特許第5844387号(P5844387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5844387ヨークユニット、ヨークユニットの製造方法、トルク検出装置、および電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5844387
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月13日
(54)【発明の名称】ヨークユニット、ヨークユニットの製造方法、トルク検出装置、および電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20151217BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20151217BHJP
【FI】
   G01L3/10 305
   B62D5/04
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-551711(P2013-551711)
(86)(22)【出願日】2012年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2012083526
(87)【国際公開番号】WO2013099884
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-284355(P2011-284355)
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】593025011
【氏名又は名称】山清工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 文彦
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 邦男
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−292550(JP,A)
【文献】 特開2007−093624(JP,A)
【文献】 特開2008−002979(JP,A)
【文献】 特開平08−098498(JP,A)
【文献】 特開平09−047007(JP,A)
【文献】 米国特許第05943760(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10
B62D 5/04
H02K 37/14
G01D 5/12
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1磁極歯を有する第1ヨークと、
複数の第2磁極歯を有し、前記複数の第2磁極歯のそれぞれは隣り合う2つの前記第1磁極歯の間に位置し、前記第1ヨークと同軸を有する第2ヨークと、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークを一体化する樹脂部であって、前記樹脂部の内面において前記第1磁極歯および前記第2磁極歯の間には凹部が形成されている樹脂部とを備えるヨークユニットであって、
前記樹脂部において、前記凹部を有しない部分の外面と前記ヨークユニットの中心との間の距離は、前記凹部を有する部分の外面と前記ヨークユニットの中心との間の距離よりも小さいことを特徴とするヨークユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のヨークユニットにおいて、
前記第1磁極歯は、前記磁極歯の正面視においてV字形状を有し、
前記凹部は、前記V字形状と対応する形状を有することを特徴とするヨークユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヨークユニットにおいて、
前記凹部は、前記第2磁極歯と接していることを特徴とするヨークユニット。
【請求項4】
ヨークユニットの製造方法であって、前記ヨークユニットは、複数の第1磁極歯を有する第1ヨークと、複数の第2磁極歯を有する第2ヨークと、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークを一体化する樹脂部とを有し、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークは同軸を有し、前記複数の第2磁極歯のそれぞれは、隣り合う2つの前記第1磁極歯の間に位置するヨークユニットの製造方法において、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークを内面から支持する下型に、前記第1ヨークを嵌め込む第1工程と、
前記下型に、前記第2ヨークを嵌め込む第2工程と、
前記樹脂部を成形する第3工程とを含み、
前記第1工程では、前記下型に形成された凸部に前記第1磁極歯を接触させることにより、前記下型に対する前記第1ヨークの周方向の位置が決められ、
前記第2工程では、前記凸部に前記第2磁極歯を接触させることにより、前記下型に対する前記第2ヨークの周方向の位置が決められるヨークユニットの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヨークユニットを備えるトルク検出装置。
【請求項6】
請求項に記載のトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨークユニット、ヨークユニットの製造方法、ヨークユニットを備えるトルク検出装置、およびトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図19を参照して、従来のヨークユニット300について説明する。ヨークユニット300は、第1ヨーク310、第2ヨーク320、および樹脂部330を有する。第1ヨーク310は、複数の第1磁極歯311、第1ヨークコア312、および貫通孔313を有する。貫通孔313は、第1ヨークコア312に形成されている。第2ヨーク320は、複数の第2磁極歯321、第2ヨークコア322、および貫通孔323を有する。貫通孔323は、第2ヨークコア322に形成されている。第1ヨーク310および第2ヨーク320は同軸を有し、各第2磁極歯321は、隣り合う2つの第1磁極歯311の間に位置する。樹脂部330は、第1ヨーク310および第2ヨーク320を一体化する。特許文献1は、従来のヨークユニットの一例を開示している。
【0003】
図20を参照して、ヨークユニット300の製造方法について説明する。
【0004】
ヨークユニット300は、ピン500及び下型400等を用いて製造される。まず、ピン500が、貫通孔323及び貫通孔313の順にそれぞれ挿入される。これにより、下型400に対する第1ヨーク310および第2ヨーク320の周方向の位置がそれぞれ決められる。次に、下型400の周囲に配置される型(図示略)と下型400との間の空間に、溶融した樹脂が流し込まれる。そして、溶融樹脂を硬化させることで、樹脂部330が成形される。
【0005】
第1ヨーク310および第2ヨーク320の周方向の位置は、貫通孔313,323を用いて決められる。このため、貫通孔313,323の位置に誤差が生じると、第1ヨーク310および第2ヨーク320の位置精度が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−2979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、第1ヨークおよび第2ヨークの位置決め精度の低下を抑制することが可能なヨークユニット、ヨークユニットの製造方法、トルク検出装置、および電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第一の態様によれば、複数の第1磁極歯を有する第1ヨークと、複数の第2磁極歯を有し、複数の第2磁極歯のそれぞれは隣り合う2つの第1磁極歯の間に位置し、第1ヨークと同軸を有する第2ヨークと、第1ヨークおよび第2ヨークを一体化する樹脂部であって、樹脂部の内面において第1磁極歯および第2磁極歯の間には凹部が形成されている樹脂部とを備えるヨークユニットであって、樹脂部において、凹部を有しない部分の外面とヨークユニットの中心との間の距離は、凹部を有する部分の外面とヨークユニットの中心との間の距離よりも小さいヨークユニットが提供される。
【0009】
ヨークユニットは、第1工程と、第2工程と、第3工程とにより製造される。第1工程では、第1ヨークおよび第2ヨークを内面から支持する下型に第1ヨークが嵌め込まれ、第2工程では、下型に第2ヨークが嵌め込まれ、第3工程では、樹脂部が成形される。
【0010】
ヨークユニットを構成する樹脂部の内面は、第1磁極歯および第2磁極歯の間に凹部を有する。すなわち、下型は、凹部と対応する位置に凸部を有する。このため、第1工程において、凸部に第1磁極歯を接触させることにより、下型に対する第1ヨークの周方向の位置を決めることができる。また、第2工程において、凸部に第2磁極歯を接触させることにより、下型に対する第2ヨークの周方向の位置を決めることができる。これにより、第1ヨークおよび第2ヨークの周方向の位置が決めることができる。よって、第1ヨークおよび第2ヨークの位置精度の低下を抑制できる。
また、ヨークユニットを構成する樹脂部において、凹部を有しない部分の外面とヨークユニットの中心との間の距離が、凹部を有する部分の外面とヨークユニットの中心との間の距離よりも小さい。つまり、ヨークユニットは凹部を有しない部分で肉抜きされているため、肉抜きされていないヨークユニットと比較して、ヨークユニットを軽量化することができる。
【0011】
上記のヨークユニットにおいて、第1磁極歯は、磁極歯の正面視においてV字形状を有し、凹部は、V字形状と対応する形状を有することが好ましい。
【0012】
ヨークユニットに設けられた凹部は、V字形状を有する。すなわち、ヨークユニットの製造に用いられる下型の凸部は、V字形状を有する。この構成によれば、第1工程において、凸部は、第1磁極歯の2つの斜面を支持することができる。これにより、凸部に対する第1ヨークおよび第2ヨークの周方向の位置精度が高くなる。
【0013】
上記のヨークユニットにおいて、凹部は、第2磁極歯と接していることが好ましい。
【0014】
第3工程において、凸部を第2磁極歯に接触させたまま、樹脂部を成形することができる。このため、第3工程において、凸部に対する第2ヨークの周方向の位置がずれにくい。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の第二の態様によれば、ヨークユニットの製造方法であって、ヨークユニットは、複数の第1磁極歯を有する第1ヨークと、複数の第2磁極歯を有する第2ヨークと、第1ヨークおよび第2ヨークを一体化する樹脂部とを有し、第1ヨークおよび第2ヨークは同軸を有し、複数の第2磁極歯のそれぞれは、隣り合う2つの第1磁極歯の間に位置するヨークユニットの製造方法が提供される。この製造方法は、第1ヨークおよび第2ヨークを内面から支持する下型に、第1ヨークを嵌め込む第1工程と、下型に、第2ヨークを嵌め込む第2工程と、樹脂部を成形する第3工程とを含み、第1工程では、下型に形成された凸部に第1磁極歯を接触させることにより、下型に対する第1ヨークの周方向の位置が決められ、第2工程では、凸部に第2磁極歯を接触させることにより、下型に対する第2ヨークの周方向の位置が決められる。
【0018】
下型は、凸部を有する。このため、第1工程において、凸部に第1磁極歯を接触させることにより、下型に対する第1ヨークの周方向の位置を決めることができる。また、第2工程において、凸部に第2磁極歯を接触させることにより、下型に対する第2ヨークの周方向の位置を決めることができる。これにより、第1ヨークおよび第2ヨークの周方向の位置を決めることができる。よって、第1ヨークおよび第2ヨークの位置精度の低下が抑制できる。
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明の第三の態様によれば、上記のヨークユニットを備えるトルク検出装置が提供される。
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の第四の態様によれば、上記のトルク検出装置を備える電動パワーステアリング装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、第1ヨークおよび第2ヨークの位置決め精度の低下を抑制することが可能なヨークユニット、ヨークユニットの製造方法、トルク検出装置、および電動パワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の全体構成を示す模式図。
図2】トルク検出装置付近を拡大して示す部分断面図。
図3】トルク検出装置の分解斜視図。
図4】(a)はヨークユニットを透過して示す斜視図、(b)はヨークユニットの斜視図、(c)はヨークユニットの内面における凹部を拡大して示す部分正面図。
図5】(a)はヨークユニットの製造に用いられる下型の平面図、(b)は下型の正面図。
図6】(a)はヨークユニットの製造に用いられる周囲型の平面図、(b)は周囲型を構成する第1分割体の側面図。
図7】(a)はヨークユニットの製造に用いられる上型の平面図、(b)は図7(a)の7b−7b線に沿った断面図。
図8】(a)は型締工程Aを示す斜視図、(b)は下型の凸部付近を拡大して示す部分正面図。
図9】(a)は型締工程Bを示す斜視図、(b)は下型の凸部付近を拡大して示す部分正面図。
図10】型締工程Cを示す斜視図。
図11】型締工程Dを示す斜視図。
図12】(a)は型締工程Dにおいて周囲型が嵌め込まれる直前の状態を示す部分断面図、(b)は型締工程Dにおいて周囲型が嵌め込まれた後の状態を示す部分断面図、(c)は下型の凸部付近を拡大して示す部分正面図。
図13】(a)は型締工程Eを示す斜視図、(b)は図13(a)の13b−13b線に沿った断面図。
図14】(a)は冷却工程を示す斜視図、(b)は図14(a)の14b―14b線に沿った断面図。
図15】(a)は本発明の第2実施形態に係るトルク検出装置を構成するヨークユニットの斜視図、(b)はヨークユニットの平面図。
図16】ヨークユニットの中心、および凹部が形成されていない部分を含むヨークユニットの部分断面図。
図17】ヨークユニットの中心、および凹部が形成されている部分を含むヨークユニットの部分断面図。
図18】(a)は別例の下型を示す平面図、(b)は別例の下型の凸部付近を拡大して示す部分正面図。
図19】従来のヨークユニットを透過して示す斜視図。
図20】従来のヨークユニットの製造工程を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1図4(b)を参照して、電動パワーステアリング装置の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、操舵角伝達機構10、アシストアクチュエータ18、電子制御装置30、トルク検出装置40、および車速センサ31を有する。操舵角伝達機構10は、ステアリングシャフト11、ラックアンドピニオン機構15、タイロッド17、およびトーションバー21を有する。操舵角伝達機構10は、ステアリングホイール2の回転を転舵輪3に伝達する。ステアリングシャフト11は、コラムシャフト12、ピニオンシャフト14、およびインターミディエイトシャフト13を有する。ステアリングホイール2を操作すると、ステアリングシャフト11が回転する。
【0025】
コラムシャフト12は、入力軸12Aおよび出力軸12Bを有する。コラムシャフト12の先端には、ステアリングホイール2が固定されている。ピニオンシャフト14は、ラックアンドピニオン機構15を介してラック軸16に連結されている。インターミディエイトシャフト13は、コラムシャフト12とピニオンシャフト14とを互いに接続する。ラックアンドピニオン機構15は、ステアリングシャフト11の回転をラック軸16の直線運動に変換する。タイロッド17は、ラック軸16の直線運動をナックル(図示略)に伝達する。
【0026】
図2に示すように、トーションバー21は、2つのピン24を有する。トーションバー21は、入力軸12Aおよび出力軸12Bの間に配置される。ステアリングホイール2を回転させると、トーションバー21が捩れる。一方のピン24は、トーションバー21の入力側端部22をコラムシャフト12の入力軸12Aに固定する。他方のピン24は、トーションバー21の出力側端部23をコラムシャフト12の出力軸12Bに固定する。
【0027】
図1に示すように、アシストアクチュエータ18は、モータ18Aおよび減速機構18Bを有する。アシストアクチュエータ18は、ステアリングホイール2の操作を補助するためのアシスト力を、操舵角伝達機構10に付与する。モータ18Aの回転は、減速機構18Bにより減速されてから、ステアリングシャフト11に伝達される。このとき、モータ18Aからステアリングシャフト11に付与されるトルクは、アシスト力として作用する。モータ18Aとしては、ブラシ付きの直流モータが用いられている。
【0028】
トルク検出装置40は、出力信号SAを電子制御装置30に出力する。出力信号SAは、ステアリングホイール2の操作によりステアリングシャフト11に付与されたトルクに応じて生じる。車速センサ31は、出力信号SBを電子制御装置30に出力する。出力信号SBは、車両の後輪としての転舵輪の回転速度に応じて生じる。
【0029】
電子制御装置30は、トルク検出装置40からの出力信号SAに基づいて操舵トルクτを算出する。操舵トルクτは、ステアリングホイール2の操作にともないステアリングシャフト11に入力されたトルク値に相当する演算値である。電子制御装置30は、各車速センサ31からの出力信号SBに基づいて車速Vを算出する。車速Vは、車両の走行速度に相当する演算値である。
【0030】
電子制御装置30は、パワーアシスト制御と操舵トルクシフト制御とを行う。パワーアシスト制御は、車速V等の車両の走行状態およびステアリングホイール2の操舵状態に応じてアシスト力を調整するために実行される。操舵トルクシフト制御は、パワーアシスト制御に用いられる操舵トルクτを補正するために実行される。
【0031】
図3に示すように、トルク検出装置40は、2つの集磁リング41、円筒磁石42、2つの磁気センサ43、およびヨークユニット50を有する。磁気センサ43としては、ホールICが用いられる。各集磁リング41は、円環部41Aおよび2つの腕部41Bを有する。一方の集磁リング41は、ヨークユニット50の外面50Bから突出した第1ヨーク60と対応する部分に配置される。他方の集磁リング41は、ヨークユニット50の外面50Bから突出した第2ヨーク70と対応する部分に配置される。円環部41Aは、ヨークユニット50の外面50Bに沿って配置される。2つの腕部41Bは、磁気センサ43を挟み込む。
【0032】
円筒磁石42では、N極42AおよびS極42Bが、円筒磁石42の周方向に沿って交互に配置される。円筒磁石42は、コラムシャフト12の入力軸12Aに固定される。各磁気センサ43は、一方の集磁リング41の腕部41Bと、他方の集磁リング41の腕部41Bとの間に位置する。ヨークユニット50は、コラムシャフト12の出力軸12Bに固定される。
【0033】
図4(a)中、樹脂部80の外面83のみを二点鎖線により示し、外面83以外の部分を省略している。図3及び図4(a)に示すように、ヨークユニット50は、内面50A、外面50B、カラー51、第1ヨーク60、第2ヨーク70、および樹脂部80を有する。カラー51は、円筒形状を有する。カラー51の第1ヨーク60に面する端部には、2つの溝部51Bが形成されている。カラー51は、コラムシャフト12の出力軸12Bに圧入される。
【0034】
第1ヨーク60は、複数の第1磁極歯61および第1ヨークコア62を有する。第1ヨークコア62は、平板からなり、第1ヨーク60の軸線を中心とする円環状に形成されている。複数の第1磁極歯61は、第1ヨークコア62から第2ヨーク70に向けてそれぞれ突出する。図4(c)に示すように、第1磁極歯61は、第1傾斜部61Aと、第2傾斜部61Bとを有する。第1磁極歯61は、正面視においてV字形状を有する。
【0035】
図4(a)に示すように、第2ヨーク70は、複数の第2磁極歯71および第2ヨークコア72を有する。第2ヨークコア72は、平板からなり、第2ヨーク70の軸線を中心とする円環状に形成されている。複数の第2磁極歯71は、第2ヨークコア72から第1ヨーク60に向けてそれぞれ突出する。図4(c)に示すように、第2磁極歯71は、第1傾斜部71Aと、第2傾斜部71Bとを有する。第2磁極歯71は、正面視においてV字形状を有する。
【0036】
図4(b)に示すように、第1ヨーク60および第2ヨーク70は、同軸を有する。第1磁極歯61および第2磁極歯71は、第1ヨーク60および第2ヨーク70の周方向に沿って交互にそれぞれ配置される。図4(c)に示すように、第1磁極歯61の第1傾斜部61Aと、第2磁極歯71の第1傾斜部71Aとが互いに対向する。また、第1磁極歯61の第2傾斜部61Bと、第2磁極歯71の第2傾斜部71Bとが互いに対向する。
【0037】
図4(b)に示すように、樹脂部80は、内面81、3つの凹部82、および外面83を有する。樹脂部80は、第1磁極歯61および第2磁極歯71の外周を覆う。樹脂部80は、第1磁極歯61および第2磁極歯71の間を埋める。3つの凹部82は、樹脂部80の内面81において120度の間隔を空けてそれぞれ形成されている。3つの凹部82は、隣り合う第2磁極歯71の間に形成されている。樹脂部80は、第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51を一体化する。これにより、第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51の位置が固定される。第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51は、互いに接触しない状態で固定される。
【0038】
図4(c)に示すように、各凹部82は、第1凹部82Aと、第2凹部82Bと、第3凹部82Cとからなる。第1凹部82Aは、第1磁極歯61の第1傾斜部61Aと、第2磁極歯71の第1傾斜部71Aとの間に形成されている。第2凹部82Bは、第1磁極歯61の第2傾斜部61Bと、第2磁極歯71の第2傾斜部71Bとの間に形成されている。第3凹部82Cは、第1磁極歯61の頂部とヨークユニット50の端部との間に形成されている。第3凹部82Cは、第1凹部82Aおよび第2凹部82Bを互いに接続する。
【0039】
第1凹部82Aの第2凹部82Bと対向する部分は、第1傾斜部71Aと対応する形状を有する。第2凹部82Bの第1凹部82Aと対向する部分は、第2傾斜部71Bと対応する形状を有する。凹部82は、第1磁極歯61のV字形状と対応する形状を有する。第1凹部82Aは、第1傾斜部71Aの基端と接している。第2凹部82Bは、第2傾斜部71Bの基端と接している。第1凹部82A、第2凹部82B、および第3凹部82Cはいずれも、第1磁極歯61と接していない。
【0040】
図4(b)に示すように、ヨークユニット50の外面50Bは、樹脂部80の外面83、第1ヨークコア62の外面、および第2ヨークコア72の外面により構成される。ヨークユニット50の内面50Aは、第1磁極歯61の内面である第1ヨーク60の内面60A、第2磁極歯71の内面である第2ヨーク70の内面70A、樹脂部80の内面81、およびカラー51の内面51Aにより構成される。
【0041】
ヨークユニット50の外径は、ヨークユニット50の上端から下端にかけて一定である。ヨークユニット50において、樹脂部80からなる部分の外径は、第1ヨークコア62および第2ヨークコア72からなる部分の外径よりも僅かに小さい。ヨークユニット50において、樹脂部80からなる部分の外径は一定である。ヨークユニット50において、カラー51からなる部分の内径は、カラー51以外の部分の内径よりも小さい。
【0042】
図3を参照して、ヨークユニット50および円筒磁石42の関係について説明する。
【0043】
トーションバー21に捩れが生じていないとき、円筒磁石42のN極42AおよびS極42Bの境界は、第1磁極歯61および第2磁極歯71の頂部の中心と一致する。このとき、第1及び第2磁極歯61,71に到達するN極42Aの磁力線の数は、S極42Bの磁力線の数と等しい。このため、磁力線は、第1ヨーク60および第2ヨーク70の間で閉ループを形成する。これにより、円筒磁石42の磁束が、第1ヨーク60および第2ヨーク70の間の磁気ギャップに到達しない。このとき、磁気センサ43の出力信号SAは、基準値を示す。
【0044】
ステアリングホイール2の操舵によりトーションバー21に捩れが生じているとき、N極42AおよびS極42Bの境界は、第1磁極歯61および第2磁極歯71の頂部の中心に対してずれる。このとき、N極42AおよびS極42Bの境界は、第1及び第2磁極歯61,71の頂部の中心からずれる。このため、第1及び第2磁極歯61,71の一方に到達するN極42Aの磁力線の数は、S極42Bの磁力線の数よりも多くなる。また、第1及び第2磁極歯61,71の他方に到達するS極42Bの磁力線の数は、N極42Aの磁力線の数よりも多くなる。これにより、円筒磁石42の磁束が第1ヨーク60および第2ヨーク70の間の磁気ギャップに到達する。このとき、磁気センサ43からの出力信号SAは、トーションバー21の捩れの量、すなわちステアリングホイール2(図1参照)の回転量に応じた大きさを示す。
【0045】
図5(a)〜図14(b)を参照して、ヨークユニット50の製造方法について説明する。
【0046】
ヨークユニット50の製造工程は、射出成形の工程を含む。射出成形の工程は、型締工程、射出工程、冷却工程、型開工程、および取出工程を含む。型締工程は、型締工程A、型締工程B、型締工程C、型締工程D、および型締工程Eを含む。
【0047】
まず、図8(a)に示すように、型締工程Aでは、下型110に形成された第2ヨーク70の配置部分に、第2ヨーク70を配置する。次に、図9(a)に示すように、型締工程Bでは、下型110に形成された第1ヨーク60の配置部分に、第1ヨーク60を配置する。次に、図10に示すように、型締工程Cでは、下型110に形成されたカラー51の配置部分に、カラー51を配置する。次に、図11に示すように、型締工程Dでは、下型110に対して周囲型120を配置する。次に、図13(a)に示すように、型締工程Eでは、下型110および周囲型120に対して上型130を配置する。そして、射出工程では、下型110の外周と、周囲型120および上型130の内周との間に形成される充填空間Sに、成形材料の樹脂を流し込む。型締工程Aは「第2工程」に相当する。型締工程Bは「第1工程」に相当する。冷却工程は「第3工程」に相当する。
【0048】
図5(a)、図5(b)及び図8(a)に示すように、下型110は、台部111および円筒部112を有する。台部111は、第2ヨーク70を下方から支持する。台部111は、溝部111Aを有する。溝部111Aは、円筒部112の下端付近に設けられ、円筒部112の外周面に沿って延びている。円筒部112は、ヨーク嵌込部113およびカラー嵌込部117を有する。円筒部112には、第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51が嵌め込まれる。カラー嵌込部117には、カラー51が嵌め込まれる。カラー嵌込部117の外径は、ヨーク嵌込部113の外径よりも小さい。
【0049】
ヨーク嵌込部113は、3つの凸部114およびカラー固定部118を有する。ヨーク嵌込部113には、第1ヨーク60および第2ヨーク70が嵌め込まれる。カラー固定部118は、ヨーク嵌込部113の上端に形成されている。カラー固定部118には、カラー51の溝部51Bが嵌め込まれる。3つの凸部114は、ヨーク嵌込部113と台部111との境界付近に形成されている。3つの凸部114の下端は、溝部111A内に位置する。各凸部114は、円筒部112の周面において120度の間隔を空けてそれぞれ形成されている。
【0050】
図8(b)に示すように、各凸部114は、側面115および支持面116を有する。側面115は、各凸部114の両側部に形成されている。側面115は、円筒部112の軸方向に沿って延びている。支持面116は、2つの側面115の間に形成されている。支持面116は、図4(c)に示す第1磁極歯61と対応するようにV字形状を有している。
【0051】
図6(a)及び図6(b)に示すように、周囲型120は、第1分割体120Aおよび第2分割体120Bからなる。第1分割体120Aおよび第2分割体120Bを合わせた状態で、周囲型120は円筒形状を有する。周囲型120の内面は、周囲型120の軸方向の中間部にて、周囲型120の軸線に向けて突出している。このため、周囲型120の内面における軸方向の両端部には、第1リング溝121および第2リング溝122が形成されている。
【0052】
図7(a)及び図7(b)に示すように、上型130は、有底円筒形状を有する。上型130の内径は、周囲型120の内径と一致する。
【0053】
続いて、図8(a)〜図14(b)を参照して、ヨークユニット50の射出成形工程について説明する。
【0054】
(型締工程A)
図8(a)及び図8(b)に示すように、第2ヨーク70は、第2磁極歯71を上方に向けて、円筒部112に嵌め込まれる。円筒部112の凸部114は、隣り合う第2磁極歯71の間に嵌め込まれる。このとき、隣り合う第2磁極歯71の下端のそれぞれと凸部114の側面115の下端とが互いに接触する。これにより、円筒部112に対する第2ヨーク70の周方向の位置が決められる。
【0055】
(型締工程B)
図9(a)及び図9(b)に示すように、第1ヨーク60は、第1磁極歯61を下方に向けて、円筒部112に嵌め込まれる。第1磁極歯61は、凸部114の支持面116の内側に嵌め込まれる。このとき、支持面116は、第1磁極歯61の第1傾斜部61Aおよび第2傾斜部61Bに接触する。これにより、円筒部112に対する第1ヨーク60の周方向の位置が決められる。型締工程Aおよび型締工程Bにより、第1ヨーク60および第2ヨーク70の周方向の相対位置が決められる。
【0056】
(型締工程C)
図10に示すように、カラー51は、第1ヨーク60の上方からカラー嵌込部117に嵌め込まれる。カラー51の溝部51Bは、カラー固定部118に嵌め込まれる。これにより、円筒部112に対するカラー51の周方向の位置が決められる。
【0057】
(型締工程D)
図11に示すように、周囲型120の第1分割体120Aが台部111の上方に配置される。また、図示はしないが、第2分割体120Bも台部111の上方に配置される。これにより、ヨーク嵌込部113は、周囲型120に覆われる。このとき、図12(a)及び図12(b)に示すように、第2ヨーク70の第2ヨークコア72は、周囲型120の第2リング溝122に嵌め込まれる。また、第1ヨーク60の第1ヨークコア62は、周囲型120の第1リング溝121に嵌め込まれる。第1ヨークコア62が第1リング溝121に嵌め込まれることで、第1ヨーク60は上方に移動させられる。
【0058】
(型締工程E)
図13(a)に示すように、周囲型120の上方とカラー51の周りに上型130を配置する。
【0059】
(射出工程)
図13(b)に示すように、上型130の内面と下型110との間、周囲型120の内面と下型110との間、及び溝部111Aの内部にはそれぞれ充填空間Sが形成される。そして、この充填空間Sに、成形材料である樹脂を流し込む。
【0060】
(冷却工程)
図14(a)及び図14(b)に示すように、充填空間S内の成形材料を冷却して、樹脂部80を成形する。
【0061】
(型開工程)
周囲型120および上型130を下型110から取り外す。
【0062】
(取出工程)
ヨークユニット50を上方に移動させて、下型110から抜き取る。
【0063】
第1実施形態のヨークユニット50は、以下の効果を奏する。
【0064】
(1)従来の製造方法によれば、第1ヨークコア62および第2ヨークコア72に貫通孔を形成し、両貫通孔に下方からピンを挿入して、第1ヨーク60および第2ヨーク70の位置を決めていた。この方法では、第1ヨークコア62および第2ヨークコア72の貫通孔の位置に誤差が生じると、第1ヨーク60および第2ヨーク70の位置精度が低下するおそれがある。
【0065】
本実施形態によれば、ヨークユニット50は、樹脂部80の内面81に凹部82を有する。また、下型110は、凸114部を有する。このため、型締工程Bでは、凸部114の支持面116に第1磁極歯61を接触させることにより、下型110に対する第1ヨーク60の周方向の位置を決めることができる。また、型締工程Aでは、凸部114の側面115に第2磁極歯71を接触させることにより、下型110に対する第2ヨーク70の周方向の位置を決めることができる。よって、第1ヨーク60および第2ヨーク70の周方向の位置を決めることができる。
【0066】
この方法によれば、貫通孔を利用する従来の製造方法と比較して、第1ヨーク60および第2ヨーク70の位置精度の低下を抑制できる。また、従来の製造方法によれば、ピンを利用するため、ピンが磨耗して変形すると、第1ヨーク60および第2ヨーク70の位置精度の低下するおそれがある。その点、本実施形態によれば、ピンよりも剛性の高い凸部114を利用するため、凸部114の磨耗による変形を抑制することができる。
【0067】
また、従来の製造方法によれば、第1ヨーク60および第2ヨーク70に貫通孔を設ける必要があるため、磁気センサ43の磁気抵抗が大きくなる。このため、トルク検出装置40の検出感度が低下するおそれがある。その点、本実施形態によれば、凸部114を利用する方法であるため、従来の製造方法のように貫通孔を第1ヨーク60および第2ヨーク70に設ける必要が無い。よって、トルク検出装置40の検出感度の低下が抑制される。
【0068】
また、ヨークユニット50では、凹部82を有しない樹脂部80と比較して、樹脂部80の体積が小さい。このため、樹脂部80の軽量化に寄与することができる。また、樹脂部80の磁気抵抗と空気の磁気抵抗との差も十分に小さいため、凹部82によるトルク検出装置40の検出感度の低下も抑制される。
【0069】
(2)下型110の凸部114は、V字形状の支持面116を有する。この構成によれば、凸部114は、第1磁極歯61の第1傾斜部61Aおよび第2傾斜部61Bの両方を下方から支持することができる。このため、型締工程Bにおいて、第1ヨーク60、下型110、および第2ヨーク70の周方向の位置精度が高くなる。
【0070】
(3)第1凹部82Aは、第1傾斜部71Aの基端と接している。また、第2凹部82Bは、第2傾斜部71Bの基端と接している。また、射出工程では、凸部114の側面115と第2磁極歯71とを接触させた状態で、樹脂部80が成形される。このため、射出工程および冷却工程において、凸部114に対する第2ヨーク70の周方向の位置にずれが生じにくい。
【0071】
(4)凸部114の側面115は、下型110の軸線に沿って延びている。このため、取出工程において、ヨークユニット50を上方に移動する際に、ヨークユニット50が側面115に引っ掛かりにくい。
【0072】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を図15(a)〜図17を参照して説明する。第2実施形態は、ヨークユニット50の外面50Bが凹凸形状を有し、周囲型120の内面および溝部111Aの外側の面が凹凸形状を有している点で、第1実施形態と異なる。よって、第2実施形態における第1実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0073】
図15(a)及び図15(b)に示すように、ヨークユニット50は、内面50A、外面50B、カラー51、第1ヨーク60、第2ヨーク70、および樹脂部90を有する。樹脂部90は、内面91、3つの凹部92、および外面93を有する。樹脂部90は、第1磁極歯61および第2磁極歯71の外周を覆う。また、樹脂部90は、第1磁極歯61および第2磁極歯71の間を埋める。
【0074】
3つの凹部92は、樹脂部90の内面91において120度の間隔を空けてそれぞれ形成されている。3つの凹部92は、隣り合う第2磁極歯71の間に形成されている。樹脂部90は、第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51を一体化する。これにより、第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51の位置が固定される。第1ヨーク60、第2ヨーク70、およびカラー51は、互いに接触しない状態で固定される。
【0075】
外面93は、第1端部94、第2端部95、中間部96、およびを有する。第1端部94は、カラー51に対応する部分であり、円形状を有する。第2端部95は、カラー51と反対側の部分である。第2端部95は、3つの凹部対向部95Aおよび3つの凹部非対向部95Bを有する。ヨークユニット50の周方向における各凹部対向部95Aの位置は、凹部92の位置と一致する。各凹部非対向部95Bは、隣り合う凹部対向部95A間に形成されている。中間部96は、第1ヨークコア62と第2ヨークコア72との間の部分である。中間部96は、3つの凹部対向部96Aおよび3つの凹部非対向部96Bを有する。ヨークユニット50の周方向における各凹部対向部96Aの位置は、凹部92の位置と一致する。各凹部非対向部96Bは、隣り合う凹部対向部96A間に形成されている。
【0076】
ヨークユニット50の外面50Bは、樹脂部90の外面93、第1ヨークコア62の外面、および第2ヨークコア72の外面により構成される。ヨークユニット50の内面50Aは、第1磁極歯61の内面である第1ヨーク60の内面60A、第2磁極歯71の内面である第2ヨーク70の内面70A、樹脂部90の内面91、およびカラー51の内面51Aにより構成される。
【0077】
図15(b)に示すように、ヨークユニット50において、樹脂部90からなる部分の外径は、周方向において、部分的に異なる大きさを有する。ヨークユニット50の中心50Cから凹部非対向部95Bまでの距離LBは、中心50Cから凹部対向部95Aまでの距離LAよりも小さい。すなわち、樹脂部90において、凹部92を有しない部分の外面93と中心50Cとの間の距離LBは、凹部92を有する部分の外面93と中心50Cとの間の距離LAよりも小さい。また、中心50Cから第1端部94までの距離は、距離LBに等しい。
【0078】
続いて、図16および図17を参照して、ヨークユニット50の製造方法について説明する。
【0079】
第1端部94は、上型130の内面により形成される。第2端部95は、溝111Aの外側の面により形成される。中間部96は、周囲型120の内面により形成される。
【0080】
中心50Cから周囲型120の内面までの距離は、凹部92が形成されない部分において距離LBと等しく、凹部92が形成される部分において距離LAと等しい。中心50Cから溝111Aの外側面までの距離は、凹部92が形成されない部分において距離LBと等しく、凹部92が形成される部分において距離LAと等しい。また、中心50Cから上型130の内面までの距離は、凹部92が形成されない部分において距離LBと等しく、凹部92が形成される部分においても距離LBと等しい。
【0081】
第2実施形態のヨークユニット50は、第1実施形態の(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0082】
(5)ヨークユニット50は、凹部92を有しない部分で肉抜きされている。このため、肉抜きされていない第1実施形態のヨークユニットと比較して、ヨークユニット50を軽量化することができる。また、樹脂部90の体積が小さくなり、成型材料の樹脂量を削減することもできる。
【0083】
(6)ピンを利用するヨークユニット50の製造方法では、周囲型120の内径を小さくすると、周囲型120の内面とピンとが接触する。このため、ピンの挿入部分では、肉抜きできる量が制限される。その点、第2実施形態によれば、ヨークユニット50の内面50Aの形状を利用して、第1ヨーク60および第2ヨーク70の位置を決めることができる。このため、従来の製造方法により製造されるヨークユニットよりも、樹脂部90の外径を小さくすることができる。
【0084】
なお、第1及び第2実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0085】
・上記各実施形態において、第1磁極歯61および第2磁極歯71をU字状に形成してもよい。
【0086】
・上記各実施形態において、凸部114の数を、1、2、又は4以上としてもよい。2つ以上の凸部114を有する場合、各凸部114は、ヨーク嵌込部113の周面において等間隔または不等間隔に設けられる。
【0087】
・上記各実施形態において、凸部114を、図18に示す凸部214に変更してもよい。各凸部214は、凸部114から第2傾斜部61Bおよび第2傾斜部71B間に対応する部分を省略したものである。この場合、型締工程Aにおいて、側面215は、第2磁極歯71の第1傾斜部71Aに接触し、型締工程Bにおいて、支持面216は、第1磁極歯61の第1傾斜部61Aに接触する。これにより、下型110は、第1ヨーク60および第2ヨーク70の周方向の位置を精度よく決めることができる。
【0088】
・上記各実施形態において、各凸部114は、第1磁極歯61のV字形状に対応する形状であったが、第2磁極歯71のV字形状に対応する形状であってもよい。
【0089】
・上記各実施形態において、型締工程Bにおいて、3つの凸部114をそれぞれ第1磁極歯61に接触させたが、3つの凸部114のうち1つまたは2つの凸部は第1磁極歯61に接触しなくてもよい。
【0090】
・上記各実施形態において、型締工程Aにおいて、3つの凸部114をそれぞれ第2磁極歯71に接触させたが、3つの凸部114のうち1つまたは2つの凸部は第2磁極歯71に接触しなくてもよい。
【0091】
・上記各実施形態において、各凸部114と第1磁極歯61との間に隙間を空けた状態で冷却工程が行われたが、各凸部114を第1磁極歯61に接触させた状態で冷却工程を行ってもよい。この場合、型締工程Dは、第1ヨーク60の上方への移動は省略される。この方法により製造されるヨークユニット50の凹部82は、第1磁極歯61に接する。
【0092】
・上記各実施形態において、各凸部114を第2磁極歯71に接触させた状態で冷却工程が行われたが、各凸部114と第2磁極歯71との間に隙間を空けた状態で冷却工程を行ってもよい。この場合、型締工程Bの後で、第2ヨーク70は、第1ヨーク60に対する周方向の位置が変化しないように、下型110に対して上方又は下方に移動される。この方法により製造されるヨークユニット50の凹部82は、第2磁極歯71に接しない。
【0093】
・上記各実施形態において、ヨークユニット50の製造方法では、第2ヨーク70を第1ヨーク60の下方に嵌め込んだが、第1ヨーク60を第2ヨーク70の下方に嵌め込んでもよい。
【0094】
・本発明のヨークユニット50を有するトルク検出装置40は、電動パワーステアリング装置1以外の装置に適用してもよい。また、本発明のヨークユニット50は、トルク検出装置40以外の装置に適用してもよい。要するに、本発明は、複数の第1磁極歯を有する第1ヨークと、複数の第2磁極歯を有する第2ヨークと、第1ヨークおよび第2ヨークを一体化する樹脂部とを有するヨークユニットを備える装置であれば、任意の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、3…転舵輪、10…操舵角伝達機構、11…ステアリングシャフト、12…コラムシャフト、12A…入力軸、12B…出力軸、13…インターミディエイトシャフト、14…ピニオンシャフト、15…ラックアンドピニオン機構、16…ラック軸、17…タイロッド、18…アシストアクチュエータ、18A…モータ、18B…減速機構、21…トーションバー、22…入力側端部、23…出力側端部、24…ピン、30…電子制御装置、31…車速センサ、40…トルク検出装置、41…集磁リング、41A…円環部、41B…腕部、42…円筒磁石、42A…N極、42B…S極、43…磁気センサ、50…ヨークユニット、50A…内面、50B…外面、51…カラー、51A…内面、51B…溝部、60…第1ヨーク、60A…内面、61…第1磁極歯、61A…第1傾斜部、61B…第2傾斜部、62…第1ヨークコア、70…第2ヨーク、70A…内面、71…第2磁極歯、71A…第1傾斜部、71B…第2傾斜部、72…第2ヨークコア、80,90…樹脂部、81,91…内面、82…凹部、82A…第1凹部、82B…第2凹部、82C…第3凹部、83,93…外面、110…下型、111…台部、111A…溝部、112…円筒部、113…ヨーク嵌込部、114,214…凸部、115,215…側面、116,216…支持面、117…カラー嵌込部、118…カラー固定部、120…周囲型、120A…第1分割体、120B…第2分割体、121…第1リング溝、122…第2リング溝、130…上型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20