(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、(メタ)アクリレート誘導体は、エポキシ樹脂等に比べて重合時の硬化収縮が大きく、また、硬化後の内部応力も大きい傾向にある。このため、一般に、ラジカル硬化型の接着剤組成物を含有する回路接続材料を用いた場合、その接着層とLCDパネル等の基板との界面において気泡が発生し、接続信頼性が低下するおそれがある。特に、TFT(Thin Film Transistor)方式のLCDパネルにおいてパネル配線上の絶縁膜として使用される窒化珪素(SiN)膜との界面においてこの気泡発生が顕著となり、密着力が劣り、結果として接続信頼性が大きく低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、高温高湿処理を受けたときに、窒化珪素膜との界面との密着性を向上させて優れた接続信頼性を発揮することが可能な
異方性導電フィルム、及びこの
異方性導電フィルムを用いて一対の回路部材を接続する接続方法、並びにその接続方法によって得られる接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の異方性導電フィルムは、(1)多官能(メタ)アクリレートモノマーと、(2)熱又は光によって遊離ラジカルを発生するラジカル重合開始剤と、(3)
絶縁性の接着剤組成物中の配合量が3〜20質量%である、単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(4)金属被覆樹脂粒子とを含有し、単官能(メタ)アクリレートモノマーは、化学式(1)で表され、化学式(1)において、Rはビフェニル基又はナフタレン基であり、Rとそれに結合する酸素原子との結合位置はオルト位、メタ位、又はパラ位であり、nは1〜10であることを特徴とする。
【0010】
【化1】
【0011】
また、上述した課題を解決するために、本発明の接続構造体は、回路電極同士が対向するように配置された一対の回路部材の間に、異方性導電フィルムが介在されて、対峙する回路部材が電気的且つ機械的に接続されてなる接続構造体において、回路部材の一方は、表面が窒化珪素膜に覆われており、異方性導電フィルムは、(1)多官能(メタ)アクリレートモノマーと、(2)熱又は光によって遊離ラジカルを発生するラジカル重合開始剤と、(3)
絶縁性の接着剤組成物中の配合量が3〜20質量%である、単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(4)金属被覆樹脂粒子とを含有し、単官能(メタ)アクリレートモノマーは、化学式(1)で表され、化学式(1)において、Rはビフェニル基又はナフタレン基であり、Rとそれに結合する酸素原子との結合位置はオルト位、メタ位、又はパラ位であり、nは1〜10であることを特徴とする。
【0012】
【化2】
【0013】
また、上述した課題を解決するために、本発明の接続方法は、回路電極同士が対向するように配置された一対の回路部材の間に、異方性導電フィルムを介在させて、熱加圧により、対峙する該回路部材を電気的且つ機械的に接続させる接続方法において、回路部材の一方は、表面が窒化珪素膜に覆われており、異方性導電フィルムは、(1)多官能(メタ)アクリレートモノマーと、(2)熱又は光によって遊離ラジカルを発生するラジカル重合開始剤と、(3)
絶縁性の接着剤組成物中の配合量が3〜20質量%である、単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(4)金属被覆樹脂粒子とを含有し、単官能(メタ)アクリレートモノマーは、化学式(1)で表され、化学式(1)において、Rはビフェニル基又はナフタレン基であり、Rとそれに結合する酸素原子との結合位置はオルト位、メタ位、又はパラ位であり、nは1〜10であることを特徴とする。
【0014】
【化3】
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温高湿処理を受けたときに、窒化珪素膜との界面との密着性を向上させて優れた接続信頼性を発揮することが可能な
異方性導電フィルム、及びこの
異方性導電フィルムを用いて一対の回路部材を接続する接続方法、並びにその接続方法によって得られる接続構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、図面を参照しながら下記の順に詳細に説明する。
<1.回路接続材料>
<2.接続方法>
<3.実施例>
【0017】
<1.回路接続材料>
本実施の形態における回路接続材料は、回路電極同士が対向するように配置された一対の回路部材の間に介在され、対峙するこの回路部材を電気的且つ機械的に接続するものである。本実施の形態における回路接続材料は、絶縁性の接着剤組成物に複数の導電性粒子が分散されてフィルム状に形成された異方性導電フィルムに適用される。
【0018】
絶縁性の接着剤組成物は、多官能(メタ)アクリレート化合物と、単官能(メタ)アクリレートモノマーと、熱又は光によって遊離ラジカルを発生するラジカル重合開始剤と、フィルム形成樹脂とを含有する。ここで、(メタ)アクリレートには、アクリレートとメタクリレートとが含まれる。
【0019】
多官能(メタ)アクリレート化合物、単官能(メタ)アクリレートモノマーは、何れもラジカル重合性樹脂であり、異方性導電フィルムが加熱されたときに絶縁性の接着剤組成物内において架橋構造を形成し、これにより、接着剤組成物を硬化させる。
【0020】
単官能(メタ)アクリレートモノマーは、化学式(1)で表される。
【0022】
化学式(1)において、Rはビフェニル基又はナフタレン基である。Rとそれに結合する酸素原子Oとの結合位置はオルト位、メタ位、又はパラ位である。nは1〜10であり、1〜3が特に好ましい。nが大きすぎると、架橋構造が緩くなり、異方性導電フィルムの窒化珪素膜に対する密着性(接着性)が低下してしまう。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートモノマーは、このように、かさ高いRと、適正な長さの(CH
2CH
20)
nと、ラジカル重合を行うーCOCH=CH
2とからなる構造により、重合時に硬化収縮が小さくなり、また、硬化後の内部応力も小さくなることから、接続時に、接着層と基板の窒化珪素膜との界面において気泡が発生するのが抑制され、高い密着力により接続することができる。すなわち、異方性導電フィルムにこのような単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有させることで、この異方性導電フィルムを用いて接続してなる接続構造体において、高い接続信頼性を得ることができる。
【0024】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば化学式(2)で表されるエトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートを挙げることができる。
【0026】
なお、ビフェニル基とそれに結合する酸素原子との結合位置は、化学式(2)のようにオルト位に限定されず、メタ位(エトキシ化m−フェニルフェノールアクリレート)又はパラ位(エトキシ化p−フェニルフェノールアクリレート)であってもよい。
【0027】
また、Rがナフタレン基である場合も、ナフタレン基とそれに結合する酸素原子との結合位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れであってもよい。
【0028】
絶縁性の接着剤組成物中の単官能(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、3〜20質量%(絶縁性の接着剤組成物100質量部に対して3〜20質量部)であることが好ましい。3質量%未満であると、単官能(メタ)アクリレートモノマーの効果が得にくくなり、接着強度が弱くなる。一方、20質量%を超えると、耐熱性に劣る硬化物となり、導通抵抗値が高くなる。
【0029】
このような単官能(メタ)アクリルモノマーを含有させることにより、高温高湿処理を受けたときの回路電極間の抵抗値の変動を抑制しながら、窒化珪素膜との界面との密着性を向上させて優れた接続信頼性を発揮することが可能となる。
【0030】
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能(メタ)アクリレートポリマー等を挙げることができる。
【0031】
二官能(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールF―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA―EO変性ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
三官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
四官能以上の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。その他に、多官能ウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。
【0034】
ラジカル重合開始剤は、熱又は光により分解して遊離ラジカルを発生する硬化剤であり、公知のラジカル重合開始剤を選択することができる。例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤、アゾビスブチロニトリル等のアゾ系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0035】
絶縁性の接着剤組成物中のラジカル重合開始剤の配合量は、少なすぎると硬化が不十分となり、多すぎると異方性導電フィルムの凝集力が低下するため、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜7質量部である。
【0036】
膜形成樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、EVA等の熱可塑性エラストマー等を使用することができる。中でも、耐熱性、接着性のために、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、特にフェノキシ樹脂、例えばビスA型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂を挙げることができる。
【0037】
膜形成樹脂は、少なすぎるとフィルムを形成せず、多すぎると電気接続を得るための樹脂の排除性が低くなる傾向があるので、樹脂固形分(重合性アクリル系化合物と膜形成樹脂からなる接着剤組成物)100質量部に対し、80〜30質量部、より好ましくは70〜40質量部である。
【0038】
導電性粒子としては、従来の異方性導電フィルムで用いられている導電性粒子を使用することができ、例えば、金粒子、銀粒子、ニッケル粒子等の金属粒子、ベンゾグアナミン樹脂やスチレン樹脂等の樹脂粒子の表面を金、ニッケル、亜鉛等の金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。導電性粒子の平均粒径としては、接続信頼性の観点から、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。
【0039】
絶縁性の接着剤組成物における導電性粒子の平均粒子密度は、接続信頼性及び絶縁信頼性の観点から、好ましくは500〜50000個/mm
2、より好ましくは1000〜30000個/mm
2である。
【0040】
絶縁性の接着剤組成物には、金属に対する接着性を向上させるために、リン酸アクリレートを含有させることができる。
【0041】
さらに、絶縁性の接着剤組成物には、他の添加組成物、例えば各種アクリルモノマー等の希釈用モノマー、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、シランカップリング剤、シリカ微粒子等を含有させることができる。
【0042】
シランカップリング剤を含有させることにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。シリカ微粒子を含有させることにより、貯蔵弾性率、線膨張係数等を調整して接続信頼性を向上させることができる。
【0043】
本実施の形態の異方性導電フィルムは、ラジカル重合性樹脂である、多官能(メタ)アクリレート化合物及び化学式(1)で表される単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(メタ)アクリレート化合物と、ラジカル重合開始剤と、フィルム形成樹脂とを含有する絶縁性の接着剤組成物に、導電性粒子を公知の分散手法により均一に分散混合し、得られた混合物をシリコーン剥離処理ポリエステルフィルム等の剥離フィルムにバーコータ等の公知の塗布手法により乾燥厚で10〜50μmとなるように塗布し、例えば、50〜90℃の恒温槽に投入して乾燥することにより製造することができる。この異方性導電フィルム上に絶縁性接着フィルムを積層する場合には、異方性導電フィルム上に、絶縁性の接着剤組成物を塗布し、乾燥することで得ることができる。
【0044】
剥離フィルムとしては、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなり、異方性導電フィルムの乾燥を防ぐとともに、異方性導電フィルムの形状を維持する。
【0045】
本実施の形態の異方性導電フィルムによれば、化学式(1)で表される構造の単官能(メタ)アクリルモノマーを含有させることにより、高温高湿処理を受けたときの回路電極間の抵抗値の変動を抑制しながら、窒化珪素膜との界面との密着性を向上させて優れた接続信頼性を発揮することが可能となる。
<2.接続方法>
【0046】
本実施の形態の異方性導電フィルムを介してLCD(Liquid Crystal Display)パネルを構成するガラス基板と配線材としてのCOF(Chip On Film)とを圧着接続する接続方法を提供する。ガラス基板には、配線電極がファインピッチに形成されている。また、COFには、配線電極の配線パターンに応じて端子電極が形成されている。そして、この接続方法によって、ガラス基板の配線電極とCOFの端子電極とを異方性導電接続することにより、接続構造体を得る。
【0047】
以下、異方性導電フィルムを介してガラス基板とCOFとを圧着接続する接続方法について具体的に説明する。先ず、ガラス基板上の配線電極が形成されている面と、異方性導電フィルムをガラス基板に仮貼りする(仮貼工程)。この仮貼りにおいては、加圧ボンダーの低温に加熱したヘッド部の加圧面を導電性粒子含有層上面に軽く押し当てて低圧で加圧する。加熱温度は、絶縁性の接着剤組成物が流動するが硬化しない程度の低温(例えば60〜80℃のうちの所定の値)である。また、仮貼工程での加圧圧力は、例えば0.5MPa〜2MPaのうちの所定の値である。また、仮貼工程での熱加圧時間は、例えば1〜3秒(sec)のうちの所定の時間である。
【0048】
仮貼工程で異方性導電フィルムを仮貼りした後、異方性導電フィルムの位置合わせ状態を確認し、位置ずれ等の不具合が生じている場合には、この仮貼工程の後に、異方性導電フィルムを剥離して再度異方性導電フィルムを正しい位置で仮貼りするリペア処理を行う(リペア工程)。
【0049】
次いで、バンプと配線電極とを対峙させるようにしてCOFを異方性導電フィルム上に配置する(配置工程)。
【0050】
そして、加圧ボンダーの加熱したヘッド部の加圧面(図示せず)をCOFの上面に押し当ててガラス基板とCOFとを圧着接続させる(接続工程)。
【0051】
接続工程での加圧圧力は、例えば1MPa〜5MPaのうちの所定の値である。また、接続工程での加熱温度は、絶縁性粒子を溶融させるとともに絶縁性の接着剤組成物を硬化させる温度(例えば温度160〜210℃のうちの所定の値)である。また、接続工程での熱加圧時間は、例えば3〜10秒のうちの所定の時間である。
【0052】
このようにして、配線電極とバンプとの間に導電性粒子を挟持させ、接着剤組成物を硬化させる。これにより、ガラス基板とCOFとを電気的及び機械的に接続する。そして、ガラス基板とCOFとが異方性導電接続されてなる接続構造体を得る。得られた接続構造体は、上述したように、絶縁信頼性を良好に維持しながら、優れた接続信頼性及び導通信頼性を発揮することができる。
【0053】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明が前述の実施の形態に限定されるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0054】
上述の実施の形態では、異方性導電接着部材として、異方性導電フィルムを用いた。しかしながら、異方性導電接着部材の構造は、これに限定されず、例えば、さらに絶縁性の接着剤層が積層された2層構造の異方性導電フィルムとしてもよい。また、例えば、絶縁性の接着剤組成物に導電性粒子が含まれてなる導電性接着剤ペーストと、絶縁性の接着剤組成物からなる絶縁性接着剤ペーストとからなり、これらを重ねて塗布することで2層の接着剤層としてもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、ガラス基板として、LCD(Liquid Crystal Display)パネルを構成するガラス基板を使用する場合について説明したが、ガラス基板は、これに限定されず、例えばPDP基板(PDPパネル)、有機EL基板(有機ELパネル)等を構成するガラス基板であってもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態では、基板としてガラス基板を用いる場合について説明したが、リジット基板、フレキシブル基板等の他の基板であってもよい。また、上述の実施の形態では、電子部品としてCOFを用いる場合について説明したが、ICチップ、TAB等の他の電子部品であってもよい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、本発明をFOG(Film On Glass)に適用する場合について説明したが、本発明は、COG(Chip On Glass)、FOB(Film On Board)等の他の実装方法にも適用できる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。
【0059】
<実施例1>
フィルム形成樹脂として、ポリエステルウレタン樹脂(商品名:UR8200、東洋紡績株式会社製、メチルエチルケトン/トルエン=50:50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)を固形分換算で60質量部(絶縁性の接着剤組成物に対して60質量%)、ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)33質量部(33質量%)及びエトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)1質量部(1質量%)、シランカップリング剤(商品名:KBM−503、信越化学株式会社製)1質量部(1質量%)、リン酸アクリレート(商品名:P−1M、共栄化学株式会社製)1質量部(1質量%)、ラジカル重合開始剤(商品名:パーヘキサC、日本油脂株式会社製)4質量部(4質量%)を含有する絶縁性の接着剤組成物中に、導電性粒子(商品名:AUL704、積水化学工業株式会社製)を粒子密度10000個/mm
2になるように均一に分散し、導電性粒子含有組成物を剥離フィルム上にバーコータにより塗布して乾燥させ、厚み15μmの回路接続材料を作製した。
【0060】
次に、作製した異方性導電フィルムを介してガラス基板とCOF(50μmP、Cu8μmt−Snメッキ、38μmt−S’perflex基材)とを接続する処理を行った。ここで、ガラス基板としては、後の導通抵抗値測定用としてIZOコーティングガラス基板(全表面IZOコート、ガラス厚0.7mm)、接続強度測定用としてSiNコーティングガラス基板(全表面SiNコート)を用いた。先ず、ガラス基板上の配線電極が形成されている面上に、異方性導電フィルムを1.5mm幅にスリットしてガラス基板上に仮貼りした(仮貼工程)。この仮貼りにおいては、加圧ボンダーの低温に加熱したヘッド部の加圧面を導電性粒子含有層上面に軽く押し当てて低圧で加圧した。加熱温度は、絶縁性粒子が溶解せず、絶縁性の接着剤組成物が流動するが硬化しない程度の低温である70℃とした。また、仮貼工程での加圧圧力は、1MPaとした。また、仮貼工程での熱加圧時間は、2秒とした。
【0061】
次いで、COFの端子電極とガラス基板の配線電極とを対峙させるようにしてCOFを異方性導電フィルム上に配置した(配置工程)。
【0062】
そして、加圧ボンダーの加熱したヘッド部の加圧面(1.5mm幅)を緩衝材(100μmtテフロン(登録商標))を介してCOFの上面に押し当ててガラス基板とCOFとを圧着接続させた(接続工程)。
【0063】
接続工程での加圧圧力は、4MPaとした。また、接続工程での加熱温度は、190℃とした。また、接続工程での熱加圧時間は、5秒とした。
【0064】
このようにして、配線電極とバンプとの間に導電性粒子を挟持させ、接着剤組成物を硬化させてガラス基板とCOFとを電気的及び機械的に接続し、接続構造体を得た。
【0065】
<実施例2>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を32質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を2質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0066】
<実施例3>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を31質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を3質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0067】
<実施例4>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を30質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を4質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0068】
<実施例5>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を29質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を5質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0069】
<実施例6>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を19質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を15質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0070】
<実施例7>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を14質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を20質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0071】
<実施例8>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を9質量部、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学工業株式会社製)を25質量部とした以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0072】
<比較例1>
ラジカル重合性樹脂(商品名:EB−600、ダイセル・サイテック株式会社製)を34質量部含有させ、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートを含有させない以外は、実施例1と同様の条件により、回路接続材料を作製した。
【0073】
[導通抵抗値の測定]
実施例1〜8、比較例1で作製した接続構造体について、初期(Initial)の抵抗と、温度85℃、湿度85%RH、500時間のTHテスト(Thermal Humidity Test)後の抵抗を測定した。測定は、デジタルマルチメーター(デジタルマルチメーター7561、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの接続抵抗を測定した。
【0074】
[接着強度の測定]
実施例1〜8、比較例1の接続構造体について、引張試験機(テンシロン、オリエンテック社製)を用いて剥離速度50mm/分で90度(Y軸方向)に引き上げ、接着強度(N/cm)を測定した。
【0075】
実施例1〜8及び比較例1の条件、導通抵抗値及び接続強度の測定結果をまとめたものを[表1]に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1〜8の異方性導電フィルムは、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートを含有することから、かさ高いビフェニル基と、(CH
2CH
20)
n(n=1)と、ラジカル重合を行う−COCH=CH
2とからなる構造により、重合時に硬化収縮が小さくなり、また、硬化後の内部応力も小さくなったと考えられる。これにより、接続時に、接着層と基板の窒化珪素膜との界面において気泡が発生するのが抑制され、優れた密着力により、高い接着強度(接続信頼性)を得ることができたと考えられる。
【0078】
中でも、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートを3〜20重量%含有させた実施例3〜7では、導通抵抗値及び接着強度において良好な値を得ることができた。
【0079】
一方、比較例1では、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレートを含有させないことから、重合時に硬化収縮が大きくなるとともに、硬化後の内部応力も大きくなり、これにより、接続時に、接着層と基板の窒化珪素膜との界面において気泡が発生し、結果として接着強度が低くなったと考えられる。