特許第5843936号(P5843936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5843936
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】フック型ワンサイド固定金物
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20151217BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20151217BHJP
   F16B 13/04 20060101ALI20151217BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20151217BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   F16B2/12 A
   F16B35/04 V
   F16B13/04 A
   E04B5/02 M
   E04B1/58 509J
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-201198(P2014-201198)
(22)【出願日】2014年9月30日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】山下 仁崇
(72)【発明者】
【氏名】真名子 健二
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−146807(JP,A)
【文献】 実開昭50−035953(JP,U)
【文献】 特開2012−122559(JP,A)
【文献】 特開2013−167093(JP,A)
【文献】 特開2002−181016(JP,A)
【文献】 実開昭50−030521(JP,U)
【文献】 米国特許第03211042(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/12
E04B 1/58
E04B 5/02
F16B 13/04
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金物基体部の一端に脚部の一端が、回動可能に枢着され、前記脚部が作業側と反対側へと突出するフック型ワンサイド固定金物であって、
前記脚部は、前記金物基体部に沿う閉塞位置から、枢着位置を中心として一方向に回動して側方に展開するよう構成されるとともに、当該回動によって側方に展開すると、それ以上に展開することが規制されて固定されるように構成されており、
前記フック型ワンサイド固定金物は、
ネジの足部分を格納する筐体状の前記金物基体部と、
該金物基体部の内部で前記ネジに螺合しているナットと、
前記金物基体部の上部に配設され、前記ネジを上方から貫通させて前記金物基体部へと前記ネジの足部分を誘導し、前記脚部とともに被固定物を挟持固定する固定座金と、を有して構成されており、
前記脚部の一部には、長尺状の部材の一端部が取付けられており、
前記脚部の回動展開に伴い、前記長尺状の部材の他端部は、前記ネジのうち作業側へ配設される頭部から離隔する方向へと移動するとともに、前記脚部と連動して作業側と反対側へと突出するよう構成されていることを特徴とするフック型ワンサイド固定金物。
【請求項2】
前記長尺状の部材の一端部は、前記脚部の自由端側に取付けられることを特徴とする請求項1に記載のフック型ワンサイド固定金物。
【請求項3】
前記ナットは六角ナットであり、前記金物基体部の内幅は、前記ナットの短径より大きく且つ前記ナットの長径より小さくなるように構成され、通常時には前記ナットの短径側で移動可能に内挿されるとともに、前記ネジの締結時には前記ネジの回転により長径側を前記金物基体部の内壁に係止して前記ネジ締結が可能とされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフック型ワンサイド固定金物。
【請求項4】
前記閉塞位置においては、前記脚部が自重により開放方向へ展開する力に抗うよう、前記閉塞位置を維持する力が付加されるものであり、
前記閉塞位置を維持する力は、前記金物基体部と前記脚部に形成された凹凸部分の嵌合構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか一項に記載のフック型ワンサイド固定金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数部材を挟持して固定するための固定金物に係り、特に、部材の片側から固定を行うことが可能であるフック型ワンサイド固定金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部材同士を固定する金物として、提案されている金物は、多種多様に存在する。
このような金物の一種として、片側からのアクセスだけで固定を行えるワンサイド固定金物が存在している。
このような、ワンサイド固定金物の中でも、配設段階において、アクセス側と反対側端部に形成されたフック部分が展開して、このフック部分により他方の部材を把持するよう構成されたフック型ワンサイド固定金物が提案されており、施工現場において有効に活用されている(例えば、特許文献1及び特許文献3等参照)。
【0003】
特許文献1には、パネル取付金物開示されている。
当該金物は、脚部に開閉可能に構成された係止片を有する。
この係止片は閉状態で、H型鋼フランジ上に載置されたパネルの孔部に挿入され、脚部がパネル孔部から下方へ突出すると同時に開方向へと回動する。
そして、この開放された脚部をH型鋼フランジ部の下方面に係止させ、H型鋼フランジと、パネルとを挟持固定する。
また、特許文献2及び特許文献3にも、ワンサイドで固定される金物が開示されている。
これらの金物もまた、特許文献1に記載の金物とは詳細な構成は異なっているが、H型鋼フランジ上に載置された被固定物の孔部に挿入され、脚部がパネル孔部から下方へ突出すると同時に開方向へと回動するものである。
そして、この開放された脚部をH型鋼フランジ部の下方面に係止させ、H型鋼フランジと、被固定物とを挟持固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−209487号公報
【特許文献2】特許第3858118号公報
【特許文献3】特開2003−287008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1乃至特許文献3に記載の技術によると、脚部が自重により開く構造であるため、確実に開いたかどうかを確認する必要があった。
つまり、自重により自然と脚部が開くことを期待する他なく、開いていない場合には、固定不良の原因となるため、作業員が補助をして脚部を開く必要がある。
しかし、下方が狭小空間であったり、視認しづらい場所であると、確認作業が困難であり、このため、脚部が開いたか否かを確実に認知できる構造の金物の開発が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、アンカとなる脚部が開放したか否かを確実かつ簡易に認知することが可能とされたフック型ワンサイド固定金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1に係るフック型ワンサイド固定金物によれば、金物基体部の一端に脚部の一端が、回動可能に枢着され、前記脚部が作業側と反対側へと突出するフック型ワンサイド固定金物であって、前記脚部は、前記金物基体部に沿う閉塞位置から、枢着位置を中心として一方向に回動して側方に展開するよう構成されるとともに、当該回動によって側方に展開すると、それ以上に展開することが規制されて固定されるように構成されており、前記フック型ワンサイド固定金物は、ネジの足部分を格納する筐体状の前記金物基体部と、該金物基体部の内部で前記ネジに螺合しているナットと、前記金物基体部の上部に配設され、前記ネジを上方から貫通させて前記金物基体部へと前記ネジの足部分を誘導し、前記脚部とともに被固定物を挟持固定する固定座金と、を有して構成されており、前記脚部の一部には、長尺状の部材の一端部が取付けられており、前記脚部の回動展開に伴い、前記長尺状の部材の他端部は、前記ネジのうち作業側へ配設される頭部から離隔する方向へと移動するとともに、前記脚部と連動して作業側と反対側へと突出するよう構成されていることにより解決される。
このとき、具体的な構成としては、請求項2に記載のように、前記長尺状の部材の一端部は、前記脚部の自由端側に取付けられると好適である。
【0008】
このように、本発明に係るフック型ワンサイド固定金物よれば、回動展開する、つまり、金物基体部に対して回動する脚部に、長尺状の部材の一端部を取付けた。
換言すれば、脚部の移動に伴って移動する長尺の部材を備え付けた。
これにより、脚部が展開したことは、この長尺の部材の他端部を確認することで、確実に認知することが可能となる。
このとき、脚部の自由端側は、回動中心(金物基体部と脚部との枢着部分)に対し、回動距離が一番多い部分であるため、当該脚部の自由端側に長尺の部材の一端部を取付けることによって、より確実に脚部の展開状態を確認することができる。
【0009】
このとき、具体的な締結機構としては、請求項3に記載のように、前記ナットは六角ナットであり、前記金物基体部の内幅は、前記ナットの短径より大きく且つ前記ナットの長径より小さくなるように構成され、通常時には前記ナットの短径側で移動可能に内挿されるとともに、前記ネジの締結時には前記ネジの回転により長径側を前記金物基体部の内壁に係止して前記ネジ締結が可能とされるよう構成されており、これにより、特殊な構造をとることなく、簡易且つ確実に締結を行うことができる。
【0010】
また、このとき、請求項4に記載のように、前記閉塞位置においては、前記脚部が自重により開放方向へ展開する力に抗うよう、前記閉塞位置を維持する力が付加されるものであり、前記閉塞位置を維持する力は、前記金物基体部と前記脚部に形成された凹凸部分の嵌合構造であると、閉塞状態維持が簡易になるため、作業性が良好となるとともに、パッキングや輸送において好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフック型ワンサイド固定金物によれば、金物基体部に対して回動する脚部に、長尺状の部材の一端部が取付けられ、展開状態を確認するための機構とされている。
つまり、脚部の移動に伴って移動する長尺の部材を備え付けたため、脚部が展開したことは、この長尺の部材の他端部を確認することで、確実に認知することが可能となる。
よって、本発明によれば、簡易な構成にて確実に脚部の展開状態を認知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の使用状態斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の脚部の動きを示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の押圧開放状態を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係るキックバネの動きを示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の使用工程を示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の使用工程を示す説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の使用工程を示す説明図である。
図9】本発明の一実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物の使用工程を示す説明図である。
図10】本発明の一実施形態に係る脚部の開放方向の確認機構を示す説明図である。
図11】本発明の一実施形態に係る脚部開放完了確認機構を示す説明図である。
図12】本発明に係るストッパ機構を示す説明図である。
図13】本発明の一実施形態に係るストッパ機構の係合状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、アンカとなる脚部が開放したか否かを確実かつ簡易に認知することが可能とされたフック型ワンサイド固定金物に関するものである。
【0014】
図1乃至図13は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1はフック型ワンサイド固定金物の使用状態斜視図、図2はフック型ワンサイド固定金物を示す斜視図、図3はフック型ワンサイド固定金物の脚部の動きを示す説明図、図4はフック型ワンサイド固定金物の押圧開放状態を示す説明図、図5はキックバネの動きを示す説明図、図6乃至図9はフック型ワンサイド固定金物の使用工程を示す説明図、図10は脚部の開放方向の確認機構を示す説明図、図11は脚部開放完了確認機構を示す説明図、図12はストッパ機構を示す説明図、図13はストッパ機構の係合状態を示す断面説明図である。
【0015】
図1により、本実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物1の使用状態について説明する。
本実施形態においては、H型鋼で形成された床梁Hに、木製の床根太Mと、を固定する場合を説明する。
床梁Hは、架橋部H1の長手方向辺に上部フランジH2、下部フランジH3が形成されたH型鋼であり、床根太Mは、この床梁Hを構成する上部フランジH2の上面に載置固定されるものである。
この床根太Mの所定箇所(つまり、梁固定箇所)には、円筒状に貫通孔が形成されている。この円筒形状に抜かれた貫通孔を「金物配設孔M1」と記す。
フック型ワンサイド固定金物1は、この金物配設孔M1に挿入された状態で、床根太Mと床梁H(上部フランジH2)とを連結固定するものである。
以下、フック型ワンサイド固定金物1の詳細構成と、床梁Hと床根太Mとの連結方法について説明する。
【0016】
(フック型ワンサイド固定金物の詳細構成について)
本実施形態に係るフック型ワンサイド固定金物1は、埋設筐体部11と、脚部12と、ネジ13と、ナット14と、押しバネ15と、キックバネ16と、固定座金17と、ガイド座金18と、を有して構成されている。
本実施形態に係る埋設筐体部11は、有底筐体であり、略矩形状の埋設底面壁11Aの相対向する長辺(使用時に上下方向に延びる辺)からは、埋設側面壁11B,11Bが各々起立している。
そして、その上方端(埋設底面壁11A及び埋設側面壁11B,11Bの上方端)を閉塞するように埋設上面壁11Cが配設されている。
これら、埋設側面壁11B,11B、埋設上面壁11Cは、埋設底面壁11Aに対して略垂直となるように起立している。
【0017】
そして、埋設底面壁11Aには、長辺の延びる方向(使用時における上下方向)に切り込まれたスリット11aが形成されている。
また、埋設側面壁11B,11Bの下端側には、下方に延出する埋設側軸支部111,111が各々形成されており、これら埋設側軸支部111,111には、回動軸Gが貫通する埋設側回動軸配設孔11b,11bが形成されている。
【0018】
この埋設側軸支部111,111の下端は、埋設底面壁11A下端よりも、下方に到達するように延出しており、よって、後方視において、埋設側軸支部111,111と埋設底面壁11A下端とで、下方に開口する略矩形の空間が形成される。
当該空間を、「回動規制空間K1」と記す。
更に、埋設上面壁11Cの中央部には、後述するネジ13が貫通する埋設上面壁ネジ貫通孔11cが形成されている。
【0019】
本実施形態に係る脚部12は、横断面略凹形状の筐体であり、略矩形状の脚部底面壁12Aの相対向する長辺(使用時に水平方向に延びる辺)からは、脚部側面壁12B,12Bが起立している。
脚部側面壁12B,12Bの一端部には、回動軸Gが貫通する脚部側回動軸配設孔12b,12bが各々形成されている。
なお、脚部側回動軸配設孔12b,12bは、一端部において、若干、他端部方向に入った位置に形成されている。
【0020】
埋設筐体部11と脚部12とは、埋設筐体部11下端部に脚部側面壁一端部(脚部側回動軸配設孔12b,12b形成側端部)を嵌め込んで、回動軸Gにより軸支することにより連結される。
つまり、埋設側回動軸配設孔11b,11bと脚部側回動軸配設孔12b,12bとが整合するように(2個の連通孔を形成するように)、埋設筐体部11下端部に脚部側面壁一端部が嵌め込まれ、これらに回動軸Gを貫通させることにより、埋設筐体部11と脚部12とは連結される。
このため、埋設筐体部11に対して脚部12は、回動可能となる。
【0021】
なお、図3に示すように、脚部側回動軸配設孔12b,12bは、脚部側面壁12B,12Bの一端部において、若干、他端部方向に入った位置に形成されている。
このため、埋設側回動軸配設孔11b,11bと脚部側回動軸配設孔12b,12bとを整合させた際に、脚部側面壁12B,12Bの一端側(埋設筐体部11と連結される側の端部)は、突出することとなる。
つまり、図3(a)に示すように、脚部12が埋設筐体部11に格納された状態においては、脚部側面壁12B,12Bの一端部は、埋設側軸支部111,111の下端より下方へ位置しており、図3(b)に示すように、脚部12が下方へ回動すると、脚部側面壁12B,12Bの一端部は、回動規制空間K1に侵入する。
【0022】
そして、図3(c)に示すように、脚部12開放状態となると、脚部側面壁12B,12Bは、埋設底面壁11Aの下端部と当接し、これ以上の回動(つまり、脚部側面壁12B,12Bの他端側がこれ以上下方へと回動)することが規制される。
本実施形態においては、脚部側回動軸配設孔12b,12bの位置や、脚部側面壁12Bの高さ(脚部底面壁12Aからの距離)等を調整することにより、脚部12が埋設筐体部11に対して略90°となる位置で回動を規制している。
このように、本実施形態においては、脚部12は、図3(a)の格納状態から、図3(c)に開放状態、つまり、埋設筐体部11に対して略90°となる位置、まで回動することとなる。
【0023】
また、脚部12の内部(脚部底面壁12A及び脚部側面壁12B,12Bで囲まれた空間)には、ナット当接ブロックPが配設されている。
このナット当接ブロックPの端部(脚部12の自由端側)は、アール形状の曲面となっており、当該曲面を「ナット滑面P1」と記す。
このナット当接ブロックPは、本実施形態おいては、合成樹脂(例えば、ゴム)で形成されており、ナット滑面P1表面には、摩擦係数の小さい部材(例えば、フィルム等)が貼付されているとよい。
このように構成されているため、図4(a)〜図4(c)に示すように、脚部12は、簡易に回動展開されることとなる。
つまり、脚部12の閉塞状態においては、図4(a)に示すように、ネジ13下端(若しくは、ナット14の下面)がナット滑面P1に圧接している。
【0024】
そして、図4(b)に示すように、開放状態に変位させる過程では、ナット14がナット滑面P1を押すことにより脚部12を回動展開方向へと押し出す。
このとき、ナット滑面P1は、R形状の曲面となっているため、この押し出しが効率的に実行される。また、摩擦係数が小さい部材が貼付されていれば、より、この押し出しが効率的に実行される。
なお、ナット当接ブロックP1の素材や、摩擦係数の小さい部材の素材等は、特に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてどのような素材が選択されてもよい。
このようにして、図4(c)に示すように、脚部12の回動展開が完了する。
【0025】
本実施形態に係るネジ13及びナット14は、公知のネジ及び六角ナットが使用されている。
ネジ13は、埋設上面壁11Cに形成された埋設上面壁ネジ貫通孔11cから、埋設筐体部11内部に(上方から下方へ向けて)挿入される。
そして、このネジ13において、埋設筐体部11内部に配設される位置にはナット14が取付けられている。
本実施形態に係る押しバネ15は、公知のコイルスプリングであり、ネジ13に挿設されるとともに、埋設上面壁11Cの下面とナット14の上面の間に亘るように配設されている。
【0026】
また、本実施形態に係るキックバネ16は、公知のキックバネが使用されており、輪状のスプリング部分は、回動軸Gに挿通されるとともに、脚の一端は筐体底面壁11Aに、他端は脚部底面壁12Aに圧接している。
このため、ネジ13を引き上げて、埋設底面壁11C下面とナット14上面との距離を小さくすると、押しバネは、ナット14を下方向に押圧する付勢力F1を付加する。
また、埋設筐体部11に脚部12を格納すると、キックバネ16は、埋設底面壁に対して、脚部底面壁12Aを回動させる方向へと付勢力F2を付与する。
【0027】
本実施形態に係る固定座金17は、中央部にガイド座金貫通孔17Aが形成された略円環状の座金である。
このガイド座金貫通孔17Aは、円形の固定座金中心孔17aと、この固定座金中心孔17aと連通する略矩形のガイド垂下壁貫通孔17bとで形成された鍵穴型(前方後円型)の孔である。
そして、固定座金17の仮想中心点Oを中心として、ガイド垂下壁貫通孔17b形成位置に対して180°にあたる位置には、方向指示溝17Bが形成されている。
【0028】
本実施形態に係るガイド座金18は、円環状のガイド固定ワッシャ部18Aと、このガイド固定ワッシャ部18Aの一部から垂下するガイド垂下壁18Bとで形成されている。
このガイド固定ワッシャ部18Aの中央部には、ガイド側ネジ貫通孔18aが形成されている。
また、ガイド垂下壁18Bは、ガイド固定ワッシャ部18Aと略垂直となるよう垂下するL字形状の部材である。
詳述すると、ガイド垂下壁18Bは、ガイド固定ワッシャ部18Aから垂直に垂下する帯状の平板であるガイド誘導壁18bと、このガイド誘導壁18bの下端から屈曲してガイド固定ワッシャ部18A方向側に突出するスリット挿入壁18cを有して構成される。
このスリット挿入壁18cは、ガイド誘導壁18bに対して略垂直となるように構成されている。
【0029】
以上のように構成された各部材は、以下のように組み立てられている。
埋設筐体部11と脚部12とは、埋設筐体部11下端部に脚部側面壁一端部(脚部側回動軸配設孔12b,12b形成側端部)を嵌め込んで、回動軸Gにより軸支することにより連結され、脚部12は埋設筐体部11の下方部において回動可能となっている。
このとき、前述の通り、脚部12開放状態となると、脚部側面壁12B,12Bは、埋設底面壁11Aの下端部と当接し、脚部12が埋設筐体部11に対して略90°となる位置までに回動が規制されている。
【0030】
また、ネジ13は、固定座金17にセットされたガイド座金18のガイド側ネジ貫通孔18a及び埋設上面壁ネジ貫通孔11cを貫通して、埋設筐体部11内部に侵入しており、ネジ13のネジ脚であって埋設筐体部11内部に配設される位置には、ナット14が配設されている。
そして、押しバネ15が、ネジ13のネジ脚に、埋設上面壁11Cの下面とナット14の上面の間に亘るように挿設されている。
【0031】
また、キックバネ16が、輪状のスプリング部分が、回動軸Gに挿通された状態で、脚の一端は筐体底面壁11Aに、他端は脚部底面壁12Aに圧接している。
なお、ナット14は、六角ナットであり、その短径t1は、埋設側面壁11B,11B間の距離t3よりも僅かに小さくなるように構成されるとともに、その長径t2は、距離t3よりも僅かに大きくなるように構成されている。
そして、組立時には、短径t1において埋設側面壁11B,11B間に近接するよう配置されるため、ナット14は埋設側面壁11B,11Bを上下に移動できる。
しかし、ネジ13を回転させると、長径t2側が埋設側面壁11B,11Bに圧接して、当該位置でナット14が固定されるよう構成される。
【0032】
本実施形態に係る固定座金17及びガイド座金18は、埋設上面壁11C上面と、ネジ13のネジ頭との間に配置される。
固定座金17とガイド座金18について説明する。
固定座金17の固定座金中心孔17aには、ガイド座金18のガイド固定ワッシャ部18Aが配設されるとともに、固定座金17のガイド垂下壁貫通孔17bには、ガイド座金18のガイド垂下壁18Bが上方から下方へ挿通される。
そして、ガイド垂下壁18Bのスリット挿入壁18cは、その自由端側が、埋設底面壁11Aに形成されたスリット11aに挿入されている。
【0033】
つまり、この構成により、スリット11aの直上には、固定座金17のガイド垂下壁貫通孔17bが、確実に配置されるようになり、よって、このガイド垂下壁貫通孔17bと180°(仮想中心点Oに対して180°)真逆の位置にある方向指示溝17Bは、確実にスリット11aと反対側である脚部12の展開方向に向くこととなる(図10参照)。
よって、上方から作業する作業員は、脚部12の配設位置を、この方向指示溝17Bにより確実に認知することができる。
なお、本実施形態においては、スリット挿入壁18cをスリット11aに差し込むだけの構成としたが、これに限られることはなく、スリット11aより埋設筐体部11内部に入り込んだ部分をスリット11a幅より大きくして抜け止めとするよう構成されていてもよい。
【0034】
(フック型ワンサイド固定金物の使用)
次いで、図6乃至図9により、フック型ワンサイド固定金物の使用状態について説明する。
図6に示すように、閉塞状態においては、脚部12は、埋設筐体部11に格納された状態である。
このとき、ネジ13下端(若しくは、ナット14)と、ナット当接ブロックPのナット滑面P1とは、図3(a)等に示すように、圧接した状態である。
この状態で、図6に示すように、床根太Mに形成された金物配設孔M1に、埋設筐体部11及び脚部12を入れ込む。
このとき、固定座金17、ガイド座金18のガイド固定ワッシャ部18A、ボルト13の頭部側は、金物配設孔M1上方に配設されている。
【0035】
そして、固定座金17を金物配設孔M1の上方を被覆するように配設する。
このとき、固定座金17の方向指示溝17Bを、床梁Hを構成する上部フランジH2方向に合わせる。
このように調整すると、上述のとおり、脚部12は、ガイド座金18を構成するガイド垂下壁18Bの位置と反対側、つまりスリット11aと反対側である展開方向へと、確実に向きが整合する。
【0036】
そして、図7に示すように、ボルト14の頭部を残し、埋設筐体部11及び脚部12を、金物配設孔M1より下方へと落とす。
この脚部12の展開途中の状態が図4(b)である。
つまり、図4(a)の閉塞状態においては、押しバネ15が収縮した状態であり、下方向への付勢力が付加されている。
この状態で閉塞する作用力が軽減すると、押しバネ15は伸長し、ナット14の押圧の補助力となる。
【0037】
また、このとき、図5に示すように、キックバネ16もまた、脚部底面壁12Aを展開方向へ押す。
よって、脚部12が押しバネ15及びキックバネ16の付勢力により、確実に展開回動する。
このようにして、図8に示すように、脚部12は、金物配設孔M1の下方で、確実に展開する。
【0038】
重ねていうと、このとき、図9に示すように、上述のガイド座金18の作用により、この脚部12は、床梁Hを構成する上部フランジH2方向に確実に展開されている。
次いで、この状態で、ネジ13を締結方向に回転させると、ナット14は、その短径t1が埋設側面壁11B,11B間の距離t3よりも僅かに小さくなるように構成されるとともに、その長径t2が距離t3よりも僅かに大きくなるように構成されているため、長径t2側が埋設側面壁11B,11Bに圧接して、当該位置でナット14が固定される。
そして、そのナット14に向かって締結が行われ、図9に示すように、床根太M上面と上部フランジH2とが把持固定される。
【0039】
(脚部展開確認機構例)
また、上述に記載のフック型ワンサイド固定金物1に対して、脚部展開確認機構S1を付加すると、より好適である。
脚部展開確認機構S1は、図11に示すように、
長尺部材S11を脚部12に固定することにより形成される。
つまり、脚部12の自由端側に、長尺部材S11の一端を固定しておく。
そして、金物配設孔M1の下方で脚部12を展開させると、長尺部材S11は、この展開に従い、金物配設孔M1の下方へと落ち込む。
よって、脚部12が確実に展開した場合には、長尺部材S11が落ち込むため、これを確認すれば、脚部12の展開を認知することができる。
この長尺部材S11は、どのようなものであってもよいが、例えば、糸、テグス、ワイヤ等が使用されるとよい。
【0040】
(閉塞保持機構例)
また、上述に記載のフック型ワンサイド固定金物1に対して、埋設筐体部11に脚部12を格納した状態で自然保持するために、閉塞保持機構S2を付加すると好適である。
この閉塞保持機構S2は、図12及び図13に示すように、埋設筐体側凸部S21,S21と、脚部側凹部S22,S22と、を有して構成されている。
埋設筐体側凸部S21,S21は、埋設側面壁11B,11Bに各々形成された内側へ凸となる部分である。
また、脚部側凹部S22,S22は、脚部側面壁12B,12Bに各々形成された内側へ凹む部分である。
【0041】
これら、埋設筐体側凸部S21,S21と脚部側凹部S22,S22とは、脚部12閉塞状態において、係合するように構成されている。
そして、これらは、押しバネ15の最大付勢力に僅かに抗う程度に係合しており、ナット14(ネジ13)が下降すると、係合が外れ脚部12が展開回動するよう構成される。
なお、今回は、凹凸部を各々形成したが、これに限られることはなく、溝等の構成であってもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でどのようにでも構成できるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 フック型ワンサイド固定金物
11 埋設筐体部(金物基体部)
11A 埋設底面壁
11a スリット
11B 埋設側面壁
111 埋設側軸支部
11b 埋設側回動軸配設孔
11C 埋設上面壁(金物基体部上面壁)
11c 埋設上面壁ネジ貫通孔
K1 回動規制空間
12 脚部
12A 脚部底面壁
12B 脚部側面壁
12b 脚部側回動軸配設孔
P ナット当接ブロック(ナット当接部材)
P1 ナット滑面
13 ネジ
14 ナット
15 押しバネ
16 キックバネ
17 固定座金
17A ガイド座金貫通孔
17a 固定座金中心孔
17b ガイド垂下壁貫通孔
17B 方向指示溝
O 仮想中心点
18 ガイド座金
18A ガイド固定ワッシャ部
18a ガイド側ネジ貫通孔
18B ガイド垂下壁
18b ガイド誘導壁
18c スリット挿入壁
G 回動軸
S1 脚部展開確認機構
S11 長尺部材
S2 閉塞保持機構
S21 埋設筐体側凸部
S22 脚部側凹部
H 床梁
H1 架橋部
H2 上部フランジ
H3 下部フランジ
M 床根太
M1 金物配設孔
【要約】
【課題】本発明の目的は、アンカとなる脚部を開かせるための機構を搭載し、確実かつ簡易に脚部が開放したことを認知可能としたフック型ワンサイド固定金物を提供することにある。
【解決手段】金物基体部11の一端に脚部12の一端が、回動可能に枢着されたフック型ワンサイド固定金物1に関する。フック型ワンサイド固定金物1は、筐体状の金物基体部1と、ネジ13に螺合しているナット14と、金物基体部11の上部に配設され、脚部12とともに被固定物M,Hを挟持固定する固定座金17と、を有して構成されている。脚部12の一部には、長尺状の部材S11の一端部が取付けられており、脚部12の回動展開に伴い、この長尺状の部材S11の他端部が移動するよう構成されている。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13