(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、モーター及びインバータの搭載位置が車両の前部(所謂エンジンルーム)であって、例えばパネル部材等を貫通するような配索にはなっていない。従って、上記パネル部材等の貫通部分に合わせて止水構造を設ける必要性は有していない。
【0005】
ところで、モーターやインバータは、この搭載位置が車両の前部に限らず、近年では車両後部にリアモーターやリアインバータとして更に搭載することもある。このため、リアモーターとリアインバータとを電気的に接続するワイヤハーネスが車両のボディを貫通して室内及び床下を通る配索になることもある。従って、ワイヤハーネスは上記ボディの貫通部分に合わせた位置に、床下側からの水分浸入を防止するための止水構造を設ける必要性を有している。
【0006】
ここで
図9、
図10を参照しながら止水構造案を説明すると、各止水構造案は問題点を有しており、改善の余地があることが分かる。
【0007】
先ず、
図9の止水構造案にあっては、ここでの止水構造を設けることにより、シールド機能を床下側のみでしか発揮できなくなってしまうという問題点を有している。以下、具体的に説明をする。
【0008】
引用符号201は車両のボディを示している。また、ボディ201の上側は室内202、下側は床下203を示している。ボディ201には、貫通孔204が形成されている。この貫通孔204には、グロメット205が水密に設けられている。ワイヤハーネス206を構成する三本の高圧ケーブル207は、それぞれグロメット205のケーブル挿通孔208に挿通されている。三本の高圧ケーブル207は、室内202及び床下203に跨って配索されている。ケーブル挿通孔208には、高圧ケーブル207の被覆外周面に水密に接する環状のリップ部(符号省略)が突出形成されている。
【0009】
上記構成及び構造において、三本の高圧ケーブル207を一括して覆う筒状の編組209は、室内202側へ伸ばすことができず、このため編組209の端末には、シールドシェル210が設けられている。シールドシェル210は、ボディ201に対し電気的且つ機械的に接続固定されている。編組209は、シールドシェル210を介してボディ201にアース接続されている。
【0010】
従って、
図9の止水構造案は、上記の止水構造を設けることにより、シールド機能を床下203側のみでしか発揮することができなくなってしまうという問題点を有している。仮に、この止水構造案を採用する場合には、室内202側に他部品でシールド構造を設けなければならないという問題点を有している。
【0011】
次に、
図10の止水構造案について説明をすると、この止水構造にあっては、確実に止水がなされているか否かの確認検査を行わなければならないという問題点を有している。以下、具体的に説明をする。
【0012】
引用符号221は車両のボディを示している。また、ボディ221の上側は室内222、下側は床下223を示している。ボディ221には、貫通孔224が形成されている。この貫通孔224には、グロメット225が水密に設けられている。ワイヤハーネス226を構成する三本の高圧ケーブル227は、筒状の編組228により一括して覆われている。三本の高圧ケーブル227及び編組228は、グロメット225のケーブル挿通孔229に挿通されている。三本の高圧ケーブル227及び編組228は、室内222及び床下223に跨って配索されている。室内222側では、編組228の端末にシールドシェル230が設けられ、このシールドシェル230を介してアース接続がなされるようになっている。
【0013】
三本の高圧ケーブル227同士、また、三本の高圧ケーブル227と編組228との間は、止水材231にて封止されている。止水材231は、例えば注液及びシート巻からなるものが採用されている。止水材231の外周面には、グロメット225のケーブル挿通孔229が接している。
【0014】
図10の止水構造案にあっては、
図9の止水構造案と異なり、室内222側でもシールド機能を発揮することができるようになっている。しかしながら、
図10の止水構造案は、注液及びシート巻からなる止水材231を採用することから、確実に止水がなされているか否かの確認検査を全数行わなければならないという問題点を有している。全数検査は、大幅なコスト増に繋がってしまうという問題点を有している。
【0015】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスのシールド機能を十分に発揮させることが可能であり、また、確実に止水をして検査を不要にすることも可能なワイヤハーネス止水構造及びワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のワイヤハーネス止水構造は、導電性を有する金属製の筒状シールドシェルと、該筒状シールドシェルの外周面側に設けられる外側止水手段と、前記筒状シールドシェルの内周面側に設けられる内側止水手段とを備え、前記筒状シールドシェルは、一又は複数本の導電路を覆うシールド部材の中間に配設され、前記内側止水手段は、弾性を有する止水栓部材を含み、該止水栓部材には、前記筒状シールドシェルの前記内周面に水密に接するシェル側シール部と、前記止水栓部材を貫通して形成され且つ前記導電路の被覆外周面に水密に接する一又は複数の導電路側シール部と
が形成
され、前記外側止水手段は、前記筒状シールドシェルの前記外周面に形成されるシール部と、該シール部に水密に設けられるグロメットとを含むことを特徴とする。
【0017】
このような特徴を有する本発明によれば、一又は複数本の導電路と、これを覆うシールド部材とを含むワイヤハーネスのシールド機能を十分に発揮させることができる。また、本発明の止水構造は、確実に止水をして検査を不要にすることもできる。すなわち、本発明の止水構造は、シールド部材の中間に配設される筒状シールドシェルを備え、この筒状シールドシェルに導電性を持たせていることから、ワイヤハーネスのシールド機能を損なうことはななく、結果、止水構造があってもシールド機能を十分に発揮させることができる。
【0018】
また、本発明の止水構造は、筒状シールドシェルの外周面側及び内周面側に設けられる外側止水手段及び内側止水手段を備えることから、確実に止水をして検査を不要にすることができる。具体的には、弾性を有する止水栓部材を内側止水手段に含み、この止水栓部材にシェル側シール部を形成することから、筒状シールドシェルの内周面に対して水密に接することができる。また、止水栓部材には、導電路側シール部も形成することから、導電路の被覆外周面に対して水密に接することができる。従って、確実に止水をすることができ、以て検査を不要にすることができる。
さらに、このような特徴を有する本発明によれば、外側止水手段にシール部及びグロメットを含み、シール部は筒状シールドシェルの外周面に形成され、グロメットはシール部に水密に設けられることから、筒状シールドシェルの外周面側も確実に止水をすることができる。従って、検査を不要にすることができる。
【0019】
請求項2に記載の本発明のワイヤハーネス止水構造は、請求項1に記載のワイヤハーネス止水構造に係り、前記内側止水手段は、前記筒状シールドシェルからの前記止水栓部材の抜け止め手段を含むことを特徴とする。
【0020】
このような特徴を有する本発明によれば、内側止水手段に抜け止め手段を含むことから、筒状シールドシェルからの止水栓部材の抜けを防止することができる。これにより、止水状態を確実なまま維持することができる。
【0025】
また、上記課題を解決するためになされた請求項
3に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項
1又は2に記載のワイヤハーネス止水構造を採用してなるとともに、該ワイヤハーネス止水構造を車両における貫通部分に配置してなることを特徴とする。
【0026】
このような特徴を有する本発明によれば、車両における貫通部分に請求項
1又は2に記載の止水構造を配置してなるワイヤハーネスであり、請求項
1又はに記載の止水構造を採用してなることから、貫通部分を境にしてシールド機能を損なうことはない。また、確実に止水をすることもできる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載された本発明によれば、ワイヤハーネスのシールド機能を十分に発揮させることができるという効果と、確実に止水をして検査を不要にすることができるという効果を奏する。検査を不要にすれば、コスト増大を抑制することができるという効果も奏する。
【0028】
請求項2に記載された本発明によれば、止水状態を確実のまま維持することができるという効果を奏する。また、請求項3、4に記載された本発明によれば、確実に止水をして検査を不要にすることができるという効果を奏する。
【0029】
請求項5に記載された本発明によれば、シールド機能を十分に発揮することが可能であり、また、確実に止水をして検査を不要にすることも可能なワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ワイヤハーネス止水構造は、
導電性を有する金属製の筒状シールドシェルと、
該筒状シールドシェルの内部に設けられる弾性の止水栓部材とを備え、
前記筒状シールドシェルは、一又は複数本の導電路を覆うシールド部材の中間に配設され、且つ、前記筒状シールドシェルの外周面にシール部を形成するとともに該シール部にグロメットを水密に設け、又は、前記外周面から突出するフランジ状金属シェルを形成するとともに該フランジ状金属シェルにシール部材を水密に設け、
前記止水栓部材には、前記筒状シールドシェルの内周面に水密に接するシェル側シール部と、前記止水栓部材を貫通して形成され且つ前記導電路の被覆外周面に水密に接する一又は複数の導電路側シール部とを形成する
構造である。
【実施例1】
【0032】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明のワイヤハーネス止水構造及びワイヤハーネスの概略図である。
【0033】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネス止水構造及びワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0034】
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2、フロントモーターユニット3、及びリアモーターユニット4を併用して駆動する車両であって、フロントモーターユニット3はフロントインバータユニット5を介して、また、リアモーターユニット4はリアインバータユニット6を介してバッテリー7(電池パック、組電池)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、フロントモーターユニット3、及びフロントインバータユニット5は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム8に搭載されている。また、リアモーターユニット4、リアインバータユニット6、及びバッテリー7は、後輪等がある自動車後部9に搭載されている(搭載位置は一例であるものとする。尚、バッテリー7に関しては、ハイブリッド自動車1や電気自動車等に使用可能であれば特に限定されないものとする)。
【0035】
フロントモーターユニット3とフロントインバータユニット5は、高圧のワイヤハーネス10により接続されている。また、フロントインバータユニット5とバッテリー7も高圧のワイヤハーネス11により接続されている。さらに、リアモーターユニット4とリアインバータユニット6も高圧のワイヤハーネス12により接続されている。さらにまた、リアインバータユニット6とバッテリー7も高圧のワイヤハーネス13により接続されている。
【0036】
ワイヤハーネス11は、この中間部14が車体床下15の地面側に配索されている。ワイヤハーネス11は、車体床下15に沿って略平行に配索されている。車体床下15は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔は、ワイヤハーネス11の挿通部分となっている。ワイヤハーネス11の挿通部分となる貫通孔の形成部分は、特許請求の範囲に記載した貫通部分16、17に相当するものとする。
【0037】
ワイヤハーネス12は、この中間部18が自動車後部9における車体床下19を貫通するように配索されている。ワイヤハーネス12が挿通される貫通孔(後述する)の形成部分は、特許請求の範囲に記載した貫通部分20に相当するものとする。
【0038】
ワイヤハーネス11及びワイヤハーネス12は、車体床下15(19)と室内21とに跨って配索されている。このため、室内21への水分の浸入を防止するための止水構造(ワイヤハーネス止水構造)が必要になっている。
【0039】
以下、本発明に関し、ワイヤハーネス12と、上記貫通部分20の位置に合わせてワイヤハーネス12に設けられる止水構造22(ワイヤハーネス止水構造)とについて説明をするものとする。尚、止水構造22は、貫通部分16、17の位置に合わせてワイヤハーネス11にも設けることができるものとする。
【0040】
図1(b)において、ワイヤハーネス12は、三本の高圧電線23(導電路)と、この三本の高圧電線23を一括してシールドする電磁シールド部材24(シールド部材)と、電磁シールド部材24の外側に設けられる外装部材25、26と、三本の高圧電線23の一端に設けられるモーター側接続部(図示省略)と、他端に設けられるインバータ側接続部(図示省略)とを備えて構成されている。
【0041】
高圧電線23は、導体及び絶縁体(被覆)を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0042】
尚、本実施例においては高圧電線23を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧の導電路としたもの等を用いてもよいものとする。
【0043】
電磁シールド部材24は、三本の高圧電線23をこの全長にわたって覆う電磁シールド用の筒状部材(電磁波対策用のシールド部材)であって、本実施例においては導電性を有する極細の素線を多数編んでなる編組が用いられている。電磁シールド部材24は、図示しないモーター側接続部及びインバータ側接続部に接続され、これらを介して図示しないシールドケース等に接続されている。
【0044】
電磁シールド部材24は、本実施例において編組が用いられている。電磁シールド部材24に関しては、金属箔と樹脂層、或いは金属箔単体などにて筒状に形成してもよいものとする(電磁波対策をすることが可能であれば、また、後述する止水構造22を設けることができれば、特に限定されないものとする)。
【0045】
外装部材25、26は、三本の高圧電線23及び電磁シールド部材24を覆い保護をするための部材であって、コルゲートチューブやツイストチューブ等が用いられている。外装部材25は室内21側に配設されており、外装部材26は車体床下19の地面側に配設されている。外装部材25、26は、保護を必要とする部分に配設されている。
【0046】
図示しないモーター側接続部及びインバータ側接続部は、本実施例において、公知のシールドコネクタに構成されている。具体的に、モーター側接続部及びインバータ側接続部は、高圧電線23の導体に接続される端子金具と、この端子金具を収容保持するコネクタハウジングと、高圧電線23の絶縁体に設けられてコネクタハウジングに水密に接するゴム栓と、コネクタハウジングの外側に設けられてリアモーターユニット4やリアインバータユニット6のシールドケースに接続されるシールドシェルとを含んで構成されている。
【0047】
止水構造22は、上記の如く貫通部分20の位置に合わせてワイヤハーネス12に設けられている。止水構造22は、電磁シールド部材24の中間に配設される筒状シールドシェル27と、この筒状シールドシェル27の外周面側に設けられる外側止水手段28と、筒状シールドシェル27の内周面側に設けられる内側止水手段29とを備えて構成されている。
【0048】
筒状シールドシェル27は、導電性を有する金属製の部材であって、円筒形状に形成されている。筒状シールドシェル27は、電磁シールド部材24の中間を分割し、この分割部分を繋ぐことができる部材に形成されている。電磁シールド部材24の中間分割部分を繋ぐにあたり、本実施例においてはシールドリング30が用いられている。
【0049】
シールドリング30の具体的な使用例としては、筒状シールドシェル27の一端外周面及び他端外周面に電磁シールド部材24の中間分割部分を配置し、そして、この外側にシールドリング30を配置し、その上でシールドリング30に対し加締めを施すことにより、中間分割部分が筒状シールドシェル27に繋がれるような使用になっている。
【0050】
筒状シールドシェル27の中間外周面には、シール部31が形成されている。シール部31は、外側止水手段28を構成するグロメット32が水密に接する部分として形成されている。シール部31及びグロメット32は、外側止水手段28を構成する部分及び部材として設けられている。
【0051】
グロメット32は、弾性を有する公知のゴム部材であって、ワイヤハーネス側シール部33と、貫通孔側シール部34と、これらを繋ぐ連結部35とを有している。各部分は、環状又は筒状に形成されている。ワイヤハーネス側シール部33には、シール部31に水密に接するリップ部36が複数形成されている。貫通孔側シール部34は、車体床下19を貫通する貫通孔37の内縁及び外縁に対し水密に嵌合するように形成されている。
【0052】
外側止水手段28は、これを設けることにより、筒状シールドシェル27の外周面側からの室内21への水分の浸入を防止することができるようになっている。
【0053】
以上のような外側止水手段28に対し、内側止水手段29は、筒状シールドシェル27の内周面側からの水分の浸入を防止することができるようになっている。具体的には、筒状シールドシェル27の中間内周面に形成されるシール部38と、筒状シールドシェル27に挿通される三本の高圧電線23の被覆外周面及び上記シール部38に水密に接する止水栓部材39とを有して水分の浸入を防止することができるようになっている。
【0054】
止水栓部材39は、本実施例において弾性を有するゴム栓が用いられている。このような止水栓部材39は、シール部38に水密に接するシェル側シール部40と、止水栓部材39を貫通して形成される導電路側シール部41とを有している。
【0055】
シェル側シール部40は、複数のリップ部(符号省略)からなるリップ形状に形成されている。
【0056】
導電路側シール部41は、高圧電線23が三本であることから三つ形成されている(導電路の本数に合わせて貫通形成されるものとする)。導電路側シール部41は、シェル側シール部40と同様に、複数のリップ部(符号省略)からなるリップ形状に形成されている。
【0057】
上記構成及び構造において、止水構造22は、ワイヤハーネス12を構成する電磁シールド部材24の中間に配設される筒状シールドシェル27を備えており、この筒状シールドシェル27に導電性を持たせていることから、ワイヤハーネス12のシールド機能を損なうことはななく、結果、止水構造22があってもシールド機能を十分に発揮させることができるという効果を奏する。
【0058】
また、止水構造22は、筒状シールドシェル27の外周面側及び内周面側に設けられる外側止水手段28及び内側止水手段29を備えていることから、これら外側止水手段28及び内側止水手段29の上記構成及び構造により、確実に止水をすることができるという効果を奏する。確実に止水をすることができれば、止水が十分であるか否かの検査を不要にすることができるという効果も奏する。従って、コスト増大を抑制することができるという効果も奏する。
【実施例2】
【0059】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。
図2は本発明のワイヤハーネス止水構造及びワイヤハーネスの斜視図である。また、
図3は
図2のA−A線断面図、
図4は
図3の要部拡大図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
図2において、引用符号51は実施例1の止水構造22(
図1参照)と同様の効果を奏する止水構造(ワイヤハーネス止水構造)を示している。実施例2の止水構造51は、車体床下19の貫通部分20の位置に合わせてワイヤハーネス12に設けられている。
【0061】
図2ないし
図4において、止水構造51は、電磁シールド部材24の中間に配設される筒状シールドシェル52と、この筒状シールドシェル52の外周面側に設けられる外側止水手段53と、筒状シールドシェル52の内周面側に設けられる内側止水手段54とを備えて構成されている。尚、ワイヤハーネス12に関し、外装部材25、26(
図1参照)の図示は省略するものとする。
【0062】
筒状シールドシェル52は、導電性を有する金属製の部材であって、円筒形状に形成されている。筒状シールドシェル52は、電磁シールド部材24の中間を分割し、この分割部分を繋ぐことができる部材に形成されている。電磁シールド部材24の中間分割部分を繋ぐにあたり、本実施例においてはシールドリング55が用いられている。
【0063】
シールドリング55の具体的な使用例としては、実施例1と同様であって、筒状シールドシェル52の一端外周面及び他端外周面に電磁シールド部材24の中間分割部分を配置し、そして、この外側にシールドリング55を配置し、その上でシールドリング55に対し加締めを施すことにより、中間分割部分が筒状シールドシェル52に繋がれるような使用になっている。
【0064】
筒状シールドシェル52の一端外周面及び中間外周面の境界部分には、環状のフランジ部56が突出形成されている。フランジ部56は、受け部分として形成されている。
【0065】
筒状シールドシェル52の中間外周面には、シール部57が形成されている。シール部57は、外側止水手段53を構成するグロメット58が水密に接する部分として形成されている。シール部57及びグロメット58は、外側止水手段53を構成する部分及び部材として設けられている。
【0066】
グロメット58は、弾性を有する公知のゴム部材であって、ワイヤハーネス側シール部59と、貫通孔側シール部60と、これらを繋ぐ連結部61と、室内側延長部62とを有している。ワイヤハーネス側シール部59、貫通孔側シール部60、及び連結部61は、環状又は筒状に形成されている。室内側延長部62は、略蓋状に形成されている。
【0067】
ワイヤハーネス側シール部59には、シール部57に水密に接するリップ部(符号省略)が複数形成されている。また、後述する係止孔69を覆う円筒状の被覆部63も形成されている。貫通孔側シール部60は、車体床下19を貫通する貫通孔37の内縁及び外縁に対し水密に嵌合するように形成されている。室内側延長部62は、室内21側に配置されている。このような室内側延長部62には、電磁シールド部材24を三本の高圧電線23側に窄めるような略筒形状のシールド部材保持部64が形成されている。
【0068】
外側止水手段53は、これを設けることにより、筒状シールドシェル52の外周面側からの室内21への水分の浸入を防止することができるようになっている。
【0069】
以上のような外側止水手段53に対し、内側止水手段54は、筒状シールドシェル52の内周面側からの水分の浸入を防止することができるようになっている。具体的には、筒状シールドシェル52の中間内周面に形成されるシール部65と、筒状シールドシェル52に挿通される三本の高圧電線23の被覆外周面及び上記シール部65に水密に接する止水栓部材66と、この止水栓部材66の位置決め及び受けをする環状のフランジ部67と、止水栓部材66の抜け止めをする環状の抜け止め部材68と、この抜け止め部材68を引っ掛けて係止する係止孔69と、案内溝70とを有して水分の浸入を防止することができるようになっている。
【0070】
止水栓部材66は、実施例1の止水栓部材39(
図1参照)と基本的に同じであって、弾性を有するゴム栓が用いられている。このような止水栓部材66は、シール部65に水密に接するシェル側シール部71と、止水栓部材66を貫通して形成される導電路側シール部72とを有している。
【0071】
シェル側シール部71は、複数のリップ部(符号省略)からなるリップ形状に形成されている(図中のリップ部は便宜上潰れる前の状態を示すものとする)。
【0072】
導電路側シール部72は、高圧電線23が三本であることから三つ形成されている(導電路の本数に合わせて貫通形成されるものとする)。導電路側シール部72は、シェル側シール部71と同様に、複数のリップ部(符号省略)からなるリップ形状に形成されている。
【0073】
抜け止め部材68は、環状の部品として設けられている。抜け止め部材68の外周縁には、複数の係止爪73と、一又は複数の案内突起(図示省略)とが形成されている。係止爪73は、係止孔69に引っ掛かり係止される部分として形成されている。図示しない案内突起は、案内溝70に案内される部分として形成されている。抜け止め部材68の外縁と内縁との間は、止水栓部材66を押さえる部分として形成されている。
【0074】
環状のフランジ部67、抜け止め部材68、係止孔69、及び案内溝70は、特許請求の範囲に記載した抜け止め手段に相当するものとする。
【0075】
上記構成及び構造において、止水構造51は、ワイヤハーネス12を構成する電磁シールド部材24の中間に配設される筒状シールドシェル52を備えており、この筒状シールドシェル52に導電性を持たせていることから、ワイヤハーネス12のシールド機能を損なうことはななく、結果、止水構造51があってもシールド機能を十分に発揮させることができるという効果を奏する。
【0076】
また、止水構造51は、筒状シールドシェル52の外周面側及び内周面側に設けられる外側止水手段53及び内側止水手段54を備えていることから、これら外側止水手段53及び内側止水手段54の上記構成及び構造により、確実に止水をすることができるという効果を奏する。確実に止水をすることができれば、止水が十分であるか否かの検査を不要にすることができるという効果も奏する。従って、コスト増大を抑制することができるという効果も奏する。
【実施例3】
【0077】
以下、図面を参照しながら実施例3を説明する。
図5は本発明のワイヤハーネス止水構造及びワイヤハーネスの斜視図である。また、
図6は
図5のワイヤハーネス止水構造の正面図、
図7は
図6のB−B線断面図、
図8は
図7の要部拡大図である。尚、上記実施例1、2と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
図5において、引用符号101は実施例1、2の止水構造22、51(
図1ないし
図4参照)と同様の効果を奏する止水構造(ワイヤハーネス止水構造)を示している。実施例3の止水構造101は、車体床下19の貫通部分20(
図7参照)の位置に合わせてワイヤハーネス12に設けられている。
【0079】
図5ないし
図8において、止水構造101は、電磁シールド部材24の中間に配設される筒状シールドシェル102と、この筒状シールドシェル102の外周面側に設けられる外側止水手段103と、筒状シールドシェル102の内周面側に設けられる内側止水手段104とを備えて構成されている。尚、ワイヤハーネス12に関し、外装部材25、26(
図1参照)の図示は省略するものとする。
【0080】
筒状シールドシェル102は、導電性を有する金属製の部材であって、円筒形状に形成されている。筒状シールドシェル102は、電磁シールド部材24の中間を分割し、この分割部分を繋ぐことができる部材に形成されている。電磁シールド部材24の中間分割部分を繋ぐにあたり、本実施例においてはシールドリング105が用いられている。
【0081】
シールドリング105の具体的な使用例としては、実施例1、2と同様であって、筒状シールドシェル102の一端外周面及び他端外周面に電磁シールド部材24の中間分割部分を配置し、そして、この外側にシールドリング105を配置し、その上でシールドリング105に対し加締めを施すことにより、中間分割部分が筒状シールドシェル102に繋がれるような使用になっている。
【0082】
筒状シールドシェル102の中間外周面には、外側止水手段103を構成するフランジ状金属シェル106が突出形成されている。このフランジ状金属シェル106は、筒状シールドシェル102に対し一体化する取り付け用の部分に形成されている。
【0083】
フランジ状金属シェル106には、車体床下19に対しボルト止めするためのボルト挿通孔107と、貫通孔37よりも大きな径の環状溝108とが形成されている。環状溝108には、フランジ状金属シェル106と車体床下19とに挟まれてこれらに水密に接するOリング109(シール部材)が設けられている。Oリング109は、外側止水手段103を構成する部材として設けられている。尚、Oリング109に限らず、公知のパッキンをシール部材として用いてもよいものとする。
【0084】
外側止水手段103は、これを設けることにより、筒状シールドシェル102の外周面側からの室内21への水分の浸入を防止することができるようになっている。
【0085】
以上のような外側止水手段103に対し、内側止水手段104は、筒状シールドシェル102の内周面側からの水分の浸入を防止することができるようになっている。具体的には、筒状シールドシェル102の中間内周面に形成されるシール部110と、筒状シールドシェル102に挿通される三本の高圧電線23の被覆外周面及び上記シール部110に水密に接する止水栓部材111と、この止水栓部材111の位置決め及び受けをする環状のフランジ部112と、止水栓部材111の抜け止めをする環状の抜け止め部材113と、この抜け止め部材113を引っ掛けて係止する係止孔114と、案内溝115とを有して水分の浸入を防止することができるようになっている。
【0086】
止水栓部材111は、実施例1の止水栓部材39(
図1参照)や実施例2の止水栓部材66(
図4参照)と基本的に同じであって、弾性を有するゴム栓が用いられている。このような止水栓部材111は、シール部110に水密に接するシェル側シール部116と、止水栓部材111を貫通して形成される導電路側シール部117とを有している。
【0087】
シェル側シール部116は、複数のリップ部(符号省略)からなるリップ形状に形成されている。
【0088】
導電路側シール部117は、高圧電線23が三本であることから三つ形成されている(導電路の本数に合わせて貫通形成されるものとする)。導電路側シール部117は、シェル側シール部116と同様に、複数のリップ部(符号省略)からなるリップ形状に形成されている。
【0089】
抜け止め部材113は、環状の部品として設けられている。抜け止め部材113の外周縁には、複数の係止爪(図示省略)と、一又は複数の案内突起118とが形成されている。上記係止爪は、係止孔114に引っ掛かり係止される部分として形成されている。案内突起118は、案内溝115に案内される部分として形成されている。抜け止め部材113の外縁と内縁との間は、止水栓部材111を押さえる部分として形成されている。
【0090】
環状のフランジ部112、抜け止め部材113、係止孔114、及び案内溝115は、特許請求の範囲に記載した抜け止め手段に相当するものとする。
【0091】
上記構成及び構造において、止水構造101は、ワイヤハーネス12を構成する電磁シールド部材24の中間に配設される筒状シールドシェル102を備えており、この筒状シールドシェル102に導電性を持たせていることから、ワイヤハーネス12のシールド機能を損なうことはななく、結果、止水構造101があってもシールド機能を十分に発揮させることができるという効果を奏する。
【0092】
また、止水構造101は、筒状シールドシェル102の外周面側及び内周面側に設けられる外側止水手段103及び内側止水手段104を備えていることから、これら外側止水手段103及び内側止水手段104の上記構成及び構造により、確実に止水をすることができるという効果を奏する。確実に止水をすることができれば、止水が十分であるか否かの検査を不要にすることができるという効果も奏する。従って、コスト増大を抑制することができるという効果も奏する。
【0093】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。