的断面図。
【
図9】本発明の一実施形態の変形例を説明する模式的断面図。
【
図10】本発明の一実施形態の変形例を説明する模式的斜視断面図。
【
図11】本発明の一実施形態で得られた単結晶基板の部分拡大側面図。
【
図12】(a)は、本発明の一実施形態の変形例として、収差補正環で補正したレーザ光を集光レンズに入光させて照射することを示す側面図、(b)は(a)の部分拡大図。
【
図13】実験例1での実験条件および測定結果を示す説明図。
【
図14】実施例1Aで得られた単結晶基板の断面の光学顕微鏡写真。
【
図15】実施例1Bで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図16】実施例1Bで得られた単結晶基板の断面の光学顕微鏡写真。
【
図17】実施例1Bで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図18】実施例1Cで得られた単結晶基板の断面の光学顕微鏡写真。
【
図19】実施例1Cで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図20】実施例1Dで得られた単結晶基板の断面の光学顕微鏡写真。
【
図21】実施例1Dで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図22】実施例2で得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図23】実施例3Aで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図24】実施例3Bで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図25】実施例4Aで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図26】実施例4Bで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図27】実施例4Cで得られた単結晶基板の断面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図28】実施例5で得られた単結晶基板の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図29】実施例5で得られた単結晶部の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図30】実施例6で得られた単結晶基板の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図31】実施例6で得られた単結晶部側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図32】実施例6で得られた単結晶基板の剥離面のSEM観察像。
【
図33】実施例6で得られた単結晶部側の剥離面のSEM観察像。
【
図34】実施例7で得られた単結晶基板の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図35】実施例7で得られた単結晶部側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図36】実施例6で得られた単結晶基板の剥離面のSEM観察像。
【
図37】実施例7で得られた単結晶部側の剥離面のSEM観察像
【
図38】比較例1で得られた単結晶基板の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図39】比較例1で得られた単結晶部側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真。
【
図40】比較例1で得られた単結晶基板の剥離面のSEM観察像
【
図41】比較例1で得られた単結晶部側の剥離面のSEM観察像。
【
図42】実験例2で、内部改質層形成単結晶部材の断面の光学顕微鏡写真およびスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)で、レーザ集光手段により空気中でレーザ光を集光したことを説明する模式的鳥瞰図であり、
図2は、本実施形態で、レーザ集光手段により単結晶部材内部にレーザ光を集光したことを説明する模式的鳥瞰図である。
図3は、本実施形態に係る単結晶基板製造方法および内部改質層形成単結晶部材11を説明する模式的断面構造である。
図4は、レーザ光の照射により単結晶部材内部にクラック12cが形成されていることを示す模式的断面図である。
図5は、内部改質層形成単結晶部材11の側壁に、レーザ光の集光によって形成された改質層12を露出させたことを示す模式的斜視断面図である。
図6は、本実施形態で、内部改質層形成単結晶部材の上下面に金属製基板を接着させて改質層から単結晶層を剥離させることを説明する模式的断面図である。
図7は、本実施形態で、内部改質層形成単結晶部材の上下面に金属製基板を接着させて改質層から単結晶層を剥離させることを説明する模式的断面図であり、改質層12から単結晶層10uを剥離させたことを説明している。
【0018】
本実施形態に係る単結晶基板製造方法は、レーザ集光手段として集光レンズ15を単結晶部材10上に非接触に配置する第1工程と、集光レンズ15により、単結晶部材10表面にレーザ光Bを照射して単結晶部材10内部にレーザ光Bを集光するとともに、集光レンズ15と単結晶部材10とを相対的に移動させて、単結晶部材10内部に2次元状の改質層12を形成する第2工程と、改質層12により分断されてなる単結晶層10uを改質層12との界面から剥離することで、
図7(後述の
図11も参照)に示すような単結晶基板10sを形成する第3工程と、を備えていて、第3工程で形成した単結晶基板10sの剥離面の表面粗さRaが1未満となるように、第2工程でレーザ光の照射条件を調整する。
【0019】
ここで、表面粗さとは、算術平均粗さRaで表現され、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次の式で与えられるRaの値をマイクロメートル単位(μm)で表したものをいう。
【数1】
【0020】
なお、以下の説明では、単結晶層10uを改質層12との界面10uから剥離させることで説明するが、本発明は界面10uから剥離させることに限られず、改質層12内で剥離が生じるようにしてもよい。
【0021】
(装置構成および第1工程(レーザ集光手段の配置工程))
単結晶部材10上に非接触に配置する集光レンズ15は、単結晶部材10の屈折率に起因する収差を補正する構成になっている。具体的には、
図1に示すように、本実施形態では、集光レンズ15は、空気中で集光した際に、集光レンズ15の外周部Eに到達したレーザ光が集光レンズ15の中央部Mに到達したレーザ光よりも集光レンズ側で集光するように補正する構成になっている。すなわち、集光した際、集光レンズ15の外周部Eに到達したレーザ光の集光点EPが、集光レンズ15の中央部Mに到達したレーザ光の集光点MPに比べ、集光レンズ15に近い位置となるように補正する構成になっている。
【0022】
詳細に説明すると、集光レンズ15は、空気中で集光する第1レンズ16と、この第1レンズ16と単結晶部材10との間に配置される第2レンズ18と、で構成される。第1レンズ16および第2レンズ18は、何れもレーザ光を円錐状に集光できるレンズとされている。そして、レーザ光Bが照射される側の単結晶部材10の表面10t(被照射側の表面)から改質層12までの深さ(間隔)Dを、主に第1レンズ16とこの表面10tとの距離L1で調整する構成になっている。さらに、改質層12の厚みTを、主に第2レンズ18とこの表面10tとの距離L2で調整する構成になっている。従って、主に第1レンズ16で空気中での収差補正を行い、主に第2レンズ18で単結晶部材10内での収差補正を行うことになる。本実施形態では、表面10tから所定の深さDの位置に、厚みTが60μm未満の改質層12が形成されるように、第1レンズ16、第2レンズ18の焦点距離、および、上記の距離L1、L2を設定しておく。
【0023】
第1レンズ16としては、球面または非球面の単レンズのほか、各種の収差補正や作動距離を確保するために組レンズを用いることが可能であり、NAが0.3〜0.7であることが好ましい。第2レンズ18としては、第1レンズ16よりも小さなNAのレンズで、例えば曲率半径が3〜5mm程度の凸ガラスレンズが、簡便に使用する観点で好ましい。
【0024】
そして、レーザ光Bの照射によって単結晶部材10の表面10tにダメージを与えることなく単結晶部材10の内部に改質層12を形成する観点で、集光レンズ15の外周部Eに到達したレーザ光とその集光点EPで定義される空気中の集光レンズ15のNAは、0.3〜0.85にすることが好ましく、0.5〜0.85にすることがさらに好ましい。
【0025】
単結晶部材10のサイズは、特に限定されるものではないが、例えばφ300mmの厚いシリコンウエハからなり、レーザ光Bが照射される表面10tが予め平坦化されていることが好ましい。
【0026】
レーザ光Bは、単結晶部材10の周面ではなく、上記の表面10tに照射装置(図示省略)から集光レンズ15を介して照射される。このレーザ光Bは、単結晶部材10がシリコンの場合には、例えばパルス幅が1μs以下のパルスレーザ光からなり、900nm以上の波長、好ましくは1000nm以上の波長が選択され、YAGレーザ等が好適に使用される。
【0027】
集光レンズ15に上方からレーザ光を入光する形態については特にこだわらない。集光レンズ15の上方にレーザ発振器を配置して集光レンズ15に向けて発光する形態としてもよいし、集光レンズ15の上方に反射ミラーを配置しレーザ光をこの反射ミラーに向けて照射して反射ミラーで集光レンズ15に向けて反射する形態にしてもよい。
【0028】
このレーザ光Bは、単結晶部材10として厚み0.625mmの単結晶基板に照射したときの光線透過率が1〜80%の波長であることが望ましい。例えば、単結晶部材10としてシリコンの単結晶基板を用いた場合、波長が800nm以下のレーザ光では吸収が大きいため、表面のみが加工され、内部の改質層12を形成することができないため、900nm以上の波長、好ましくは、1000nm以上の波長が選択される。また、波長10.64μmのCO
2レーザでは、光線透過率が高すぎるため、単結晶基板の加工をすることが困難なため、YAG基本波のレーザなどが好適に使用される。
【0029】
レーザ光Bの波長が900nm以上が好ましい理由は、波長が900nm以上であれば、シリコンからなる単結晶基板に対するレーザ光Bの透過性を向上させ、単結晶基板内部に改質層12を確実に形成することができるからである。レーザ光Bは、単結晶基板表面の周縁部に照射され、あるいは単結晶基板の表面の中心部から周縁部方向に照射される。
【0030】
(第2工程(改質層の形成工程))
集光レンズ15と単結晶部材10とを相対的に移動させて単結晶部材10内部に改質層12を形成する工程(第2工程)としては、例えば、単結晶部材10をXYステージ(図示せず)上に載置し、真空チャック、静電チャックなどでこの単結晶部材10を保持する。
【0031】
そして、XYステージで単結晶部材10をX方向やY方向に移動させることで、集光レンズ15と単結晶部材10とを、単結晶部材10の集光レンズ15が配置されている側の表面10tと平行な方向に相対的に移動させながらレーザ光Bを照射することで、単結晶部材10の内部に集光したレーザ光Bによって多数のクラック12cが形成される。このクラック12cを有するクラック部12pの集合体が上述の改質層12である。本実施形態では、集光レンズ15の移動方向がレーザ光Bの光軸に直交する方向であり、改質層12はレーザ光Bの光軸に直交している(すなわち、改質層12の法線方向がレーザ光Bの光軸と平行方向である)。
【0032】
この改質層12が形成された結果、内部改質層形成単結晶部材11が製造される。この内部改質層形成単結晶部材11は、単結晶部材内部に形成された改質層12と、改質層12の上側(すなわちレーザ光Bの被照射側)に単結晶層10uと、改質層12の下側に単結晶部10dと、を有する。単結晶層10uおよび単結晶部10dは、改質層12によって単結晶部材10が分断されたことにより形成されたものである。本実施形態では、レーザ光としてパルスレーザ光を照射する。
【0033】
改質層12を形成するにあたり、第3工程で形成した単結晶基板10sの剥離面10f(
図7および
図11参照)の表面粗さRaが1未満となるように、レーザ光の照射条件を調整する。
【0034】
なお、ステージの移動速度を抑えるために、ガルバノミラーやポリゴンミラーなどのレーザービーム偏向手段を用い、集光レンズ15の照射エリア内でレーザ光をスキャンすることを併用してもよい。また、このような内部照射を行って改質層12の形成の終了後、単結晶部材10の被照射側の表面10t、すなわち単結晶層10uの表面10tにレーザ光Bの焦点を合わせ、照射領域を示すマークを付け、その後、このマークを基準に単結晶部材10を切断(割断)して、後述するように、改質層12の周縁部を露出させた上で単結晶層10uの剥離を行ってもよい。
【0035】
このような照射によって形成された改質層12では、
図4に示すように、レーザ光Bの照射軸BCに平行な多数のクラック12cが形成されている。形成するクラック12cの寸法、密度などは、改質層12から単結晶層10uを剥離し易くする観点で、単結晶部材10の材質などを考慮して設定することが好ましい。
【0036】
なお、クラック12cを確認するには、レーザ光Bによる加工領域すなわち改質層12を横断するように内部改質層形成単結晶部材11をへき開し、へき開面(例えば
図3、
図5の14a〜d)を走査電子顕微鏡もしくは共焦点顕微鏡で観察することで確認してもよいが、同一の材質の単結晶部材(例えばシリコンウエハ)に対し、同一の照射条件で、例えばYステージの送りを6〜50μm間隔で部材内部に線状の加工を行い、これを横断する形でへき開してへき開面を観察することで、容易に確認してもよい。
【0037】
(第3工程(剥離工程))
この後、改質層12と単結晶層10uとの剥離を行う(第3工程)。本実施形態では、まず、内部改質層形成単結晶部材11の側壁に改質層12を露出させる。露出させるには、例えば、単結晶部10d、単結晶層10uの所定の結晶面に沿ってへき開する。この結果、
図5に示すように、単結晶層10uと単結晶部10dとによって改質層12が挟まれた構造のものが得られる。なお、単結晶層10uの表面10tはレーザ光Bの被照射側の面である。
【0038】
改質層12が既に露出している場合や、改質層12の周縁と内部改質層形成単結晶部材11の側壁との距離が十分に短い場合には、この露出をさせる作業を省略することが可能である。
【0039】
その後、
図6に示すように、内部改質層形成単結晶部材11の上下面に、それぞれ、金属製基板28u、28dを接着する。すなわち、単結晶層10uの表面10tに金属製基板28uを接着剤34uで接着し、単結晶部10dの表面10bに金属製基板28dを接着剤34dで接着する。金属製基板28u、28dには、それぞれ、表面に酸化層29u、29dが形成されている。本実施形態では、酸化層29uを表面10tに、酸化層29dを表面10bに接着する。金属製基板28u、28dとしては、例えば、SUS製の剥離用補助板を用いる。接着剤としては、通常の半導体製造プロセスで使用される接着剤であって、市販のシリコンインゴット固定用の所謂ワックスとして使用される接着剤を用いる。この接着剤で接着させたものを水に浸けると接着剤の接着力が低下するので、接着剤と被接着物(単結晶層10u)とを容易に分離させることができる。
【0040】
この接着では、まず、金属製基板28uを単結晶層10uの表面10tに仮固定用接着剤で貼り付け、金属製基板28uを裏打ちし力を加えることで剥離する。
【0041】
仮固定用接着剤の接着強度は、改質層12と単結晶層10uとの界面11uで剥離するのに必要な力よりも強ければよい。仮固定用接着剤の接着強度に応じ、形成するクラック12cの寸法、密度を調整してもよい。
【0042】
仮固定用接着剤としては、例えば、金属イオンを反応開始剤として硬化する嫌気性アクリル系2液モノマー成分からなる接着剤を用いる。この場合、未硬化モノマーおよび硬化反応物が非水溶性であると、水中で剥離した際に露出した単結晶層10uの剥離面10f(例えばシリコンウエハの剥離面)が汚染されることを防止できる。
【0043】
仮固定用接着剤の塗布厚みは、硬化前で0.1〜1mmが好ましく、0.15〜0.35mmがより好ましい。仮固定用接着剤の塗布厚みが過度に大きい場合、完全硬化となるまでに長時間を必要とする上、単結晶部材(シリコンウエハ)の割断時に仮固定用接着剤の凝集破壊が起こりやすくなる。また、塗布厚みが過度に小さい場合、割断した単結晶部材の水中剥離に長時間を必要とする。
【0044】
仮固定用接着剤の塗布厚みの制御は、接着する金属製基板28u、28dを任意の高さに固定する方法を用いることで行ってもよいが、簡易的にはシムプレートを用いて行うことができる。
【0045】
接着した際に金属製基板28uと金属製基板28dとの平行度が十分に得られない場合には、1枚以上の補助板を使用して必要な平行度を得てもよい。
【0046】
また、金属製基板28u、28dを仮固定用接着剤で内部改質層形成単結晶部材11の上下面に接着する際、片面ずつ接着してもよいし、両面同時に接着してもよい。
【0047】
厳密に塗布厚みを制御したい場合には、一方の片面に金属製基板を接着させて接着剤が硬化した後、もう一方の片面に金属製基板を接着することが好ましい。このように片面ずつ接着する場合、仮固定用接着剤を塗布する面が内部改質層形成単結晶部材11の上面であっても下面であってもよい。その際、単結晶部材10の非接着面に接着剤が付着して硬化することを抑制するために、金属イオンを含まない樹脂フィルムをカバーレイヤーとして用いてもよい。
【0048】
金属製基板としては、平行度および平坦度が得られるのであれば、装置固定用の抜き穴等の機械加工を行っていても構わない。接着する金属製基板は水中での剥離工程を経るため、シリコンウエハのコンタミ抑制目的では不動態層を形成するものであることが好ましく、水中剥離のタクトタイム短縮目的では形成する酸化層(酸化皮膜層)が薄い方が好ましい。
【0049】
内部加工シリコンウエハ割断後に水中剥離を行うため、接着前の金属製基板については、通常行われる金属の脱脂処理を行うことが好ましい。
【0050】
仮固定用接着剤と金属製基板との接着力を高めるには、機械的または化学的方法で金属表面の酸化層を落として活性な金属面を出すとともに、アンカー効果を得やすい表面構造にするのが好ましい。上記の化学的方法とは、具体的には薬品を用いた酸洗浄や脱脂処理などがある。上記の機械的方法とは、具体的にはサンドブラスト、ショットブラストなどが挙げられるが、サンドペーパーで金属製基板の表面を傷つける方法が最も簡便であり、その粒度は#80〜2000が好ましく、金属製基板の表面ダメージを考慮すると#150〜800がより好ましい。
【0051】
金属製基板の接着後、
図6に示したように、金属製基板28uに上方向の力Fuを、金属製基板28dに下方向の力Fdをそれぞれ加える。ここで、改質層12と単結晶部10dとの界面11dよりも、改質層12と単結晶層10uとの界面11uのほうが剥離しやすい。このため、力Fu、Fdによって、
図7に示すように、改質層12と単結晶層10uとの界面11uで剥離する。この剥離によって、単結晶層10uを改質層12から剥離してなる薄い単結晶基板10sを得る。このようにして得られた単結晶基板10sの剥離面10fでは、例えば
図11に示すように、表面粗さRaが1未満(Ra<1)である。
【0052】
力Fu、Fdを加える手法は特に限定しない。例えば、
図8に示すように、内部改質層形成単結晶部材11の側壁をエッチングして改質層12に溝36を形成し、
図9に示すように、この溝36に楔状圧入材30(例えばカッター刃)を圧入することで力Fu、Fdを発生させてもよい。また、
図10に示すように、内部改質層形成単結晶部材11に角方向から力Fを加えて、上方向の力成分Fuと下方向の力成分Fdとを発生させてもよい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、第2工程でレーザ光の照射条件を調整することで、第3工程で形成した単結晶基板10sの剥離面の表面粗さRaを1未満としている。従って、剥離後の単結晶基板のラッピングにかかる時間を、従来に比べて大幅に短縮させることが可能となる。また、Raが1以上である場合に比べて他工程を省略することができるので、他工程による単結晶基板の汚染を回避することができる。
【0054】
また、大きなNAの集光レンズ15で、単結晶部材10内の薄い厚み部分にレーザ光Bによるエネルギーを集中させることができる。従って、単結晶部材10内に、厚みT(レーザ光Bの照射軸BCに沿った長さ)が小さい改質層(加工領域)12を形成した内部改質層形成単結晶部材11を製造することができる。そして、改質層12から単結晶層10uを剥離することで薄い単結晶基板10sを製造することが容易である。また、このような薄い単結晶基板10sを比較的短時間で容易に製造することができる。しかも、改質層12の厚みを抑えることで単結晶部材10から多数枚の単結晶基板10sが得られるので、製品率を向上させることができる。
【0055】
また、改質層12として、レーザ光Bの照射軸BCと平行なクラック部12pの集合体を形成している。これにより、改質層12と単結晶層10uとの剥離が容易である。
【0056】
また、単結晶基板10sを形成する工程では、表面に酸化層29uを有する金属製基板28uを単結晶層10uの表面に接着して剥離させることで単結晶基板10sを得ている。従って、金属製基板との接着に、通常の半導体製造プロセスで使用される接着剤を用いることができ、アクリル板を接着させる際に用いる強力な接着力を有するシアノアクリレート系接着剤を用いなくて済む。しかも、剥離した後、水に浸けることで接着剤の接着力が大きく低減して剥がれ易くなるので、金属製基板28uから単結晶基板10sを容易に分離させることができる。
【0057】
なお、第2工程でレーザ光の照射条件を調整する際、1)集光レンズ15の通過後のレーザ光のエネルギーを調整する、2)集光レンズ15(第1レンズ16および第2レンズ18)に代えて、収差補正環40と集光レンズ45(何れも後述の
図12参照)とを配置する構成にして、集光レンズ45による集光を収差補正環40により調整する、3)レーザ光として照射するパルスレーザ光の照射回数で調整する、4)レーザ光として照射するパルスレーザ光の照射間隔(隣り合う照射位置同士の間隔)を調整する、5)集光レンズ45と単結晶部材10とのオフセットを調整する、のいずれか又はこれらの組み合わせを行うことが有効である。
【0058】
図12は上記の2)の一例を示す図であり、(a)は収差補正環40で補正したレーザ光を集光レンズ45に入光させて照射することを示す側面図、(b)は(a)の部分拡大図である。集光レンズ45による集光を収差補正環40により調整する際、例えば
図12に示すように、集光レンズ45の外周部に入射したレーザ光が集光レンズ45の光軸(中心軸)と交差する位置が、その内周部側に入射したレーザ光が集光レンズ45の光軸(中心軸)と交差する位置よりも集光レンズ45側に位置するように調整する。
【0059】
また、以上の説明では収差補正を行う例で説明したが、第2工程でレーザ光の照射条件を調整することによって単結晶基板10sの剥離面10fの表面粗さRaが1未満となる限り、収差補正をしない構成にすることも可能である。
【0060】
また、本実施形態では、集光レンズ45のDF値を調整して単結晶部材10の被照射面である表面10tから改質層12までの距離を調整することにより、剥離して得られる単結晶基板10sの厚みを調整することが可能である。
【0061】
また、本実施形態では、内部改質層形成単結晶部材10としてシリコンウエハを用い、シリコンウエハ内部に改質層12を形成することが可能である。
【0062】
また、本実施形態では、金属製基板28u、28dを内部改質層形成単結晶部材11の上下面にそれぞれ貼り付けて、金属製基板28u、28dに力を加えて剥離することで単結晶基板10sを形成することで説明したが、エッチングにより改質層12を除去することで剥離してもよい。
【0063】
また、単結晶部材10はシリコンウエハに限定されるものではなく、シリコンウエハのインゴット、単結晶のサファイア、SiCなどのインゴットやこれから切り出したウエハ、あるいはこの表面に他の結晶(GaN、GaAs、InPなど)を成長させたエピタキシャルウエハなどを適用可能である。また、単結晶部材10の面方位は(100)に限らず、他の面方位とすることも可能である。
【0064】
<実験例1>
本発明者は、以下の実験を行い、第3工程で剥離して得られた単結晶基板10sの剥離面10f、および、剥離されたことで形成された単結晶部10u側の剥離面の表面粗さRaをそれぞれ測定した。実験条件および測定結果を
図13に示す。なお、本実験例では、収差補正を行う際には収差補正環40を用いた。
【0065】
(実施例1)
実施例1では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザAと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズと、上述の収差補正環40とを用い、レーザ光を、内部改質層形成単結晶部材10としてシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ基板表面から照射して内部加工する実験を行った。照射条件としては、レーザ照射間隔1μm、オフセット10μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0〜1mmとした。内部加工痕の状態の観察としては、レーザ走査方向に対して垂直な加工断面をへき開して得られた断面を、光学顕微鏡およびレーザ共焦点顕微鏡で観察した。実施例1では、以下のように照射条件を少しずつ変更して実施例1A〜1Dを行った。
【0066】
(実施例1A)
図14は、実施例1Aで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面の光学顕微鏡写真である。
図15は、実施例1Bで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図14の部分拡大図に相当する。
【0067】
実施例1Aでは、繰り返し周波数100kHz、パルス幅21ns、対物レンズ後出力(すなわち集光レンズ45を通過後のレーザ光の強度)0.4Wでシリコンウエハにレーザ光を照射して内部加工を行った。なお、レーザ光の走査方向は
図14、
図15で紙面手前側から紙面奥側に向く方向である(後述の
図16〜
図27でもこの方向)。
【0068】
図14に示される6つの加工痕48a〜fは、紙面左側から、順次、収差補正環40の目盛りを0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmに調整して形成したものである。また、
図15では、加工痕48c、48dを示す。
【0069】
(実施例1B)
図16は、実施例1Bで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面の光学顕微鏡写真である。
図17は、実施例1Bで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図16の部分拡大図に相当する。
【0070】
実施例1Bでは、繰り返し周波数100kHz、パルス幅21ns、対物レンズ後出力0.8Wでシリコンウエハにレーザ光を照射して内部加工を行った。
【0071】
図16に示される6つの加工痕50a〜fは、紙面左側から、順次、収差補正環40の目盛りを0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmに調整して形成したものである。また、
図17では、加工痕50c、50dを示す。
【0072】
(実施例1C)
図18は、実施例1Cで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面の光学顕微鏡写真である。
図19は、実施例1Cで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図18の部分拡大図に相当する。
【0073】
実施例1Cでは、繰り返し周波数200kHz、パルス幅39ns、対物レンズ後出力0.8Wでシリコンウエハにレーザ光を照射して内部加工を行った。
【0074】
図18に示される6つの加工痕52a〜fは、紙面左側から、順次、収差補正環40の目盛りを0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmに調整して形成したものである。また、
図19では、加工痕52c、52dを示す。
【0075】
(実施例1D)
図20は、実施例1Dで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面の光学顕微鏡写真である。
図21は、実施例1Dで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図20の部分拡大図に相当する。
【0076】
実施例1Dでは、繰り返し周波数200kHz、パルス幅39ns、対物レンズ後出力1.6Wでシリコンウエハにレーザ光を照射して内部加工を行った。
【0077】
図20に示される6つの加工痕54a〜fは、紙面左側から、順次、収差補正環40の目盛りを0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mmに調整して形成したものである。また、
図21では、加工痕54c、54dを示す。
【0078】
(実施例2)
図22は、実施例2で得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。
【0079】
実施例2では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザAと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0080】
照射条件としては、繰り返し周波数100kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅21ns、オフセット10μm、空気中換算でDF20〜80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとした。内部加工痕の状態の観察としては、レーザ走査方向に対して垂直な加工断面をへき開して得られた断面を観察した。
【0081】
(実施例3)
実施例3では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザBと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0082】
照射条件としては、繰り返し周波数50kHz、レーザ照射間隔2μm、対物レンズ後出力1.6W、パルス幅200ns、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとした。内部加工痕の状態の観察としては、レーザ走査方向に対して垂直な加工断面をへき開して得られた断面を観察した。実施例3では、以下のように照射条件を少しずつ変更して実施例3A、3Bを行った。
【0083】
(実施例3A)
図23は、実施例3Aで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。実施例3Aでは、オフセット1μmとした。
【0084】
(実施例3B)
図24は、実施例3Bで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。実施例3Bでは、オフセット5μmとした。
【0085】
(実施例4)
実施例4では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザBと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0086】
照射条件としては、繰り返し周波数50kHz、レーザ照射間隔1μm、オフセット1μm、対物レンズ後出力0.7W、パルス幅200ns、空気中換算でDF70μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとした。内部加工痕の状態の観察としては、レーザ走査方向に対して垂直な加工断面をへき開して得られた断面を観察した。実施例4では、以下のように照射条件を少しずつ変更して実施例4A〜4Cを行った。
【0087】
(実施例4A)
図25は、実施例4Aで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。実施例4Aでは照射回数を1回とした。
【0088】
(実施例4B)
図26は、実施例4Bで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。実施例4Bでは照射回数を2回とした。
【0089】
(実施例4C)
図27は、実施例4Cで得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの断面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。実施例4Cでは照射回数を3回とした。
【0090】
(実施例5)
図28は、実施例5で得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの剥離面10fのレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図29は、実施例5で得られた単結晶部10u側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。
【0091】
実施例5では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザAと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0092】
照射条件としては、繰り返し周波数200kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅39ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0.6mmとし、シリコンウエハ基板へ5mm×20mmの領域へレーザ光で内部加工した。
【0093】
そして、内部加工したシリコンウエハ基板の両面に接着剤を介して金属板をそれぞれ接着して剥離して得られた剥離面(露出面)を、レーザ共焦点顕微鏡で観察した。
【0094】
(実施例6)
図30は、実施例6で得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図31は、実施例6で得られた単結晶部10u側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。また、
図32は、実施例6で得られた単結晶基板10sの剥離面のSEM観察像であり、
図33は、実施例6で得られた単結晶部10u側の剥離面のSEM観察像である。
【0095】
実施例6では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザAと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0096】
照射条件としては、繰り返し周波数200kHz、対物レンズ後出力1.2W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅39ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0.6mmとし、シリコンウエハ基板へ5mm×20mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面をレーザ共焦点顕微鏡および走査電子顕微鏡で観察した。
【0097】
(実施例7)
図34は、実施例7で得られた単結晶基板(シリコンウエハ)10sの剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図35は、実施例7で得られた単結晶部10u側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。また、
図36は、実施例6で得られた単結晶基板10sの剥離面のSEM観察像であり、
図37は、実施例7で得られた単結晶部10u側の剥離面のSEM観察像である。
【0098】
実施例7では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザCと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0099】
照射条件としては、繰り返し周波数200kHz、対物レンズ後出力0.6W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅60ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0.6mmとし、シリコンウエハ基板へ5mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面をレーザ共焦点顕微鏡および走査電子顕微鏡で観察した。
【0100】
(実施例8)
実施例8では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザBと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0101】
照射条件としては、繰り返し周波数50kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例4と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0102】
(実施例9)
実施例9では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザBと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0103】
照射条件としては、繰り返し周波数50kHz、対物レンズ後出力1.6W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0104】
(実施例10)
実施例10では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザBと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0105】
照射条件としては、繰り返し周波数100kHz、対物レンズ後出力0.5W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、照射回数を2回として、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0106】
(実施例11)
実施例11では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザCと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0107】
照射条件としては、繰り返し周波数200kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅80ns、オフセット2μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0.6mmとし、照射回数を2回として、シリコンウエハ基板へ5mm×10mmの領域で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0108】
(実施例12)
実施例12では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザDと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0109】
照射条件としては、繰り返し周波数100kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、照射回数を2回として、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0110】
(実施例13)
実施例13では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザDと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0111】
照射条件としては、繰り返し周波数100kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、照射回数を2回として、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0112】
(比較例1)
図38は、比較例1で得られた単結晶基板(シリコンウエハ)の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真であり、
図39は、比較例1で得られた単結晶部側の剥離面のレーザ共焦点顕微鏡写真である。また、
図40は、比較例1で得られた単結晶基板の剥離面のSEM観察像であり、
図41は、比較例1で得られた単結晶部側の剥離面のSEM観察像である。
【0113】
比較例1では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザAと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0114】
照射条件としては、繰り返し周波数200kHz、対物レンズ後出力1.6W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅39ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0.6mmとし、シリコンウエハ基板へ5mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0115】
(比較例2)
比較例2では、波長1064nmのレーザ光を供給するファイバーレーザCと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0116】
照射条件としては、繰り返し周波数200kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅60ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0.6mmとし、シリコンウエハ基板へ5mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0117】
(比較例3)
比較例3では、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザDと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0118】
照射条件としては、繰り返し周波数50kHz、対物レンズ後出力0.8W、レーザ照射間隔0.5μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。そして、実施例5と同様にして剥離し、得られた単結晶基板の剥離面を観察した。
【0119】
<実験例2>
本発明者は、波長1062nmのレーザ光を供給するファイバーレーザBと、集光レンズ45として開口数0.85の赤外用対物レンズとを用い、レーザ光をシリコンウエハ基板(厚み725μmの両面ミラー(100))へ照射して内部加工する実験を行った。
【0120】
照射条件としては、繰り返し周波数50kHz、対物レンズ後出力0.5W、レーザ照射間隔1μm、パルス幅200ns、オフセット1μm、空気中換算でDF80μm、シリコンウエハ基板に対する収差補正環40の調整長さ0mmとし、照射回数を1回として、シリコンウエハ基板へ10mm×10mmの領域へレーザ光で内部加工した。
【0121】
そして、へき開した断面に対して、後方散乱ラマンスペクトル測定を、He−Neレーザを光源とするHORIBA JOBIN YVON社製LabRAM HR−800を用いて行った。測定結果を
図42に示す。
【0122】
図42から判るように、レーザ光で内部加工してなる改質層12以外では、剥離前のシリコンウエハに機械的損傷がないことを確認した。
【0123】
なお、機械的損傷とは、機械加工など機械的な外力が要因となって生じる損傷をいう。機械的損傷がある基板は、その損傷部分から破損しやすく、機械的損傷のない基板と比較して機械的強度が低く、基板としての品質が低い。機械的損傷は、ラマンスペクトル測定やX線構造解析などを用いて、機械的損傷の有無を確認することができる。ラマン分光測定では、基準とする結合の半値幅の広がりから結晶の完全性に関する知見が得られる。これを利用することで、機械的損傷の位置を確認できる。