(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
間接活線作業においては、電線を動かないように支え、ボルトやナット、テープ類等を把持し、または、電線の癖を直す等の多くの作業に絶縁操作棒(絶縁ヤットコ)が用いられる。
【0003】
現在広く用いられている一般的な絶縁操作棒は、絶縁性を有する材料から形成された長尺な棒状の主操作棒と、主操作棒の先端部に取り付けられ、開閉することにより物体を狭持することができる狭持部と、主操作棒の基端側に取り付けられ、狭持部の開閉を操作する操作レバーと、狭持部と操作レバーとを接続し、操作レバーの動きを狭持部に伝達する補助操作棒とを備えている。
【0004】
狭持部は一対の狭持片を備えている。一対の狭持片は、それらの基端側が互いに回動可能に連結され、先端側が開閉する。また、従来の絶縁操作棒において、補助操作棒は例えば繊維強化プラスチック等の絶縁性を有する硬質な材料により長尺な棒状に形成されている。また、補助操作棒は、主操作棒の基端側から先端部にかけて伸長し、補助操作棒において、主操作棒の基端側に位置する端部が操作レバーに接続され、主操作棒の先端側に位置する端部が一方の狭持片に接続されている。
【0005】
作業者が操作レバーを握り込んだとき、操作レバーにより補助操作棒が引っ張られ、これにより、補助操作棒が接続された一方の狭持片が所定の方向に動き、狭持部が閉じる。一方、作業者が操作レバーの握りを緩めたときには、操作レバーの近傍に設けられたばねにより補助操作棒が押され、これにより、補助操作棒が接続された一方の狭持片が、上記所定の方向とは反対の方向に動き、狭持部が開く。
【0006】
また、下記の特許文献1には、狭持部(把持具)が主操作棒の先端部に屈折自在に取り付けられた絶縁操作棒が記載されている。ここで、説明の便宜上、「縦方向」および「横方向」という用語を次のような意味で用いることとする。すなわち、狭持部は、主操作棒の軸線方向と交差する方向に開閉する。この狭持部が開閉する方向を「縦方向」という。また、主操作棒の軸線方向および縦方向の双方と略直交する方向(または、主操作棒の軸線と、当該軸線と交差して縦方向に伸長する直線との双方を含む面と略直交する方向)を「横方向」という。特許文献1に記載された絶縁操作棒は、狭持部が主操作棒の先端部に横方向に屈折自在に取り付けられている。
【0007】
狭持部を横方向に屈折させることができれば、物体の位置や作業者の立ち位置等の現場の様々な状況に応じて狭持部を横方向に傾け、狭持部の向きを、物体を挟みやすい向きに設定することができる。これにより、作業者は、物体を確実に支持することができる。また、作業者は、物体を支持するために無理な姿勢をとらなくてもよくなるので、作業時の疲労が軽減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載された絶縁操作棒には、狭持部を横方向に屈折させると狭持部が開閉し難くなるという問題がある。
【0010】
すなわち、
図8(A)は特許文献1に記載された絶縁操作棒を示している。
図8(A)に示すように、特許文献1に記載された絶縁操作棒100は、主操作棒101、狭持部102、操作レバー103、補助操作棒104および屈折部105、106を備えている。屈折部105、106により、狭持部102を横方向に屈折させることができる。
【0011】
図8(B)は、
図8(A)と90度異なる方向から見た絶縁操作棒100である。
図8(B)に示すように、作業者が操作レバー103を操作すると、補助操作棒104が移動し、これに連動して狭持部102が開閉する。
図8(B)中において矢示で示す通り、狭持部102が横方向に屈折していないときには、操作レバー103の操作による補助操作棒104の移動方向と狭持部102の開閉方向とは同じである。したがって、補助操作棒104の移動が狭持部102に円滑に伝達されるので、作業者は操作レバー103を操作して狭持部102を容易に開閉させることができる。
【0012】
一方、
図8(C)に示すように、屈折部105、106により狭持部102を屈折させると、
図8(C)中において矢示で示す通り、操作レバー103の操作による補助操作棒104の移動方向と狭持部102の開閉方向とが異なる。このため、補助操作棒104の移動を狭持部102に円滑に伝達することができなくなる。この結果、操作レバー103の操作により狭持部102を開閉することが困難になる。
【0013】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、狭持部を横方向に傾けた(屈折させた)状態でも、操作部の操作により狭持部を円滑に開閉させることができる絶縁操作棒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1の絶縁操作棒は、絶縁性を有する材料により棒状に形成された操作棒本体と、前記操作棒本体の先端側に配置され、前記操作棒本体の軸線と交差する第1の方向に開閉することにより物体を狭持することができる狭持部と、前記狭持部を前記操作棒本体の先端部に支持する狭持部支持体と、前記操作棒本体の基端側に設けられ、前記狭持部の開閉を操作する操作部と、屈曲可能なワイヤ状に形成され、前記操作部と前記狭持部とを接続し、前記操作部が操作されたときに前記操作部の動きに伴って移動し、前記操作部の動きを前記狭持部に伝達する伝達部材と、前記伝達部材を前記操作棒本体の軸線方向に移動可能に前記操作棒本体に支持する伝達部材支持体とを備え、前記狭持部支持体は、前記操作棒本体の軸線方向および前記第1の方向の双方と略直交する第2の方向における前記狭持部の傾き角度を可変に設定する傾き角度設定機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第2の絶縁操作棒は、上述した本発明の第1の絶縁操作棒において、前記狭持部は、基端側が回動可能に互いに連結され、先端側が前記第1の方向に開閉する一対の狭持片と、前記一対の狭持片間に配置され、前記一対の狭持片の先端側を
開く方向に付勢する弾性部材とを備えていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第3の絶縁操作棒は、上述した本発明の第1または第2の絶縁操作棒において、前記伝達部材支持体は、筒状に形成され、内部に前記伝達部材が移動可能に挿入されたガイド部材と、前記ガイド部材を前記操作棒本体に沿うように前記操作棒本体に固定する固定部材とを備えていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第4の絶縁操作棒は、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの絶縁操作棒において、前記傾き角度設定機構は、凹状に形成された第1の係合部と、凸状に形成され、前記第1の係合部に揺動自在に係合した第2の係合部と、ユーザによる操作に従い、前記第1の係合部に対して前記第2の係合部を揺動不能に固定する止め部とを備えていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第5の絶縁操作棒は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの絶縁操作棒において、前記伝達部材は絶縁材料により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、狭持部を横方向に傾けた状態でも、操作部の操作により狭持部を円滑に開閉させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1ないし
図5は本発明の第1の実施形態を示している。すなわち、
図1は本発明の第1の実施形態による絶縁操作棒の全体を示し、
図2および
図3は当該絶縁操作棒において狭持部、狭持部支持体、伝達部材等を拡大して示している。
図4は狭持部の開閉動作を示し、
図5は狭持部の傾き角度の設定動作を示している。
【0022】
図1において、本発明の第1の実施形態による絶縁操作棒1は、例えば繊維強化プラスチック(FRP)等の絶縁性を有する材料により長尺な棒状に形成された操作棒本体2を備えている。操作棒本体2には、操作棒本体2を伝って流れる雨水等を切るための雨切りつば3、および操作棒本体2の先端部からの安全な離隔距離を示す安全限界つば4が設けられている。
【0023】
また、絶縁操作棒1は、物体を狭持して把持するための狭持部5を備えている。狭持部5は操作棒本体2の先端側に配置されている。また、狭持部5は、一対の狭持片6、7および弾性部材としてのばね8を備えている。
【0024】
図2または
図3に示すように、各狭持片6、7は例えばアルミニウム合金により形成されている。狭持片6、7の基端側は連結部材9を介して回動可能に互いに連結されている。また、狭持片6、7の先端側は、縦方向(第1の方向)に開閉する。すなわち、一方の狭持片6の先端側が他方の狭持片7の先端側に縦方向に離間した状態が、狭持片6、7の先端側が開いた状態である。また、一方の狭持片6の先端側が他方の狭持片7の先端側に縦方向に接近し、または接触した状態が、狭持片6、7の先端側が閉じた状態である。また、以下の各実施形態において、「縦方向」とは、操作棒本体2の軸線Xに交差する方向をいう。
【0025】
また、一方の狭持片6の基端側には、後述する伝達部材21の一端部が接続された接続部10が設けられている。接続部10は、伝達部材21の移動を一方の狭持片6に伝達する機能を有している。
【0026】
ばね8は、例えばトーションばねであり、狭持片6、7間に配置され、狭持片6、7の先端側を開く方向に付勢している。狭持片6、7間にこのようにばね8を設けたことにより、後述するように、伝達部材21が屈曲可能なワイヤ状に形成されている場合でも、作業者が操作レバー15の握りを緩めたときに、狭持片6、7を自動的に開くことができる。
【0027】
また、絶縁操作棒1は、狭持部5を操作棒本体2の先端部に支持する狭持部支持体11を備えている。狭持部支持体11は、それぞれ例えばアルミニウム合金等により形成された基部12および可動部13を備えている。
【0028】
基部12は、外形円柱状に形成され、操作棒本体2の先端部に固定されている。
【0029】
可動部13は、
図3に示すように、胴部13Aの先端側に一対の支持板13Bを設けることにより形成されている。また、一対の支持板13B間には連結部材9を介して一対の狭持片6、7が支持されている。一方の狭持片6は、可動部13に対して回動可能に支持されている。他方の狭持片7は、可動部13に対して回動不能に支持されている。例えば、支持板13Bと他方の狭持片7との互いに対向(接触)するそれぞれの面に凹凸(図示せず)が形成され、これら凹凸の係合により他方の狭持片7が支持板13Bに対して回動不能に支持されている。また、可動部13は基部12と横方向に揺動可能かつ分離不能に結合している。この可動部13と基部12との結合については後述する。
【0030】
また、絶縁操作棒1は、
図1に示すように、狭持部5の開閉を操作するための操作部としての操作レバー15を備えている。操作レバー15は、操作棒本体2の基端側にレバー支持部19を介して支点16を基準に回動可能に支持されている。操作レバー15は、狭持部5を操作するときに作業者が手で握る握り部17と、伝達部材21の他端部が接続された接続部18が設けられている。接続部18は、操作レバー15の回動を伝達部材21に伝達する機能を有している。また、操作レバー15とレバー支持部19との間には、握り部17の先端部が操作棒本体2から離間する方向に操作レバー15を回動させる力を操作レバー15に付与するばね等の弾性部材(図示せず)が設けられている。
【0031】
また、絶縁操作棒1は、操作レバー15と狭持部5とを接続し、操作レバー15の動作を狭持部5に伝達する伝達部材21を備えている。伝達部材21は、屈曲可能なワイヤ状、線状、または紐状に形成されている。伝達部材21はその全体が絶縁性を有する材料により形成されている。伝達部材21として例えばナイロン等の化学繊維により形成されたロープ等を用いることができる。伝達部材21を絶縁性を有する材料により形成することにより、感電を防止し、作業者の安全を確保することができる。また、伝達部材21は、その一端部が連結部材22を介して狭持片6の接続部10に接続され、他端部が連結部材23を介して操作レバー15の接続部18に接続されている。
【0032】
また、絶縁操作棒1は、伝達部材21を操作棒本体2の軸線方向に移動可能に操作棒本体2に支持する伝達部材支持体25を備えている。伝達部材支持体25はガイド部材26および複数の固定部材27を備えている。
【0033】
ガイド部材26は、例えば繊維強化プラスチック等の絶縁性を有する材料により長尺な筒状に形成されている。ガイド部材26は、操作棒本体2の基端側における操作レバー15が設けられた位置の近傍から、操作棒本体2の先端側における狭持部5が設けられた位置の近傍までの間を伸長している。また、ガイド部材26の内部には、伝達部材21が挿入されている。伝達部材21は若干の遊びをもってガイド部材26に挿入されているため、伝達部材21はガイド部材26内を、操作棒本体2の軸線X方向に移動することができる。ガイド部材26を設けたことにより、伝達部材21の移動経路を確保でき、また、伝達部材21の移動方向を規制できる。これにより、伝達部材21の移動の円滑性を確保することができる。また、ガイド部材26を設けたことにより、伝達部材21を保護し、伝達部材21に障害物が衝突して伝達部材21が損傷するのを防止することができる。また、ガイド部材26には、雨水等がガイド部材26を伝って流れるのを防止するための雨切りつば28が設けられている。
【0034】
固定部材27は、ガイド部材26を操作棒本体2に沿うように操作棒本体2に固定する部材である。各固定部材27は、例えばアルミ合金等の材料により形成され、操作棒本体2から、操作棒本体2の軸線Xと直交する方向(縦方向)に伸長している。また、各固定部材27は、その一方の端部が操作棒本体2の外周面を包囲することにより操作棒本体2に固定されている。また、各固定部材27の他方の端部はガイド部材26の外周面を包囲し、これによりガイド部材26は固定部材27に固定されている。本実施形態においては、3つの固定部材27が設けられ、これら固定部材27により、ガイド部材26の基端部、中間部および先端部がそれぞれ支持されている。
【0035】
また、
図1に示すように、ガイド部材26の基端部26Aは、操作レバー15の接続部18から離れた位置に配置されている。これにより、操作レバー15の接続部18がガイド部材26に衝突することがなく、また、操作レバー15の回動に伴う接続部18の移動時に、ガイド部材26の基端部26Aにおいて伝達部材21が大きく屈曲することがない。また、ガイド部材26の先端部26Bは、狭持片6の接続部10から離れた位置に配置されている。これにより、接続部10がガイド部材26に衝突することがなく、また、狭持部5の開閉に伴う接続部10の移動時に、ガイド部材26の先端部26Bにおいて伝達部材21が大きく屈曲することがない。
【0036】
また、絶縁操作棒1は、狭持部5の横方向(第2の方向)における傾き角度を可変に設定する傾き角度設定機構31を備えている。以下、各実施形態において、「横方向」とは、操作棒本体2の軸線X方向および上記縦方向の双方と略直交する方向(または、操作棒本体2の軸線Xと、軸線Xと交差して縦方向に伸長する直線との双方を含む面と略直交する方向)をいう。
【0037】
図2または
図3に示すように、傾き角度設定機構31は、狭持部支持体11の基部12と可動部13との間に形成されている。すなわち、傾き角度設定機構31は、基部12に形成された第1の係合部としての凹状係合部32と、可動部13に形成された第2の係合部としての球状係合部33と、基部12に設けられた止め部34とを備えている。
【0038】
凹状係合部32は、
図2において基部12の上部に形成され、基部12の上面に開口した凹部であり、球状係合部33の端部の球状の形状に対応するように球状の内面を有している。また、基部12の上部において球状係合部33の横方向両側には、球状係合部33の傾き方向を横方向に規制するための一対の凹部35(一方のみ図示)が形成されている。
【0039】
球状係合部33は、
図2において、可動部13から下方に突出した凸状に形成され、下端部が球状に形成されている。球状係合部33は、凹状係合部32内に揺動自在にかつ分離不能に係合している。
【0040】
止め部34は、ユーザによる操作に従い、凹状係合部32に対して球状係合部33を揺動不能に固定する部材である。止め部34は、雄ねじ部と当該雄ねじ部の一端部に固定されたつまみ部を有している。基部12の周部には雌ねじが切られた孔が形成され、当該孔に、止め部34の雄ねじ部の他端側が挿入され螺着されている。基部12の内部には、止め部34を締め付けたときに球状係合部33を揺動不能にし、止め部34を緩めたときに球状係合部33を揺動自在にする機構が形成されている。例えば、作業者が、止め部34を締付方向に回転させると、球状係合部33が凹状係合部32の内面に強く押し付けられ、球状係合部33が揺動不能となる。一方、作業者が、止め部34を緩ませる方向に回転させると、球状係合部33が凹状係合部32の内面から離れ、またはきわめて弱い力で接触した状態になり、球状係合部33が揺動自在になる。
【0041】
傾き角度設定機構31を、凹状係合部32に球状係合部33を係合する構成としたので、作業者は、止め部34を緩めた状態にして、狭持部5を手で簡単に傾けることができ、狭持部5の傾き角度の設定を迅速に行うことができる。
【0042】
このような構成を有する絶縁操作棒1において、作業者は、操作レバー15を握り込み、または握りを緩めることにより、伝達部材21を
図1において下方向、または上方向に移動させ、狭持部5を閉じ、または開くことができる。具体的に説明すると、作業者が操作レバー15の握り部17を握り込むと、操作レバー15とレバー支持部19との間に設けられた図示しないばねの力に抗し、握り部17の先端部が操作棒本体2に接近する方向に操作レバー15が回動する。これに伴う接続部18の移動により、伝達部材21が
図1中の下方向に引っ張られて下方向に移動する。これにより、狭持部5に設けられたばね8の力に抗し、一方の狭持片6の接続部10が伝達部材21により下方向に引っ張られ、
図4に示すように、一方の狭持片6の先端側が他方の狭持片7の先端側に接近または接触し、狭持部5が閉じる。
【0043】
一方、作業者が操作レバー15の握り部17の握りを緩め、または握り部17から手を放すと、操作レバー15とレバー支持部19との間に設けられた図示しないばねの力により、握り部17の先端部が操作棒本体2から離れる方向に操作レバー15が回動する。これと同時に、狭持部5のばね8の力により、
図2に示すように、一方の狭持片6の先端側が他方の狭持片7の先端側から離間し、狭持部5が開く。このような操作レバー15および狭持片6の動作に伴い、伝達部材21が
図1において上方向に移動する。
【0044】
また、絶縁操作棒1において、作業者は、狭持部5の横方向における傾き角度を任意に設定することができる。具体的に説明すると、作業者は、止め部34を緩め、操作棒本体2に対して狭持部5を横方向における任意の方向(
図3中の左方向または右方向)に傾ける。これにより、狭持部5は、可動部13と共に、傾き角度設定機構31が配置された位置を支点にして横方向に屈曲する。これに伴い、伝達部材21の先端側も同じく横方向に屈曲する。作業者は、狭持部5を傾けた後、止め部34を締め付ける。止め部34の締付により、凹状係合部32内において球状係合部33が揺動不能となり、例えば、
図5に示すように、狭持部5が横方向に傾いた状態で固定される。
【0045】
また、作業者は、狭持部5の横方向における傾き角度を任意に設定することができる。
図5は狭持部5の傾き角度をおよそ60度に設定した場合を示しているが、作業者は、狭持部5の傾き角度を、0度よりも大きく90度以下の範囲のいずれの角度にも設定することができる。また、図示しないが、狭持部5を
図5とは反対の方向に傾けることもできる。
【0046】
また、例えば
図5に示すように狭持部5が横方向に傾いた状態でも、作業者は、操作レバー15を操作することにより、狭持部5が横方向に傾いていない場合と同様に狭持部5を円滑に開閉させることができる。すなわち、操作レバー15の動作を狭持部5に伝達する伝達部材21が屈曲可能なワイヤ状に形成されており、また、狭持部支持体11に設けられた傾き角度設定機構31の位置と対応する位置に、ガイド部材26の先端部26Bが配置され、この位置において、伝達部材21の先端側がガイド部材26から外部に出ている。これにより、狭持部5が横方向に傾くと、これとほぼ同じ方向に伝達部材21の先端側が屈曲する。また、このように伝達部材21の先端側が屈曲した状態では、伝達部材21の基端側が
図5中の矢示D1方向に移動すると、伝達部材21の先端側が
図5中の矢示D2方向に移動する。すなわち、ガイド部材26の先端部26Bの位置で、伝達部材21の移動方向が矢示D1方向から矢示D2方向に変換される。また、伝達部材21の屈曲部分において、伝達部材21がガイド部材26の先端部26Bに接触することによりわずかに摺動抵抗が生じるものの、この摺動抵抗は実質的に見て伝達部材21の移動を妨げない。したがって、伝達部材21はその先端部が屈曲した状態でも円滑に移動することができる。
【0047】
絶縁操作棒1によれば、狭持部5を横方向に大きく傾けた状態でも操作レバー15の操作に従って狭持部5を円滑に開閉することができるので、作業者は、絶縁操作棒1の狭持部5で物体を作業者から見て左方向または右方向から挟んで把持することができる。したがって、作業者は、例えば高所作業車の狭い作業床において立ち位置を大きく変えることができない場合でも、無理な姿勢をとることなく簡単にかつ確実に物体を把持または支持することができる。
【0048】
図6は、本発明の第2の実施形態による絶縁操作棒において、狭持部、狭持部支持体、伝達部材等を示している。
図6に示すように、本発明の第2の実施形態による絶縁操作棒においては、伝達部材支持体43のガイド部材44が、狭持部支持体41の傾き角度設定機構31に対応する位置において屈曲可能に形成されている。
【0049】
すなわち、ガイド部材44は、基端側部材45と、先端側部材46と、屈曲機構47とを備えている。基端側部材45および先端側部材46はいずれも例えば繊維強化プラスチック等の絶縁性を有する材料により筒状に形成されている。基端側部材45は、操作棒本体2の基端側における操作レバー15が設けられた位置の近傍から、操作棒本体2の先端側において傾き角度設定機構31が設けられた位置まで伸長している。先端側部材46は、操作棒本体2の先端側において傾き角度設定機構31が設けられた位置から狭持部5が設けられた位置の近傍まで伸長している。
【0050】
屈曲機構47は、ガイド部材44において、狭持部支持体41の傾き角度設定機構31に対応する位置に配置されている。また、屈曲機構47は、基端側部材45の先端部に設けられた凹状係合部48と、先端側部材46の基端部に設けられた球状係合部49とを備えている。凹状係合部48は、球状係合部49の端部の球状の形状と対応する球状の内面を有する凹部を有している。球状係合部49は端部が球状に形成されている。そして、球状係合部49は、凹状係合部48に揺動自在かつ分離不能に係合している。
【0051】
また、基端側部材45および先端側部材46の内部には伝達部材21が挿入されている。また、屈曲機構47の凹状係合部48および球状係合部49には、両者の中心部を軸線X方向に貫く孔がそれぞれ形成され、各孔内を伝達部材21が貫通している。
【0052】
また、ガイド部材44において、基端側部材45は、上述した第1の実施形態と同様に、例えば3つの固定部材27により操作棒本体2に固定されている。また、先端側部材46は、固定部材27と同様に形成された1つの固定部材50により、狭持部支持体41の可動部42に固定されている。
【0053】
作業者が狭持部5を横方向に傾けると、狭持部5と共に、可動部42、先端側部材46、および伝達部材21の先端側が同じく横方向に傾く。
【0054】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態による絶縁操作棒によっても、上述した本発明の第1の実施形態による絶縁操作棒1と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
特に、狭持部5が横方向に傾いたときに、屈曲機構47により、ガイド部材44の基端側部材45に対して先端側部材46が横方向に傾くので、先端側部材46により伝達部材21の先端側が、横方向に傾いた狭持部5に向けて確実に案内される。したがって、狭持部5が横方向に傾いた状態における伝達部材21の移動の円滑性を確実に確保することができる。
【0056】
図7は、本発明の第3の実施形態による絶縁操作棒の伝達部材、ガイド部材等を示している。
図7に示すように、本発明の第3の実施形態による絶縁操作棒においては、伝達部材61が、例えばステンレス鋼またはタングステン等の金属材料により形成されたワイヤ62と、絶縁性を有する材料により長尺な棒状に形成された中間部材63と、ワイヤ62と同様の金属材料により形成されたワイヤ64とを備え、ワイヤ62の基端部が操作レバー15の接続部18に連結部材23を介して接続され、ワイヤ62の先端部が中間部材63の基端部に接続され、中間部材63の先端部がワイヤ64の基端部に接続され、ワイヤ64の先端部が狭持片6の接続部10に連結部材22を介して接続されている。また、ワイヤ62はその先端側がガイド部材26内に挿入され、中間部材63はその全体がガイド部材26内に挿入され、ワイヤ64はその基端側がガイド部材26内に挿入されている。
【0057】
このような構成を有する伝達部材61であっても、感電を防止し、作業上の安全を確保することができる。
【0058】
なお、上述した各実施形態では、傾き角度設定機構31を、凹状係合部32に球状係合部33を係合する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、傾き角度設定機構31を次のような構成としてもよい。すなわち、縦方向に伸長するボルトを介して狭持部支持体11の基部12と可動部13とを連結し、当該ボルトにナットを締着し、ナットを緩めたときに可動部13が横方向に揺動できるようにし、ナットを締め付けたときに可動部13が横方向に揺動できないようにしてもよい。
【0059】
また、上述した各実施形態では、伝達部材21を支持する伝達部材支持体25を、操作棒本体2の基端側から先端側にかけて伸長する長尺なガイド部材26と、ガイド部材26を複数箇所で支持する固定部材26を有する構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、伝達部材支持体25を、例えば釣り竿に取り付けられた釣り糸ガイドのようなリング状の部材により構成し、当該リング状の部材を操作棒本体2の軸線方向に複数配列し、これらリング状の部材に伝達部材21を通してもよい。
【0060】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う絶縁操作棒もまた本発明の技術思想に含まれる。