(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る探傷方法によって検査される構造体の一例を示す図である。
図2は、本実施形態に係る探傷装置を用いて構造体の内部の亀裂を検査する一例を示す図である。
図3は、第1探触子及び第2探触子を示す図である。本実施形態に係る探傷方法、探傷装置及び超音波探傷システムは、超音波探傷法によって構造体の内部の亀裂を検査するために用いられる。次の説明においては、部材同士を溶接した溶接部及びその近傍の部材を検査する場合を例とするが、本実施形態に係る探傷方法、探傷装置及び超音波探傷システムの検査対象はこれらに限定されるものではない。
【0017】
図1に示す構造体100は、例えば、道路の高架線等に用いられる鋼床板101に補強材102が取り付けられたものである。鋼床板101は鋼板であり、表面101Pに、例えば舗装された道路が形成される。補強材102は、所定の方向に延在する部材であり、所定の方向と直交する断面が略U字形状である。補強材102は、鋼床板101の表面101P、すなわち道路が形成される面とは反対面に、溶接によって接合されて取り付けられる。補強材102は、例えば、鋼板を曲げ加工することにより製造される。
【0018】
本実施形態において、
図2に示すように、鋼床板101と補強材102とは、例えば、隅肉溶接によって接合される。溶接部103は、ビード部104及び溶け込み部105を含む。探傷装置10は、第1探触子11と第2探触子12とを有しており、構造体100を2箇所の異なる位置から検査する。本実施形態において、第1部材としての補強材102側の第1位置P1に第1探触子11が配置され、第2部材としての鋼床板101側の第2位置P2に第2探触子12が配置される。
【0019】
第1探触子11及び第2探触子12は、
図3に示すように、送受信部11T、12Tを有している。送受信部11T、12Tは、
図2に示すように、構造体100の内部に向かって検査波としての超音波SSを発信し、構造体100の内部で反射した超音波を反射波として検出する。なお、第1探触子11及び第2探触子12は、構造体100の内部に向かって超音波SSを発進する発信部と、構造体100の内部で反射した超音波を反射波として検出する受信部とを別個に備えていてもよい。本実施形態において、第1探触子11及び第2探触子12は、フェイズドアレイ方式により構造体100の内部を検査する。
【0020】
フェイズドアレイ方式は、第1探触子11及び第2探触子12にアレイ状の複数の振動子を有し、この複数の振動子の発振タイミングを独立して制御することにより、超音波ビームの入射角及び集束位置の少なくとも一方を、高い自由度で変更するものである。このようにすることで、第1探触子11及び第2探触子12の位置を変更することなく、構造体100の内部の断面方向を広範囲にわたって走査し、亀裂等を検出することができる。
【0021】
図4は、本実施形態に係る探傷システムを示す図である。探傷システム1は、探傷装置10と、情報処理装置20と、表示装置30とを含む。構造体100の内部の亀裂CRを、超音波を用いて検査するにあたって、探傷装置10は、構造体100に取り付けられる。探傷装置10は、第1探触子11及び第2探触子12を保持した保持体13が、第1探触子11及び第2探触子12とともに構造体100の溶接部103における溶接線WLに沿って移動する。第1探触子11及び第2探触子12は、溶接線WLの方向に移動しながら構造体100を検査する。
【0022】
第1探触子11は補強材102側から、第2探触子12は鋼床板101側から、超音波を発信するとともに、例えば、屈折角が35度から85度の範囲で電子的に走査しながら、溶接線WL方向に移動する。第1探触子11及び第2探触子12は、構造体100の内部からの反射波として、亀裂CRの面からの直接反射、鋼床板101又は補強材102の裏面を反射して亀裂CRで反射したエコー及び亀裂CRの先端部での散乱波を検出する。本実施形態において、第1探触子11及び第2探触子12は、所定の方向としての溶接線WLが延びる方向において、同じ位置で超音波を発信し、その反射波を検出する。
【0023】
情報処理装置20は、第1探触子11及び第2探触子12が検出した反射波の情報を取得する。情報処理装置20は、例えばコンピュータである。情報処理装置20は、処理部21と、記憶部22とを有する。情報処理装置20は、第1探触子11及び第2探触子12が検出した反射波の情報を処理して、例えば、構造体100の内部の状態を示す画像を生成する。情報処理装置20は、生成した画像を表示装置30に表示する。反射波の情報の処理及び画像の生成は、情報処理装置20の処理部21が実行する。記憶部22は、処理部21が実行する処理に必要な情報及びコンピュータプログラムを記憶している。処理部21は、記憶部22から適宜コンピュータプログラム及び必要な情報を読み出して、前述した処理を実行する。
【0024】
(探傷装置)
図5は、本実施形態に係る探傷装置の構造を示す図である。
図6及び
図7は、本実施形態に係る探傷装置の構造を示す側面図である。探傷装置10は、第1探触子11と、第2探触子12と、保持体10Hと、
図6及び
図7に示す回転体55と、同じく
図6及び
図7に示す吸引機構56とを含む。第1探触子11は、
図1等に示す構造体100に超音波を発信して構造体100の内部からの反射波を検出する。第2探触子12は、第1探触子11とは異なる位置で構造体100の内部に超音波を発信して、構造体100からの反射波を検出する。このため、探傷装置10の保持体10Hは、第1探触子11と第2探触子12とを、それぞれ異なる位置で保持する。
【0025】
保持体10Hは、所定の方向、本実施形態では溶接線WLが延びる方向に移動する。保持体10Hは、第1探触子11及び第2探触子12を所定の方向における一方側又は他方側に保持する。本実施形態において、保持体10Hは、第1保持体13と、第2保持体14と、両者を連結する連結装置60とを含む。第1保持体13は第1探触子11を保持し、第2保持体14は第2探触子12を保持する。
【0026】
まず、第1保持体13について説明する。第1保持体13は、互いに平行に配置された棒状の第1部材13A及び第2部材13Bと、第1部材13A及び第2部材13Bの一端部側で両者を連結する第3部材13Cと、第1部材13A及び第2部材13Bの他端部側で両者を連結する第4部材13Dとを備える。第1部材13A及び第2部材13Bは、所定の方向に対して直交する方向に延在する。
【0027】
第2保持体14は、互いに平行に配置された棒状の第1部材14A及び第2部材14Bと、第1部材14A及び第2部材14Bの一端部側で両者を連結する第3部材14Cと、第1部材14A及び第2部材14Bの他端部側で両者を連結する第4部材14Dとを備える。第1部材14A及び第2部材14Bは、所定の方向に対して直交する方向に延在する。
【0028】
第1保持体13及び第2保持体14は、それぞれの第4部材13D、14D側の両側に配置された一対の連結装置60、60によって連結されている。
【0029】
第1連結部材61は、第1保持体13が備える第1部材13A及び第2部材13Bの第4部材13D側に取り付けられる。第2連結部材62は、第2保持体14が備える第1部材14A及び第2部材14Bの第4部材14D側に取り付けられる。このような構造とすることで、連結装置60は、第1保持体13と第2保持体14とのなす角度θ(
図7参照)を変更できるようになっている。
【0030】
第1保持体13は、第1部材13Aと、第2部材13Bと、第3部材13Cと、第4部材13Dとで囲まれた部分に、第1部材13A及び第2部材13Bが延びる方向に移動する第1移動体15が設けられる。第1移動体15は、第1保持体13の第3部材13Cと第4部材13Dとに回転可能に支持された、第1移動機構としてのねじ15Sがねじ込まれている。また、第1移動体15は、第1保持体13の第3部材13Cと第4部材13Dとの間、かつねじ15Sの両側に架け渡された一対の棒状の案内部材15G、15Gによって保持されて、案内部材15G、15Gに沿って移動する。ねじ15Sは、第3部材13C側に設けられたハンドル15Hと連結されている。ハンドル15Hが回されることにより、第1移動体15は、案内部材15G、15Gに沿って、第1部材13A及び第2部材13Bが延びる方向に移動する。
【0031】
第1移動体15は、ねじ15Sを挟んで両側に、台座15BA、15BBを有する。台座15BA、15BBは、いずれか一方に、第1探触子11を保持するために用いられる第1腕17が取り付けられる。第1腕17は、第1移動体15のいずれか一方の台座15BA又は台座15BBに一端部が取り付けられる。
図5に示す例では、第1腕17は、第1部材13A側の台座15BAに取り付けられる。第1腕17の他端部には、第1探触子11を保持する第1保持器具41が取り付けられる。
【0032】
第1保持体13は、第1部材13A及び第2部材13Bに、それぞれ第1案内部材13RA及び第2案内部材13RBを備える。第1案内部材13RA及び第2案内部材13RBは、第1部材13A及び第2部材13Bが延在する方向に沿って延びている。第1腕17は、第1案内部材13RA又は第2案内部材13RBのいずれか一方に案内されて、第1移動体15とともに第1部材13A及び第2部材13Bが延びる方向に移動する。
【0033】
第1移動体15の台座15BA、15BBは、それぞれピン43A、43B及びねじ穴45A、45Bを有している。ピン43A、43Bの数はそれぞれ2本であるが、本実施形態において、これに限定されるものではない。第1保持器具41は、一対の台座41BA、41BBを有する。これらの台座41BA、41BBは、それぞれピン49及びねじ穴51を有している。本実施形態において、ピン49の数は2本であるが、これに限定されるものではない。
【0034】
第1腕17は、例えば、その一端部が台座15BAに設けられたピン43Aに嵌め合わされることによって位置決めされた後、ねじ48が台座15BAのねじ穴45Aにねじ込まれて台座15BAに固定される。第1腕17は、他端部が第1保持器具41の一方の台座41BBに設けられたピン49に嵌め合わされることによって位置決めされた後、ねじ53が台座41BBのねじ穴51にねじ込まれて台座41BBに固定される。このようにして、第1探触子11は、第1保持器具41、第1腕17及び第1移動体15を介して第1保持体13に保持される。
【0035】
ハンドル15Hを回転させることにより、第1移動体15は、第1部材13A及び第2部材13Bが延びる方向に移動するので、この移動にともなって第1保持器具41に保持された第1探触子11も第1移動体15とともに移動する。この移動により、
図1に示す構造体100の探傷時には、第1探触子11の位置を調整することができる。
【0036】
探傷装置10は、第1腕17の一端部を第1移動体15の台座15BBに取り付けるとともに、他端部を第1保持器具41の台座41BAに取り付けることができる。このようにすると、第1保持器具41の位置を、第1保持体13の第1部材13A側から第2部材13B側に変更することができる。より具体的には、第1保持器具41の位置は、ねじ15Sの回転中心となる軸線に対して線対称の位置に変更される。第1保持器具41に保持される第1探触子11も同様である。
【0037】
次に、第2保持体14について説明する。第2保持体14は、第1部材14Aと、第2部材14Bと、第3部材14Cと、第4部材14Dとで囲まれた部分に、第1部材14A及び第2部材14Bが延びる方向に移動する第2移動体16が設けられる。第2移動体16は、第2保持体14の第3部材14Cと第4部材14Dとに回転可能に支持された、第2移動機構としてのねじ16Sがねじ込まれている。また、第2移動体16は、第2保持体14の第3部材14Cと第4部材14Dとの間、かつねじ16Sの両側に架け渡された一対の棒状の案内部材16G、16Gによって保持されて、案内部材16G、16Gに沿って移動する。ねじ16Sは、第3部材14C側に設けられたハンドル16Hと連結されている。ハンドル16Hが回されることにより、第2移動体16は、案内部材16G、16Gに沿って、第1部材14A及び第2部材14Bが延びる方向に移動する。
【0038】
第2移動体16は、ねじ16Sを挟んで両側に、台座16BA、16BBを有する。台座16BA、16BBは、いずれか一方に、第2探触子12を保持するために用いられる第2腕18が取り付けられる。第2腕18は、第2移動体16のいずれか一方の台座16BA又は台座16BBに一端部が取り付けられる。
図5に示す例では、第2部材14B側の台座16BBに第2腕18が取り付けられる。第2腕18の他端部には、第2探触子12を保持する第2保持器具42が取り付けられる。
【0039】
第2保持体14は、第1部材14A及び第2部材14Bに、それぞれ第1案内部材14RA及び第2案内部材14RBを備える。第1案内部材14RA及び第2案内部材14RBは、第1部材14A及び第2部材14Bが延在する方向に沿って延びている。第2腕18は、第1案内部材14RA又は第2案内部材14RBのいずれか一方に案内されて、第2移動体16とともに第1部材14A及び第2部材14Bが延びる方向に移動する。
【0040】
第2移動体16の台座16BA、16BBは、それぞれピン44A、44B及びねじ穴46A、46Bを有している。ピン44A、44Bの数はそれぞれ2本であるが、本実施形態において、これに限定されるものではない。第2保持器具42は、一対の台座42BA、42BBを有する。これらの台座42BA、42BBは、それぞれピン50及びねじ穴52を有している。本実施形態において、ピン50の数は2本であるが、これに限定されるものではない。
【0041】
第2腕18は、例えば、その一端部が台座16BBに設けられたピン44Bに嵌め合わされることによって位置決めされた後、ねじ48が台座16BBのねじ穴46Bにねじ込まれて台座16BBに固定される。第2腕18は、他端部が第2保持器具42の一方の台座42BAに設けられたピン50に嵌め合わされることによって位置決めされた後、ねじ54が台座42BAのねじ穴52にねじ込まれて台座42BAに固定される。このようにして、第2探触子12は、第2保持器具42、第2腕18及び第2移動体16を介して第2保持体14に保持される。
【0042】
ハンドル16Hを回転させることにより、第2移動体16は、第1部材14A及び第2部材14Bが延びる方向に移動するので、この移動にともなって第2保持器具42に保持された第2探触子12も第2移動体16とともに移動する。この移動により、
図1に示す構造体100の探傷時には、第2探触子12の位置を調整することができる。
【0043】
探傷装置10は、第2腕18の一端部を第2移動体16の台座15BAに取り付けるとともに、他端部を第2保持器具42の台座42BBに取り付けることができる。このようにすると、第2保持器具42の位置を、第2保持体14の第2部材14B側から第1部材14A側に変更することができる。より具体的には、第2保持器具42の位置は、ねじ16Sの回転中心となる軸線に対して線対称の位置に変更される。第2保持器具42に保持される第2探触子12も同様である。
図6に示すように、探傷装置10の第1部材13A、14A及び第2部材13B、14Bは、構造体100と面する部分に、回転体55及び吸引機構56を有する。第1部材13A、14A及び第2部材13B、14Bの構造体100と面する部分は、第1案内部材13RA、14RA及び第2案内部材13RB、14RBが設けられている面とは反対側の部分である。本実施形態において、回転体55は、回転体支持部材55Hを介して第1部材13A、14A及び第2部材13B、14Bに取り付けられて、回転中心軸Zを中心として回転する。回転体55を第1部材13A、14A及び第2部材13B、14Bに取り付ける構造は、回転体支持部材55Hによるものに限定されない。
【0044】
回転体55は、探傷装置10による探傷の対象となる構造体100の表面に接して、
図5に示す保持体10Hの所定の方向への移動を案内する。回転体55は、駆動装置によって回転力を発生できるようにしてもよい。このようにすれば、探傷装置10を自動で移動させることができる。
【0045】
吸引機構56は、
図5に示す保持体10Hと構造体100との間に吸引力を発生させる。吸引機構56が発生する吸引力によって、探傷装置10は、構造体100に取り付けられる。本実施形態において、構造体100は鋼板なので、吸引機構56には、例えば永久磁石が用いられる。この場合、永久磁石と構造体100との間に発生する磁力によって両者の間に吸引力が発生する。この他にも、吸引機構56として真空ポンプ等が用いられてもよい。
【0046】
図7に示すように、探傷装置10は、構造体100の鋼床板101と補強材102との間に取り付けられる。本実施形態において、第1探触子11が補強材102側に、第2探触子12が鋼床板101側に配置される。第1保持体13の吸引機構56は第1保持体13と補強材102との間に吸引力を発生させ、第2保持体14の吸引機構56は第2保持体14と鋼床板101との間に吸引力を発生させる。この吸引力により、探傷装置10が構造体100に取り付けられる。
【0047】
前述したように、第1保持体13と第2保持体14とは、連結装置60によって連結されている。第1保持体13と第2保持体14とは、鋼床板101と補強材102とのなす角度の大きさに応じて、連結装置60の仮想中心軸Zpを中心として回動する。このため、探傷装置10は、第1探触子11と補強材102との位置関係及び第2探触子12と鋼床板101との位置関係を適切にすることができるので、補強材102及び鋼床板101の内部に超音波を確実に入射させ、反射を検出することができる。
【0048】
探傷装置10は、第1腕17によって第1探触子11が第1保持体13の第1部材13A又は第2部材13Bの外側に配置され、第2腕18によって第2探触子12が第2保持体14の第2部材14B又は第1部材14Aの外側に配置される。このため、例えば、探傷装置10が溶接線WLに沿って移動して探傷する場合、壁107の近傍まで第1探触子11及び第2探触子12を接近させて探傷することができる。また、探傷装置10は、第1探触子11の位置を第1部材13A側から第2部材13B側に入れ替え、第2探触子12の位置を第2部材14B側から第1部材14A側に入れ替えることができる。このため、探傷装置10は、自身の移動方向のいずれに壁107が存在しても、壁107の近傍まで第1探触子11及び第2探触子12を接近させて探傷することができる。
【0049】
(位置変更機構の変形例)
図8は、本実施形態に係る探傷装置が備える位置変更機構の変形例を示す図である。この位置変更機構は、第1移動体15及び第2移動体16に設けられた支持部70に、第1腕17a及び第2腕17bが、軸線Yを中心として回動できるように支持されている(
図8の矢印Rで示す方向)。軸線Yは、ねじ15S及びねじ16Sの回転中心となる軸線と平行である。第1腕17a及び第2腕17bの一端部は支持部70に支持され、他端部は、それぞれ第1保持器具41a及び第2保持器具42aに取り付けられている。第1保持器具41aは第1探触子11を保持し、第2保持器具42aは第2探触子12を保持する。第1腕17a及び第2腕17bが、軸線Yを中心として回動することにより、第1探触子11及び第2探触子12の位置は、軸線Yを線対称とした位置に変更される。
【0050】
第1腕17aは、一方の面に第1案内部材13RAと嵌り合う部材75Aを備え、他方の面に第2案内部材13RBと嵌り合う部材75Bを備える。同様に、第2腕18aは、一方の面に第2案内部材14RBと嵌り合う部材76Aを備え、他方の面に第1案内部材14RAと嵌り合う部材76Bを備える。
【0051】
第1腕17aが有する部材75Aは、第1探触子11が
図5に示す第1保持体13の第1部材13A側にあるときには、第1部材13Aに取り付けられた第1案内部材13RAと嵌り合う。第2腕18aが有する部材76Aは、第2探触子12が
図5に示す第2保持体14の第2部材14B側にあるときには、第2部材14Bに取り付けられた第2案内部材14RBと嵌り合う。
【0052】
第1腕17aが有する部材75Bは、第1腕17aが回動して、第1探触子11が
図5に示す第1保持体13の第2部材13B側に移動したときには、第2部材13Bに取り付けられた第2案内部材13RBと嵌り合う。第2腕18aが有する部材76Aは、第2腕18aが回動して、第2探触子12が
図5に示す第2保持体14の第1部材14A側に移動したときには、第1部材14Aに取り付けられた第1案内部材14RAと嵌り合う。
【0053】
本変形例の位置変更機構によれば、ねじの取り外し並びに第1腕17a及び第2腕17bの取り替え等が不要になる。その結果、比較的簡単に第1探触子11及び第2探触子12の位置を変更することができる。次に、本実施形態に係る探傷方法を説明する。本実施形態に係る探傷方法は、
図6等に示す探傷装置10及び
図4に示す探傷システム1によって実現できる。
【0054】
(探傷方法)
図9は、本実施形態に係る探傷方法の適用対象である構造体の寸法の定義を説明するための図である。本実施形態において、構造体100を見る方向をE、S、TPで表す。方向E、方向S及び方向TPは、互いに直交する。方向Sは、鋼床板101の補強材102が取り付けられている表面101Pb側から構造体100を見たときの方向である。方向Eは、鋼床板101及び補強材102が延びる方向と平行な方向である。方向TPは、方向Sと方向Eとに直交する方向である。
【0055】
Trは、補強材102を形成する板材の厚み(板厚)である。Tdは、鋼床板101を形成する板材の厚み(板厚)である。Thtは、溶接部103のビード部104の厚みであり、のど厚という。のど厚Thtは、ビード部104の表面104Pと直交する方向におけるビード部104の寸法である。Dipは、未溶着深さである。未溶着深さDipは、未溶着部106の寸法である。未溶着部106は、補強材102と鋼床板101との間において、ビード部104及び溶け込み部105が存在しない部分である。未溶着深さDipは、補強材102と鋼床板101との溶接部103とは反対側の接触部から、溶け込み部105までの距離である。
【0056】
図9に示す構造体100は、ビード部104に亀裂CRBを有し、鋼床板101に亀裂CRDを有している。Hwは、のど厚Tht方向におけるビード部104の亀裂CRBの大きさである。Hpは、鋼床板101の厚みTd方向における亀裂CRDの大きさである。Yは、補強材102に超音波が入射するとともに反射波が検出される検査位置IPから補強材102と鋼床板101との交差部CPとの距離である。交差部CPは、補強材102の溶接部103側の表面102Paを延長した面と、鋼床板101の溶接部103側の表面101Pbとが交差した部分である。
【0057】
図10は、本実施形態に係る探傷方法の工程を示すフローチャートである。以下において、補強材を適宜リブと称し、鋼床板を適宜デッキと称する。ステップS1において、溶接形状が評価される。具体的には未溶着部106の寸法である未溶着深さDipが求められる。ステップS2において、リブ102側における探傷データが評価される。ここでは、Lr、Hrが求められる。Lrは、リブ102側から探傷したビード部104内の亀裂CRBのE方向における長さである。Hrは、方向TPと方向Sとで形成される平面内におけるビード部104の亀裂CRBの寸法である。
【0058】
ステップS3において、デッキ101側の探傷データが評価される。ここでは、Ld、Hdが求められる。Ldは、デッキ101側から探傷したビード部104内の亀裂CRBのE方向における長さである。Hdは、方向TPと方向Sとで形成される平面内におけるビード部104の亀裂CRBの寸法である。
【0059】
ステップS4において、ステップS2及びステップS3の結果からビード部104の亀裂を総合評価する。ここでは、ビード部104の亀裂CRBの溶接線WL方向における長さLwと、ビード部104ののど厚Tht方向におけるビード部104の亀裂CRBの大きさHwとが求められて評価される。ステップS2からステップS4は、ビード部104側における亀裂CRBの評価工程である。
【0060】
ステップS5は、デッキ101側における亀裂CRDの評価工程である。ステップS5において、デッキ101側に存在する亀裂CRDが検出され、評価される。ここでは、デッキ101内に発生した亀裂CRDの溶接線WL方向における長さLpと、デッキ101内に発生した亀裂CRDの大きさHpとが求められて評価される。次に、溶接形状の評価についてより詳細に説明する。
【0061】
(溶接形状の評価)
図11は、溶接形状の評価の各工程を示すフローチャートである。
図12は、本実施形態に係る探傷装置による探傷結果に基づいて生成された断面の画像の一例を示す図である。
図13は、溶接線WL方向におけるエコーの高さを示す図である。
図14は、未溶着深さを求める方法の一例を示す図である。溶接形状が評価される前に、
図4に示す探傷システム1の探傷装置10は、構造体100のデッキ101とリブ102との溶接線WL方向に沿って移動していき、第1探触子11及び第2探触子12により溶接部103を走査していくことにより、構造体100を探傷する。
【0062】
ステップS101において、
図4に示す情報処理装置20は、構造体100のデッキ101及びリブ102の両方に取り付けられた探傷装置10のリブ102側から探傷したデータ(探傷データ)を読み込む。リブ102側には、第1探触子11が配置されるので、情報処理装置20は、第1探触子11が探傷したデータを読み込む。このデータは、第1探触子11が検出した、構造体100内で反射した超音波である反射波(エコー)の情報及び探傷装置10の溶接線WL方向における移動距離の情報等である。
【0063】
情報処理装置20は、第1探触子11が探傷したデータを処理して、例えば反射波の強弱に変換し、探傷装置10の移動距離と関連付けることにより、例えば、
図12に示すような、溶接線WLが延びる方向、すなわちビード部104が延びる方向と直交する断面内の画像(エコー画像)を生成する。情報処理装置20は、記憶部22に記憶されているデッキ101及びリブ102の設計図面データを呼び出し、探傷データから得られた画像に重ね合わせて、
図4に示す表示装置30に出力する。このとき、設計図面データの原点を、画像の原点に重ね合わせる。
【0064】
このようにして情報処理装置20が生成した画像は、
図12に示すように、デッキ101、リブ102、ビード部104を示す外殻線が、ビード部104が延びる方向と直交する断面内の画像に重ね合わされている。この画像には、未溶着部106からのエコー及び溶け込み部105からのエコー等が画像化されている。情報処理装置20は、リブ102の検査位置IPとは反対側の面を基準として、検査対象の構造体100を反転させた構造体100Rの画像を生成する。
【0065】
デッキ101を反転させた画像はデッキ101Rであり、リブ102を反転させた画像はリブ102Rであり、ビード部104を反転させた画像はビード部104Rであり、溶け込み部105を反転させた画像は溶け込み部105Rであり、未溶着部106を反転させた画像は未溶着部106Rである。このように、本実施形態では、反転させない画像と反転させた画像との両方を用いて、溶接形状及び亀裂等を評価するので、溶接部103の溶け込み深さが十分なものであるかの判断が容易になる。
【0066】
図7等に示す第1探触子11が、
図12に示す検査位置IPで検出した反射波RWAは、リブ102の内側角部ICからの反射波(直射)である。リブ102の内側角部ICは、ビード部104とは反対側かつデッキ101側におけるリブ102の角部である。第1探触子11が検査位置IPで検出した反射波RWBは、未溶着部106からの反射波(1回反射)である。
【0067】
ステップS102において、情報処理装置20は、リブ102の内側角部ICからの反射波RWAによるエコーを検出し、リブ102の裏面位置D1を決定する。裏面位置D1は、オペレータが画像から決定してもよい。次に、ステップS103において、情報処理装置20は、第1探触子11が検出した反射波の弱い信号を強調して、溶け込み部105、105Rを画像化する。
【0068】
ステップS104に進み、裏面位置D1からリブ102の板厚Trまでの範囲、すなわち、D1+Trの範囲を板厚Tr方向における監視範囲として、
図13に示すように、溶接線WL方向にエコーHechを抽出する。
図13は、方向Sから構造体100を見たときのエコーHechを示している。
図13に示すエコーHechは、
図12に示す反転画像の未溶着部106Rの未溶着深さDipに相当する。
【0069】
エコーHechが抽出されたら、次にステップS105において、検査対象の構造体100の未溶着深さDipを求める。未溶着深さDipは、抽出されたエコーHechに対応する寸法の平均的な値である。次に、検査対象の構造体100の未溶着深さDipを求める手法を説明する。
【0070】
まず、反転画像の未溶着部106Rに対応するエコーHechの最頻値が所定の変動幅Hv内における中央値H0に入るように、所定の変動幅Hvの位置を調整する。所定の変動幅Hvは、
図14の−Hから+Hの範囲である。本実施形態において、H=2mmとすると、所定の変動幅Hvは±2mmとなる。Hの大きさは2mmに限定されるものではなく、例えば、構造体100の材料又は構造体100の製造時からの経過時間等に応じて変更してもよい。
【0071】
本実施形態において、所定の変動幅HvよりもエコーHechが小さい部分を、未溶着部106R(又は未溶着部106)とみなす。所定の変動幅Hvの中央値H0を、未溶着部106R(又は未溶着部106)の平均的な値とする。
図14中の一点鎖線LAVは、前述した平均的な値を示す直線である。H0は、検査対象の構造体100の未溶着深さDipに相当する。未溶着深さDipは、式(1)で求めることができる。
Dip=H0−D1・・・(1)
【0072】
未溶着深さDipを決定する方法は、前述した方法に限定されない。例えば、情報処理装置20は、エコーHechの平均値を求めて中央値H0とし、これを式(1)に与えて未溶着深さDipを求めてもよい。また、情報処理装置20は、エコーHechの平均値を求めた後、得られた平均値を基準とした所定の範囲を超えるエコーHechを除いたデータを用いて、再度エコーHechの平均値を求める。情報処理装置20は、これを繰り返して、エコーHechの平均値の前回値と今回値との差が所定の範囲内に収束したときの値を中央値H0とし、これを式(1)に与えて未溶着深さDipを求めてもよい。
【0073】
本実施形態において、エコーHechが、未溶着深さDipに相当する中央値H0を超える部分は、溶け込み部105R(又は溶け込み部105)又はビード部104R(又はビード部104)である。溶け込み部105R又はビード部104Rの亀裂CRBを評価する場合、中央値H0を超えたエコーHechを抽出し、評価する。この場合、エコーHechが中央値H0を超えていても、溶接線WL方向における寸法(エコー長さ)Wが所定の大きさ(例えば20mm)以下であるものは評価対象としない(
図14中Aで示す部分)。また、エコーHechがH0よりも小さいものは評価対象としない(
図14中Bで示す部分)。本実施形態においては、エコーHechがH0を超えており、かつエコー長さWが所定の大きさよりも大きいものが、有意な指示エコーとして、亀裂CRBの評価対象となる(
図14中Cで示す部分)。指示エコーは、亀裂CRBの可能性があるエコーである。指示エコーは、
図4に示す情報処理装置20が中央値H0に基づいて抽出することができる。また、検査対象の構造体100の画像から、オペレータが抽出することもできる。次に、リブ102側における探傷データの評価を説明する。
【0074】
(リブ側における探傷データの評価)
図15は、リブ側における探傷データの評価の各工程を示すフローチャートである。
図16は、本実施形態に係る探傷装置による探傷結果に基づいて生成された断面の画像の一例を示す図である。
図17は、方向Sから見た亀裂の一例を示す図である。
図18は、方向TPから見た亀裂の一例を示す図である。
図19は、方向Sから見た亀裂の一例を示す図である。
図20は、方向TPから見た亀裂の一例を示す図である。
図21は、ビード部に発生した亀裂を示す図である。
【0075】
ステップS201において、
図4に示す情報処理装置20は、リブ102側から探傷したデータ、すなわち
図7等に示す第1探触子11が探傷したデータを読み込む。情報処理装置20は、第1探触子11が探傷したデータを処理して、例えば反射波の強弱にすることにより、例えば、
図16に示すような、溶接線WLが延びる方向、すなわちビード部104が延びる方向と直交する断面内の画像を生成する。
【0076】
次に、ステップS202において、情報処理装置20は、前述したように、リブ102(又はリブ102R)の板厚Tr方向において、D1+Dipよりも深いエコーHechを抽出する。そして、ステップS203において、抽出されたエコーHechが指示エコーとして特定される。ステップS204に進み、指示エコーの長さ(指示長さ)Lrが求められる。指示長さLrは、
図17に示す方向Sから見たときの指示長さLrvと、
図18に示す方向TPから見たときの指示長さLrhとのうち、大きい方である。指示長さLrは、リブ102側の第1探触子11の探傷結果から得られた亀裂CRBR(又は亀裂CRB)の長さ(亀裂長さ)である。
【0077】
次に、ステップS205において、情報処理装置20は、指示高さHrを求める。指示高さHrは、
図19に示す方向Sから見たときの指示高さHrvと、
図20に示す方向TPから見たときの指示高さHrhとの二乗和の平方根である。指示高さHrと、指示高さHrvと、指示高さHrhとの関係は、
図21に示すようになるので、指示高さHrは、式(2)で求めることができる。指示高さHrは、リブ102側の第1探触子11の探傷結果から得られた亀裂CRBR(又は亀裂CRB)の高さ(亀裂高さ)である。
Hr=√(Hrv
2+Hrh
2)・・・(2)
【0078】
このようにして、ステップS206に示すように、リブ102側の第1探触子11の探傷結果から、亀裂長さLrと亀裂高さHrとが求められる。次に、デッキ101側における探傷データによるビード部104側の亀裂の評価を説明する。
【0079】
(デッキ側における探傷データの評価)
図22は、デッキ側における探傷データの評価の各工程を示すフローチャートである。
図23は、本実施形態に係る探傷装置による探傷結果に基づいて生成された断面の画像の一例を示す図である。
図24は、方向Sから見た亀裂の一例を示す図である。
図25は、方向TPから見た亀裂の一例を示す図である。
図26は、方向Sから見た亀裂の一例を示す図である。
図27は、方向TPから見た亀裂の一例を示す図である。
図28は、ビード部に発生した亀裂を示す図である。
【0080】
本実施形態において、デッキ101側における探傷データを評価する場合、方向TP及び方向Sとデッキ101及びリブ102との関係は、リブ102側における探傷データを評価する場合とは異なる。デッキ101側における探傷データを評価する場合、方向Eはデッキ101及びリブ102が延びる方向と平行な方向であるが、方向Sは、デッキ101の表面101Pbと平行かつ方向Eと直交する方向であり、方向TPは、方向S及び方向Eと直交する方向である。
【0081】
ステップS301において、
図4に示す情報処理装置20は、デッキ101側から探傷したデータ、すなわち
図7等に示す第2探触子12が探傷したデータを読み込む。情報処理装置20は、第2探触子12が探傷したデータを処理して、例えば反射波の強弱にすることにより、例えば、
図23に示すような、溶接線WLが延びる方向、すなわちビード部104が延びる方向と直交する断面内の画像を生成する。
【0082】
次に、ステップS302において、情報処理装置20は、前述したように、デッキ101(又はデッキ101R)の板厚Td方向において、2×Tdよりも深いエコーHechを抽出する。2×Tdよりも深いエコーHechが抽出されるのは、位置Y0R(位置Y0)を基準として、ビード部104R(104)とデッキ101R(101)の表面101PbR(101Pb)とが交差する部分Bsdr(Bsd)を超えた位置までの範囲である。部分Bsdr(Bsd)は、デッキ側ビード止端部である。位置Y0R(Y0)は、デッキ101R(101)の表面101PbR(101Pb)において、未溶着部106R(106)と溶け込み部105R(105)との境界である。
【0083】
ステップS303において、抽出されたエコーHechが指示エコーとして特定される。ステップS304に進み、指示エコーの長さ(指示長さ)Ldが求められる。指示長さLdは、
図24に示す方向Sから見たときの指示長さLdvと、
図25に示す方向TPから見たときの指示長さLdhとのうち、大きい方である。指示長さLdは、デッキ101側の第2探触子12の探傷結果から得られた亀裂CRBR(又は亀裂CRB)の長さ(亀裂長さ)である。
【0084】
次に、ステップS305において、情報処理装置20は、指示高さHdを求める。指示高さHdは、
図26に示す方向Sから見たときの指示高さHdvと、
図27に示す方向TPから見たときの指示高さHdhとの二乗和の平方根である。指示高さHdと、指示高さHdvと、指示高さHdhとの関係は、
図28に示すようになるので、指示高さHdは、式(3)で求めることができる。指示高さHdは、デッキ101側の第2探触子12の探傷結果から得られた亀裂CRBR(又は亀裂CRB)の高さ(亀裂高さ)である。
Hd=√(Hdv
2+Hdh
2)・・・(3)
【0085】
このようにして、ステップS306に示すように、デッキ101側の第2探触子12の探傷結果から、亀裂長さLdと亀裂高さHdとが求められる。次に、リブ102側の第1探触子11の探傷結果から得られた亀裂長さLr及び亀裂高さHrと、デッキ101側の第2探触子12の探傷結果から得られた亀裂長さLd及び亀裂高さHdとを用いて、ビード部104側における亀裂CRBを総合評価する工程を説明する。
【0086】
(ビード部側における亀裂の総合評価)
図29は、ビード部側における亀裂を評価する工程を示すフローチャートである。ステップS401において、情報処理装置20は、亀裂長さLdの起点と亀裂長さLrの起点とを比較する。また、情報処理装置20は、亀裂長さLdの終点と亀裂長さLrの終点とを比較する。ステップS402において、情報処理装置20は、ステップS401の比較結果から、起点がより小さい方をXsとし、ステップS403において、ステップS401の比較結果から、終点がより大きい方をXeとする。ステップS404において、情報処理装置20は、ビード部104側における亀裂CRBの亀裂長さLwを式(4)から求める。
Lw=Xe−Xs・・・(4)
【0087】
次に、ステップS405に進み、情報処理装置20は、リブ102側の第1探触子11の探傷結果から得られた亀裂高さHrと、デッキ101側の第2探触子12の探傷結果から得られた亀裂高さHdとのより大きい方を、ビード部104側における亀裂CRBの亀裂高さHwとする。このようにして、ステップS406において、ビード部104側における亀裂CRBの亀裂長さLw及び亀裂高さHwが決定される。決定された亀裂CRBの亀裂長さLw及び亀裂高さHwに基づいて、構造体100の溶接部103の健全性が評価される。
【0088】
溶接部103の亀裂CRBは、溶接部103の形状によって、傾きが大きく変わる可能性がある。例えば、溶接部103の亀裂CRBがリブ102寄りに傾斜している場合、リブ102側からの探傷であってもデッキ101側からの探傷であっても、面反射が得られやすいので、亀裂CRBは比較的確実に検出できる。溶接部103の亀裂CRBがデッキ101寄りに傾斜している場合、デッキ101側からの探傷では面反射が得られにくい。しかし、リブ102側からの探傷では、面反射は得られにくいが亀裂CRBの面とビード部104との間での多重反射が検出される。探傷装置10及び本実施形態に係る探傷方法は、リブ102側とデッキ101側との両方から探傷することにより亀裂CRBの傾きの影響を相互に補完できるので、溶接部103に発生した亀裂CRBの傾きが変化した場合でも、溶接部103の亀裂CRBを確実に検出できる。次に、デッキ101側における亀裂CRDの評価工程について説明する。
【0089】
(デッキ側における亀裂の評価)
図30は、デッキ側における亀裂を評価する工程を示すフローチャートである。
図31は、本実施形態に係る探傷装置による探傷結果に基づいて生成された断面の画像の一例を示す図である。
図31は、
図9の方向Eから見た状態を示している。
図32は、方向Sから見た亀裂の一例を示す図である。
【0090】
ステップS501において、
図4に示す情報処理装置20は、デッキ101側から探傷したデータ、すなわち
図7等に示す第2探触子12が探傷したデータを読み込む。情報処理装置20は、第2探触子12が探傷したデータを処理して、例えば反射波の強弱にすることにより、例えば、
図31に示すような、溶接線WLが延びる方向、すなわちビード部104(104R)が延びる方向と直交する断面内の画像を生成する。
【0091】
次に、ステップS502において、情報処理装置20は、前述したように、デッキ101(又はデッキ101R)の板厚Td方向において、2×Tdよりも深いエコーHechを、デッキ101の亀裂CRDの候補として抽出する。ステップS503において、抽出されたエコーHechが指示エコーとして特定される。ステップS504に進み、方向Eから見た状態、すなわち
図31に示す状態又は方向Sから見た状態、すなわち
図32に示す状態において、デッキ101の亀裂CRDに対応する指示エコーの高さHdrと、デッキ101Rの亀裂CRDRに対応する指示エコーの高さHskとが求められる。次に、ステップS505に進み、情報処理装置20は、ステップS504で求めた指示エコーの高さHdr、Hskのうち、数値の大きい方をデッキ101側に発生した亀裂CRDの亀裂高さHpとする。
【0092】
次に、ステップS506において、
図32に示す、方向Sから見た状態において、デッキ101の亀裂CRDに対応する指示エコーの長さLdrと、デッキ101Rの亀裂CRDRに対応する指示エコーの長さLskとが求められる。
図32中の位置Z0は、
図31中の位置Z0に対応し、デッキ101のリブ102側における表面101Pbの位置を意味する。
【0093】
次に、ステップS507に進み、情報処理装置20は、ステップS506で求めた指示エコーの長さLdr、Lskのうち、数値の大きい方をデッキ101側に発生した亀裂CRDの亀裂長さLpとする。このようにして、ステップS507に示すように、デッキ101側の第2探触子12の探傷結果から、デッキ101に発生した亀裂CRDの亀裂長さLpと亀裂高さHpとが求められる。デッキ102側における亀裂CRDの評価において、ステップS504及びステップS505と、ステップS506及びステップS507との順序は問わない。
【0094】
本実施形態は、リブ102側の第1探触子11によって検出されたリブ102側の探傷データと、デッキ101側の第2探触子12によって検出されたデッキ101側の探傷データとの両方を用いることで、2方向からの探傷データを関連付けながら構造体100の溶接部103を評価することができる。また、探傷装置10及び本実施形態に係る探傷方法を用いることで、溶接部103に進展した亀裂CRB及びデッキ101側に進展した亀裂CRDの同時に検出し、評価することができる。
【0095】
単一角度での超音波探傷は、浅い亀裂と深い亀裂とを同時に評価することは困難で、必要に応じて複数手法を併用したり、探傷ラインを追加したりすることが必要であった。本実施形態は、第1探触子11及び第2探触子12を用いるとともに、複数の角度で同時にデータを収集するため、再探傷の必要はなく、効率的に検査を進めることができる。
【0096】
溶接部103の亀裂CRBは、従来の超音波探傷では検査できず、塗膜の上から目視で観察して亀裂を検出し、亀裂の発生が予測される箇所の塗装を剥がしてから磁粉探傷等の表面検査手法で検査する必要があったが、本実施形態では、前述したように、超音波探傷法によって溶接部103に発生した亀裂CRBを検出し、評価することができる。
【0097】
本実施形態に係る探傷方法は、2箇所からの探傷データが得られるが、
図4に示す情報処理装置20の記憶部22は探傷データを反射波の波形として保存することができる。このようにすることで、得られた探傷データを用いて、構造体100の経年変化を監視することもできる。例えば、将来に新しい亀裂等が確認された場合であっても、記憶部22に保存してある探傷データを確認することで、亀裂等の進展を評価することもできる。
【0098】
本実施形態において、オペレータがエコー画像から未溶着深さDip、亀裂CRB、CRDの亀裂長さLr、Lp及び亀裂高さHr、Hp等を求めてもよい。また、本実施形態において説明したように、情報処理装置20がエコー画像にエッジ強調等の画像処理を施すことによって未溶着部106R(又は106)等を抽出し、抽出された各部の位置から未溶着深さDip、亀裂CRB、CRDの亀裂長さLr、Lp及び亀裂高さHr、Hp等を自動的に求めてもよい。
【0099】
以上、本実施形態及びその変形例について説明したが、前述した内容により本実施形態及びその変形例が限定されるものではない。また、前述した本実施形態及びその変形例の構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態及びその変形例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更を行うことができる。