(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、有機合成の分野に関するものであり、より詳細には、本発明は、式:
【化1】
[式中、Rは、下記において定義される通りである]の化合物の製造方法であって、当該化合物が、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせの形態である、方法に関する。本発明はまた、β−サンタロールもしくはそれらの誘導体の合成のための化合物(I)の使用に関する。
【0002】
先行技術
式(I)の化合物は、非常に短く効果的で工業的に実現可能な方法での、β−サンタロール((Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペント−2−エン−1−オール、すなわち、エキソ異性体)およびそれらの誘導体の製造のための有用な出発物質である。
【0003】
β−サンタロールおよびそれらの誘導体は、周知の非常に評価の高い芳香成分であり、特定の適合性を有するものもある。合成β−サンタロールは、現時点で市販されておらず、天然源からのみ入手可能である(サンダルウッド属の精油)。β−サンタロールは、東インド産サンダルウッド油(サンタラム・アルバム)中に、20〜25%の典型的な濃度において存在し、概して、精油の良好でクリーミーなサンダルウッドの特徴の主な匂いベクトルとして受け取られている。西オーストラリア産サンダルウッド油(サンタルム・スピカトゥム)は、典型的には、精油の3〜8%の範囲と、はるかに少ないβ−サンタロールを含有し、油としてはあまり評価が高くない。
【0004】
サンタラム・アルバムは、絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約および国際自然保護連合のレッドリストによって、脆弱で絶滅の危険性のある種として分類されているため、東インド産サンダルウッドの輸出および精油の蒸留は、厳しい政府の管理下にある。
【0005】
したがって、β−サンタロールおよびその誘導体を製造するための代替合成が、緊急に必要とされている。
【0006】
わかっている限りにおいて、全ての既知の合成は、非常に時間がかかるか、あるいは高価な出発材料および/または試薬、あるいは工業プロセスにとってはコストがかかり過ぎるかまたは許容できない量の廃棄物が発生する工程まで必要とする(例えば、Brunke et al.in Rivista Italiana EPPOS,1997,49を参照されたい)。特に、β−サンタロールの製造方法の代表的な最良の例として、以下の参考文献を列記することができる:
− 欧州特許第10213号:ただし、当該方法は、非常に長く、多くの塩素化された中間体(香料での使用に最適ではない)を必要とし、所望の生成物へ転化させるためには依然としていくつかの工程を必要とするエナルの製造での全収率は非常に低い;
− A.Krotz et al,in Tet.Asymm.,1990,
1,537:比較的短い合成であるが、大規模に製造するのが困難な高価な還元剤、高価なキラル助剤、および2回のWittig反応とそれに続くケトンからエキソメチレン基への転換を必要とする;
− 米国特許第3,662,008号および米国特許第3,679,756号(P&G)は、低い全収率のβ−サンタロールの合成についても記載している。この経路も、Z二重結合を導入するためのWittig反応および高価な還元剤に依存している;
− 国際公開第2009/141781号:サンタロールの製造における中間体として使用される、式(I)のいくつかの誘導体の合成について報告している;しかしながら、当該合成は長く、欧州特許第10213号に記載されているのと同じ重要なエナル中間体を経ている;
− C.Fehr et al.inAngew.Chem,Int.Ed,2009,
48,7221:容易に製造できないプロパルギルアルコール誘導体でのCu触媒転位反応を介するβ−サンタロールの合成について記載している;
− 欧州特許第2119714号:リッチ芳香族環でのScriabine反応を意味する合成について記載しているが、アルケンでのそのような反応の使用またはβ−サンタロールの製造での使用についての記載はない;
− H.Mayr et al in Chem.Ber.,1986,
119,929:環状アルケンへの1,4求電子付加について記載しているが、β−サンタロールの製造についての言及または提示はない。
【0007】
本発明の目的は、β−サンタロールおよびその誘導体の製造のための、より工業的かつ効率的な方法を提供することである。実際に、本発明は、先行する文献のない新規な反応を用いて(Wittigオレフィン化または同様の転換を必要とすることなく)メチレン官能基の同時形成と共に、好適に官能化された(適正な構成の)側鎖部分を作り出してサンテンからのサンタロールの三段階製造を可能にすることにより、標的化合物の製造プロセス全体を短くする。
【0008】
天然の東インドサンダルウッド油中にはエピ−β−サンタロールが存在しているにもかかわらず、当該油の臭気的影響全体にはほとんど寄与していないことは、文献において周知である。したがって、最小限のエピ−β−サンタロールおよび最小限の(E)−β−サンタロールを含有する(Z)−β−サンタロールの選択的合成が非常に望ましい。
【0009】
発明の説明
本発明の第一の目的は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化2】
[式中、Rは、式COR
aのC
2〜C
10基を表し、R
aは、場合により1つまたは2つのエーテル官能基を有するアルキルもしくはアルケニル基であるか、あるいは場合により1〜3つのアルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、もしくはニトロ基、またはハロゲン原子で置換されているフェニルまたはベンジル基である]の化合物の製造方法である。
【0010】
下記において詳細に示されるように、当該化合物(I)は、β−サンタロール(特に、(Z)−2−メチル−5−((1S,2R,4R)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−2−エン−1−オール)の直接の前駆体である。
【0011】
本発明の第一の目的の特定の態様は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化3】
[式中、Rは、式COR
aのC
2〜C
10基を表し、R
aは、場合により1つまたは2つのエーテル官能基を有しているアルキルもしくはアルケニル基であるか、あるいは場合により1〜3つのアルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、もしくはニトロ基、またはハロゲン原子で置換されているフェニルまたはベンジル基である]の化合物の製造方法であって、
その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化4】
[式中、R
1は、水素原子またはSi(R
2)
3もしくはB(OR
2’)
2基を表し、R
2はC
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基を表し、R
2’は、独立して、C
1〜4アルキル基、あるいは場合により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されているフェニル基を表し、あるいは、当該R
2’は、一緒に、C
2〜6アルカンジイル基、または場合により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されているジフェニルもしくはジナフチル基を表す]の化合物と、
その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化5】
[式中、Rは、式(I)において定義された意味を有し、Lは、ハロゲン原子またはOR基を表す]の化合物とを、
1)以下の
I.以下からなる群より選択されるルイス酸:
i)2、3、4、13族の元素の金属塩または3d元素の金属塩またはスズの金属塩;
ii)式Al(R
4)
aCl
3-aの塩化アルキルアルミニウム(aは1または2を表し、R
4はC
1〜10アルキルもしくはアルコキシド基を表す);および
iii)式BZ
3の
ボロン誘導体(Zは、フッ化物または場合により置換されているフェニル基を表す)、ならびにC
2〜C
10エーテルまたはC
1〜C
8カルボン酸とのその付加物のうちのいずれか1つ;
および/または
II.2.5〜−20のpK
aを有するプロトン酸;
の中から選択される少なくとも1種の酸;ならびに、
2)場合により、アルカリ土類金属水酸化物もしくは酸化物ならびに式R
bCOCl、ClSi(R
b)
3、R
bCOOR
c、または(R
bCOO)
2R
d(R
bは、C
1〜12アルキル基あるいは場合により1つまたは2つのC
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基で置換されているフェニル基を表し、R
cは、アルカリ金属カチオンまたはR
bCOアシル基を表し、ならびにR
dは、アルカリ土類金属カチオンを表す)の化合物からなる群より選択される添加剤
の存在下において、一緒に反応させることによる、方法である。
【0012】
当業者であればよく理解しているように、「pK
a」は、標準状態で測定された酸の解離定数として理解される。当該定数は、"Handbook of Chemistry and Physics",87th edition,2006−2007,page 15−13 to 15−23,ISBN 978−0−8493−0487−3、またはMarch’s"Advanced Organic Chemistry" 5th edition,ISBN 0−471−58589−0などの化学ハンドブック、あるいは任意の他の同様の文献から得られる。
【0013】
本発明の方法は、わかっている限り、芳香族化合物の代わりにアルケンを使用した、文献に報告されているScriabineタイプの反応の第一実施例である。わかっている限り、式(III)のタイプのジエン化合物を使用した、文献に報告されているScriabineタイプの反応の第一実施例でもある。
【0014】
式(II)の化合物は、Chem.Ber.,1955,
88,407に従って得られる(サンテンの場合、すなわち、R
1は水素原子である)。
【0015】
対応するシリル(R
1=Si(R
2)
3)またはボリル(R
1=B(OR
2’)
2)化合物は、対応するサンタジエン(Chent.Ber.,1955,
88,407を参照のこと)の1,4ヒドロシリル化(J.Organometallic Chem.,1977,132,133,J.Am.Chem.Soc,2010,132,13214を参照のこと)または1,4ヒドロホウ素化(J.Am.Chem.Soc.,2009,131,12915、またはJ.Am.Chem.Soc,2010,132,2534を参照のこと)のどちらかによって得られる。あるいは、これらの同じ生成物は、適切な試薬を使用した、Chem.Ber.,1994,127,1401およびChem.Ber.,1994,127,2135に記載されているようなLochmann−Schlosser塩基を用いた脱プロトン化によるサンテンの単官能化によって得られる。
【0016】
本発明の任意の実施形態により、ならびに特定の態様から独立して、当該R
1基は、水素原子を表す。
【0017】
あるいは、当該R
1基は、Si(R
2)
3(R
2は、C
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基を表す)またはB(OR
2’)
2基(R
2’は、独立して、C
1〜4アルキル基または、場合により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されているフェニル基を表すか、あるいは当該R
2’は、一緒に、C
2〜6アルカンジイル基または、場合により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されているジフェニルもしくはジナフチル基を表す)を表す。
【0018】
本発明の任意の実施形態により、当該化合物(II)は、トリエチル(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)メチル)シラン、2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エネ(サンテン)、または4,4,5,5−テトラメチル−2−(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)メチル)−1,3,2−ジオキサボロランである。特に、当該化合物(II)は、2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エネ(サンテン)である。
【0019】
分かっている限りにおいて、式(III)の化合物は、新規化合物である。したがって、本発明の第二の目的は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式(III):
【化6】
[式中、Rは、式(I)において定義した意味を有し、ならびにLは、ハロゲン原子またはOR基を表す]の新規で有用な化合物である。特に、RがC
2〜6アシル基で、ならびにLがOR基またはClであるものを挙げることができる。特に、(E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1,1−ジイルジカルボキシレートを挙げることができ、この場合、カルボキシレートとは、上記において定義されたような、C
1〜7、好ましくはC
2〜6アシル基を意味する。
【0020】
本発明の任意の実施形態により、ならびに特定の態様から独立して、当該Rは、式COR
aのC
2〜C
10基を表し、式中、R
aは、場合により1つまたは2つのエーテル官能基を有しているアルキルもしくはアルケニル基であるか、あるいは場合により1つまたは2つのC
1〜C
2アルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、もしくはニトロ基、またはハロゲン原子で置換されているフェニルもしくはベンジル基を表す。
【0021】
本発明の任意に実施形態により、および特定の態様から独立して、当該R基は、式COR
aのアシル基を表し、式中、R
aは、
− 場合により1つまたは2つのC
1〜2アルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ基で、あるいは、1つまたは2つのニトロ基で置換されているフェニルもしくはベンジル基;あるいは、
− 直鎖状または分岐鎖状または環状のC
1〜C
9アルキルもしくはアルケニル基
である。
【0022】
特に、当該R基は、C
2〜C
7アシル基である。
【0023】
当該Rの具体例は、AcO、EtCO、
iPrCO、
secBuCO、
tBuCH
2CO、
tBuCO、またはPhCH
2COである。
【0024】
本発明の任意に実施形態により、および特定の態様から独立して、当該L基は、Cl原子を表すか、または上記において定義されたようなOR基を表す。
【0025】
本発明による、化合物(I)の製造方法は、酸を必要とし、当該酸は、Scriabineタイプの反応のための触媒として使用される。
【0026】
本発明の方法は、様々な性質のルイス酸、とりわけ特定の金属塩、の存在下において実施することができる。本発明の任意の実施形態により、ならびに特定の態様から独立して、当該金属塩は、有利には、式:
(M
n+)(X
-)
n-m(Y
-)
m
[式中、mは、整数0〜(n−1)であり、ならびに、
nは2であり、かつMは、Zn、Cu、またはアルカリ土類金属であり;
nは3であり、かつMは、ランタニド、Sc、Fe、Alであり;あるいは、
nは4であり、かつMは、Sn、Ti、またはZrであり;
各X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、非配位性モノアニオン、R
3SO
3-を表し、R
3は、塩素原子もしくはフッ素原子、またはC
1〜3炭化水素、またはペルフルオロ炭化水素、または場合により1つまたは2つのC
1〜4アルキル基で置換されているフェニルを表し;
各Y
-は、nが2または3の場合、C
1〜6カルボキシレートまたは1,3−ジケトネートを表し、nが3または4の場合、C
1〜6アルコキシレートを表す]の化合物の中から選択される。
【0027】
「弱い配位性のモノアニオン」なる表現は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、金属中心に、弱くまたは非常に弱く配位しているモノアニオン、を意味する。典型的には、そのような弱い配位性のモノアニオンは、1未満のpK
aを有する酸IIXのアニオンである。そのような非配位性モノアニオンの非限定的な例は、ClO
4-、BF
4-、PF
6-、SbCl
6-、AsCl
6-、SbF
6-、AsF
6-、またはBR
4-(式中、Rは、場合により1〜5つの基、例えば、ハロゲン原子またはメチルまたはCF
3基など、で置換されているフェニル基である)であり、特に、PF
6-またはBF
4-である。
【0028】
本発明の任意の実施形態により、ならびに特定の態様から独立して、当該ルイス酸は、式:
(M
n+)(X
-)
n-m(Y
-)
m
[式中、mは、整数0〜(n−1)であり、ならびに、
nは2であり、かつMは、Zn、またはMg、Cuであり;
nは3であり、かつMは、Fe、Ce、Alであり;あるいは
nは4であり、かつMはSnであり;
各X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、PF
6-、BF
4-、R
3SO
3-を表し、式中、R
3は、C
1〜3炭化水素またはペルフルオロ炭化水素、または場合により1つまたは2つのC
1〜4アルキル基で置換されているフェニルを表し;
各Y
-は、nが2または3の場合、C
1〜6カルボキシレートまたは1,3−ジケトネートを表し、nが3または4の場合、C
1〜6アルコキシレートを表す]の化合物の中から選択される。
【0029】
本発明の任意の実施形態により、当該X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、CF
3SO
3-、あるいはBF
4-またはPF
6-を表す。
【0030】
本発明の任意の実施形態により、X
-がハロゲン化物、特に、Cl
-またはI
-を表す場合、M
n+は、M
4+、Fe
3+、またはZn
2+であり;あるいは、X
-が、非配位性モノアニオンまたはR
3SO
3-、特に、CF
3SO
-(OTf
-)を表す場合、M
n+は、M
3+またはM
2+である。
【0031】
Xの性質は、アニオンXのレドックス電位(特に、当該アニオンXがハロゲンの場合)および金属カチオンのレドックス電位に依存することは、当業者によって理解される。
【0032】
本発明の任意の実施形態により、当該Y
-は、nが2または3の場合にはC
1〜6カルボキシレートを表し、nが3または4の場合にはC
1〜3アルコキシレートを表す。
【0033】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該金属塩は、式:
− (Zn
2+)(X
-)
2-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有し、特に、mは0である];
− (M
3+)(X
-)
3-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有し、MはAlまたはFeであり、特に、mは0または1である];
− (Sn
4+)(Cl
-)
4-m(R
5O
-)
m[式中、mは、上記において示された意味を有し、R
5は、C
1〜3アルキル基を表し、特に、mは0または1である];
の塩の中から選択される。
【0034】
本発明の任意の実施形態により、当該金属塩は、式:
− (Zn
2+)(X
-)
2-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有する];
− (M
3+)(X
-)
3[式中、m、X
-は、上記において示された意味を有し、Mは、AlまたはFeである];
− (Sn
4+)(Cl
-)
4
の塩である。
【0035】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該金属塩は、nが2または3のものである。
【0036】
当該金属塩は、予め形成された塩として反応媒体に加えることができ、あるいは、例えば実施例において説明されるように、例えば、カルボキシレートの塩(例えば、Zn(AcO)
2)とClSi(R
b)
3またはR
bCOClとの反応によって、in situ発生させることができる。
【0037】
当該ルイス酸は、塩化アルキルアルミニウムであってもよい。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該塩化アルキルアルミニウムは、式Al(R
4)
aCl
3-aのものであり、aは1または2を表し、R
4はC
1〜4アルキルまたはアルコキシド基を表す。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該塩化アルキルアルミニウムは、式Al(R
4)
aCl
3-aの化合物の中から選択され、aは1または2を表し、R
4はC
1〜3アルキル基を表す。本発明の任意の実施形態により、当該塩化アルキルアルミニウムは、aが1を表しかつR
4がC
1〜3アルキル基を表す化合物、例えば、EtAlCl
2またはMe
2AlClなど、である。
【0038】
当該ルイス酸は、式BZ
3のボロン誘導体であってもよい。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該ボロン誘導体は、式BZ
3(式中、Zは、フッ素または場合により置換されているフェニル基である)のもの、ならびにC
2〜C
8エーテルまたはC
1〜C
6カルボン酸とのその付加物のうちのいずれか1つである。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該ボロン誘導体は、BF
3、ならびにC
4〜C
6エーテルまたはC
1〜C
3カルボン酸とのその付加物のうちのいずれか1つ、例えば、BF
3(EtOEt)
1〜2またはBF
3(AcOH)
1〜2など、である。
【0039】
本発明の任意の実施形態により、当該ルイス酸は、Me
2AlCl、BF
3(HOOCMe)
1〜2、(Zn
2+)(X
-)
2(X
-は、上記において定義される通りであり、特に、Br
-、I
-、またはCl
-である)、FeCl
3、SnCl
4、Al(OTf)
3の中から選択される。
【0040】
本発明の方法は、様々な性質のプロトン酸の存在下において実施することができる。本発明の任意の実施形態により、当該プロトン酸は、無水であり、例えば、当該酸中の水の量は、3w/w%未満である。
【0041】
本発明の任意の実施形態により、当該プロトン酸は、C
0〜12スルホン酸ならびに2.5〜−20のpK
aを有する無水鉱酸の中から選択される。
【0042】
本発明の任意の実施形態により、当該プロトン酸は、鉱酸、例えば、リンモリブデン酸、リン酸、または硫酸など、の中から、ならびに/あるいは、C
0〜12スルホン酸、例えば、FSO
3H、ClSO
3H、MeSO
3H、CF
3SO
3H、PhSO
3H(式中、Phは、場合により1つまたは2つのNO
2、NH
2、C
1〜3アルキル、C
1〜3アシルC
1〜3C
1〜3カルボン酸、C
1〜3アルコキシル、および/またはC
1〜3アミノ基で置換されているフェニル基である)など、の中から選択される。
【0043】
本発明の任意の実施形態により、当該方法において使用される酸は、ルイス酸である。
【0044】
場合により、本発明の方法に、添加剤を追加することもできる。当該添加剤は、反応を加速させるか、および/または、所望の生成物の収率を上げる。本発明の上記の実施形態のいずれか1つにより、当該添加剤は、R
bCOCl、ClSiR
b3、R
bCOOR
c、または(R
bCOO)
2R
dからなる群の中のいずれかであり、R
bは、C
1〜8アルキル基、もしくはC
1〜4アルキル基、または場合により1つまたは2つのC
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基で置換されているフェニル基を表し、R
cは、Li、Na、もしくはKカチオン、またはR
bCOアシル基を表し、R
dは、MgまたはCaカチオンを表す。
【0045】
本発明の上記の実施形態のいずれか1つにより、当該添加剤は、非限定的な例として、ClSiMe
3、MeCOCl、AcOK、またはAcOAcであり得る。
【0046】
特に、当該ルイス酸が、上記において定義されるような金属塩である場合、シリルまたはアシルクロリドタイプの添加剤を使用するのが最も有利である。同様に、当該ルイス酸が、上記の、塩化アルキルアルミニウムタイプまたはホウ素誘導体である場合、アルカリカルボキシレートの添加剤またはカルボン酸無水物タイプの添加剤を使用するのが最も有利である。
【0047】
当業者には既知であるので、言うまでもないが、当該添加剤の添加は、1ポット処理において(例えば、同じ反応媒体において、触媒と一緒にまたは触媒に続いて)、またはある種の2ポット処理において(例えば、化合物(II)および(III)を触媒と一緒に処理し、これによって得られた生成物を精製した後、異なる反応媒体中において当該化合物と添加剤を一緒に処理する)行うことができる。
【0048】
この第二の選択肢(2ポット処理)は、ルイス酸が塩化アルキルアルミニウムである場合、特に興味深く、というのも、驚くべきことに本発明者らは、所望の化合物(I)に加えて、ルイス酸による処理の重要な生成物が、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化7】
[式中、Rは、上記において定義される通りである]の化合物であり得ること;
ならびに、当該化合物(I'')は、添加剤、例えば、アルカリもしくはアルカリ土類カルボキシレートまたはカルボン酸無水物、好ましくは、添加剤に対して定義したようなアルカリカルボキシレートなど、を加えることによって、所望の生成物(I)へ転化可能であること、を見出しためである。当該化合物(I'')は新規であり、したがって、化合物(I)の中間体も、本発明の別の態様である。
【0049】
当該酸は、広範囲な濃度において、反応媒体に加えることができる。非限定的な例として、出発化合物(III)のモル量に対して、約0.01〜0.30モル当量、好ましくは約0.001〜0.15モル当量の範囲の濃度を挙げることができる。非限定的な例として、ならびにより詳細には、上記において説明したような、プロトン酸、ボロン誘導体、または金属塩の場合、出発化合物(III)のモル量に対して、約0.005〜0.20モル当量、好ましくは約0.007〜0.15モル当量の範囲の濃度を挙げることができる。非限定的な例として、ならびにより詳細には、上記において説明したような塩化アルキルアルミニウムの場合、出発化合物(III)のモル量に対して、約0.5〜2.00モル当量、好ましくは約0.7〜1.3モル当量の範囲の濃度を挙げることができる。
【0050】
言うまでもないが、当該酸の最適濃度は、後者の性質および所望の反応時間、ならびに添加剤の存在の有無に依存するであろう。
【0051】
当該添加剤は、広範囲な濃度において、反応媒体に加えることができる。非限定的な例として、酸、特にルイス酸の質量に対して、10〜250%の範囲の添加剤濃度を挙げることができる。好ましくは、当該添加剤濃度は、酸、特にルイス酸の質量に対して、10〜120%であろう。
【0052】
本発明による化合物(I)の製造方法は、試薬ならびに塩および添加剤の反応性に適合する限り、多くの様々な反応条件下において実施することができる。当業者は、自身の必要性を考慮して、最も適切なものを選択することができる。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、非限定的な例として、互いに独立して、または任意の組み合わせとの関連において、以下の条件を挙げることができる:
− −78℃〜150℃、好ましくは0℃〜60℃の反応温度;当然のことながら、当業者は、出発物および最終生成物および/または最終的な溶媒の融点および沸点の関数として、好ましい温度も選択することができる;
− (II)から(I)への転換は、その実施形態のいずれかにおいて、溶媒の不在下もしくは存在下において実施することができる;そのような溶媒の非限定的な例は、C
2〜10飽和エステル、C
1〜6飽和塩素化溶媒、C
6〜9飽和または芳香族炭化水素(後者は驚くべきことに出発化合物(II)とのScriabineタイプの反応において競合が認められない)、ならびにそれらの混合物である。より好ましくは、当該溶媒は、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、またはキシレンである。
【0053】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、化合物(I)、(I")、または(II)は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態であり得る。明瞭化のために、立体異性体なる用語では、任意のジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、またはEもしくはZ立体配置の炭素−炭素二重結合異性体が意図される。
【0054】
本発明の特定の実施形態により、化合物(I)は、50%(w/w)を超える(1SR,2RS,4RS)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち、式(I−A):
【化8】
[式中、Rは、上記の式(I)において示された意味を有し、太線および斜線は、相対立体配置を示している]に示されるような、相対エキソ立体配置(橋かけ炭素原子とエノール鎖は、相対cis立体配置である)を有する化合物である。
【0055】
本発明の特定の実施形態により、化合物(I)は、50%(w/w)を超える(1S,2R,4R)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち、式(I−B):
【化9】
[式中、Rは、上記の式(I)において示された意味を有し、太線および斜線は、絶対立体配置を示している]に示されるような、絶対立体配置を有する化合物である。
【0056】
なお、上記または下記の実施形態のいずれかにおいて、製造のための出発材料(例えば、(II)および(I''))または当該化合物(I)から得られる生成物(例えば、下記の(IV)およびβ−サンタロールを参照されたい)は、同じステレオ立体配置を有していてもよく、および好ましくは有している。一例として、下記:
スキーム1:
【化10】
の反応スキームを挙げることができ、当該ステレオ立体配置は、相対または絶対立体配置である。そのため、本発明は、例えばサンテンなどからの、β−サンタロールの三段階プロセスを可能にする。
【0057】
本発明のさらなる目的は、上記において定義されるような工程を含む、β−サンタロールまたはその誘導体、例えば、β−サンタラール、β−サンタリルベンゾエート、β−サンタリルブチレート、β−サンタリルイソ−ブチレート、β−サンタリルプロピオネートなど、の製造方法である。当然のことながら、当該方法を本発明の方法により得られる化合物(I)を使用してどのように実施するかは、当業者に既知である。
【0058】
化合物(I)からβ−サンタロールへの転換は、当業者に周知である多くの異なる方式において実施することができる。実用例を、下記の本明細書の実施例において提供する。
【0059】
しかしながら、非限定的な例として、化合物(I)をβ−サンタロールへと転換させる最も直接的な方式の1つは、以下の反応:
a)その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の化合物(IV):
【化11】
[式中、Rは、式(I)の場合と同じ意味を有する]へとジエノール誘導体(I)を還元する工程;
b)当該化合物(IV)をβ−サンタロールへと転化させる工程
を含む。
【0060】
工程a)およびb)は、当業者に周知の標準的な方法により実施することができる。
【0061】
例えば、各工程に対して以下の方法:
工程a):Shibasaki et al.,J.Org.Chem.,1988,
53,1227により(ここでは、酢酸ジエノール誘導体の[1,4]水素化が報告されている)あるいは国際公開第08/120175号または国際公開第09/141781号により;ならびに
工程b):国際公開第09/141781号を参照のこと
を挙げることができる。
【0062】
そのような手順の例を、以下の本明細書の実施例において提供する。
【0063】
実施例
本発明を、全ての実施形態において、下記の実施例によりさらに詳細に説明するが、略語は、当該技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏(℃)において示されており;NMRスペクトルデータは、CDCl
3中において、400MHzまたは125MHzの装置により、それぞれ
1Hまたは
13Cに対して記録し、化学シフトδは、標準物質TMSに対して、ppmにおいて示され、結合定数Jは、Hzで表されている。
【0064】
サンテン:2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エネ(II、R=H)は、Chem Ber.,1955,88,407に従って調製した。2−メチルペンタジエナールは、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,1986,1203またはSynth.Commun.,1985,15,371に従って、あるいは下記において説明される手順に従って、調製することができるであろう。
【0065】
実施例1
式(III)の化合物の調製
・ (E)−エチル2−メチルペンタ−2,4−ジエノエートの調製
ナトリウムエトキシド溶液(エタノール中での21%、33.3ml、触媒)を、無水エタノール(350ml)中におけるエチル2−メチルペンタ−3,4−ジエノエート(Bedoukian、125.0g、890mmol)の溶液に加え、周囲温度で12時間撹拌した。当該溶液を真空において濃縮し、残留物をエーテル、飽和NH
4Cl溶液間で分配させた。水相をエーテルで2回再抽出し、次いで、収集した有機層をNH
4Cl、次いで塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、オレンジ色の油として粗エステル125.8gを得て、これを、さらなる精製を行わずに、次の工程にそのまま使用した。
【0066】
【0067】
・ (E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1−オールの調製
LiAlH
4(14.8g、389mmol)を無水エーテル(500ml)中に懸濁させ、無水エーテル(250ml)中における上記エステル(50.0g、357mmol)の溶液を、穏やかな還流が維持される速度でゆっくりと滴加した。当該滴加に続いて、当該懸濁液を周囲温度でさらに30分間撹拌し、次いで、氷浴中で0℃に冷却した。蒸留水(15ml)を非常に注意深く滴加し、続いて15%のNaOH溶液(15ml)を非常に注意深く滴加し、続いて蒸留水(45ml)を滴加した。当該白色懸濁液を周囲温度で30分間激しく撹拌し、次いでNa
2SO
4を加え、当該懸濁液をさらに30分間撹拌し、ろ過し、沈殿物をエーテルで十分に洗浄した。溶媒を真空において除去して、粗アルコールを得て、これを、バルブ・ツー・バルブ蒸留(145℃において0.09mbar)によってさらに精製して、純粋なアルコール32.0gを得た。
【0068】
【0069】
・ (E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエナールの調製
二酸化マンガン(45g、523mmol)を、CH
2Cl
2(200ml)中における上記アルコール(10.0g、102mmol)の激しく撹拌された溶液に、周囲温度において、一度に加えた。30分後、二酸化マンガン(45g、523mmol)を一度に追加し、続いてさらに15gを加えた。当該懸濁液を周囲温度でさらに30分間撹拌し、次いで、セライトの6cmプラグを通してろ過した。当該固体をCH
2Cl
2で洗浄した。収集した洗浄液をNa
2SO
4で乾燥させ、次いでろ過し、次の工程にそのまま使用した。少量を真空(300mbar)において乾固させて、アルデヒドを得た。
【0070】
【0071】
・ (E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1,1−ジイル−ジエステルの調製のための基本手順
上記無水物(0.306mol)を、CH
2Cl
2(100ml)中における新たに調製した2−メチルペンタジエナール(9.8g、0.102mol)の撹拌された溶液に加え、当該溶液を0℃に冷却した。無水FeCl
3(2%w/w、0.15g)を一度に加えた。当該溶液を0℃で5時間撹拌し、エーテルおよび飽和NaHCO
3の混合物に注ぎ入れ、周囲温度で一晩撹拌した。エーテルで2回再抽出し、収集した有機層を飽和NaHCO
3(2回)、飽和NH
4Cl、塩水で洗浄し、次いでNa
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗ジエステルを得た。バルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、純粋なジエステルを得た。
【0072】
1. (E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1,1−ジイルジアセテートの調製
100℃で0.6mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、所望のジアセテート6.5g、32%を得た。
【0073】
【0074】
2. (E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1,1−ジイルプロピオネートの調製
120℃で0.1mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、所望のジプロピオネート1.8g、16%を得た。
【0075】
【0076】
3. (E)−2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1,1−ジイルビス(2−メチルプロパノエート)の調製
125℃で0.1mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留により、所望のジイソブチレート6.1g、48%を得た。
【0077】
【0078】
実施例2
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルアセテートの調製
・ ZnBr
2の使用
ZnBr
2(155mg、0.7mmol)を、室温において、撹拌したジエニルジアセテート(2.5g、12.5mmol)に加えた。当該懸濁液を周囲温度で15分間撹拌し、次いで、CH
2Cl
2(3ml)中におけるサンテン(1.23g、10mmol)の溶液を、ゆっくりと滴加した。当該茶色の懸濁液を周囲温度でさらに3時間撹拌し、次いで、酢酸エチル、およびNaHCO
3で希釈し、酢酸エチルで再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、黄色の油として粗ジエニルアセテート3.11gを得た。
【0079】
150〜165℃で0.12mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、所望のジエニルアセテート2.08gを得た(エキソ:エンド=12:1、収率=80%)。
【0080】
【0081】
・ ZnCl
2の使用
ZnCl
2(20mg、5mol%)を、CH
2Cl
2(2ml)中における上記ジエニルジアセテート(402mg、2mmol)に加え、周囲温度で5分間撹拌し、次いで、サンテン(240mg、2mmol)を滴加した。当該混合物を、周囲温度でさらに3時間撹拌した。酢酸エチルで希釈し、次いでNaHCO
3を加えて、周囲温度で一晩撹拌した。酢酸エチルで再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗ジエニルアセテート0.48gを得た。165℃で1mbarにおけるバルブ・ツー・バルブによってさらに精製することにより、ジエニルアセテート0.27g、収率=50%を得た(エキソ:エンド=20:1)。上記において調製したものと分光学的に同一であった。
【0082】
・ ZnI
2の使用および化合物(III)のin situ発生
Znl
2(0.1mmol、3mol%、0.033g)を、周囲温度において、CH
2Cl
2(3ml)中におけるジエナール(0.35g、3.5mmol)およびサンテン(0.52g、4mmol)の溶液に加えた。無水酢酸(0.5g、5mmol)を、10分かけてゆっくりと滴加した。ZnCl
2(0.025g、1mol%)を加え、当該溶液を周囲温度において48時間撹拌した。酢酸エチル、次いでNaHCO
3で希釈し、酢酸エチルで再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、暗黄色の油として粗ジエニルアセテート1.0gを得た。
【0083】
175℃で0.45mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、ジエニルアセテート0.46g、収率=48%(エキソ:エンド=30:1)を得た。前に調製したものと分光学的に同一であった。
【0084】
・ Al(OTf)
3の使用
Al(OTf)
3(1.7mol%、1.7mmol、811mg)を、周囲温度において、トルエン(25mL)に加え、続いてサンテン(12.2g、100mmol)を加えた。次いで、トルエン(25mL)中における上記ジエンジアセテート(21.8g、110mmol)の溶液を、45分間かけてゆっくりと滴加した。30分後、周囲温度において酢酸エチルおよびNaHCO
3溶液で希釈し(ガス発生)、水相をEtOAcにより再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3、次いで水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗ジエニルアセテートを得た。195℃で8.0×10
-2mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸溜によってさらに精製することにより、淡黄色の油としてジエニルアセテート17.8g、68%、エキソ:エンド>50:1を得た。前に調製したものと分光学的に同一であった。
【0085】
実施例3
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルアセテートの調製
基本手順 ルイス酸:
ルイス酸(5〜10mol%)を、0℃に冷却した、ジクロロメタン(1ml)中におけるサンテン(122mg、1mmol)およびジエニルジアセテート(180mg、1.1mmol)の撹拌した混合物に加えた。0℃で30分後、当該溶液を周囲温度まで温め、周囲温度においてさらに2〜4時間撹拌した。転化率をGCによって分析した。
【0086】
第1表:様々なルイス酸によって触媒される反応
【表1】
【0087】
【表2】
*=5mol%;acac=アセチルアセトネート;TFA=トリフルオロ酢酸;OTs=パラトルエンスルホネート;OTf=トリフルオロメチルスルホネート
1)=化合物(I)の言及された異性体の、GCによって観察される収率
2)=言及された化合物の、GCによって観察される収率
【0088】
基本手順 プロトン酸:
サンテン(61mg、0.5mmol)および上記ジエニルジアセテート(91mg、0.5mmol)を、周囲温度において、CH
2Cl
2(1ml)に溶解させた。次いで、酸触媒を加え、当該混合物を、周囲温度において、指定された時間撹拌した。GC FIDにより転化率(%)を得る(基準試料との比較に基づいて)。
【0089】
第2表:様々なプロトン酸によって触媒される反応
【表3】
mins:分、hrs=時間
*出発サンテンに対して;
**所望の生成物
【0090】
実施例4
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルカルボキシレートの調製
基本手順:
Al(OTf)
3(0.024g、1mol%)を、周囲温度において、サンテン(0.61g、5mmol)および2−メチルペンタ−2,4−ジエン−1,1−ジイルエステル(5mmol)の撹拌した混合物に一度に加えた。さらに60分後、飽和重炭酸ナトリウムおよびエーテルに注ぎ入れた。エーテルで再抽出し、収集した有機相を塩化アンモニウム、次いで塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗ジエニルエステルを得た。バルブ・ツー・バルブ蒸溜によってさらに精製することにより、エキソおよびエンド異性体の混合物として純粋なジエニルエステルを得た。
【0091】
1.
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルプロピオネート
175℃で0.6mbarにおける5mmolスケールのバルブ・ツー・バルブ蒸溜により、ジエニルプロピオネート0.99g、収率=72%(エキソ:エンド=50/1)を得た。
【0092】
【0093】
2.
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルイソブチレート
175℃で0.6mbarにおける5mmolスケールのバルブ・ツー・バルブ蒸溜により、ジエニルイソブチレート1.0g、収率=70%(エキソ:エンド=50/1)を得た。
【0094】
【0095】
実施例5
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルカルボキシレートの調製
式(II)のシリル誘導体の調製:
・ エチルジメチル(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン−2−イル)メチル)シラン
トリエチルアルミニウム(ヘキサン中での1.0M、4.2mL、4.2mmol)を、0℃に冷却した新たに脱ガス処理したトルエン(85mL)中におけるNi(acac)
2(真空において120℃で3時間乾燥したもの、107mg、0.4mmol、5mol%)、サンタジエン(1.0g、8.3mmol)の懸濁液にゆっくりと滴加した。15分後、ジメチルエチルシラン(1.1mL、8.3mmol)をゆっくりと滴加し、次いで当該溶液を、周囲温度までゆっくりと温め、さらに2時間撹拌した。当該反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ入れ、エーテルで抽出し、次いで収集した有機相を塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、次いでろ過し、真空において溶媒を除去して、粗アリルシラン0.9gを得、これを、30℃で0.08mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸溜によってさらに精製して、所望のアリルシラン0.65g、37%を得た。
【0096】
【0097】
・ トリエチル(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)メチル)シラン
Ni(acac)
2(真空において0.08mbarおよび120℃で7時間予備乾燥したもの、252mg、1mmol)を含有するトルエン(25mL)中におけるジエン(2.64g、22mmol)の溶液を氷浴において1℃に冷却した。Et
3Al(ヘキサン中での1.0M、5.0mL、5mmol)をゆっくりと滴加した。この溶液を0℃でさらに15分間撹拌し、次いでEt
3SiH(2.4g、24mmol)をゆっくりと滴加し、次いで当該溶液を周囲温度において2時間撹拌した。飽和NaHCO
3を加え、水相を酢酸エチルで抽出し、収集した有機相をNH
4Cl、塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去した。120〜130℃で0.05mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸溜よってさらに精製することにより、所望のアリルシラン1.5g(63%)を得た。
【0098】
【0099】
・ ジメトキシ(メチル)(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)メチル)シラン
トリエチルアルミニウム(ヘキサン中で1.0M、2.5mL、2.5mmol)を、0℃に冷却した新たに脱ガス処理したトルエン(80mL)中におけるNi(acac)
2(真空において120℃で3時間乾燥させたもの、130mg、0.4mmol、5mol%)、サンタジエン(1.2g、10mmol)の懸濁液にゆっくりと滴加した。15分後、ジメトキシメチルシラン(1.2mL、10mmol)をゆっくりと滴加し、次いで当該溶液を、周囲温度までゆっくりと温め、さらに2時間撹拌した。当該反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ入れ、エーテルで抽出し、次いで収集した有機相を塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、次いでろ過し、真空において溶媒を除去して、粗アリルシラン1.5gを得、これを、75℃で0.08mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸溜によってさらに精製し、所望のアリルシラン1.2g、53%を得た。
【0100】
【0101】
カップリング:
【化12】
【0102】
ルイス酸の使用:ZnBr
2(30mg、0.14mmol)を、周囲温度において、トルエン(8mL)中における上記アリルシラン(300mg、1.4mmol)、上記ジアセテート(300mg、1.4mmol)の溶液に加えた。周囲温度において12時間後、GC分析は、40%の所望の生成物および9%のエピ(エンド)を示した。
【0103】
プロトン酸の使用:2,4ジニトロベンゼンスルホン酸(25mg、5mol%)を、周囲温度において、一度に、CH
2Cl
2(8mL)中における上記ジメチルエチルシリルアルケン(300mg、1.3mmol)および上記ジエニルジアセテート(250mg、1.3mmol)の混合物に加えた。周囲温度において15分間後、GC分析は、63%の所望の生成物が形成されていることを示した。
【0104】
【化13】
【0105】
ルイス酸の使用:ZnBr
2(30mg、0.14mmol、10mol%)を、周囲温度において、CH
2Cl
2(3mL)中における上記アリルシラン(300mg、1.3mmol)、上記ジアセテート(300mg、1.4mmol)の溶液に加えた。周囲温度において30分間後、GC分析は、85%の所望の生成物を示した。
【0106】
プロトン酸の使用:2,4ジニトロベンゼンスルホン酸(40mg、10mol%)を、周囲温度において、一度に、CH
2Cl
2(3mL)中における上記ジメトキシメチルシリルアルケン(300mg、1.3mmol)および上記ジエニルジアセテート(250mg、1.3mmol)の混合物に加えた。周囲温度において15分間後、GC分析は、45%の所望の生成物が形成されていることを示した。
【0107】
【化14】
【0108】
ルイス酸の使用:ZnBr
2(2.5mol%、7mg)を、周囲温度において、一度に、CH
2Cl
2(3mL)中における上記トリエチルシリルアルケン(300mg、1.3mmol)および上記ジエニルジアセテート(250mg、1.3mmol)の混合物に加え、次いでGCによって分析した。当該33%のアリルシランが残り、所望の生成物が既に形成されていた(23%)。
【0109】
プロトン酸の使用:2,4ジニトロベンゼンスルホン酸(4mg、1mol%)を、周囲温度において、一度に、CH
2Cl
2(3mL)中における上記トリエチルシリルアルケン(300mg、1.3mmol)および上記ジエニルジアセテート(250mg、1.3mmol)の混合物に加えた。周囲温度において6時間後、GC分析は、2%の所望の生成物が形成されていることを示した。
式(II)の
ボロン誘導体の調製:
・ 4,4,5,5−テトラメチル−2−(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)メチル)−1,3,2−ジオキソボロラン
グローブボックスにおいて、Ni(COD)
2(114mg、5mol%)、トリシクロヘキシルホスフィン(233mg、10mol%)をSchlenkフラスコに秤量し、次いで周囲温度において、新たに脱ガス処理したトルエン(85mL)に溶解させた。サンタジエン(新たに蒸留したもの、1.0g、8.3mmol)を加え、続いてピナコールボラン溶液(8.3mL、8.3mmol、THF中での1.0M)を滴加した。当該溶液を周囲温度において3時間撹拌し、次いで飽和NaHCO
3溶液に注ぎ入れ、エーテルで抽出した。当該有機相を水、次いで塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗ボロネート1.5gを得た。100℃で0.1mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸溜によってさらに精製することにより、所望のアリルボロネート620mg、31%を得た。
【0110】
【0111】
カップリング:
【化15】
【0112】
ZnBr
2(10mol%、0.05mmol、11mg)を一度に、周囲温度において、CH
2Cl
2(3mL)中における上記ボロネート(250mg、1mmol)および上記ジエニルジアセテート(200mg、1mmol)の撹拌した溶液に加えた。当該懸濁液を周囲温度において6時間撹拌した。GC分析は、24%のボロネートが残り、50%の所望の生成物が形成されていることを示した。
【0113】
実施例6
式(I'')の化合物を介した(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2,2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルアセテートの調製
・ (1E,3E)−5−((1SR,2SR,4SR,7RS)−2−クロロ−1,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル)−2−メチルペンタ−1,3−ジエナ−1−イルアセテート(I'')
塩化ジエチルアルミニウム(ヘキサン中での1.0M、7.2ml、7.2mmol)を15分かけて、0℃に冷却されたCH
2Cl
2(8ml)中におけるサンテン(978mg、8mmol)および上記ジエニルジアセテート(1982mg、10mmol)の撹拌された溶液に滴加した。0℃でさらに90分間撹拌し、次いで氷および飽和NaHCO
3に注ぎ入れ、エーテルで再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、黄色の油として粗ジエニルアセテート1.7gを得た。
【0114】
180℃で0.12mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、所望のジエニルアセテート0.82gを得た。上記において調製したものと同一であった。残留物には、所望のクロロジエニルアセテート0.15g(収率=6%)が含有されていた。
【0115】
【0116】
・ (1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−1,3−ジエン−1−イルアセテート
150℃での、上記において得られたクロロジエニルアセテート(150mg)および酢酸カリウム(250mg)の処理により、前に調製したものと分光学的に同一の所望のジエニルアセテートを得た(収率=定量)。
【0117】
実施例7
β−サンタロールの調製
・ (Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペント−2−エン−1−イルイソブチレート(式(IV)の化合物)
新たに蒸留したジエニルイソブチレート(1.0g、3.5mmol)およびマレイン酸(25mg、2.2mol%)をs/sオートクレーブに入れ、次いで触媒RuCp
*COD.BF
4(30mg、2mol%)を加えた。アセトン(2ml、超音波およびアルゴンバブリングにより脱ガス処理し、アルゴン下で貯蔵したもの)を最後に加え、当該混合物を密封し、脱気し、次いで水素で5分間パージした。当該懸濁液を、5barの水素の雰囲気下において、60℃で12時間撹拌した。溶離液として酢酸エチルによってシリカのプラグ(5cm)を通してろ過し、次いで真空において溶媒を除去して粗生成物を得た。溶離液として1:99の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィカートリッジ(80g)によりさらに精製することによって、純粋なイソブチレート0.9gを得て、これを、175℃で0.6mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、エキソ:エンド=50:1の混合物として純粋な所望の生成物0.71g、収率=72%を得た(Z:E選択性>98:2)。
【0118】
【0119】
・ (Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペント−2−エン−1−オール(β−サンタロール)
上記アリルアセテート(1.25g、4.5mmol)をメタノール(15ml)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(23%メタノール溶液、100μl)を加え、当該溶液を1時間撹拌した。大部分のメタノールを真空において除去し、次いで残留物をシクロヘキサン、水間で分配させた。シクロヘキサンで再抽出し、次いで収集した有機相を水、次いでNaHCO
3で洗浄し、K
2CO
3およびMgSO
4で乾燥させ、次いでろ過した。真空において溶媒を除去して、粗β−サンタロール1.1gを得た。170℃で0.1mbarにおけるバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、96:4(エキソ:エンド)のβ−サンタロールおよびエピ−β−サンタロールの混合物0.9g、収率=90%を得た(Z:E選択性>99:1)。
【0120】