(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
===ベンゼン分解触媒の構成===
図1(a)〜
図3を参照しつつ、本実施形態にかかるベンゼン分解触媒1について説明する。尚、
図1(a)は、本実施形態にかかるベンゼン分解触媒1の基材5の表面における白金ナノ粒子2、酸素吸蔵物質3、多孔質物質4の構造を説明するための模式図である。
図1(b)は、本実施形態にかかるベンゼン分解触媒1の構成成分の一例を示す表である。
図2は、本実施形態にかかる基材5の表面の一部を示す斜視図である。
図3は、本実施形態にかかる基材5の全体構造を示す斜視図である。
【0015】
ベンゼン分解触媒1は、揮発性有機化合物(VOC)の一種であるベンゼンを酸化して二酸化炭素(CO
2)と水(H
2O)とに分解する(触媒燃焼反応)。このベンゼン分解触媒1は、特にベンゼン(C
6H
6)について効率よく分解できるように、スクリーニングされたものである。
【0016】
図1(a),(b)に示すように、ベンゼン分解触媒1は、白金ナノ粒子(触媒成分)2と、酸素吸蔵物質3と、多孔質物質4と、基材5とを備えている。
【0017】
白金ナノ粒子2は、白金(Pt)をナノレベルの微粒子に加工したものである。本実施形態では平均直径が2.5nm(標準偏差0.033%)の微粒子に加工されたものを用いている。
【0018】
酸素吸蔵物質3は、酸素を吸収するとともに、吸収した酸素を放出する物質である。本実施形態では、酸素吸蔵物質3として酸化セリウム−酸化ジルコニウム複合酸化物(CeO
2−ZrO
2)を用いている。酸素吸蔵物質3を用いることにより、酸素過剰雰囲気では酸素が吸蔵され、還元雰囲気では酸素が放出されるため、酸素量を適切に調整することができ、触媒燃焼反応を促進できる。
【0019】
多孔質物質4は、白金ナノ粒子2及び酸素吸蔵物質3を担持する物質である。本実施形態では、多孔質物質4として酸化アルミナ(Al
2O
3)を用いている。そして、白金ナノ粒子2及び酸素吸蔵物質3は、例えば含浸法を用いることで多孔質物質4に担持させることができる。
【0020】
基材5は、表面に多孔質物質4がコーティングされる部分であり、本実施形態ではステンレスによって形成されている。なお、耐熱性を有し多孔質物質4がコーティングできれば他の金属であってもよい。
【0021】
ここで、
図2及び
図3を参照して、基材5の構造について具体的に説明する。基材5は、シート状のベース部50と、ベース部50の一方の表面から立ち上がった複数の突出片51とを備えている。
【0022】
ベース部50は、短尺辺と長尺辺とを有する矩形帯状に形成されている。また、各突出片51は、ベース部50の表面から直交する角度で立ち上がっている。このような突出片51は、ベース部50にコ字状の微細な切り込みを形成し、切り込みの内側部分を起こすことで形成できる。この場合、突出片51とベース部50とは一体に形成され、ベース部50における各突出片51の基端部分には突出片51と同じ形状の貫通孔52が形成される。本実施形態において、突出片51の高さは375μmであり、ベース部50の長尺辺方向における突出片51同士の間隔は662μmである。
【0023】
そして、基材5は、突出片51や貫通孔52が形成されたベース部50を、一方の短尺辺を中心として螺旋状に巻回された円柱形状を呈している。
【0024】
本実施形態において、ベース部50は、突出片51を備える表面が内側となるように巻回されている。これにより、各突出片51は、円柱形状の中心軸から放射状に向いて設けられ、半径方向に重なり合うベース部50の隙間(層間)に介在する。これによって、ベース部50の隙間は突出片51の高さ以上の間隔に維持され、通気性が確保される。この例において、基材5の高さ(ベース部50の短尺辺の長さ)hは10.0mmとなっている。また、基材5は、螺旋状に12ターン巻回され、端面の直径方向の長さdが12.8mmとなっている。
【0025】
次に、上記構成のベンゼン分解触媒1に対し、ベンゼンを含んだ被処理流体を反応させてベンゼンを分解させる場合の作用について説明する。
【0026】
このベンゼン分解触媒1でベンゼンの分解を行う場合、上記被処理流体を、基材5の一方の端面側から他方の端面側に向かって流す。基材5の層間には、白金ナノ粒子2及び酸素吸蔵物質3を担持する多孔質物質4がコーティングされた突出片51が介在しているので、被処理流体が突出片51と衝突する際に触媒燃焼反応が生じて、ベンゼンが分解される。
【0027】
この際、突出片51は、被処理流体の入口側である基材5の一方の端面側から、被処理流体の出口側である他方の端面側に亘って異なる位置に多数配置されている。したがって、被処理流体を流すための流路を基材5の内部全体に形成できる。これによって、基材5の内部における目詰まりを防止できる。
【0028】
また、突出片51によって、被処理流体に対する適度な流路抵抗を与えることができるし、被処理流体の流れ方向に変化を与えることもできる。さらに、貫通孔52によって層間を跨いで被処理流体を流すことができる。これにより、被処理流体は、基材5の内部を三次元的に流れることができる。
【0029】
以上より、ベンゼン分解触媒1で被処理流体に含まれるベンゼンを分解させた場合には、被処理流体を基材5の内部全体に行き渡らせることができ、内部全体で触媒燃焼反応が生じるため、ベンゼンを効率よく分解することができる。
【0030】
===ベンゼン分解触媒によるベンゼン分解確認試験について===
前述の作用効果を確認するため、ベンゼン分解触媒1によるベンゼンの分解確認試験を行った。以下、
図4及び
図5を参照しつつ、分解確認試験について説明する。
図4は、分解確認試験に用いた実験装置10を示す模式図である。
図5は、分解確認試験の実験手順を説明するための図である。
【0031】
ベンゼン分解触媒1の触媒燃焼反応において、ベンゼンの濃度及び被処理流体の空間速度SVは、ベンゼン分解性能を評価する上で重要なパラメータとなる。そこで、この分解確認試験では、ベンゼンの濃度変化によるベンゼンの分解率の影響と、被処理流体の空間速度SVの変化によるベンゼンの分解率の影響とをそれぞれ確認した。尚、空間速度SVとは、ベンゼン分解触媒1を通過する際の単位時間あたりの被処理流体の体積(標準状態)を、ベンゼン分解触媒1の体積で除したものである。
【0032】
先ず、
図4を参照しつつ、分解確認試験を行うための実験装置10について説明する。実験装置10では、反応管11内にベンゼン分解触媒1が配置されている。具体的には、ベンゼン分解触媒1は、この反応管11の内部において、基材5の一方の端面側から被処理流体が流入し、他方の端面側から被処理流体が流出する状態で配置されている。
【0033】
反応管11は電気炉12内に設置されている。この電気炉12は、熱電対温度調節器13を備え、この熱電対温度調節器13によって調節された温度で反応管11を加熱する。つまり、電気炉12によって、ベンゼン分解触媒1による触媒燃焼反応の反応温度が調節される。
【0034】
また、反応管11は、各種ガスの供給管18A〜18DとそれぞれMFC(Mass Flow Controller)14を介して接続されている。そして、MFC14によって、反応管11に供給されるガスの流量が調整される。つまり、MFC14によって、空間速度SVが所定速度(後述する)となるように調整される。
【0035】
尚、反応管11に供給される各種ガスは、窒素によって希釈され後述する所定の濃度に調整されたベンゼン(C
6H
6)や、バランスガスとしての空気(Air)、窒素(N
2)、酸素(O
2)である。そして、窒素が供給管18Aを通じて、酸素が供給管18Bを通じて供給される。同様に、ベンゼンが供給管18Cを通じて、空気が供給管18Dを通じて供給される。
【0036】
また、実験装置10は、前述した各種ガスが反応管11をバイパスしてクロマトグラフ15、16に供給されるように切り替えることが可能なバイパス管17を備えている。
【0037】
そして、反応管11を通過した後の被処理流体に含まれるベンゼンや触媒燃焼反応によって生成したCO
2の定量分析は、TCD付きのクロマトグラフ15及びFID付きのクロマトグラフ16によって行った。
【0038】
次に、
図5を参照しつつ、実験装置10での分解確認試験の手順について説明する。
【0039】
先ず、供給管18AからN
2ガスを反応管11に毎分200cc(標準状態)ずつ供給しながら、電気炉12によって、反応管11の温度を所定の温度T0に上昇させる。反応管11が温度T0で安定したならば、流路をバイパス管17に切り替え(t1)、MFC14によって、被処理流体が実験条件の組成(後述する)となるように各ガスの量を調整する。
【0040】
実験条件の組成となったならば、ガスクロマトグラフ15、16による測定を繰り返し行う(ベース分析a,b)。これらの測定結果から、被処理流体が実験条件の組成となっているか否かを確認する。そして、反応管11が温度T0に達してから所定時間(60分)が経過したならば、流路をバイパス管17から反応管11へ切り替える(t2)。
【0041】
流路を反応管11に切り換えた後、ガスクロマトグラフ15、16による測定を繰り返し行う(温度T0での確認分析c〜e)。これらの測定結果から、温度T0におけるベンゼンの分解性能を確認する。ここでは確認分析c〜eの平均値から分解性能を確認する。
【0042】
確認分析c〜eが終了したならば、反応管11の温度を上昇させて所定温度T1に設定する(t3〜t4)。この場合、電気炉12に対する通電量を増やすことで反応管11の温度を上昇させる。そして、温度T1を60分保持した後、ガスクロマトグラフ15、16による測定を繰り返し行う(温度T1での確認分析f〜h)。これらの測定結果から、温度T1におけるベンゼンの分解性能を確認する。ここでは、温度T0のときと同様に、確認分析f〜hの平均値から分解性能を確認する。
【0043】
確認分析f〜hが終了したならば、以後は同様の手順で他の温度の確認分析を行う(t5〜)。そして、必要な温度まで確認が終了したならば、一連の確認試験を終了する。
【0044】
<<<ベンゼンの濃度の変化と、反応温度に対するベンゼンの分解率との関係について>>>
前述したように、ベンゼンの濃度はベンゼン分解触媒1のベンゼン分解性能を評価する上で重要なパラメータとなる。そこで、ベンゼンの濃度を異ならせた場合における、ベンゼンの分解率と反応温度との関係、並びに、反応速度と反応温度との関係について確認した。確認結果を
図6(a),(b)に示す。
【0045】
この確認試験において、被処理流体中のベンゼンの濃度は、30ppm、100ppm、300ppmの3種類とした。そして、反応管11での反応温度は80℃から180℃まで20℃毎に変化させた。また、被処理流体の空間速度SVは12000h
−1とした。
【0046】
図6(a)に示すように、このベンゼン分解触媒1では、被処理流体中のベンゼンの濃度が30ppmであれば、140℃の反応温度でベンゼンを100%分解できることが確認された。また、ベンゼンの濃度が100ppm、300ppmであれば、共に160℃の反応温度でベンゼンを100%分解できることが確認された。
【0047】
以上より、ベンゼンの濃度が30〜300ppmの場合、このベンゼン分解触媒1では、140℃から160℃程度の反応温度でベンゼンを分解できることが確認された。また、ベンゼンの濃度が高くなるにつれ、ベンゼンを100%分解できる反応温度が高温側にシフトすることも確認された。さらに、ベンゼンを分解する触媒燃焼反応は、反応温度が100℃から160℃の間で急激に進行することも確認された。
【0048】
図6(b)に示すように、このベンゼン分解触媒1では、反応温度が160℃以上になると何れの濃度でも反応速度が収束することが確認された。そして、反応温度が160℃であってベンゼンの濃度が30ppmの場合、反応速度は約18μmol/cm
3・sに達しなかった。また、ベンゼンの濃度が100ppmの場合、反応速度は約50μmol/cm
3・sであり、ベンゼンの濃度が300ppmの場合、反応速度は約160μmol/cm
3・sであった。このように、ベンゼンの濃度が高い程に反応速度が高くなることが確認された。すなわち、被処理流体中のベンゼンの濃度が高いほど、触媒燃焼反応の反応速度が速く、ベンゼンの分解がより速やかに行われることが確認された。
【0049】
<<<空間速度SVの変化と、反応温度に対するベンゼンの分解率との関係について>>>
被処理流体の空間速度SVもまたベンゼン分解触媒1のベンゼン分解性能を評価する上で重要なパラメータとなる。そこで、空間速度SVを異ならせた場合における、ベンゼンの分解率と反応温度との関係、並びに、反応速度と反応温度との関係についても確認をした。確認結果を
図7(a),(b)に示す。
【0050】
この確認試験において、ベンゼン分解触媒1に対する被処理流体の空間速度SVは、6000h
−1、12000h
−1、24000h
−1の3種類とした。そして、反応管11での反応温度は、80℃から200℃まで20℃毎に変化させた。また、被処理流体中のベンゼンの濃度は300ppmとした。
【0051】
図7(a)に示すように、このベンゼン分解触媒1では、空間速度SVが6000h
−1、12000h
−1の場合、共に160℃の反応温度でベンゼンを100%分解できることが確認された。また、空間速度SVが24000h
−1の場合、200℃の反応温度でベンゼンを95%分解できることが確認された。
【0052】
以上より、ベンゼンの濃度が300ppmであって空間速度SVが6000〜24000h
−1の場合、このベンゼン分解触媒1では、160℃から200℃程度の反応温度でベンゼンを分解できることが確認された。なお、空間速度SVが高すぎるとベンゼンの分解能が低下することも確認された。加えて、空間速度SVが大きくなるにつれ、ベンゼンを約100%分解できる反応温度も高温側にシフトすることも確認された。
【0053】
図7(b)に示すように、このベンゼン分解触媒1では、空間速度SVが6000〜12000h
−1の場合、反応温度が160℃以上になると反応速度が収束することが確認された。また、空間速度SVが24000h
−1の場合、反応温度180℃と200℃の間における反応速度の増加率が、反応温度140℃と180℃の間の増加率よりも小さくなっていることが確認された。
【0054】
そして、空間速度SVが6000h
−1の場合、反応温度180℃での反応速度は約80μmol/cm
3・sであり、空間速度SVが12000h
−1の場合、反応温度180℃での反応速度は約160μmol/cm
3・sであった。また、空間速度SVが24000h
−1の場合、反応温度200℃での反応速度は約300μmol/cm
3・sであった。
【0055】
このように、被処理流体の空間速度SVが高い程に反応速度が高くなり、ベンゼンの分解がより速やかに行われることが確認された。
【0056】
<<<カーボン基準の物質収支について>>>
また、ベンゼン分解触媒1による触媒燃焼反応によって、ベンゼンがCO
2に転化していることを確認すべく、ベンゼンの分解確認試験を行った。
【0057】
この確認試験も実験装置10を用いて行った。具体的には、反応管11に供給する被処理流体量を毎分258cc(標準状態)、空間速度SVを12000h
−1、被処理体中のベンゼンの濃度を300pmとした実験条件において、1回目の測定であるRUN1では、反応温度の範囲を100℃−160℃とし、2回目の測定であるRUN2では、反応温度の範囲を100℃−180℃として、分解確認試験を行った。
【0058】
この分解確認試験でも、反応管11を通過した後の被処理流体に含まれるベンゼンや触媒燃焼反応によって生成したCO
2の定量分析を、TCD付きのクロマトグラフ15及びFID付きのクロマトグラフ16によって行った。そして、この定量分析結果から、反応温度とベンゼンの分解率との関係、及び、反応温度と物質収支との関係を求めた。反応温度とベンゼンの分解率との関係を
図8(a)に示す。また、反応温度と物質収支との関係を
図8(b)に示す。
【0059】
図8(a)に示す反応温度とベンゼンの分解率との関係については、
図6(a)の確認試験と同じような結果が得られた。すなわち、反応温度120℃から分解率の急激な上昇が見られ、160℃以上でほぼ全量が分解されることが確認された。そして、被処理流体中のベンゼン濃度と分解率とから、分解されたベンゼンの炭素量を算出し、測定されたCO
2に由来する炭素量と比較することで、物質収支を求めた。各反応温度において物質収支が0.7以上であることから、このベンゼン分解触媒1によって、被処理流体中のベンゼンの多くがCO
2にまで分解されていることが確認された。
【0060】
<<<市販の白金系触媒と、ベンゼン分解触媒との分解性能の比較について>>>
ここで、ベンゼン分解触媒1とベンゼン分解性能を比較するため、市販の白金系触媒についても、ベンゼン分解触媒1と同様に、実験装置10による分解確認試験を行った。尚、
図9は、被処理流体中のベンゼンの濃度を300ppm、空間速度SVを12000h
−1とした場合の、反応温度とベンゼンの分解率との関係を示している。また、この分解確認試験は、ベンゼン分解性能をより確実に比較するため、ベンゼン分解触媒1に担持される白金ナノ粒子2と、市販の白金触媒とが同等の密度となる条件の下で行っている。
【0061】
図9に示すように、ベンゼン分解触媒1は、約160℃の反応温度において、ベンゼンを100%分解できることが確認された。この結果は、先に説明した確認試験と同じ結果である。これに対して、市販の白金系触媒では、約260℃の反応温度においても、ベンゼンを約80%しか分解できていないことが確認された。
【0062】
また、
図10(a)は、ベンゼン濃度を1%とし、空間速度SVを10000h
−1、20000h
−1、30000h
−1、40000h
−1とした場合における市販の白金系触媒の反応温度とベンゼンの分解率との関係を示すグラフである。
図10(b)は、空間速度を30000h
−1とし、ベンゼン濃度を1%、3%、5%、7%、10%とした場合における市販の白金系触媒の反応温度とベンゼンの分解率との関係を示すグラフである。
【0063】
図10(a)から判るように、市販の白金系触媒では、例えば、空間速度SVを10000h
−1とし、ベンゼンの濃度を1%とした場合、ベンゼンを100%分解するためには、反応温度を280℃(553K)にする必要がある。また、
図10(b)から判るように、市販の白金系触媒では、例えば、空間速度SVを30000h
−1とし、ベンゼンの濃度を1%とした場合、ベンゼンを100%分解するためには、反応温度を360℃にする必要がある。また、
図10(b)から判るように、市販の白金系触媒では、例えば、ベンゼンの濃度を、他の条件に比べて低濃度である1%とした場合、反応温度を500℃にまで上昇させても、ベンゼンを50%程度しか分解することができないことが確認された。
【0064】
以上より、本実施形態のベンゼン分解触媒1では、市販の白金系触媒に比べて十分に低い反応温度(140〜180℃)であっても、高いベンゼン分解性能が発揮されることが確認された。また、ベンゼンの濃度が低い場合(30ppm)であっても、ベンゼンの濃度が高い場合(300ppm)と同様に、ベンゼンを100%分解できることが確認された。このように、本実施形態のベンゼン分解触媒1は、低温で効率的にベンゼンを分解することができる。このため、触媒燃焼反応にかかるエネルギーの消費量を低減することや、コストを削減することができる。
【0065】
===その他の実施形態===
前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0066】
まず、酸素吸蔵物質としてCeO
2-ZrO
2を例示したが、200℃前後の反応温度に耐えるものであって、多孔質物質に担持されるものであれば、酸素吸蔵物質として用いることができる。また、多孔質物質に関してAl
2O
3を例示したが、200℃前後の反応温度に耐えるものであって、白金ナノ粒子や酸素吸蔵物質を担持できればAl
2O
3に限られない。加えて、触媒成分としての白金ナノ粒子に関し、平均粒子径が2.5nmのものを例示したが、ナノレベルの粒子であれば同様に用いることができると解される。
【0067】
前述したベンゼン分解触媒1では、基材5が、ベース部50の一方の短尺辺を中心として螺旋状に巻回された円柱形状を呈していることとした。しかし、特にこれに限定されるものではなく、例えば、基材5は、複数のベース部50を重ね合わせた積層構造であることとしてもよい。
【0068】
また、前述したベンゼン分解触媒1では、基材5の高さhを10.0mmとしたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、基材の高さhは20.0mm、30.0mmとしてもよい。