(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記入力リンク、前記固定リンク、前記中間リンク、前記出力リンクおよび前記媒介リンクのリンク長比は、前記固定リンクに相対する前記出力リンクの角度が0°から140°までの範囲において、前記出力リンクの角度の増大に伴ってトルク伝達比が増大する関係を有している、請求項1に記載の装着型動作支援装置。
前記入力リンク、前記固定リンク、前記中間リンク、前記出力リンクおよび前記媒介リンクのリンク長比は、前記固定リンクに相対する前記出力リンクの角度が0°から140°までの範囲において、0°のときにトルク伝達比が1より小さく、90°以上でトルク伝達比が1以上となる関係を有している、請求項1又は2に記載の装着型動作支援装置。
【背景技術】
【0002】
近年、利用者の身体に装着されて、利用者の動作を支援する動作支援装置が開発されている。例えば、利用者の歩行時や起立時などの股関節や膝関節の動きを補助するための、下半身外骨格形状を有する装着型動作支援装置が知られている。このような装着型動作支援装置は、一般に、装着者の腰に装着される腰装着部、大腿に装着される大腿装着部、下腿に装着される下腿装着部、腰装着部と大腿装着部の間の股関節部および大腿装着部と下腿装着部との間の膝関節部にそれぞれ配置されたアクチュエータ等からなる装着具を備えている。しかし、装着具の膝関節部近傍にアクチュエータが配置されると、アクチュエータの重みにより膝関節部周りの装着具のイナーシャが増大し、装着者の軽快な歩行が阻害されたり、イナーシャを受けた装着具の動きを修正するためにアクチュエータの負荷が増大するという課題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の肢体アシスト装置では、装着具に大腿装着部と下腿装着部とを含む四節平行リンク機構を備えることにより、膝関節用アクチュエータの重量に起因して装着者にかかる慣性モーメントを軽減している。具体的には、この肢体アシスト装置は、第一のリンク部、大腿リンク部、下腿リンク部および第二のリンク部を順次回転自在に連結してなる閉じられた四節リンク機構と、第一のリンク部を駆動する膝関節用アクチュエータとを備えている。そして、肢体アシスト装置が具備するアクチュエータの中でも特に重量の大きい膝関節用アクチュエータを利用者の膝関節よりも体幹(胴体)方向へ配置している。
【0004】
特許文献1に基づけば、例えば、
図14(a)に示すように、動作支援装置の装着具の下肢部分に入力リンク99a、固定リンク99b、出力リンク99cおよび媒介リンク99dを順次回転可能に連結して成る四節平行リンク機構99が備えられることとなる。人間の膝関節は、直立から蹲踞まで姿勢を変化させるときに約140°という広い動作範囲を有することが知られている。そこで、上記四節平行リンク機構99において出力リンク99cが固定リンク99bと一列に並んだ状態を0°として、ここから出力リンク99cを140°まで動かしてみると、
図14(b)に示すように、出力リンク99cの角度が0−140°内の或値で、四節平行リンク機構99は思案点となる。四節平行リンク機構99が思案点となるときは、装着者の膝が大きく屈曲して特に外部動力によるサポートが必要なときでもある。ところが、思案点では入力リンク99aから出力リンク99cまでのトルク伝達が不安定となる。このような理由から、動作支援装置の装着具の下肢部分に四節平行リンク機構を備えると、人間の膝関節の広い動作範囲に対応することが困難である。
【0005】
また、動作支援装置の装着具の下肢部分を四節平行リンク機構で構成する場合、入力リンクから出力リンクへのトルク伝達率は常に1である。ところが、立位や直立歩行時には、膝関節に余分な負荷を掛けないために、装着具における入力リンクから出力リンクへのトルク伝達比は小さいことが望ましい。そして、蹲踞の姿勢では、蹲踞の姿勢から直立姿勢へ移行するときに装着者の体重を支持しながら装着者の動きを力強くアシストするために、装着具における入力リンクから出力リンクへのトルク伝達比は大きいことが望ましい。つまり、動作支援装置の装着具において入力リンクから出力リンクへのトルク伝達比は直立姿勢で小さく、蹲踞の姿勢で大きい特性を有することが望ましい。
【0006】
そこで、特許文献2では、動作支援装置の装着具の下肢部分に四節非平行リンク機構を備え、リンク長比を調整することによって人間の膝関節の広い動作範囲に対応するとともに入力リンクから出力リンクへのトルク伝達比を好適に調整できるようにしている。具体的には、特許文献2に記載された動力付歩行支援装置では、入力リンク、固定リンク、出力リンクおよび中間リンクを順次回転自在に連結してなる閉じられた四節非平行リンク機構を備えている。この四節リンク機構のうち、固定リンクが大腿に固定され、出力リンクが下腿に固定され、入力リンクに動力が入力される。そして、対向するリンクのリンク長比の和同士がほぼ等しくなるように、各リンク長が定められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載された動力付歩行支援装置によれば、人間の膝関節の広い動作範囲に対応可能となるものの、膝関節の屈曲に追従してリンクが動くと入力リンクと中間リンクとの連結部が大きく後方へ出っ張ることとなり、装着具が大型化してしまう。装着具の大型化は、装着具の重量化や装着感の低下に繋がる。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、出力リンクの四節平行リンク機構と比較して広い動作範囲にわたって良好にトルクを伝達可能であり、且つ、更なる小型化を実現可能とする、駆動装置およびこれを備えた装着型動作支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る駆動装置は、入力リンク、固定リンク、中間リンク、出力リンクおよび媒介リンクの5つのリンクが順次回転可能に連結されて成る五節リンク機構と、前記固定リンクと前記中間リンクの相対変位と前記中間リンクと前記出力リンクの相対変位を所定の比率に拘束することにより前記五節リンク機構の自由度を1に制限する自由度制限機構と、前記入力リンクに対し前記固定リンクとの連結部回りの回転駆動力を与えるアクチュエータとを備えているものである。
【0011】
上記構成の駆動装置によれば、固定リンクと出力リンクとの間に中間リンクが存在することにより、出力リンクの四節平行リンク機構と比較して広い動作範囲(例えば、固定リンクに相対する出力リンクの角度が0°から140°までの範囲)にわたって、出力リンクと固定リンクを同一平面内に配置してもこれらのリンクが干渉しない構成とすることが可能となる。また、出力リンクの上記広い動作範囲にわたって、思案点を通過しない構成とすることが可能となり、上記広い動作範囲で入力リンクから出力リンクへの安定したトルク伝達を行うことが可能となる。また、固定リンク、中間リンクおよび出力リンクを直線状に配置したときに、入力リンクおよび媒介リンクをこの直線に沿うように形成することが可能であり、駆動装置の小型化を図ることができる。さらに、固定リンク、中間リンクおよび出力リンクが直線状に並んだ状態から出力リンクが動作するときに、入力リンクおよび媒介リンクをこれらのリンクに沿うように形成することが可能であり、駆動装置の小型化を図ることができる。
【0012】
前記駆動装置において、前記自由度制限機構は、前記固定リンクと前記出力リンクの各々に設けられた噛合し合う歯車とすることができる。
【0013】
本発明に係る装着型動作支援装置は、装着者の筋力を補助或いは代行する装着型動作支援装置であって、前記装着者の大腿に装着される大腿装着部および前記装着者の下腿に装着される下腿装着部を少なくとも有する下肢フレームと、前記下肢フレームに設けられた前記駆動装置とを備え、
前記駆動装置が、入力リンク、前記大腿装着部に設けられた固定リンク、中間リンク、前記下腿装着部に設けられた出力リンクおよび媒介リンクの5つのリンクが順次回転可能に連結されて成る五節リンク機構と、前記固定リンクと前記中間リンクの相対変位と前記中間リンクと前記出力リンクの相対変位を所定の比率に拘束することにより前記五節リンク機構の自由度を1に制限する自由度制限機構と、前記大腿装着部に設けられ、前記入力リンクに対し前記固定リンクとの連結部回りの回転駆動力を与えるアクチュエータとを有するものである。
前記自由度制限機構は、前記固定リンクと前記出力リンクの各々に設けられた噛合し合う歯車であってよい。
【0014】
上記構成の装着型動作支援装置によれば、固定リンクと出力リンクとの間に中間リンクが存在することにより、出力リンクの四節平行リンク機構と比較して広い動作範囲(例えば、固定リンクに相対する出力リンクの角度が0°から140°までの範囲)にわたって、出力リンクと固定リンクを同一平面内に配置してもこれらのリンクが干渉しない構成とすることが可能となる。出力リンクと固定リンクを同一平面内に配置できれば、下肢フレームの側方への突出量を抑えることができ、装着型動作支援装置の小型化に寄与することができる。また、出力リンクの上記広い動作範囲にわたって、思案点を通過しない構成とすることが可能となり、上記広い動作範囲で入力リンクから出力リンクへの安定したトルク伝達を行うことが可能となる。これにより、装着型動作支援装置は、人間の膝関節の140°という広い動作範囲に対応することができる。また、固定リンク、中間リンクおよび出力リンクを直線状に配置したときに、入力リンクおよび媒介リンクをこの直線に沿うように形成することが可能であり、装着型動作支援装置の小型化を図ることができる。さらに、固定リンク、中間リンクおよび出力リンクが直線状に並んだ状態から出力リンクが動作するときに、入力リンクおよび媒介リンクをこれらのリンクに沿うように形成することが可能であり、装着型動作支援装置の小型化を図ることができる。さらに、アクチュエータが装着者の膝関節よりも上方の大腿装着部に設けられることにより、アクチュエータを膝関節近傍に設ける場合と比較して歩行時に装着者に作用するアクチュエータに起因する慣性力が低減し、装着者により快適な歩行を提供することができる。
【0015】
前記装着型動作支援装置において、前記入力リンク、前記固定リンク、前記中間リンク、前記出力リンクおよび前記媒介リンクのリンク長比は、前記固定リンクに相対する前記出力リンクの角度が0°から140°までの範囲において、前記出力リンクの角度の増大に伴ってトルク伝達比が増大する関係を有していることがよい。
【0016】
さらには、前記装着型動作支援装置において、前記入力リンク、前記固定リンク、前記中間リンク、前記出力リンクおよび前記媒介リンクのリンク長比は、前記固定リンクに相対する前記出力リンクの角度が0°から140°までの範囲において、0°のときにトルク伝達比が1より小さく、90°以上でトルク伝達比が1以上となる関係を有していることがよい。
【0017】
上記構成によれば、装着者が直立姿勢で歩行するときにトルク伝達比が小さく、装着者が蹲踞の姿勢から立ち上がるときにトルク伝達比が大きくなり、装着者の下肢に負担をかけないより快適な歩行と、装着者が蹲踞の姿勢から立ち上がるときの強力なアシストとを実現することができる。
【0018】
前記装着型動作支援装置において、前記下肢フレームは前記装着者の足に装着される足装着部を備え、前記大腿装着部は前記装着者の大腿に係留するための係止具を有し、前記下腿装着部は並進方向に伸長可能な並進自由度を有し、前記足装着部は前記装着者の足に係留するための係止具を有していることがよい。
【0019】
または、前記装着型動作支援装置において、前記下肢フレームは前記装着者の足に装着される足装着部を備え、前記大腿装着部は並進方向に伸長可能な並進自由度を有し前記下腿装着部は前記装着者の下腿に係留するための係止具を有し、前記足装着部は前記装着者の足に係留するための係止具を有していることがよい。
【0020】
上記構成によれば、大腿装着部または下腿装着部のうち一方が装着者の身体に係留しているときに、他方は並進自由度を備えることとなる。このような装着型動作支援装置は、装着者が膝の屈伸を行うときに装着者の身体の動きに良好に追従し、装着者に違和感を与えずに動作を支援することができる。
【0021】
前記装着型動作支援装置において、前記固定リンクと前記出力リンクが同じ矢状面上に配置されていることがよい。かかる構成により、装着型動作支援装置をより小型化することができる。
【0022】
前記装着型動作支援装置において、装着者の直立姿勢時に、前記大腿装着部の上端と、前記下腿装着部の下端と、前記固定リンクと前記中間リンクの連結部とが、矢状面視において略同一直線上に配置されていることがよい。かかる構成により、装着型動作支援装置の大腿装着部と下腿装着部がほぼ直線上に並び、大腿装着部と下腿装着部を含む下肢フレームをより小型化することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、四節平行リンク機構を備える構成と比較して、出力リンクの動作範囲をより広い範囲(例えば、固定リンクに相対する出力リンクの角度が0°から140°までの範囲)とすることができる。そして、この出力リンクの広い動作範囲にわたって、入力リンクから出力リンクへ安定してトルクを伝達することが可能となる。さらに、このような広い動作範囲を確保しつつ、駆動装置および装着型動作支援装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0026】
[駆動装置]
まず、本発明に係る駆動装置について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る駆動装置の概略構成を示す図であり、
図2は
図1の駆動装置の出力リンク角を増大させた状態を示す図である。
図1に示すように、駆動装置8は、五節リンク機構10と、五節リンク機構10へ動力を与えるアクチュエータ9とを備えている。
【0027】
五節リンク機構10は、入力リンク11、固定リンク12、中間リンク13、出力リンク14および媒介リンク15の5つのリンクが順次回転可能に連結されて成る閉じられたリンク機構である。具体的には、入力リンク11と固定リンク12は入力軸16により回動自在に連結されており、固定リンク12と中間リンク13は連結軸17により回動自在に連結されており、中間リンク13と出力リンク14は連結軸18により回動自在に連結されており、出力リンク14と媒介リンク15とは連結軸19により回動自在に連結されており、媒介リンク15と入力リンク11とは連結軸20により回動自在に連結されている。
図1,2に示す例では、入力軸16と各連結軸17,18,19,20は平行である。以下では、固定リンク12の長軸方向H
12に対する出力リンク14の長軸方向H
14の傾きを「出力リンク角Q」という。出力リンク角Qは、出力リンク14の長軸方向H
14と固定リンク12の長軸方向H
12とが一直線に並ぶとき(
図1)を0°とする。また、入力軸16と連結軸17の中心間を結ぶ仮想直線を「固定リンク線H
L2」という。
図1,2に示す例では、固定リンク12の長軸方向H
12と固定リンク線H
L2とは重複するが、固定リンク12の態様によってはこれらが重複しないこともある。さらに、連結軸17と連結軸18の中心間を結ぶ仮想直線を「中間リンク線H
L3」といい、連結軸18と連結軸19の中心間を結ぶ仮想曲線を「出力リンク線H
L4」という。
図1,2に示す例では、出力リンク14の長軸方向H
14と出力リンク線H
L4とは重複しないが、出力リンク14の態様によってはこれらが重複することもある。
【0028】
五節リンク機構10は、固定リンク12と中間リンク13の相対変位と、中間リンク13と出力リンク14の相対変位とを所定の比率とするための、自由度制限機構23を備えている。ここで、固定リンク12と中間リンク13の相対変位とは、固定リンク線H
L2と中間リンク線H
L3が成す角度の変化を意味する。また、中間リンク13と出力リンク14の相対変位とは、中間リンク線中間リンク線H
L3と出力リンク線H
L4が成す角度の変化を意味する。この自由度制限機構23により固定リンク12、中間リンク13および出力リンク14の動作は相互に拘束されて、五節リンク機構10の自由度は1となっている。
【0029】
本実施の形態に係る自由度制限機構23は、一方が固定リンク12に設けられ、他方が出力リンク14に設けられた一対の噛み合う歯車で構成されている。具体的には、固定リンク12の中間リンク13と連結されている側の端部に第1歯車21が設けられており、出力リンク14の中間リンク13と連結されている側の端部に第2歯車22が設けられており、第1歯車21と第2歯車22が噛合している。第1歯車21と第2歯車22の歯車比は1:1に限定されず、第1歯車21と第2歯車22で異なる歯数の歯車が用いられてもよい。また、第1歯車21および第2歯車22の歯車比は一定に限られず、回転するうちに変化してもよい。さらに、第1歯車21および第2歯車22の全周に歯列が設けられている必要はなく、少なくとも固定リンク12に相対する出力リンク14の可動範囲において歯車21,22が噛み合うように歯列が設けられていれば足り、他は平滑であってもよい。なお、自由度制限機構23は一対の歯車から成るものに限定されない。例えば、第1歯車21および第2歯車22の一方又は両方に代えてカムを用いることができる。
【0030】
上記構成の五節リンク機構10において、固定リンク12と出力リンク14はそれぞれ適当な支持構造体(図示略)に固定されるか、当該支持構造体の一部を構成している。そして、入力リンク11がアクチュエータ9から入力軸16回りの回転駆動力を受けると、この回転駆動力は媒介リンク15を介して出力リンク14から所定の減速比で出力される。五節リンク機構10において入力リンク11が
図1に示す状態から入力軸16を中心として反時計回りに回転すると、
図2に示すように、入力リンク11に連結された媒介リンク15を介して出力リンク14が連結軸18を中心として反時計回りに回転し、中間リンク13が連結軸17を中心として反時計回りに回転する。ここで、自由度制限機構23の作用により、固定リンク12と中間リンク13との相対変位と中間リンク13と出力リンク14の相対変位が所定の比率(例えば、1)に拘束されることから、入力リンク11の動作に伴って出力リンク14だけでなく中間リンク13も動作することとなる。
【0031】
上記構成の駆動装置8の五節リンク機構10は、四節平行リンク機構と比較して大きな動作範囲を有する。詳細には、五節リンク機構10の出力リンク角Qが0°から大きな角度(例えば、140°)まで変化するときに、固定リンク12と出力リンク14の間に中間リンク13が介在することにより、固定リンク12と出力リンク14を同一平面内に配置してもこれらのリンク12,14を干渉させないように構成することができる。さらに、五節リンク機構10の出力リンク角Qが0°から大きな角度(例えば、140°)まで変化するときに、この動作範囲に思案点を含まないように構成することができる。つまり、五節リンク機構10は、中間リンク13の存在により、出力リンク14の広い動作範囲(例えば、出力リンク角Qが0°から140°までの範囲)にわたって、入力リンク11から出力リンク14へのトルク伝達が不安定となることがない。
【0032】
上記駆動装置8の五節リンク機構10では、前述の通り、中間リンク13の存在により、固定リンク12と出力リンク14とを同じ平面内に配置することが可能となる。これに加えて、
図1に示すように、固定リンク12、中間リンク13および出力リンク14を直線状に配置したときに、入力リンク11および媒介リンク15をこの直線に沿うように形成することが可能である。このようにして、五節リンク機構10をより小型化、つまり、固定リンク12に沿った細長い形状とすることができる。さらに、この五節リンク機構10では、固定リンク12、中間リンク13および出力リンク14が直線状に並んだ状態(
図1)から出力リンク角Qが大きくなる方へ出力リンク14が動いたときに(
図2)、入力リンク11および媒介リンク15をこれらのリンク12,13,14に沿うように形成することが可能であり、駆動装置8の小型化を図ることができる。
【0033】
[装着型動作支援装置]
続いて、上記駆動装置8を備えた装着型動作支援装置(以下、単に動作支援装置という)について説明する。本実施の形態に係る動作支援装置30は下半身外骨格形状を有しており、高齢者、身体障害者および健常者を問わず人間の身体に装着されて、装着者の主に下肢部の筋力を補助又は代行することにより装着者の動作を支援するものである。
【0034】
図3は装着型動作支援装置の全体的な概略構成を示す図である。
図3に示すように、動作支援装置30は、装着具31と、装着具31に積載されたバックパック32と、バックパック32に収容されたバッテリ33および制御器34とを備えている。装着具31は、装着者の腰(骨盤)周りに装着される腰部フレーム40と、装着者の背部に装着される背部フレーム41と、装着者の下肢部に装着される左右の下肢フレーム42,42とで概略構成されている。バックパック32は背部フレーム41に着脱可能に積載されているが、バックパック32は背部フレーム41と一体的に構成されていてもよい。以下、
図3に加えて
図4から6を参照しつつ、装着具31の構成について詳細に説明する。
図4は装着型動作支援装置の左側下部を示す正面図、
図5は装着型動作支援装置の左側下部を示す側面図、
図6は膝を屈曲させた姿勢の装着型動作支援装置の左側下部を示す側面図である。なお、以下では「左右方向」とは装着者の肩幅方向をいい、「前後方向」とは装着者の前後方向をいい、「矢状面」とは装着者の身体を左右対称に切る面とこれに平行な面をいい、「前額面」とは装着者の身体を前後に切る面であって矢状面に垂直な面をいう。
【0035】
(腰部フレーム40)
腰部フレーム40は、装着者の腰(骨盤)の後側および左右両側を覆うことができるように、平面視で略U字形をなしている。具体的には、腰部フレーム40は、左右方向に長尺であって装着者の腰の背側に位置する基部45と、基部45の左右両端から前方へ突出するサイド部46,46とを備えている。腰部フレーム40は、装着者の腰周りへ係留させるためのベルトやフックなどの係止具(図示略)を備えており、腰部フレーム40は装着者の腰に係留される。
【0036】
(下肢フレーム42)
左右の下肢フレーム42,42はほぼ同一の構成であって、腰部フレーム40の左右中央を対称軸として左右線対称に設けられている。よって、以下では一方(左側)の下肢フレーム42の構造についてのみ詳細に説明し、他方の説明を省略する。下肢フレーム42は、大腿装着部である大腿アーム51と、膝関節近傍に配置される中間アーム52と、下腿装着部である下腿アーム53と、足装着部である足下アーム54とを備えている。大腿アーム51、下腿アーム53および足下アーム54は、装着者の身体へ係留させるためのベルトやフックなどの係止具(図示略)を備えている。
【0037】
大腿アーム51は、股関節用アクチュエータ61および股関節用ジョイント62を介して腰部フレーム40のサイド部46の前端に接続されている。股関節用アクチュエータ61は、腰部フレーム40のサイド部46の前端部から外方へ突出するように設けられている。股関節用アクチュエータ61は、例えば、モーターと減速歯車で構成されている。
図7に詳細に示されるように、股関節用アクチュエータ61の出力軸61aは股関節用ジョイント62の構成要素である第1継手621に固定されており、股関節用アクチュエータ61の駆動により腰部フレーム40に対して第1継手621が矢状面上で回動する。なお、「矢状面上で回動する」とは、矢状面と垂直な軸を中心として、矢状面との平行を維持した状態で回動することをいう。
【0038】
股関節用ジョイント62は、第1継手621と、大腿アーム51の上部と接続された第2継手622と、第1継手621と第2継手622とを前額面上で回動可能に連結する枢軸623とを備えている。なお、「前額面上で回動する」とは、前額面と垂直な軸を中心として、前額面との平行を維持した状態で回動することをいう。
【0039】
大腿アーム51の下端には、連結軸17を介して中間アーム52の上端が回動可能に連結されている。中間アーム52の下端は、連結軸18を介して下腿アーム53の上端と回動可能に連結されている。大腿アーム51の下端に第1歯車21が設けられ、下腿アーム53の上端に第2歯車22が設けられ、これらの噛合する歯車21,22が自由度制限機構23を構成している。このように連結された大腿アーム51、中間アーム52および下腿アーム53は、五節リンク機構10の一部を構成している。大腿アーム51は固定リンク12に、中間アーム52は中間リンク13に、下腿アーム53は出力リンク14にそれぞれ相当する。五節リンク機構10に回転動力を付与する膝関節用アクチュエータ63は、大腿アーム51にブラケット63a等を介して固定されている。膝関節用アクチュエータ63は、例えば、モーターと減速歯車で構成されている。このように膝関節用アクチュエータ63が装着者の膝関節から離れた腰側に配置されることにより、膝関節用アクチュエータ63が装着者の膝関節近傍に配置された構成と比較して、装着者の歩行時に膝関節用アクチュエータ63の重量に起因して装着者にかかる慣性モーメントを低減させることができる。
【0040】
膝関節用アクチュエータ63の出力軸、すなわち、五節リンク機構10への入力軸16には、入力リンク11の一端が固定されている。入力リンク11の他端は、連結軸20を介して媒介リンク15の一端と回動可能に連結されている。媒介リンク15の他端は、連結軸19を介して下腿アーム53と回動可能と連結されている。このように、下肢フレーム42の膝関節部分の周りに五節リンク機構10および膝関節用アクチュエータ63(アクチュエータ9)からなる駆動装置8が設けられている。そして、入力リンク11が膝関節用アクチュエータ63から入力軸16回りの回転駆動力を受けると、
図6に示すように、入力リンク11に連結された媒介リンク15を介して下腿アーム53が連結軸18を中心として回転し、中間アーム52が連結軸17を中心として回転する。ここで、自由度制限機構23の作用により、大腿アーム51と中間アーム52の相対変位と中間アーム52と下腿アーム53の相対変位が所定の比率(例えば、1)に拘束されて、入力リンク11の動作に伴って下腿アーム53だけでなく中間アーム52も動作する。
【0041】
大腿アーム51の長さ(長軸方向の寸法)は装着者の大腿の長さにおおよそ適合するように調整されている。このように調整された大腿アーム51の長さを「大腿アームの基準長さ」ということとする。大腿アームの基準長さは、大腿アーム51の最小長さでもある。大腿アーム51は、大腿アーム51を基準長さから1−30mmだけ並進方向(長軸方向)へ伸長可能とする、第1の並進自由度機構55を備えている。
図7にも示すように、第1の並進自由度機構55は、大腿アーム51と股関節用ジョイント62の第2継手622との接続部において、第2継手622から並進方向に延びる接続ピン55aと、大腿アーム51に設けられた接続ピン55aが摺動可能に挿入される接続孔55bと、接続ピン55aに嵌装された圧縮バネ55cとで構成されている。接続ピン55aは接続孔55bよりも長く、接続ピン55aの下端は接続孔55bから下方へ突き抜けており、その下端部に鍔部が形成されている。接続孔55bの開口縁と接続ピン55aの鍔部は並進方向に離間しており、接続ピン55aの接続孔55bの開口縁と接続ピン55aの鍔部の間に圧縮バネ55cが設けられている。接続ピン55aと大腿アーム51とは滑り対偶であって、接続ピン55aと接続孔55bとの間に滑りが生じることにより大腿アーム51が並進方向へ伸長する。さらに、接続ピン55aは接続孔55b内で半径方向(接続ピン55aの軸回り)に回動可能であって、これにより大腿アーム51に回旋自由度(接続ピン55aの軸回りの回転1自由度)が与えられている。なお、大腿アーム51の並進方向への伸長代E1は、第2継手622の下端と大腿アーム51の上端との間に現れる接続ピン55aの長さである。伸長代E1は、第2継手622の下端と大腿アーム51の上端が当接しているときに0であって、伸長代E1が0となるように圧縮バネ55cにより接続ピン55aが付勢されている。そして、大腿アーム51に引張荷重がかかったときに、圧縮バネ55cの付勢力に抗して接続ピン55aが接続孔55b内を移動することによって伸長代E1が増大する。
【0042】
また、下腿アーム53の長さ(長軸方向の寸法)は、装着者の下腿部の長さに適合するように調整されている。このように調整された下腿アーム53の長さを「下腿アームの基準長さ」ということとする。下腿アームの基準長さは、下腿アーム53の最小長さでもある。下腿アーム53は、下腿アーム53を基準長さから1−30mmだけ並進方向(長軸方向)へ伸長可能とする、第2の並進自由度機構57を備えている。
図8にも示すように、第2の並進自由度機構57は、下腿アーム53の下端と、後述する足関節用ジョイント64の第1継手641との接続部において、第1継手641に設けられた並進方向に延びる角柱部57aと、下腿アーム53に設けられた角柱部57aが摺動可能に挿入される角筒部57bと、角柱部57aを角筒部57b内へ収容する方向へ付勢する付勢部材としての引張バネ57cとで構成されている。角柱部57aと下腿アーム53とは滑り対偶であって、角柱部57aが角筒部57b内を並進方向に滑ることにより、下腿アーム53は並進方向に伸長する。上記構成において、下腿アーム53の並進方向への伸長代E2は、下腿アーム53の下端と第1継手641の上端との間に現れる角柱部57aの長さである。伸長代E2は、下腿アーム53の下端と第1継手641の上端が当接しているときに0であって、引張バネ57cは伸長代E2が0となるように角柱部57aを付勢している。そして、下腿アーム53に引張荷重がかかったときに、引張バネ57cの付勢力に抗して角柱部57aが角筒部57b内を移動することによって、伸長代E2が増大する。
【0043】
なお、上述のように大腿アーム51と下腿アーム53の基準長さは、それぞれ装着者の大腿と下腿の寸法に適合するように調整されるが、大腿アーム51と下腿アーム53の基準長さにさほどの精度は求められない。大腿アーム51と下腿アーム53が各々並進自由度を備えていることに加え、これらの間に中間アーム52が設けられることによって、多少の寸法誤差が許容される。
【0044】
下腿アーム53と足下アーム54とは、足関節用ジョイント64を介して接続されている。足関節用ジョイント64は、下腿アーム53の下端に接続された第1継手641と、足下アーム54の上端に接続された第2継手643と、第1継手641と第2継手643を枢結する枢結軸642とで構成されている。第1継手641は枢結軸642に遊嵌されており、第1継手641は枢結軸642を中心として矢状面上で回動可能であるとともに、前額面上で揺動可能である。第2継手643の下部には、足下アーム54を構成する足裏プレート531が接続されている。足裏プレート531は、少なくとも装着者の踵を覆う一体的な形状を有している。
【0045】
(背部フレーム41)
背部フレーム41は、いわゆる背負子である。背部フレーム41は、装着者の肩や胸に係留させるための脇ベルト、肩紐およびフックなどの係止具(図示略)を備えている。背部フレーム41には、バックパック32が積載される。バックパック32に格納されたバッテリ33は、股関節用アクチュエータ61、膝関節用アクチュエータ63、および制御器34へ電気を供給する。また、バックパック32に格納された制御器34は、装着具31の各部に設けたセンサ(図示略)からの検出信号を受けて、装着具31が装着者の動作を補助又は代行するように股関節用アクチュエータ61および膝関節用アクチュエータ63を制御する。なお、上記センサは、部材の重心の変化量や部材に加わる負荷量などの物理量を検出するセンサであるが、これらに代えて又はこれらに加えて装着者の生体信号を検出する生体信号センサを用いても良い。生体信号センサを用いれば、装着者の意思に従った動力をアクチュエータ61,63に発生させることができる。
【0046】
上記構成の動作支援装置30において、五節リンク機構10の5つのリンクのリンク長比は、動作支援装置30として最適なトルク伝達比を発揮できるように設定されている。すなわち、リンク長比により、膝関節用アクチュエータ63が一定出力であっても、蹲踞の姿勢時には力強いアシスト力を発揮し且つ直立姿勢時には俊敏なバックドライブを確保できるようなトルク伝達比に調整されている。このようなトルク伝達比は、出力リンク角Qが0−140°の範囲において、出力リンク角Qが増大するに伴って大きくなる特性を有している。また、このようなトルク伝達比は、出力リンク角Qが0−140°の範囲において、出力リンク角Qが0°のときに1未満であり、出力リンク角Qが90°以上で1よりも大きくなる特性を有していることがよい。特に、出力リンク角Qが0°近傍においてトルク伝達比は0に近い小さな値であることが望ましい。これにより、特に強力なアシストが必要となる蹲踞の姿勢において、膝関節用アクチュエータ63から出力リンクである下腿アーム53へ効果的に動力が伝達される。
【0047】
図9は動作支援装置が備える五節リンク機構のリンク長比とトルク伝達比を説明する図であり、
図10は
図9に示す五節リンク機構の出力リンク角を増大させた状態を示す図である。
図9および10において、入力軸16と連結軸20の中心間距離は、入力リンク11のリンク長L1である。同様に、入力軸16と連結軸17の中心間距離は、固定リンク12のリンク長L2である。連結軸17と連結軸18の中心間距離は、中間リンク13のリンク長L3である。連結軸18と連結軸19の中心間距離は、出力リンク14のリンク長L4である。そして、連結軸19と連結軸20の中心間距離は、媒介リンク15のリンク長L5である。また、Linは、入力軸16の中心から媒介リンク線H
L5に下ろした垂線の長さであり、入力垂線距離Linとする。ここで、媒介リンク線H
L5は、連結軸19と連結軸20の中心間を結ぶ仮想直線である。Loutは、第1歯車21と第2歯車22との噛合点P3から媒介リンク線H
L5に下ろした垂線の長さであり、出力垂線距離Loutとする。入力垂線距離Linと出力垂線距離Loutは、5つのリンク長L1,L2,L3,L4,L5に依存する値である。そして、出力垂線距離Loutを入力垂線距離Linで除した値が、トルク伝達比(=Lout/Lin)となる。
【0048】
次に示す数式1および数式2は、動作支援装置30が備える五節リンク機構10が思案点となる条件式である。数式1および数式2を満たさない範囲で五節リンク機構10を設計することにより、動作支援装置30が備える五節リンク機構10が思案点となることを避けることができる。
【0051】
数式1と数式2において、Q
L0およびQ
Lfは固定リンク線H
L2と出力リンク線H
L4が成す角である。Q
L0は装着者の膝関節が最も伸びたとき(直立姿勢)の固定リンク線H
L2と出力リンク線H
L4が成す角であり、Q
Lfは装着者の膝関節が最も曲がったとき(蹲踞の姿勢)の固定リンク線H
L2と出力リンク線H
L4が成す角である。また、rは1/(1+ny)である。ここでnyは固定リンク12と中間リンク13の相対変位の比率である。本実施形態のように自由度制限機構23として噛み合う歯車21,22を用い、その歯車比が1:1である場合は、ny=1となる。
【0052】
数式1と数式2を用いてリンク長比を求める手法を、媒介リンク長L5を決定する場合について具体例(図示しない)を挙げて次に説明する。はじめに、媒介リンク長L5以外のリンク長(L1,L2,L3,L4)が装着者の身体寸法に合わせて定められる。例えば、入力リンク長L1=60mm,固定リンク長L2=210mm,中間リンク長L3=40mm,出力リンク長L4=50mmである。そして、動作支援装置30の構成に合わせてny,Q
L0,Q
Lfの各値が定められる。例えば、ny=1,Q
L0=0°,Q
Lf=140°である。これらの各数値条件を数式1および数式2に代入して、媒介リンク長L5を求める。すると、数式1では媒介リンク長L5=240mmと算出され、数式2では媒介リンク長L5=258mmと算出される。このように数式1および数式2を用いて算出された媒介リンク長L5の下限より大きく且つ上限より小さい値のなかから、媒介リンク長L5となる値が選択される。ここでは、例えば、数式1の解と数式2の解との間を取って、媒介リンク長L5=250mmが選択される。以上のようにして求められたリンク長比(入力リンク長L1=60mm,固定リンク長L2=210mm,中間リンク長L3=40mm,出力リンク長L4=50mm,媒介リンク長L5=250mm)のトルク伝達比は表1に示す通りである。
【0054】
表1に示すトルク伝達比の出力リンク角に対する変化では、出力リンク角が0°のときにトルク伝達比が0に近い十分に小さな値であり、出力リンク角が90°以上ではトルク伝達比は1より大きい。そして、トルク伝達比は、出力リンク角の増大に伴って増大しており、表1に示す最大の出力リンク角(140°)で最大値となっている。このように、上記手法により定められたリンク長比により、動作支援装置30が備える五節リンク機構10のトルク伝達比は動作支援装置30として好適な設定となる。
【0055】
以上説明した本実施の形態に係る動作支援装置30は、五節リンク機構10を具備する駆動装置8を備えることにより、下腿アーム53(出力リンク14)の広い動作範囲(例えば、出力リンク角Qが0−140°の範囲)にわたって、大腿アーム51と下腿アーム53が同一平面内に配置されてもこれらのアーム51,53が干渉せず且つ思案点とならない。よって、上記下腿アーム53の広い動作範囲にわたって、下腿アーム53へ安定してトルクが伝達されることとなる。これにより、動作支援装置30は、人間の膝関節の0−140°という広い動作範囲に対応することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態に係る動作支援装置30は、駆動装置8を備えることにより、上記広い動作範囲を確保しつつ、より小型化することができる。具体的には、下腿アーム53と大腿アーム51がほぼ同じ矢状面上に配置されることにより、下肢フレーム42の左右方向の厚みの増加が抑制されている。これに加えて、装着者の直立姿勢時に、矢状面視(
図5)において、大腿アーム51の上端P1と、下腿アーム53の下端P2と、大腿アーム51と中間アーム52の連結軸17とが略同一直線上に配置されることにより、下肢フレーム42の前後方向の厚みの増加が抑制されている。なお、
図5において、大腿アーム51の上端P1は、腰部フレーム40と下肢フレーム42との接続部を指している。
【0057】
図5に示すように、大腿アーム51の上端P1は装着者の股関節の側方に位置し、下腿アーム53の下端P2は装着者の踝の側方に位置している。矢状面視において、これらの点(P1とP2)を結ぶ直線は装着者の膝関節よりも背面側を通っており、この直線上に連結軸17および連結軸18がおよそ位置している。このように連結軸17,18が配置されることによって、大腿アーム51、中間アーム52および下腿アーム53により成る下肢フレーム42の基本部分がおおよそ直線形状を成すこととなる。このように下肢フレーム42の基本部分がおおよそ直線形状を成すことで、下肢フレーム42の膝関節部分(中間アーム52)よりも上方に位置する荷重を下肢フレーム42の基本部分に受動的に支持させることができる。そして、上述のように直線状に並んだ大腿アーム51、中間アーム52および下腿アーム53に沿うように入力リンク11および媒介リンク15を形成することが可能である。さらに、出力リンク角が増大した状態において、入力リンク11および媒介リンク15を大腿アーム51に沿わせるように形成することが可能である。このように五節リンク機構10が形成された結果、直立姿勢と蹲踞の姿勢の両方において、下肢フレーム42およびその一部が装着者の前方又は後方へ大きく突出することがなく、下肢フレーム42は装着者の下肢に沿ったコンパクトなものとなる。
【0058】
なお、大腿アームと下腿アームとを膝関節軸で連結して成る従来の動作支援装置において、膝関節軸を装着者の膝関節よりも背面側に配置した場合、装着者が膝を屈曲させるに従って、膝関節軸が配置される装着者の身体の部位から装着者の踝までの距離が減少する。この距離の変化は、装着者の身体と装着具とのズレ等の問題を引き起こす。これに対し、本実施形態に係る動作支援装置30では上記問題が回避又は軽減されている。
図5に示すように、装着者が直立姿勢のときに、矢状面視において、連結軸18、歯車21,22の噛合点P3および下腿アーム53の下端P2がほぼ一直線上に並んでいる。そして、
図6に示すように、装着者が膝を屈曲させるに従って、歯車21,22の噛合点P3と下腿アーム53の下端P2とを結ぶ直線から連結軸18が離れるため、歯車21,22の噛合点P3と下腿アーム53の下端P2とを結ぶ線分の長さが減少する。つまり、装着者が膝を屈曲させるときに、歯車21,22の噛合点P3が配置される装着者の身体の部位から装着者の踝までの距離の減少に伴って、歯車21,22の噛合点P3と下腿アーム53の下端P2とを結ぶ線分の長さも減少するので、装着者の身体と装着具とのズレが回避又は軽減される。
【0059】
なお、本実施の形態に係る動作支援装置30の装着具31では、大腿アーム51および下腿アーム53のそれぞれに、装着者の身体に係留させるための係止具と、並進自由度機構(第1の並進自由度機構55と第2の並進自由度機構57)とを設けている。但し、装着具31を大腿アーム51および下腿アーム53のいずれか一方に並進自由度機構を備え、他方を装着者の身体に係留させる構成であってもよい。いずれの装着具31にせよ、装着者の骨格構造に対する大腿アーム51と下腿アーム53の長尺方向寸法の厳格な調整を不要としながらも、装着者にとって違和感の少ない下肢の動きを提供することができる。
図11は、装着型動作支援装置の大腿フレームを係止具で装着者の大腿部に係留させた状態を示す図であり、(a)は直立姿勢の様子を示す図、(b)は蹲踞の姿勢時の様子を示す図である。
図11(a)(b)に示すように、大腿アーム51を係止具75により装着者の大腿に係留させ且つ足下アーム54を係止具76により装着者の足に係留させる場合には、下腿アーム53に第2の並進自由度機構57を備えれば足りる。このような装着形態は、装着者の歩行を支援するために利用される動作支援装置30に適している。また、中間アーム52を係止具により装着者の下腿部に係留させ且つ足下アーム54を係止具により装着者の足に係留させる場合には、大腿アーム51に第1の並進自由度機構55を備えれば足りる。このような装着形態は、装着者の荷役を支援するために利用される動作支援装置30に適している。
【0060】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0061】
例えば、本発明に係る駆動装置8は、上述の下半身外骨格形状を有する装着型動作支援装置30に限らず、他の装着型動作支援装置にも適用することができる。例えば、装着型動作支援装置は、装着者の膝の屈伸のみを支援するものであってもよい。この場合の動作支援装置の装着具は、大腿装着部(固定リンク12)、膝関節部(中間リンク13)、下腿装着部(出力リンク14)、入力リンク11および媒介リンク15から成る1自由度五節リンク機構10と、入力リンク11へ動力を付与するアクチュエータ9とを含む駆動装置8を備えることとなる。また、例えば、装着型動作支援装置は、装着者の肘の屈伸を支援するものであってもよい。この場合の動作支援装置の装着具は、上腕装着部(固定リンク12)、肘関節部(中間リンク13)、下腕装着部(出力リンク14)、入力リンク11および媒介リンク15から成る1自由度五節リンク機構10と、入力リンク11へ動力を付与するアクチュエータ9とを含む駆動装置8を備えることとなる。
【0062】
さらに、駆動装置8は装着型動作支援装置以外にも、屈曲するアームを備えたあらゆる装置や機械に適用させることができる。
図12は本発明に係る駆動装置を作業用車両のアームに適用させた例を示す図であって、(a)はアームを下げた図であり、(b)はアームを上げた図である。
図12(a)(b)では、作業用車両であるブルドーザーが備えるアームに、駆動装置8を適用させている。具体的には、ブルドーザーのアームが、入力リンク11、固定リンク12、中間リンク13、出力リンク14および媒介リンク15の5つのリンクが順次回転可能に連結されてなる1自由度五節リンク機構10で構成されている。そして、アクチュエータ9により入力リンク11へ回転駆動力が与えられることにより、ブルドーザーのアームを昇降させることができる。
【0063】
また、
図13は本発明に係る駆動装置を産業用ロボットのアームに適用させた例を示す図であって、(a)はアームを下げた図であり、(b)はアームを上げた図である。
図13(a)(b)では、産業用ロボットのアームに、駆動装置8を適用させている。具体的には、産業用ロボットのアームが、入力リンク11、固定リンク12、中間リンク13、出力リンク14および媒介リンク15の5つのリンクが順次回転可能に連結されてなる1自由度五節リンク機構10で構成されている。そして、アクチュエータ9により入力リンク11へ回転駆動力が与えられることにより、産業用ロボットのアームを屈伸させることができる。