特許第5843989号(P5843989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5843989聴力検査装置、システム、および関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5843989
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】聴力検査装置、システム、および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/12 20060101AFI20151217BHJP
【FI】
   A61B5/12
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-87771(P2015-87771)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-213751(P2015-213751A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】PA201470234
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】14165582.9
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512313193
【氏名又は名称】ジーエヌ オトメトリックス エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Otometrics A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト−ニールセン クリスチャン
【審査官】 姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−28741(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0204014(US,A1)
【文献】 特開2001−149347(JP,A)
【文献】 特表2000−504948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴力検査を実施するための聴力検査装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内の処理ユニットと、
前記処理ユニットに接続されるトーン発生器と、
前記聴力検査装置を検査プローブに接続するためのプローブ・インターフェースと
を備え、
前記トーン発生器が、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を表す第1の電気信号を提供するように構成され、
前記処理ユニットが、
第1の応答信号を取得し、
前記第1の信号および前記第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
少なくとも前記第1の挿入基準が満たされている場合、前記聴力検査を開始するための信号を生成するように構成され、
前記トーン発生器が、前記聴力検査中に、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を表す第2の電気信号を提供するように構成され、前記第1の一次周波数が前記第2の一次周波数よりも低い、聴力検査装置。
【請求項2】
前記第1の一次周波数成分が、前記トーン発生器の低域遮断周波数を含む、請求項1に記載の聴力検査装置。
【請求項3】
前記処理ユニットに接続されるポンプ・モジュールをさらに備え、前記ポンプ・モジュールが、前記プローブ・インターフェースのポンプ・ポートと流体連通しているポートを有する、請求項1に記載の聴力検査装置。
【請求項4】
前記処理ユニットが、検出された圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するように構成され、かつ
前記処理ユニットが、前記第1の挿入基準および前記第2の挿入基準が満たされている場合、前記聴力検査を開始するための前記信号を生成するように構成される、請求項1に記載の聴力検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の聴力検査装置と、前記トーン発生器に結合される第1のスピーカと、前記処理ユニットに結合されるマイクロフォンとを備える聴力検査システム。
【請求項6】
前記トーン発生器に結合される第2のスピーカをさらに備える、請求項5に記載の聴力検査システム。
【請求項7】
前記第1のスピーカおよび前記マイクロフォンが、前記聴力検査装置の一部である、請求項5に記載の聴力検査システム。
【請求項8】
前記第1のスピーカおよび前記マイクロフォンが、前記検査プローブの一部である、請求項5に記載の聴力検査システム。
【請求項9】
聴力検査を実施するための聴力検査システムであって、
処理ユニットを備える聴力検査装置と、
外耳道の中に挿入するための第1の部分を有する検査プローブであり、前記聴力検査装置に接続されている、検査プローブと、
前記検査プローブまたは前記聴力検査装置における第1のスピーカと、
前記検査プローブまたは前記聴力検査装置における第1のマイクロフォンと
を備え、前記聴力検査装置が、
第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を提供し、
第1の応答信号を取得し、
前記第1の信号および前記第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
少なくとも前記第1の挿入基準が満たされている場合、前記聴力検査を開始するように構成され、
前記聴力検査装置が、前記聴力検査中に、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を提供するように構成され、前記第1の一次周波数が前記第2の一次周波数よりも低い、聴力検査システム。
【請求項10】
前記第1のスピーカが前記検査プローブにあり、前記聴力検査装置にはない、請求項9に記載の聴力検査システム。
【請求項11】
前記第1のスピーカが前記聴力検査装置にあり、前記検査プローブにはない、請求項9に記載の聴力検査システム。
【請求項12】
前記第1のスピーカが、前記第2の信号を提供するように構成される、請求項9に記載の聴力検査システム。
【請求項13】
前記第2の信号を提供するための第2のスピーカをさらに備える、請求項9に記載の聴力検査システム。
【請求項14】
聴力検査を実施するための方法であって、
第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成するステップと、
第1の応答信号を検出するステップと、
前記第1の信号および前記第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、
少なくとも前記第1の挿入基準が満たされている場合、前記聴力検査を開始するステップと、
前記聴力検査中に、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成するステップであり、前記第1の一次周波数が、前記第2の一次周波数よりも低い、ステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記第1の挿入基準が満たされている場合、圧力を変更するステップと、
圧力応答を検出するステップと、
前記検出された圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと
をさらに含み、
前記第1の挿入基準および前記第2の挿入基準が満たされている場合、前記聴力検査が開始される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトの外耳道で、鼓膜聴力検査および/または耳音響放射検査などの聴力検査を開始する、かつ/または実施するための方法、システム、および装置に関する。特に、聴力検査を実施するための聴力検査装置、システム、および方法が開示される。聴力検査は、鼓膜聴力検査および/または耳音響放射検査を含み得る。
【背景技術】
【0002】
鼓膜聴力検査および/または耳音響放射検査などの聴力検査は、外耳道に圧力変化を生成することにより、中耳の状態、鼓膜の可動性、および/または伝導骨を調べる。圧力を変えるために外耳道内にプローブが挿入され、外耳道の気密封止が作られる。
【0003】
聴力検査は、従来、226Hzの一次周波数で一次周波数成分を有する連続トーンを鼓膜に向けて送信し、かつ鼓膜により反射された信号をマイクロフォンにより測定することにより行われる。226Hzの選択は、成人で鼓膜聴力検査を実施する場合の事実上の標準である。幼い子供では、鼓膜聴力検査が、約1000Hzの一次周波数で一次周波数成分を有するトーンで行われることがある。
【0004】
従来、聴力検査を実施するように構成された装置は、プローブが耳の中に挿入されたかどうかを自動的に検出する手段を組み込んでいる。これは、従来、装置をオン状態にしたときは常に、例えば、226Hzなどの検査トーンを、検査プローブを介して送信することにより達成される。マイクロフォンは検査トーンの反射を検出し、その反射により、検査プローブが外耳道内に挿入されたことが示される。しかし、反射は、気密封止が生成されていない場合であっても検査プローブが外耳道内に挿入されたことを示す可能性がある。したがって、装置は、検査プローブが外耳道内に、または外耳道に正しく配置されていない場合であっても、ポンプを起動して加圧/減圧する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
知られている解決策にかかわらず、聴力検査を誤って開始するリスクを低減するシステム、装置、および/または方法がなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、外耳道内で聴力検査を実施するための聴力検査装置が提供される。聴力検査装置は、ハウジングと、処理ユニットと、処理ユニットに接続されるトーン発生器と、聴力検査装置を検査プローブに接続するためのプローブ・インターフェースと、を備える。この装置は、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を表す第1の電気信号をトーン発生器により生成し、第1の応答信号を受信し、第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始するように構成されている。聴力検査は、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を表す第2の電気信号を生成することを含む。第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い。
【0007】
さらに、聴力検査を実施するための聴力検査システムが開示される。聴力検査システムは、開示の聴力検査装置と同様の聴力検査装置であって、処理ユニットを備える聴力検査装置と、外耳道の中に挿入するための第1の部分を有する検査プローブであり、聴力検査装置に接続されている、検査プローブと、第1のスピーカと、第1のマイクロフォンと、を備える。聴力検査システムは、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成し、第1の応答信号を受信し、第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始する。聴力検査は、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む。第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い。
【0008】
さらに、聴力検査を実施および/または開始するための方法が開示される。この方法は、例えば、聴力検査前および/または途中で、第1の挿入検査および/または第2の挿入検査を含む1個以上の挿入検査を実施する。この方法は、例えば第1の挿入検査の一部として、第1の周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成するステップと、第1の応答信号を検出するステップと、第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、を備える。この方法は、少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合および/または1個以上の挿入検査に合格する場合、聴力検査を開始するステップを含む。聴力検査は、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む。第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い。
【0009】
開示される装置、システム、および方法は、聴力検査装置および/またはシステムにおける自動化の向上させた信頼性を提供する。不必要なステップを活動化すること、および/または機械部品を不必要に起動させるリスクを低下させる。
【0010】
さらに、開示される装置、システム、および方法は、より迅速な検査手順を提供し、例えば、不成功な試行を回避できるので有利である。
【0011】
開示される装置、システム、および方法のさらなる利点は、ポンプなどの機械部品の摩耗が低減されることであり、例えば、機械部品の不必要な起動が低減され、それにより機械的な摩耗が減少する。
【0012】
聴力検査装置および/または聴力検査システムは、開示される方法、および/または開示される方法の任意のステップを実施するように構成することができる。
【0013】
開示される装置、システム、および/または方法は、例えば、鼓膜聴力検査および/または耳音響放射検査などの聴力検査を実施するのに使用することができる。
【0014】
聴力検査を実施するための聴力検査装置は、ハウジングと、ハウジング内の処理ユニットと、処理ユニットに接続されるトーン発生器と、聴力検査装置を検査プローブに接続するためのプローブ・インターフェースと、を備え、トーン発生器が、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を表す第1の電気信号を提供するように構成され、処理ユニットが、第1の応答信号を取得し、第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ、少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始するための信号を生成するように構成され、トーン発生器が、聴力検査中に、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を表す第2の電気信号を提供するように構成され、第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い。
【0015】
好ましくは、第1の一次周波数成分が、トーン発生器の低域遮断周波数を含む。
【0016】
好ましくは、聴力検査装置は、処理ユニットに接続されるポンプ・モジュールをさらに備え、ポンプ・モジュールが、プローブ・インターフェースのポンプ・ポートと流体連通しているポートを有する。
【0017】
好ましくは、処理ユニットが、検出された圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するように構成され、処理ユニットが、第1の挿入基準および第2の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始するための信号を生成するように構成される。
【0018】
聴力検査システムは、聴力検査装置と、トーン発生器に結合される第1のスピーカと、処理ユニットに結合されるマイクロフォンとを備える。
【0019】
好ましくは、聴力検査システムは、トーン発生器に結合される第2のスピーカをさらに備える。
【0020】
好ましくは、第1のスピーカおよびマイクロフォンが、聴力検査装置の一部である。
【0021】
好ましくは、第1のスピーカおよびマイクロフォンが、検査プローブの一部である。
【0022】
聴力検査を実施するための聴力検査システムであって、処理ユニットを備える聴力検査装置と、外耳道の中に挿入するための第1の部分を有する検査プローブであり、聴力検査装置に接続されている、検査プローブと、検査プローブまたは聴力検査装置における第1のスピーカと、検査プローブまたは聴力検査装置における第1のマイクロフォンと、を備え、聴力検査装置が、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を提供し、第1の応答信号を取得し、第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ、少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、前記聴力検査を開始するように構成される。聴力検査装置が、聴力検査中に、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を提供するように構成され、第1の一次周波数が前記第2の一次周波数よりも低い。
【0023】
好ましくは、第1のスピーカが検査プローブにあり、聴力検査装置にはない。
【0024】
好ましくは、第1のスピーカが聴力検査装置にあり、検査プローブにはない、
【0025】
好ましくは、第1のスピーカが、第2の信号を提供するように構成される。
【0026】
好ましくは、聴力検査システムは、第2の信号を提供するための第2のスピーカをさらに備える。
【0027】
聴力検査を実施するための方法であって、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成するステップと、第1の応答信号を検出するステップと、第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始するステップと、聴力検査中に、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成するステップであり、第1の一次周波数が、第2の一次周波数よりも低い、ステップと、を含む。
【0028】
好ましくは、この方法は、第1の挿入基準が満たされている場合、圧力を変更するステップと、圧力応答を検出するステップと、検出された圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、をさらに含み、第1の挿入基準および第2の挿入基準が満たされている場合、聴力検査が開始される。
【0029】
以下の詳細な説明を読むことから、他の態様および特徴が明らかになる。
【0030】
上述のおよび他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、その例示的な実施形態の以下の詳細な説明によって、当業者には容易に分かる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】例示的な聴力検査システムを概略的に示す図である。
図2】例示的な聴力検査システムを概略的に示す図である。
図3】例示的な聴力検査システムを概略的に示す図である。
図4】例示的な聴力検査システムを概略的に示す図である。
図5】例示的な聴力検査装置を概略的に示す図である。
図6】例示的な検査プローブを概略的に示す図である。
図7】外耳道内へのプローブの挿入を検出する方法の流れ図である。
図8】外耳道内へのプローブの挿入を検出する方法の流れ図である。
図9】封止された空洞部、および漏れを有する空洞部に対する様々な周波数における等価容積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面を参照して以下で様々な実施形態を説明する。同様の参照数字は、全体を通して同様の要素を示す。したがって、各図の説明に関しては、同様の要素を詳細に説明しないものとする。さらに、図面は、諸実施形態の説明を容易にするように意図されているに過ぎないことにも留意されたい。それらは、特許請求される本発明の網羅的な説明として、または特許請求される本発明の範囲に対する限定として意図されるものではない。さらに例示される実施形態は、示されたすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態と共に述べられた態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定される必要はなく、任意の他の実施形態で実施することができるが、これはそのように説明していない場合であっても、またはそのように明示的に述べていない場合であってもそうである。
【0033】
全体を通して、同一の、または対応する部分に対して同じ参照数字が使用される。
【0034】
第1の信号は、例えば、第1の一次周波数に、またはその近傍に中心があるなど、第1の一次周波数で第1の一次周波数成分を有する。第1の信号は、第1の一次周波数を有する純音信号とすることができる。第1の信号は音声信号とすることができる。第1の一次周波数は、150Hz未満、100Hz未満、40Hz未満など、180Hz未満にすることができる。第1の一次周波数は、5Hzより大きくてもよい。第1の一次周波数は、30Hzから80Hzの範囲など、15Hzから150Hzの範囲とすることができる。第1の一次周波数は、40Hzまたは20Hzとすることができる。装置および/またはシステムがオン状態になったとき、または検査手順が開始されたときは常に、第1の信号が送信されてもよい。
【0035】
第1の信号は、例えば、第1の二次周波数に、またはその近傍に中心があるなど、第1の二次周波数で第1の二次周波数成分を含むことができる。第1の二次周波数は、150Hz未満、100Hz未満、40Hz未満など、180Hz未満とすることができる。第1の二次周波数は、30Hzから80Hzの範囲など、15Hzから150Hzの範囲とすることができる。第1の二次周波数は、60Hzまたは40Hzとすることができる。
【0036】
第1の応答信号は、少なくとも部分的に第1の信号の反射である、またはその反射を含むことができる。例えば、第1の応答信号は、外耳道内の鼓膜による第1の信号の反射である。
【0037】
第1の挿入基準は、第1の信号および第1の応答信号に基づいており、例えば、第1の信号および/または第1の応答信号の時間遅延、電力比、振幅比、相互相関、またはアドミタンスなどの1つまたは複数の特性に基づく。例えば、第1の挿入基準は、第1の応答信号中で、第1の信号の所定程度の反射が検出された場合に満たされうる。
【0038】
第1の挿入基準は、第1の信号および/または第1の応答信号に基づく測定されたアドミタンスに基づくことができる。測定されたアドミタンスは容積を示している、または容積と等価でありうる。第1の挿入基準は、測定されたアドミタンスの閾値に、かつ/または測定されたアドミタンスを示す、もしくはそれと等価な容積の閾値に基づくことができる。
【0039】
従来、226Hzの周波数で測定されたとき、mlの等価容積はmmhoで測定されたアドミタンスに等しい。等価容積は、226Hzの周波数で測定されたmmhoのアドミタンスに等しいmlの容積であると定義することができる。他の周波数で測定された等価容積は、以下とすることができる。
【0040】
【数1】
【0041】
上記の式中、VEQはmlの等価容積、Yはmmhoで測定されたアドミタンス、fはHzで測定された周波数、またαは定数である。計算されたVEQが、226の周波数で測定された従来の等価容積と比較可能になるように、定数αを226に設定することができる。
【0042】
第1の挿入基準は、等価容積が10ml未満である場合に満たすことができる。
【0043】
聴力検査は、第1の挿入基準が満たされた場合に開始することができる。聴力検査の開始は、例えば、第1の挿入基準および第2の挿入基準など、複数の挿入基準または挿入検査によって決めることができる。聴力検査は、第1の挿入基準が満たされた場合、自動的に開始することができる。聴力検査は、例えば、第2の一次周波数に、またはその近傍に中心があるなど、第2の一次周波数で第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む。装置は、第1の挿入基準が満たされた場合、第1の信号の生成を停止する、または変えるように構成することができる。
【0044】
第2の信号は、例えば、第2の一次周波数に、またはその近傍に中心があるなど、第2の一次周波数で第2の一次周波数成分を有する。第2の信号は音声信号とすることができる。第2の一次周波数は、鼓膜聴力検査などの聴力検査に従来使用される200Hzまたは226Hzなど、190Hzから250Hzの範囲とすることができる。代替的に、第2の一次周波数は、幼い子供の聴力検査に従来使用されるものなど、950Hzから1050Hzの範囲とすることができる。第1の一次周波数は、第2の一次周波数よりも低い、または実質的に低くすることができる。例えば、第1の一次周波数と第2の一次周波数との間の差は、少なくとも100Hzなど、少なくとも50Hzにすることができる。
【0045】
第1の信号および/または第2の信号は、例えば、単一の周波数成分からなる信号、または実質的に単一周波数成分からなる信号など、純音信号または実質的に純音信号とすることができる。
【0046】
本方法は、聴力検査を開始する前に、例えば、第1の基準が満たされる、もしくは達成された場合、または第1の挿入検査に合格した場合、第2の挿入検査を開始する/実施することを含むことができる。聴力検査を開始する前に、本方法は、第1の挿入基準が満たされた場合、または第1の挿入検査に合格した場合、例えば、第2の挿入検査の一部として、(外耳道内の)圧力を変更することを含むことができる。本方法は、例えば、第2の挿入検査の一部として、圧力応答を検出することをさらに含むことができる。さらに本方法は、例えば、第2の挿入検査の一部として、第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定することを含むことができる。第2の挿入基準は、圧力応答および/または圧力変更に基づくことができる。聴力検査は、第1および第2の挿入基準が満たされた場合、かつ/または第1の挿入検査および第2の挿入検査に合格した場合、開始することができる。
【0047】
聴力検査装置はハウジングを備える。ハウジングは、例えば、処理ユニットなど、聴力検査装置の1つまたは複数の構成要素を収容することができる。聴力検査装置は、ハウジング内に収容された構成要素と、聴力検査装置に対して外部にある構成要素および/またはユーザとの間で通信するために、プローブ・インターフェースなどの1つまたは複数のインターフェースを備えることができる。ハウジングは、金属ハウジング、プラスチック・ハウジング、および/または金属ハウジングとプラスチック・ハウジングの組合せとすることができる。
【0048】
聴力検査装置は処理ユニットを備える。処理ユニットは、マイクロプロセッサ、アナログ・デジタル変換器(ADC)、および/またはメモリ・モジュールを備えることができる。処理ユニットは、第1の応答信号などの1つまたは複数の入力信号の信号解析を行うように構成することができる。処理ユニットは、制御信号などの1つまたは複数の出力信号を提供するように構成することができる。例えば、処理ユニットは、第1および/または第2の制御信号など、制御信号をトーン発生器に提供することができ、それにより、トーン発生器は、第1の電気信号および/または第2の電気信号などの電気信号を生成するように指示される。
【0049】
聴力検査システムは、トーン発生器を備えることができる。検査システムのトーン発生器は、聴力検査装置のトーン発生器とすることができる。トーン発生器は、第1の電気信号、または第2の電気信号などの電気信号を生成するように構成することができる。電気信号は、第1の一次周波数で第1の一次周波数成分を有する第1の信号、および/または第2の一次周波数で第2の一次周波数成分を有する第2の信号など、一次周波数で一次周波数成分を有する信号を表すことができる。トーン発生器は、第1のスピーカおよび/または第2のスピーカなどの1つまたは複数のスピーカに接続することができ、1つまたは複数のスピーカは、トーン発生器の電気信号を、電気信号により表される信号へと変換する。
【0050】
聴力検査装置はプローブ・インターフェースを備えることができる。プローブ・インターフェースは、プローブを聴力検査装置に接続する可能性を提供することができる。プローブ・インターフェースは、1つまたは複数の電気的なコネクタ、および/またはポンプ・ポートなどの1つまたは複数の流体連通チャネルを備えることができる。1つまたは複数の電気的なコネクタは、聴力検査装置の構成要素と、プローブの構成要素との間の電気的な通信を提供することができる。例えば、電気的なコネクタは、トーン発生器と、第1のスピーカなどのスピーカとの間、および/または処理ユニットと、第1のマイクロフォンなどのマイクロフォンとの間の電気的な通信を提供することができる。1つまたは複数の流体連通チャネルおよび/またはポンプ・ポートは、例えば、検査者の外耳道内の圧力を調整するために、プローブと、検査装置のポンプ・モジュールとの間で流体連通を提供することができる。
【0051】
検査プローブは、聴力検査装置に接続可能にすることができる。代替的に、かつ/または追加的に、検査プローブは、聴力検査装置に接続することができる。
【0052】
検査プローブは、第1の部分および/または第2の部分を含む1つまたは複数の部分を備えることができる。第1の部分など検査プローブの一部を、外耳道内に挿入するように構成することができる。検査プローブおよび/または検査プローブの第1の部分は、使い捨ての、かつ/または可撓性のある先端部を受け入れるように適合させることができる。使い捨ての、かつ/または可撓性のある先端部は、外耳道の気密封止を実施するように設計することができる。使い捨ての先端部は無菌であり、使用後に処分できるので、プローブを殺菌する必要性をなくすことができる。先端部は、様々な外耳道の幾何形状/寸法に対して検査プローブを容易に適合させることができる。
【0053】
聴力検査システムは、第1のスピーカおよび/または第2のスピーカなどの1つまたは複数のスピーカを備えることができる。聴力検査装置は、第1のスピーカおよび/または第2のスピーカなどの1つまたは複数のスピーカを備えることができる。検査プローブは、第1のスピーカおよび/または第2のスピーカなどの1つまたは複数のスピーカを備えることができる。
【0054】
第1のスピーカおよび/または第2のスピーカは、例えば、プローブ・インターフェースを介して、トーン発生器に接続される、かつ/または接続可能にすることができる。第1の信号は、第1のスピーカおよび/または第2のスピーカにより生成することができる。第2の信号は、第1のスピーカおよび/または第2のスピーカにより生成することができる。第1の信号を第1のスピーカにより生成し、第2の信号を第2のスピーカにより生成することもできる。
【0055】
聴力検査装置は、第1のマイクロフォンなどのマイクロフォンを備えることができる。検査プローブは、第1のマイクロフォンなどのマイクロフォンを備えることができる。第1のマイクロフォンは、例えば、プローブ・インターフェースを介して、処理ユニットに接続される、かつ/または接続可能にすることができる。
【0056】
装置/システムは、LCDディスプレイ、LEDディスプレイ、OLEDディスプレイなどのディスプレイを備えることができる。装置のハウジングなどの装置は、ディスプレイを備えることができる。
【0057】
第1の一次周波数成分は、トーン発生器の低域遮断周波数におけるものとすることができる。例えば、第1の一次周波数は、トーン発生器が生成できる最も低い周波数とすることができる。外耳道内で、プローブの筐体を検出する/検査プローブの正しい位置を検出するためには、可能な最も低い周波数を使用することが有益でありうる。
【0058】
聴力検査装置は、ポンプ・モジュールを備えることができる。ポンプ・モジュールは、処理ユニットに接続することができる。ポンプ・モジュールは、プローブ・インターフェースのポンプ・ポートと流体連通するポートを有することができる。聴力検査装置、例えば、ポンプ・モジュール、および/または検査プローブは、圧力センサを備えることができる。圧力センサは、外耳道内の実際の圧力を測定するように構成することができる。
【0059】
聴力検査は、外耳道内の圧力を変更することを含むことができ、また外耳道内の圧力は、ポンプ・モジュールを使用することにより、変更かつ/または感知することができる。
【0060】
装置および/またはシステムは、第2の挿入検査を実施するように構成することができる。第2の挿入検査は、外耳道内の圧力/圧力変化の生成および検出に基づくことができる。第2の挿入検査は漏れ検査とすることができる。
【0061】
装置および/またはシステムは、第1の挿入基準が満たされた場合、圧力を変更するように構成することができる。装置および/またはシステムは、圧力応答を検出するようにさらに構成することができる。装置および/またはシステムは、第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するようにさらに構成することができる。第2の挿入基準は、圧力応答に基づくことができる。装置および/またはシステムは、第1および第2の挿入基準が満たされた場合、聴力検査を開始するようにさらに構成することができる。
【0062】
ポンプ・モジュールは、第1の挿入基準が満たされた場合、圧力を変えるように構成することができる。圧力センサは、圧力応答を検出するように構成することができる。処理ユニットは、第2の挿入基準が満たされたかどうかを判定するように構成することができ、例えば、処理ユニットは、圧力応答を解析して、第2の挿入基準が満たされたかどうかを判定するように構成することができる。処理ユニットは、第1および第2の挿入基準が満たされた場合、聴力検査をさらに開始することができる。
【0063】
図1は、聴力検査を実施するための例示的な聴力検査システム1を概略的に示している。聴力検査システム1は、聴力検査装置2、検査プローブ4、第1のスピーカ6、および第1のマイクロフォン8を備える。聴力検査装置は、処理ユニット10、および処理ユニット10に接続されたトーン発生器12を備える。第1のマイクロフォン8は、処理ユニット10に接続され、また第1のスピーカは、トーン発生器12に接続される。
【0064】
聴力検査システム1は、第1の一次周波数で第1の一次周波数成分を有する第1の信号14を生成し、かつ第1の応答信号16を受信するように構成される。聴力検査システム1は、第1のスピーカ6により第1の信号14を生成し、かつ検査プローブ4を介して第1の信号14を送信する。聴力検査システム1は、検査プローブ4を介して第1のマイクロフォン8により第1の応答信号16を受信する。
【0065】
聴力検査システム1は、第1の挿入基準が満たされたかどうかを判定するようにさらに構成され、第1の挿入基準は、第1の信号14および第1の応答信号16に基づく。聴力検査システム1は、少なくとも第1の挿入基準が満たされた場合、聴力検査を開始するようにさらに構成される。聴力検査は、聴力検査システム1が、第2の一次周波数で第2の一次周波数成分を有する第2の信号18を生成し、例えば、外耳道内の鼓膜からの反射を測定することを含む。聴力検査システム1は、第1のスピーカ6により第2の信号18を生成し、かつ検査プローブ4を介して第2の信号18を送信する。
【0066】
第1の信号14と第2の信号18は、少なくとも異なる一次周波数のその一次周波数で異なっている。したがって、第1の一次周波数は、第2の一次周波数よりも低い。例えば、第1の一次周波数は、120Hz未満、80Hz未満、50Hz未満、40Hz未満、20Hzなど、180Hz未満にすることができる。第2の一次周波数は、190Hzと250Hzの間の範囲など約200Hzを超える範囲のもの、例えば、200Hzもしくは226Hzなど、200Hzと230Hzの間の第2の一次周波数とすることができるが、あるいは1000Hzなど、約900Hz〜1100Hzの範囲のものとすることができる。例示的な装置では、第2の信号18の第2の一次周波数は、生後約6ヶ月以上の検査すべきヒトに対しては、180〜250Hzの範囲で選択することができ、また第2の信号18の第2の一次周波数は、生後約6ヶ月未満の検査すべきヒトに対しては、950Hz〜1050Hzの範囲で選択することができる。
【0067】
第1の応答信号16は、少なくとも部分的に、第1の信号14の反射とすることができる。第1の応答信号16の解析は、プローブ部分が、例えば、外耳道などの空洞部内に挿入されたことを示すことができる。第1の挿入基準は、例えば、第1の応答信号16で、第1の信号14の所定程度の反射が見出された場合に満たされうる。
【0068】
低周波数における第1の一次周波数成分は、例えば、第2の一次周波数と等価な周波数など、より高い周波数を使用するよりも向上した漏れ検出を提供する。
【0069】
第1の挿入基準の判定は、処理ユニット10により計算することができる。処理ユニット10は、トーン発生器を制御して、第1のスピーカ6を介して第1の信号および/または第2の信号を生成することができる。処理ユニットは、少なくとも第1の挿入基準が満たされた場合、聴力検査を開始するように構成することができる。
【0070】
図2は、聴力検査を実施するための例示的な聴力検査システム1'を概略的に示す。聴力検査システム1'は、図1の聴力検査システム1と同様のものである。しかし、聴力検査システム1'は第2のスピーカ7を備えており、また聴力検査システム1'は、第2のスピーカ7により第2の信号18を生成するように構成される。
【0071】
第1のスピーカ6は、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号14を生成するように構成することができ、また第2のスピーカ7は、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号18を生成するように構成することができる。例示的なシステム(図示せず)では、第1および第2の一次周波数成分を有する信号を送信するように特に構成された、指定された第1のスピーカおよび第2のスピーカをそれぞれ使用することにより、トーン発生器12を除外することができる。
【0072】
図3は、聴力検査を実施するための例示的な聴力検査システム1を概略的に示しており、聴力検査装置2は、ハウジング3、第1のスピーカ6、および第1のマイクロフォン8を備える。第1のスピーカ6および第1のマイクロフォン8は、聴力検査装置のハウジング3の内部に含まれる。さらに、聴力検査装置2は、検査プローブ4を聴力検査装置2に接続するためのプローブ・インターフェース13を備える。
【0073】
第1のスピーカ6は、第1の信号14および/または第2の信号18を生成する。第1の信号14および/または第2の信号18は、プローブ・インターフェース13およびプローブ4を通して送信される。同様に、第1の応答信号16は、プローブ4を介して受信され、かつプローブ・インターフェース13を通して聴力検査装置2のハウジング3のマイクロフォンに送信される。
【0074】
図4は、聴力検査を実施するための例示的な聴力検査システム1を概略的に示しており、検査プローブ4は、第1のスピーカ6および第1のマイクロフォン8を備える。さらに聴力検査装置2は、検査プローブ4を聴力検査装置2に接続するためのプローブ・インターフェース13を備える。
【0075】
第1の信号14および/または第2の信号18を表す第1の電気信号および/または第2の電気信号は、聴力検査装置2からプローブ・インターフェース13を介して検査プローブ4内の第1のスピーカ6へと送信される。第1の電気信号および/または第2の電気信号の受信に応じて、第1のスピーカ6は、検査プローブ4内で第1の信号14および/または第2の信号18を生成する。同様に、第1の応答信号16は、検査プローブ内の第1のマイクロフォン8により受信される。第1のマイクロフォン8は、第1の応答信号16を表す第1の電気的な応答信号を、プローブ・インターフェース13を介して聴力検査装置2へと送信する。
【0076】
図5は、聴力検査を実施するための例示的な聴力検査装置2を概略的に示している。聴力検査装置2は、ハウジング3、処理ユニット10、およびトーン発生器12を備える。
【0077】
トーン発生器12は、第1の信号14(図1図4)を表す第1の電気信号15を生成する。第1のスピーカ6および/または第2のスピーカ7(図1図4)は、第1の電気信号15を受信し、かつ第1の信号14を生成する。トーン発生器は、第2の信号18(図1図4)を表す第2の電気信号19をさらに生成する。第1のスピーカ6および/または第2のスピーカ7は、第2の電気信号19を受信し、第2の信号18を生成する。
【0078】
第1の電気信号15および第2の電気信号19は、同時に、または時間差で生成することができる。第2の電気信号19は、少なくとも聴力検査中に生成される。
【0079】
図5で示される例示的な聴力検査装置2は、ポンプ・モジュール20をさらに備える。ポンプ・モジュール20は、プローブ・インターフェース13のポンプ・ポートと流体接続24されている。したがって、検査プローブがポンプ・インターフェースに接続され、かつプローブが外耳道(図示せず)の中に挿入されたとき、ポンプ・モジュール20は、外耳道と流体接続されうる。
【0080】
ポンプ・モジュール20は、圧力センサ22をさらに備える。圧力センサ22は、図示の例では、ポンプ・モジュール20内に含まれる。しかし、圧力センサ22は、外耳道内の圧力を検出可能な任意の場所に配置することができる。例えば、代替の例示的な装置では、圧力センサ22は、プローブ・インターフェース13内に配置される。
【0081】
検査プローブ4(図6)は、プローブ・インターフェース13を介して聴力検査装置に接続可能である。プローブ・インターフェース13は、1つまたは複数の電気なコネクタ、および/または1つまたは複数の流体連通チャネルを備えることができる。
【0082】
図6は例示的な検査プローブ4を概略的に示す。検査プローブ4は、プローブ・ハウジング28、および第1のプローブ部分30を備える。図6は、検査プローブ4を聴力検査装置と接続するためのプローブ・コネクタ32をさらに示している。第1のプローブ部分30は、ヒトの外耳道(図示せず)の中に挿入するように適合されている。
【0083】
図7は、外耳道などの閉じた部分にプローブが挿入されたことを検出するための方法100の流れ図である。方法100は、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成するステップ102と、第1の応答信号を検出するステップ104と、第1の挿入基準が満たされたかどうかを判定するステップ106と、聴力検査を開始するステップ114とを含む。
【0084】
第1の挿入基準は、102で生成された第1の信号と、104で検出された第1の応答信号とに基づくことができる。第1の挿入基準は、外耳道などの空洞部の中にプローブが挿入されたかどうかを示すことができる。第1の挿入基準は、プローブが、プローブと外耳道壁との間など、プローブと外耳道の間で封止を提供しているかどうかを示すことができる。第1の挿入基準の判定106が、第1の挿入基準が満たされたことを示す場合、本方法は、聴力検査の開始114へと進む。第1の挿入基準の判定106が、第1の挿入基準が満たされていないこと示す場合、本方法は、方法100の最初に、すなわち、第1の信号の生成102へと戻る。
【0085】
さらに、第1の挿入基準が満たされない場合、方法100は、方法100の最初に戻る前に、プローブの位置を変えるように信号を送るステップを含むことができる。信号送りは、操作者に対する可聴の、かつ/または視認可能な信号とすることができる。
【0086】
第1の信号は、第1の一次周波数で第1の一次周波数成分を有する。第1の一次周波数は、120Hz未満、80Hz未満、60Hz未満、45Hz未満など、180Hz未満とすることができる。
【0087】
聴力検査は、第2の信号を送信することを含む。第2の信号は、第2の一次周波数で第2の一次周波数成分を有する。第2の一次周波数は、200〜230Hzの範囲など、190〜250Hzの範囲とすることができ、220または226Hzなどとすることができる。
【0088】
第1の音響信号の第1の一次周波数は、第2の信号の第2の一次周波数よりも低い。低い第1の一次周波数は、例えば、第2の一次周波数と等価な周波数など、より高い周波数を用いるよりも、封入もしくは封止の良好な検出を提供する。したがって、第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号など、低周波数信号を用いて封入および/または漏れを検出することにより、封入を誤って検出する危険が低減される。したがって、漏れに起因して圧力を増加できない間に、またはシステムが検査に対する準備ができていない間に、ポンプを活動化させることが回避されうる。
【0089】
図8は、外耳道などの閉じた部分の中にプローブが挿入されたのを検出するための方法100'の流れ図である。方法100'は、図7で示した方法100と同じ最初のステップ102、104、106を含む。方法100'は、外耳道内の圧力を変更するステップ108と、圧力応答を検出するステップ110と、第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップ112とをさらに含む。
【0090】
圧力の変更108は、圧力を増加させる、かつ/または減少させるステップを含むことができる。圧力応答の検出110は、例えば、気圧に対する現在の圧力の情報を提供することができる。圧力応答の検出110は、圧力の変更108が意図されたように行われたかどうか、すなわち、予想通りに圧力が上昇および/または減少したかどうかの情報を提供する。圧力測定は、例えば、第1の応答信号16(図1図5)などの反射された信号とさらに関連付けて、例えば、反射性測定(reflex−measurement)を提供することができる。
【0091】
第2の挿入基準は圧力応答に基づく。第2の挿入基準は、プローブが外耳道などの空洞部内に適正に挿入されたかどうか、また適切な気密封止が生成されたかどうかを示している。第2の挿入基準は、110で検出された圧力が、圧力変更108に十分に対応していることでありうる。第2の挿入基準の判定112が、第2の挿入基準が満たされていることを示す場合、方法は、聴力検査の開始114へと進む。第2の挿入基準の判定112が、第2の挿入基準が満たされていないことを示す場合、方法は、方法の最初に、すなわち、第1の信号の生成102に戻る。代替的に、第2の挿入基準の判定112が、第2の挿入基準が満たされていないことを示す場合、方法は、例えば、ステップ102〜106が封止を示しているので、圧力の変更108に戻ることができる。さらに、第2の挿入基準が満たされていない場合、方法100は、方法100の最初に、かつ/または圧力の変更108に戻る前に、プローブの位置を変えるように信号を送るステップを含むことができる。信号送りは、操作者に対する可聴の、かつ/または視認可能な信号とすることができる。
【0092】
図9は、様々な周波数を有する信号を用いて封入を検出する検査に対する検査結果を示す。水平軸は、第1の信号の第1の一次周波数成分など周波数をHzで示している。垂直軸は、測定された等価容積を示す。等価容積は、アドミタンスを測定し、等価容積[ml]=アドミタンス[mmho]×226/周波数[Hz]を適用することにより導かれる。
【0093】
2つの検査は、容積5.2mlを有する空洞部で行われた。空洞部は、気密空洞部と漏れのある空洞部を模倣するために、開放もしくは閉鎖することのできる小さな漏れ口を有していた。
【0094】
様々な周波数に対して、実線は、5.2mlの封止された空洞部で測定された等価容積を示しており、また破線は、漏れのある5.2mlの空洞部で測定された等価容積を示している。実線は、例えば、500Hz未満などのすべての低周波数に対して等価容積が、ほぼ5.2mlと測定されることを示しているが、破線は、減少する周波数に対して、等価容積が増加することを示している。
【0095】
従来使用される226Hzに対する結果を比較すると、等価容積は、封止された(実線)空洞部と、漏れのある(破線)空洞部とで同じように測定される。この結果は、この設定では、空洞部が封止されているか、それとも漏れているかどうかを、226Hzの第1の一次周波数成分を有する第1の信号を用いる測定から判定できないことを示唆している。しかし、第1の信号の第1の一次周波数成分を、例えば、20Hzに下げると、漏れのある空洞部等価容積(破線)は、ほぼ12.5mlと測定される。したがって、実際には漏れを有している封止された空洞部を誤って検出する危険が、本明細書で開示される方法および装置により大幅に低減される。
【0096】
例示的な聴力検査装置、システム、および方法が、以下の項目で開示される。
【0097】
項目1.外耳道内で聴力検査を実施するための聴力検査装置であって、
− ハウジングと、
− 処理ユニットと、
− 処理ユニットに接続されるトーン発生器と、
− 聴力検査装置を検査プローブに接続するためのプローブ・インターフェースと
を備え、装置は、
− 第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を表す第1の電気信号をトーン発生器により生成し、
− 第1の応答信号を受信し、
− 第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
− 少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を表す第2の電気信号を生成することを含む聴力検査を開始する
ように構成され、
第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い、聴力検査装置。
【0098】
項目2.第1の一次周波数成分が、トーン発生器の低域遮断周波数を含む、すなわち、第1の一次周波数は、トーン発生器が生成できる最も低い周波数である、項目1に記載の聴力検査装置。
【0099】
項目3.装置は、プローブ・インターフェースのポンプ・ポートと流体連通しているポートを有する、処理ユニットに接続されたポンプ・モジュールを備え、聴力検査は、外耳道内の圧力を変更することを含む、項目1または2のいずれかに記載の聴力検査装置。
【0100】
項目4.ポンプ・モジュールは、圧力センサを備える、項目3に記載の聴力検査装置。
【0101】
項目5.装置が、
− 第1の挿入基準が満たされている場合、圧力を変更し、
− 圧力応答を検出し、
− 圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
− 第1の挿入基準および第2の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始する
ように構成される、項目1から項目4のいずれかに記載の聴力検査装置。
【0102】
項目6.第1の一次周波数が180Hz未満である、項目1から5のいずれかに記載の聴力検査装置。
【0103】
項目7.聴力検査を実施するための聴力検査システムであって、
− 処理ユニットを備える聴力検査装置と、
− 外耳道の中に挿入するための第1の部分を有する検査プローブであり、聴力検査装置に接続されている、検査プローブと、
− 第1のスピーカと、
− 第1のマイクロフォンと
を備え、聴力検査システムは、
− 第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成し、
− 第1の応答信号を受信し、
− 第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
− 少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む聴力検査を開始する
ように構成され、
第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い、聴力検査システム。
【0104】
項目8.検査プローブは、第1のスピーカを備える、項目7に記載の聴力検査システム。
【0105】
項目9.第2の信号は、第1のスピーカにより生成される、項目7または8のいずれかに記載の聴力検査システム。
【0106】
項目10.システムは第2のスピーカを備え、また第2の信号は第2のスピーカにより生成される、項目7または8のいずれかに記載の聴力検査システム。
【0107】
項目11.検査プローブは第2のスピーカを備える、項目10に記載の聴力検査システム。
【0108】
項目12.聴力検査を実施するための方法であって、
− 第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成するステップと、
− 第1の応答信号を検出するステップと、
− 第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、
− 少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む聴力検査を開始するステップと
を含み、
第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い、方法。
【0109】
項目13.方法は、聴力検査を開始する前に、
− 第1の挿入基準が満たされている場合、圧力を変更するステップと、
− 圧力応答を検出するステップと、
− 圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、
− 第1の挿入基準および第2の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始するステップと
を含む、項目12に記載の方法。
【0110】
項目14.第1の一次周波数が180Hz未満である、項目12または13のいずれかに記載の方法。
【0111】
項目15.第1の一次周波数が、15Hzから150Hzの範囲である、項目12から14のいずれかに記載の方法。
【0112】
項目16.第2の一次周波数は、190Hzから250Hzの範囲、または950Hzから1050Hzの範囲にある、項目12から15のいずれかに記載の方法。
【0113】
さらに、例示的な聴力検査装置、システム、および方法が以下のポイントで開示される。
【0114】
ポイント1.外耳道内で聴力検査を実施するための聴力検査装置であって、
− ハウジングと、
− 処理ユニットと、
− 処理ユニットに接続されるトーン発生器と、
− 聴力検査装置を検査プローブに接続するためのプローブ・インターフェースと
を備え、装置は、
− 第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を表す第1の電気信号をトーン発生器により生成し、
− 第1の応答信号を受信し、
− 第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
− 少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を表す第2の電気信号を生成することを含む聴力検査を開始する
ように構成され、
第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い、聴力検査装置。
【0115】
ポイント2.第1の一次周波数成分が、トーン発生器の低域遮断周波数を含む、すなわち、第1の一次周波数は、トーン発生器が生成できる最も低い周波数である、ポイント1に記載の聴力検査装置。
【0116】
ポイント3.装置は、プローブ・インターフェースのポンプ・ポートと流体連通しているポートを有する、処理ユニットに接続されたポンプ・モジュールを備え、聴力検査は、外耳道内の圧力を変更することを含む、ポイント1または2のいずれかに記載の聴力検査装置。
【0117】
ポイント4.ポンプ・モジュールは、圧力センサを備える、ポイント3に記載の聴力検査装置。
【0118】
ポイント5.装置が、
− 第1の挿入基準が満たされている場合、圧力を変更し、
− 圧力応答を検出し、
− 圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
− 第1の挿入基準および第2の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始する
ように構成される、ポイント1から4のいずれかに記載の聴力検査装置。
【0119】
ポイント6.聴力検査を実施するための聴力検査システムであって、
− 処理ユニットを備える聴力検査装置と、
− 外耳道の中に挿入するための第1の部分を有する検査プローブであり、聴力検査装置に接続されている、検査プローブと、
− 第1のスピーカと、
− 第1のマイクロフォンと
を備え、聴力検査システムは、
− 第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成し、
− 第1の応答信号を受信し、
− 第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定し、かつ
− 少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む聴力検査を開始する
ように構成され、
第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い、聴力検査システム。
【0120】
ポイント7.検査プローブは第1のスピーカを備える、ポイント6に記載の聴力検査システム。
【0121】
ポイント8.第2の信号は、第1のスピーカにより生成される、ポイント6または7のいずれかに記載の聴力検査システム。
【0122】
ポイント9.システムは第2のスピーカを備え、また第2の信号は第2のスピーカにより生成される、ポイント6または7のいずれかに記載の聴力検査システム。
【0123】
ポイント10.検査プローブは第2のスピーカを備える、ポイント9に記載の聴力検査システム。
【0124】
ポイント11.聴力検査を実施するための方法であって、
− 第1の一次周波数で、第1の一次周波数成分を有する第1の信号を生成するステップと、
− 第1の応答信号を検出するステップと、
− 第1の信号および第1の応答信号に基づく第1の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、
− 少なくとも第1の挿入基準が満たされている場合、第2の一次周波数で、第2の一次周波数成分を有する第2の信号を生成することを含む聴力検査を開始するステップと
を含み、
第1の一次周波数が第2の一次周波数よりも低い、方法。
【0125】
ポイント12.方法は、聴力検査を開始する前に、
− 第1の挿入基準が満たされている場合、圧力を変更するステップと、
− 圧力応答を検出するステップと、
− 圧力応答に基づく第2の挿入基準が満たされているかどうかを判定するステップと、
− 第1の挿入基準および第2の挿入基準が満たされている場合、聴力検査を開始するステップと
を含む、ポイント11に記載の方法。
【0126】
ポイント13.第1の一次周波数が180Hz未満である、ポイント11または12のいずれかに記載の方法。
【0127】
ポイント14.第1の一次周波数が、15Hzから150Hzの範囲にある、ポイント11から13のいずれかに記載の方法。
【0128】
ポイント15.第2の一次周波数は、190Hzから250Hzの範囲、または950Hzから1050Hzの範囲にある、ポイント11から14のいずれかに記載の方法。
【0129】
特定の実施例が示され、説明されているが、これは、特許請求の範囲に記載の発明を好適な実施例に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。また、特許請求の範囲に記載の発明の意図及び範囲から逸脱しないような変更および改良がなされ得ることは、当業者にとって明らかであろう。従って、明細書および図面は、限定的ないとよりもむしろ例示であると見なされるべきである。特許請求の範囲に記載の発明は、代替例、改良および均等物を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0130】
1:聴力検査システム
2:聴力検査装置
3:ハウジング
4:検査プローブ
6:第1のスピーカ
7:第2のスピーカ
8:第1のマイクロフォン
10:処理ユニット
12:トーン発生器
13:プローブ・インターフェース
14:第1の信号
15:第1の電気信号
16:第1の応答信号
18:第2の信号
19:第2の電気信号
20:ポンプ・モジュール
22:圧力センサ
24:流体接続
28:プローブ・ハウジング
30:第1のプローブ部分
32:プローブ・コネクタ
100,100´:方法
102:第1の信号を生成するステップ
104:応答信号を検出するステップ
106:第1の挿入基準を判定するステップ
108:圧力を変更するステップ
110:圧力応答を検出するステップ
112:第2の挿入基準を判定するステップ
114:聴力検査を開始するステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9