(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5844630
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 65/22 20060101AFI20151224BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20151224BHJP
F16D 51/22 20060101ALI20151224BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20151224BHJP
【FI】
F16D65/22
F16D65/16
F16D51/22 A
F16D121:24
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-272923(P2011-272923)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124696(P2013-124696A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤田 浩教
(72)【発明者】
【氏名】石川 拡保
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理夫
【審査官】
谷口 耕之助
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−132616(JP,A)
【文献】
特開2009−133382(JP,A)
【文献】
特開2006−170241(JP,A)
【文献】
特開2000−52944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/22
F16D 51/22
F16D 65/16
F16D 121/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の懸架装置を構成するナックルと、
このナックルに支持固定されたバッキングプレートと、
このバッキングプレートの外側面に、このバッキングプレートの径方向の変位を可能に支持された一対のブレーキシューと、
これら両ブレーキシューを囲む状態で設けられて車輪と共に回転するドラムと、
前記バッキングプレートの外側面の一部で前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間部分に固定されて、これら両ブレーキシューのライニングと前記ドラムの内周面との摩擦に基いてこれら両ブレーキシューに加わるブレーキトルクを支承するアンカと、
電動モータと減速機とを組み合わせて成り、この電動モータへの通電に基いて、前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間隔を拡大させる電動アクチュエータユニットと、
を備えたドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置に於いて、
この電動アクチュエータユニットを前記バッキングプレートと別体に構成すると共に、この電動アクチュエータユニットを前記ナックルの内側面側に、前記バッキングプレートをこのナックルの外側面側に、それぞれ配置し、
前記アンカと、前記バッキングプレートと、前記ナックルと、前記電動アクチュエータユニットの取付フランジとの互いに整合する部分に形成した通孔若しくはねじ孔に挿通若しくは螺合したボルトにより、前記アンカと前記バッキングプレートと前記電動アクチュエータユニットとを前記ナックルに対し支持固定している、
事を特徴とするドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
前記バッキングプレート及び前記ナックルの一部で、前記電動アクチュエータユニットの出力部と整合する部分に第二の通孔が形成されており、この出力部と、前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間隔を拡縮する為の拡縮機構の入力部とを出力部材により連結している、請求項1に記載したドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータにより1対のブレーキシュー同士の間隔を拡げて制動力を発生させる、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置の改良に関する。具体的には、従前の構造をそのまま利用するか、少なくとも従前の構造に大きな変更を加える事なく実施可能で、しかも部品点数を抑える事ができる構造を実現する事により、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置の低コスト化を可能にするものである。尚、本発明の対象となるドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置には、ドラムブレーキを、車両を走行状態から減速乃至停止させる為のサービスブレーキ、及び、停止状態を保つ為の駐車ブレーキの両方に使用する構造は勿論、サービスブレーキはディスクブレーキにより行い、駐車ブレーキのみをドラムブレーキにより行う、ドラムインディスクブレーキも含む。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルを踏み込まずに車両を停止状態に維持する駐車ブレーキ装置をドラムブレーキに組み込む事が一般的に実施されている。又、駐車ブレーキを、電動モータを駆動源として、リンク機構等の増力機構を介して機械式に(非油圧式に)行う事も、例えば特許文献1〜2に記載される等により従来から知られており、一部の車両で実施されている。例えば、このうちの特許文献1には、サービスブレーキを油圧式のディスクブレーキとし、駐車ブレーキを、電動モータを駆動源とする機械式のドラムブレーキとする構造が記載されている。
【0003】
前記特許文献1〜2に記載されたドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置は、バッキングプレートの外側面に、このバッキングプレートの径方向の変位を可能に支持した1対のブレーキシュー同士の間隔を、電動アクチュエータユニットで拡張する様に構成している。この電動アクチュエータユニットは、電動モータと減速機とを組み合わせて成り、この電動モータへの通電に基き、リンク機構等の増力機構により、前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間隔を拡張する。
【0004】
前記特許文献1〜2に記載された構造を含めて、従来から知られているドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置は、電動アクチュエータユニットをバッキングプレートに対し支持固定している。そして、このバッキングプレートを、この電動アクチュエータユニットを固定した状態で、懸架装置を構成するナックルに結合固定する様にしている。この為、このナックルとして、前記電動アクチュエータユニットとの干渉を防止しつつ、前記バッキングプレートを結合固定できる形状のものを使用する必要である。この様な形状を有するナックルは特殊であり、新たに専用の物を造る必要がある為、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置を装着する事に関して、コストが嵩む事が避けられない。
尚、本発明を実施する場合に関連する構造を記載した刊行物として、上述した特許文献1〜2の他に、特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−504417号公報
【特許文献2】特開2011−99458号公報
【特許文献3】特開平10−325429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、既存のナックルをそのまま、若しくは簡単な加工を施すのみで利用し、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置を装着する事を可能にできる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置は、ナックルと、バッキングプレートと、一対のブレーキシューと、ドラムと、アンカと、電動アクチュエータユニットとを備える。
このうちのナックルは、車両の懸架装置を構成する。
又、前記バッキングプレートは、前記ナックルに支持固定されている。
又、前記両ブレーキシューは、前記バッキングプレートの外側面(車両への取付状態で、この車両の幅方向外側の面。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)に、前記バッキングプレートの径方向の変位を可能に支持している。
又、前記ドラムは、前記両ブレーキシューを囲む状態で設けられて、車輪と共に回転する。尚、本発明を、ドラムインディスクブレーキで実施する場合には、前記ドラムの外径側にディスクを、このドラムと一体に設けたものを使用する。
又、前記アンカは、前記バッキングプレートの外側面の一部で前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間部分に固定されている。そして、これら両ブレーキシューのライニングと前記ドラムの内周面との摩擦に基いてこれら両ブレーキシューに加わるブレーキトルクを支承する。この為に、これら両ブレーキシューを構成するウェブの周方向一端縁を、前記アンカの周方向両端面に係合させる。
又、前記電動アクチュエータユニットは、電動モータと減速機とを組み合わせて成る。そして、この電動モータへの通電に基いて、前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間隔を拡張させる。
【0008】
特に、本発明のドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置に於いては、この電動アクチュエータユニットを、前記バッキングプレートと別体に構成している。そして、この電動アクチュエータユニットを前記ナックルの内側面(車両への取付状態で、この車両の幅方向中央側の面。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)側に、前記バッキングプレートをこのナックルの外側面側に、それぞれ配置し、このバッキングプレートと前記電動アクチュエータユニットとを前記ナックルに対し支持固定している。
【0009】
この様な本発明のドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置を実施する場合、
具体的には、前記アンカと、前記バッキングプレートと、前記ナックルと、前記電動アクチュエータユニットの取付フランジとの互いに整合する部分に形成した、通孔若しくはねじ孔に挿通若しくは螺合したボルトにより、前記アンカと、前記バッキングプレートと、前記電動アクチュエータユニットとを、前記ナックルに対し支持固定する。
この様な
本発明のドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置を実施する場合に、より具体的には、
請求項2に記載した発明の様に、前記バッキングプレート及び前記ナックルの一部で、前記電動アクチュエータユニットの出力部と整合する部分に、第二の通孔を形成する。そして、この出力部と、前記両ブレーキシューの周方向一端部同士の間隔を拡縮する為の拡縮機構の入力部とを、出力部材により連結する。
【発明の効果】
【0010】
上述の様に構成する本発明によれば、従来から一般的に実施されていた、機械式の駐車ブレーキ装置を備えたドラムブレーキを装着していた従前のナックルを、そのまま、若しくはほぼそのまま利用できる。即ち、電動アクチュエータユニットの出力を一対のブレーキシュー同士の間隔を拡げる為の拡張機構に伝える為の出力部材を挿通する第二の通孔は、この拡縮機構自体が従前の(非電動式の)ものと同じであれば、元々設けられているので、それをそのまま利用できる。又、仮に前記第二の通孔が設けられていない場合でも、この第二の通孔を、前記従前のナックルに形成するのみで、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置を構成できる。要するに、従前の構造をそのまま利用するか、従前の構造に簡単な変更を加えるのみで、しかも、従前の構造を利用する為に特別な部品を用いる事なく実施可能である為、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置の低コスト化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態の1例を、ドラムを除き、アウタ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【
図2】同じく、インナ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【
図6】ナックル及び電動アクチュエータユニットを除いて、
図2と同方向から見た斜視図。
【
図9】電動アクチュエータユニットを取り出してアウタ側から見た状態で示す斜視図。
【
図10】同じくインナ側から見た状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜10は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の構造は、本発明をドラムインディスクブレーキに適用した場合に就いて示している。そして、本例のドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置は、ナックル1と、バッキングプレート2と、一対のブレーキシュー3、3と、ドラム(図示せず)と、アンカ4と、電動アクチュエータユニット5とを備える。
【0013】
このうちのナックル1は、車両の懸架装置を構成するもので、枠状のフレーム部6を備える。車輪は、このフレーム部6の外側面側に、図示しないハブユニット(車輪支持用複列転がり軸受ユニット)により、回転自在に支持される。このハブユニットは、非回転輪である外輪の外周面に固定した固定側フランジを前記フレーム部6に、ボルトにより結合固定し、回転輪であるハブ(内輪)の外周面のうちで前記外輪から軸方向外方に突出した部分に設けた回転側フランジに、図示しない車輪及び前記ドラムを結合固定する。この様な、前記ナックル1のフレーム部6に、これら車輪及びドラムを回転自在に支持する部分の構造及び作用は、例えば特許文献3等多くの刊行物に記載されており、又、従来から周知であるから、図示並びに詳しい説明は省略する。尚、図面には、本発明の特徴部分を分かり易く表す(ナックルアームの陰に隠れない様にする)為、ナックルアームを省略して、車輪を支持する為の、前記枠状のフレーム部6のみを記載している。
【0014】
前記バッキングプレート2は、鋼板等、十分な強度及び剛性を有する金属板にプレス加工を施す事により、外径寄り部分の一部が欠けた略円輪状に形成し、外周縁部に折り曲げ部を形成すると共に要部に段差部を形成する事で曲げ剛性を向上させている。尚、外径寄り部分の一部に形成した切り欠き部7は、サービスブレーキであるディスクブレーキを構成する、サポート又はキャリパを配置する為に形成している。更に、前記バッキングプレート2と、前記ナックル1のフレーム部6の内径寄り部分と、前記固定側フランジとの、円周方向複数箇所(図示の例では4箇所)の互いに整合する部分に、それぞれ通孔8a、8bを形成している。前記バッキングプレート2と、前記フレーム部6と、前記固定側フランジとは、前記各通孔8a、8bを挿通した、図示しないボルトとナットとを螺合し更に締め付ける事により、互いに結合固定する。
【0015】
又、前記両ブレーキシュー3、3は、それぞれが略三日月形のウェブ9と、このウェブ9の外周縁に沿って固定された裏板10と、この裏板10の外周面に添着固定されたライニング11とから成る。それぞれがこの様な構成を有する前記両ブレーキシュー3、3は、前記バッキングプレート2の外側面に、このバッキングプレート2の径方向の変位を可能に支持している。本例の構造は、駐車ブレーキ装置を構成するドラムブレーキとして、デュオサーボ型のものを使用している。この為に、前記両ブレーキシュー3、3のウェブ9、9の周方向一端縁(
図7の下側周端面)を、前記バッキングプレート2の外側面に固定した前記アンカ4の周方向両端面(
図7の左右両端面)に、当接(非制動時及び制動時に於けるアンカ側)若しくは近接対向(制動時に於ける反アンカ側)させている。又、前記両ブレーキシュー3、3のウェブ9、9の周方向他端縁(
図7の上側周端面)を、フローティングアンカ12の軸方向両端面に突き当てている。更に、前記両ブレーキシュー3、3のウェブ9、9同士の間にリターンスプリング13a、13bを掛け渡して、これら前記両ブレーキシュー3、3に、径方向内方に向いた(制動解除方向の)弾力を付与している。
【0016】
前記ドラムは、前記ハブユニットの回転側フランジに結合固定した状態で、前記両ブレーキシュー3、3を囲む状態で設けられ、車輪と共に回転する。本例の構造はドラムインディスクブレーキであるから、前記ドラムの外径側にディスクを、このドラムと一体に設けたものを使用する。そして、前記バッキングプレート2の切り欠き部7に配置したサポート又はキャリパに支持した1対のパッドを、前記ディスクを軸方向両側から挟む状態で配置している。サービスブレーキの作動時には、前記両パッドにより前記ディスクを両側から強く挟持する。
【0017】
又、前記アンカ4は、前記バッキングプレート2の外側面の一部で前記両ブレーキシュー3、3の周方向一端部同士の間部分に、2本のボルト14、14とナット15、15とにより固定している。本例の場合には、前記アンカ4と、前記バッキングプレート2と、前記ナックル1のフレーム部6とを、前記両ボルト14、14とナット15、15とにより結合固定する事に加えて、前記電動アクチュエータユニット5も、これら両ボルト14、14とナット15、15とにより、前記
フレーム部6に対し結合固定している。即ち、本例の構造の場合には、前述した特許文献1に記載された従来構造とは異なり、前記電動アクチュエータユニット5を前記バッキングプレート2に、直接は固定していない。これら電動アクチュエータユニット5とバッキングプレート2とは独立して構成し、前記
フレーム部6を挟んで組み合わせた状態で、前記両ボルト14、14と前記両ナット15、15とにより結合固定している。
【0018】
この為に、前記各部材4、2、6の互いに整合する部分にそれぞれ通孔16a、16b、16cを形成する事に加えて、前記電動アクチュエータユニット5のユニットケース17の取付フランジ18にも、前記各通孔16a、16b、16cと整合する、通孔16d、16dを形成している。前記アンカ4は、前記両ボルト14、14と前記両ナット15、15とにより前記フレーム部6に対し、前記バッキングプレート2を介して支持固定する事で、前記両ブレーキシュー3、3のライニング11、11と前記ドラムの内周面との摩擦に基いてこれら両ブレーキシュー3、3に加わるブレーキトルクを支承する。尚、前記取付フランジ18又は前記アンカ4にねじ孔を形成して、前記両ナット15、15を省略する事もできる。
【0019】
又、前記電動アクチュエータユニット5は、特許文献1に記載された従来構造と同様、
図4に示す様に、電動モータ19と歯車式の減速機20とを組み合わせて成る。そして、この電動モータ19への通電に基いて出力部材21を引っ張り、前記両ブレーキシュー3、3の周方向一端部同士の間隔を拡張させる機能を有する。前記出力部材21は、引っ張り方向の力に対する強度及び剛性を有するものであれば足り、ロッドの如き曲げ剛性の大きなものでも、或いはケーブルの如き可撓性を有するものでも良い。
【0020】
駐車ブレーキの作動時、前記電動アクチュエータユニット5が前記出力部材21を引っ張るのに伴って前記両ブレーキシュー3、3の周方向一端部同士の間隔を拡張させる為、これら両ブレーキシュー3、3の周方向一端部同士の間に、リンク式の拡張機構22を設けている。この拡張機構22は、ドラムブレーキの駐車ブレーキ装置の技術分野で従来から一般的に実施されている構造であり、1対のリンク腕23a、23bを枢軸24により揺動変位自在に結合して成る。又、これら両リンク腕23a、23bの基端縁(互いに反対側の端縁)に形成した係止凹部25a、25bに前記両ブレーキシュー3、3の周方向一端を突き当てると共に、これら両係止凹部25a、25bに隣接する部分を、前記両ボルト14、14の頭部26、26の端面に突き当てている。又、前記出力部材21の先端部を、一方(
図5の左側)のリンク腕23aの先端部に、連結軸27を介して結合している。更に、前記アンカ4と、前記バッキングプレート2と、前記ナックル1との互いに整合する位置に第二の通孔28a、28b、28cを形成し、これら各第二の通孔28a、28b、28cに、前記出力部材21を挿通している。尚、前記アンカ4にねじ孔を形成する場合には、前記両リンク腕23a、23bの一部を、このアンカ4のうちでねじ孔から外れた部分に当接させる。
【0021】
上述の様に構成する本例のドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置によれば、従来から一般的に実施されていた、機械式の駐車ブレーキ装置を備えたドラムブレーキを装着していた従前のナックル1を、そのまま、若しくはほぼそのまま利用できる。即ち、前記電動アクチュエータユニット5を前記バッキングプレート2と別体とし、これら電動アクチュエータユニット5とバッキングプレート2とにより前記ナックル1を挟んでいる為、このナックル1に、この電動アクチュエータユニット5を収められる(挿通できる)程に大きな孔を形成する必要はない。ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置を構成する為に、前記ナックル1に形成する必要がある孔は、前記出力部材21を挿通する為の第二の通孔28cのみで足りる。元々設けられていた非電動式の駐車ブレーキ装置の拡張機構が、前記拡張機構22と同様の構造であれば、前記第二の通孔28cは、前記ナックル1に元々設けられているので、これをそのまま利用できる。従って、従前の構造をそのまま利用できる。仮に、拡張機構の構造が異なる為、元々ナックル1に前記第二の通孔28cが設けられていなくても、この第二の通孔28cを形成するのみで足りる。従って、この場合でも、従前の構造に大きな変更を加える事なく、しかも、従前の構造を利用する為に特別な部品を用いる事なく実施可能である。従って、何れにしても、ドラムブレーキ式電動駐車ブレーキ装置の低コスト化を図れる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、図示の様なドラムインディスクブレーキに限らず、サービスブレーキ及び駐車ブレーキの両方をドラムブレーキで行う構造でも実施できる。又、ドラムブレーキの構造に関しても、図示の様なデュオサーボ型に限らず、リーディングトレーリング型やツーリーディング型等、他の構造を採用する事もできる。
【符号の説明】
【0023】
1 ナックル
2 バッキングプレート
3 ブレーキシュー
4 アンカ
5 電動アクチュエータユニット
6 フレーム部
7 切り欠き部
8a、8b 通孔
9 ウェブ
10 裏板
11 ライニング
12 フローティングアンカ
13a、13b リターンスプリング
14 ボルト
15 ナット
16a、16b、16c、16d 通孔
17 ユニットケース
18 取付フランジ
19 電動モータ
20 減速機
21 出力部材
22 拡張機構
23a、23b リンク腕
24 枢軸
25a、25b 係止凹部
26 頭部
27 連結軸
28a、28b、28c 第二の通孔