(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5844327
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】地絡箇所の探索装置、地絡箇所の探索方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20060101AFI20151217BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
G01R31/08
H02J1/00 301D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-194278(P2013-194278)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-59857(P2015-59857A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 明宏
(72)【発明者】
【氏名】畑 潔
(72)【発明者】
【氏名】高田 光男
(72)【発明者】
【氏名】木束地 臨
【審査官】
荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−055873(JP,A)
【文献】
特開2010−139377(JP,A)
【文献】
特開2007−057319(JP,A)
【文献】
特開平11−220830(JP,A)
【文献】
特開平10−010178(JP,A)
【文献】
特開昭58−038875(JP,A)
【文献】
特開2001−133508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08−31/11
G01R 31/02−31/06
H02H 3/08− 3/253
H02J 1/00− 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と、
直流電源と負荷との間に接続されている正極側ケーブルおよび負極側ケーブルに対して、前記交流電源を選択的に接続するスイッチと、
前記交流電源が正極側ケーブルに接続されているとき、前記正極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を測定して第1測定信号を出力し、前記交流電源が負極側ケーブルに接続されているとき、前記負極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を測定して第2測定信号を出力する測定装置と、
前記第1測定信号と前記第2測定信号の大きさを比較し、前記第1測定信号と前記第2測定信号の大きさが異なる場合、前記正極側ケーブルおよび前記負極側ケーブルのいずれか一方に地絡が発生していると判定する判定装置と、
を備えることを特徴とする地絡箇所の探索装置。
【請求項2】
前記判定装置は、前記第1測定信号と前記第2測定信号とを比較し、前記正極側ケーブルおよび前記負極側ケーブルのうち前記第1測定信号と前記第2測定信号の値が大きい方のケーブルに地絡が発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載の地絡箇所の探索装置。
【請求項3】
前記測定装置は、前記正極側ケーブルまたは前記負極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を検出コイルを介して測定するセンサを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の地絡箇所の探索装置。
【請求項4】
前記交流電源は、略600Hzの周波数の交流電圧を出力することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の地絡箇所の探索装置。
【請求項5】
前記判定装置は、前記第1測定信号および前記第2測定信号から前記交流電源の周波数と略同一の周波数成分が検出されるように、前記第1測定信号および前記第2測定信号から前記交流電源の周波数と略同一の周波数成分を選択する同期検波器を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の地絡箇所の探索装置。
【請求項6】
前記測定装置は、前記正極側ケーブルおよび前記負極側ケーブルを軸方向に沿って走査し、
前記判定装置は、前記正極側ケーブルに地絡が発生していると判定した場合、前記測定装置が前記正極側ケーブルを操作したときの前記第1測定信号の対地充電電流及び地絡電流に応じた値と0との何れか一方から他方への変化から地絡箇所を判定し、前記負極側ケーブルに地絡が発生していると判定した場合、前記測定装置が前記負極側ケーブルを走査したときの前記第2測定信号の対地充電電流及び地絡電流に応じた値と0との何れか一方から他方への変化から地絡箇所を判定する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の地絡箇所の探索装置。
【請求項7】
直流電源と負荷との間に接続されている正極側ケーブルおよび負極側ケーブルに対して、交流電源を選択的に接続し、
前記交流電源が正極側ケーブルに接続されているとき、前記正極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を測定して第1測定信号を出力し、前記交流電源が負極側ケーブルに接続されているとき、前記負極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を測定して第2測定信号を出力し、
前記第1測定信号と前記第2測定信号の大きさを比較し、前記第1測定信号と前記第2測定信号の大きさが異なる場合、前記正極側ケーブルおよび前記負極側ケーブルのいずれか一方に地絡が発生していると判定する
ことを特徴とする地絡箇所の探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡箇所の探索装置
、地絡箇所の探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所で使用される遮断器や変速器などの機器の制御用電源として直流電源が用いられている。上記機器と直流電源との間を接続するために、多数のケーブルが変電所構内にわたって埋設されたり敷設されたりされて、直流回路網が形成されている。なお、上記直流回路網に含まれる個別の回路は、制御室から制御される。
【0003】
このような直流回路網において、ケーブルの損傷により地絡故障が発生することがあり、その場合、制御室においてエラーが表示される。
【0004】
従来、地絡箇所の探索は、例えば次の手順1〜手順3のように行われている。
【0005】
手順1: 制御室に設けられた個別の回路のスイッチを1つずつ切っていき、エラーが解消されるかどうかを確認することで、地絡している線路を特定する。
【0006】
手順2: 地絡している線路に含まれるケーブルを部分的に切り離し、地絡しているケーブルを特定する。
【0007】
手順3: 地絡しているケーブルを目視により点検し、損傷箇所を探しだす。
【0008】
特にケーブルが複数本まとめて埋設されたり敷設されたりしている場合には、手順2と手順3は時間と労力を要する。
【0009】
また、例えば特許文献1および2に開示されているような地絡箇所の探索装置および検出方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−94699号公報
【特許文献2】特開2000−284015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1および2の探索装置および検出方法を用いた場合でも、まとめて埋設されたり敷設されたりしている状態における複数本のケーブルから、地絡しているケーブルを特定することが、時間を要する作業であることに変わりはない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決する主たる本発明は、交流電源と、直流電源と負荷との間に接続されている正極側ケーブルおよび負極側ケーブルに対して、前記交流電源を選択的に接続するスイッチと、前記交流電源が正極側ケーブルに接続されているとき、前記正極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を測定して第1測定信号を出力し、前記交流電源が負極側ケーブルに接続されているとき、前記負極側ケーブルを流れる電流による変動磁場を測定して第2測定信号を出力する測定装置と、前記第1測定信号と前記第2測定信号
の大きさを比較し、前記第1測定信号と前記第2測定信号
の大きさが異なる場合、前記正極側ケーブルおよび前記負極側ケーブルのいずれか一方に地絡が発生していると判定する判定装置と、を備える。
【0013】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、速やかにかつ簡便に、地絡しているケーブルを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態における地絡箇所の探索装置の概略を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における判定装置を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態における判定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0017】
[第1実施形態]
以下、
図1および
図2を参照して、本発明の第1実施形態における地絡箇所の探索装置および探索方法について説明する。
なお、本実施形態において、直流電源ED、2つの負荷5(51,52)、および、直流電源EDと負荷5(51,52)との間をそれぞれ接続する正極側および負極側ケーブル6(61p,61n、62p,62n)は、直流回路網を形成している。また、Cgはケーブル6(61p,61n、62p,62n)と大地との間の対地静電容量を表す。本実施形態では、特に明示のない限り、負荷52に接続されている負極側ケーブル62nにおける位置Fで地絡事故が発生したものとする。
【0018】
===構成および動作===
図1は、本実施形態における地絡箇所の探索装置の概略を示す。
図1に示されるように、地絡箇所の探索装置1は、交流電源Ea、スイッチSW、磁気センサ2および判定装置3を備える。交流電源Eaは、例えば数百Hzの周波数の電圧を発生させ、好ましくは600Hzの周波数の電圧を発生させる。数百Hzの周波数を採用するのは、後述するように、判定装置3において、対地充電電流ICgおよび地絡電流Irに伴う微弱な変動磁場と環境磁場とに由来する成分を含む測定信号Sから、変動磁場の成分が検出されるようにするためである。600Hzほどの比較的高い周波数の場合には、測定信号Sから変動磁場に由来する成分の検出はより容易になる。
【0019】
また、スイッチSWは、交流電源Eaを正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nに選択的に接続する。スイッチSWが一方の極性のケーブルに接続された場合、磁気センサ2が、判定装置3で比較される程度の大きさの測定信号S(S1p,S1n,S2p,S2n)を出力するまで、その極性のケーブルへの接続は維持される。なお、スイッチSWの切替は例えば手動により行われる。なお、後述するように、地絡ケーブルの判定後に、磁気センサ2を地絡ケーブルに沿って走査することで地絡箇所の探索が行われる。その場合には、磁気センサ2による走査の間、スイッチSWは地絡ケーブルの側に接続される。
【0020】
磁気センサ2は、ケーブル6(61p,61n、62p,62n)に流れる電流によって生ずる変動磁場を測定し、測定信号を出力する測定装置である。磁気センサ2は、地磁気や変圧器からの磁気などによる環境磁場の中から微弱な上記変動磁場を検出するように、例えば超伝導量子干渉計(superconducting quantum interferometer device;以下、SQUIDと言う)グラジオメータである。
【0021】
本実施形態におけるSQUIDグラジオメータは、磁場を捕捉する検出コイルとSQUID本体とを含む。SQUID本体が環境磁場などの影響を受けないように、検出コイルはSQUID本体から分離している。検出コイルは、互いの入力を打ち消し合うように同一平面上に配置された一対のピックアップコイルを含み、一対のピックアップコイルのそれぞれに入力された信号の差分がSQUID本体に出力される。個々のピックアップコイルの寸法はケーブル6の直径とほぼ同じの大きさである。例えば、一方のピックアップコイルがケーブル6の近傍に配置され、他方のピックアップコイルが上記一方のピックアップコイルよりもケーブル6から離れて配置されているときのように、両ピックアップコイルに鎖交する磁束に差がある場合に、検出コイルは、両ピックアップコイルの入力の差分をSQUID本体に伝達する。なお、検出コイルは例えば手動により操作される。
【0022】
本実施形態において、健全なケーブル61p,61n、62pには、ほぼ同じ大きさの対地充電電流ICgがそれぞれ流れるのに対して、地絡の生じているケーブル62nの位置Fより交流電源Ea側の部分には、対地充電電流ICgに加えて地絡電流Irが流れる。従って、ケーブル61p,61n、62pに対する磁気センサ2の測定信号S1p,S1n,S2pはほぼ同じ大きさであるのに対して、ケーブル62nにおける位置Fより交流電源Ea側の部分に対する磁気センサ2の測定信号S2nは測定信号S1p,S1n,S2pより大きい。また、ケーブル62nにおける位置Fより負荷側の部分には対地充電電流も地絡電流も流れないため、磁気センサ2から出力される測定信号は0である。よって、磁気センサ2の検出コイルをケーブル62nに沿って、交流電源Ea側から位置Fを経て負荷52側へ走査するとき、測定信号S2nは、位置Fを境にして、上述した相対的に大きな値から0に変化する。なお、対地充電電流ICgおよび地絡電流Irは、交流電源Eaの周波数とほぼ同じ周波数を持ち、磁気センサ2の出力する測定信号S1p,S1n,S2p,S2nもまた、ケーブル62nにおける位置Fより負荷側の測定信号を除き、交流電源Eaの周波数とほぼ同じ周波数を持つ。
【0023】
判定装置3は、交流電源Eaが正極側ケーブル61p,62pに接続されている場合に磁気センサ2からそれぞれ出力される測定信号S1p,S2pと、交流電源Eaが負極側ケーブル61n,62nに接続されている場合に磁気センサ2からそれぞれ出力される測定信号S1n,S2nとを比較して、これら測定信号が異なるとき、ケーブル6のいずれかに地絡が生じていると判定する。本実施形態では、測定信号S1p,S1n,S2pと測定信号S2nとは異なっているから、例えば、測定信号S1pとS1n、S2pとS2nがそれぞれ判定装置3において比較される場合には、ほぼ同じ信号であるS1pとS1nに対応するケーブル61pと61nに地絡は生じておらず、異なる信号であるS2pとS2nに対応するケーブル62pと62nのいずれかに地絡が生じていると判定する。更に、測定信号S2nは、ケーブル62nにおける位置Fより交流電源Ea側の部分では、測定信号S1p,S1n,S2pより大きいから、判定装置3は、ケーブル62nに地絡が生じていると判定する。
【0024】
図2は、本実施形態における判定装置の一例を示す。
図2に示されるように、判定装置3は、ハイパスフィルタ31と比較器32とを含む。ハイパスフィルタ31は、入力された測定信号S1p,S2p,S1n,S2nのうち、交流電源Eaの周波数より大きい周波数成分を通過させる。測定信号S1p,S2p,S1n,S2nは、交流電源Eaの周波数と同じ周波数成分のほかに、上述した環境磁場などに由来する雑音を含むから、ハイパスフィルタ31は、測定信号S1p,S2p,S1n,S2nのうち交流電源Eaの周波数と同じ周波数成分が次段の比較器32で検出されるように、このような雑音を減衰させる。
【0025】
測定信号S1p,S2p,S1n,S2nは、ハイパスフィルタ31を経て、比較器32に入力される。比較器32は、例えば、測定信号S1pとS1n,S2pとS2nをそれぞれ比較し、比較された2つの信号が同じか異なるかを比較結果として出力する。本実施形態において、比較器32は、測定信号S1pとS1nは同じであるとの比較結果を出力し、測定信号S2pとS2nは異なるとの比較結果を出力する。判定装置3は、比較器32の比較結果を受けて、測定信号S1pとS1nにそれぞれ対応するケーブル61pと61nには地絡は生じておらず、測定信号S2pとS2nにそれぞれ対応するケーブル62pと62nのいずれかに地絡が生じていると判定する。
【0026】
比較器32は、入力された測定信号Sのうち大きい方を比較結果として出力するものであってもよく、例えば、測定信号S2pとS2nの入力に対して、測定信号S2pの方が大きいとの比較結果を出力する。判定装置3は、比較器32のこの比較結果を受けて、測定信号S2pに対応するケーブル62nが地絡していると判定する。
【0027】
===使用方法===
本実施形態における探索装置の使用方法を説明する。本探索装置1を用いて地絡箇所を探索する手順は、地絡ケーブル6を判定する手順と、地絡ケーブル6における地絡箇所を特定する手順とに大別されるから、以下、順を追って説明する。
【0028】
[地絡ケーブルを判定する手順]
スイッチSWを操作し、交流電源Eaを例えば正極側ケーブル61p,62pに接続する。磁気センサ2の検出コイルを正極側ケーブル61p,62pに近づけ、測定信号S1p,S2pを得る。磁気センサ2として例えばSQUIDグラジオメータを用いることにより、微弱な変動磁場が検出される。なお、正極側ケーブル61p,62pが埋設されていたり他のケーブルとともに敷設されていたりする場合でも、埋設や敷設がなされた状態のまま、正極側ケーブル61p,62pに磁気センサ2の検出コイルを近づければよい。この段階では、判定装置3で比較される程度の測定信号Sが得られるように、ケーブル61p,61nのおける任意の地点とその近傍を磁気センサ2で走査すればよい。
【0029】
次に、スイッチSWを切り替え、交流電源Eaを負極側ケーブル61n,62nに接続して、磁気センサ2の検出コイルを負極側ケーブル61n,62nに近づけて、測定信号S1n,S2nを得る。ここでも、負極側ケーブル61n,62nが埋設されていたり他のケーブルとともに敷設されていたりする場合に、埋設や敷設がなされた状態のまま、負極側ケーブル61n,62nに磁気センサ2の検出コイルを近づければよい。また、この段階では、判定装置3で比較される程度の測定信号Sが得られるように、ケーブル61n,62nのおける任意の地点とその近傍を磁気センサ2で走査すればよい。
【0030】
そして、得られた測定信号Sを測定装置3に入力し、測定信号S同士を比較する。例えばS1pとS1n、S2pとS2nがそれぞれ比較されるように測定信号を測定装置3に入力すると、上述したように測定信号S1pとS1nはほぼ同じであり、測定信号S2pとS2nは異なることから、測定装置3は、測定信号S1pとS1nに対応するケーブル61pと61nに地絡は生じておらず、測定信号S2pとS2nに対応するケーブル62pと62nのいずれか一方に地絡が生じている、と判定する。更に、測定信号S2nは、ケーブル62nにおける位置Fより交流電源Ea側を測定した信号である場合には、地絡電流Irに相当する分だけ測定信号S2pより大きいから、測定装置3は、大きい方の測定信号S2nに対応するケーブル62nに地絡が生じている、と判定する。
【0031】
なお、地絡ケーブルの判定のための手順において、ケーブル62nにおいて地絡が生じている位置Fより負荷52側に磁気センサ2を当てた場合には、測定信号として0が出力される。その場合には、磁気センサ2で測定中のケーブル6に地絡が生じていると判定される。
【0032】
また、例えば、第3の負荷53(図示せず)の負極側ケーブル63n(図示せず)が、ケーブル62nにおける位置Fより上流側の位置A(図示せず)から分岐している場合であって、ケーブル62nに対する測定信号S2nほかに、ケーブル63nに対する測定信号S3nも0であるときには、ケーブル62nが地絡ケーブルであると判定されるとともに、ケーブル62nの位置Aより上流側において地絡が生じていると判定される。
【0033】
[地絡箇所を特定する手順]
上述した手順において地絡が生じていると判定されたケーブルについて、地絡箇所を特定するために次の作業が行われる。
【0034】
まず、交流電源Eaが地絡ケーブル(本実施形態ではケーブル62n)に接続されるようにスイッチSWを切り替える。スイッチSWの切替は例えば手動で行われる。
【0035】
次に、磁気センサ2の検出コイルをケーブル62nに近づけた状態で、検出コイルをケーブル62nの軸方向に沿って走査する。走査は、例えば、手動により、ケーブル62nにおける交流電源Ea側から位置Fを経て負荷52側に向かって行われる。その場合、磁気センサ2から出力される測定信号S2nは、対地充電電流ICgに地絡電流Irが重畳して流れることに伴う比較的大きな値から、位置Fを境として0に変化する。判定装置3は、測定信号S2nがこのように変化したときにおける磁気センサ2の検出コイルの位置の近傍を、地絡箇所と判断する。
【0036】
なお、上述のようにして地絡箇所が特定された後、該当するケーブルが人手によって引っ張りだされ、目視により損傷の有無が確認される。本実施形態においては、ケーブル6を掘り出したり引き出したりするような時間と労力を要する作業は、地絡箇所が特定された後に行われるので、簡便な作業により地絡箇所が特定される。
【0037】
[第2実施形態]
図3を参照して、本発明の第2実施形態における地絡箇所の探索装置について説明する。なお、本実施形態における探索装置1’は、判定装置において第1実施形態における探索装置1と相違し、その他の構成は同じである。よって、本実施形態において、第1実施形態と同様の部材および装置には共通の符号を付すとともに、説明を省略する。
【0038】
図3は、本実施形態における判定装置の概略を示す図である。
図3に示されるように、判定装置3’は、同期検波器33と比較器34とを含む。
同期検波器33は、交流電源Eaと同じ周波数で測定信号S(S1p,S2p,S1n,S2n)を検波する。対地充電電流ICgおよび地絡電流Irならびにこれら電流に伴う変動磁場は、交流電源Eaの周波数とほぼ同じ周波数で変動することから、測定信号Sから交流電源Eaの周波数とほぼ同じ周波数成分を検出して地絡判定のために用いることで、地絡判定の確実性が向上する。なお、判定装置3’は例えばロックインアンプである。
【0039】
同期検波器33の出力は比較器34に入力されるところ、比較器34の動作は、第1実施形態における比較器32の動作と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
探索装置1’の使用方法は第1実施形態における探索装置1の使用方法と同じであるので、説明を省略する。
【0041】
前述したとおり、スイッチSWは、直流電源EDと負荷5(51,52)との間に接続されている正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nに対して、交流電源Eaを選択的に接続する。また、磁気センサ2は、交流電源Eaが正極側ケーブル61p,62pに接続されているとき、正極側ケーブル61p,62pを流れる電流による変動磁場を測定して第1測定信号S1p,S2pを出力し、交流電源Eaが負極側ケーブル61n,62nに接続されているとき、負極側ケーブル61n,62nを流れる電流による変動磁場を測定して第2測定信号S1n,S2nを出力する。また、判定装置3は、第1測定信号S1p,S2pと第2測定信号S1n,S2nとを比較し、第1測定信号S1p,S2pと第2測定信号S1n,S2nが異なる場合、正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nのいずれか一方に地絡が発生していると判定する。本実施形態において、測定信号S1pとS1nはほぼ同じであるから、ケーブル61pと61nには地絡は生じていないと判定され、測定信号S2pとS2nは異なるからケーブル62pと62nのいずれかに地絡が生じていると判定される。従って、複数本のケーブルがまとめて埋設されたり敷設されたりしている場合でも、速やかにかつ簡便に、地絡しているケーブルが特定される。
【0042】
また、判定装置3は、第1測定信号S1p,S2pと第2測定信号S1n,S2nとを比較し、正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nのうち第1測定信号S1p,S2pと第2測定信号S1n,S2nの値が大きい方のケーブルに地絡が発生していると判定する。本実施形態において、測定信号の値が大きい方のケーブル62nに地絡が生じていると判定されるから、更に速やかにかつ簡便に、地絡しているケーブルが特定される。
【0043】
また、磁気センサ2は、正極側ケーブル61p,62pまたは負極側ケーブル61n,62nを流れる電流による変動磁場を、検出コイルを介して測定する。変動磁場を、磁気センサ2の本体から分離した検出コイルで検出することで、磁気センサ2の本体が環境磁場等の影響を受けないので、正確な測定信号Sを得ることができる。よって、正確な地絡判定が可能となる。
【0044】
また、交流電源Eaは、略600Hzの周波数の交流電圧を出力する。このとき、対地充電電流ICgおよび地絡電流Irは略600Hzで変動し、これら電流に伴う微弱な変動磁場も略600Hzで変動する。測定信号Sは、変動磁場に対応する略600Hzの周波数成分と、環境磁場等に由来する雑音とを含むところ、略600Hzの周波数成分は、雑音に埋もれることなく判定装置3において検出される。よって、正確な判定結果により確実に地絡ケーブルを特定することができる。
【0045】
また、判定装置3は、第1測定信号S1p,S2pおよび第2測定信号S1n,S2nから交流電源Eaの周波数と略同一の周波数成分が検出されるように、第1測定信号S1p,S2pおよび第2測定信号S1n,S2nのうち交流電源Eaの周波数より高い周波数成分を通過させるハイパスフィルタを含む。測定信号S(S1p,S2p,S1n,S2n)に含まれる雑音をハイパスフィルタ31によって減衰させることによって、測定信号S(S1p,S2p,S1n,S2n)のうち交流電源Eaの周波数と同じ周波数成分は、判定装置3によって確実に検出される。従って、確実に地絡ケーブルを特定することができる。
【0046】
また、判定装置3は、第1測定信号S1p,S2pおよび第2測定信号S1n,S2nから交流電源Eaの周波数と略同一の周波数成分が検出されるように、第1測定信号S1p,S2pおよび第2測定信号S1n,S2nから交流電源Eaの周波数と略同一の周波数成分を選択する同期検波器33を含む。測定信号S(S1p,S2p,S1n,S2n)から交流電源Eaの周波数とほぼ同じ周波数成分を選択することによって、測定信号Sの比較が容易になり、地絡判定の確実性が増す。
【0047】
また、磁気センサ2は、正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nを軸方向に沿って走査する。更に、判定装置3は、正極側ケーブル61p,62pに地絡が発生していると判定した場合、磁気センサ2が正極側ケーブル61p,62pを走査したときの第1測定信号S1p,S2pの変化から地絡箇所を判定し、負極側ケーブル61n,62nに地絡が発生していると判定した場合、磁気センサ2が負極側ケーブル61n,62nを走査したときの第2測定信号S1n,S2nの変化から地絡箇所を判定する。測定信号S(S1p,S2p,S1n,S2n)は、磁気センサ2がケーブル62nにおける地絡箇所Fの近傍を走査するとき、ある値から0に、あるいは逆に、0からある値に変化する。このように変化する測定信号Sの値に着目して地絡箇所を探索することで、地絡箇所の特定を迅速かつ簡便に行うことができる。
【0048】
また、地絡箇所の探索方法では、直流電源と負荷との間に接続されている正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nに対して、交流電源Eaを選択的に接続する。そして、交流電源Eaが正極側ケーブル61p,62pに接続されているとき、正極側ケーブル61p,62pを流れる電流による変動磁場を測定して第1測定信号S1p,S2pを出力し、交流電源Eaが負極側ケーブル61n,62nに接続されているとき、負極側ケーブル61n,62nを流れる電流による変動磁場を測定して第2測定信号S1n,S2nを出力する。そして、第1測定信号S1p,S2pと第2測定信号S1n,S2nとを比較し、第1測定信号S1p,S2pと第2測定信号S1n,S2nが異なる場合、正極側ケーブル61p,62pおよび負極側ケーブル61n,62nのいずれか一方に地絡が発生していると判定する。本実施形態においては、上述したとおりケーブル61pと61nには地絡は生じておらず、ケーブル62pと62nのいずれかに地絡が生じていると判定される。従って、複数本のケーブルがまとめて埋設されたり敷設されたりしている場合でも、速やかにかつ簡便に、地絡しているケーブルが特定される。
【0049】
なお、上記第1及び第2実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0050】
例えば、交流電源Eaの周波数は、判定装置3において測定信号Sから微弱な変動磁場の成分が検出される程度であればよく、数百Hzでも600Hzより高くてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 地絡箇所の探索装置
2 磁気センサ
3 判定装置
Ea 交流電源
SW スイッチ