(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホールドプレートの前記固定部には、前記ホールドプレートを前記ロックアップピストンに締結させる締結部材を挿通させる挿通孔が、前記周方向に所定間隔で複数設けられており、
前記貫通孔は、前記挿通孔よりも内径側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動減衰装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、トルクコンバータ100における振動減衰装置1を説明する図である。
図2は、振動減衰装置1を説明する図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、(a)におけるB−B断面図である。
なお、
図2の(a)において、右下の略1/3は、ドリブンプレート4が存在する状態の平面図であり、左下の略1/3は、ドリブンプレート4の図示を省略した平面図であり、上側の略1/3は、中心軸Xに直交する面で振動減衰装置1を切断した断面図である。
【0016】
図1および
図2に示すように、振動減衰装置1は、トルクコンバータ100の内部に設けられており、ホールドプレート3と、ドリブンプレート4と、スプリング(外径側スプリング5、内径側スプリング6)と、イコライザ7と、を備えて構成される。
【0017】
振動減衰装置1は、トルクコンバータ100がロックアップピストン2をカバーコンバータ101に締結させたロックアップ状態にされて、エンジンの回転駆動力が変速機構部側に直接入力されるようにされた際に、エンジンの振動が変速機構部側に直接伝播することを防止するために設けられている。
【0018】
以下、振動減衰装置1の各構成要素を説明する。
図3は、ホールドプレート3を説明する図であって、(a)は、平面図、(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
図4の(a)は、ホールドプレート3の一部を拡大した拡大図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図である。
【0019】
[ホールドプレート]
図2に示すように、ホールドプレート3は、ロックアップピストン2のカバーコンバータ101とは反対側の面に固定されており、ロックアップピストン2と一体に回転するように設けられている。
【0020】
図3に示すように、ホールドプレート3は、軸方向から見てリング形状の板状部材の成型体であり、その内径側には、リング状の固定部31が設けられている。
固定部31には、当該固定部31を厚み方向に貫通してリベット孔31aが設けられており、ホールドプレート3は、リベット孔31aを挿通させたリベットRにより、ロックアップピストン2に固定されている。
実施の形態では、リベット孔31aは、中心軸X周りの周方向に所定間隔で合計9箇所に設けられており、これらは、中心軸Xを中心とした仮想円Im1(
図4の(a)参照)上に位置している。
【0021】
固定部31の外周には、径方向外側に延びる当接部34が、中心軸X周りの周方向で、所定間隔で合計3箇所に設けられている。
平面視において当接部34は、中心軸Xから離れるにつれて周方向の幅が広くなる形状を有しており、各当接部34の外周縁は、固定部31の径方向外側に位置するフランジ部33に接続している。
【0022】
当接部34には、後記する外径側スプリング5が周方向から当接するようになっている(
図2参照)。当接部34は、外径側スプリング5との当接面を確保するために、断面視において湾曲した形状を有している。
具体的には、
図3の(b)および
図4の(b)に示すように、この当接部34は、内径側から順に、ロックアップピストン2から離れる方向に膨出するように湾曲した内径側湾曲部34aと、ロックアップピストン2に近づく方向に膨出するように湾曲した外径側湾曲部34bと、中心軸Xに対して平行にロックアップピストン2から離れる方向に延びる線状部34cと、を備えており、外径側スプリング5のロックアップピストン2側の周縁に沿うような形状となっている。
【0023】
ロックアップピストン2から離れる方向に延びる線状部34cの先端側は、径方向外側に湾曲しており、その先端は、フランジ部33の内周に一体的に接続されている。
フランジ部33は、固定部31よりも変速機構部側(ロックアップピストン2から離れる側)に位置しており、中心軸Xの略直交方向に沿って延びている(
図3の(b)参照)。
【0024】
フランジ部33は、軸方向から見てリング形状を有すると共に、後記するイコライザ7のフランジ部71に対して平行に延びており、イコライザ7のロックアップピストン2から離れる方向への移動可能な範囲を規定している。
【0025】
フランジ部33の外周縁には、ロックアップピストン2から離れる方向に延出する周壁部33aが、フランジ部33の外径側を、ロックアップピストン2から離れる方向に曲げて形成されている。この周壁部33aは、中心軸X周りの周方向で、フランジ部33の外周縁の全周に亘って設けられており(
図3の(a)参照)、後記するイコライザ7が当接するフランジ部33と、前記した当接部34を含むホールドプレート3の外径側の強度を確保するために設けられている。そして、この周壁部33aは、ロックアップピストン2の外周に設けられた円筒部2c(
図4の(b)参照)と略同じ外径で形成されている。
【0026】
フランジ部33の内周縁には、径方向内側に延びる外側規制部33bが設けられている。
図4の(b)に示すように、外側規制部33bは、ロックアップピストン2から離れる方向に、外径側スプリング5の軸方向から見た外周に沿って延びており、外径側スプリング5のロックアップピストン2から離れる方向への移動を規制するために設けられている。
【0027】
図3に示すように、平面視において固定部31の外径側には、固定部31と、当接部34と、フランジ部33とで囲まれた開口部32が位置している。
開口部32内には、ホールドプレート3とロックアップピストン2との間に形成された収容空間S(
図3の(b)参照)に配置された、外径側スプリング5が位置している。
【0028】
開口部32は、中心軸X周りの周方向に所定長さで形成されており、実施の形態では、合計3つの開口部32が等間隔で設けられている。
開口部32は、中心軸Xから見て、周方向に配置された2つの外径側スプリング5(5a、5b)を収容可能な角度範囲Wに亘って形成されている(
図2の(a)、
図3の(a)参照)。
【0029】
開口部32の内径側には、切り起こし曲げにより、内側規制部31bが設けられている。内側規制部31bは、
図3の(a)において図中手前側(ロックアップピストンから離れる方向)に曲げられており、開口部32内に配置される外径側スプリング5の内径方向への移動を規制するために設けられている。
この内側規制部31bは、中心軸Xから見て、リベット孔31aの径方向外側に重なる位置を避けて、周方向において2分割で形成されており、
図4の(a)に示すように、内側規制部31bは、中心軸Xを中心とする仮想円Im2に沿って弧状に形成されている。
【0030】
図2に示すように、平面視において開口部32内に位置する外径側スプリング5は、一対の分割ばね5a、5bにより構成されており、分割ばね5a、5bの長手方向における当接部34側の端部には、リテーナ8が挿入されて取り付けられている。
分割ばね5a、5bの一端は、リテーナ8を介してホールドプレート3の当接部34に周方向から当接し、他端は、後記するイコライザ7の支持部72に周方向から当接している。
よって、外径側スプリング5は、その両端が、中心軸Xまわりの周方向で隣接する当接部34、34で把持された状態で保持されており、中心軸X周りの周方向に沿って配置されている。
【0031】
図3に示すように、固定部31の内径側には、内径側スプリング6を保持するためのスプリング保持部35が、中心軸X側に膨出して形成されている。
スプリング保持部35は、中心軸Xから見て当接部34と重なる位置関係で形成されており、実施の形態では、中心軸X周りの周方向に所定間隔で3箇所に設けられている。
【0032】
図4の(a)に示すように、このスプリング保持部35には、内径側スプリング6を保持するための保持孔36が形成されている。保持孔36は、内径側スプリング6の軸方向長さと略同じ周方向の幅W1を有しており、保持孔36内に配置される内径側スプリング6は、その軸方向における両端が、保持孔36の縁36a、36aで把持された状態で設けられている。
【0033】
保持孔36の内径側と外径側の縁には、切り起こし曲げにより、規制部37、38が設けられている。
規制部37は、ロックアップピストン2から離れる方向に曲げられており、規制部38は、ロックアップピストン2側に曲げられている。実施の形態では、これら規制部37、38により、内径側スプリング6の内径方向と、外径方向への移動が規制されるようになっている。
【0034】
中心軸X周りの周方向における規制部37、38の幅W2は、保持孔36の幅W1よりも短くなっている。
実施の形態では、内径側スプリング6は、後記するドリブンプレート4の開口部43(
図5参照)により、当該内径側スプリング6の軸方向に圧縮されるようになっている。そのため、内径側スプリング6の軸方向への伸縮が、規制部37により大きく阻害されないようにするために、内径側スプリング6の長手方向における中央部分のみが、規制部37、38に当接するようにされている。
【0035】
スプリング保持部35における保持孔36の両側は、内径側スプリング6の両端を把持する把持部39となっている。この把持部39は、内径側スプリング6との当接面を確保するために、断面視において湾曲した形状を有している。
図4の(b)に示すように、この把持部39は、断面視においてロックアップピストン2に近づく方向に膨出するように湾曲しており、この湾曲した部分における最もロックアップピストン2の近くに位置する頂点39aが、保持孔36の径方向幅W3における略中央に位置するようになっている。
【0036】
[ドリブンプレート]
図5は、ドリブンプレート4を説明する図であり、(a)は平面図、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、(b)における領域Bの拡大図である。
【0037】
図2に示すように、ドリブンプレート4は、ホールドプレート3のロックアップピストン2とは反対側に位置しており、ドリブンプレート4とホールドプレート3は、外周側のばね受部45と当接部34とが、軸方向から見て重なる位置関係で設けられている。
【0038】
図5の(a)に示すように、ドリブンプレート4は、軸方向から見てリング形状の板状部材の成型体であり、その内径側にはリング状の取付部41が設けられている。
振動減衰装置1において、取付部41は、中心軸Xに直交する向きで設けられており、この取付部41には、取付孔41aが設けられている。この取付孔41aは、取付部41を厚み方向に貫通して設けられており、中心軸X周りの周方向に所定間隔で複数設けられている。
【0039】
実施の形態では、合計6個の取付孔41aが設けられており、これら取付孔41aに挿通したリベット(図示せず)により、ドリブンプレート4がトルクコンバータのタービンに連結されるようになっている。
【0040】
取付部41の外径側は、ロックアップピストン2側に膨出するように湾曲する湾曲部42となっており、この湾曲部42には、湾曲部42を厚み方向に貫通して開口部43が形成されている。
実施の形態では、湾曲部42のロックアップピストン2側に最も位置する頂点部42aが、開口部43の径方向幅W4における略中間に位置するように形成されており、開口部43は、中心軸X周りの周方向で所定間隔を空けて3つ設けられている。
【0041】
実施の形態では、ドリブンプレート4が振動減衰装置1に組み込まれた状態において、頂点部42aが、内径側スプリング6の軸方向から見た中央部を横切るように、湾曲部42の形状が設定されている(
図5の(c)参照)。
【0042】
ドリブンプレート4の外周には、径方向外側に延びるばね受部45が、中心軸X周りの周方向で、所定間隔で合計3箇所に設けられている。
平面視においてばね受部45は、中心軸Xから離れるにつれて周方向の幅が広くなる形状を有しており、外径側スプリング5が周方向から当接するようになっている。
ばね受部45は、ロックアップピストン2側に位置するホールドプレート3の当接部34との干渉を避けつつ、外径側スプリング5との当接面を確保するために、断面視において湾曲した形状を有している。
【0043】
具体的には、
図5の(b)、(c)に示すように、ばね受部45は、内径側から順に、ロックアップピストン2から離れる方向に膨出するように湾曲した内径側湾曲部45aと、中心軸Xに直交する方向に延びる線状部45bと、を備えており、線状部45bが、外径側スプリング5の軸方向から見た中央部を横切るように、ばね受部45の形状が設定されている。
【0044】
[イコライザ]
図6は、イコライザ7を説明する図であり、(a)は、軸方向から見た平面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、(b)における領域Cの拡大図である、(d)は、(a)におけるB−B断面図である。
【0045】
図2の(b)に示すように、イコライザ7は、中心軸Xの軸方向で、ロックアップピストン2とホールドプレート3との間に位置しており、ロックアップピストン2およびホールドプレート3に対して相対回転可能に設けられている。
【0046】
イコライザ7は、軸方向から見てリング形状の本体部70と、フランジ部71と、本体部70から内径側に延びる支持部72と、を備える。
【0047】
本体部70におけるロックアップピストン2とは反対側は、径方向外側に曲げられており、中心軸Xに対して直交する方向に延びるフランジ部71が形成されている。
実施の形態では、遠心力で径方向外側に移動した外径側スプリング5が、本体部70の内周面70aに接触するようになっており、本体部70が外径側スプリング5から受ける応力により変形することを防止するために、本体部70にフランジ部71を設けて強度を確保している。
【0048】
支持部72は、前記した分割ばね5a、5bの他端を支持するものであり、本体部70のロックアップピストン2側の端部から径方向内側に延出して形成されている。
実施の形態では、支持部72は、中心軸Xまわりの周方向で、等間隔で3つ形成されており、一対の分割ばね5a、5bを中心軸X周りの周方向に連結するために設けられている。
【0049】
図6の(c)に示すように、支持部72は、ロックアップピストン2側の端部から径方向内側に延びたのち、ロックアップピストン2から離れる方向に曲げられており、さらにその先端側が、内径側に曲げられている。よって、支持部72は、外径側スプリング5の軸方向から見た中央部を、ロックアップピストン2側から横切るように湾曲した形状とされている。
【0050】
実施の形態では、イコライザ7のトランスミッション側への移動は、ホールドプレート3のフランジ部33により規制され、エンジン側への移動は、ロックアップピストン2により規制される。
そして、イコライザ7の内径方向(中心軸X)側への移動は、基本的には外径側スプリング5により規制され、外径方向への移動はロックアップピストン2の円筒部2cにより規制されるようになっている。
【0051】
かかる構成の振動減衰装置1では、
図1に示すように、エンジンの回転数が所定回転数になると、ロックアップピストン2が油圧によりエンジン側へ押されて、トルクコンバータ100は、ロックアップピストン2の摩擦ライニング2bをカバーコンバータ101に締結させたロックアップ状態にされる。
ロックアップ状態では、エンジンの回転駆動力が、ロックアップピストン2を介してホールドプレート3に直接入力されるので、ホールドプレート3が中心軸X回りで、ドリブンプレート4に対して相対的に回転する。
この際、ドリブンプレート4のばね受部45の当接面45c(
図5の(a)参照)が、外径側スプリング5に軸方向から当接しているので、ホールドプレート3は、ばね受部45で外径側スプリング5を周方向に押し縮めながら、ドリブンプレート4に対して相対的に回転する。
【0052】
これにより、ドリブンプレート4には、外径側スプリング5を介して、ホールドプレート3に入力された回転駆動力が入力されるので、この入力された回転駆動力は、図示しないタービンハブおよびトランスミッションへと伝達されることになる。
【0053】
ここで、
図2の(a)に示すように、ドリブンプレート4の開口部43の縁43aと、ホールドプレート3のスプリング保持部35の保持孔36の縁36aとは、中心軸X回りの周方向で角度θの位相差をもって配置されている。
そのため、ホールドプレート3からドリブンプレート4への回転駆動力の伝達が開始された直後では、外径側スプリング5のみが圧縮される。
そして、伝達される回転駆動力(トルク)が大きくなって、ホールドプレート3がドリブンプレート4に対して相対的にθだけ回転すると、内径側スプリング6の開口部43の縁43aによる圧縮が開始される。
よって、ドリブンプレート4には、最終的に外径側スプリング5と内径側スプリング6を介して、回転駆動力が入力されることになる。
【0054】
以下、振動減衰装置1におけるホールドプレート3の要部を説明する。
図7は、ホールドプレート3のスプリング保持部35周りを拡大して示す拡大図である。
図7に示すように、ホールドプレート3のスプリング保持部35は、ホールドプレート3のリング状の固定部31から内径側(中心軸X側)に延出して形成されている。
【0055】
固定部31では、中心軸X周りの周方向に所定間隔でリベット孔31aが形成されており、スプリング保持部35は、中心軸X側から見て周方向で隣接するリベット孔31a、31aの間から径方向内側に延出している。
【0056】
平面視においてスプリング保持部35は、内径側(中心軸X)側に向かうにつれて、周方向の幅W5が狭くなる形状を有しており、その中央部には、内径側スプリング6の保持孔36が形成されている。
この保持孔36は、スプリング保持部35を厚み方向に貫通して設けられており、内径側スプリング6は、その長手方向(軸方向)の両端が、保持孔36の周方向の縁36aで支持されている。
【0057】
保持孔36の内径側と外径側には、切り起こし曲げにより、ロックアップピストン2から離れる方向に曲げられた規制部37と、ロックアップピストン2に近づく方向に曲げられた規制部38とが設けられている。
平面視において、規制部37の基端と保持孔36との接続部36bは、応力集中を緩和するために弧状に形成されている。
【0058】
保持孔36の外径側には、中心軸Xと保持孔36の周方向における中間とを結ぶ仮想線Im3を挟んで対象となる形状で、貫通部40が形成されている。
貫通部40は、中心軸X回りの周方向に沿って、所定長さW6で形成されている。貫通部40の仮想線Im3側の端部は、保持孔36の径方向外側に及んで形成されており、貫通部40は、保持孔36の径方向外側から保持孔36に連絡している。
【0059】
貫通部40の外周縁40bは、中心軸Xを中心とした仮想円Im5に沿うように形成されている。この仮想円Im5は、リベット孔31aの内径側の縁を通る仮想円Im6よりも径の小さい仮想円である。
【0060】
実施の形態では、ホールドプレート3は、リベット孔31aを挿通させたリベットRにより、ロックアップピストン2に連結して固定されている(
図2の(b)参照)。そのため、トルクコンバータ100がロックアップ状態となって、エンジンの回転駆動力が、ロックアップピストン2からホールドプレート3に入力されるようになると、ロックアップピストン2とホールドプレート3との間には捩り応力が作用する。
【0061】
この応力は、ロックアップピストン2とホールドプレート3とを連結するリベットR(リベット孔31a)の周方向に作用する。
図7の場合、リベット孔31aの内径側の縁を通る仮想円Im6と外径側の縁を通る仮想円Im7との間の領域に、中心軸X周りの周方向に捩り応力が作用する。
よって、リベット孔31aの周方向で、仮想円Im6と仮想円Im7とで挟まれた領域に及んで貫通部40が形成されると、ホールドプレート3の捩り応力に対する剛性が低下してしまう。
そのため、実施の形態では、仮想円Im6(リベット孔31a)よりも内径側に貫通部40が形成されるように、外周縁40bの位置を設定している。
【0062】
貫通部40の内周縁40aは、中心軸Xを中心とした仮想円Im4に沿うように形成されている。
仮想円Im4は、内径側スプリング6と保持孔36の縁36aとの外径側の当接点Pよりも径方向外側を通る仮想円であって、貫通部40が形成されていない場合の保持孔36の外径側の縁36c(図中仮想線で示す)を通る仮想円Im8よりも径の小さい仮想円である。
【0063】
貫通部40を、保持孔36の径方向外側に設ける場合、ホールドプレート3において保持孔36を形成するための径方向の幅を確保する必要がある。前記したようにリベットの周方向の剛性強度を確保する必要があるので、かかる場合には、保持孔36(スプリング保持部35)を径方向内側に移動させて、保持孔36を形成するためのスペースを確保することになる。そうすると、内径側スプリング6の作用径(中心軸Xから径)が制限されて、トルク入力に対するキャパシティが小さくなってしまう。
【0064】
実施の形態では、貫通部40の内周縁40aを、貫通部40が形成されていない場合の保持孔36の外径側の縁36c(図中仮想線で示す)よりも径方向内側に位置させている。そして、貫通部40が、内径側スプリング6と縁36aとの外径側の当接点Pよりも径方向外側で保持孔36に連結されるように、貫通部40の仮想線Im3側は、保持孔36の径方向外側の斜め方向から保持孔36に連絡している。
貫通部40が当接点Pよりも内径側で保持孔36に連絡すると、把持部39における内径側スプリング6の把持が阻害されてしまうからである。
【0065】
これにより、貫通部40を形成するために、保持孔36をホールドプレート3の内径側に移動させていないので、内径側スプリング6の作用径が制限されて、トルク入力に対するキャパシティが小さくなることが防止されている。
【0066】
貫通部40は、その基本形状が中心軸X回りの周方向に沿って延びる長孔であり、保持孔36から離れる方向の先端40cは、スプリング保持部35における保持孔36の両側の把持部39の略中央に及ぶ範囲まで形成されている。
【0067】
ホールドプレート3では、中心軸Xから見て径方向外側に連なって延びる連続する部分(連続部)が、ホールドプレート3の軸方向への曲げに対する剛性を高めている部分である。
図7に示すホールドプレート3の場合、中心軸Xから見て、固定部31を挟んでスプリング保持部35とは反対側の径方向外側に当接部34が位置している。
そのため、例えば貫通部40が形成されていない場合には、把持部39から当接部34までのおおよそ幅W7の範囲が、中心軸Xから見て径方向外側に連なって延びる連続部となる。
【0068】
かかる場合、この幅W7の範囲により、ホールドプレート3の軸方向への曲げに対する剛性が高められており、結果としてホールドプレート3が固定されたロックアップピストン2の中心軸Xの軸方向(スラスト方向)の曲げに対する剛性も高められている。
【0069】
実施の形態では、周方向の幅がW6である貫通部40を設けたことにより、把持部39から当接部34までの径方向外側に連なって延びる連続部が、おおよそ幅W8の範囲まで狭められている。
そのため、貫通部40を設けていない場合に比べて、連続部の幅が狭くなった分だけ、ホールドプレート3の軸方向への曲げに対する剛性が弱められている。
【0070】
さらに、連続部の途中に貫通部40が位置していることにより、貫通部40を挟んで内径側(把持部39)と外径側(当接部34)の接続部31cが狭くなっており、内径側(把持部39)と外径側(当接部34)とが、それぞれ接続部31cを境にして軸方向に曲がりやすくなっている。
よって、このことによっても、ホールドプレート3が固定されたロックアップピストン2の軸方向の曲げに対する剛性が弱められている。
【0071】
なお実施の形態では、ホールドプレート3は、その内径側(把持部39)と外径側(当接部34)とが接続部31cを境にして軸方向に湾曲するようになっているので、貫通部40は、貫通部40は、保持孔36の両側の縁36aから、スプリング保持部35の周方向における両側端35aまでの範囲であって、接続部31cに繰り返し入力される曲げ応力に耐える強度を保持できる範囲内に形成されている。
例えば、ホールドプレート3の板厚が厚くなると、ホールドプレートの剛性が高くなるので、実施の携帯では、板厚が長くなるにつれて、貫通部40の周方向の幅W6を長くすることで、ホールドプレートの剛性を適切に調整している。
【0072】
実施の形態では、貫通部40の周方向の幅W6は、接続部31cの強度が確保できる範囲内で、最大で、貫通部40の先端40cがスプリング保持部35の周方向における両側端35aの近傍まで、周方向に延長することができる。
【0073】
以上の通り、トルクコンバータ100のロックアップピストン2に固定されて、ロックアップピストン2と一体に中心軸X回りに回転するホールドプレート3と、トルクコンバータ100のタービンに連結されて中心軸X周りに回転するドリブンプレート4と、ホールドプレート3とドリブンプレート4とを回転方向で弾性的に連結すると共に、中心軸X回りの周方向に配置された内径側スプリング6および外径側スプリング5とを、備え、ホールドプレート3に入力されるエンジンの回転駆動力が、内径側スプリング6と外径側スプリング5とを介してドリブンプレート4に伝達される振動減衰装置1において、
ホールドプレート3では、内径側スプリング6の保持孔36が穿設されたスプリング保持部35が、ロックアップピストン2とのリング状の固定部31から内径側に延出(突設)して形成されており、スプリング保持部35では、中心軸X周りの周方向における保持孔36の両側の把持部39に、保持孔36に連絡して貫通部40が設けられており、保持孔36は内径側スプリング6の中心軸線に沿って形成されている構成とした。
【0074】
ホールドプレート3では、スプリング保持部35における保持孔36の両側の把持部39から径方向外側の固定部31までの範囲が、中心軸Xから見て径方向外側に連なって延びる連続部となっており、この連続部により、ホールドプレート3の中心軸Xの軸方向の剛性強度(曲げ強度)が高められている。
上記のように構成すると、中心軸Xから見て径方向外側に連なって延びる連続部の周方向の幅が狭められるので、ホールドプレート3の軸方向の剛性強度を弱めることができる。これにより、ホールドプレート3が、軸方向に撓みやすい、柔軟性に優れた部材となるので、ホールドプレート3が固定された固定されたロックアップピストン2の軸方向の曲げに対する剛性も弱めることができる。
【0075】
特に、固定部31を挟んでスプリング保持部35の反対側に、径方向外側に延びる当接部34が設けられており、中心軸から見て径方向外側に連なって延びる連続部が、スプリング保持部35の把持部39から、固定部31を経て、当接部34までの範囲に及ぶ場合には、ホールドプレート3の中心軸Xの軸方向の剛性強度(曲げ強度)がいっそう高くなる。かかる場合であっても、ホールドプレート3の軸方向の剛性強度を弱めることができるので、ロックアップピストン2の軸方向の曲げに対する剛性が低下する。
【0076】
さらに、把持部39において貫通部40が、保持孔36の両側から、スプリング保持部35の周方向における両側端35aの近傍までの、把持部39による内径側スプリング6の保持が損なわれない範囲に設けられている構成とした。
【0077】
このように構成すると、中心軸Xから見て、保持孔36の両側の把持部39から径方向外側に連続している連続部の途中に、貫通部40による空間部が間欠的に形成されるので、ホールドプレート3の軸方向の曲げに対する剛性強度を低下させることができる。これにより、ホールドプレート3の軸方向の剛性が抑えられるので、ロックアップピストン2のカバーコンバータへの速やかな締結が可能になる。
【0078】
ホールドプレート3の固定部31には、ホールドプレート3をロックアップピストン2に締結させるリベットR(締結部材)を挿通させるリベット孔31aが、中心軸X回りの周方向に所定間隔で複数設けられており、貫通部40は、リベット孔31aよりも内径側に設けられている構成とした。
【0079】
エンジンの回転駆動力が、ロックアップピストン2からホールドプレート3に入力されるようになると、ロックアップピストン2とホールドプレート3との間には捩り応力が作用し、この捩り応力は、ロックアップピストン2とホールドプレート3との連結点、すなわちリベットRの周方向に作用する。ホールドプレート3の場合、リベットRのリベット孔31aの周方向に捩り応力が作用するので、貫通部40をリベット孔31aの周方向に及んで形成すると、ホールドプレート3の捩り応力に対する剛性が低下してしまう。
上記のように構成して、貫通部40を、リベット孔31aよりも内径側に設けることで、ホールドプレート3の周方向の剛性を高く維持したままで、軸方向の剛性を抑えることができる。
【0080】
特に、貫通部40は、中心軸Xから見て、保持孔36の両縁36aから、スプリング保持部35の両側端35aに向けて延出して形成されており、貫通部40は、保持孔36における内径側スプリング6の外径側の当接点Pよりも径方向外側であって、リベット孔31aよりも内径側の範囲に設けられている構成とした。
【0081】
このように構成すると、貫通部40を設けるために、保持孔36を径方向内側に移動させる必要がないので、内径側スプリング6を可能な限り外径側に配置させることができる。すなわち、貫通部40を設けるために、内径側スプリング205の作用径を小さくする必要がないので、トルク入力に対する内径側スプリングのキャパが低下することがない。よって、従来の場合、トルク入力のキャパの低下を補うために、より高性能なスプリングを設ける必要があったが、実施の形態にかかる振動減衰装置1の場合には、そのような必要がなく、より安価なスプリングを採用できる。
【0082】
貫通部40は、中心軸X周りの周方向に沿って形成された長孔であり、前記長孔の前記周方向および前記径方向の幅は、前記ホールドプレートの板厚に応じて設定される構成とした。
【0083】
このように構成すると、ホールドプレートの剛性は板厚に応じて変化するので、板厚に応じて、長孔の周方向と径方向の幅を設定することで、ホールドプレート3の周方向の剛性の低下を抑えつつ、軸方向の剛性を低下させて、ホールドプレート3を軸方向に撓みやすくすることができる。
【0084】
前記した実施の形態では、スプリング保持部35の保持孔36に連絡して貫通部40を設けた場合を例示したが、中心軸Xから見て、把持部39から径方向外側に連なって延びる部分の剛性強度を弱めることができるものであれば、貫通部の代わりに、保持孔36に連絡する切欠きを設けることや、ピアス孔などを設ける構成としても良い。
【0085】
さらに、貫通部40の内周縁40aと外周縁40bとが、それぞれ仮想円Im4と仮想円Im5に沿うように形成されている場合を例示したが、それぞれ平面視において直線状に形成されてても良い。