(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、発熱抵抗体となる通電部用成形体を予め作製し、その後、基体成形用の第1の金型部材の内面に、通電部用成形体をその一方側の面が接するように配置するので、この配置の際に、位置合わせにおける誤差を生じやすい。また、通電部用成形体は、焼成前においては、発熱部となるU字状の曲げ返し部や軸線方向に延びるリード部の形が崩れやすい。このため、通電部用成形体を、形崩れすることなく、かつ、位置ずれの無い状態で、基体成形用の第1の金型部材の内面に配置するのは難しい。
また、これに続いて、他方側に配置された基体成形用の第2の金型部材と、通電部用成形体の他方側の表面との間に構成されるキャビティに、基体用混合物を充填して第1基体成形体を成形する。このとき、第1の金型部材に配置された通電部用成形体は、この第1の金型部材に密着しているとは限らず、通電部用成形体の一部、特に、U字状の曲げ返し部が、第1の金型部材から浮き上がって配置される場合がある。このような状態で、基体用混合物を充填した場合には、曲げ返し部が偏った状態で、通電部用成形体及び第1基体成形体が成形されてしまう。
このように、通電部用成形体と第1基体成形体との間の位置ずれや、通電部用成形体の形崩れ、通電部用成形体の曲げ返し部の偏りなどが生じたものを用いて、セラミックヒータを形成しても、発熱抵抗体の発熱性能が低下したり、絶縁基体の絶縁性能が低下したりして、セラミックヒータの本来の性能を発揮できない虞があった。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、絶縁性セラミックからなる絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され導電性セラミックからなる発熱抵抗体とを備え、信頼性の高いセラミックヒータの製造方法、セラミックヒータを有するグロープラグの製造方法、セラミックヒータ及びこれを有するグロープラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その態様は、絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する発熱抵抗体と、を備えるセラミックヒータの製造方法であって、第1絶縁性セラミック粉末を含み、焼成により上記絶縁基体の一部となる第1成形体を成形する第1成形体成形工程と、導電性セラミック粉末を含み、焼成により上記発熱抵抗体となる未焼成発熱抵抗体を成形する抵抗体成形工程と、第2絶縁性セラミック粉末を含み、焼成により上記絶縁基体の残部となる第2成形体を成形する第2成形体成形工程と、を備え、上記抵抗体成形工程は、上記未焼成発熱抵抗体を成形する際の抵抗体成形型の一部に、上記第1成形体を用いて、射出成形法により、上記未焼成発熱抵抗体を上記第1成形体と一体に成形し、上記第2成形体成形工程は、上記第2成形体を成形する際の第2成形体成形型の一部に、上記第1成形体及び上記未焼成発熱抵抗体を用いて、上記第2成形体を上記第1成形体及び上記未焼成発熱抵抗体と一体に成形
し、前記第1成形体成形工程は、前記第1成形体に、前記未焼成発熱抵抗体の形態に適合した凹部を形成するセラミックヒータの製造方法である。
【0007】
このセラミックヒータの製造方法では、予め第1成形体成形工程で、焼成により絶縁基体の一部となる第1成形体を成形しておき、抵抗体成形工程では、焼成により発熱抵抗体となる未焼成発熱抵抗体を成形する際の抵抗体成形型の一部に、第1成形体を用いる。さらに、第2成形体成形工程では、焼成により絶縁基体の残部となる第2成形体を成形する際の第2成形体成形型の一部に、第1成形体及び未焼成発熱抵抗体を用いる。これにより、未焼成発熱抵抗体は第1成形体を基準に成形され、さらに、第2成形体は、第1成形体及び未焼成発熱抵抗体を基準に成形される。このため、第1成形体と未焼成発熱抵抗体と第2成形体のそれぞれの間で位置ずれが生じにくい。また、先に第1成形体を成形し、この第1成形体を抵抗体成形型の一部として、未焼成発熱抵抗体を成形するので、未焼成発熱抵抗体を配置する際の形崩れの問題も生じない。また、未焼成発熱抵抗体は、第1成形体と一体に成形されるので、未焼成発熱抵抗体が金型から浮いてしまう問題も生じない。従って、従来の製造方法と比して、発熱性能の低下や絶縁性能の低下を生じにくい、信頼性の高いセラミックヒータを製造することができる。
【0008】
加えて、抵抗体成形工程において、抵抗体成形型の一部に、第1成形体を用いて、未焼成発熱抵抗体を射出成形法により成形するので、未焼成発熱抵抗体の成形型のうち、一部(第1成形体に相当する部分)の金型を作製する必要がない。
このため、前述の従来技術に比して、セラミックヒータを容易かつ安価に製造することができる。
さらに、このセラミックヒータの製造方法では、第1成形体成形工程で、第1成形体に、未焼成発熱抵抗体の形態に適合した凹部を形成する。これにより、抵抗体成形工程では、抵抗体成形型の一部に、この第1成形体の凹部を用いて、未焼成発熱抵抗体を成形することができる。このため、未焼成発熱抵抗体を第1成形体と確実に一体化できるとともに、未焼成発熱抵抗体と第1成形体との位置ずれもより生じにくい。従って、さらに性能の低下を生じにくく、信頼性の高いセラミックヒータを製造することができる。
【0009】
なお、「セラミックヒータ」としては、例えば、グロープラグに用いるセラミックヒータや、ガスセンサのセンサ部を加熱するのに用いるセラミックヒータなどが挙げられる。
また、「軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体」の形態としては、例えば、円柱状、楕円柱状、長円柱状、四角柱などの多角柱状などが挙げられる。但し、一部にくびれ部分や径大部分を有するものであっても良い。
【0010】
なお、第1成形体成形工程で成形する第1成形体及び第2成形体成形工程で成形する第2成形体の成形方法は、射出成形法でも良いし、それ以外の方法、例えば、粉末プレス、スリップキャスティングなどの方法を用いても良い。
また、第1成形体を構成する第1絶縁性セラミック粉末と第2成形体を構成する第2絶縁性セラミック粉末とは、同一の粉末を用いても良いし、製法や成分が異なる粉末を用いても良い。
【0013】
更に、上述のセラミックヒータの製造方法であって、前記抵抗体成形工程は、前記抵抗体成形型が構成する抵抗体用キャビティ内に、その基端から先端に向けて、前記導電性セラミック粉末を含む発熱体用混合物を射出して、前記未焼成発熱抵抗体を成形するセラミックヒータの製造方法とすると良い。
【0014】
射出された発熱体用混合物は、射出直後は高温であるが、抵抗体用キャビティ内を移動した後は、比較的低温となる。一方、抵抗体成形型が構成する抵抗体用キャビティは、金型の他に、第1成形体がその一部を構成している。従って、第1成形体成形工程で成形された第1成形体は、その後の抵抗体成形工程において、高温とされた発熱体用混合物によって、表面の一部が溶ける場合があり、射出直後の射出口付近でそれが顕著となる。ところで、第1成形体の表面の一部が溶けると、この第1成形体をなす第1絶縁性セラミック粉末が、成形された未焼成発熱抵抗体中に膜状(断面においてヒゲ状)をなして巻き込まれることがある。これにより、焼成後のセラミックヒータの発熱抵抗体中に、絶縁性セラミックが膜状に延びた膜状絶縁性セラミック部が形成されうる。この膜状絶縁性セラミック部は、セラミックヒータの絶縁性能を低下させる危険性は無い。しかし、曲げ返し部を含む発熱部内に、膜状絶縁性セラミック部が形成されている場合は、セラミックヒータの発熱性能に影響する虞がある。
【0015】
これに対し、このセラミックヒータの製造方法では、抵抗体用キャビティ内に、その基端から先端に向けて、発熱体用混合物を射出している。これにより、未焼成発熱抵抗体のうち、焼成前の曲げ返し部(以下、未焼成曲げ返し部)付近では、発熱体用混合物は比較的低温となるので、第1成形体の表面が溶けにくく、未焼成曲げ返し部中に第1絶縁性セラミック粉末が膜状に巻き込まれにくい。従って、焼成後のセラミックヒータの発熱性能の低下を抑制できる。
【0016】
更に、上述のセラミックヒータの製造方法であって、前記第1成形体成形工程は、前記第1成形体に、前記未焼成発熱抵抗体との接合面を形成する抵抗体側金型と、上記第1成形体のうち、焼成により前記絶縁基体の外周面の一部となる部位を形成する外側金型と、を用いて、上記第1成形体を成形し、前記抵抗体成形工程は、成形した上記第1成形体を上記外側金型内に配置した状態で、上記外側金型及び上記第1成形体を前記抵抗体成形型の一部として用いて、上記未焼成発熱抵抗体を成形し、前記第2成形体成形工程は、上記未焼成発熱抵抗体及びこれと一体化した上記第1成形体を上記外側金型内に配置した状態で、上記外側金型、上記第1成形体及び上記未焼成発熱抵抗体を前記第2成形体成形型の一部として用いて、前記第2成形体を成形するセラミックヒータの製造方法とすると良い。
【0017】
このセラミックヒータの製造方法では、外側金型を、第1成形体成形工程、抵抗体成形工程、及び第2成形体成形工程のいずれの工程でも用いる。これにより、第1成形体を成形した後に、外側金型を交換せずに、未焼成発熱抵抗体及び第2成形体を成形できるので、金型交換に伴う位置ずれが生じない。また、金型交換に要する工数を削減できると共に、必要とする金型を少なくできるので、セラミックヒータを容易かつ安価に製造することができる。
【0018】
更に、上述のセラミックヒータの製造方法であって、前記第1成形体成形工程は、射出成形法により、前記第1成形体を成形し、前記第2成形体成形工程は、射出成形法により、前記第2成形体を成形するセラミックヒータの製造方法とすると良い。
【0019】
このセラミックヒータの製造方法では、未焼成発熱抵抗体に加えて、第1成形体及び第2成形体も射出成形法により成形する。このため、第1成形体、未焼成発熱抵抗体及び第2成形体の全てで、射出成形法を用いることとなり、製造設備の共通化やコストダウンを図ることができる。
【0020】
更に、上述のセラミックヒータの製造方法であって、前記第2成形体成形工程は、前記第2成形体成形型が構成する第2成形体用キャビティ内に、その基端から先端に向けて、前記第2絶縁性セラミック粉末を含む第2基体用混合物を射出して、前記第2成形体を成形するセラミックヒータの製造方法とすると良い。
【0021】
前述の通り、抵抗体成形工程では、高温とされた発熱体用混合物により、第1成形体の表面の一部が溶ける場合があった。一方、第2成形体成形工程においても、高温の第2基体用混合物を射出するので、この第2基体用混合物により、第1成形体及び未焼成発熱抵抗体の表面の一部が溶ける場合がある。この場合も、未焼成曲げ返し部付近でこれが起きると、焼成後の発熱抵抗体の性能が低下する虞がある。
そこで、このセラミックヒータの製造方法では、第2成形体成形工程で、第2成形体用キャビティ内に、その基端から先端に向けて、第2基体用混合物を射出して、第2成形体を成形している。これにより、第2成形体成形工程において、高温とされた第2基体用混合物により、未焼成発熱抵抗体の未焼成曲げ返し部及びこの付近の第1成形体の表面が溶けだすおそれを小さくできる。従って、焼成後のセラミックヒータの性能の低下を抑制できる。
【0022】
他の態様は、絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する発熱抵抗体と、を備えるグロープラグ用のセラミックヒータを有するグロープラグの製造方法であって、上記のいずれかに記載のセラミックヒータの製造方法により、上記セラミックヒータを製造するヒータ製造工程と、上記セラミックヒータを用いて、上記グロープラグを組み立てるプラグ組立工程と、を備えるグロープラグの製造方法である。
【0023】
このグロープラグの製造方法では、ヒータ製造工程で得た、信頼性が高く、良好な特性を有するセラミックヒータを用いてグロープラグを製造するので、グロープラグにおいても、良好な特性を得ることができる。
【0024】
他の態様は、セラミックヒータであって、絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する発熱抵抗体と、を備え、上記発熱抵抗体の上記リード部は、これに接する絶縁基体から、上記絶縁性セラミックが上記リード部内に膜状に延びる膜状絶縁性セラミック部を有するセラミックヒータである。
【0025】
リード部内に膜状絶縁性セラミック部を備えるセラミックヒータは、焼成前の成形過程において、絶縁性セラミックの粉末を含む第1成形体を予め成形した後、これに接するように、導電性セラミックの粉末を含む未焼成発熱抵抗体を射出成形することにより、製造される。
一方、この成形順序を採用したヒータとは、逆の順序で成形した場合、即ち、従来のように、未焼成発熱抵抗体を成形した後に第1成形体を成形した場合には、リード部内に膜状絶縁性セラミック部は形成されない。この場合は、未焼成発熱抵抗体の表面の一部が第1成形体内に溶け出すことにより、絶縁基体のうち、第1成形体に対応する部位内に、膜状の導電性セラミック部ができる。
従って、膜状絶縁性セラミック部を有するヒータは、第1成形体を予め成形した後に、未焼成発熱抵抗体を成形したものであり、前述の通り、この成形順序を採用することにより、性能が良好な信頼性の高いセラミックヒータが得られる。
【0026】
他の態様は、上記に記載のセラミックヒータを備えるグロープラグである。
【0027】
このグロープラグでは、信頼性の高いセラミックヒータを備えており、グロープラグ自身も信頼性を高くできる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態に係るセラミックヒータ2を用いたグロープラグ1の縦断面図を示す。
本実施形態に係るグロープラグ1は、
図1に示すように、その軸線AXに沿う軸線方向HJのうち先端方向HS(
図1において下方)に、通電により発熱するセラミックヒータ2を有する。
また、このセラミックヒータ2の基端側の部位を保持する筒状の主体金具3を有する。
この主体金具3は、自身の先端方向HSに位置し、セラミックヒータ2を保持するヒータ保持部材4と、このヒータ保持部材4の基端方向HKに位置する主体金具本体5とから構成されている。
このうち主体金具本体5は、軸線AXに沿って基端部5kから先端部5sまで延びる筒状をなしている。主体金具本体5の基端部5kには、六角断面形状の工具係合部5eが形成されている。また、主体金具本体5のうち、工具係合部5eよりも先端側の外周には、取付用のねじ部5fが形成されている。
【0030】
この主体金具本体5の内側には、その基端方向HKから、セラミックヒータ2に電力を供給するための棒状の金属端子軸6が、絶縁ブッシュ7を介して主体金具本体5と電気的に絶縁した状態で配置されている。
【0031】
ヒータ保持部材4は、筒状をなし、その基端部4kが主体金具本体5の先端部5sに溶接されている。このヒータ保持部材4には、前述のセラミックヒータ2の基端側の部位が挿入され固定されている。具体的には、セラミックヒータ2は、先端部2s及び基端部2kがそれぞれヒータ保持部材4から突出するようにして、ヒータ保持部材4内に圧入されて、これに保持されている。
【0032】
主体金具本体5に挿通された金属端子軸6の基端部6kは、主体金具本体5よりも基端方向HKに突出して配置されている。そして、この基端部6kには、前述の絶縁ブッシュ7を介して端子金具8が取り付けられている。
一方、金属端子軸6の先端部6sは、筒状の接続リング9に挿入されて、これに溶接されている。また、この接続リング9には、他方でセラミックヒータ2の基端部2kが圧入され、基端部2kに設けられた一方の電極部18(
図1では不図示。
図2を参照)が、接続リング9に電気的に接続されている。これにより、セラミックヒータ2の一方の電極部18と、金属端子軸6とが電気的に接続されている。なお、セラミックヒータ2のもう一方の電極部19(
図1では不図示。
図2を参照)は、セラミックヒータ2を保持するヒータ保持部材4、従って、主体金具3に電気的に接続されている。
【0033】
次に、本実施形態に係るセラミックヒータ2について説明する。
図2及び
図3に、セラミックヒータ2の縦断面図を示す。
【0034】
セラミックヒータ2は、
図2及び
図3に示すように、軸線AXに沿って基端部2k(
図2及び
図3の右側。
図1では上側)から先端部2s(
図2及び
図3の左側。
図1では下側)まで延びる円柱状をなす。そして、このセラミックヒータ2は、外形が円柱状をなす絶縁基体10の中に、通電によって発熱する発熱抵抗体11が埋設されたものである。
【0035】
このうち絶縁基体10は、絶縁性セラミック(具体的には、窒化珪素質セラミック)からなる。この絶縁基体10は、セラミックヒータ2の基端部2kに対応した基端部10kから、セラミックヒータ2の先端部2sに対応した先端部10sまで、軸線AX方向に延びている。なお、先端部2sは、円柱角部がR面取りされている。
【0036】
絶縁基体10に埋設された発熱抵抗体11は、発熱部12と、これに繋がる一対のリード部14,15とから一体的に構成されている。この発熱抵抗体11は、導電性セラミック(具体的には、導電成分として炭化タングステンを含有する窒化珪素質セラミック)から形成されている。
【0037】
このうち発熱部12は、絶縁基体10の先端部10s内に配置され、曲げ返し部13を軸線AXに沿う軸線方向HJのうち先端方向HSに向けたU字状をなしており、通電により発熱する部分となる。
また、一対のリード部14,15は、発熱部12の両端12a,12bから、軸線方向HJのうち先端方向HSとは逆の基端方向HKに向けて、互いに平行に延びている。
発熱抵抗体11の一方のリード部14は、絶縁基体10の基端部10k付近に位置し、絶縁基体10の外周面10gに露出して、接続リング9と電気的に接続する電極部18を有している。また、他方のリード部15は、電極部18よりもやや先端方向HSに位置し、絶縁基体10の外周面10gに露出して、ヒータ保持部材4と電気的に接続する電極部19を有している。また、電極部18,19は、それぞれ軸線AXから見て、軸線方向HJに直交し且つリード部14,15が平行に並ぶ平行方向HHの外側に向けて延びている(
図2参照)。なお、
図2と直交する方向から見た
図3では、電極部18,19の記載を省略している。
【0038】
次に、本実施形態に係るセラミックヒータ2及びグロープラグ1の製造方法について説明する(
図4〜
図6参照)。
まず、第1成形体成形工程について
図4を参照して説明する。この工程では、抵抗体側金型30と外側金型31を用いて、焼成により絶縁基体10の一部となる第1成形体35を成形する。
【0039】
このうち、
図4中、下方に配置された外側金型31は、焼成により絶縁基体10の外周面10gの一部となる第1成形体35の外周面39(
図4中、下側面)を形成する金型である。
一方、
図4中、上方に配置された抵抗体側金型30は、焼成により発熱抵抗体11となる未焼成発熱抵抗体44のうち、その一方側の部位(
図3に示す発熱抵抗体11の概略下側半分の部位)の外形に適合した凹部38を、第1成形体35に形成する金型である。
なお、抵抗体側金型30は、この凹部38の形状に対応した凸部を有している。
【0040】
そして、これら抵抗体側金型30と外側金型31とを組み合わせることにより、2つの金型30,31の間に第1成形体用キャビティCAを構成する。また、外側金型31のうち、第1成形体用キャビティCAの先端側GS(
図4中、左側)には、充填口32、ゲート34、及び、これらを結び次述する第1基体用混合物KK1の通り道となる射出路SAを形成してある。
【0041】
次いで、図示しない射出装置を用いて、第1絶縁性セラミック粉末(主として窒化珪素質セラミック粉末)及び第1バインダを混合した第1基体用混合物KK1を加熱して流動体とした上で、充填口32から第1成形体用キャビティCAに向けて射出する。このようにして射出成形法によって、第1成形体用キャビティCA内に、その先端CASから基端CAKに向けて、第1基体用混合物KK1を射出、充填して、凹部38と半円筒状の外周面39を有する第1成形体35を成形する。この際、第1成形体35の成形と共に、充填口32からゲート34までの射出路SAには、第1成形体ランナ33が形成される。
【0042】
次に、抵抗体成形工程について
図5を参照して説明する。この工程では、まず外側金型31の内側に、先の第1成形体成形工程で成形した第1成形体35を残したままとする一方、抵抗体側金型30に代えて抵抗体成形金型40を用いる。
図5中、上方に配置された抵抗体成形金型40は、未焼成発熱抵抗体44のうち他方側の外形(
図3に示す発熱抵抗体11の概略上側半分)を形成する金型である。
そして、この抵抗体成形金型40と外側金型31とを組み合わせると共に、先に成形した第1成形体35を抵抗体成形型の一部として用いることにより、第1成形体35に形成した凹部38と抵抗体成形金型40との間に抵抗体用キャビティCBを構成する。また、抵抗体成形金型40のうち、抵抗体用キャビティCBの基端側GK(
図5中、右側)には、充填口41、ゲート43、及び、これらを結び次述する発熱体用混合物KHの通り道となる射出路SBを形成してある。
【0043】
次いで、図示しない射出装置を用いて、導電性セラミック粉末(導電成分として炭化タングステン粉末を含有する窒化珪素質セラミック粉末)及び第2バインダを混合した発熱体用混合物KHを加熱して流動体とした上で、充填口41から抵抗体用キャビティCBに向けて射出する。このようにして射出成形法によって、抵抗体用キャビティCB内に、その基端CBKから先端CBSに向けて、発熱体用混合物KHを射出、充填して、未焼成発熱抵抗体44を第1成形体35と一体に成形する。また、未焼成発熱抵抗体44の成形と共に、充填口41からゲート43までの射出路SBには、抵抗体ランナ42が形成される。
【0044】
これによって、未焼成発熱抵抗体44は、第1成形体35に概略半分(
図5中、下側)が埋められて、残り(
図5中、上側)が第1成形体35から露出かつ突出した形態に成形される。また、この未焼成発熱抵抗体44は、焼成によりリード部14,15となる未焼成リード部53,54を有し、先端側GSには、焼成により発熱抵抗体11の曲げ返し部13となる未焼成曲げ返し部45を有する。なお、高温とされた発熱体用混合物KHによって、未焼成発熱抵抗体44内には、抵抗体成形型の一部として用いた第1成形体35の表面の一部が溶けて、この第1成形体35をなす第1絶縁性セラミック粉末が、膜状(断面においてヒゲ状)をなして巻き込まれる場合がある。このため、焼成後のセラミックヒータ2の発熱抵抗体11中には、絶縁基体10から絶縁性セラミックが膜状に延びた膜状絶縁性セラミック部70が形成されることがある(
図8参照)。ただし、本実施形態では、抵抗体用キャビティCB内に、その基端CBKから先端CBSに向けて、発熱体用混合物KHを射出しているので、焼成前の未焼成発熱抵抗体44のうち、先端側GSの未焼成曲げ返し部45付近では、発熱体用混合物KHが比較的低温となる。このため、焼成後の発熱抵抗体11のうち、リード部14,15に比べて、曲げ返し部13を含む発熱部12には、上述の膜状絶縁性セラミック部70は、形成されにくい。
【0045】
その後、ランナ除去工程で、次の第2成形体成形工程の前に、抵抗体ランナ42と第1成形体ランナ33とを、ゲート43及びゲート34の部分から折り取って除去する。
【0046】
次に、第2成形体成形工程について
図6を参照して説明する。この工程では、まず互いに一体となった第1成形体35と未焼成発熱抵抗体44とを外側金型31に残したまま、抵抗体成形金型40に代えて第2成形体金型60を用いる。
図6中、上方に配置された第2成形体金型60は、焼成後に絶縁基体10の残部となる第2成形体64の外周面を形成する金型である。
そして、この第2成形体金型60と外側金型31とを組み合わせると共に、先に成形した第1成形体35及び未焼成発熱抵抗体44を第2成形体成形型の一部として用いることにより、これら第1成形体35及び未焼成発熱抵抗体44と第2成形体金型60との間に第2成形体用キャビティCCを構成する。また、第2成形体金型60のうち、第2成形体用キャビティCCの基端側GK(
図6中、右側)には、充填口61、ゲート63、及び、これらを結び次述する第2基体用混合物KK2の通り道となる射出路SCを形成してある。
【0047】
次いで、図示しない射出装置を用いて、第2絶縁性セラミック粉末(主として窒化珪素質セラミック粉末)及び第3バインダを混合した第2基体用混合物KK2を加熱して流動体とした上で、充填口61から第2成形体用キャビティCCに向けて射出する。このようにして射出成形法によって、第2成形体用キャビティCC内に、その基端CCKから先端CCSに向けて、第2基体用混合物KK2を射出、充填して、第2成形体64を第1成形体35及び未焼成発熱抵抗体44と一体に成形する。また、第2成形体64の成形と共に、充填口61からゲート63までの射出路SCには、第2成形体ランナ62が形成される。なお、本実施形態では、第1基体用混合物KK1と第2基体用混合物KK2は、同じ成分の絶縁性セラミック粉末及びバインダで構成されている。即ち、第1絶縁性セラミック粉末と第2絶縁性セラミック粉末、第1バインダと第3バインダは、それぞれ同じ成分で構成されている。
【0048】
この後、第2成形体ランナ62を除去した、第1成形体35、未焼成発熱抵抗体44及び第2成形体64からなる一体成形物65(
図7参照)を、公知の焼成工程によって焼成することにより、セラミックヒータ2を製造する。
【0049】
さらに、このセラミックヒータ2とは別に、
図1に示すグロープラグ1を構成する各部材(ヒータ保持部材4、主体金具本体5、金属端子軸6、など)を用意する。そして、公知のプラグ製造工程によって、これらの各部材を組み立てることにより、グロープラグ1が完成する。
【0050】
以上で説明したように、本実施形態のセラミックヒータの製造方法では、第1成形体成形工程で、予め第1成形体35を成形しておき、抵抗体成形工程では、未焼成発熱抵抗体44を成形する際の抵抗体成形型の一部に、第1成形体35を用いている。さらに、第2成形体成形工程では、第2成形体64を成形する際の第2成形体成形型の一部に、第1成形体35及び未焼成発熱抵抗体44を用いている。これにより、未焼成発熱抵抗体44は第1成形体35を基準に成形され、さらに、第2成形体64は、第1成形体35及び未焼成発熱抵抗体44を基準に成形される。このため、第1成形体35と未焼成発熱抵抗体44と第2成形体64のそれぞれの間で位置ずれが生じにくい。また、先に第1成形体35を成形し、この第1成形体35を抵抗体成形型の一部として、未焼成発熱抵抗体44を成形するので、未焼成発熱抵抗体44を配置する際の形崩れの問題も生じない。また、未焼成発熱抵抗体44は、第1成形体35と一体に成形されるので、未焼成発熱抵抗体44が金型から浮いてしまう問題も生じない。従って、従来の製造方法と比して、発熱性能の低下や絶縁性能の低下を生じにくい、信頼性の高いセラミックヒータ2を製造することができる。
【0051】
加えて、本実施形態では、抵抗体成形工程において、抵抗体成形型の一部に、第1成形体35を用いて、未焼成発熱抵抗体44を射出成形法により成形するので、未焼成発熱抵抗体44の成形型のうち、一部(第1成形体35に相当する部分)の金型を作製する必要がない。
このため、前述の従来技術に比して、セラミックヒータを容易かつ安価に製造することができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1成形体成形工程で、第1成形体35に、未焼成発熱抵抗体44の形態に適合した凹部38を形成している。これにより、抵抗体成形工程では、抵抗体成形型の一部に、この第1成形体35の凹部38を用いて、未焼成発熱抵抗体44を成形することができる。このため、未焼成発熱抵抗体44を第1成形体35と確実に一体化できるとともに、未焼成発熱抵抗体44と第1成形体35との位置ずれもより生じにくい。従って、さらに性能の低下を生じにくく、信頼性の高いセラミックヒータ2を製造することができる。
【0053】
焼成後のセラミックヒータ2の発熱抵抗体11中に、絶縁性セラミックが膜状に延びた膜状絶縁性セラミック部70が形成されることがある。この膜状絶縁性セラミック部70は、セラミックヒータ2の絶縁性能を低下させる危険性は無いが、曲げ返し部13を含む発熱部12内に、膜状絶縁性セラミック部70が形成されると、セラミックヒータ2の発熱性能に影響する虞がある。
これに対し、本実施形態では、抵抗体成形工程で、抵抗体成形型が構成する抵抗体用キャビティCB内に、その基端CBKから先端CBSに向けて、発熱体用混合物KHを射出して、未焼成発熱抵抗体44を成形している。
これにより、未焼成発熱抵抗体44の未焼成曲げ返し部45付近では、発熱体用混合物KHは比較的低温となるので、第1成形体35の表面が溶けにくく、未焼成曲げ返し部45中に第1絶縁性セラミック粉末が膜状に巻き込まれにくい。従って、焼成後のセラミックヒータ2の発熱性能の低下を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態では、外側金型31を、第1成形体成形工程、抵抗体成形工程、及び第2成形体成形工程のいずれの工程でも用いている。これにより、第1成形体35を成形した後に、外側金型31を交換せずに、未焼成発熱抵抗体44及び第2成形体64を成形できるので、金型交換に伴う位置ずれが生じない。また、金型交換に要する工数を削減できると共に、必要とする金型を少なくできるので、セラミックヒータ2を容易かつ安価に製造することができる。
【0055】
また、本実施形態では、未焼成発熱抵抗体44に加えて、第1成形体35及び第2成形体64も射出成形法により成形している。このため、第1成形体35、未焼成発熱抵抗体44及び第2成形体64の全てで、射出成形法を用いることととなり、製造設備の共通化やコストダウンを図ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、第2成形体成形工程で、第2成形体成形型が構成する第2成形体用キャビティCC内に、その基端CCKから先端CCSに向けて、第2基体用混合物KK2を射出して、第2成形体64を成形している。このため、第2成形体成形工程において、高温とされた第2基体用混合物KK2により、未焼成発熱抵抗体44の未焼成曲げ返し部45及びこの付近の第1成形体35の表面が溶けだすおそれを小さくできる。従って、焼成後のセラミックヒータ2の性能の低下を抑制できる。
【0057】
また、本実施形態に係るグロープラグ1の製造方向では、ヒータ製造工程で製造した、信頼性が高く、良好な特性を有するセラミックヒータ2を用いることができるので、グロープラグ1も、良好な特性を得ることができる。
【0058】
リード部14,15内に膜状絶縁性セラミック部70を有するセラミックヒータ2は、焼成前の成形過程において、絶縁性セラミックの粉末を含む第1成形体35を予め成形した後、これに接するように、導電性セラミックの粉末を含む未焼成発熱抵抗体44を射出成形することにより、製造される。
そして、この成形順序を採用した本実施形態のセラミックヒータ2では、これとは逆の順序で成形した従来のヒータに比して、性能が良好な信頼性の高いセラミックヒータ2が得られる。
【0059】
また、本実施形態に係るグロープラグ1では、このような信頼性の高いセラミックヒータ2を備えているので、グロープラグ1自身も信頼性を高くできる。
【0060】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、セラミックヒータ2及び絶縁基体10の外形を円柱状としたが、この他に、楕円柱状、長円柱状、四角柱などの多角柱状などでも良く、一部にくびれ部分や径大部分を有するものであっても良い。
また、上述の実施形態では、未焼成発熱抵抗体44のほか、第1成形体35及び第2成形体64も射出成形法により、成形したが、第1成形体35及び第2成形体64の成形方法は、粉末プレス、スリップキャスティングなどの射出成形法以外の成形方法を用いても良い。
また、上述の実施形態では、第1基体用混合物KK1及び第2基体用混合物KK2を共に、同じ絶縁性セラミック粉末(主として窒化珪素質セラミック粉末)及びバインダからなる構成とした。しかし、用いる絶縁性セラミック粉末は、同一の粉末を用いても良いし、製法や成分が異なる粉末を用いても良い。