(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5844505
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】超低温用非共沸冷媒
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
C09K5/04 A
C09K5/04 B
C09K5/04 E
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-537487(P2015-537487)
(86)(22)【出願日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2015064204
【審査請求日】2015年7月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593148826
【氏名又は名称】日本フリーザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107962
【弁理士】
【氏名又は名称】入交 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】栗田 宣義
【審査官】
馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第1999/064536(WO,A1)
【文献】
特開2007−107858(JP,A)
【文献】
特開2009−102567(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/023494(WO,A1)
【文献】
特開2006−170487(JP,A)
【文献】
特表2007−508419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で放熱して凝縮する高沸点冷媒を含むベース冷媒、及び低沸点冷媒のR−14からなり、
ベース冷媒/R14が95/5〜60/40(ベース冷媒+R14中のR−14が5wt%〜40wt%)である、非共沸混合冷媒であって、
上記ベース冷媒は、常温で凝縮する高沸点冷媒としてブタン+プロパン、及びこれに対する低沸点冷媒としてR−23+R−116からなり、
該ベース冷媒におけるブタン+プロパンが35wt〜70wt%であって、残余がR−23+R−116であり、
R−23+R−116中のR−23が70〜15wt%、R−116が30〜85wt%である、
非共沸混合冷媒。
【請求項2】
常温で放熱して凝縮する高沸点冷媒を含むベース冷媒、低沸点冷媒のR−14、及びさらに超低温度を達成する低沸点冷媒であるR−50+R−740からなる非共沸混合冷媒であって、
ベース冷媒/R−14が95/5〜60/40(ベース冷媒+R−14中のR−14が5wt%〜40wt%)である、非共沸混合冷媒であって、
上記ベース冷媒は、常温で凝縮する高沸点冷媒としてブタン+プロパン、及びこれに対する低沸点冷媒としてR−23+R−116からなり、
該ベース冷媒におけるブタン+プロパンが35wt〜70wt%であって、残余がR−23+R−116であり、
R−23+R−116中のR−23が70〜15wt%、R−116が30〜85wt%であり、
冷媒総量中のR−50及びR−740の含有量がそれぞれ10wt%(合計20wt%)以下である、
非共沸混合冷媒。
【請求項3】
前記冷媒総量中のR−50及びR−740の含有量がそれぞれ1wt%〜10wt%(合計2wt%〜20wt%)である、
請求項2記載の非共沸混合冷媒。
【請求項4】
前記冷媒総量中のR−50及びR−740の含有量がそれぞれ4wt%〜10wt%(合計8wt%〜20wt%)である、
請求項2記載の非共沸混合冷媒。
【請求項5】
圧縮機に帰還する復路の冷媒と絞り弁に向かう往路の冷媒との間で熱交換する冷凍機の構成を備えた、冷凍機に適用される非共沸混合冷媒であって、
前記請求項1ないし4記載のいずれかの各組成からなる、非共沸混合冷媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機においてー100℃〜−150℃の超低温度を達成する非共沸混合冷媒に関し、特に、一元単段式の簡単な冷凍機のシステム構成で−100℃〜−150℃の超低温度を達成するために好適な非共沸混合冷媒に係る。
【背景技術】
【0002】
冷凍機は、食品などの保存、貯蔵に適した−数十℃の低温度領域から、食品の鮮度を冷凍当初の状態に保つため、或いは、医療分野などで生体組織をそのまま保存するために冷凍庫内温度−50℃以下の超低温度が実用化されている。
このような超低温度を達成する冷凍機としては、空気の液化等に応用された気体の断熱膨張によるジュールトムソン効果を利用する設備では、冷却能力や設備面の制約から一般的ではなく、常温の環境で圧縮されて液化して凝縮熱を放出し、その液相の蒸発潜熱によって冷却する冷凍機が一般である。
【0003】
このような冷凍機システムにおいて使用される冷媒は、実用的な圧縮機の能力から常温近傍で十数bar程度の圧力下で凝縮すると共に、目的とする超低温度を達成するために、沸点が目的とするその超低温度以下であるという、相反する性質が必要となる。
これらの条件を満たすため、従来から行われている冷凍機として、常温で凝縮する高沸点冷媒によって作動する冷凍機と低温度を達成する低沸点の冷媒を用いる冷凍機とを組み合わせ、高沸点冷媒の冷凍機によって低沸点冷媒の冷凍機の凝縮器を冷却して低沸点冷媒を凝縮させて、目的とする超低温を達成するものがある。
この方式は原理的には単純であるが、2種、或いはそれ以上の冷媒毎に独立に作動する冷凍機を組み合わせるため、部品点数が多く、複雑かつ大がかりの設備となってしまい、故障しやすいばかりでなく製品コストも高いものとなる。
【0004】
これに対して、これらの沸点の異なる2種以上の冷媒を混合した冷媒を用いることによって、一基の圧縮機によって稼働する冷凍機システムが実用化されている。
このような混合冷媒の多くは非共沸であって、沸点などがそれぞれの冷媒のいわば中間的な特性となるため、それらの組み合わせによって、目的とする特性の冷媒が得られるが、非共沸という性質上、温度・圧力によって沸点が変わり、凝縮及び蒸発の過程で液相と気相との構成が変わり、それと共に沸点も変化する。
このため、組み合わせる冷媒として沸点などの近接した性質の冷媒を使用し、蒸発後の圧縮機に帰還する低温度の冷媒によって、蒸発器に向かう冷媒を冷却してその凝縮を促進し、単一の冷媒と同様に扱うことを可能とするなどの工夫がされる。
【0005】
しかしながら、冷却温度がさらに低い−50℃以下の超低温度を達成する混合冷媒では、このようなシステムでは低沸点の冷媒の凝縮が進行せず、安定した冷凍機の運転が困難であった。
このため、常温で凝縮可能な高沸点冷媒と目的とする超低温度を達成する低沸点冷媒とを組み合わせた非共沸冷媒を用いる冷凍機システムでは、常温環境下で凝縮した高沸点冷媒リッチの液相と凝縮しない低沸点冷媒リッチの気相とを分離し、液相の高沸点冷媒の蒸発の潜熱によって低沸点冷媒を冷却・凝縮することが行われている(特許文献1: 特開平3−255856号公報)。
この方式は、圧縮機一基で済む利点はあるが、目的とする超低温度に応じてこのような多段階の気液分離と蒸発・凝縮による熱交換過程を必要とし、その分複雑さは免れない。
【0006】
これに対して、本発明者らは、非共沸冷媒が温度、圧力の変化と共に液相と気相の組成及び沸点が変わるという性質を利用することにより、当初の常温下の圧縮・放熱過程で凝縮した高沸点冷媒リッチの液相が蒸発過程で蒸発して冷却が進行するにつれて残る液相の組成がより高沸点側に移行し、達成された冷却温度の下では高沸点冷媒の液相が残存するようになると考えられ、その顕熱と共に潜熱によって当初の圧縮・凝縮後の冷媒の冷却を行えば、冷媒中の液相組成をより低沸点側に移行させて、冷凍サイクルの進行と共に凝縮した液相の組成を低沸点リッチ側に移行させて一定組成範囲であれば非共沸冷媒の全量の凝縮を可能とすることを着想した。
そして、このような非共沸冷媒によって、従来の冷凍機において不可欠とされていた気液分離を行うことなく、超低温度を達成する非共沸冷媒を使用する冷凍システムを実現した。(特許文献2:特許第3934140号公報)
【0007】
図1にその冷凍機システムの構成を示し、その冷凍機サイクルを説明する。
図中圧縮機1で数bar〜十数barで圧縮された非共沸冷媒は、矢印に沿って凝縮器2に送られ、その圧力と温度条件で凝縮可能な、低沸点成分を一部取り込んだ高沸点冷媒リッチの液相及び凝縮せずに一部高沸点冷媒を含む低沸点冷媒リッチの気相との気液混合相となる。
次いで、これらの気液混合冷媒を絞り弁3(キャピラリー)を経て減圧し、蒸発器4で蒸発・気化して冷凍庫5内を冷却し、気化した冷媒は圧縮機1に帰還する復路9で凝縮器2から絞り弁3に向かう往路8との間で熱交換器6の接合部7を介して往路の冷媒と熱交換する。
このような熱交換器を介して復路の温度の低い冷媒によって往路の冷媒を冷却することは従来より行われていたが、沸点の近い冷媒を組合せた非共沸冷媒において、低沸点冷媒の凝縮を促進して冷凍機の稼働を安定化するものであった。
【0008】
これに対して、本発明者らは、非共沸冷媒の特性を利用することによって常温で凝縮・放熱する高沸点冷媒とこれに対して極めて沸点の低い冷媒を組み合わせて、この熱交換器を介した冷凍機システムで−50以下の超低温度を達成する。
この冷凍機システムにおいて非共沸混合冷媒は、前述のように、高沸点冷媒が常温下で放熱・凝縮するのに対して、低沸点冷媒は、冷却過程を経て液相状態を維持した高沸点冷媒が熱交換器において蒸発して達成する低温度下で凝縮する。
この過程では圧力は維持されるから、その圧力下で高沸点冷媒(もしくは、高沸点冷媒リッチの)液相の沸点(庫内温度)に応じた組成の冷媒ガスの凝縮が可能となる。
従って、非共沸混合冷媒の成分及び組成をこれらの条件に応じて選択すれば、この冷却サイクルにより最終的に非共沸混合冷媒の全量の凝縮とその沸点までの冷却が可能となる。
また、このような冷媒の組合せは、さらに沸点の低い冷媒との組合せにおいても成り立つと考えられる。
【0009】
すなわち、これらの低沸点冷媒は常温では凝縮できないが、熱交換器において高沸点冷媒(高沸点冷媒リッチ)の液相の沸点までの低温度に冷却可能であるから、非共沸混合冷媒の成分及び組成範囲をその温度下で凝縮可能な冷媒の組合せ及び組成範囲を選択すれば、非共沸混合冷媒の全組成を凝縮させて、その沸点まで冷却することが可能となる。
このメカニズムは、そのような非共沸混合冷媒を実現できれば、それをベースとしてさらに低沸点の冷媒を加えた組成に対しても成り立ち、ベースとなる非共沸混合冷媒で達成可能な冷却温度範囲において、凝縮可能な低沸点冷媒の種類、沸点及び含有量の範囲を選択すれば、常温で凝縮可能な高沸点冷媒から、最も沸点の低い冷媒を含む組成に至るまでその凝縮可能な温度は順次それらの沸点によって定まることとなり、このサイクルによってもっとも低沸点となる低沸点冷媒リッチの組成の凝縮は非共沸混合冷媒の組成と圧力条件下で平衡するまで進行する。
【0010】
ただし、このようなサイクルは冷媒の沸点や蒸気圧などの個別の性質のみで任意にそれらの組み合せを選択することはできない。
冷媒同士の組合せでベースとなる非共沸混合冷媒に低沸点冷媒を加えることによって圧力が上昇して実用上凝縮できない、或いは、沸点差が大きいために凝縮が進行しない、といった現象が見られ、これらの組合せや成分組成範囲を定めるに際しては、これらの物性による選定のみでなく実験的にその適否を確認する必要がある。
【0011】
このような観点から、−100℃〜−150℃の超低温度を達成するには、常温で凝縮可能な高沸点冷媒に対して比較的沸点の温度差の小さい冷媒を組み合わせた非共沸混合冷媒を作り、これをベースとして、さらに前記の冷凍サイクルを構築できる、より沸点の低い冷媒を選択する。
【0012】
ベースとする非共沸冷媒が広い組成範囲にわたって所要の冷却温度を達成すると共に凝縮に要する圧力が比較的低く、その作動域においてこれらの値がフラットな特性であって安定した冷却能力を有することが望まれる。
そうであれば、より沸点の低い冷媒との組み合わせを選択する上で選択肢が広く取れるばかりでなく、ベースとする非共沸混合冷媒の広い組成範囲にわたって低沸点冷媒との組合せが可能となり、また、その効果が達成される。
これらの非共沸混合冷媒の使用に際しては、環境温度や冷凍機の設備容量、或いは冷却対象による負荷の大小やその変動など、多くの変化するファクターにおいて使用されるものであって、冷媒の最適な組成範囲などもそれらに応じて変わりやすく、実機への適用に際してはこれら広い範囲から選択する必要があることから、これらの特性は重要である。
【0013】
以上から、本発明者らは、先に−50℃以下の冷却温度を目指して作成した非共沸混合冷媒(特許文献2:特許第3934140号公報、特許文献3:特許第3571296号公報)をベースとして検討した。
このうち、特許文献3記載の非共沸混合冷媒は、常温で凝縮可能なブタン、プロパンなどに対して、−50℃より低い沸点を有するパーフルオロエタン(C
2H
6:R−116)、トリフルオロメタン(CHF
3:R−23)などを組み合わせて、−60℃〜−75℃の庫内温度を達成し、圧縮機の吐出圧力も15〜25barの範囲であって、安定した特性を発揮するものであった。
【0014】
また、ブタンに対して、更に沸点の低いエタン(沸点:−88.65℃)、エチレン(沸点:-103.2℃)、テトラフルオロメタン(R−14:沸点-128℃)との組合せを試みた(特許文献2:特許第3934140号公報)が、常温で凝縮するブタンに対して、エタン、エチレン、及びR−14を1〜2種選択した組み合わせは冷凍庫内温度−50℃〜−86℃を達成したものの、エチレン及びR−14の含有量を増加するに連れて圧力が急激に上昇して冷凍機が作動できなくなった。
このことは、高沸点のブタンに対する、エチレンやR−14の沸点差が大きく、特にエチレンの蒸気圧が高いことが影響して非共沸混合冷媒の特性を生かしたサイクルが充分に効果を発揮できず、これら低沸点冷媒の凝縮が進行しないためと考えられる。
【0015】
以上の結果から、更に低温度の-100℃以下の冷却を実現するためには高沸点成分と低沸点成分とのバランスのよい特許文献3において試みた4成分系冷媒がベースとして好適と考えられ、さらに沸点の低い冷媒の選択とそれらとの組み合わせ、組成を検討することとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平3−255856号公報
【特許文献2】特許第3934140号公報
【特許文献3】特許第3571296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
一般的な容量、能力を有する単純な構成の冷凍機において、特定フロン(CFC),指定フロン(HCFC)を含まない冷媒を用いて、−100℃〜−150℃の超低温度を達成可能な非共沸混合冷媒の実現を発明の課題とする。
また、冷凍機の構成として、一基の圧縮器による一元式の気液分離を行わず、圧縮機に帰還する復路の冷媒と絞り弁に向かう往路の冷媒との間で熱交換する冷凍機の構成により−100℃〜−150℃の超低温度を達成可能であり、また、当然のことながら気液分離器を具えた冷凍機においても同様に適用可能な、非共沸冷媒の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
常温で放熱して凝縮する高沸点冷媒を含むベース冷媒、及びテトラフルオロメタン(R−14)からなり、
ベース冷媒/R14が95/5〜60/40(ベース冷媒+R14中のR−14が5wt%〜40wt%)である、非共沸混合冷媒であって、
上記ベース冷媒は、常温で凝縮する高沸点冷媒としてプロパン+ブタン、及びこれに対する低沸点冷媒としてトリフルオロメタン(R−23)+パーフルオロエタン(R−116)からなり、
該ベース冷媒は、プロパン+ブタンが35wt〜70wt%であって、残余がR−23+R−116であり、
R−23+R−116中のR−23=70〜15wt%、R−116=30〜85wt%である、
非共沸混合冷媒。
【0019】
また、上記非共沸混合冷媒に加えて、さらに−120℃以下の低温度を達成する低沸点冷媒として、
常温で放熱して凝縮する高沸点冷媒を含むベース冷媒、及びテトラフルオロメタン(R−14)、メタン(R−50)及びアルゴン(R−740)からなり、
ベース冷媒/R-14が95/5〜60/40(ベース冷媒+R14中のR−14が5wt%〜40wt%)である非共沸混合冷媒であって、
該ベース冷媒は、プロパン+ブタンが35wt〜70wt%であって、残余がR−23+R−116であり、
R−23+R−116中のR−23=70〜15wt%、R−116=30〜85wt%であり、
R−50及びR−740はそれぞれ1wt%〜10wt%である、
非共沸混合冷媒。
さらに、−120℃〜−150℃の低温度を達成する低沸点冷媒として、
上記R−50及びR−740はそれぞれ4wt%〜10wt%である非共沸混合冷媒。
【0020】
さらに、圧縮機に帰還する復路の冷媒と絞り弁に向かう往路の冷媒との間で熱交換する冷凍機の構成を備えた、冷凍機に適用される非共沸混合冷媒であって、
前記各組成からなる、非共沸混合冷媒である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非共沸混合冷媒は、従来の冷凍機システムの下で実現される容量、能力を備えた冷凍機に適用して、−100℃〜−150℃の超低温度、特に−150℃の超低温度を容易に達成可能であり、また、潤滑油との相溶性が良好であるなどメインテナンス上も優れた特性を具えて長期にわたる安定した冷凍機システムの稼働を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例に用いた冷凍機システムの概略図。
【
図2】
図2は、R-23、R-116、プロパン及びブタンの4成分系からなるベース冷媒に対するR−14添加の効果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、ベース冷媒+R−14の混合冷媒のR−14が10%に対するメタン+アルゴン添加の効果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、ベース冷媒+R−14の混合冷媒のR−14が20%に対するメタン+アルゴン添加の効果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ベース冷媒+R−14の混合冷媒のR−14が5%に対するメタン+アルゴン添加の効果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、ベース冷媒+R−14の混合冷媒のR−14が40%に対するメタン+アルゴン添加の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述のように、−100℃〜−150℃の超低温度を達成する非共沸混合冷媒は、常温で放熱・凝縮する高沸点冷媒に対して、これより低沸点の冷媒を組み合わせた非共沸混合冷媒をベースとして、さらに目的とする低温度を達成する低沸点冷媒を組合せて構成するが、先に本発明者らが開発した前記特許文献3記載のR−23+R−116、及びプロパン+ブタンの4種混合非共沸冷媒が、その特性からみて沸点のさらに低い冷媒を加えて−100℃以下の冷却温度を達成する冷媒のベースとして、また、同様にして更に−150℃以下の冷却温度を達成するベースとなる冷媒として好適であると考えられる。
【0024】
特許文献3(特許第3571296号公報)に記載されたR−23、R−116、プロパン及びブタンを含む非共沸混合冷媒について請求項1に記載した内容は次のとおりであった。
(請求項1)
「トリフルオロメタン(CHF
3 :R−23)と、パーフルオロエタン(C
2 F
6 :R−116)と、プロパン及びn−ブタンの1種以上とを含み、前記トリフルオロメタンとパーフルオロエタンの混合比率を、トリフルオロメタン70〜15wt%、パーフルオロエタン30〜85wt%としてなり、前記プロパンを55〜95wt%、又はn−ブタンを50〜90wt%、又は両者を35〜70wt%としてなることを特徴とする超低温用冷媒。」
したがって、R−23、R−116、プロパン、及びブタンをすべて含む4成分系非共沸混合冷媒は、常温で放熱・凝縮する高沸点冷媒の組合せとして、プロパン+ブタンが35〜70wt%、これに対する低沸点冷媒を組合せた、R−23+R−116が残余の65〜30wt%であって、R−23+R−116中のR−23:70〜15wt%、R−116:30〜85wt%、である。
以下、上記組成の非共沸混合冷媒を便宜上、ベース冷媒と称す。
【0025】
上記の4成分系の非共沸混合冷媒はこれらの組成において−60℃以下の冷却温度が達成され、その冷却温度が圧縮機圧力が15〜25bar の範囲で達成されていることから、これらの4成分系冷媒をベースとしてそれによって達成される冷却温度で凝縮可能な冷媒を選定して−100℃以下の冷却温度を達成し、次いでその温度で凝縮可能な冷媒を選定して、さらに−150℃の低温度を目指す非共沸混合冷媒の成分と組成を策定することを検討した。
実用上、これらの組み合わせ可能な冷媒の種類はある程度限られるが、本発明者らが検討した冷媒とその特性を表1に挙げる。
【表1】
【0026】
−100℃以下の冷却温度を達成するためにベース冷媒に組み合わせる低沸点冷媒として、これらの内エチレンは臨界温度が高いが、沸点もやや高いうえに蒸気圧が高く、
先の実験においてもこれらの性質が冷凍機運転上圧力を上昇させた原因と考えられることから除外した。
これに対して、R−14は蒸気圧が低く、その臨界温度から非共沸混合冷媒としてベース冷媒の達成する冷却温度−60〜-75℃において広い含有量範囲にわたって凝縮可能であって、さらに低温度を達成可能と考えられる。
【実施例1】
【0027】
(1) −100℃以下の冷却温度を達成する非共沸混合冷媒。
前記ベース冷媒に対してR−14を添加した組成及び冷凍機により達成された冷却温度などの結果を表2に示す。
実験設備は、
図1の概略図に示す冷凍機の構成を用いた。
本冷凍機は、実際に医療用生体組織の保存にも使用されているものであって、その業務用としての信頼性を確保する為、冷凍機中の冷媒の循環経路は圧縮機から、蒸発器・冷凍庫を経て圧縮機に戻るまでの間の構成は全て2重に構成されている(冷凍庫は1基で共通。)。このため、圧力の測定箇所はそれぞれ2カ所ずつに配置して1次及び2次側として測定した。
従って、冷媒は総量1,000gがこの両経路に沿って500gづつに2分されて個別に冷凍機システムを循環し、1つの冷凍庫に導入されて冷却する。
したがって、それぞれの経路で温度や圧力を測定してそれぞれの値を比較することによって冷凍機の運転状態を通して冷媒の挙動を観測できる利点がある。
たとえば、実機運転でのこれら1次側と2次側の絞り弁(キャピラリー)出口温度と庫内中心温度との測定値の差は極く僅か(1℃以下)であって、本発明の非共沸冷媒の冷却能力が最大限に達成され、これらの冷媒の扱いやすさ、冷凍機の運転状態が安定したものであることを確認できたが、一方、それぞれの経路の圧力条件について高圧側、低圧側共に起動時以外にも変動が見られた。
これらの圧力の変化は、詳細は不明であるが低沸点冷媒の凝縮条件を敏感に反映していると考えられ、特に冷媒の組成が好適な範囲の限界近傍から著しく現れることから、冷媒組成の好適範囲、実用限界を評価・判定するうえで参考とされた。
【0028】
ベース冷媒として前記公知の4成分系非共沸混合冷媒を用い、実施例として、次の組成とした
プロパン+ブタンが60wt%、R−23+R−116が残余の40wt%であって、
プロパン+ブタンのプロパン/ブタン=25/75(ベース冷媒総量中のプロパン:15.0wt%、ブタン:45.0wt%)、R−23+R−116のR−23/R−116=39/61(ベース冷媒総量中のR−23:15.6wt%、R−116:24.4wt%)の組成からなる4成分系非共沸混合冷媒をベースとした。
なお、冷媒混合量は、それぞれ目的とするwt%量の前後でそれぞれ±5gずつ変えて測定してその影響を確認した。
【表-2】
【0029】
庫内温度は冷凍庫内中心で測定した。また、庫内温度はキャピラリー出口温度に対して、1℃以内の差であって、ほぼ定常運転の条件を満たした。
キャピラリー出口温度は、非共沸混合冷媒中の最も沸点の低い成分(組成)が蒸発する領域であり、その後は蒸発器中で気化するにつれて組成が高沸点側へ移行して、残存する液相中の冷媒成分はより高沸点側に移行して混合冷媒の沸点は上昇するから、このキャピラリー出口温度近傍が冷媒が循環する冷凍機の経路中で最も低温度となるものと考えられるが、冷凍機の定常運転状態においては、庫内中心温度と比較して最大±1℃以下の差であって、これらの低沸点成分の凝縮が十分に行われていることを示している。
【0030】
表−2の測定結果において、
高圧側出口(3)は圧縮された冷媒ガスの温度であるから高温であるが、低圧入口(4)、熱交換器入口(5)及び熱交換器出口(6)の測定温度は、それぞれ熱交換後の冷媒ガス、凝縮器によって放熱後の冷媒ガス、及び熱交換器で往路の冷媒と熱交換後の冷媒ガスの温度であって、これらの冷媒ガスの温度が (5)>(6)≒(4)であって温度差がごく小さいことから、熱交換が極めて効果的に行われていることが解る。
なお、熱交換器を経て熱交換後に蒸発器に向かう冷媒温度は外気温度を遮断する構造であるため測定できなかったが、庫内温度が−100℃以下であることから最終的にその近傍にまで冷却されると考えられ、これらはR−14の沸点に近く、また、後述するとおり圧力値が低く維持されていることから、R−14がその組成範囲において効果的に冷却、凝縮していることが解る。
【0031】
以上のデータを、ベース冷媒に対するR-14添加量に対して、庫内中心温度、高圧側圧力、低圧側圧力について、それぞれ
図2のグラフに示す。
これらのデータ及び
図2から、ベース冷媒に対するR-14添加の効果は、R-14含有量5〜40%という広い範囲で庫内中心温度がほぼ−100℃〜-120℃近傍の範囲で達成され、しかも、その間の圧力が定常運転状態で6〜10barという極めて低い値に保たれており、これらの非共沸混合冷媒の凝縮が達成されていることが解る。
この特性は、−100℃〜−110℃という低温度を達成する冷媒として、冷凍機の能力、容量について余裕があるばかりか、安定した操業が可能であって極めて優れた性質である。
【0032】
この冷却温度域を達成することができる混合冷媒の組成範囲は、前記の4成分系ベース冷媒に対して、R−14の含有量として、5wt%から40wt%までに及ぶ。
これらの組成範囲の上下においてもなおこれらの低温度を維持するが、5wt%未満の領域では−100℃付近から温度が上昇する傾向があり、また、40wt%近傍で−117℃以下の温度を維持するものの、圧力が若干上昇する傾向があることから、R−14含有量はこれらの範囲:5wt%〜40wt%が実用範囲といえる。
また、これらの範囲においても圧力値は依然として10bar以下であって、実用上極めてすぐれた特性であると共に、さらに低温度を達成するためのベースとなる冷媒として好適であると考えられる。
【0033】
以上から、本発明の−100℃以下の低温度を達成する非共沸混合冷媒として
高沸点冷媒としてベース冷媒、低沸点冷媒としてR−14からなり、R−14を5wt%〜40wt%含有(ベース冷媒/R−14が95/5〜60/40)する、非共沸混合冷媒が提案される。
但し上記において、ベース冷媒は、常温で凝縮する高沸点冷媒としてプロパン+ブタン、これに対する低沸点冷媒としてR−23+R−116からなり、
該ベース冷媒におけるプロパン+ブタンが35wt%〜70wt%であって、残余がR−23+R−116であり、
R−23+R−116中のR−23が70wt%〜15wt%、R−116が30wt%〜85wt%、である。
【0034】
また、以上の結果からこの混合冷媒をその組成範囲内でさらに沸点の低い冷媒と組み合わせて、冷却温度を低下させることが可能である。
そこで、この安定した条件で達成できる−100℃以下の冷却温度によって凝縮可能な低沸点冷媒として、臨界温度−82℃のメタン(R-50)が凝縮可能と考えられ、さらに冷却温度を低下させるうえで、このメタンと共にさらに沸点の低い臨界温度−122.45℃のアルゴン(R−740)との組合せを試みた。
【実施例2】
【0035】
(2) −120℃〜−150℃を達成する非共沸混合冷媒。
ベース冷媒+R-14の非共沸冷媒に対して、メタン、及びアルゴンを加えて、−120℃〜−150℃の冷却温度、庫内温度を達成する冷媒を試みた。
組成及び冷凍機における結果を次の表3及び表4に示す。
冷凍機の構成及び試験条件は、前記のベース冷媒とR-14との混合冷媒の実験と同じとし、組成の変動に対する変化を確認するため同様にベース冷媒+R-14の非共沸冷媒に対するR−50+R−740の添加量をそれぞれ1wt%〜9wt%の混合比率に対して上下±5gの幅で添加して含有量の増減に対する変化を測定した。
表−3にベース冷媒/R-14の比率が90/10、80/20について、さらに表−4にこれらの上限及び下限の範囲を確認するため、同じく比率が95/5及び60/40について組成と測定値を示す。
なお、表−3及び4において、冷媒の組成欄には冷媒全体の組成を表すため、それぞれの冷媒の経路別に導入した冷媒の全冷媒中のwt%と併せてそのグラム数を(g)で表した。
【表-3】
【表-4】
【0036】
以上の結果をベース冷媒/R-14が90/10について
図3のグラフに、ベース冷媒/R-14が80/20について
図4のグラフに示す。
また、ベース冷媒/R-14が95/5について
図5のグラフに、ベース冷媒/R-14が60/40について
図6のグラフに示す。
【0037】
(実験結果)
表−3のベース冷媒/R-14が90/10においては、R−50及びR-740が添加されると急激に庫内温度が低下し始め、含有量1wt%(合計2wt%)で庫内温度−120℃を超え、その含有量の増加に対応して4wt%(合計8wt%)を超えて庫内温度も−150℃を超えるまでスムーズに庫内温度が低下しており、それぞれ5wt%(合計10wt%)を超えるまで−150℃以下の庫内温度を維持してその添加の効果が表れている。その効果は1%未満でも明瞭に表れ、1wt%を超えるとベース冷媒+R-14に対して−120℃以下とする冷却効果が認められる。
高圧側、低圧側の圧力もそれぞれの含有量10wt%に至るまでは1次、2次の経路別に殆んど差異はないが、含有量が10wt%を超えるといずれも圧力値が変動し始めて不安定になり、その影響を受けて1次、2次の経路での測定値に差が表れている。
これらの結果から、R−50及びR-740の添加は微量でも効果が表れるが、−120℃以下の低温度を達成する上で含有量の好適な範囲はそれぞれ1〜10%と判断される。
同様にして、表−3のベース冷媒/R-14が80/20においても、R−50及びR-740の含有量の増加に対応して−150℃を超えるまでスムーズに庫内温度が低下しており、これら低沸点冷媒添加の効果が表れており、これらの含有量範囲が10%を超えると冷凍機の作動が不安定となっている。
【0038】
これらの結果を
図3のグラフに示す。
図3のグラフに示すように、ベース冷媒+R-14のベース冷媒/R−14が90/10において、メタン及びアルゴンの含有量がそれぞれ4wt%を超え10wt%(合計:8wt%を超え20wt%)で庫内温度−150℃を超え、圧力も11〜13barの低い範囲にとどまっている。
なお、これらの圧力値は高圧側ではほとんど差が見られないことから1次側の圧力値のみプロットした。 また、低圧側の圧力は1次側と2次側とで差が表れたため、それぞれプロットしたが、本来圧力値が小さいため相対的に差が表れやすいためで実用上問題となるものではない。以下、
図4以下でも同様である。
また、
図4のグラフに示すように、ベース冷媒+R-14のベース冷媒/R-14が80/20の領域においても同様にメタン及びアルゴンの含有量がそれぞれ4wt%を超え〜10wt%(合計8wt%を超え〜20wt%)の範囲で庫内温度−150℃以下を達成し、フラットな特性を示して安定するが、圧力はメタン+アルゴンが6wt%付近の10barから直線的に上昇してメタン+アルゴンの含有量が20wt%付近でほぼ18bar近傍まで上昇し、冷凍機の運転状態が不安定となった。
これらの実験における圧力値は、いずれも最大13bar 、及び18bar程度であって、さらに圧力を上げて庫内温度の低下も進行可能と思われるが、冷凍機の運転状態が不安定となったことから、実機運転上これらの組成範囲が一応の実用範囲とした。
以上から、ベース冷媒+R−14の冷媒に対するメタン、アルゴンの効果は微量でも表れ、メタン、アルゴンの含有量がそれぞれ1wt%(合計2wt%)以上で冷却温度−120℃以下が達成され、さらにそれぞれ4wt%以上で−150℃近傍に達し、10wt%で−150℃以下を達成する。
【0039】
次に、ベース冷媒/R-14の比率について、好適範囲の上下限を確認するため、表−4に挙げるとおり、ベース冷媒/R-14が95/5、及び60/40の範囲でメタン(R−50)及びアルゴン(R−740)をそれぞれ1wt%〜10wt%(合計2wt%〜20wt%)添加して効果を確認した。
R−50及びR−740の添加量は、同じくそれぞれ1wt%〜10wt%に対して±5gずつ増減してその影響を確認した。
表−4のベース冷媒/R-14が95/5においては、メタン及びアルゴンの添加の効果が1wt%(合計2wt%)で−120℃を超え、庫内温度−150℃を超えるまで冷却効果が認められるが、圧力値が変動しやすく、特にその含有量が増加するにつれてその影響が大きくなり、含有量10wt%(合計20wt%)を超えると冷凍機は作動困難となって、実験を停止した。
1次及び2次側の冷媒の圧力値に差が表れるのはそれらの影響である。これらの結果をプロットした
図5のグラフではそれぞれ1次側と2次側とで高圧側圧力値が異なる状態を示し、グラフが上下に分かれていることに表れている。なお、低圧側の圧力値も1次側と2次側とで分かれているが、微小な圧力であるため冷凍機の運転条件によって敏感に変動するためであって、実際上問題とならない。
庫内温度については比較的安定して前記範囲と同様に冷却効果が認められるが、これらの結果からベース冷媒に対するR-14の比率は5%が実用下限とされ、メタン及びアルゴンの効果は微量でも表れるが、−120℃以下の冷却温度を達成する上で、含有量は前記と同じくそれぞれ実用上の好適範囲はほぼ1wt%〜10%(合計2wt%〜20%)とされ、さらに−150℃近傍の低温度を達成する上での好適範囲はメタン及びアルゴンがそれぞれ4wt%〜10wt%とされる。
【0040】
さらに、表−4のベース冷媒/R-14が60/40においては、ベース冷媒+R-14に対して、メタン及びアルゴンの添加の効果が微量でも表れ、その含有量と共に庫内温度が低下するが、冷却温度は−150℃近傍に達する。
また、ベース冷媒/R-14のR-14が5wt%の場合と同様に、メタン及びアルゴンの含有量が増加するにつれて圧力値が変動しやすく、特にその含有量が増加するにつれてその影響が大きくなり、含有量10wt%、合計20wt%を超えると冷凍機は作動不良となって、実験を停止した。
これらの影響は1次、2次側の冷媒の高圧側圧力値の差に表れ、
図6のグラフにもその結果圧力値が2分して表れている。
これらの結果から、ベース冷媒/R-14のR-14の比率は40wt%が実用上限とされ、メタン及びアルゴンの効果は微量でも表れるが、−120℃以下の冷却温度を達成する上で含有量は前記と同じくそれぞれ1wt%〜10wt%(合計2wt%〜20wt%)が実用上の好適範囲であり、−150℃近傍の冷却温度を達成するにはそれぞれ4wt%〜10wt%が好適範囲である。
【0041】
以上の実験ではベース冷媒+R−14の組成について、ベース冷媒+R−14におけるR−14が5wt%〜40wt%の範囲で目的とする−100℃以下の冷却温度を達成する非共沸冷媒として実用性を有することを確認したが、
さらに低温度を達成する冷媒として、上記ベース冷媒+R−14の混合冷媒をベースとして、さらに低沸点のメタン(R−50)及びアルゴン(R740)を添加することが有効であり、−120℃以下の冷却温度を達成する含有量として冷媒総量に対してそれぞれ1wt%〜10wt%(メタン及びアルゴンをほぼ同量として、合計2wt%〜20wt%)添加した非共沸混合冷媒が有用であり、さらにこれらR−50及びR740の含有量を4wt%〜10wt%とすることにより−150℃近傍の低温度を達成することが出来た。
【0042】
以上から、本発明の−100℃以下の低温度を達成する非共沸混合冷媒として
ベース冷媒とR−14からなり、ベース冷媒/R−14が95/5〜60/40(R−14を5〜40wt%含有する)とした非共沸混合冷媒であり、
また、さらに低い冷却温度を達成する非共沸混合冷媒として、ベース冷媒とR−14及びR−50+R−740からなる非共沸混合冷媒が提案され、ベース冷媒/R−14が95/5〜60/40であり、R−50及びR−740をそれぞれ10wt%(合計20wt%)以下含有する、非共沸混合冷媒であって、
特に、−120℃以下の冷却温度を達成する組成として、上記R−50及びR−740をそれぞれ1wt%〜10wt%含有し、さらに、−150℃近傍の冷却温度を達成する非共沸混合冷媒として、上記R−50及びR−740をそれぞれ4wt%〜10wt%(合計8wt%〜20wt%)とした非共沸混合冷媒である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
近年進展の著しい、医療用やバイオテクノロジー分野における生体組織や生物組織などの保存に求められる条件を満たすことができ、これらの広い産業分野において発展に資することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 圧縮機(コンプレッサー)
2 凝縮器(コンデンサー)
3 絞り弁(キャピラリーチューブ)
4 蒸発器(エバポレーター)
5 冷凍庫
6 熱交換器
7 熱交換器接合部
8 往路管(圧縮機→蒸発器)
9 復路管(蒸発器→圧縮機)
10 断熱層
(1) 絞り弁(キャピラリー)出口温度測定点
(2) 冷凍庫中心温度測定点
(3) 圧縮機高圧側出口(吐出)温度測定点
(4) 圧縮機低圧側入口(吸入)温度測定点
(5) 熱交換器入口(往路管)温度測定点
(6) 熱交換器出口(復路管)温度測定点
A 高圧側圧力測定点
B 低圧側圧力測定点
【要約】
熱交換器をそなえた冷凍機において、−100℃〜-150℃の超低温度を達成する非共沸混合冷媒。
−100℃以下の低温度を達成する非共沸混合冷媒としてベース冷媒とR−14からなり、R−14を5wt%〜40wt%含有する非共沸混合冷媒、ただし、ベース冷媒はブタン+プロパン、及びこれに対する低沸点冷媒としてR−23+R−116からなる。
また、−120℃以下を達成する非共沸混合冷媒として、ベース冷媒とR−14及びR−50+R−740からなり、ベース冷媒/R−14が95/5〜60/40であって、R−50及びR−740をそれぞれ1wt%〜10wt%含有する非共沸混合冷媒であり、さらに、−150℃近傍の冷却温度を達成する非共沸混合冷媒として、上記非共沸混合冷媒のR−50及びR−740をそれぞれ4wt%〜10wt%とした非共沸混合冷媒
選択図
図1