(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記底板と前記別体の側壁の折曲部とのオーバーラップ領域における中央から前記溶接部と逆側寄りの位置、若しくは前記別体の側壁と前記底板の折曲部とのオーバーラップ領域における中央から前記溶接部と逆側寄りの位置に前記補強溶接部を備えることを特徴とする請求項6に記載の真空断熱容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、真空断熱容器のサイズを大きくする場合等には、内容器の側壁と底板、外容器の側壁と底板をそれぞれ溶接することが必要になるが、この溶接構造としては
図12及び
図13の様に行うことが考えられる。
【0005】
図12及び
図13の真空断熱容器6では、内容器7の外側に外容器8が設けられ、内容器7と外容器8との間の内部空間にガラス繊維などの断熱材9が充填されている。内容器7は底板71と側壁72を有し、側壁72の下端部には、略直角に屈曲されて、外側方に向かって延びる折曲部721が形成されている。折曲部721は、底板71の縁近傍において、その上側に沿うように配置されており、折曲部721の先端と底板71の縁とがアーク溶接で拝み溶接等され、溶接部W11が形成されている。
【0006】
外容器8も底板81と側壁82を有し、側壁82の下端部には、略直角に屈曲されて、外側方に向かって延びる折曲部821が形成されている。折曲部821も、底板81の縁近傍において、その上側に沿うように配置されており、折曲部821の先端と底板81の縁とがアーク溶接で拝み溶接され、溶接部W12が形成されている。
【0007】
内容器7の側壁72の上端部には、略直角に屈曲されて、外側方に向かって延びる上端面722が形成されており、更に、上端面722の外端から略直角に屈曲されて、上方に向かって延びる折曲部723が形成されている。折曲部723は、外容器8の側壁82の上端近傍において、その内側に沿うように配置され、折曲部723の先端と側壁82の上端とがアーク溶接で拝み溶接され、溶接部W13が形成されている。そして、内容器7と外容器8との間の内部空間の内部圧力は減圧され真空にされている。
【0008】
しかしながら、上記構造の真空断熱容器6では、例えば内容器7の底板71と側壁72との溶接部W11が内容器7と外容器8との間に形成される内部空間側に突出して設けられるため、真空断熱容器6を一旦組み立てた後に、溶接部W11の気密性に欠陥が見つかって真空状態を維持できない場合、或いは溶接部W11に後から欠陥が生じて真空状態を維持できなくなった場合に、溶接部W11の補修をすることが非常に困難となる。また、内容器7の底板71が内容器7と外容器8との間の内部空間側に突出する構造であるため、この突出部分だけ余分に材料が必要になるという問題もある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、溶接部を有する真空断熱容器の基本構造を一旦組み立てた後に、溶接部の気密性に欠陥が見つかって真空状態を維持できない場合、或いは溶接部に後から欠陥が生じて真空状態を維持できなくなった場合にも、溶接部を容易に補修することができる真空断熱容器及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、内容器の底板の材料を削減することができる真空断熱容器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の真空断熱容器は、内容器と外容器とで容器本体を形成し、前記内容器と前記外容器との間に設けられる内部空間を真空にする真空断熱容器であって、前記内部空間を気密にする所要の溶接部を、前記容器本体の前記内部空間に対して逆側に露出する部位に設けることを特徴とする。尚、容器本体の内部空間には、断熱材を充填して設ける構成、或いは特に何も設けずに単に真空にする構成等とすることが可能である。
この構成によれば、所要の溶接部が内部空間に対して逆側に露出していることから、溶接部を有する真空断熱容器の基本構造を一旦組み立てた後に、溶接部の気密性に欠陥が見つかって真空状態を維持できない場合、或いは溶接部に後から欠陥が生じて真空状態を維持できなくなった場合にも、溶接部を容易に補修することができる。従って、真空漏れを発見した際にも、溶接部を補修して製品化することができ、歩留まりを格段に向上することができる。更に、組立よりも工数を要する真空断熱容器の解体や廃棄の作業を行う必要を無くすことができ、又、解体作業時に発生する火花や粉塵等で作業環境が悪化し、これに起因する真空断熱容器の真空精度の低下、真空ポンプの目詰まり、故障等を防止できる。他方で、解体せずに廃棄する場合は多額の廃棄処理費用が発生するが、この廃棄処理費用を無くすことができる。また、運搬時や据付時の振動、温度や湿度の変化、地震や火災等で溶接部に亀裂が生じた場合にも容易に補修を行うことができる。
【0011】
本発明の真空断熱容器は、前記内容器を底板と前記底板とは別体の側壁とから構成し、前記別体の側壁の下端部に内側方に向かって屈曲する折曲部を形成し、前記折曲部を前記底板の縁近傍における前記底板上に載置し、前記折曲部の先端と前記底板とを溶接して前記溶接部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、内容器の底板とこれと別体の側壁との溶接部を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器の内面側に設けることができ、内容器の底板と別体の側壁との溶接部を容易に補修することができる。また、内容器と外容器との間の内部空間に底板を突出させる必要がないことから、内容器の材料を削減することができる。また、別体の側壁の折曲部を底板の縁近傍上に載置する構成により、例えば底板の縁と別体の側壁の外面とを位置合わせすることにより、容易に位置合わせして溶接することが可能となる。
【0012】
本発明の真空断熱容器は、前記内容器を底板と前記底板とは別体の側壁とから構成し、前記別体の側壁の下端部に内側方に向かって屈曲する折曲部を形成し、前記折曲部上に前記底板の縁近傍を載置し、前記底板の縁と前記折曲部とを溶接して前記溶接部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、内容器の底板とこれと別体の側壁との溶接部を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器の内面側に設けることができ、内容器の底板と別体の側壁との溶接部を容易に補修することができる。また、内容器と外容器との間の内部空間に底板を突出させる必要がないことから、内容器の材料を削減することができる。また、別体の側壁の下端部が底板の縁よりも外側方に配置されることになり、材料の使用量を削減しつつ、内容器の容積をより大きくすることができる。
【0013】
本発明の真空断熱容器は、前記内容器を底板と前記底板とは別体の側壁とから構成し、前記底板の側端部に上方に向かって屈曲する折曲部を形成し、前記折曲部の外側面に前記別体の側壁の下端近傍を沿わせて配置し、前記折曲部の上端と前記別体の側壁とを溶接して前記溶接部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、内容器の底板とこれと別体の側壁との溶接部を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器の内面側に設けることができ、内容器の底板と別体の側壁との溶接部を容易に補修することができる。また、内容器と外容器との間の内部空間に側壁を突出させる必要がないことから、内容器の材料を削減することができる。また、折曲部の外側面に別体の側壁の下端近傍を沿わせて配置する構成により、例えば別体の側壁の下端と底板の下面とを位置合わせすることにより、容易に位置合わせして溶接することが可能となる。
【0014】
本発明の真空断熱容器は、前記内容器を底板と前記底板とは別体の側壁とから構成し、前記底板の側端部に上方に向かって屈曲する折曲部を形成し、前記折曲部の内側面に前記別体の側壁の下端近傍を沿わせて配置し、前記別体の側壁の下端と前記折曲部とを溶接して前記溶接部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、内容器の底板とこれと別体の側壁との溶接部を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器の内面側に設けることができ、内容器の底板と別体の側壁との溶接部を容易に補修することができる。また、内容器と外容器との間の内部空間に側壁を突出させる必要がないことから、内容器の材料を削減することができる。また、別体の側壁の下端が底板の上面よりも上方に配置されることになり、材料の使用量を削減しつつ、内容器の容積をより大きくすることができる。
【0015】
本発明の真空断熱容器は、前記溶接部と略平行な位置に、前記底板と前記別体の側壁の折曲部若しくは前記別体の側壁と前記底板の折曲部とをレーザー溶接してなる補強溶接部を設けることを特徴とする。
この構成によれば、溶接部と補強溶接部との双方で接合強度をより高めることができると共に、容器本体の内部空間の気密性の確保をより確実に行うことができる。また、レーザー溶接で補強溶接部を構成することにより、低歪で加工することができ、残留応力の削減と溶接時の変形防止を図りつつ補強溶接を行うことができる。
【0016】
本発明の真空断熱容器は、前記底板と前記別体の側壁の折曲部とのオーバーラップ領域における中央から前記溶接部と逆側寄りの位置、若しくは前記別体の側壁と前記底板の折曲部とのオーバーラップ領域における中央から前記溶接部と逆側寄りの位置に前記補強溶接部を設けることを特徴とする。
この構成によれば、内容器と外容器との間の内部空間に露出する、接合されていない状態で二重に重なっている部分をより低減することができ、この重なり部分に付着している水分や塵等の不純物を減少させ、真空精度をより高めることができる。
【0017】
本発明の真空断熱容器の製造方法は、上記真空断熱容器の製造方法であって、前記内容器と前記外容器との間に設けられる前記内部空間を気密にする所要の溶接部を、前記容器本体の前記内部空間に対して逆側に露出する部位に形成して前記容器本体を形成する工程と、前記容器本体の真空漏れを検査し、真空漏れを検出した場合に前記溶接部を前記容器本体の前記内部空間に対して逆側から補修する工程と、前記容器本体の所定箇所に設けられている吸引穴から前記容器本体内を真空吸引して前記吸引穴を閉塞する工程とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、気密性に優れる真空断熱容器を、歩留まりの高い効率的、低コストの工程で製造することができる。
【0018】
本発明の真空断熱容器の製造方法は、上記真空断熱容器の製造方法であって、前記内容器と前記外容器との間に設けられる前記内部空間を気密にする所要の溶接部を、前記容器本体の前記内部空間に対して逆側に露出する部位に形成して前記容器本体を形成する工程と、前記容器本体の所定箇所に設けられている吸引穴から前記容器本体内を真空吸引して前記吸引穴を閉塞する工程と、前記容器本体の真空漏れを検査し、真空漏れを検出した場合に前記溶接部を前記容器本体の前記内部空間に対して逆側から補修する工程とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、気密性に優れる真空断熱容器を、歩留まりの高い効率的、低コストの工程で製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の真空断熱容器或いは真空断熱容器の製造方法は、溶接部を有する真空断熱容器の基本構造を一旦組み立てた後に、溶接部の気密性に欠陥が見つかって真空状態を維持できない場合、或いは溶接部に後から欠陥が生じて真空状態を維持できなくなった場合にも、溶接部を容易に補修することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による実施形態の真空断熱容器について図面に沿って説明する。
【0022】
〔第1実施形態の真空断熱容器〕
第1実施形態の真空断熱容器1は、例えば蓄電池の収容に用いられるものであり、
図1〜
図4に示すように、内容器2と外容器3とで容器本体が形成される二重構造であり、内容器2と外容器3との間に設けられる内部空間にガラス繊維などの断熱材4が充填されている。そして、内容器2と外容器3との間の内部空間が気密とされ、内部圧力を減圧して真空状態にされていると共に、この内部空間を気密にする所要の溶接部W1、W2、W3が容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位に設けられている。
【0023】
内容器2は、底板22と第一側壁23とから構成される内容器本体21と、底板22とは別体の側壁に相当する第二側壁24と、第一側壁23の上端部と第二側壁24の上端部とを連結するコーナー部25とを有する。内容器本体21では、平面視矩形の底板22の一方向の両縁に、上方へ延びる側面視矩形の第一側壁23・23が略直角に屈曲して一体形成されており、第一側壁23・23は対向配置されている。各第一側壁23の上端部には、外側方に略直角に屈曲して上端面231が形成され、上端面231の先端から上方に略直角に屈曲して折曲部232が形成されている。
【0024】
第二側壁24は、正面視矩形で底板22の他方向の両縁近傍に配置されるものであり、その下端部には内側方に向かって屈曲する折曲部241が形成され、その両側縁には内側方に向かって屈曲する折曲部242が形成されている。第二側壁24の上端部には、外側方に略直角に屈曲して上端面243が形成され、上端面243の先端から上方に略直角に屈曲して折曲部244が形成されている。
【0025】
第二側壁24の折曲部241は、
図3(b)に示すように、底板22の縁近傍における底板22上に載置され、本実施形態では、底板22の縁と第二側壁24の外面とが略同一の位置となるように位置合わせして配置されている。折曲部241の先端は底板22に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W1が折曲部241の先端と底板22との重なり箇所に沿って延びるように形成されている。また、第二側壁24の折曲部242は、第一側壁23の内面に沿うように配置され、折曲部242の先端が第一側壁23に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部が折曲部242の先端と第一側壁23との重なり箇所に沿って延びるように形成されている(図示省略)。
【0026】
溶接部W1等は適用可能な適宜の溶接方法で形成することが可能であるが、例えばTIG溶接、MIG溶接等のアーク溶接、YAGレーザー等のレーザー溶接で形成すると好適であり、後述する各溶接部W2等についても同様である。
【0027】
コーナー部25は、平面視矩形の基面251と、基面251の隣に位置する辺縁から略直角に屈曲して起立する平面視L字形の折曲部252とを有する。基面251の折曲部252が形成されていない辺縁はそれぞれ上端面231と上端面243の端部に突き合わされると共に、折曲部252の両端部は折曲部232、244の端部にそれぞれ突き合わされ、これらの突き合わせ箇所は、例えばTIG溶接、MIG溶接等のアーク溶接、YAGレーザー等のレーザー溶接などで溶接されて溶接部が形成されている。
【0028】
外容器3は、底板32と第一側壁33とから構成される外容器本体31と、底板32とは別体の側壁である第二側壁34とを有する。外容器本体31では、平面視矩形の底板32の一方向の両縁に、上方へ延びる側面視矩形の第一側壁33・33が略直角に屈曲して一体形成されており、第一側壁33・33は対向配置されている。
【0029】
第二側壁34は、正面視矩形で底板32の他方向の両縁近傍に配置されるものであり、その下端部には外側方に向かって屈曲する折曲部341が形成され、その両側縁には外側方に向かって屈曲する折曲部342が形成されている。
【0030】
第二側壁34の折曲部341は、
図3(b)に示すように、底板32の縁近傍における底板32上に載置され、本実施形態では、底板32の縁と折曲部341の先端とが略同一位置となるように位置合わせして配置されている。折曲部341の先端は底板32の縁に拝み溶接して接合されており、この溶接による溶接部W2が折曲部341の先端と底板32の縁との重なり箇所に沿って延びるように形成されている。また、第二側壁34の折曲部342は、第一側壁33の内面に沿うように配置され、折曲部342の先端が第一側壁33の縁に拝み溶接して接合されており、この溶接による溶接部が折曲部342の先端と第一側壁33の縁との重なり箇所に沿って延びるように形成されている(図示省略)。
【0031】
内容器2の第一側壁23の折曲部232とこれと突き合うコーナー部25の折曲部252とを外容器3の第一側壁33の内面に沿わせるように配置し、且つ内容器2の第二側壁24の折曲部244とこれと突き合うコーナー部25の折曲部252とを外容器3の第二側壁34の内面に沿わせるように配置し、外容器3内に内容器2が収容されている。そして、折曲部232、252の先端と第一側壁33の上端、折曲部244、252の先端と第二側壁34の上端の位置が揃えられ、
図3(a)に示すように、拝み溶接して溶接部W3が形成されている。即ち、溶接部W3は真空断熱容器1の平面視で全周に亘って連続形成されている。
【0032】
また、溶接部W1、W2、W3等で閉じられた内容器2と外容器3との間の内部空間には断熱材4が充填されると共に、一方の外容器3の第二側壁34に形成されている吸引穴343から真空吸引され、吸引穴343に図示省略する蓋を溶接等で接合し、内容器2と外容器3との間の内部空間が真空状態に維持されている。
【0033】
第1実施形態の真空断熱容器1を製造する際には、例えば容器本体の内部空間を気密にする所要の溶接部W1、W2、W3等を内部空間に対して逆側に露出する部位に形成すると共に、内容器2と外容器3との間の空間に断熱材4を充填して、内容器2と外容器3とで構成される容器本体を形成する。
【0034】
次いで、例えば浸透液、現像液を吹き付けるカラーチェック法等でこの容器本体の真空漏れを検査し、真空漏れを検出した場合に真空漏れを検出した溶接部を、容器本体の内部空間に対して逆側から補修する。その後、容器本体の所定箇所に設けられている吸引穴343から容器本体内を真空吸引して吸引穴343を閉塞し、真空断熱容器1が完成する。
【0035】
第1実施形態の真空断熱容器1では、内容器2と外容器3との間の内部空間を気密にする所要の溶接部W1、W2、W3等が容器本体の内部空間に対して逆側に露出していることから、真空断熱容器1の基本構造を組み立てた後に、溶接部W1、W2、W3等の気密性に欠陥が見つかって真空状態を維持できない場合、或いは溶接部W1、W2、W3等に後から欠陥が生じて真空状態を維持できなくなった場合にも、溶接部W1、W2、W3等を容易に補修することができる。
【0036】
従って、真空漏れを発見した際にも、溶接部W1、W2、W3等を補修して製品化することができ、歩留まりを格段に向上することができる。更に、組立よりも工数を要する真空断熱容器1の解体や廃棄の作業を行う必要を無くすことができ、又、解体作業時に発生する火花や粉塵等で作業環境が悪化し、これに起因する真空断熱容器1の真空精度の低下、真空ポンプの目詰まり、故障等を防止できる。他方で、解体せずに廃棄する場合は多額の廃棄処理費用が発生するが、この廃棄処理費用を無くすことができる。また、運搬時や据付時の振動、温度や湿度の変化、地震や火災等で溶接部W1、W2、W3等に亀裂が生じた場合にも容易に補修を行うことができる。
【0037】
また、内容器2と外容器3との間の内部空間に底板22を突出させる必要がないことから、内容器2の材料を削減することができる。また、底板22の縁や第一側壁23の縁を第二側壁24の外面に位置合わせすることにより、容易に位置合わせして溶接することが可能である。また、コーナー部25を内容器本体21や第二側壁24と別体とすることにより、内容器本体21や第二側壁24にコーナー部25に相当する部分を設けないことによる部品形状の簡素化、構成部品の細分化等を図り、歩留まりをより一層向上することができる。
【0038】
〔第2実施形態の真空断熱容器〕
次に、第2実施形態の真空断熱容器1について
図5に基づき説明する。第2実施形態の真空断熱容器1は、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、
図5に示すように、第二側壁24の折曲部241の先端と底板22とを接合する溶接部W1と略平行な位置に、底板22と折曲部241とをYAGレーザー等のレーザー溶接で接合する補強溶接部WAが設けられ、溶接部W1と同方向に延びて形成されている。
【0039】
補強溶接部WAは、折曲部241の屈曲部分から折曲部241の先端近傍までの底板22と折曲部241とのオーバーラップ領域における適宜の位置に設けることが可能であるが、オーバーラップ領域の中心から溶接部W1と逆寄りの位置である折曲部241の屈曲部分寄りの位置に形成すると、内容器2と外容器3との間の内部空間に露出する、接合されていない状態で二重になっている底板22と折曲部241の部分をより低減することができ、この部分に付着している水分や塵等の不純物を減少させ、真空精度をより高めることができて好適である。
【0040】
更に、第二側壁24の折曲部242の先端と第一側壁23とを接合する溶接部と略平行な位置にも、第一側壁23と折曲部242とをレーザー溶接で接合する補強溶接部が設けられ、この補強溶接部も前記溶接部と同方向に延びて形成されている。尚、この補強溶接部も補強溶接部WAと同様に、オーバーラップ領域の中央から前記溶接部と逆寄りの位置である折曲部242の屈曲部分寄りの位置に形成すると好適であり、更には、この補強溶接部と補強溶接部WAとを対応する位置に形成し、連続させるようにすると、折曲部241、242と底板22、第一側壁23との間の気密性を向上できるので好適である。
【0041】
第2実施形態の真空断熱容器1は、第1実施形態における製造工程で溶接部W1等を形成する際に、補強溶接部WA等を形成する工程を追加して製造することが可能である。
【0042】
第2実施形態の真空断熱容器1は、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、溶接部W1等と補強溶接部WA等との双方で接合強度をより高めることができ、更に、容器本体の内部空間の気密性の確保をより確実に行うことができる。また、レーザー溶接で補強溶接部WA等を構成することにより、低歪で加工することができ、残留応力の削減と溶接時の変形防止を図りつつ補強溶接を行うことができる。
【0043】
〔第3実施形態の真空断熱容器〕
次に、第3実施形態の真空断熱容器1について
図6に基づき説明する。第3実施形態の真空断熱容器1は、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、
図6に示すように、別体の側壁である第二側壁24の下端部の折曲部241上に底板22の縁近傍が載置され、底板22の縁が折曲部241に隅肉溶接して接合され、この溶接による溶接部W4が底板22の縁と折曲部241との重なり箇所に沿って延びるように形成されている。
【0044】
また、第二側壁24の折曲部242は、第一側壁23の外面に沿うように配置され、第一側壁23の縁が折曲部242に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部が第一側壁23の縁と折曲部242との重なり箇所に沿って延びるように形成されている(図示省略)。尚、第3実施形態の真空断熱容器1も第1実施形態と同様の製造工程で製造することが可能である。
【0045】
第3実施形態の真空断熱容器1は、内容器2の底板22と第二側壁24との溶接部W4等を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器2の内面側に設けることができることから、溶接部W4等を容易に補修することができる。また、内容器2と外容器3との間の内部空間に底板22を突出させる必要がないことから、内容器2の材料を削減することができる。また、第二側壁24の下端部が底板22の縁よりも外側方に配置されることになり、材料の使用量を削減しつつ、内容器2の容積をより大きくすることができる。その他に、第1実施形態と対応する構成により、第1実施形態と対応する効果を奏する。
【0046】
〔第4実施形態の真空断熱容器〕
次に、第4実施形態の真空断熱容器1について
図7に基づき説明する。第4実施形態の真空断熱容器1は、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、
図7に示すように、底板22の周縁である側端部に上方に向かって屈曲する折曲部221が形成され、折曲部221の外側面に別体の側壁である第二側壁24の下端近傍が沿うように配置され、折曲部221の上端が第二側壁24に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W5が折曲部221の上端と第二側壁24との重なり箇所に沿って延びるように配置されている。
【0047】
また、第4実施形態では第一側壁23も別体の側壁とされ、折曲部221の外側面に別体の側壁である第一側壁23の下端近傍が沿うように配置され、折曲部221の上端が第一側壁23に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W5が折曲部221の上端と第一側壁23との重なり箇所に沿って延びるように配置されている。第一側壁23の側端部と第二側壁24の側端部は突き合わされ、レーザー溶接、アーク溶接等で突き合わせ溶接して接合される(図示省略)。
【0048】
尚、第一側壁23と第二側壁24とによる側壁に周方向に一体形成で連続する筒状部材を用い、これを折曲部221の外側面に沿わせて配置し、折曲部221の上端を筒状部材の第一側壁23、第二側壁24に溶接する構成としてもよい。また、第4実施形態の真空断熱容器1も第1実施形態と同様の製造工程で製造することが可能である。
【0049】
第4実施形態の真空断熱容器1は、内容器2の底板22と別体の側壁である第二側壁24、第一側壁23との溶接部W5等を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器2の内面側に設けることができることから、溶接部W5等を容易に補修することができる。また、内容器2と外容器3との間の内部空間に側壁23、24を突出させる必要がないことから、内容器2の材料を削減することができる。また、例えば別体の側壁23、24の下端と底板22の下面とを位置合わせすることにより、容易に位置合わせして溶接することが可能となる。その他に、第1実施形態と対応する構成により、第1実施形態と対応する効果を奏する。
【0050】
〔第5実施形態の真空断熱容器〕
次に、第5実施形態の真空断熱容器1について
図8に基づき説明する。第5実施形態の真空断熱容器1は、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、
図8に示すように、底板22の周縁である側端部に上方に向かって屈曲する折曲部221が形成され、折曲部221の内側面に別体の側壁である第二側壁24の下端近傍が沿うように配置され、第二側壁24の下端が折曲部221に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W6が第二側壁24の下端と折曲部221との重なり箇所に沿って延びるように配置されている。
【0051】
また、第5実施形態では第一側壁23も別体の側壁とされ、折曲部221の内側面に別体の側壁である第一側壁23の下端近傍が沿うように配置され、第一側壁23の下端が折曲部221に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W6が第一側壁23の下端と折曲部221との重なり箇所に沿って延びるように配置されている。第一側壁23の側端部と第二側壁24の側端部は突き合わされ、レーザー溶接、アーク溶接等で突き合わせ溶接して接合される(図示省略)。
【0052】
尚、第5実施形態でも、第一側壁23と第二側壁24とによる側壁に周方向に一体形成で連続する筒状部材を用い、これを折曲部221の内側面に沿わせて配置し、筒状部材の第一側壁23、第二側壁24の下端を折曲部221に溶接する構成としてもよい。また、第5実施形態の真空断熱容器1も第1実施形態と同様の製造工程で製造することが可能である。
【0053】
第5実施形態の真空断熱容器1は、内容器2の底板22と別体の側壁である第二側壁24、第一側壁23との溶接部W6等を、容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位である内容器2の内面側に設けることができることから、溶接部W6等を容易に補修することができる。また、内容器2と外容器3との間の内部空間に側壁23、24を突出させる必要がないことから、内容器2の材料を削減することができる。また、側壁23、24の下端が底板22の上面よりも上方に配置されることになり、材料の使用量を削減しつつ、内容器2の容積をより大きくすることができる。その他に、第1実施形態と対応する構成により、第1実施形態と対応する効果を奏する。
【0054】
〔第6実施形態の真空断熱容器〕
次に、第6実施形態の真空断熱容器1について
図9に基づき説明する。第6実施形態の真空断熱容器1は、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、
図9に示すように、第二側壁24の上端部は上端面243、折曲部244を有しない辺になっており、第一側壁23の上端部も上端面231、折曲部232を有しない辺になっている。
【0055】
外容器3の第二側壁34の上端部には、内側方に略直角に屈曲して上端面35が形成され、上端面35の内端から略直角に下方に屈曲して折曲部36が形成されている。上端面35、折曲部36は、第二側壁34の幅方向両端で切り欠かれるような長さで、第二側壁34の幅より短く形成されている。そして、折曲部36の内面側に第二側壁24の上端近傍が沿うように配置され、第二側壁24の上端が折曲部36に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W7が第二側壁24の上端と折曲部36との重なり箇所に沿って延びるように配置されている。
【0056】
また、外容器3の第一側壁33の上端部にも同様に上端面35、折曲部36が形成され、第一側壁33の幅方向両端で切り欠かれるような長さで、第一側壁33の幅より短く形成されている。そして、折曲部36の内面側に第一側壁23の上端近傍が沿うように配置され、第一側壁23の上端が折曲部36に隅肉溶接して接合されており、この溶接による溶接部W7が第一側壁23の上端と折曲部36との重なり箇所に沿って延びるように配置されている。
【0057】
第二側壁34と第一側壁33とで構成される隅部では、第二側壁34の折曲部36の側端部と第一側壁33の折曲部36の側端部とが突き合わせ溶接されると共に、
図9(b)に示すように、第二側壁34、第一側壁33及びこれらの上端面35の側端部で囲まれる平面視矩形の領域に、対応する形状の別体のコーナー部25aが配置され、コーナー部25aの周縁がそれぞれ第二側壁34、第一側壁33及びこれらの上端面35の側端部に溶接部W8で溶接される。これらの溶接は、レーザー溶接、アーク溶接等で適宜行うことが可能である。
【0058】
また、第6実施形態でも、第一側壁23と第二側壁24とによる側壁に周方向に一体形成で連続する筒状部材を用い、これを折曲部36の内面に沿わせて配置し、筒状部材の第一側壁23、第二側壁24の上端を折曲部36に溶接する構成としてもよい。また、第6実施形態の真空断熱容器1も第1実施形態と同様の製造工程で製造することが可能である。
【0059】
第6実施形態の真空断熱容器1では、第1実施形態の拝み溶接による溶接部W5の部分の材料を削減することができる。その他に、第1実施形態と対応する構成により、第1実施形態と対応する効果を奏する。
【0060】
〔第7実施形態の真空断熱容器〕
次に、第7実施形態の真空断熱容器1について
図10及び
図11に基づき説明する。第7実施形態の真空断熱容器1は、例えばサイズの大きな真空断熱容器1とする場合に用いられ、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、
図10(a)に示すように、内容器本体21が、部分底板22bと第一側壁23とから構成される部材の一対と、部分底板22b・22b間に配置される中継ぎ底板22aにより形成されている。
【0061】
部分底板22bと第一側壁23とから構成される部材では、平面視矩形の部分底板22bの片縁に、上方へ延びる側面視矩形の第一側壁23・23が略直角に屈曲して一体形成されている。第一側壁23の上端部には、外側方に略直角に屈曲して上端面231が形成され、上端面231の先端から上方に略直角に屈曲して折曲部232が形成されている。
【0062】
そして、部分底板22b・22bの第一側壁23・23が形成されていない側の片縁が対向配置され、その間に平面視矩形の中継ぎ底板22aが配置される。部分底板22bの第一側壁を有しない側の片縁と中継ぎ底板22aの側縁とはそれぞれ当接され、レーザー溶接、アーク溶接等で突き合わせ溶接され、溶接部W9で接合されている。
【0063】
ここで、直線状の溶接部W9の溶接の始点或いは終点には、
図10(b)に示すように、溶接欠けSが発生する場合がある。しかしながら、
図11(a)に示すように、第二側壁24の内側方に向かって屈曲する折曲部241を、中継ぎ底板22a、部分底板22bの縁近傍における中継ぎ底板22a、部分底板22b上に載置し、折曲部241の先端を中継ぎ底板22a、部分底板22bに隅肉溶接して接合することにより、溶接欠けSの影響を受けずに溶接することができる。
【0064】
これに対して、
図11(b)の比較例の様に、側壁72の外側方に向かって延びる折曲部721を、底板71の縁近傍において上側に沿うように配置し、折曲部721の先端と底板71の縁とを拝み溶接して溶接部W11を形成する場合には、溶接欠けSの位置が溶接部W11の位置と重なり、溶接欠けSの影響で溶接が不安定になる。更に、溶接欠けSが発生していない場合にも、溶接部W9の始点或いは終点が二重溶接で脱落する可能性も生ずる。
【0065】
第7実施形態の真空断熱容器1では、内容器本体21の底板を部分底板22b、中継ぎ底板22aを継いで形成することにより、サイズが大きな真空断熱容器1を容易に形成することができる。更に、部分底板22b、中継ぎ底板22aの溶接部W9の端部の状態の影響を避け、安定した溶接を行うことができる。更に、補強溶接部WAを設ける場合には、接合強度をより高められるなど第2実施形態と同様の効果を奏する。その他に、第1実施形態と対応する構成により、第1実施形態と対応する効果を奏する。
【0066】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や各実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例も包含する。
【0067】
例えば第1〜第3実施形態では、底板22と第一側壁23とを一体形成した内容器本体21、底板32と第一側壁33とを一体形成した外容器本体31を用いたが、底板22と第一側壁23を別体とし、或いは底板32と第一側壁33を別体とする構成、又は、第一側壁23と第二側壁24とが周状に連続する筒状部材、或いは第一側壁33と第二側壁24とが周状に連続する筒状部材を用いる構成を適宜採用する等、本発明の趣旨の範囲内で適宜の内容器と外容器とすることが可能である。
【0068】
また、内容器2、外容器3の形状は直方体形で上面開放の箱形に限定されず、例えば有底円筒形の形状にするなど適宜である。また、上記実施形態では内容器2と外容器3との間の内部空間に断熱材4を充填する構成としたが、断熱材4を充填せずに内容器2と外容器3との間の内部空間を単に真空にする真空断熱容器とすることも可能である。また、本発明の真空断熱容器の用途は、蓄電池を収容する以外にも適用可能な範囲で適宜である。
【0069】
また、第3〜第6実施形態の各溶接部W4〜W7等と略平行な位置にも、第2実施形態と同様のレーザー溶接による補強溶接部を適宜設けることが可能である。この場合には、各オーバーラップ領域における中央から溶接部W4〜W7等と逆側寄りの位置に補強溶接部を設けると好適である。
【0070】
また、各実施形態において内容器2と外容器3との間の内部空間を真空にした状態で真空漏れを検査する方法を用いる場合には、各実施形態の真空断熱容器1を製造する際に、内容器2と外容器3との間の内部空間を気密にする所要の溶接部W1等を容器本体の内部空間に対して逆側に露出する部位に形成して容器本体を形成し、次いで、前記容器本体の所定箇所に設けられている吸引穴343から容器本体内を真空吸引して吸引穴343を閉塞し、その後、容器本体の真空漏れを検査し、真空漏れを検出した場合に溶接部W1等を容器本体の内部空間に対して逆側から補修する工程により、真空断熱容器1を製造することも可能である。