【実施例】
【0029】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、各例中の配合量は、特に断りのない限り質量%を示す。
【0030】
試験1
高濃度CPCを組成物中に配合する場合、その苦みをマスキングするために油溶性香料、特にメントールの配合が必要になる。そこでまず、メントールを可溶化でき、かつメントールの結晶の析出を起こさない系を確立するため、各種基剤成分(アルコール及び界面活性剤)にメントールが安定に溶解するか検討した。
【0031】
<組成物の調整>
表1に記載の組成で各成分を泡立てないよう撹拌混合して、各組成物(参考例1〜25)を製造した。なお、メントールはエタノールに一旦溶解させてから用いた。
【0032】
<組成物の性能評価>
製造した各組成物について、目視により白濁もしくはメントールの結晶の析出が起こるかを観察し、組成物の安定性を評価した。具体的には、製造直後のもの及び製造後5℃で一週間静置させたものを目視し、白濁もしくは結晶の析出が起こるか、又は透明であるかを判定した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
試験2
試験1の結果から、メントールを溶解させるのに適すると考えられる基剤成分を選択した。そして、さらにこれらの成分とメントール及びCPCを表2に記載の組成で混合して各種組成物(参考例26〜30)を調製し、それぞれの組成物の安定性を評価した。具体的には、製造直後のもの及び製造後5℃で一週間静置させたものを目視し、おりが出るなどして白濁するか、それとも透明であるかを判定した。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
当該結果から、基剤成分としてアニオン性界面活性剤を用いた場合には白濁が起こり安定性が不良である一方、基剤成分としてノニオン性界面活性剤を用いた場合には安定性に優れることがわかった。
【0037】
試験3
ノニオン性界面活性剤、メントール及びCPCを表3に記載の組成で混合して各種組成物(参考例29〜34)を調製し、それぞれの組成物中のCPCのヒドロキシアパタイト(以下「HA」ということがある)への吸着能を下記の方法により検討した。結果を表3に示す。なお、ヒドロキシアパタイトは歯牙表面(エナメル層)と同様の構造を有しており、CPCのヒドロキシアパタイトへの吸着能が高いほど、CPCの抗菌活性が保持され、歯牙表面での歯垢形成を抑制できると考えられる。
【0038】
<CPCのヒドロキシアパタイトへの吸着能測定方法>
検討は、各評価サンプルについてn=2で行った。
【0039】
まず、自然分泌唾液70mLを遠心分離して(11000rpm、10分、5℃)上清を採取した。そして当該上清を1時間紫外線照射して実験用唾液とし、その後使用時まで冷蔵保存した。
【0040】
次にHA300mgをPP(ポリプロピレン製)チューフ゛(15mL)に秤量し、蒸留水2mLを添加した。これをタッチミキサーで3秒攪拌後、振とう機で1時間以上振とうし、遠心分離(3000rpm、10分)して上清を除去した。さらにこれに実験用唾液2mLを添加し、タッチミキサーで3秒攪拌後、シーソーシェイカーで37℃恒温室内、一晩振とうしペリクル(獲得被膜)を形成させた。ペリクル形成後、遠心分離(3000rpm、10分)し、上清を除去した。
【0041】
さらに、当該ペリクルを形成させたヒドロキシアパタイトが入った該チューブへ各組成物2mLを試料としてそれぞれ添加し、タッチミキサーで3秒攪拌後、シーソーシェイカーで37℃恒温室内、15分間振とうし、遠心分離(3000rpm、5分)して上清を除去した。
【0042】
これらのチューブに対して「蒸留水2mLを添加して、タッチミキサーで3秒攪拌後、遠心分離(3000rpm、5分)し、上清を除去」という洗浄操作を2回行った。そして、ヒドロキシアパタイト上のCPCを検出するため、HPLC移動層(SLS混液)5mLを添加し、タッチミキサーで3秒攪拌後、振とう機で10分間振とうし、遠心分離(3000rpm、5分)して上清を50mLメスフラスコへ移した。HPLC移動層(SLS混液)で当該メスフラスコを50mLにメスアップし、HPLCでCPC含量を測定した。
【0043】
なお、HPLC移動層として用いたSLS混液は、以下のようにして調製した。
(1)クエン酸二水素ナトリウム4.64gとり、水500mLに溶解する。
(2)クエン酸一水和物4.2gとり、水500mLに溶解する。
(3)クエン酸一水和物溶液をクエン酸二水素ナトリウム溶液に加えながら、pH3.0に調整する。
(4)この液500mLにラウリル硫酸ナトリウムを1.44g溶解させ、アセトニトリル1500mLを加える。
【0044】
このようにして測定されるCPC量は、HAに吸着したCPC量を表す。測定値を基にし、各組成物中に含まれていたCPC量を100%としたときHA吸着CPC量が何%に当たるかを算出して表3に示す。なお、CPCを精製水に溶解させた組成物をコントロールとして用いた(表3)。
【0045】
【表3】
【0046】
当該結果から、ノニオン性界面活性剤はメントールを可溶化させるには有用であるが、CPCのヒドロキシアパタイトへの吸着能を低下させてしまうことがわかった。吸着能が低下すると、組成物に含まれるCPCの歯垢形性抑制効果は低下してしまうため、好ましくない。限定的な解釈は望まないが、このような結果となるのは、界面活性剤によって塩化セチルピリジニウムの活性部位が不活化されたり、あるいは、界面活性剤により形成されるミセル中に塩化セチルピリジニウムが取り込まれる等するためではないかと考えられた。
【0047】
試験4
従来から、メントールの可溶化のためには界面活性剤が用いられてきたが、試験3の結果から、CPCを配合する組成物においてはノニオン性界面活性剤を用いるとCPCの効果を低下させてしまうことが強く示唆された。そこで、基剤成分として界面活性剤を用いずに、メントール及びCPCを安定に可溶化させ、苦み・刺激感が低減された組成物を得ることができないか検討した。具体的には、各種基剤成分、メントール及びCPCを表4に記載の組成で混合して各種組成物(検討例1〜18)を調製し、それぞれの組成物の安定性、並びに苦み及び刺激感を評価した。安定性評価については試験1と同様に行った。また、苦み及び刺激感の評価については、専門パネラー5人に各組成物にて口を濯いでもらい、最も人数の多い評価(+、−、又は±)を代表値として表4に示した。なお、+、−、±はそれぞれ以下の評価を示す。
【0048】
−:ほとんど感じられない、気にならない程度
±:やや感じられる、やや気になる
+:強く感じる、気になる
【0049】
【表4】
【0050】
当該結果から、各種基剤成分(エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、メントール及びCPCを混合するのみでは、CPCを安定に溶解し、かつ苦み及び刺激感が改善された組成物を得ることは難しいことがわかった。
【0051】
試験5
そこで、各種基剤成分(エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、メントール及びCPCに加え、さらにグリセリンを配合した組成物について詳細に検討した。具体的には、各種基剤成分、メントール、CPC及びグリセリンを表5に記載の組成で混合して各種組成物(実施例1〜29、比較例1〜17)を調製し、それぞれの組成物の安定性、並びに苦み・刺激感・灼熱感を評価した。安定性評価については試験1と同様に行った。また、苦み・刺激感・灼熱感の評価については、専門パネラー5人に各組成物にて口を濯いでもらい最も人数の多い評価(+、−、又は±)を代表値として表5に示した。なお、+、−、±はそれぞれ上記「試験4」で記載したものと同様の評価を示す。
【0052】
【表5】
【0053】
当該結果から、
(A)塩化セチルピリジニウムを0.1〜0.5質量%(好ましくは0.1〜0.3質量%)
(B)炭素数2〜4の一価又は二価のアルコール(特にエタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)を1〜15質量%
(C)l−メントールを0.05〜0.2質量%
(D)グリセリン
含有する組成物であれば、安定性、並びに苦み・刺激感・灼熱感が良好となることがわかった。
【0054】
試験6
各種基剤成分(エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、メントール、CPC、及びグリセリンを含有する組成物について、当該組成物中のCPCのヒドロキシアパタイトへの吸着能を検討した。当該検討は、試験3における「CPCのヒドロキシアパタイトへの吸着能測定方法」と同様にして行った。結果を表6に示す。なお、実施例31は実施例18と同じである。
【0055】
【表6】
【0056】
当該結果から、試験5において見出された、各種基剤成分(エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、メントール、CPC、及びグリセリンを適量含有する組成物であればCPC吸着量は減少せず、意外なことに、むしろCPC吸着量は増加することがわかった。