(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843418
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】オフロード用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/11 20060101AFI20151217BHJP
B60C 11/117 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
B60C11/11
B60C11/117
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-186509(P2009-186509)
(22)【出願日】2009年8月11日
(65)【公開番号】特開2010-42806(P2010-42806A)
(43)【公開日】2010年2月25日
【審査請求日】2012年6月27日
【審判番号】不服2014-5866(P2014-5866/J1)
【審判請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】61/188,610
(32)【優先日】2008年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002976
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE GOODYEAR TIRE & RUBBER COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アンソニー ノイバウアー
(72)【発明者】
【氏名】デール ユージン ウェルズ
(72)【発明者】
【氏名】モーリス ジェイコブ フランク
【合議体】
【審判長】
和田 雄二
【審判官】
氏原 康宏
【審判官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−98914(JP,A)
【文献】
特開2001−39124(JP,A)
【文献】
特開昭58−8408(JP,A)
【文献】
特開2003−205706(JP,A)
【文献】
特開昭52−84607(JP,A)
【文献】
特開2001−55014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C11/11,11/117
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスと、前記カーカスの半径方向の外側に位置するトレッドと、を有し、
前記トレッドは複数のラグを有し、各前記ラグは、前記トレッドの内側から前記半径方向の外側に延び第1のトレッド横縁部と第2のトレッド横縁部との間に位置しており、
第1の列をなす前記ラグが、前記第1のトレッド横縁部から軸線方向の内側に中央面に向かって第1のサイプまで延び、第2の列をなす前記ラグが、前記第2のトレッド横縁部から前記軸線方向の内側に前記中央面に向かって第2のサイプまで延びており、
前記第1の列の前記ラグは複数の肩部溝によって互いに分離され、前記第2の列の前記ラグも複数の肩部溝によって分離されており、
各前記肩部溝の角度は、前記軸線方向から、40度を超えて50度までの範囲内にあり、
第3の列をなす前記ラグが、前記第1の列をなす前記ラグと前記第2の列をなす前記ラグとの間に位置して、前記第3の列をなす前記ラグの軸線方向外側の両端は前記第1のサイプと前記第2のサイプとによって画定され、
前記各肩部溝は、前記第3の列のラグ内に位置する末端部で終端しており、
前記第1の列、第2の列、および第3の列における全ての前記ラグは円周方向に揃えられており、
前記第3の列の前記ラグは、向かい合う第1のジクザク溝および第2のジクザグ溝を有し、
前記向い合う第1のジクザク溝および第2のジクザグ溝は前記肩部溝よりも実質的に狭い、オフロード用タイヤ。
【請求項2】
前記第3の列の前記ラグは、前記向かい合う第1のジクザク溝および第2のジクザグ溝から形成される周方向の端部の2つの縁を有している、請求項1に記載のオフロード用タイヤ。
【請求項3】
前記第3の列の前記ラグは、前記肩部溝と交差している、請求項1に記載のオフロード用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、例えば土木工事用大型機械やリジッドホールダンプトラックなどの建設用車輛に用いられる、超大型で幅広のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
直径が127cm(50インチ)以上の超大型タイヤでは、非常に大きなタイヤ負荷やオフロード条件のために、タイヤの作動条件は苛酷である場合がある。さらに、車輛の速度が高い場合もあり、その場合タイヤ内に過度の熱の蓄積が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6929044号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0423059号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、走行中の冷却性能がより改善されたタイヤが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様に係るオフロード用タイヤは、カーカスと、カーカスの半径方向外側に位置するトレッドと、を有している。トレッドは、トレッドの内側から半径方向外側に延び第1のトレッド横縁部と第2のトレッド横縁部との間に位置する複数のラグを有し、ラグの第1の列は一方のトレッド横縁部から軸線方向内側に中央面に向かって延び、ラグの第2の列は他方のトレッド横縁部から軸線方向内側に中央面に向かって延びており、第1及び第2の列のラグは複数の肩部溝によって互いに分離されており、ラグの第3の列はラグの第1の列と第2の列との間に位置し、各列の全てのラグは円周方向に揃えられており、ラグの第3の列は溝によって形成される2以上の端部を有している。
【0006】
また、本発明の他の実施態様に係るオフロード用タイヤは、カーカスと、カーカスの半径方向外側に位置するトレッドと、を有し、トレッドは、第1のトレッド横縁部から延び中央面と交差しない複数の溝からなる第1の列と、第2のトレッド横縁部から中央面に向かって延びるが中央面と交差しない、円周方向に互いに揃えられた複数の溝からなる第2の列と、を有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るタイヤの正面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るタイヤの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で用いられる用語の定義を以下に示す。
【0010】
「アスペクト比」は、タイヤの断面高さの断面幅に対する比を意味する。
【0011】
「軸線方向の」および「軸線方向に」は、タイヤの回転軸に平行なラインまたは方向を意味する。
【0012】
「ビード」または「ビードコア」は一般に、タイヤの、環状の引張り部材を有する部分を意味し、半径方向内側ビードはタイヤのリムへの保持に関連し、プライコードで覆われ形成される。フリッパー、チッパ、頂部(エイペックス)またはフィラー、トウガード、チェーファーのような他の補強部材を有することもあれば、有しないこともある。
【0013】
「ベルト構造」または「補強ベルト」は、トレッドの下に位置し、ビードには固定されず、タイヤの赤道面に対して17°〜27°の範囲の左コード角度および右コード角度を有する、織物または不織布の互いに平行なコードからなる少なくとも2つの環状の層またはプライを意味する。
【0014】
「バイアスプライタイヤ」は、カーカスプライ内の補強コードが、ビードからビードまでタイヤを対角方向に横切ってタイヤの赤道面に対して約25°〜65°の角度で延び、プライコードが隣接する層同士で互いに逆の角度に延びることを意味する。
【0015】
「ブレーカ」または「タイヤブレーカ」は、ベルトまたはベルト構造、あるいは補強ベルトと同じことを意味する。
【0016】
「カーカス」は、タイヤプライ材料と、円筒状または環状に継ぎ合わすのに適した長さに切断されるかまたはすでに円筒状または環状に継ぎ合わされた他のタイヤ構成部材と、の積層体を意味する。加硫して成型タイヤを作る前にカーカスに他の部材を加えることもできる。
【0017】
「周方向の」は、軸線方向に垂直な環状のトレッドの表面の周縁に沿って延びるラインまたは方向を意味する。また、断面図で見たときに、半径がトレッドの軸線方向の湾曲を形成する、複数の組の互いに隣接する円曲線の方向を指すこともある。
【0018】
「コード」は、プライを補強するのに使用される、繊維を含む補強ストランドの1つを意味する。
【0019】
「インナーライナ」は、チューブレスタイヤの内面を形成し、膨張する流体をタイヤ内に閉じ込めるエラストマまたは他の材料の層を意味する。
【0020】
「インサート」は、通常ランフラットタイヤ型タイヤのサイドウォールを補強するのに使用される補強部材を意味し、また、トレッドの下方に位置する弾性インサートを指すこともある。
【0021】
「ネット/グロス比」は、タイヤ踏面内にあるトレッドの全面積に対する、タイヤ踏面内にあるトレッドの路面接触部分の面積の比率を意味する。
【0022】
「プライ」は、エラストマで覆われ、半径方向に展開されるか、半径方向に展開されていない場合は互いに平行なコードのコード補強層を意味する。
【0023】
「半径方向の」および「半径方向に」は、半径方向にタイヤの回転軸に向かい、または半径方向に回転軸から離れる向きを意味する。
【0024】
「ラジアルプライ構造」は、少なくとも1つのプライが、タイヤの赤道面に対して65°から90°の間の角度に向けられた補強コードを有する、1つまたは2つ以上のカーカスプライを意味する。
【0025】
「ラジアルプライタイヤ」は、ビードからビードへ延びるプライコードが、タイヤの赤道面に対して65°から90°の間のコード角度に配置された、ベルト付きのまたは周方向に制限された空気入りタイヤを意味する。
【0026】
「サイドウォール」は、タイヤの、トレッドとビードとの間の部分を意味する。
【0027】
「層構造」は、インナーライナ、サイドウォール、及び任意設置のプライ層などの、タイヤの1以上の層またはエラストマ要素からなる未加硫の構造物を意味する。
【0028】
図1〜4は、本発明の第1の実施形態に係るタイヤ10を示している。タイヤは約89cm(35インチ)以上の公称リム直径を有することができる。タイヤ10は、軸線方向外側の横縁部13,14で終端する、地面に噛み合う外側トレッド部12を有している。サイドウォール15はトレッドの横縁部13,14から半径方向内側に延び、環状のビードコア(図示せず)を備えた一対のビード部で終端している。タイヤ10はさらに、ビード領域からビード領域へと延びる補強プライ構造(図示せず)を有するカーカスを備えている。タイヤはさらに、当業者には周知であるブレーカその他のタイヤ要素を含んでいてもよい。
【0029】
タイヤトレッド12は好ましくは、方向性を持たないトレッドパターンを備えている。トレッド12は2つの肩部溝22,24の列を備え、肩部溝の各列は対応する横縁部13,14からトレッドの中央面に向かって延びている。肩部溝22,24はトレッドの中央面を横切ってはおらず、角度θ1,θ2で傾いている。第1の列の肩部溝22は第2の列の肩部溝24に対して周方向にずらされ、あるいは互い違いにされている。第1の列の肩部溝22は第2の列の肩部溝と類似の形状であり、第2の列に対して位相が約180度回転した方向に傾いている。肩部溝は深く、その深さは、ノンスキッドトレッド深さ、すなわちNSKの70〜100%である。肩部溝22,24は約30度から60度の範囲、より好ましくは約40度から50度の範囲の角度θ1,θ2で傾いている。大きな溝の傾き角度により、前進方向及び横方向へのトラクションが与えられる。
【0030】
トレッドはさらに、3つのラグ列に分割されている。ラグの第1の列30は、横縁部13から軸線方向内側に第1のサイプ35まで延びるラグからなっている。列30の各ラグは2つの肩部溝22の間に位置し、溝22と同じ方向に傾いている。第1の溝35は肩部溝22をつなぐラグを横断して円周方向に延びている。第1の溝35の深さはNSKの約50%から約80%の間で変動し、より好ましくはNSKの約75%である。第1の溝の幅は約0.64cm(約0.25インチ)であるが、その大きさは変動してもよい。
【0031】
トレッドはさらに、円周方向に互いに離れたラグの第2の列40を有している。第2の列は反対側のトレッド横縁部14から軸線方向内側に第2のサイプ45まで延びるラグからなっている。各ラグ40は2つの肩部溝24の間に位置している。第2の溝45は肩部溝24をつなぐラグ40を横断して円周方向に延びている。第2の溝45の深さはNSKの約50%から約80%の間で変動し、より好ましくはNSKの約75%である。第2の溝の幅は約0.64cm(約0.25インチ)であるが、その大きさは変動してもよい。
【0032】
トレッドはさらに、円周方向に互いに離れた中央ラグの第3の列50を有している。中央ラグ50は互いに同じ大きさでもよいし、そうでなくてもよい。
図2に示すように、中央ラグは、同様の形状でラグサイズの異なるA,Bパターンが交互に現われている。ラグはその軸線方向外側の両端が、溝35と溝45とによって画定されている。ラグはさらに第3の溝55と第4の溝60とによって画定されている。第3の溝55及び第4の溝60は好ましくはジグザグ形状または非線形形状であり、インターロック(噛み合い)特性を与える。第3の溝55及び第4の溝60は好ましくは、円周面と平行に揃えられた部分57,62を有している。第3の溝55及び第4の溝60はまた、軸線方向に対して30度から45度の範囲で傾いている。溝35,45,55,60は溝20,24とともに、中央ラグ50の周りに空気の冷却経路を形成し、ラグを冷却するように作用する。溝は、ラグの表面の任意の点において当該任意の点から溝までの距離が最小化されるように互いに離して設けられ、ラグの周りの冷却面積を最大化する。
【0033】
ラグの中央列50は不規則かつ非対称な形状を有し、多数の角部を備えている。少なくともラグの2つの境界線あるいは溝が、互いに反対向きにジグザグの形状の溝55,60から形成されている。中央ラグ列の軸線方向幅は、トレッドの両側縁部間の軸線方向幅の約50%〜約75%である。肩部溝の外側縁部は中央ラグまで延びており、そのため中央ラグの形状が不規則となっている。
【0034】
タイヤの全体的なネット/グロス比は約60から約80の間にあり、より好ましくは約65から約75の間にあり、最も好ましくは約68から約72の間にある。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るタイヤを示している。タイヤトレッドは、以下に述べる点を除き、上述した全ての特徴を備えている。溝55,60は互いに平行な溝70,80に置き換えられている。溝35,45もまた互いに平行であってよい。中央ラグの大きさは完全に同一でないとしても、互いにほぼ同じである。中央ラグ50は形状が不規則でありかつ非対称である。中央ラグは大きく、その幅はタイヤトレッドの幅の約50%から約75%の間で変動してよい。中央ラグは軸線方向に対して傾いている。肩部溝は中央ラグに対向し、あるいは中央ラグの中まで延びている。各中央ラグは、互いに平行な直線状の溝70,80によって画定され、肩部溝22,24の一部によっても画定されている。中央ラグはさらに溝35,45によって画定されている。
【0036】
図6は、
図4と同様な実施形態を示しているが、中央ラグは大きさが互いにより近似している。溝の位置にもわずかな違いがある。
【符号の説明】
【0037】
10 タイヤ
12 タイヤトレッド
13,14 横縁部
15 サイドウォール
22,24 肩部溝
30 ラグの第1の列
35 第1のサイプ
45 第2のサイプ
40 ラグの第2の列
50 ラグの中央列(ラグの第3の列)
55 第3の溝
60 第4の溝
70,80 溝