特許第5843912号(P5843912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843912
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】注射器ペン針用安全システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20151217BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
   A61M5/32 510R
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-69474(P2014-69474)
(22)【出願日】2014年3月28日
(62)【分割の表示】特願2008-13113(P2008-13113)の分割
【原出願日】2008年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-158934(P2014-158934A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】11/626,236
(32)【優先日】2007年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ.ディビアシ
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05964739(US,A)
【文献】 米国特許第04921491(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器ペン針用の非注入端の受動的安全システムであって、
a) 注入端と非注入端を備える針と、
b) ハブと、
c) 前記ハブ内に位置付けられ、前記ハブに対して同軸的に移動、および前記針を固定する針キャリアと、
d) 前記キャリアに対するシールドの軸方向の移動を許容する前記キャリア上の対応要素に係合する移動要素を有するシールドであって、前記移動要素が針の注入端をカバーする位置で前記シールドをロックするために前記キャリアのロック要素に係合するシールドと、
e) 前記針の注入端に向けて前記キャリアから離れる方向にシールドを付勢するシールド復帰バネと、
f) 前記針の注入端に向かう方向に前記ハブから離れる方向に前記キャリアを付勢するキャリア起動バネと、
g) 前記針キャリア上の複数の係合要素と、を備え、
前記ハブの半径方向の側壁の対応する貫通穴又は凹部は、前記係合要素に解放可能に係合し、カートリッジがハブに設置された際に、前記係合要素は、前記貫通穴または凹部から外れるが、前記針キャリアは、前記カートリッジの隔壁への前記針の非注入端の貫通によって適所に保持される、ことを特徴とする安全システム。
【請求項2】
前記カートリッジは、前記カートリッジを回転させることによって前記ハブ上のねじ接続部に設置されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カートリッジが装着される際に、前記針キャリアも回転する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
解放可能に前記ハブに前記針キャリアを取り付ける、前記針キャリアの対応する要素に係合する前記ハブのロックダウン要素をさらに備え、前記シールドは、前記針キャリアを前記ハブから解放するために、ロックダウン要素と相互作用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
注射後、および、前記カートリッジが前記ハブから除去された後、前記針キャリアは、前記針を、前記注入端に向けて前記ハブ内に移動させ、前記針キャリアは、前記針の非注入端を安全に遮蔽するために、前記針をハブ内に有効に格納する、ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ロックダウン要素は、前記ハブにおいて軸方向に延びる複数のタブを有し、前記ハブの半径方向側の内側は、前記針キャリアの貫通穴と係合し、前記タブが前記シールドと相互作用する際に屈曲して、前記針キャリアを解放する、ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の軸方向に延びるタブは、3つのタブで構成されている、ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記シールドの先端は、前記針の非注入端に向かう方向において、その最大移動位置に達したときに内向きタブを押すように形成されている、ことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記カートリッジは、バイアルであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記移動要素は、前記シールドのベース上に配置されたボタンを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
注入中に、前記ボタンは、前記針キャリア上の軸線方向トラックと軸線方向リターントラックに係合する、ことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ボタンは、周方向において、前記軸線方向トラックから前記軸線方向リターントラックに向けて移動する、ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
周方向移動の距離が1mm未満である、ことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
周方向移動の距離は、0.100ミリメートルから0.250ミリメートルの範囲である、ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記キャリアは、ロック要素をさらに含み、前記移動要素は、ロック要素に係合して、注射後、前記針の注入端を覆う位置に前記シールドをロックする、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記移動要素は、前記シールドのベースに位置するボタンを含み、前記ロック要素は、前記ボタンに係合する戻り止めである、ことを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
シールドインサートをさらに有し、前記シールドインサートは、前記シールドに装着され、前記シールドに対して可動であり、注射中に患者の皮膚に押し当てたとき、前記シールドの回転が許容される一方で、前記シールドインサートは静止したままである、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン針を使用する患者および/または医療専門家を不測の針刺しから保護するための、注射器ペン針と関連する受動的安全システムに関する。本発明に係るペン針は、安全のために機器に引き込まれるペン針における針の非注入端に提供される。
【背景技術】
【0002】
汚染された針からの不測の針刺し傷は、B型及びC型肝炎並びにHIVを発生させるウイルスを含む血液由来病原菌からの感染のリスクに医療労働者をさらす。疾病管理・予防センターによると、これらの事故の圧倒的大多数を受ける看護師を含めて、米国の医療従事者は1年毎に約600,000人が血液の汚染を経験する。
【0003】
米国で選択される注射器具が注射器である一方で、ペン針への需要は急速に成長している。自己注射注射ペン機器の利用は、使い捨て注射器に比べてこれらの機器の相対的な利便性、携帯性、および使いやすさのため、増加している。 また、ペン針は、病院/診療所において、ヒト成長ホルモンや骨粗鬆症医薬品などのようなある種の薬として、より一般的になっており、ペン針形式だけで利用可能となっている。
【0004】
医療従事者は、注射を患者に施した後に、ペン針機器から針ハブを取り外し、廃棄処理する間に針刺し傷を受ける。針は、一般に、カートリッジの医薬品の汚染を最小化し、針再生使用を防止するために、各注射の後に取り外される。針の取り外しは、一般的には、それに供給された外保護カバーを用いて、針の注入端(ここでは、「患者端」としても参照される)を再シールドを必要とする。針の患者端による損傷は、一般的に、この時起こるけれども、それらは、また、ペン針のペンからの取り外しの間に、露出した針の非患者端のにより生じる可能性もある。針刺し損傷の問題に全体的に対処するために、針の両端に安全機能を備えるペン針を有することが望ましい。
【0005】
本出願の譲受人に与えられた特許である特許文献1は、ペン針および安全シールドシステムを教示し、その安全シールドは、普通、使用に先立って針カニューレを取り囲んでおり、注射の間の安全シールドの後退を許容し、そして、自動的に伸長させ、伸長し取り囲まれた位置で使用後のシールドをロックする。ペン針は、ペン注射器上の、シールドおよび針カニューレの組立、およびハブの組立の間、シールドの後退を防止する。
【0006】
特許文献2は、医療用の注射器具へ搭載するために針がその上に設置された円筒形のハウジングを有する安全針アセンブリを開示する。シールドは、シールドが針の端部をカバーする末端位置と針が露出される先端位置の間での移動のために、ハウジングに対して伸縮自在に移動可能となっている。ハウジングの内部に配置されたバネは、末端部の方向にシールドを付勢する。機器におけるロック要素は、ハウジングの中に、外側に向いたロック突出部を備えている。ロック要素は、バネとシールドとの間に提供された別部品であり、使用中ハウジングに対してシールドと共に同時に縦方向に動かされ、ロック要素上の突出部が、シールドが末端部の位置にある第1の位置から、シールドが先端部の位置にある第2の位置、ロック突出部がハウジングの内側面に備わるブロック面によりブロックされる第3の位置へガイドされる、シールドのさらなる移動を逆行不可能に阻止する。
【0007】
【特許文献1】米国特許6,986,760号
【特許文献2】米国特許6,855,129号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
針がハブに固定して取り付けられた先行技術と対比すると、本発明では、針がハブに対して可動で、従って、注射が打たれた後に、ハブ内の安全な位置に引き込まれる。従って、本発明は、針の非患者端における安全機構の必要性に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の観点において、注射器ペン針用の非注入端の受動的安全システムは、a) 注入端と非注入端を備える針と;b) ハブと;c) 前記ハブ内に位置付けられ、前記ハブに対して同軸的に移動、および前記針をしっかりと固定する針キャリアと;d) 前記キャリアに対するシールドの軸方向の移動を許容する前記キャリア上の対応要素に係合する移動要素を有するシールドであって、前記移動要素が針の注入端をカバーする位置で前記シールドをロックするためにキャリアのロック要素に係合するシールドと;e) 前記針の注入端に向けてキャリアから離れる方向にシールドを付勢するシールド復帰バネと;f) 前記針の注入端に向かう方向に前記ハブから離れる方向にキャリアを付勢するキャリア起動バネと;を備える。この機器は、注射後に、キャリアが、針を注入端に向けてそしてハブの中へ移動させ、針の非注入端を安全にシールドするために、ハブ内に針を効果的に格納するように組み立てられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ハブ、キャリア、およびシールドを示す、注射器ペン針の断面図である。
図2図2は、線2-2に沿って見た図1に示した機器の断面詳細図であって、シールドとキャリアの間の係合メカニズムを示している。
図3図3は、完全ロック外側位置の患者端のシールド、およびハブに引き込まれた針の非患者端と共に図1のシステムを示している。
図4図4は、線4-4に沿って見た図1に示した機器の詳細断面図であって、シールドとキャリアの間の係合メカニズムを示している。
図5図5は、キャリアをハブから解放するためのメカニズムを示す詳細図である。
図6図6は、リリース位置のハブからキャリアを解放するためのメカニズムを示す詳細図である。
図7図7は、シールドインサートを備えるシールドを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る安全シールドシステムは、注射を打つと、針がニードルに引き込まれ、針の非注入端のシールドが自動的にされるので、「受動的」である。すなわち、ユーザーが実行する処置は、針をシールドするために特に必要ではない。
【0012】
ここに使われるように、特定の要素が注射に関係するかどうかに関わらず、「注入端」および「非注入端」という用語は、機器の方向に言及している。従って、(例示としてのみの)ハブとシールドは、注入端と非注入端を有する。注入端は、注射を打つために患者の身体に対して普通に押される機器の端部に向かっており、非注入端は機器の逆の端部である。
【0013】
ペン針は、一般に広いというより長い。縦方向の軸線上の移動は、ここでは、「軸方向」の動きとして参照される。直交方向は、「半径」方向であり、要素が縦方向軸線の回りでねじられる時に通る方向は、「円周」方向である。ここで使われるように、針の先端部がシールドの端部壁を越えて、あるいは、ハブ内の凹部を越えて延在しないときには、針の先端はシールドまたはハブの開口に非常に近く、眺めにさらされているにも関わらず、針の注射器または非注入端が「カバーされる」。
【0014】
図1は、パッケージから取り外され、使用する用意ができている状態の本発明に係る引き込み受動的安全シールドシステムの実施形態を図解している。システムはハブ10を含む。このハブは、凹部101を介したペン注射器(図示せず)に取り付けられ、キャリア20、シールド30、および針40を含む他の構成要素を収容している。ハブ10は、非注入端にペン注射器を受容するための凹部101と、ペン注射器内の薬剤への針40の通過を許容するための開口50とを有する。「ペン注射器」(時々「カートリッジ」としても参照される。)という用語は、文脈で必要な場合には、カートリッジ・ハウジング、あるいは、封入された薬剤ガラスびんを共にもつハウジングを意味することもある。針40は、キャリア20に安全に設置され、ハブ10に位置付けられる。キャリア/針アセンブリは、以下に説明するように、ハブに対して可動である。
【0015】
構成材料は、特定的ではない。ハブ、シールド、針キャリアのような構造的要素は、一般的には、射出成形部品であり、一方、針とバネは、一般的には、金属である。
【0016】
図1において、シールド30は、伸長位置にあり、針の端部をカバーする。 使用中、シールド30は、注射を可能にするためにハブに押し込まれ、機器が患者の皮膚に対して押されるとバネ52を圧縮し、針を患者の組織に露出させる。バネは、注射後に、シールドが針40の注入端をカバーするように、力をシールドに及ぼす。キャリア20は、針40を適所にしっかりと保持し、注射後までハブに固定され、キャリアがハブ10から解放され(以下で説明されるように)、針40と共に、注入端に向けてハブ10の本体の中へ移動する時には、ペン注射器をユーザーが取り外す前に、ハブ10の針40を効果的に格納する。このことは、機器の非注入端で発生する可能性のある不測の針一刺しを防止する。
【0017】
注射の初期の段階において、シールド30は、キャリアに対してシールドの軸方向の動きを許容するキャリアの対応要素に係合するシールド上の移動要素と共に、キャリア20に対して軸方向に移動する。例えば、シールドは、図2の詳細に示すように、キャリアの対応するトラック130及び90に係合する、シールドのベース上のボタン70を備える。注射中にシールド30が押圧されると、ボタン70は、対応トラック130内を移動し、完全移動位置で、一以上のボタンが復帰トラック90の中へ案内される。シールドが完全に伸長した時には、シールドロックアウト戻り止め150はボタン70を捕らえて、シールドを適所にロックする。ボタン70は、好適には、シールド30のベースのまわりに等距離間隔で配置され、例えば3つのボタンが互いに120°離れて配置される。
【0018】
図示された実施形態において、ハブ上の要素は、キャリアの対応要素と係合し、キャリアをハブに解放可能にロックする。この文脈での“解放可能に”は、機器の正常な操作を通じて、針キャリアがハブ内を軸方向に移動可能になることを意味する。例えば、ハブの3軸方向に延びるタブ110は、ハブの半径方向の側壁の内側にあり、キャリアの貫通穴112の対応エッジと係合可能であり、シールドが注射の初期段階の間にハブに向けて軸方向に移動する間、キャリアを適所に固定する。その後、図4図5に示すように、シールドの最先端190は、タブ110を内側に押圧するように形づくられ、シールドがその完全移動位置に到達する時にキャリアを解放する。バネ60の力は、シールドキャリアを注入端に向けて押しやり、ハブ内に針を引き込む。
【0019】
付加的に、あるいは、代替として、解放可能にキャリアをハブへロックするために、半径方向の側壁の貫通穴又は凹部は、ハブにカートリッジを取り付けることにより(一般には、必要ないけれども、ねじ接続部の中へカートリッジを回転させることにより、針キャリアも回転させる)、キャリアを解放する方法等で、対応要素と係合することも可能である。従って、キャリアは、適所に針の貫通力によりカートリッジ/ガラスびんの隔壁に保持された、その初期状態において、アンロックされる。この機構は、上記した軸方向に延びるロックダウンタブ110が存在しない場合、あるいは、追加のロックダウン機構としてタブと共に利用できる。
【0020】
注射の間、シールドのボタン70がキャリア20の軸方向のトラック130からトラック90に向けて円周方向に移動する時には、シールドは少量の回転しか必要としない。円周方向の移動距離は、1mm未満、好適には、0.100mmから0.250mmまでの範囲というように非常に小さくてもよいが、それにもかかわらず、ユーザーに知覚可能である。シールドインサート210の利用により、あらゆる不快感が回避できる。図5に示すように、シールドインサート210は、シールドに付属し、シールドに対して可動である。注射中に患者の皮膚に対して押圧されると、シールドインサートは、シールドが回転する間静止している。
【0021】
本発明は、両端(注入/非注入)の注射針構成を組み込んだ注射器具に適用でき、薬剤(または、他の物質)を肉体の空間(または、他の場所)の中へ供給し、両端受動的安全機構を有することは、ユーザー(自己注射または医療従事者)を不測の針刺し、及び、生物学的有害物質、または、他の危険な液状物質への露出から保護するためには、有利である。好適な実施形態から取得され上述載された例は、以下の請求項により定義される発明を限定することを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7