(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態による電動旋回駆動装置を含む建設機械の一例であるハイブリッドショベルの側面図である。
【0018】
ハイブリッドショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が設けられる。また、上部旋回体3には、キャビン10及び動力源が搭載される。さらに、上部旋回体3には、バケット6とは反対側にカウンタウェイト3aが搭載される。
【0019】
図2は、ハイブリッドショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
【0020】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに変速機13の入力軸に接続されている。また、変速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0021】
コントロールバルブ17は、油圧系の制御を行う制御装置である。コントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
【0022】
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電用のキャパシタ又はバッテリを含む蓄電装置120が接続されている。本実施形態では蓄電装置120は蓄電器としてキャパシタを含むものとする。蓄電装置120には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。
【0023】
図3は蓄電装置120の構成を示すブロック図である。蓄電装置120は、蓄電器としてのキャパシタ19と、昇降圧コンバータ
100とDCバス110とを含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112とキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値とキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。
【0024】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18,20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。また、上述の例では蓄電器としてキャパシタを用いているが、キャパシタの代わりに、リチウムイオン電池等の充電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
【0025】
図2に戻り、旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
【0026】
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29がそれぞれ接続される。圧力センサ29には、電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
【0027】
エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21等の動力源は、
図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
【0028】
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は変速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、ショベルの運転中は常時運転される。
【0029】
電動発電機12は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は変速機13の他方の入力軸に接続される。
【0030】
変速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が力行運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が回生運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と回生運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0031】
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。メインポンプ14が発生した油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。
【0032】
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
【0033】
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と蓄電装置120との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12の力行を運転制御している際には、必要な電力を蓄電装置120から電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の回生を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力を蓄電装置120のキャパシタ19に蓄電する。
【0034】
蓄電装置120は、インバータ18とインバータ20との間に配設されている。これにより、電動発電機12と旋回用電動機21の少なくともどちらか一方が力行運転を行っている際には、蓄電装置120は、力行運転に必要な電力を供給する。電動発電機12と旋回用電動機21の少なくともどちらか一方が回生運転を行っている際には、蓄電装置120は回生運転によって発生した回生電力を電気エネルギとして蓄積する。
【0035】
インバータ20は、上述の如く旋回用電動機21と蓄電装置120との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータ
20が旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力を蓄電装置120から旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を蓄電装置120のキャパシタ19に蓄電する。
【0036】
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が
旋回減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、
旋回減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
【0037】
なお、蓄電装置120のキャパシタ19の充放電制御は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(力行運転又は回生運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、コントローラ30によって行われる。
【0038】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサである。レゾルバ22は、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出する。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向を求めることができる。
【0039】
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。メカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
【0040】
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する変速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
【0041】
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
【0042】
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、レバー26A及び26Bとペダル26Cを含む。レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、上部旋回体3の運転席近傍に設けられる。レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーであり、運転席近傍に設けられる。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
【0043】
操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を運転者の操作量(例えば、中立位置を基準としたレバー傾斜角度である。)に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
【0044】
レバー26A及び26Bとペダル26Cの各々が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
【0045】
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1Bを操作するために1本ずつ(すなわち合計2本)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ
9をそれぞれ操作するために2本ずつ(すなわち合計6本)設けられる。したがって、油圧ライン27は、実際には全部で8本あるが、説明の便宜上、
図2では1本にまとめて
図示されている。
【0046】
レバー操作検出部としての圧力センサ29は、レバー26Aの操作による、油圧ライン28内の油圧の変化を検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、コントローラ30に入力される。これにより、レバー26Aの操作量を的確に把握することができる。本実施の形態では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いたが、レバー26Aの操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
【0047】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う制御装置であり、駆動制御装置32、電動旋回制御装置40、及び主制御部60を含む。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。駆動制御装置32、電動旋回制御装置40及び主制御部60は、コントローラ30のCPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより、実現される装置である。
【0048】
速度指令変換部31
(図4参照)は、圧力センサ29から入力される信号を速度指令に変換する演算処理部である。これにより、レバー26Aの操作量は、旋回用電動機21を回転駆動させるための速度指令(rad/s)に変換される。この速度指令は、駆動制御装置32、電動旋回制御装置40及び主制御部60に入力される。
【0049】
駆動制御装置32は、電動発電機12の運転制御(力行運転又は回生運転の切り替え)、及び、キャパシタ19の充放電制御を行うための制御装置である。駆動制御装置32は、エンジン11の負荷の状態とキャパシタ19の充電状態に応じて、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り替える。駆動制御装置32は、電動発電機12の力行運転と回生運転を切り替えることにより、インバータ18を介してキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0050】
図4は、本実施形態による電動旋回制御装置40の構成を示すブロック図である。電動旋回制御装置40は、インバータ20を介して旋回用電動機21の駆動制御を行って上部旋回体3の旋回動作を制御するための制御装置である。電動旋回制御装置40は、旋回用電動機21を駆動するためのトルク電流増減値(トルク指令値)を生成する駆動指令生成部5
0を含む。
【0051】
駆動指令生成部50には、レバー26Aの操作量に応じて速度指令変換部31から出力される速度指令が入力され、この駆動指令生成部50は速度指令に基づきトルク電流増減値を生成する。駆動指令生成部50から出力されるトルク電流増減値はインバータ20に入力され、このインバータ20によって旋回用電動機21がPWM制御信号により交流駆動される。
【0052】
インバータ20は、駆動指令生成部50から受けるトルク電流増減値によりトルク電流値を増減させて
旋回電動機21を左方向又は右方向に加速又は減速させる。なお、インバータ20は、例えば、トルク電流値がマイナス側に大きいほど上部旋回体3を左方向に旋回させる旋回用電動機21のトルクを増大させるようにし、トルク電流値がプラス側に大きいほど上部旋回体3を右方向に旋回させる旋回用電動機21のトルクを増大させるようにする。
【0053】
主制御部60は、電動旋回制御装置40の制御処理に必要な周辺処理を行う制御部である。具体的な処理内容については、関連箇所においてその都度説明する。
【0054】
駆動指令生成部50は、減算器51、PI制御部52、トルク制限部53、及び旋回動作検出部58を含む。この駆動指令生成部50の減算器51には、レバー26Aの操作量に応じた旋回駆動用の速度指令(rad/s)が入力される。
【0055】
減算器51は、レバー26Aの操作量に応じた速度指令の値(以下、速度指令値)から、旋回動作検出部58によって検出される旋回用電動機21の回転速度(rad/s)を減算して偏差を出力する。この偏差は、後述するPI制御部52において、旋回用電動機21の回転速度を速度指令値(目標値)に近づけるためのPI制御に用いられる。
【0056】
PI制御部52は、減算器51から入力される偏差に基づき、旋回用電動機21の回転速度を速度指令値(目標値)に近づけるように(すなわち、この偏差を小さくするように)PI制御を行い、そのために必要なトルク電流増減値を演算する。生成されたトルク電流増減値は、トルク制限部53に入力される。
【0057】
具体的には、PI制御部52は、今回の制御サイクルにおいて減算器51から入力される偏差に所定の比例(P)ゲインを乗じた値(比例成分)と、今回の制御サイクルにおいて減算器51から入力される偏差と前回の制御サイクルまでに積算された偏差の積算値(積分値)を加算したものに所定の積分(I)ゲインを乗じた値(積分成分)とを加算してトルク電流増減値を求める。
【0058】
また、PI制御部52は、レバー26Aの操作量が左(右)方向旋回駆動領域から零速度指令領域に移行し、或いは零速度指令領域を超えて更に不感帯領域に移行することで、零速度指令により旋回制動が開始された場合(旋回モードから停止(保持制御)モードに遷移した場合)に、旋回用電動機21の回転速度が最初に零(0)に達したタイミングで偏差の積算値(積分値)をリセットする(0にする)。
【0059】
このように、PI制御部52は、旋回電動機21の回転速度が零になった時点でフィードバック制御の積分成分をリセットすることで制動トルクが過度に残存するのを防止するようにして揺れ戻しを抑制することができる。一方、PI制御部52は、旋回電動機21の回転速度が零になった時点であってもフィードバック制御自体は継続させているので、零速度指令と回転速度とに偏差が生じればPI制御による補正動作が行われて、旋回停止時期が遅れるのを防止することができる。
【0060】
なお、旋回電動機21の回転速度が、右方向旋回のときに正の値で表され、左方向旋回のときに負の値で表されることから、PI制御部52は、旋回制動開始前の旋回方向が左方向であった場合には旋回用電動機21の回転速度が0以下となったことを検出したタイミングにおいて、或いは、旋回制動開始前の旋回方向が右方向であった場合には旋回用電動機21の回転速度が0以上となったことを検出したタイミングにおいて、偏差の積算値(積分値)をリセットする。或いは、PI制御部52は、旋回用電動機21の回転速度を絶対値にし、旋回方向にかかわらずその絶対値が0以下となったタイミングで偏差の積算値(積分値)をリセットするようにしてもよい。
【0061】
旋回用電動機21の回転速度が最初に零(0)に達したか否かの判定は主制御部60によって実行され、PI制御部52は、旋回用電動機21の回転速度が最初に零(0)に達したとの判定結果を受けて積分成分のリセットを実行する。
【0062】
トルク制限部53は、レバー26Aの操作量に応じてトルク電流増減値の変動幅を制限する処理を行う。
【0063】
このようなトルク電流増減値の変動幅の制限は、PI制御部52によって演算されるトルク電流増減値が急激に変動すると旋回制御性が悪化するため、この悪化を抑制するために行われる。この制限特性は、上部旋回体3の左方向及び右方向の双方向における急旋回を制限するための特性を有するものであり、レバー26Aの操作量の増大に応じてトルク電流増減値の変動幅を緩やかに増大させる特性を有する。
【0064】
制限特性を表すデータ(例えば、参照テーブルの形式で提供される。)は、主制御部60の内部メモリに格納されており、トルク制限部53によって読み出される。
【0065】
次に、上述のハイブリッドショベルの上部旋回体3の旋回動作について説明する。
【0066】
図5はショベルが水平な面に設置された時の上部旋回体3の旋回動作を説明するための図である。
図6はショベルが水平面に対して傾斜して設置された時に、上部旋回体3が重力に逆らう方向に旋回駆動されるときの旋回動作を説明するための図である。
図7はショベルが水平面に対して傾斜して設置された時に、上部旋回体3が重力が作用する方向に旋回駆動されるときの旋回動作を説明するための図である。
【0067】
ショベルが平地(水平面)に設置されたときは、上部旋回体3が右旋回しても左旋回しても、旋回動作に対する重力の影響は無い。通常、
図5(b)に示すようにブーム4を下げてアーム5を延ばした状態では、バケット6、アーム5、及びブーム4を含む上部旋回体3の重心Gは、上部旋回体
3の旋回中心Cに一致せず、バケット6側にある。上部旋回体3の旋回面が水平面に一致している場合、すなわち
図5(a)に示すように上部旋回体3の旋回軸が鉛直方向に一致している場合、上部旋回体3の旋回動作に対して重力の影響はない。
【0068】
一方、ショベルが傾斜面に設置されている場合には、上部旋回体3の旋回動作に対して重力の影響がある。
図6はショベルが傾斜地(傾斜面)に設置されている状態を示している。
図6に示す例では、上部旋回体3の重心Gが傾斜面に沿って上方に旋回移動するように上部旋回体3を旋回している(この旋回を「昇り旋回」と称する)。このとき、上部旋回体3を旋回駆動する方向に対して、上部旋回体3に加わる重力は反対方向に作用する。したがって、
図6に示す状態にあるときは、上部旋回体3は重心Gの位置が傾斜面に沿って下降する方向に自重で旋回しようとする。すなわち、ゼロ速度制御で上部旋回体3を停止させておくためには、旋回用電動機21で重力作用方向とは反対方向のトルクを加えておく必要がある。また、重心Gがカウンタウェイト3a側にある場合には、上部旋回体3に対して働く自重は逆方向になる。このため、旋回用電動機21で加えるトルクも逆方向になる。
【0069】
図7もショベルが傾斜地(傾斜面)に設置されている状態を示している。
図7に示す例では、上部旋回体3の重心Gが傾斜面に沿って下方に旋回移動するように上部旋回体3を旋回している(この旋回を「降り旋回」と称する)。このとき、上部旋回体3を旋回駆動する方向に対して、上部旋回体3に加わる重力も同じ方向に作用する。したがって、
図6に示す状態と同様に、
図7に示す状態にあるときは、上部旋回体3は重心Gの位置が傾斜面に沿って下降する方向に自重で旋回しようとする。すなわち、ゼロ速度制御で上部旋回体3を停止させておくためには、旋回用電動機21で重力作用方向とは反対方向のトルクを加えておく必要がある。また、重心Gがカウンタウェイト3a側にある場合には、上部旋回体3に対して働く自重は逆方向になる。このため、旋回用電動機21で加えるトルクも逆方向になる。
【0070】
次に、本実施形態による
電動旋回制御装置40が行なう制御処理について説明する。ここでは、上部旋回体3の重心Gがバケット6側にあることを前提とする。
【0071】
電動旋回制御装置40は、上述のように上部旋回体3を減速して旋回速度がゼロになったときに(すなわち、旋回用電動機21の回転速度がゼロとなったときに)、旋回用電動機21のトルク指令値をゼロにリセットすることで、上部旋回体3の揺れ戻しを抑制する。ただし、トルク指令値をゼロにリセットすることで上部旋回体3の揺れ戻しを抑制する効果が得られるのは、1)ショベルが平地に設置されているときか、あるいは、2)傾斜地に設置されていて昇り旋回から早く停止するときである。すなわち、3)ショベルが傾斜地に設置されていて昇り旋回からゆっくりと停止するとき、及び4)ショベルが傾斜地に設置されていて降り旋回から停止するときには、トルク指令値をゼロにリセットすると不利な効果が生じるので、この場合にはトルク指令値のリセットは行なわない。
【0072】
以下に、上述の1)〜4)の4つの条件におけるトルク指令値の制御について説明する。
【0073】
1)ショベルが平地に設置されたれ状態で、旋回を停止するときの制御:
図8は、ショベルが
図5に示すように平地に設置されているときに上部旋回体3を旋回から停止する際の、旋回用電動機21の速度指令値と、旋回用電動機21の計測速度値(実際の速度に相当する)と、旋回用電動機21のトルク値(トルク指令値に相当する)との変化を示すグラフである。
図8において、旋回用電動機21の速度指令値は実線で示され、旋回用電動機21の計測速度値は太い実線で示され、旋回用電動機21のトルク値は一点鎖線で示されている。なお、
図8は、旋回停止時にトルク指令値のリセットを行なわない場合の例であり、トルク指令値のリセットを行なった場合の例が
図9に示されている。
【0074】
上部旋回体3が旋回を始めてから、時刻t1において旋回用電動機21の速度指令値は一定の値となり、等速運転が行なわれる。旋回用電動機21の計測速度値は、速度指令値にやや遅れて追従し、時刻t1を過ぎて等速運転となると速度指令値に等しくなる。時刻t2において速度指令値が下がり始め、時刻t3においてゼロとなる。すると計測速度値は速度指令値にやや遅れて下がり始め、時刻t4においてゼロとなる(ゼロ速度到達)。
【0075】
等速旋回中のトルク値は低めの一定値Taに維持されているが、旋回用電動機21を減速させるために、速度指令値が下がり始める時刻t2からトルク値は下がり始め、反対向きの旋回の最大トルク値まで到達する。その後時刻t3以降は減速を弱めるためにトルク値は最大トルク値から減少していくが、計測速度値がゼロとなった時刻t4においてゼロとはならず、トルク値T
FTだけ旋回とは反対向きの回転のトルクが生じている。このトルク値T
FTが、上述の積分制御に係る偏差の積分値に相当する。
【0076】
時刻t4においてトルク値T
FTが発生していることで、上部旋回体3は逆方向に旋回を始める。時刻t4以降は、トルク値は低下して反対向きのトルク値となる。旋回用電動機21の逆転は小さくなり、再びもとの旋回方向に回転する。上部旋回体3は小さく揺動しながら(反転を繰り返しながら)振幅が減少し、上部旋回体3は停止する。
【0077】
ここで、本実施形態では、時刻t4で計測速度がゼロとなったときにトルク指令値(トルク値)をゼロにリセットして、旋回用電動機21(すなわち、上部旋回体3)の揺動を抑制する。
図9は時刻t4においてトルク指令値をリセットしたときのトルク指令値及び計測速度値の変化を示す図である。図中の点線は、トルク指令値をリセットしないときの旋回用電動機21の計測速度値を示している。時刻t4においてトルク指令値がリセットされてゼロとなると、反対向きのトルクが無くなるので、旋回用電動機21(上部旋回体3)を揺動させるトルクが無くなり、旋回用電動機21(上部旋回体3)を時刻t4以降に揺動させずに直ちに停止することができる。
【0078】
時刻t4以降は上部旋回体3が揺動しないので、旋回用電動機21の速度はゼロのままに維持され、これにより時刻t4でゼロにリセットされたトルク値は、その後もT
HF(ゼロ)に維持される。
【0079】
以上のように、本実施形態では、上部旋回体3を水平方向に旋回して停止するときには、
図9に示すように、トルク指令値のリセットを行なうことで、上部旋回体3の揺れ戻しを無くすことができる。
【0080】
2)ショベルが傾斜面に設置された状態で、昇り旋回を早く停止するときの制御:
図10は、ショベルが
図6に示すように傾斜地に設置されているときに上部旋回体3を昇り旋回から早く停止させる際の、旋回用電動機21の速度指令値と、旋回用電動機21の計測速度値(実際の速度に相当する)と、旋回用電動機21のトルク値(トルク指令値に相当する)との変化を示すグラフである。
図10において、旋回用電動機21の速度指令値は実線で示され、旋回用電動機21の計測速度値は太い実線で示され、旋回用電動機21のトルク値は一点鎖線で示されている。なお、
図10は、旋回停止時にトルク指令値のリセットを行なわない場合の例であり、トルク指令値のリセットを行なう場合の例が
図11に示されている。
【0081】
図10に示す例では、昇り旋回を行なうため、加速時には速度指令値に対して計測速度値が大きく遅れるが、減速時には速度指令値に対して計測速度値が僅かに遅れるだけとなる。また、昇り旋回時は重力に逆らって上部旋回体3を旋回させるため、昇り旋回時のトルク値Tbは、平地での旋回のときよりは大きくなる。
図10に示す例の場合、昇り旋回を早く停止させるため、トルク値は
図8の例と同様に時刻t2と時刻t3の間でゼロとなってから反対向きのトルク値となる。したがって、トルク値は、計測速度値がゼロとなる時刻t4においてゼロとはならず、トルク値T
UP−Fだけ昇り旋回とは反対向きの回転のトルクが生じている。このトルク値T
UP−Fが、上述の積分制御に係る偏差の積分値に相当する。
【0082】
時刻t4においてトルク値T
UP−Fが発生していることで、上部旋回体3は逆方向に旋回を始める。時刻t4以降は、トルク値は低下して反対向きのトルク値となる。旋回用電動機21の逆転は小さくなり、再びもとの旋回方向に回転する。上部旋回体3は小さく揺動しながら(反転を繰り返しながら)振幅が減少し、上部旋回体3は停止する。
【0083】
ここで、本実施形態では、時刻t4で計測速度がゼロとなったときにトルク指令値(トルク値)をゼロにリセットして、旋回用電動機21の揺動を抑制する(すなわち、上部旋回体3の落下を抑制する)。
図11は時刻t4においてトルク指令値をリセットしたときのトルク指令値及び計測速度値の変化を示す図である。図中の点線は、トルク指令値をリセットしないときの旋回用電動機21の計測速度値を示している。時刻t4においてトルク指令値がリセットされてゼロとなると、反対向きのトルクが無くなる。これにより、旋回用電動機21(上部旋回体3)を揺動させるトルクは、上部旋回体3の自重による落下方向のトルクだけとなり、小さくなる。このため、旋回用電動機21(上部旋回体3)を時刻t4以降に反対方向に旋回させるトルクは減少する。これにより、旋回用電動機21(上部旋回体3)の落下は小さくなって、揺動は短時間で減衰し(
図11では反対方向に一回揺動するだけ)、上部旋回体3を短時間で停止することができる。時刻t4以降は、旋回用電動機21は、上部旋回体3の自重による落下を阻止するようにトルクT
HUを出力し続ける。
【0084】
以上のように、本実施形態では、上部旋回体3が昇り旋回を行なって早く停止するときには、
図11に示すように、トルク指令値のリセットを行なうことで、上部旋回体3の自重による落下を抑制しながら揺れ戻しも抑制することができる。
【0085】
3)ショベルが傾斜面に設置された状態で、昇り旋回をゆっくりと停止するときの制御:
図12は、ショベルが
図6に示すように傾斜地に設置されているときに上部旋回体3を昇り旋回からゆっくり停止させる際の、旋回用電動機21の速度指令値と、旋回用電動機21の計測速度値(実際の速度に相当する)と、旋回用電動機21のトルク値(トルク指令値に相当する)との変化を示すグラフである。
図12において、旋回用電動機21の速度指令値は実線で示され、旋回用電動機21の計測速度値は太い実線で示され、旋回用電動機21のトルク値は一点鎖線で示されている。なお、
図12は、旋回停止時にトルク指令値のリセットを行なわない場合の例であり、トルク指令値のリセットを行なう場合の例が
図13に示されている。
【0086】
図12に示す例では、昇り旋回を行なうため、加速時には速度指令値に対して計測速度値が大きく遅れるが、減速時には速度指令値に対して計測速度値が僅かに遅れるだけとなる。また、昇り旋回をゆっくりと停止するため、
図10に示す例よりも、速度指令値に対しする計測速度値の遅れは小さい。また、昇り旋回時は重力に逆らって上部旋回体3を旋回させるため、昇り旋回時のトルク値は、平地での旋回のときよりは大きくなる。
図12に示す例の場合、昇り旋回をゆっくりと停止させるため、トルク値は
図8の例とは異なり、時刻t2と時刻t3の間でゼロとはならず、時刻t3及び時刻t4の時点でも、昇り旋回方向のトルクT
UP−Sが発生している。すなわち、
図12に示す例では、旋回の減速は上部旋回体3の重力による落下方向のトルクで十分であり、旋回用電動機21は上部旋回体
3を支えるためのトルクT
UP−Sを出力していることとなる。このトルク値T
UP−Sが、上述の積分制御に係る偏差の積分値に相当する。
【0087】
一方、
図13に示す例では、時刻t4において、トルク指令値をリセットしている。図中の点線は、トルク指令値をリセットしないときの旋回用電動機21の計測速度値を示している。トルク指令値をリセットすると、上部旋回体3の落下を阻止するトルクが無くなるので、トルク値がゼロから上部旋回体3の自重を支えるためのトルクT
HUになるまでの間で大きく落下してしまう。このため、昇り旋回をゆっくりと停止するときには、トルク指令値をリセットしないほうが好ましい。
【0088】
本実施形態では、時刻t4において計測速度値がゼロとなっても、トルク値のリセットは行なわれず、トルクT
UP−Sが維持される。このトルクT
UP−Sにより、時刻t4以降の上部旋回体3の落下は抑制され、時刻t4以降のトルク値は、上部旋回体3の自重による落下を阻止するためのトルクT
HUに迅速に到達することとなる。
【0089】
以上のように、本実施形態では、上部旋回体3が昇り旋回を行なってゆっくりと停止するときには、
図12に示すように、トルク指令値のリセットを行なわないことで、上部旋回体3の自重による落下を抑制することができる。
【0090】
4)ショベルが傾斜面に設置された状態で、降り旋回を停止するときの制御:
図14は、ショベルが
図7に示すように傾斜地に設置されているときに上部旋回体3を降り旋回から停止させる際の、旋回用電動機21の速度指令値と、旋回用電動機21の計測速度値(実際の速度に相当する)と、旋回用電動機21のトルク値(トルク指令値に相当する)との変化を示すグラフである。
図14において、旋回用電動機21の速度指令値は実線で示され、旋回用電動機21の計測速度値は太い実線で示され、旋回用電動機21のトルク値は一点鎖線で示されている。なお、
図14は、旋回停止時にトルク指令値のリセットを行なわない場合の例であり、トルク指令値のリセットを行なう場合の例が
図15に示されている。
【0091】
図14に示す例では、降り旋回を行なうため、加速時には上部旋回体3の自重によるトルクが加わるため、速度指令値に対する計測速度値の遅れは小さい。また、時刻t1以降のトルクTcは、平地での旋回のときよりは小さくなる(Tc<Ta)。一方、停止のための減速時には上部旋回体3の自重によるトルクにも対抗しなければならないので、速度指令値に対する計測速度値の遅れは大きくなる。
図14に示す例の場合、降り旋回を停止させるため、トルク値は時刻t2を過ぎてからすぐにゼロとなり、それ以降は反対向きのトルク値は最大トルクに達する。上部旋回体3の慣性によるトルクと重量によるトルクとに対抗するために反対向きのトルク値は大きくなる。トルク値は、計測速度値がゼロとなる時刻t4においてゼロとはならず、トルク値T
DNだけ降り旋回とは反対向きの回転のトルクが生じている。このトルク値T
DNが、上述の積分制御に係る偏差の積分値に相当する。
【0092】
トルク値T
DNは、上部旋回体3の自重による落下を阻止するためのトルクT
HUと同じ方向のトルクであり、時刻t4においてトルク値T
DNが発生していることで、上部旋回体3の自重によるトルクが打ち消され、時刻t4以降の上部旋回体3の落下は阻止される。
【0093】
一方、
図15に示す例では、時刻t4において、トルク指令値をリセットしている。図中の点線は、トルク指令値をリセットしないときの旋回用電動機21の計測速度値を示している。トルク指令値をリセットすると、上部旋回体3の落下を阻止するトルクが無くなるので、トルク値がゼロから上部旋回体3の自重を支えるためのトルクT
HDになるまでの間で大きく落下してしまう。このため、降り旋回を停止するときには、トルク指令値をリセットしないほうが好ましい。
【0094】
本実施形態では、時刻t4において計測速度値がゼロとなっても、トルク値のリセットは行なわれず、トルクT
DNが維持される。このトルクT
DNにより、時刻t4以降の上部旋回体3の落下は抑制され、時刻t4以降のトルク値は、上部旋回体3の自重による落下を阻止するためのトルクT
HDに迅速に到達することとなる。
【0095】
以上のように、本実施形態では、上部旋回体3が降り旋回を行なって停止するときには、
図14に示すように、トルク指令値のリセットを行なわないことで、上部旋回体3の自重による落下を抑制しながら揺動を防止することができる。
【0096】
次に、本実施形態による電動旋回
制御装置40が行なう、旋回用電動機21のトルク制御について、
図16を参照しながら説明する。
図16は、上部旋回体3の旋回を停止する際の旋回用電動機21のトルク制御処理のフローチャートである。
【0097】
トルク制御処理がスタートすると、まず、ステップS1において、上部旋回体3の旋回速度がゼロとなったときの旋回用電動機21のトルク指令値が、加速方向であるか否かが判定される。
【0098】
ステップS1において、トルク指令値が加速方向であると判定されると、(ステップS1のYES)処理はステップS2に進む。トルク指令値が加速方向であると判定される場合は、上述の3)ショベルが傾斜面に設置された状態で昇り旋回をゆっくりと停止するときである。ステップS2では、トルク指令値をリセットしないでそのまま旋回用電動機21に供給する。
【0099】
一方、ステップS1において、トルク指令値が加速方向ではないと判定されると、(ステップS1のNO)処理はステップS3に進む。トルク指令値が加速方向ではないと判定される場合は、上述の1)ショベルが平地に設置されたれ状態で旋回を停止するときと、2)ショベルが傾斜面に設置された状態で、昇り旋回を早く停止するときと、4)ショベルが傾斜面に設置された状態で降り旋回を停止するときである。
【0100】
ステップS3では、上部旋回体3の旋回速度がゼロとなったときの旋回用電動機21のトルク指令値が、予め設定された所定値T
TH以上であるか否かが判定される。この所定値T
THは、旋回方向のトルク値を正として、旋回方向とは反対方向のトルク値を負としたときのトルク値の絶対値であって、
図14に示すトルクT
DN(負の値)の絶対値と
図8に示すトルクT
FT(負の値)の絶対値との間の値に設定すればよい(T
DN>T
TH>T
FT)。
【0101】
ステップS3において、トルク指令値が所定値以上であると判定されると(ステップS3のYES)、処理はステップS2に進み、トルク指令値をリセットしないでそのまま旋回用電動機21に供給する。トルク指令値が所定値以上であると判定されてステップS2に進むのは、上述の4)ショベルが傾斜面に設置された状態で降り旋回を停止するときである。
【0102】
一方、ステップS3において、トルク指令値が所定値以上ではないと判定されると(ステップS3のNO)、処理はステップS4に進む。トルク指令値が所定値以上ではないと判定されてステップS4に進むのは、上述の1)ショベルが平地に設置された状態で旋回を停止するときと、2)ショベルが傾斜面に設置された状態で、昇り旋回を早く停止するときである。ステップ
S4では、上部旋回体3の旋回速度がゼロとなったとき(時刻t4)のトルク指令値がリセットされゼロに設定される。ステップS4に進むのは、上述の1)ショベルが平地に設置されたれ状態で旋回を停止するときと、2)ショベルが傾斜面に設置された状態で昇り旋回を早く停止するときであり、これらの場合にはトルク指令値のリセットが行なわれる。
【0103】
以上のトルク制御処理によれば、ゼロ速度到達時のトルクの方向が加速方向である場合は、旋回用電動機21のトルク指令値のリセットは行なわない。一方、ゼロ速度到達時のトルクの方向が減速方向であり、且つトルクの絶対値が所定値T
TH未満の場合は、旋回用電動機21のトルク指令値をリセットしてゼロにする。また、ゼロ速度到達時のトルクの方向が減速方向であり、且つトルクの絶対値が所定値T
TH以上の場合は、旋回用電動機21のトルク指令値のリセットは行なわない。
【0104】
すなわち、以上のトルク制御処理では、旋回停止時(ゼロ速度到達時)のトルクの向き及び大きさに基づいて、旋回用電動機21のトルク指令値をリセットするか(ゼロにするか)否かを判断し、平地での揺れ戻しの抑制と傾斜地での落下の抑制とを両立している。特に平地であるか傾斜地であるかを例えば傾斜センサ等で判定する必要はなく、簡単な処理で効果的なトルク制御処理を実現することができる。また、上部旋回体3の重心が旋回中心に対してどの位置にあるのかを判定する必要はなく、重心の位置に関わらずに傾斜地でのトルク制御を実現することができる。
【0105】
本明細書ではハイブリッドショベルの実施形態により本発明を説明したが、本発明は具体的に開示された上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形例及び改良例がなされるであろう。
【0106】
本出願は、2011年9月15日出願の優先権主張日本国特許出願第2011−202117号に基づくものであり、その全内容は本出願に援用される。