特許第5843411号(P5843411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843411
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】新規な空冷式構造の電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6566 20140101AFI20151217BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20151217BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20151217BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20151217BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20151217BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20151217BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20151217BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20151217BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   H01M10/6566
   H01M10/6563
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/617
   H01M10/663
   H01M10/647
   H01M2/10 S
   H01M2/02 K
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-514794(P2014-514794)
(86)(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公表番号】特表2014-519180(P2014-519180A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】KR2012004413
(87)【国際公開番号】WO2012177000
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0059892
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504111015
【氏名又は名称】エルジー ケム. エルティーディ.
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジェホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジェフン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン サンユン
(72)【発明者】
【氏名】パク ウォンチャン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨンホ
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−034297(JP,A)
【文献】 特開2010−262870(JP,A)
【文献】 特開2006−128123(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098598(WO,A2)
【文献】 特開2007−042637(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/021843(WO,A2)
【文献】 韓国公開特許第10−2001−0059123(KR,A)
【文献】 国際公開第2009/151287(WO,A2)
【文献】 特開2007−042647(JP,A)
【文献】 特開2009−302036(JP,A)
【文献】 特開2004−047363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00−2/10、10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電が可能な電池セル又は単位モジュール(「単位セル」)を有している電池パックであって、複数の前記単位セルが一つの電池モジュールを構成し;
2つ以上の前記電池モジュールが電池パックの高さ方向(縦方向)に上下配列されて一対の電池モジュール群を構成し;
冷媒流入口から電池モジュール群に至る流動空間(「冷媒流入部」)は、それぞれの電池モジュール群の間に位置した状態でパックケースの中央に形成されており;
それぞれの電池モジュール群から冷媒排出口に至る流動空間(「冷媒排出部」)は、パックケースの上部と下部にそれぞれ形成されており;
前記冷媒流入部と冷媒排出部間の冷媒流路は、冷媒流入部を通って流入した冷媒がそれぞれの単位セルを通過して冷却した後、それぞれの冷媒排出部から排出される構造となっており、
前記冷媒流入部を中心にして上部と下部にそれぞれ電池モジュール群(上部電池モジュール群、下部電池モジュール群)が配列されており、冷媒が上部電池モジュール群と下部電池モジュール群にそれぞれ流入するように、冷媒流路が冷媒流入部から電池パックの幅方向に分岐しており、
前記冷媒流入部には、電池モジュール群との距離が冷媒流入口の対向端部に向かうほど減少する構造の分岐部材が装着されており、
前記分岐部材は、パックケースの上部に形成された冷媒排出部の高さと下部に形成された下部冷媒排出部の高さとの比に対応して反比例関係で冷媒流入口において電池モジュール群との距離が調節されており、
前記単位セルは、単位セルの厚さの5〜50%の大きさで離隔していることを特徴とする、電池パック。
【請求項2】
前記それぞれの電池モジュール群は、電池パックの幅方向に隣接して側面配列された一つ以上の電池モジュールをさらに有していることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記上部電池モジュール群の上面と前記パックケースの上面の間及び前記下部電池モジュール群の下面と前記パックケースの下面の間は、冷媒流路が形成されるように所定の幅で離隔していることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記離隔幅は、電池モジュールの高さの5〜50%の大きさを有することを特徴とする、請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記冷媒流入部の高さは、冷媒排出部の高さの20〜90%の大きさを有することを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記パックケース内部の冷媒流路は全体として一対のU字状の冷媒流路を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項7】
前記冷媒流入口及び/又は冷媒排出口には、冷媒の流動駆動力を提供できるように駆動ファンがさらに装着されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項8】
前記冷媒流入口は、冷却された低温の空気を流入可能なように車両のエアコンシステムに連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項9】
前記電池パックは、高さが幅の2倍以上である構造になっていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項10】
前記冷媒流入口と冷媒排出口は、パックケースの同一面又は対向面に位置していることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項11】
前記電池パックは、冷媒流入部を基準にして上下対称の構造となっていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項12】
パックケースの上面及び/又は下面が2つ又はそれ以上の連続した傾斜面を有することを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項13】
前記分岐部材は、電池モジュール群に対面する部位が2つ又はそれ以上の連続した傾斜面を有していることを特徴とする、請求項に記載の電池パック。
【請求項14】
前記分岐部材は、冷媒流入口の対向端部に対応する表面に凹凸が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の電池パック。
【請求項15】
前記電池モジュールは、冷媒流路が連通した状態で連続して上下配列されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項16】
前記電池モジュールは、8〜24個の単位セルで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項17】
前記単位モジュールは、電極端子が直列に相互連結されている2つ以上の電池セル、及び前記電極端子部位を除いて前記電池セルの外面を取り囲むように相互結合される一対のセルカバーを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項18】
前記電池セルは、樹脂層と金属層を有するパウチ形ケースに電極組立体が内蔵された構造となっていることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項19】
前記電池セルはリチウム二次電池であることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項20】
前記冷媒は空気であることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項21】
前記単位セルは、冷媒流動のための離隔距離をもって電池パックの幅方向(横方向)に直立配列されて一つの電池モジュールを構成することを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載の電池パックを電源として使用することを特徴とする、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ−インハイブリッド電気自動車、又は電力貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電が可能な電池セル又は単位モジュール(「単位セル」ともいう)を含む電池パックであって、複数の単位セルが一つの電池モジュールを構成し;2つ以上の電池モジュールが冷媒流入口の冷媒流入方向から電池パックの高さ方向に上下配列されて一対の電池モジュール群を構成し;冷媒流入口から電池モジュール群に至る冷媒流入部は、それぞれの電池モジュール群の間に位置した状態でパックケースの中央に形成されており;それぞれの電池モジュール群から冷媒排出口に至る冷媒排出部は、パックケースの上部と下部にそれぞれ形成されており;前記冷媒流入部と冷媒排出部との間の冷媒流路は、冷媒流入部から流入した冷媒がそれぞれの単位セルを通過しつつ冷却させた後、それぞれの冷媒排出部から排出されるように構成された電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、充放電可能な二次電池がワイヤレスモバイル機器のエネルギー源として広範囲に使用されている。また、二次電池は、化石燃料を使用する既存のガソリン車両、ディーゼル車両などにおける大気汚染などを解決するための方案として提示されている電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としても注目されている。
【0003】
小型のモバイル機器にはデバイス1台当たり1個又は2〜3個の電池セルが使用されるのに対し、自動車などの中大型のデバイスには、高出力・大容量の必要性から、多数の電池セルを電気的に連結した中大型の電池モジュールが使用されている。
【0004】
中大型の電池モジュールは、可能な限り、小さい大きさと重量で作製されるのが好ましい。そのため、高い集積度で積み重ね可能であり、且つ容量対比重量が小さい角形電池、パウチ形電池などが中大型の電池モジュールの電池セルとして主に使用されている。特に、アルミニウムラミネートシートなどを外装部材として使用するパウチ形電池は、重量が小さく、製造コストが低く、形態変形が容易であるという点から最近高い関心を集めている。
【0005】
中大型の電池モジュールが、所定の装置又はデバイスで要求する出力及び容量を提供するには、多数の電池セルを直列、又は直列及び並列方式で電気的に連結し、且つ外力に対して安定した構造を維持する必要がある。
【0006】
また、中大型の電池モジュールを構成する電池セルは、充放電可能な二次電池で構成されており、このような高出力・大容量の二次電池は充放電過程で多量の熱を発生させることがあるが、充放電過程で発生した単位電池の熱が效果的に除去されないと、熱蓄積がおき、結果として単位電池の劣化を促進し、場合によっては発火又は爆発につながることもある。このことから、高出力・大容量の電池である車両用電池パックには、内蔵している電池セルを冷却させる冷却システムが必要である。
【0007】
一方、多数の電池セルで構成された中大型の電池パックにおいて、一部の電池セルの性能低下は全体電池パックの性能低下を招くことになる。このような性能のばらつきを誘発する主要原因の1つに電池セル間の冷却のばらつきがあり、よって、冷媒の流動時に冷却均一性を確保できる構造が望まれている。
【0008】
従来技術に係る中大型電池パックの例には、図1に示すように、単位セルが電池パック20の幅方向Wに直立配列されて1層の電池モジュール10を構成し、例えば4層の電池モジュール10が電池パック20の高さ方向に積層配列されてパックケース15に内蔵されている電池パックが挙げられる。
【0009】
すなわち、上部に形成された冷媒流入部11から流入した冷媒は、縦方向に積層された単位セル同士の間に形成されている流路を順次に通過しつつ単位セルを冷却させ、下部に形成された冷媒排出部12から外部に排出される。
【0010】
しかしながら、このような構造は、層間に温度ばらつきを生じる他、冷媒流路の増加により差圧が発生することから、電池セル間の均一な冷却が得難いという問題点を抱えている。
【0011】
そこで、このような問題点を根本的に解決できる技術が切実に望まれている実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点、及び過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0013】
本発明の目的は、新規な構造により、層間に発生する単位セル間の温度偏差及び差圧を最小化することによって、単位セルの性能低下を抑制し、冷却効率性を向上させることができる電池パックを提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、適用されるデバイスの構造に応じて容易に冷媒流路の変更ができ、設計の柔軟性に富む電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するための本発明に係る電池パックは、充放電が可能な電池セル又は単位モジュール(「単位セル」)を有している電池パックであって、
複数の前記単位セルが一つの電池モジュールを構成し;
2つ以上の前記電池モジュールが冷媒流入口の冷媒流入方向から電池パックの高さ方向(縦方向)に上下配列されて一対の電池モジュール群を構成し;
冷媒流入口から電池モジュール群に至る流動空間(「冷媒流入部」)は、それぞれの電池モジュール群の間に位置した状態でパックケースの中央に形成されており;
それぞれの電池モジュール群から冷媒排出口に至る流動空間(「冷媒排出部」)は、パックケースの上部と下部にそれぞれ形成されており;
前記冷媒流入部と冷媒排出部間の冷媒流路は、冷媒流入部を通って流入した冷媒がそれぞれの単位セルを通過して冷却した後、それぞれの冷媒排出部から排出される構造となっている。
【0016】
したがって、本発明に係る電池パックは、上記の構造により冷媒が流動する流路及び流速が著しく減少するため、単位セルの熱を效果的に除去し、各電池モジュール群における単位セルの温度ばらつきを大幅に低減させることができる。
【0017】
一つの好適な例において、前記それぞれの電池モジュール群は、必要によって、電池パックの幅方向に隣接して側面配列された一つ以上の電池モジュールをさらに有していてもよい。
【0018】
一方、前記電池モジュール群の上面及び下面とパックケースの上面及び下面との間は、冷媒流路が形成されるように所定の幅で離隔していればよく、この場合、パックケースの一側から流入した冷媒は、このような離隔空間を通過しながら電池モジュールを所定の温度ばらつき範囲内で均一に冷却させることができる。
【0019】
上記構造において、電池モジュール群の外側面とパックケースの内側面との間に形成される離隔幅は、電池モジュールを所定の温度ばらつき範囲内で均一に冷却させると同時に全体的な電池パックの大きさを適正にできる範囲で設定されるとよく、例えば、該離隔幅は、電池モジュールの高さの0〜100%の大きさであればよい。
【0020】
場合によっては、電池モジュール群の外側面とパックケースの内側面との間に、電池モジュールの高さの5〜30%の大きさの離隔幅が形成されてもよい。
【0021】
一方、流入した冷媒が冷媒流入部から遠く離れた電池セルまで十分に到達できるように、冷媒流入部の高さは、冷媒排出部の高さの20〜90%の大きさを有することが好ましい。こうすると、冷媒の流量が同一である条件において、相対的に均一な流量分配効果を発揮する。
【0022】
他の好適な例において、冷媒排出部はパックケースの上部と下部に形成されており、前記冷媒流入部は電池モジュール群の間に位置していればよく、これは、冷媒流入部から冷媒排出部までの流路の長さを最小化できるため好ましい。すなわち、前記パックケース内部の冷媒流路は、全体として一対のU字状の冷媒流路を形成する構造になっていればよい。
【0023】
場合によっては、前記冷媒流入口及び/又は冷媒排出口には、冷媒流入部から流入した冷媒が電池モジュールを貫通したのち迅速で円滑に冷媒排出口に移動して電池パックの外部に排出されるように、好ましくは、冷媒の流動駆動力を提供できる駆動ファンがさらに装着されていればよい。
【0024】
さらに他の好適な例において、前記冷媒流入口は、冷却された低温の空気が流入するように車両のエアコンシステムに連結されていてもよく、低温の空気の利用により、常温の空気を利用する空冷式冷却構造に比べてより效果的に単位セルを冷却させることができる。
【0025】
また、本発明に係る電池パックは、冷却効率性が特に問題となる構造、すなわち、電池パックの高さが幅の2倍以上である構造において好ましく、高さが幅の2倍〜6倍である電池パックにおいてより好ましい。
【0026】
本発明の電池パックにおいて冷媒流入部と冷媒排出部は様々に構成可能であり、一部の好適な例を下記に説明する。
【0027】
第一の例として、前記電池パックの冷媒流入口と冷媒排出口は、パックケースの同一面又は対向面に位置する構造でよい。このような構造は、電池パックが適用されるデバイスの構造に応じて冷媒流入部と冷媒排出部の位置を変化させることができ、設計柔軟性に優れる。
【0028】
また、前記電池パックは、冷媒の均一な流動のために、好ましくは、冷媒流入部を基準にして上下対称の構造になっていてもよい。こうすれば、従来の冷媒流路に比べて流路の長さを大幅に短縮でき、非常に好ましい。
【0029】
第二の例として、前記パックケースの上面及び/又は下面が、冷媒排出の効率性を高めるために2つ又はそれ以上の連続した傾斜面を有していてもよい。
【0030】
第三の例として、前記冷媒流入部を中心にして上部と下部にそれぞれ電池モジュール群(上部電池モジュール群、下部電池モジュール群)が配列されており、冷媒が上部電池モジュール群と下部電池モジュール群にそれぞれ流入するように、冷媒流路が冷媒流入部から電池パックの幅方向に分岐されていてもよい。
【0031】
具体的に、前記冷媒流入部には、電池モジュール群との距離が冷媒流入口の対向端部に向かうほど減少する構造の分岐部材が装着されていてもよい。これによれば、冷媒の移動速度は次第に速くなるが、冷媒流量は減少するため、それぞれの電池モジュール群別に均一な量が導入される。
【0032】
すなわち、冷媒流入部が分岐部材により分岐されて垂直断面幅が減少する構造では、単位セルの温度ばらつきを低減させ、その性能をより向上させることができるため、非常に好ましい。
【0033】
また、本発明によれば、前記分岐部材は、パックケースの上部に形成された冷媒排出部の高さと下部に形成された下部冷媒排出部の高さとの比に対応して反比例の関係で冷媒流入口において電池モジュール群との距離が調節される構造であってもよい。
【0034】
一例として、パックケースの上面に形成された冷媒排出口の高さが下面に形成された冷媒排出口の高さよりも小さい場合は、前記上面に形成された冷媒排出口に印加される圧力が大きくなるので、冷媒流入口に流入する冷媒のうちの相対的に多量の冷媒が前記上部電池モジュール群の方に流動するよう、上部電池モジュール群との距離が相対的に大きくなるように前記分岐部材の位置が調節されるとよい。
【0035】
このように、分岐部材により冷媒が上部電池モジュール群と下部電池モジュール群に均一に流動できるようにすることによって、電池パックの冷却効率性を向上させることができる。
【0036】
前記分岐部材は、好ましくは、電池モジュール群に対面する2つ又はそれ以上の連続した傾斜面を有する構造であってもよい。すなわち、冷媒流入口の端部から始まって冷媒流入口の対向端部に向かうほど勾配が増加する傾斜面が形成されていればよい。
【0037】
これによれば、冷媒流入部から流入した冷媒が、連続した傾斜面を通過しつつ流速が次第に増加して冷媒流入部の対向端部まで到達するので、冷媒流入部に近接した単位セルも、冷媒流入部から遠くに位置している単位セルも均一に冷却させることが可能になる。
【0038】
また、前記分岐部材において冷媒流入口の対向端部に対応する表面には凹凸が形成されていてもよい。すなわち、前記分岐部材は、冷媒渦流を生成するための凹凸部が冷媒流入口の対向端部に対応する表面に形成されており、単位セル間の流路に流れる冷媒の流量を均一にできるため、電池セルの充放電時に発生した熱を均一な冷媒の流動により效果的に除去することができる。結果として、冷却効率性を高め、単位セルの作動性能を向上させることができる。
【0039】
一方、前記電池モジュールは、冷媒流路が連通した状態で連続して上下配列されていてもよい。
【0040】
一方、前記電池モジュールは、それを必要とする車両の駆動出力及び車両の高さの制約によって単位セルの個数が異なることがあり、例えば、8〜24個の単位セルで構成されるとよい。
【0041】
参考として、本明細書で使われた電池モジュールという用語は、2つ又はそれ以上の充放電電池セル又は単位モジュールを機械的に締結して同時に電気的に連結することで高出力・大容量の電気を提供できる電池システムの構造を包括的に意味するので、それ自体が1つの装置を構成する場合も、大型装置の一部を構成する場合も含む。例えば、小型の電池モジュールを多数個連結した大型の電池モジュールの構成も可能であり、電池セルを少数個連結した単位モジュールを多数個連結した構成も可能である。
【0042】
前記単位セルは、冷媒が単位セル同士の間を通過しつつ単位セルを效果的に冷却させるように、単位セルの厚さの5〜50%の幅で相互離隔していてもよい。
【0043】
例えば、単位セル同士の離隔空間が単位セル厚の5%未満であると、冷媒の所望の冷却効果が得難く、50%を超えると、多数個の単位セルで構成された電池モジュールの大きさが全体的に増加するため好ましくない。
【0044】
一方、前記単位モジュールは、例えば、電極端子が上端及び下端にそれぞれ形成されている板状型の電池セルが直列に相互連結されているもので、前記電極端子が直列に相互連結されている2つ又はそれ以上の電池セル、及び前記電極端子部位を除いて前記電池セルの外面を取り囲むように相互結合される一対の高強度セルカバーを備えていてもよい。
【0045】
前記板状型の電池セルは、電池モジュールの構成のために積み重ねられたとき、全体大きさを最小化するように薄い厚さと相対的に広い幅及び長さを持つ電池セルである。その好適な例としては、樹脂層と金属層を有するラミネートシートの電池ケースに電極組立体が内蔵されており、上下両端部に電極端子が突出している構造の二次電池を挙げることができ、具体的に、アルミニウムラミネートシートのパウチ形ケースに電極組立体が内蔵されている構造であってよい。このような構造の二次電池を「パウチ形電池セル」と称するものとする。
【0046】
前記電池セルは二次電池であって、その代表に、ニッケル水素二次電池、リチウム二次電池などが挙げられ、特に、エネルギー密度が高く、放電電圧が大きいリチウム二次電池が好ましい。
【0047】
一方、前記冷媒は、好ましくは空気であるが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記単位セルは、冷媒流動のための離隔距離をもって電池パックの幅方向(横方向)に直立配列されて一つの電池モジュールを構成する構造であればよい。
【0049】
本発明はまた、前記電池パックを電源として使用することを特徴とする電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ−インハイブリッド電気自動車、又は電力貯蔵装置を提供する。
【0050】
特に、前記電池パックを電源として使用する電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグ−インハイブリッド電気自動車では、前記電池パックが車両のトランクに装着される構造がより好ましい。
【0051】
電池パックを電源として使用する電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ−インハイブリッド電気自動車、電力貯蔵装置などは当業界に公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、従来技術に係る中大型電池パックの平面模式図である。
図2図2は、本発明に係る電池パックの実施例を示す図である。
図3図3は、本発明に係る電池パックの実施例を示す図である。
図4図4は、本発明に係る電池パックの実施例を示す図である。
図5図5は、パウチ形電池セルの斜視図である。
図6図6は、単位モジュールの構成のために図5の電池セルが装着されるセルカバーの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しつつ本発明をより詳しく説明するが、これは、本発明のより容易な理解を助けるためのもので、本発明の範ちゅうを限定するためのものではない。
【0054】
図2に、本発明の一実施例に係る電池パックの平面図を模式的に示す。
【0055】
図2を参照すると、電池パック200は、単位セル101が冷媒流動のための離隔距離をもって電池パック200の幅方向に直立配列されて一つの電池モジュール100を構成し、2個の電池モジュール100が冷媒流入口120の冷媒流入方向から電池パック200の高さ方向に上下配列されて一対の電池モジュール群110を構成している。
【0056】
冷媒流入口120から電池モジュール群110に至る冷媒流入部121は、それぞれの電池モジュール群110の間に位置した状態でパックケース150の中央に形成されており、それぞれの電池モジュール群110から冷媒排出口130に至る冷媒排出部131は、パックケース150の上部と下部にそれぞれ形成されており、全体として、パックケース150内部の冷媒流路は一対のU字状の冷媒流路を形成している。
【0057】
また、冷媒流入部121の高さhは、冷媒排出部131の高さHの約80%の大きさを有する。場合によっては、前記冷媒排出部131の高さHは電池モジュールの高さdの約40%の大きさの離隔幅Hを持つように形成されており、電池モジュール群110の外側面とパックケース150の内側面との間には、電池モジュールの高さdの約10%の大きさを持つ離隔幅tが形成されている。
【0058】
このような離隔幅は、必要に応じて、電池モジュールの高さdの0〜100%の大きさ範囲で可変してもよいことは勿論である。
【0059】
したがって、冷媒流入部121に流入した冷媒は、電池モジュール群110を垂直に貫通して流れ、一部冷媒は電池モジュール群110の外側面とパックケース150の内側面との間の空間を通過した後、冷媒排出口130から外部に排出される。
【0060】
さらに、冷媒流入口120は、車両のエアコンシステム(図示せず)に連結されており、冷却された低温の空気が冷媒流入口120に流入し、電池モジュール群110を垂直に貫通して流れて冷媒排出口130から排出されるので、常温の空気を利用する空冷式冷却システムと比べて、電池モジュール100の冷却効率を大幅に向上させることができる。
【0061】
一方、冷媒流入部121には、電池モジュール群110との距離が冷媒流入口120との対向端部に向かうほど減少する分岐部材300が装着されている。
【0062】
この場合、分岐部材300は一方の電池モジュール群110の上側に装着され、他方の電池モジュール群110の電池モジュール100の内部に装着された電池セルを支持することができる。
【0063】
これにより、冷媒がそれぞれの電池モジュール群に流入可能となるように冷媒流路が分岐され、それぞれの電池モジュール群別に均等な量の冷媒が導入される。
【0064】
上記のような構造を有する分岐部材300が適用された本発明によれば、電池セル間の温度ばらつき及び差圧が従来に比べて略1/4に減少する。
【0065】
図3には、本発明の他の実施例に係る電池パックの平面図を模式的に示す。
【0066】
図3図2と共に参照すると、電池パック200aの冷媒流入口120と冷媒排出口130aはパックケース150aの対向面に位置しており、且つパックケース150aの上面及び下面は傾斜面を有している。
【0067】
また、分岐部材300aにおいて、電池モジュール群110に対面する部位が2つの連続した傾斜面を有する構造となっており、冷媒流入口120の対向端部に対応する表面には冷媒渦流を生成するための凹凸310が形成されている以外は、図2の説明と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0068】
図4には、本発明の更に他の実施例に係る電池パックの平面図を模式的に示す。
【0069】
図4図2と共に参照すると、それぞれの電池モジュール群110は、電池パック200bの幅方向に隣接して側面配列された4個の電池モジュール100をさらに含む構造になっている以外は、図2の説明と同一であり、詳細な説明は省略する。
【0070】
図5には、パウチ形電池セルの斜視図を模式的に示す。
【0071】
図5を参照すると、パウチ形電池50は、2つの電極リード51,52が相対向して電池本体53の上端部と下端部にそれぞれ突出している構造となっている。外装部材54は上下2単位で構成されており、それらの内面に形成されている収納部に電極組立体(図示せず)を装着した状態で相互接触部位である両側面55と上端部及び下端部56,57を貼り付けることで電池50を作製する。
【0072】
上下の外装部材54はそれぞれ、樹脂層/金属箔層/樹脂層のラミネート構造になっており、互いに接する両側面55、上端部及び下端部56,57に熱と圧力を加えて樹脂層を相互融着させることで貼り合わせるとよく、場合によっては、接着剤を使って貼り合わせてもよい。両側面55は、上下の外装部材54の同一の樹脂層が直接接するから、溶融により均一なシールが可能となる。一方、上端部56と下端部57には電極リード51,52が突出しており、電極リード51,52の厚さ及び外装部材54の素材との異質性を考慮してシール性を高めるべく、電極リード51,52との間にフィルム状のシール部材58を介在した状態で熱融着させる。
【0073】
図6には、単位モジュールの構成のために図5の電池セル2個が装着されるセルカバーの斜視図を示す。
【0074】
図6を参照すると、セルカバー500は、図5に示したようなパウチ形電池セル(図示せず)2個を内蔵し、これら電池セルの機械的剛性を補完するとともに、モジュールケース(図示せず)への装着を容易にする役割を担う。これら2個の電池セルはその一側電極端子が直列に連結されたのち折れ曲がって相互密着した構造でセルカバー500の内部に装着される。
【0075】
セルカバー500は、相互結合方式の一対の部材510,520で構成されており、高強度金属板材からなっている。セルカバー500の左右両端には、モジュールの固定を容易にする役割を担う段差530が形成されており、上端と下端にも同様、同役割を担う段差540が形成されている。また、セルカバー500の上端と下端には幅方向に固定部550が形成されており、モジュールケース(図示せず)への装着を容易にする。
【0076】
以上の諸実施例のように、電池パックは、冷媒流入口及び冷媒排出口を、電池パックが適用されるデバイスの構造に対応するように形成することができ、且つ、それぞれの電池モジュール群の間に位置した状態でパックケースの中央に形成されている冷媒流入部、パックケースの上部と下部にそれぞれ形成されている冷媒排出部、及び冷媒流入部に装着されている分岐部材を有することによって、単位セルの熱を效果的に除去し、温度ばらつきを大幅に低減させることができる。
【0077】
以上、本発明の実施例に係る図面を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を有する者にとっては、上記内容に基づき、本発明の範ちゅう内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明した通り、本発明に係る電池パックは、パックケースの中央に冷媒流入部、及びパックケースの上部と下部に冷媒排出部をそれぞれ形成し、好ましくは冷媒流入部に分岐部材を装着することによって、各単位セルに均一に冷媒を供給し、これによる冷却過程で単位セル間の温度差及び差圧を最小化することができる。
【0079】
さらに、本発明に係る電池パックは、それが適用されるデバイスの構造に応じて容易に冷媒流路の変更ができ、設計の柔軟性に富む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6