特許第5844503号(P5844503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5844503
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】航空機エンジン用の熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20151224BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20151224BHJP
   F02C 7/06 20060101ALI20151224BHJP
   F01D 25/18 20060101ALI20151224BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   F28F1/32 J
   F02C7/18 B
   F02C7/18 E
   F02C7/06 E
   F01D25/18 B
   F01D25/12 E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-526777(P2015-526777)
(86)(22)【出願日】2014年10月21日
(86)【国際出願番号】JP2014005334
【審査請求日】2015年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】植田 達哉
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/207784(WO,A1)
【文献】 特開2008−144752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0165995(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0268612(US,A1)
【文献】 特開2006−023031(JP,A)
【文献】 特開昭54−052216(JP,A)
【文献】 実開昭58−132372(JP,U)
【文献】 実開平02−036767(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F01D 25/12
F01D 25/18
F02C 7/06
F02C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機エンジンの湾曲面に沿って配置可能であり、航空機エンジンを通過する気流に曝される、航空機エンジン用のサーフェス型熱交換器であって、
流体が流通可能な流路を内部に含み、前記湾曲面と対向する裏面と、前記裏面と反対側の表面とを有し、前記湾曲面に対応して湾曲する本体と、
前記本体の前記表面に配列され、気流に曝される複数の放熱フィンと、
前記複数の放熱フィンの上端に接合されて固定されてい、又は、前記複数の放熱フィンの上端に前記複数の放熱フィンと一体的に成形されて固定されている蓋部材とを備える、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記蓋部材は、前記放熱フィンよりも、前記気流の上流側に延びる、熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記上流側の前記蓋部材の端部下面は、前記湾曲面と反対側に傾斜して延びる、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、さらに詳しくは、航空機エンジン用の熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンに代表される航空機エンジンには、熱交換器が搭載される。航空機エンジン用の熱交換器は、航空機エンジンの潤滑油の冷却や、航空機エンジンに搭載された発電機の潤滑油の冷却に利用される。航空機エンジン用の熱交換器には、プレートフィン型、シェルアンドチューブ型、及び、サーフェス型等がある。
【0003】
これらの熱交換器のうち、サーフェス型熱交換器は、他の熱交換器と比較してコンパクト化できる。このようなサーフェス型熱交換器はたとえば、特開2008−144752(特許文献1)及び特許第5442916号(特許文献2)に提案されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されたサーフェス型熱交換器は弓なりに湾曲した板状であり、表面及び裏面を有する。サーフェス型熱交換器は、航空機エンジンの湾曲面に沿って配置される。このとき、サーフェス型熱交換器の裏面が湾曲面と対向する。航空機エンジンの湾曲面はたとえば、ファンケースの内周面や、エンジンコアケーシングの外周面等である。サーフェス型熱交換器の湾曲形状は、熱交換器が配置される箇所の湾曲面の形状と対応する。
【0005】
サーフェス型熱交換器の表面及び裏面は、航空機エンジン内を通過する気流に曝される。サーフェス型熱交換器の表面には、複数の放熱フィンが配置される。複数の放熱フィンは、航空機エンジンの軸方向に延び、航空機エンジンの周方向に配列される。さらに、熱交換器の内部には、流路が形成されている。
【0006】
上述の潤滑油等の流体(以下、対象流体という)は、サーフェス型熱交換器内に流入し、内部の流路を流れる。サーフェス型熱交換器の表面の複数の放熱フィンは、気流に曝される。そのため、流路中の対象流体の熱が、放熱フィンを介して外部に放出される。冷却された対象流体は、熱交換器から外部に流出され、利用される装置(発電機等)に戻る。
【0007】
上述のとおり、サーフェス型熱交換器は、航空機エンジンの任意箇所に、エンジンの湾曲面に沿って配置される。そのため、他の熱交換器と比較して、エンジン内を流れる気流の抵抗が低減される。
【0008】
サーフェス型熱交換器では、航空機エンジンの湾曲面上に、複数の放熱フィンが剥き出で配列される。航空機エンジンは定期的な点検作業が行われる。点検作業時において、作業者は、航空機エンジンの湾曲面上に立ちながら点検作業を行ったり、湾曲面上を歩きながら点検作業を行ったりする。このとき、作業者が、湾曲面上に剥き出しで配列された放熱フィンを誤って踏みつける等、放熱フィンに過度な外力が付与される場合がある。この場合、放熱フィンに過度な応力が集中し、放熱フィンが変形する。同様に、サーフェス型熱交換器を所望の箇所に配置する場合(ハンドリング時)も、誤って放熱フィンに過度の外力が掛かり、放熱フィンが変形する場合がある。放熱フィンが変形すれば、熱交換率が低下する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、外力による放熱フィンの変形を抑制できる、熱交換器を提供することである。
【0010】
本実施形態による航空機エンジン用の熱交換器は、航空機エンジンの湾曲面に沿って配置可能である。熱交換器は、本体と、複数の放熱フィンと、蓋部材とを備える。本体は、流体が流通可能な流路を内部に含む。本体は、湾曲面と対向する裏面と、裏面と反対側の表面とを有し、上記湾曲面に対応して湾曲する。複数の放熱フィンは、本体の表面に配列され、気流に曝される。蓋部材は、複数の放熱フィンの上端に固定される。
【0011】
本実施形態による熱交換器では、外力による放熱フィンの変形が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態による航空機エンジン用の熱交換器の斜視図である。
図2図2は、図1中のII−II面での断面図である。
図3図3は、図1に示す熱交換器の分解斜視図である。
図4図4は、図1中のIV−IV面での断面図である。
図5図5は、蓋部材を含まない熱交換器における、気流の流れを説明するための模式図である。
図6図6は、図4に示す熱交換器における、気流の流れを説明するための模式図である。
図7図7は、第2の実施形態による熱交換器の断面図である。
図8図8は、図7と異なる、他の熱交換器の断面図である。
図9図9は、図7及び図8と異なる、他の熱交換器の断面図である。
図10図10は、図7図9と異なる、他の熱交換器の断面図である。
図11図11は、図1と異なる他の熱交換器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態による航空機エンジン用の熱交換器は、航空機エンジンの湾曲面に沿って配置可能である。熱交換器は、本体と、複数の放熱フィンと、蓋部材とを備える。本体は、流体が流通可能な流路を内部に含む。本体は、湾曲面と対向する裏面と、裏面と反対側の表面とを有し、上記湾曲面に対応して湾曲する。複数の放熱フィンは、本体の表面に配列され、気流に曝される。蓋部材は、複数の放熱フィンの上端に固定される。
【0014】
放熱フィンに、上方からの外力が直接付与された場合、応力が集中して、放熱フィンが変形し得る。しかしながら、本実施形態では、複数の放熱フィンの上端に蓋部材が固定される。この場合、上方から外力が付与された場合、蓋部材がその外力をいったん受け、さらに、複数の放熱フィンに分散できる。そのため、特定の放熱フィンに応力が集中するのを抑制でき、放熱フィンの変形が抑制される。
【0015】
さらに、蓋部材は、隣り合う放熱フィンの間に流入した気流が放熱フィンの外部(上方)に流出するのを抑制する。そのため、放熱フィンがより多くの気流に曝されやすくなり、熱交換率が高まる。
【0016】
好ましくは、蓋部材は、放熱フィンよりも、気流の上流側に延びている。
【0017】
この場合、より多くの気流が、放熱フィンの間に流入されやすくなる。そのため、熱交換率が高まる。
【0018】
好ましくは、蓋部材の上流側の端部下面は、湾曲面と反対側に傾斜して延びる。
【0019】
この場合、放熱フィンへの気流の流入口が広がる。そのため、より多くの気流が放熱フィンの間に流入される。
【0020】
以下、本実施形態の熱交換器の詳細について、図面を参照して説明する。図中同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
[熱交換器の全体構成]
図1は、本実施の形態による航空機エンジン用の熱交換器の斜視図である。本実施形態の熱交換器は、航空機エンジンの湾曲面に配置される。航空機エンジンはたとえば、ガスタービンエンジンである。航空機エンジンの湾曲面はたとえば、航空機エンジンのファンケーシングの内周面や、エンジンコアケーシングの外周面等である。図1では、ファンケーシングの内周面に配置される熱交換器を例示する。しかしながら、本実施形態の熱交換器は、ファンケーシング及びエンジンコアケーシング以外の他のエンジン部材の湾曲面に配置されてもよい。湾曲面における熱交換器の配置箇所は任意であり、特に制限されない。
【0022】
図1を参照して、熱交換器1は弓なりに湾曲した板状であり、いわゆるサーフェス型の熱交換器である。航空機エンジン内において、熱交換器1は、配置される湾曲面(図示せず)に対応して湾曲している。
【0023】
図1中のX軸は、図示しない航空機エンジンの回転軸方向を示す。図1に示す熱交換器1の長さは、航空機エンジンの湾曲面の配置箇所における周方向長さの1/8程度である。しかしながら、熱交換器1の長さは特に限定されない。熱交換器1はたとえば、ファンケーシングの湾曲面の配置箇所における円周方向全長に延びた、円環状であってもよい。
【0024】
図1の紙面左側から、右側に向かって空気流AF(図1中の矢印参照)が流れる。したがって、図1において、熱交換器1の左側が気流の上流側USであり、右側が気流の下流側DSである。
【0025】
熱交換器1は、冷却対象となる流体(以下、対象流体という)を内部に通し、対象流体を冷却する。図2は、図1中のII−II面での断面図である。図1及び図2を参照して、熱交換器1は、表面2と、裏面3とを有する本体10を備える。裏面3は、航空機エンジンの湾曲面(本例ではファンケーシングの内面)と対向する。表面2は、裏面3と反対側に配置される。表面2及び裏面3には、複数の放熱フィン20及び30が配列される。複数の放熱フィン20は、表面2上に立てられている。複数の放熱フィン20は、X軸に沿って延び、航空機エンジンの周方向に配列される。複数の放熱フィン30は裏面3上に立てられ、X軸に沿って延び、航空機エンジンの周方向に配列される。図1図3において、複数の放熱フィン20及び30が配列された領域は一点鎖線で示され、一部の放熱フィン20及び30の図示は省略されている。
【0026】
図3は、熱交換器1の分解斜視図である。本体10は、板状の表部材11と、板状の裏部材12とを備える。本体10はたとえば、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。本体10の材質はまた、ステンレス鋼、チタン、銅、インコネル(商標)等であってもよい。
【0027】
表部材11と裏部材12とが板厚方向に重ね合わされ、筐体状の本体10となる。本体10内には、複数のコルゲートフィン40が配置される。表部材11、裏部材12及び板状フィン40はたとえば、ろう付により互いに接合される。
【0028】
本体10内の空間は、仕切112により、往路111と復路113とに区画される。往路111内には、コルゲートフィン40が配置される。コルゲートフィン40により、往路111は複数の微細な流路に区画される。同様に、復路113にもコルゲートフィン40が配置され、復路113は複数の微細な流路に区画される。往路111と復路113とは本体10内で連結しており、対象流体の流路を形成する。
【0029】
裏部材12は、流入口121と流出口122とを裏面3に有する。対象流体は、流入口121から熱交換器1内に流入する。対象流体は、コルゲートフィン40により区画された微細な流路に分配され、往路111、復路113の順に、本体10内を流れる。このとき、コルゲートフィン40、放熱フィン20及び30を介して、本体10内の対象流体と外部の気流とで熱交換が行われ、対象流体が冷却される。冷却された対象流体は、流出口122から熱交換器1の外部に流出して、対象流体が利用される装置(エンジンコアや発電機等)に戻る。
【0030】
[蓋部材]
図1及び図2を参照して、熱交換器1はさらに、蓋部材50を備える。蓋部材50は板状であり、複数の放熱フィン20上に配置される。
【0031】
図4は、図1中のIV−IV面における熱交換器1の断面図である。図4では、円弧状に湾曲した熱交換器1において、上流側USの端部の曲率半径が、下流側DSの端部の曲率半径よりも小さい。つまり、熱交換器1は、上流側USから下流側DSに向かって曲率半径が大きくなるテーパ形状を有する。これは、熱交換器1の湾曲形状が、配置される湾曲面の形状に対応しているためである。
【0032】
図1及び図4を参照して、蓋部材50は、複数の放熱フィン20の上端21に固定される。蓋部材50はたとえば、ろう付により複数の上端21に固定される。
【0033】
上述のとおり、熱交換器の放熱フィンは、航空機エンジンにおける作業者による定期的な点検時や、熱交換器の取り付け時において、外力を受ける場合がある。外力により放熱フィンに応力が集中すれば、放熱フィンが折れ曲がり、熱交換率が低下する。
【0034】
しかしながら、本実施形態の熱交換器1では、複数の放熱フィン20の上端21に蓋部材50が固定される。この場合、作業者等により発生した外力は、放熱フィン20に直接付与されず、蓋部材50に付与される。蓋部材50は複数の放熱フィン20に固定されているため、蓋部材50が受けた外力は、複数の放熱フィン20に分散される。そのため、特定の放熱フィン20への応力の集中が緩和され、放熱フィン20が折れ曲がるのを抑制できる。
【0035】
蓋部材50はさらに、熱交換率を高める。気流が放熱フィン20と接触する距離が長いほど、熱交換率が高まる。図5に示すとおり、蓋部材50が配置されない場合、表面2に沿って流れる気流AF1は、上流側USから下流側DSに至るまで、放熱フィン20の全長と接触しながら流れる。しかしながら、斜め上方から流れてくる気流AF2は、複数の放熱フィン20の間を通過する途中で表面2に当たる。このとき、気流AF2は方向を変え、表面2から離れる方向(つまり、放熱フィン20の上方)に進む。そのため、気流AF2は、通過途中で、放熱フィン20から外部(上方)に離れる。同様に、斜め下方から流れてくる気流AF3は、放熱フィン20の前端部と接触するものの、通過途中で放熱フィン20から離れる。したがって、気流AF2及びAF3は、放熱フィン20全長と接触せず、放熱フィン20の一部でのみ接触する。そのため、気流AF2及びAF3は、熱交換に寄与しにくい。
【0036】
一方、図6を参照して、本実施形態の熱交換器1では、蓋部材50は、気流AF2及びAF3のような気流が複数の放熱フィン20の間から外部(上方)に流出するのを抑制する。図6では、気流AF2及びAF3は、蓋部材50と表面2とに繰り返し当たりながら方向を変え、放熱フィン20の全長にわたって流れる。そのため、熱交換率が高まる。
【0037】
要するに、蓋部材50は、上流側USでひとたび複数の放熱フィン20の間に流入した気流を、放熱フィン20の上方に逃がすことなく、放熱フィン20の下流側DSまで導く。そのため、蓋部材50は熱交換器1の熱交換率を高める。
【0038】
さらに、蓋部材50は複数の放熱フィン20の上端21と接合されているため、伝熱面として機能する。
【0039】
以上のとおり、本実施形態の熱交換器1は、蓋部材50により、外力による放熱フィン20の変形を抑制でき、熱交換率を高めることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
図7は、第2の実施形態による熱交換器11の断面図である。図7を参照して、熱交換器11は、熱交換器1と比較して、蓋部材50に替えて、新たに蓋部材51を備える。熱交換器11のその他の構成は、熱交換器1と同じである。
【0041】
蓋部材51は、放熱フィン20よりも上流側USに延びている。より具体的には、蓋部材51の上流側USの端面51Eは、放熱フィン20の端面20Eよりも、上流側USに配置される。そのため、蓋部材51の下面51L(表面2と対向する表面)は、放熱フィン20の端面20Eの上端20Pよりも上流側USに延びている。
【0042】
蓋部材51が放熱フィン20よりも上流側USに延びているため、気流AF4のような、蓋部材51が配置されなければ放熱フィン20の間に流入しないような気流も、取り込むことができる。具体的には、気流AF4は、下面51Lに当たり、方向を変えて、複数の放熱フィン20の間に流入する。その後、気流AF4は、蓋部材51の下面51Lと表面2とに当たりながら、放熱フィン20の長手方向全長に流れる。このように、蓋部材51により、さらに多くの気流が放熱フィン20に接触するため、熱交換率が高まる。
【0043】
図8に示すように、蓋部材51のうち、放熱フィン20よりも上流側USに延びる端部511は、熱交換器11が配置される航空機エンジンの湾曲面と反対側(図面では上方)に向かって斜めに延びていてもよい。この場合、蓋部材51と、表面2と、複数の放熱フィン20とで区画される複数の流路25への流入口OPが、図7と比較して広くなる。そのため、より多くの気流が流路25に流入し、複数の放熱フィン20と接触する。そのため、熱交換率が高まる。図8では、下面51Lは湾曲しているが、下面51Lは湾曲せずに平坦であってもよい。
【0044】
図9に示すように、蓋部材51のうち、上面51U(下面51L反対側の表面)は反らずに、下面51Lが、航空機エンジンの湾曲面と反対側に向かって斜めに延びていてもよい。このような場合であっても、図7と比較して、流入口OPは広がる。そのため、多くの気流を流路25に導入できる。下面51Lは、図9に示すように湾曲していてもよいし、図10に示すとおり、平坦であってもよい。いずれの形状であっても、流入口OPは広がる。
【0045】
以上のとおり、蓋部材が放熱フィン20よりも上流側USに延びていれば、より多くの気流を複数の放熱フィン20の間に取り込むことができ、熱交換率が向上する。
【0046】
上述の実施の形態では、図1に示すとおり、蓋部材50は、放熱フィン20の長手方向全長にわたって延びる。しかしながら、図11に示すとおり、蓋部材50は、放熱フィン20の長手方向の一部に配置されてもよい。
【0047】
上述の実施の形態では、図4に示すとおり、放熱フィン20の長手方向の端面20Eは表面2に対して傾斜しており、根本20Bの方が、上端20Pよりも上流側USに配置されている。このように端面20Eが傾斜していれば、空気抵抗を低減できる。しかしながら、端面20Eは、表面2に対して傾斜してなくてもよいし、逆方向に傾斜していてもよい。たとえば、端面20Eは、表面2に対して垂直であってもよい。
【0048】
上述の実施の形態では、図7に示すとおり、蓋部材51は、放熱フィン20よりも上流側USに延びている。しかしながら、蓋部材50及び蓋部材51は、放熱フィン20よりも下流側DSに延びていてもよい。また、蓋部材51の下流側端部下面が湾曲面と反対側に傾斜して延びていてもよい。
【0049】
上述の実施の形態では、蓋部材50及び51は、複数の放熱フィン20の上端21と、たとえばろうづけにより接合される。しかしながら、蓋部材50及び51と、複数の放熱フィン20との接合方法は特に限定されない。蓋部材50及び51と、複数の放熱フィン20とが積層造形法又は鋳造造形法により、一体成形されていてもよい。
【0050】
上述の説明では、一例として、円環状又は円環の一部に相当する熱交換器本体の内側を表面とした。しかしながら、円環状又は円環の一部に相当する本体の外側を表面として、その表面に蓋部材が配置されてもよい。たとえば、エンジンコアケーシングの外周面に、円環状又は円環の一部に相当する本体を有する熱交換器が配置される場合、円環状又は円環の本体の外側を表面として、蓋部材が配置される。
【0051】
上述の実施の形態では、熱交換器の本体の表面に複数の放熱フィンが配置され、蓋部材が放熱フィンの上端に固定される。しかしながら、熱交換器の本体の表面及び裏面に複数の放熱フィンが配置され、表面及び裏面の放熱フィンの上端に、蓋部材が配置されてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 熱交換器
2 表面
3 裏面
10 本体
20,30 放熱フィン
50,51 蓋部材
51L 蓋部材の下面
【要約】
外力による放熱フィンの変形を抑制できる、熱交換器を提供する。本実施形態の熱交換器(1)は、航空機エンジンの湾曲面に沿って配置可能である。熱交換器(1)は、本体(10)と、複数の放熱フィン(20)と、蓋部材(50)とを備える。本体(10)は、流体が流通可能な流路を内部に含み、湾曲面と対向する裏面(3)と、裏面(3)と反対側の表面(2)とを有する。本体(10)は、航空機エンジンの湾曲面に対応して湾曲する。複数の放熱フィン(20)は、本体の表面(2)に配列され、気流に曝される。蓋部材(50)は、複数の放熱フィン(20)の上端に固定される。
図1
図2
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図4
図5
図6
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