特許第5843986号(P5843986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843986
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】粒状医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/785 20060101AFI20151217BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20151217BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20151217BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20151217BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20151217BHJP
   A61P 3/12 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   A61K31/785
   A61K47/38
   A61K9/14
   A61K9/16
   A61P7/00
   A61P3/12
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-62085(P2015-62085)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-193614(P2015-193614A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-62081(P2014-62081)
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100109357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100117846
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 ▲頼▼子
(74)【代理人】
【識別番号】100137464
【弁理士】
【氏名又は名称】濱井 康丞
(72)【発明者】
【氏名】笠島 裕希
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡一郎
【審査官】 ▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530737(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/004816(WO,A1)
【文献】 特開2009−132700(JP,A)
【文献】 特表2007−510783(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/041902(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/023544(WO,A1)
【文献】 特表2009−506070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビキサロマー及びヒプロメロースを含有してなる粒状医薬組成物であって、粒状医薬組成物中、500μm未満の粒状医薬組成物の割合が25重量%以下である、前記粒状医薬組成物。
【請求項2】
ビキサロマーの配合割合が粒状医薬組成物の重量に対して、50重量%〜99重量%である、請求項1に記載の粒状医薬組成物。
【請求項3】
粒状医薬組成物の破断荷重が5N以上100N以下である、請求項1又は2に記載の粒状医薬組成物。
【請求項4】
粒状医薬組成物が顆粒剤、散剤及び細粒剤からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒状医薬組成物。
【請求項5】
粒状医薬組成物が造粒・乾燥後の造粒品である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒状医薬組成物。
【請求項6】
粒状医薬組成物が顆粒剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒状医薬組成物。
【請求項7】
ヒプロメロースが、20℃2%水溶液において、6mPa・sの粘度を有するものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の粒状医薬組成物。
【請求項8】
ビキサロマー及びヒプロメロースを用いて造粒する工程を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の粒状医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビキサロマー(Bixalomer)を含有してなる粒状医薬組成物に関する。詳細には、本発明は、ビキサロマー及びヒプロメロースを含有し、良好な服用性及び優れた製造性を有する粒状医薬組成物に関する。
また本発明は、ビキサロマー及びヒプロメロースを含有し、優れた製造性を有する粒状医薬組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビキサロマーはASP1585としても知られる化合物であり、下記構造式:
【化1】
(式中、n=4)で表される、N,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミンと2−(クロロメチル)オキシランが1:2.1〜2.4の比で反応して得られた架橋重合体である。ビキサロマーは、アミン機能性リン酸結合性ポリマーであり、透析中の慢性腎不全患者における高リン血症改善剤として、既に日本で上市され、「キックリン(登録商標)カプセル」として販売されている(以上、特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
ビキサロマーの最高用量は、1日当たり7500mgであり、1号硬カプセル剤(硬カプセル剤の剤皮としてヒプロメロースを配合)30カプセルに相当し、日常から水分摂取を制限されている透析患者で、服薬時の水分摂取の増加、服薬コンプライアンスの低下が懸念され、さらに服用性を改善した製剤の提供が要望されている。ビキサロマーの1日当たりの用量が多いことから、製剤化にあたっては、総量を少なくするため、医薬品添加物を少量とすることが必要である。しかし、ビキサロマーは、架橋アミンポリマーであり、弾性力のあるゴムのような素材であること、また成形性が低く、製剤化が困難であることが公知である。また、口腔内にビキサロマーが残存することに伴う不快感を有することも知られている(以上、特許文献2、特許文献3)。これまでに、ビキサロマーの顆粒剤等の粒状医薬組成物についての報告はない。一方、特許文献2、特許文献3には、ビキサロマーを含有する錠剤が記載されている。特許文献2に記載の錠剤は、ポリオールとして、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、及びトレハロースから選択される医薬品添加物を使用することを特徴とするものであり、特許文献3に記載の錠剤は、マルトース及び/又はトレハロースを使用することを特徴とするものである。しかしながら、ビキサロマーを高い比率で含有しながら、良好な服用性及び優れた製造性を有する製剤及びその製造方法の提供が、今なお求められている。なお、特許文献2、特許文献3には、前記医薬品添加物以外にも、公知の各種結合剤を添加可能であることが記載されており、その例示中にヒプロメロースが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2005/041902号
【特許文献2】国際公開2009/023544号
【特許文献3】特開2009−132700号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】キックリン(登録商標)カプセル250mg医薬品添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有しながら、良好な製造性と、優れた服用性を有し、高齢者などにも飲みやすい製剤を提供することにある。
また、本発明の目的は、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造工程や流通工程に耐えられる充分な強度(破断荷重)を有する粒状医薬組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、製造工程や流通工程に耐えられる充分な強度(破断荷重)を粒状医薬組成物に付与することにより、微粉(500μm未満の粒子)の発生や組成物中における微粉の割合を低減し、それにより、微粉の口腔内への残存を抑え、服用性を改善することが期待される粒状医薬組成物を提供することにある。
更に、本発明の目的は、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造性に優れた粒状医薬組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有して、微粉の発生や組成物中の微粉の割合を低減させることにより、服用性の向上が期待できる粒状医薬組成物の提供にあたり、本発明者らは、添加する医薬品添加物によっては、(1)造粒直後の造粒品及び造粒乾燥後の造粒品が、製造工程、或いは流通工程等に耐えられる程の強度(指標として破断荷重)を有するものではないこと、(2)微粉(500μm未満の粒子)の割合が多く、微粉の口腔内への残存が予想され、服用性の観点から改善の余地があること、(3)押出造粒の際にスクリーンの目詰まりによる処理量の低下、すなわち生産性の低下や、流動層乾燥機内で乾燥の際に、造粒品同士の凝集を受けて、流動層が形成されないことによる造粒品の乾燥不良等、製造性・生産性の観点から、なお改善すべき課題があることを知った。本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の結合剤を使用することにより、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造性・生産性・流通性の観点から、適度な強度を粒状医薬組成物に付与することができ、その結果、500μm未満の微粉の割合が低減して、服用性の向上が期待できること等を知見して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、
[1]ビキサロマー及びヒプロメロースを含有してなる粒状医薬組成物、
[2]ビキサロマーの配合割合が粒状医薬組成物の重量に対して、約50重量%〜約99重量%である、[1]の粒状医薬組成物、
[3]粒状医薬組成物中、500μm未満の粒状医薬組成物の割合が約25重量%以下である、[1]又は[2]の粒状医薬組成物、
[4]粒状医薬組成物の破断荷重が約5N以上約100N以下である、[1]〜[3]のいずれかの粒状医薬組成物、
[5]粒子状医薬組成物が顆粒剤、散剤及び細粒剤からなる群より選択される、[1]〜[4]のいずれかの粒状医薬組成物、
[6]粒状医薬組成物が造粒・乾燥後の造粒品である[1]〜[5]のいずれかの粒状医薬組成物、
[7]粒子状医薬組成物が顆粒剤である、[1]〜[6]のいずれかの粒状医薬組成物、
[8]粒子状医薬組成物が押出造粒によって製造されることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかの粒状医薬組成物、
[9]ヒプロメロースが、20℃2%水溶液において、約6mPa・sの粘度を有するものである、[1]〜[8]のいずれかの粒状医薬組成物、
[10]ビキサロマー及びヒプロメロースを用いて造粒する工程を含む、ビキサロマー及びヒプロメロースを含有してなる粒状医薬組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造工程や流通工程に耐えられる充分な強度(破断荷重)を有する粒状医薬組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、製造工程や流通工程に耐えられる充分な強度(破断荷重)を粒状医薬組成物に付与することにより、微粉(500μm未満の粒子)の発生や組成物中における微粉の割合を低減し、それにより、微粉の口腔内への残存を抑え、服用性を改善することが期待される粒状医薬組成物を提供することができる。
更に、本発明によれば、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造性に優れた粒状医薬組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、粒状医薬組成物とは、第16改正日本薬局方に記載の顆粒剤、細粒剤、又は散剤を意味する。より具体的には、例えば、後述の微粉の割合によって規定することができる。
【0011】
本明細書において、造粒物とは、単一又は多成分からなる粉末原料を、結合剤などを用いて原料より大きな粒状に加工したものを意味する。より具体的には、ビキサロマーをヒプロメロースを結合剤として粒状に加工したものを意味する。さらに所望により、本発明の目的を達成できる範囲でその他の医薬品添加物を含んでいてもよい。
【0012】
本明細書において、服用性の改善とは、ビキサロマーの服用のし易さを意味する。服用のし易さは次の「微粉」の割合や、「強度(破断荷重)」を用いて規定することができる。
【0013】
本明細書において、微粉とは、約500μm未満の粒或いは粉を意味する。
【0014】
本明細書において、強度(破断荷重)とは、引張、圧縮、曲げ、ねじり試験において、破損を起こす荷重を意味する。強度(破断荷重)は、例えば、組成物を圧縮した際の応力又はクリープ変形等により、規定される。詳細は後述する。
【0015】
本明細書において、高配合比とは、ビキサロマーを製剤中に高い割合で配合することを意味する。より具体的には、後述のビキサロマーの配合量によって規定される。
【0016】
本明細書において、優れた製造性とは、製剤化の工程で装置の目詰まり、組成物同士の凝集等を回避して製造できることを意味する。
【0017】
本明細書において、成形性が低いとは、ビキサロマーを圧縮成形した際、その高い弾性力により塑性変形せず、元の形状に回復してしまうことにより、粒状医薬組成物に十分な強度を付与することができないことを意味する。
【0018】
本発明の粒状医薬組成物について、以下詳記する。
【0019】
本発明において活性成分として用いられるビキサロマーは、架橋アミンポリマーの一種であり、優れたリン酸吸着能を有した非吸収性ポリマーである。ビキサロマーは、下記構造式:
【化2】
(式中、n=4)で表されるN,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミンと2−(クロロメチル)オキシランとを、1:2.1〜2.4の比で反応させることにより得ることができ、例えば、特許文献1、特許文献2、若しくは特許文献3に記載の方法若しくは当業者にとって自明である方法又はそれらの変法によって容易に入手可能である。
【0020】
本発明に用いられるビキサロマーの投与量は、例えば、投与ルート、疾患の症状、投与対象の年齢、人種、性別等を考慮して個々の事情に応じて適宜決定することができる。経口投与の場合、ビキサロマーの1日当たりの投与量は、例えば、約1g/日〜約30g/日であり、前記投与量を1日1回、2回、3回のいずれかで投与することができる。また、ある態様として約1.5g/日〜約7.5g/日であり、前記投与量を1日3回に分けて投与することができる。ビキサロマーの適応症としては、例えば、慢性腎不全等の腎機能の低下による高リン酸血症等が挙げられる。
【0021】
本発明の医薬組成物におけるビキサロマーの配合量は、粒状医薬組成物の重量に対して、例えば、約50重量%以上約99重量%以下であり、ある態様として約70重量%以上約99重量%以下であり、ある態様として約80重量%以上約95重量%以下である。
【0022】
本発明に用いられるヒプロメロースとしては、ビキサロマーを造粒し、造粒品に適度な強度(破断荷重)を付与するものであれば特に制限されず、その分子量(粘度)等、特に制限はない。具体的には、例えば、TC−5RW(商品名、信越化学工業(株)製、20℃における2%水溶液の粘度:約6mPa・s)、TC−5S(商品名、信越化学工業(株)製、20℃における2%水溶液の粘度:約15mPa・s)、TC−5R(商品名、信越化学工業(株)製、20℃における2%水溶液の粘度:約6mPa・s)、TC−5M(商品名、信越化学工業(株)製、20℃における2%水溶液の粘度:約4.5mPa・s)、TC−5E(商品名、信越化学工業(株)製、20℃における2%水溶液の粘度:約3mPa・s)等を用いることができる。
ある態様としては、ヒプロメロースが、20℃2%水溶液において約3mPa・s以上約15mPa・s以下の粘度を有するものであり、好ましくは、約6mPa・sの粘度、例えば、5mPa・s以上7mPa・s以下を有するものである。
【0023】
ヒプロメロースは、その分子量(粘度)等が異なるものを、1種又は2種以上組合せて適宜適量添加することができる。
【0024】
ヒプロメロースの配合量は、ビキサロマーを造粒し、造粒品に適度な強度(破断荷重)を付与する量であれば特に制限されない。具体的には、ビキサロマーの重量に対して、例えば、約1重量%以上約100重量%以下であり、ある態様として約5重量%以上約50重量%以下であり、ある態様として約5重量%以上約30重量%以下であり、ある態様として約5重量%以上約20重量%以下であり、ある態様として約10重量%以上約15重量%以下である。
【0025】
また、ヒプロメロースの配合量は、粒状医薬組成物の重量に対して、例えば、約1重量%以上約50重量%以下であり、ある態様として、約5重量%以上約50重量%以下であり、ある態様として約5重量%以上約25重量%以下であり、ある態様として約5重量%以上約20重量%以下であり、ある態様として約10重量%以上約15重量%以下である。
【0026】
本発明の粒状医薬組成物は、例えば、(1)造粒直後・乾燥前の造粒品(ビキサロマー及びヒプロメロースのみからなる組成物、並びに、ビキサロマー及びヒプロメロース並びに所望の医薬品添加物を含有してなる組成物を含む)、(2)造粒・乾燥後の造粒品(ビキサロマー及びヒプロメロースのみからなる組成物(例えば、顆粒剤、散剤、細粒剤等)、並びに、ビキサロマー及びヒプロメロース並びに所望の医薬品添加物を含有してなる組成物を含む)、(3)これらの造粒品と、所望の医薬品添加物とを混合してなる組成物(例えば、顆粒剤、散剤、細粒剤等)等を包含する。好ましくは、上述の(2)造粒・乾燥後の造粒品(ビキサロマー及びヒプロメロースのみからなる組成物(例えば、顆粒剤、散剤、細粒剤等)、並びに、ビキサロマー及びヒプロメロース並びに所望の医薬品添加物を含有してなる組成物を含む)である。
本発明の粒状医薬組成物は、具体的には、例えば、以下の、特性(1)及び(2)からなる群より選択される1又は2の特性を有する。
【0027】
特性(1):強度(破断荷重)
本発明の粒状医薬組成物においては、製造工程又は流通工程において、その強度は、製造(造粒)直後の形状をある程度維持する強度又は破断荷重であれば特に制限されない。具体的には、例えば、造粒直後・乾燥前の造粒品、造粒・乾燥後の造粒品、これらの造粒品と、所望の医薬品添加物とを混合してなる組成物(例えば、顆粒剤、散剤、細粒剤等)等を、例えば、クリープメーター(製品名:RHEONERII、山電製)を用い、円柱型の直径8mmのプランジャーで速度0.1mm/秒で顆粒1粒を圧縮した際の強度(破断荷重)として規定される。
【0028】
本発明において、強度(破断荷重)の下限は、例えば、約5Nであり、その上限は、例えば、約100Nである。
特に造粒直後・乾燥前の造粒品においては、その下限は、例えば、約5Nであり、ある態様として約8Nであり、ある態様として約9Nであり、ある態様として約10Nであり、その上限は、例えば約100Nであり、ある態様として約75Nであり、ある態様として約50Nであり、ある態様として約40Nであり、ある態様として約20Nである。より具体的には、例えば、約5N以上約100N以下であり、ある態様としては、約5N以上約75N以下であり、ある態様としては、約5N以上約50N以下であり、ある態様としては、約5N以上約40N以下である。
特に造粒・乾燥後の造粒品、又は造粒品と所望の医薬品添加物とを混合してなる組成物においては、その下限は、例えば、約5Nであり、ある態様として約10Nであり、ある態様として約15Nであり、ある態様として約18Nであり、ある態様として約20Nであり、その上限は、例えば、約100Nであり、ある態様として約75Nであり、ある態様として約50Nであり、ある態様として約40Nである。より具体的には、例えば、約5N以上約100N以下であり、ある態様としては、約10N以上約100N以下であり、ある態様としては、約18N以上約100N以下であり、ある態様としては、約20N以上約100N以下である。
強度(破断荷重)が約5Nより小さいと、流通工程中に微粉が発生し、医薬品製剤を服用時に口腔内への微粉の残存等の問題が生じることが予想される。一方、強度が約100Nを超えると、医薬品製剤が消化管内で崩壊せず、期待通りのリン酸吸着能が発現しない等の問題が生じることが予想される。
【0029】
特性(2):粒度分布
本発明の粒状医薬組成物においては、その粒度分布は、例えば、ある態様として顆粒剤、散剤又は細粒剤を構成する範囲であれば特に制限されない。好ましくは顆粒剤である。
粒度分布は、粒状医薬組成物を、例えば、JIS規格の篩上に乗せ、5分間振盪させた後の各篩上又は篩下の組成物の割合によって規定される。
すなわち、粒状医薬組成物を3〜5g秤取し、ロボットシフター(RPS−85P、セイシン企業製)を用いて5分間振盪した後の各篩上又は篩下の組成物の割合によって規定することができる。
粒度分布としては、500μm未満の粒状医薬組成物(微粉)の割合が、例えば、約25重量%以下、ある態様として約20重量%以下、ある態様として約15重量%以下、ある態様として約10重量%以下である。
【0030】
本発明の粒状医薬組成物は、例えば、顆粒剤、散剤、細粒剤等を包含する。本発明の粒状医薬組成物には、所望により、各種医薬品添加物が適宜使用され、製剤化することができる。かかる医薬品添加物としては、製薬学的に許容され、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に制限されず、例えば、賦形剤、崩壊剤、矯味剤、発泡剤、甘味剤、香料、滑沢剤、着色剤、緩衝剤、抗酸化剤、界面活性剤、流動化剤等を挙げることができる。
【0031】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0032】
崩壊剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。
【0033】
矯味剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等を挙げることができる。
【0034】
発泡剤としては、例えば、重曹等を挙げることができる。
【0035】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等を挙げることができる。
【0036】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等を挙げることができる。
【0037】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等を挙げることができる。
【0038】
着色剤としては、例えば、食用黄色4号、5号、食用赤色3号、102号、食用青色3号等を挙げることができる。
【0039】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸又はその塩類等を挙げることができる。
【0040】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等を挙げることができる。
【0041】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を挙げることができる。
【0042】
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸等を挙げることができる。
【0043】
これらの医薬品添加物は、1種又は2種以上組合せて適宜適量添加することができる。また、これらの医薬品添加物の配合量については、いずれの医薬品添加物についても、本発明の所望の効果が達成される範囲内の量で使用することができる。
【0044】
次に、本発明の粒状医薬組成物の製造方法について、以下説明する。本発明の医薬組成物は、下記造粒工程を包含して、必要により、例えばフィルムコーティング剤等の各種医薬品添加物を使用して、例えば、混合、練合、造粒、乾燥、フィルムコーティング等、自体公知の方法に従い、製造することができる。
【0045】
混合工程
混合する方法としては、通常製薬学的に各成分を均一に混合できる方法を用いることができる。装置としては、例えば、V型混合機、リボン型混合機、コンテナミキサー、高速攪拌混合機等を挙げることができる。
【0046】
練合及び造粒工程
練合及び造粒する方法としては、通常製薬学的に練合・造粒できる方法を用いることができる。装置としては、例えば、流動層造粒機、溶融攪拌造粒機、高速攪拌造粒機、解砕(粉砕)造粒機、押出造粒機、転動流動層造粒機、噴霧造粒機、乾式造粒機、二軸エクストルーダー等を、好ましくは流動層造粒機、高速攪拌造粒機、押出造粒機を、さらに好ましくは高速攪拌造粒機、押出造粒機を、さらに好ましくは押出造粒機を、挙げることができる。
【0047】
高速撹拌造粒機としては、例えば、バーチカルグラニュレーター(パウレック製)、SPGシリーズ(ダルトン製)、グラニュマイスト(フロイント産業製)等を挙げることができる。押出造粒機としては、例えば、ドームグラン(不二パウダル製)、ツインドームグラン(ダルトン製)、マルチグラン(ダルトン製)、バスケット造粒機(畑鉄工所製)等を挙げることができる。
【0048】
結合剤液は、練合時に、ヒプロメロースを適当な溶媒、例えば、精製水、エタノール、メタノール等に溶解又は分散して調製することができる。あるいは、ヒプロメロースを粉末状態のまま造粒機に投入し、適当な溶媒、例えば、精製水、エタノール、メタノール等を加えながら練合することもできる。
押出造粒の際には、ビキサロマーに結合剤液を加え、例えば、スクリュー回転数を20〜50回転/分で造粒することができる。
【0049】
乾燥工程
乾燥する方法としては、通常製薬学的に乾燥できる方法を用いることができる。装置としては、例えば、通風乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機等を挙げることができる。所望により、乾燥後に篩、コーミルなどで篩過、整粒することができる。
【0050】
フィルムコーティング工程
所望により、粒状医薬組成物の表面にフィルムコーティングを施すことができる。フィルムコーティングする方法としては、通常製薬学的にフィルムコーティングできる方法を用いることができる。装置としては、例えば、流動層造粒機、パンコーティング機等を挙げることができ、ある態様として、流動層造粒機を挙げることができる。
【0051】
フィルムコーティング率は、粒状医薬組成物にフィルムを形成することができる限り、特に制限されない。具体的には、例えば、粒状医薬組成物の重量に対して、約1重量%以上約50重量%以下であり、ある態様として約1重量%以上約20重量%以下であり、ある態様として約1重量%以上約10重量%以下であり、ある態様として約1重量%以上約5重量%以下である。
【0052】
所望により、フィルムコーティング後に乾燥することができる。方法としては、通常製薬学的に乾燥できる方法を用いることができる。装置としては、例えば、流動層乾燥機、パンコーティング機等を挙げることができ、ある態様として、流動層乾燥機を挙げることができる。乾燥条件としては、例えば、製剤の安定性を考慮して適宜設定されれば特に制限されない。
【実施例】
【0053】
以下、実施例、比較例、及び試験例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定解釈されるものではない。なお、ビキサロマーとしては、キックリン(登録商標)カプセルの原薬(DSM製)を用いた。
なお、表1及び表2の処方表は市販のキックリン(登録商標)カプセル250mgと同一の含量となるように記載した。
【0054】
《実施例1》
表1の処方に従い、ビキサロマー300g、ヒプロメロース(製品名:TC−5R、信越化学工業製)36g、精製水300gを高速攪拌造粒機(製品名:バーチカルグラニュレーターVG−05、パウレック製)を用いて、練合した。練合後、押出造粒機(製品名:マルチグランMG−55、ダルトン製)を用いて、押出造粒を行った。得られた造粒物を流動層乾燥機(製品名:FLO−1、フロイント産業製)を用いて乾燥し、粒状医薬組成物を得た。
【0055】
《実施例2〜6》
表1の処方に従い、ビキサロマー300gのスケールで実施例1の製造方法と同様の製造方法で実施例2〜6の粒状医薬組成物を得た。なお、精製水は、310g(実施例2)、340g(実施例3)、350g(実施例4)、320g(実施例5)、280g(実施例6)の量を使用した。また、実施例5で用いたヒプロメロースはTC−5S(信越化学工業製)、実施例6で用いたヒプロメロースはTC−5E(信越化学工業製)である。
【0056】
《実施例7》
表1の処方に従い、ビキサロマー34.48kg、ヒプロメロース(製品名:TC−5R、信越化学工業製)4.28kg、精製水41.48kgを攪拌造粒機(製品名:バーチカルグラニュレーターFM−VG−400P、パウレック製)を用いて、練合した。練合後、押出造粒機(製品名:バスケット造粒機HG−300VII、畑鉄工所製)を用いて、押出造粒を行った。なお、造粒中に造粒物同士の凝集は認められなかった。得られた造粒物を流動層乾燥機(製品名:NFOD−120、フロイント産業製)を用いて乾燥し、得られた乾燥物を円型振動篩機を用いて、分級(500μm及び1400μm)した。1400μmの篩上品はコーミル(製品名:194AS、クアドロ社製)を用いて、粉砕(スクリーン径1.905mm、インペラ回転速度40Hz)し、500μmの篩を通過したものは除き、粒状医薬組成物(コーティング無)を得た。なお、500μmの篩を通過したものは全量の5%であった。得られた粒状医薬組成物34.00kgを流動層造粒機(製品名:FLO−120、フロイント産業製)を用いて、オパドライ(登録商標)03F42203(日本カラコン合同会社製)でフィルムコーティングを行い、粒状医薬組成物(コーティング有)を得た。
【0057】
【表1】
【0058】
《比較例1〜4》
表2の処方表に従って、ビキサロマー300gのスケールで実施例1の製造方法と同様の製造方法で比較例1〜4の粒状医薬組成物を得た。なお、ヒドロキシプロピルセルロースはHPC−SL(日本曹達製)、ポリビニルピロリドンはコリドンK30(BASFジャパン製)、ポリエチレングリコール8000(PEG8000)はPolyglykol 8000PF(Clariant製)、メチルセルロースはメトローズSM−4(信越化学工業製)をそれぞれ用いた。
【0059】
【表2】
【0060】
《比較例5〜8》
表3の処方表に従って、ビキサロマー300gのスケールで実施例1の製造方法と同様の製造方法で比較例5〜8の粒状医薬組成物を得た。なお、マルトースはサンマルト−S(三和澱粉工業製)、イソマルトはgalenIQ(登録商標)720(Palatinit社製)、ポリビニルアルコールはゴーセノール(登録商標)EG−05P(日本合成化学工業製)、コポリビドンはコリドンVA64(BASF製)をそれぞれ用いた。
【0061】
【表3】
【0062】
《試験例1》
押出造粒の単位時間当たりの処理量の測定結果を以下の表4に示す。
実施例1〜6については、押出造粒機のスクリーンの目詰まり(凝集)は認められず、単位時間当たりの処理量は300g/分以上であり優れた製造性を示した。一方、比較例1、比較例2、及び比較例8については、押出造粒機のスクリーンの目詰まりが認められ、単位時間当たりの処理量が300g/分未満であり十分なものではなかった。
【0063】
《試験例2》
押出造粒で得られた造粒直後・乾燥前の造粒物の破断荷重をクリープメーター(製品名:RHEONERII、山電製)を用いて測定(プランジャーは円柱型の直径8mmを使用し、速度0.1mm/秒で顆粒1粒を圧縮)した。得られた造粒物の破断荷重を表4に示す。
実施例1〜6については、造粒物は5N以上の破断荷重を有しており、押出造粒機のスクリーンの目詰まりが認められなかった比較例3、4、7の造粒物(破断荷重(2N又は0.2N))と比較して、高い強度であった(5〜10N)。
比較例5、6の組成物は造粒時に顆粒を形成しなかった。
【0064】
【表4】
【0065】
《試験例3》
押出造粒により得られた造粒物を乾燥する工程において、流動層造粒機内で造粒物の流動性を目視により確認した。結果を表5に示す。
実施例1〜6について、流動層造粒機内で造粒物が流動性を示した。一方、比較例1、比較例2、及び比較例8については、造粒物同士の付着凝集が確認され、流動層造粒機内で造粒物の流動性が低下したため、乾燥できなかった。
【0066】
【表5】
【0067】
《試験例4》
造粒・乾燥後の粒状医薬組成物3〜5gを秤取り、ロボットシフター(製品名:RPS−85P、セイシン企業製)を用いて、JIS規格の篩を用いて5分間振盪し、粒度分布を測定した。結果を表6に示す。
実施例1〜6の粒状医薬組成物は、比較例3〜7と比較して、500μm通過品(500μm未満の微粉)の割合が低下した。
【0068】
【表6】
【0069】
《試験例5》
クリープメーター(製品名:RHEONERII、山電製)を用いて、乾燥後の本発明の粒状医薬組成物の破断荷重を測定(プランジャーは円柱型の直径8mmを使用し、速度0.1mm/秒で顆粒1粒を圧縮)した。結果を表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】
上記特性(1)及び/又は(2)を有する本発明の粒状医薬組成物は、微粉(500μm未満)の割合が低減されていた(試験例4)。また、造粒直後・乾燥前の造粒物においても、乾燥後の粒状医薬組成物においても、十分な強度(破断荷重)を有していることが確認され(試験例2、試験例5)、製造工程や流通工程に耐えることができる。さらに、製造工程において、造粒工程における装置の目詰まり(試験例1)及び乾燥工程における組成物同士の凝集(試験例3)は認められず、製造性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造工程や流通工程に耐えられる充分な強度(破断荷重)を有する粒状医薬組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、製造工程や流通工程に耐えられる充分な強度(破断荷重)を粒状医薬組成物に付与することにより、微粉(500μm未満の粒子)の発生や組成物中における微粉の割合を低減し、それにより、微粉の口腔内への残存を抑え、服用性を改善することが期待される粒状医薬組成物を提供することができる。
更に、本発明によれば、成形性の低いビキサロマーを高配合比で含有するにもかかわらず、製造性に優れた粒状医薬組成物の製造方法を提供することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変法や改良は本発明の範囲に含まれる。