【実施例】
【0021】
実施例で使用する材料と試験項目とその方法を以下にまとめて示す。
【0022】
「使用材料」
(1)銘柄の異なるセメント
C−1:普通ポルトランドセメント(5銘柄の内、最も脱型強度の小さい銘柄)
C−2:普通ポルトランドセメント(他の4銘柄の内、平均的脱型強度の銘柄)
C−3:早強ポルトランドセメント(5銘柄の内、最も脱型強度の小さい銘柄)
C−4:早強ポルトランドセメント(他の4銘柄の内、平均的脱型強度の銘柄)
(2)細骨材:新潟県姫川産川砂
(3)粗骨材:新潟県姫川産玉砕,最大寸法25mm
(4)減水剤:ポリカルボン酸塩系、グレースケミカルズ社製商品名スーパー200
(5)石膏
G−1:II型無水石膏,天然産、粉末度5000cm
2/g
G−2:二水石膏(比較),セメント用化学石膏、粉末度7000cm
2/g
(6)石灰類
L−1:消石灰:石灰石を1000℃でガス焼きし消化したもの(粉末度6500cm
2/g)
L−2:軟焼生石灰:石灰石を1000℃でガス焼きしたもの(粉末度4000cm
2/g)
(5)炭酸塩などその他の促進剤及び急結剤
A:炭酸カリウム、試薬
B:炭酸ナトリウム(比較)、試薬
C:重亜炭酸カリウム(比較)、試薬
【0023】
「試験項目とその方法」
(1)コンクリートの練り混ぜとスランプの測定
コンクリートの練り混ぜはオムニミキサで行い、セメント、本発明の硬化促進剤成分、細骨材と粗骨材を30秒間空練りした後、ポリカルボン酸塩系減水剤を溶解した練り混ぜ水を添加して2分間練り混ぜた。
スランプ測定はJIS A 1101に準じた。
(2)供試体の成型、強度の測定方法
圧縮強度はφ10×20cmの鉄製型枠に、突き棒成型し、所定の養生後、強度測定した。強度測定はJIS A 1108に準じた。
【0024】
「実験例1」
単位量が、セメント380kg/m
3、水155kg/m
3(減水剤3.0kg/m
3含む)、細骨材670kg/m
3、粗骨材1130kg/m
3で、スランプが12±2.5cm、空気量4.5%±1%のコンクリートを用いた。セメント銘柄と種類を変えて、セメント100質量部に対して、II型無水石膏と石灰類及び炭酸カリウムを外割りで配合したコンクリートを練り混ぜ、供試体成型後、20℃で1時間前置きしてから直ちに45℃に上げた。普通ポルトランドセメントの場合は3時間と5時間保持した強度と、5時間後に養生槽から取り出して脱型し、標準養生した材齢14日強度を測定した。早強ポルトランドセメントの場合は2時間と4時間保持した強度と、4時間後に養生槽から取り出して脱型し、標準養生した材齢7日強度を測定した。その結果を表1と表2、表3に示す。
なお、II型無水石膏と炭酸カリウムの比較として二水石膏および炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムを用いた。
脱型に必要な強度はコンクリート製品重量で異なるが、概ね、小型製品で8N/mm
2、中型製品では10N/mm
2、大型製品は12N/mm
2程度であり、通常は、打設後、前置き養生1時間、昇温時間2時間の後、蒸気養生温度65〜85℃で3〜5時間保持される。
【0025】
表1より、早期脱型性能の低い普通ポルトランドセメント銘柄(C-1)を使用した場合において、II型無水石膏と石灰類の合量と炭酸カリウムの添加量を一定として、II型無水石膏と石灰類の質量比率を変えると、II型無水石膏:石灰類が80:20から3時間及び5時間の脱型強度が顕著に高くなる。そして、石灰類の比率を高くするほど脱型強度は徐々に高くなるがII型無水石膏:石灰類が10:90で頭打ちとなる。一方、材齢14日強度は石灰類の比率が高すぎると低下する傾向が示される。
すなわち、本発明のII型無水石膏と石灰類の質量比率は、II型無水石膏80〜10、石灰類20〜90が必要であり、脱型強度と長期強度及びスランプのバランスから、好ましい配合比率は、II型無水石膏70〜20、石灰類30〜80であり、より好ましくは、II型無水石膏60〜30、石灰類40〜70であることが示される(実験No.1-1〜No.1-12)。
【0026】
II型無水石膏と石灰類の質量比率と添加量を一定として、II型無水石膏を二水石膏に変えた場合や、炭酸カリウムを炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムに変えた比較例では、二水石膏−炭酸カリウムの組み合わせやII型無水石膏−炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムの組み合わせでは、II型無水石膏−炭酸カリウムの本願例よりも早期強度発現性に乏しく実用的な強度は得られない(実験No.1-13〜No.1-16)。
II型無水石膏と石灰類の質量比率と添加量を一定として、炭酸カリウムの添加量を変えると、0.03質量部から脱型強度が高くなり、0.05質量部でより顕著となる。さらに添加量を多くして行くと脱型強度は徐々に増大するが、多すぎるようになると徐々に低下してくる。そして0.8質量部を超えると急結性を示す場合があり、練り混ぜができなくなる。
したがって、本発明の炭酸カリウムの添加量は0.03〜0.8質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.10〜0.30質量部である(実験No.1-17〜No.1-26)。
【0027】
表2より、II型無水石膏と石灰類の質量比率及び炭酸カリウムの添加量を一定として、II型無水石膏と石灰類の合量の添加量を変えると、0.3質量部から脱型強度高くなり、0.5質量部でより顕著となる。そして、8質量部以上の添加では脱型強度は頭打ちとなる。したがって、本発明のII型無水石膏と石灰類の、合量の添加量は10質量部以下であり、好ましくは8質量部以下、経済性も加味すると、より好ましくは0.5〜6質量部である(実験No.1-27〜No.1-36)。
表2より、石灰類の種類が軟焼生石灰(L−2)の場合では、消石灰(L−1)よりも脱型強度も14日強度も高くなる傾向を示す(実験No.1-37〜No.1-41)。
元々強度発現性の高い普通ポルトランドセメント銘柄(C−2)の方がより高い脱型強度が得られる(実験No.1-42〜No.1-49)。
【0028】
表3より、早強ポルトランドセメントを使用して、II型無水石膏と石灰類の質量比率及び炭酸カリウムの添加量を一定としてII型無水石膏と石灰類の合量の添加量を変えた場合、早強ポルトランドセメントの銘柄に拘わらず、普通ポルトランドセメントの場合よりも強度発現速度が、概ね1時間程度速くなる他は、同様の傾向を示す(実験No.1-50〜No.1-56、実験No.1-57〜No.1-63)。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
「実験例2」
実験No.1-1,No.1-3〜No.1-12及び実験No.1-20〜No.1-25、実験No.1-29〜No.1-36のコンクリートを、冬季の現場養生を考慮して5℃の室内で練り混ぜて供試体を作製し、型枠に入れたまま、5℃の室内で養生し、材齢1日、3日、7日の初期強度の発現性を調べた。その結果を表4に示す。
【0033】
表4より、蒸気養生をしないで5℃の低温養生した場合において、II型無水石膏と石灰類の合量と炭酸カリウムの添加量を一定として、II型無水石膏と石灰類の質量比率を変えると、蒸気養生した場合と同様に、II型無水石膏/石灰類が80/20から強度発現速度が速くなり、初期材齢の強度も高くなる。そして、石灰などの比率を多くすると強度発現速度(強度)も徐々に高くなるが、多すぎると徐々に低下し、II型無水石膏/石灰類が10/90で頭打ちとなる。
すなわち、本発明のII型無水石膏と石灰類の質量比率は、現場打設においてもII型無水石膏80〜10、石灰類20〜90が必要であり、初期強度発現性とその後の強度の伸びのバランスから、好ましい質量比率は、II型無水石膏70〜20、石灰類30〜80であり、より好ましくは、II型無水石膏60〜30、石灰類40〜70であることが示される(実験No.2-1〜No.2-11)。
II型無水石膏と石灰類の質量比率と添加量を一定として、炭酸カリウムの添加量を変えると、蒸気養生の場合と同様に現場打設においても0.05質量部でより顕著に強度を発現する。さらに添加量を多くして行く強度は徐々に増大するが、多すぎるようになると頭打ち又は徐々に低下してくる。そして好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.10〜0.30質量部である(実験No.2-12〜No.2-17)。
また、II型無水石膏と石灰類の質量比率及び炭酸カリウムなどの添加量を一定として、II型無水石膏と石灰類の合量の添加量を変えると、現場打設においても0.3質量部から強度は立ち上がり、0.5質量部でより顕著となる。そして添加量が多くなるほど強度発現速度も速くなるが、8〜10質量部添加では低下傾向となることが示される。
したがって、本発明のII型無水石膏と石灰類の、合量の添加量10質量部以下であり、好ましくは8質量部以下、経済性も加味すると、より好ましくは0.5〜6質量部である(実験No.2-18〜No.2-25)。
【0034】
【表4】