(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定構造体側の給電具からワイヤハーネスをスライド構造体まで配索したスライド構造体への給電用装置であって、該固定構造体側の給電具が、該ワイヤハーネスの一端部を支持して、該スライド構造体の開閉方向に回動自在な首振り部材と、該首振り部材を回動終端位置から該スライド構造体の閉じ方向に規定の角度まで回動させるように付勢する第一のばね部材とを備え、
前記固定構造体側の給電具が、前記首振り部材を回動始端位置から前記スライド構造体の開き方向に規定の角度まで回動させるように付勢する第二のばね部材を備えたことを特徴とするスライド構造体への給電用装置。
前記スライド構造体側に給電具が設けられ、該スライド構造体側の給電具が、前記ワイヤハーネスの他端部を支持して、該スライド構造体の開閉方向に回動自在な第二の首振り部材と、該第二の首振り部材を該スライド構造体の開き方向に回動させるように付勢する第三のばね部材とを備え、該第三のばね部材のばね力が前記第一のばね部材のばね力よりも小さく規定されたことを特徴とする請求項1記載のスライド構造体への給電用装置。
前記固定構造体側の給電具が、前記首振り部材に対して回動自在に配置された中間部材を備え、巻きばね状の前記第二のばね部材の一端が該首振り部材の係合部に固定され、該第二のばね部材の他端が該中間部材の第一の係合部に固定され、巻きばね状の前記第一のばね部材の一端が該中間部材の第二の係合部に固定され、該第一のばね部材の他端が該固定構造体側の給電具の固定側の取付部材に固定され、該首振り部材の係合部が該中間部材の円弧状の被係合部の一端から他端まで移動自在に係合したことを特徴とする請求項1又は2記載のスライド構造体への給電用装置。
前記第二のばね部材が前記第一のばね部材の径方向内側に配置され、該第一のばね部材と該第二のばね部材とが前記中間部材の内側に収容されたことを特徴とする請求項4記載のスライド構造体への給電用装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の
図15に示すスライド構造体への給電用装置にあっては、スライドドア81が
図15(a)の全閉から
図15(b)の全開まで開く間(半開時)において)、車両ボディ85側のハーネス支持具86からワイヤハーネス84がスライドドア閉じ方向に小さな半径で屈曲しつつ(全開時の屈曲部を符号84aで示す)、スライドドア側の首振り部材83にかけてハーネス長手方向に圧縮された状態で配索されるために、例えばスライドドア81の半開時ないし全開時においてワイヤハーネス84の屈曲部84aがスライドドア閉じ方向に大きく突出して、車両の乗降口87のステップ上ないしスカッフプレート上に露出して見栄えを損ない兼ねないと共に、乗降する乗員等に干渉し兼ねないという懸念や、スライドドア81の繰り返しの開閉に伴ってワイヤハーネス84の屈曲部84aの屈曲耐久性が低下し兼ねないという懸念があった。
【0009】
また、
図15(b)のようにスライドドア81が開いた際に、スライドドア側の首振り部材
83が弾性部材で
図15(a)の矢印E方向に(スライドドア閉じ方向に回動するように)付勢されるので、スライドドア81を全開から閉じる際に(特に半開時に)、スライドドア81と車両ボディ85との間でワイヤハーネス84がスムーズに略S字状に屈曲せずに座屈したり折れ曲がったり、車両ボディ85の乗降口87のステップ上ないしスカッフプレート上に大きく突出して露出し兼ねないという懸念があった。
【0010】
上記した各懸念は、自動車以外の車両のスライドドアや車両以外の例えば試験装置や加工装置等におけるスライドドア等といったスライド構造体に常時給電を行う場合においても生じ得るものである。スライド構造体に対して車両ボディや試験装置本体や加工装置本体を固定構造体と総称する。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、スライド構造体の開閉時に固定構造体側でワイヤハーネスを大きな半径でスムーズに屈曲させ、また、スライド構造体の開閉時にワイヤハーネスをスライド構造体と固定構造体との間でスムーズに略S字状に屈曲させることで、それぞれワイヤハーネスの屈曲耐久性を高めると共に、固定構造体の例えば乗降口にワイヤハーネスが露出したりすることを防いで、常時給電の信頼性を高めることのできるスライド構造体への給電用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るスライド構造体への給電用装置は、固定構造体側の給電具からワイヤハーネスをスライド構造体まで配索したスライド構造体への給電用装置であって、該固定構造体側の給電具が、該ワイヤハーネスの一端部を支持して、該スライド構造体の開閉方向に回動自在な首振り部材と、該首振り部材を回動終端位置から該スライド構造体の閉じ方向に規定の角度まで回動させるように付勢する第一のばね部材とを備え
、前記固定構造体側の給電具が、前記首振り部材を回動始端位置から前記スライド構造体の開き方向に規定の角度まで回動させるように付勢する第二のばね部材を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記構成により、スライド構造体が全閉から半開まで開いた際に、第一のばね部材が、固定構造体側の給電具の首振り部材のスライド構造体の開き方向の回動を規定の角度で強制的に停止させ、首振り部材と一体にワイヤハーネスの固定構造体寄りのハーネス部分が固定構造体からスライド構造体の開き方向に離間した状態を維持し、首振り部材を規定の角度位置に維持させる。これにより、スライド構造体の半開時に、固定構造体寄りのハーネス部分が大きな半径で屈曲し、ワイヤハーネスが固定構造体とスライド構造体との間でスムーズに略S字状に屈曲する。スライド構造体の半開から全開にかけて、ワイヤハーネスが首振り部材をスライド構造体の開き方向に引っ張って第一のばね部材の逆方向の付勢力に抗して正方向に回動させる。
【0015】
また、スライド構造体が全閉から半開まで開いた際に、第二のばね部材が正方向の付勢力で固定構造体側の給電具の首振り部材を回動始端位置から規定の角度まで強制的にスライド構造体の開き方向に回動させ、首振り部材と一体にワイヤハーネスの固定構造体寄りのハーネス部分を固定構造体からスライド構造体の開き方向に離間させ、第一のばね部材が逆方向の付勢力で首振り部材のそれ以上の回動を阻止して、首振り部材を規定の角度位置に維持させる。これにより、スライド構造体の半開時に、ワイヤハーネスの固定構造体寄りのハーネス部分が例えば固定構造体の乗降口(車両ボディの乗降口のステップ上ないしスカッフプレート上)に突出して露出することが防止されると共に、固定構造体寄りのハーネス部分が大きな半径で屈曲し、しかも、ワイヤハーネスが固定構造体とスライド構造体との間でスムーズに略S字状に屈曲する(第二のばね部材の付勢力でワイヤハーネスを略S字状に屈曲するように動機付けする)。スライド構造体の半開から全開にかけて、ワイヤハーネスが首振り部材をスライド構造体の開き方向に引っ張って第一のばね部材の逆方向の付勢力に抗して正方向に回動させる。
【0016】
請求項
2に係るスライド構造体への給電用装置は、請求項
1記載のスライド構造体への給電用装置において、前記スライド構造体側に給電具が設けられ、該スライド構造体側の給電具が、前記ワイヤハーネスの他端部を支持して、該スライド構造体の開閉方向に回動自在な第二の首振り部材と、該第二の首振り部材を該スライド構造体の開き方向に回動させるように付勢する第三のばね部材とを備え、該第三のばね部材のばね力が前記第一のばね部材のばね力よりも小さく規定されたことを特徴とする。
請求項3に係るスライド構造体への給電用装置は、固定構造体側の給電具からワイヤハーネスをスライド構造体まで配索したスライド構造体への給電用装置であって、該固定構造体側の給電具が、該ワイヤハーネスの一端部を支持して、該スライド構造体の開閉方向に回動自在な首振り部材と、該首振り部材を回動終端位置から該スライド構造体の閉じ方向に規定の角度まで回動させるように付勢する第一のばね部材とを備え、前記スライド構造体側に給電具が設けられ、該スライド構造体側の給電具が、前記ワイヤハーネスの他端部を支持して、該スライド構造体の開閉方向に回動自在な第二の首振り部材と、該第二の首振り部材を該スライド構造体の開き方向に回動させるように付勢する第三のばね部材とを備え、該第三のばね部材のばね力が前記第一のばね部材のばね力よりも小さく規定されたことを特徴とする。
【0017】
上記
請求項2の構成により、固定構造体側の給電具の首振り部材がワイヤハーネスの固定構造体寄りのハーネス部分と共に第二のばね部材の正方向の付勢力と第一のばね部材の逆方向の付勢力とで規定の角度位置に維持された状態で、スライド構造体側の給電具の第三のばね部材がその付勢力でスライド構造体側の給電具の第二の首振り部材をスライド構造体の開き方向に回動させる(第一のばね部材が首振り部材を逆方向の付勢力で強く押さえているので、首振り部材はスライド構造体の開き方向の移動を阻止され、第一のばね部材よりも弱い第三のばね部材の付勢力で第二の首振り部材がスライド構造体の開き方向に回動する)ことで、スライド構造体の半開時にワイヤハーネスが固定構造体とスライド構造体との間で略S字状にスムーズに屈曲する。
【0018】
請求項4に係るスライド構造体への給電用装置は、請求項
1又は
2記載のスライド構造体への給電用装置において、前記固定構造体側の給電具が、前記首振り部材に対して回動自在に配置された中間部材を備え、巻きばね状の前記第二のばね部材の一端が該首振り部材の係合部に固定され、該第二のばね部材の他端が該中間部材の第一の係合部に固定され、巻きばね状の前記第一のばね部材の一端が該中間部材の第二の係合部に固定され、該第一のばね部材の他端が該固定構造体側の給電具の固定側の取付部材に固定され、該首振り部材の係合部が該中間部材の円弧状の被係合部の一端から他端まで移動自在に係合したことを特徴とする。
【0019】
上記構成により、スライド構造体の全閉時に、固定構造体側の給電具の首振り部材の回動始端位置で首振り部材の係合部が中間部材の円弧状の被係合部の一端に当接して位置し、スライド構造体の半開時に、首振り部材が第二のばね部材の付勢力で規定の角度位置まで回動した時点で、首振り部材の係合部が中間部材の円弧状の被係合部に沿って移動して被係合部の他端に当接してそれ以上の係合部の移動が阻止され、スライド構造体の半開から全開にかけて、首振り部材と一体に中間部材が第一のばね部材の逆方向の付勢力に抗して正方向に回動する。固定側の取付部材に首振り部材が回動自在に支持される。
【0020】
請求項5に係るスライド構造体への給電用装置は、請求項4記載のスライド構造体への給電用装置において、前記第二のばね部材が前記第一のばね部材の径方向内側に配置され、該第一のばね部材と該第二のばね部材とが前記中間部材の内側に収容されたことを特徴とする。
【0021】
上記構成により、大径な第一のばね部材の内側に小径な第二のばね部材が配置され、両ばね部材が中間部材の内側に収容されることで、固定構造体側の給電具の構造がコンパクト化されると共に、両ばね部材が中間部材の内側で外部との干渉等なく安全に保護される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明によれば、固定構造体側の給電具の第一のばね部材の付勢力で、スライド構造体の半開時に固定構造体側の給電具の首振り部材を規定の角度位置に停止させて保つことで、固定構造体側でワイヤハーネスを大きな半径でスムーズに屈曲させ、しかもワイヤハーネスをスライド構造体と固定構造体との間でスムーズに略S字状に屈曲させて、座屈や折れ曲がりを防ぐことができ、それによって、ワイヤハーネスの屈曲耐久性を高めると共に、固定構造体の例えば乗降口にワイヤハーネスが露出したりすることを防いで、常時給電の信頼性を高めることができる。
【0023】
また、固定構造体側の給電具の第二のばね部材の正方向の付勢力と第一のばね部材の逆方向の付勢力とで、スライド構造体の半開時に固定構造体側の給電具の首振り部材を規定の角度位置に保つことで、固定構造体側でワイヤハーネスを大きな半径でスムーズに屈曲させ、しかもワイヤハーネスをスライド構造体と固定構造体との間でスムーズに略S字状に屈曲させて、座屈や折れ曲がりを防ぐことができ、それによって、ワイヤハーネスの屈曲耐久性を高めると共に、固定構造体の例えば乗降口にワイヤハーネスが露出したりすることを防いで、常時給電の信頼性を高めることができる。
【0024】
請求項
2又は3記載の発明によれば、第一のばね部材の付勢力で固定構造体側の給電具の首振り部材を固定構造体寄りのワイヤハーネス部分と共に規定の角度に維持させた状態で、第三のばね部材の付勢力でスライド構造体側の給電具の第二の首振り部材をスライド構造体寄りのワイヤハーネス部分と共にスライド構造体の開き方向に回動させることで、固定構造体とスライド構造体との間でワイヤハーネスを略S字状に一層スムーズに屈曲させて、座屈や折れ曲がりを一層確実に防ぐことができることができ、それによって、ワイヤハーネスの屈曲耐久性を高めると共に、固定構造体の例えば乗降口にワイヤハーネスが露出したりすることを防いで、常時給電の信頼性を高めることができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、固定構造体側の給電具において、回動自在な中間部材を介して第一のばね部材を中間部材と取付部材とに連結し、第二のばね部材を首振り部材と中間部材とに連結したことで、第二のばね部材の正方向の付勢力と第一のばね部材の逆方向の付勢力とをそれぞれ独立して確実に発揮させることができ、それによって、請求項
1又は2記載の発明の効果を確実に発揮させることができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、第一のばね部材の内側に第二のばね部材を配置し、両ばね部材を中間部材の内側に収容することで、固定構造体側の給電具の構造をコンパクト化することができると共に、両ばね部材を中間部材の内側で外部との干渉等なく安全に保護して両ばね部材の機能を確実に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜
図5は、本発明に係るスライド構造体への給電用装置の概要を示す説明図である。スライド構造体として自動車の左側のスライドドアを用い、固定構造体として自動車の車両ボディを用いた例で説明する。
【0029】
このスライド構造体への給電用装置1は、
図1の如くスライドドア2の全閉時に、車両ボディ3側の給電具4からスライドドア側の給電具5までワイヤハーネスのコルゲートチューブ6を、車両の前方外側に向けてやや斜め方向に略真直に引っ張って配索し、
図1のスライドドア2の全閉時から
図2のスライドドア2の半開時にかけて、車両ボディ側の給電具4の首振り部材7を軸部12を中心として第二のばね部材8(
図6参照)の正方向の付勢力F1で回動始端位置(
図3の0°の位置)から規定の角度αまでスライドドア開き方向(車両後方)に反時計回りに回動するように付勢し(規定の角度αで第二のばね部材8による首振り部材7の正方向の付勢を完了し)、
図3の如く、例えばスライドドア2を半開状態に維持した際に(ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6にスライドドア開閉方向の引張力等の外力が作用しない状態とした際に)、車両ボディ側の給電具4の首振り部材7を軸部12を中心に第一のばね部材9(
図6参照)の逆方向の付勢力F2で回動終端位置(
図3で90°の位置)から規定の角度αまで逆方向すなわち時計回りにスライドドア閉じ方向に回動するように付勢しており(規定の角度αで第一のばね部材9による首振り部材7の逆方向の付勢を完了し、首振り部材7は未だ第一のばね部材9で逆方向に付勢されていない)、車両ボディ側の給電具4の首振り部材7を第二のばね部材8の正方向の付勢力と第一のばね部材9の逆方向の付勢力との間で中立した状態とするものである。
【0030】
上記においては、
図3の規定の角度αで車両ボディ側の給電具4の首振り部材7が、第二のばね部材8の正方向の付勢力と第一のばね部材9の逆方向の付勢力とで共に付勢されていない(付勢を完了した)ものとして説明したが、例えば、首振り部材7が第二のばね部材8の付勢完了間際の正方向の付勢力(予加重)と第一のばね部材9の付勢完了間際の逆方向の付勢力(予荷重)とで向かい合う方向に付勢されて、両ばね部材8,9の付勢力のバランスがとれた状態で首振り部材7が規定の角度α位置で停止するようにしてもよい。
図1において、符号19,45は各給電具4,5における固定側の取付部材を示している。
【0031】
図3の例において、規定の角度αは概ね45°程度であり、首振り部材7の最大首振り角度は概ね90°程度である。
図3において、スライドドア2の全閉状態における首振り部材7の位置(回動始端位置)を0°、スライドドア2の全開状態における首振り部材7の位置(回動終端位置)を90°で示している。
【0032】
また、
図1〜
図5では首振り部材7の一部分である略板状のハーネスガイド部分10(
図6参照)を図示している。第二のばね部材8と第一のばね部材9とは後述するようなコイル巻きばねでもよく、板ばねやコイルばねや渦巻きばね等でもよい。
図1のスライドドア2の全閉時から
図2の如くスライドドア2を開くに伴って、開き初期時にスライドドア(スライド構造体)2は車両ボディ(固定構造体)3から車両外側に離間して車両ボディ3の外面に沿って後方へスライド移動する。
【0033】
図2の如く、スライドドア2の半開時に(
図2ではスライドドア2を
図1の閉じ状態からの全ストロークの半分よりも小さなストロークで移動して開いた半開状態を示しているが、全ストロークの半分のストロークで半開させた際も後述の内容は同様である)、第二のばね部材8の付勢力で車両ボディ側の首振り部材7が強制的にスライドドア開き方向に反時計回りに回動されることで、首振り部材7と一体的に車両ボディ3寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6aが給電具4を支点として車両ボディ3からスライドドア開き方向に反時計回りに離間して、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の中間(車両ボディ寄り)の屈曲部6bが車両の乗降口11の不図示のステップないしスカッフプレートから後方(スライドドア開き方向)に離間する。
【0034】
これにより、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の中間(車両ボディ寄り)の屈曲部6bがステップ上ないしスカッフプレート上に露出することが防止されると共に、
図1から
図4のスライドドア2の半開状態に移行する際に、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の中間(車両ボディ寄り)の屈曲部6bが大きな半径で屈曲して、スライドドア2の繰り返しの開閉に伴うワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の中間の屈曲部6bの屈曲耐久性が向上する。
【0035】
図4のスライドドア2の半開状態(スライドドア2の全ストロークのほぼ半分の位置まで後方に移動し、車両ボディ側の給電具4とスライドドア側の給電具5とがドア厚み方向すなわち車両左右方向にほぼ対向ないし接近した状態)において、車両ボディ側の給電具4の第一のばね部材9(
図6)のばね力(ばね定数)よりも弱いばね力(ばね定数)の第三のばね部材13(
図9参照)がスライドドア側の給電具5に予め設けられており(第一のばね部材9のばね力が第三のばね部材13のばね力よりも強く設定されており)、第三のばね部材13はスライドドア側の給電具5の首振り部材(第二の首振り部材)14をスライドドア開き方向に時計回りに回動させるように付勢力F3で付勢している。
【0036】
これにより、
図4のスライドドア2の半開時において、車両ボディ側の首振り部材
7は
図2の状態のまま規定の角度αの位置に維持され(車両ボディ3寄りのワイヤハーネス部分6aの後方への反時計回りの移動が阻止され)、スライドドア側の首振り部材14がスライドドア2寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6cと一体に矢印F3の如く後方に時計回りに回動して、スライドドア2と車両ボディ3との間でワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が略S字状にスムーズに屈曲する。
【0037】
これにより、
図4のスライドドア2の半開時において、スライドドア2と車両ボディ3との間でワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が座屈したり折れ曲がったりすることが防止され、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の座屈や折れ曲がりに伴うワイヤハーネスの損傷や、昇降口11のステップ上ないしスカッフプレート上にワイヤハーネスの座屈部分や折れ曲がり部分が突出して露出するといった不具合が防止される。
【0038】
そして、
図4のスライドドア2の半開状態からさらにスライドドア2を開き方向(後方)にスライド移動させることで、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6がスライドドア側の給電具5を支点に後方(スライドドア開き方向)に引っ張られ、その引張力が車両ボディ側の給電具4の第一のばね部材9(
図6)の逆向きの付勢力F2に打ち勝って、車両ボディ3寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6aと一体に車両ボディ側の首振り部材
7がスライドドア開き方向に反時計回りに回動移動して、
図5のスライドドア2の全開状態となる。
【0039】
図5において、例えば、第一のばね部材9(
図6)は付勢力F2の方向とは反対方向に押されて圧縮方向に撓み、第二のばね部材8(
図6)は付勢力F1(
図2)の方向に引っ張られて伸び方向に撓むことも可能である。ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が車両ボディ側の給電具4に向けて車両前方に引っ張られるので、第三のばね部材13(
図9)は付勢力F3に抗して付勢方向とは反対方向に引っ張られて撓み、スライドドア側の首振り部材14は軸部15を中心にスライドドア2寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6cと一体に前方に向けて反時計回りに回動する。
【0040】
本例の車両ボディ側の首振り部材7は略板状のハーネスガイド部材10を有しているので、ハーネスガイド部材10が車両ボディ3とは直交する方向にスライドドア厚み方向に突出し、ハーネスガイド部材10に沿う車両ボディ3寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6aを車両ボディ3からスライドドア2側に離間させて、車両ボディ側の給電具4の後方近傍の車両ボディ部分3aとワイヤハーネスのコルゲートチューブ6との干渉を防止する(この構成については本出願人が先に特願2011−277107号で提案済みである)。
【0041】
図1〜
図5においては、スライドドア2の全閉時から全開時までを説明したが、スライドドア2の全開時から全閉時にかけても、
図1〜
図5とは逆の作用(
図5〜
図1の動作)で同様な作用効果を奏する。
【0042】
図6は、上記車両ボディ側の給電具4の一実施形態を示すものである。
図1〜
図5と同様の作用をなす構成部分には同じ符号を付して説明する。
【0043】
この車両ボディ側の給電具4は、合成樹脂製のベース板17とケース本体18とで成る固定側の取付部材(アウタ部材ないしケース)19と、取付部材19の内側に首振り自在に軸支される合成樹脂製の首振り部材(インナ部材)7と、首振り部材7の一側面に固定される合成樹脂製の略板状のハーネスガイド部材10と、首振り部材7とケース本体18の天壁20との間に周方向(水平方向)回動自在に配置される合成樹脂製の略環状の中間部材21と、一端(下端側)のフック8aを首振り部材7のピン(係合部)22に固定し、他端(上端側)のフック8bを中間部材21のピン(第一の係合部)23に固定して、首振り部材7の上側の軸部12の周囲に配置される金属製の小径な第二の捩りコイルばね(ばね部材)8と、第二の捩りコイルばね8の径方向外側において中間部材21に収容され、一端(下端側)のフック9aを中間部材21のピン(第二の係合部)24に固定し、他端(上端側)のフック9bをケース本体18の不図示のピンに固定する金属製の大径な第一の捩りコイルばね(ばね部材)9と、を備えたものである。
【0044】
首振り部材7は、上下一対の相互に係止される略半筒状の分割首振り部材25,26で略筒状に構成され、首振り部材7の先端部の内側にワイヤハーネスの外装部材である断面長円形の合成樹脂製のコルゲートチューブ6の一端部が周方向のリブ
27と周溝28との係合で保持固定され、コルゲートチューブ6内に挿通された不図示の複数本の電線が首振り部材7の基端の開口30から外部(車両ボディ3側)に導出配索される。首振り部材7は垂直な上下の軸部12,31を有し、上側の軸部12は、中間部材21を水平に支持する台座面32の中央に設けられ、上側の軸部12の近傍において台座面32に、第二の捩りコイルばね8の一端部8aを引っ掛けて固定する垂直なピン22が上向きに突設されている。
【0045】
巻きばね状の第二の捩りコイルばね8は上端から下端にかけて時計回りにコイル巻きされ、巻きばね状の第一の捩りコイルばね9の内側に収容配置され、第一の捩りコイルばね9は上端から下端にかけて逆向きに
反時計回りにコイル巻きされ、両捩りコイルばね8,9の付勢方向は逆方向となっている。第二の捩りコイルばね8のばね力(ばね定数)よりも第一の捩りコイルばね9のばね力(ばね定数)が大きい。以下の説明において、「捩りコイルばね」は「ばね部材」と記載する。
【0046】
中間部材21は、小径な内周壁33と、大径で一部外周を略平らに形成した外周壁34と、両周壁33,34を連結し且つ内周壁33の内側まで延長された水平な底板35と、外周壁34と内周壁33との間で底板35から上向きに突出したピン24と、内周壁33の内側で底板35から上向きに突出したピン23とを備え、内周壁33の内側の底板部35の中央に、首振り部材7の上向きの軸部12を挿通させる孔部36(
図7参照)と、首振り部材7の上向きのピン22を首振り部材7と一体に規定の角度αで移動(回動)させるための円弧状の長孔(被係合部)37(
図7参照)とが設けられている。
【0047】
首振り部材7の下向きの軸部31は、取付部材19のベース板17の孔部ないし凹部38に回動自在に係合し、ベース板17は不図示の位置決めピンとボルトで車両ボディ3に水平に固定される。取付部材19のケース本体18は、水平な天壁20と垂直な前後の側壁39,40と、前後の側壁39,40を連結した下端側の水平な円弧状の壁部41とを備え、天壁20は、内側に中間部材21を周方向回動自在に収容する不図示の空間を有する。例えば天壁20の内側の空間の内周壁面が中間部材21の外周壁34の外周面を回動自在に支持していてもよい。ベース板17とケース本体18とは不図示の係止手段等で相互固定される。
【0048】
ハーネスガイド部材10は首振り部材7に係止手段等で固定される。首振り部材7から突出するハーネスガイド部材10の先端側半部10aは、コルゲートチューブ(ハーネス保護チューブ)6の外周面に沿った断面湾曲状の内面を有している。
【0049】
コルゲートチューブ6は、断面長円形の長径部
分を縦方向に配置し、
横方向に短径部分
42を配置し、上下の
長径部分にはチューブ長手方向にリブ43が形成されて、スライドドア2と車両ボディ3との間でワイヤハーネスの垂れ下がりを防いでいる。ワイヤハーネスはコルゲートチューブ6とその内側に挿通される不図示の複数本の電線とで構成される。コルゲートチューブ6は車両ボディ側の給電具4からスライドドア側の給電具5まで延長され、コルゲートチューブ6の他端部はスライドドア側の首振り部材(インナ部材)14に同様に保持される。
【0050】
図7(a)〜(c)は、車両ボディ側の給電具4の作用を示すものである。
図7(a)は車両左側のスライドドア2の全閉時の状態、
図7(b)はスライドドア2の半開時の状態、
図7(c)はスライドドア2の全開時の状態をそれぞれ示している。各図で向かって右側が車両前方、向かって左側が車両後方である。
【0051】
各図の如く、中間部材21の内側において小径な第二のばね部材8のコイル巻き部の内側に首振り部材7の上向きの軸部12が同軸に貫通され、第二のばね部材8の一端部8aが首振り部材7の上向きのピン22に固定され、第二のばね部材8の他端部8bが中間部材21のピン23に固定されている。また、大径な第一のばね部材9が中間部材21の内周壁33と外周壁34との間に位置して、第一のばね部材9の一端部9aが中間部材21のピン24に固定され、第一のばね部材9の他端部9bが取付部材19の天壁20側の不図示の下向きのピンに固定されている。取付部材19は車両ボディ3の乗降口11の下側(ステップないしスカッフプレートの近傍)に配置固定されている。
【0052】
図7(a)のスライドドア全閉状態で、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が車両前方に引っ張られ、第二のばね部材8が
反時計回りの付勢力(弾性力)に抗して首振り部材7と共に時計回りに回動して、首振り部材7が取付部材19の一方のストッパ部39a(
図8(a))に当接して停止し、第二のばね部材8の一端部8aを固定した首振り部材7のピン22が中間部材21の底板35の円弧状の長孔37の時計回り方向の一端部37aに当接して停止している。第一のばね部材9は例えば自由状態で弾性反力なく位置し、あるいは弱い予荷重で取付部材19に対して中間部材21を時計回りに少し回動させる方向に付勢している。
【0053】
図7(a)のスライドドア2(
図1)の全閉状態から
図7(b)の如くスライドドア2(
図4)を半開にすることで、首振り部材7が車両ボディ3寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6aと共に第二のばね部材8の付勢力で強制的に
反時計回り(スライドドア開き方向)に回動し、第二のばね部材8の一端部8aを固定した首振り部材7のピン22は中間部材21の底板35の長孔37に沿って
反時計回りに移動して長孔37の他端部37bに当接する。中間部材21は第一のばね部材9の初期付勢力によって
反時計回りの回動を阻止されており、
図7(a)から
図7(b)において中間部材が回動することはない。
【0054】
図7(b)のスライドドア2(
図4)の半開状態から
図7(c)の如くスライドドア2(
図5)を全開にすることで、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が車両後方に引っ張られて首振り部材7が
図7(a)の回動始端位置から
反時計回りに回動し、
図7(c)の首振り部材7の回動終端位置で首振り部材7が取付部材19の他方のストッパ部40a(
図8(b))に当接して停止する。首振り部材7の回動角度はストッパ部39a,40aの位置(間隔)を変えることで適宜設定可能である。
図7(c)の例において首振り部材7のハーネスガイド壁10はスライドドア2に直交する方向を向いている。
【0055】
図7(b)のスライドドア2の半開時から
図7(c)のスライドドア2の全開時にかけて、第一のばね部材9が首振り部材7を時計回りに強く付勢しているので、首振り部材7は第一のばね部材9の付勢力に抗して
反時計回りに回動する。第一のばね部材9は反時計回りに圧縮され、第二のばね部材8の一端部8aを固定したピン22が長孔37の他端部37bに当接しているので、中間部材21が第一のばね部材9を圧縮する方向に回動する。第二のばね部材8の他端部8bを固定したピン23は中間部材21に設けられているので、第二のばね部材8は圧縮や引張を生じることなく中間部材21と一体に第二のばね部材8の全体が回動する。
【0056】
図7(c)のスライドドア2の全開状態からスライドドア2を閉じることで、スライドドア2の全開から半開にかけて、首振り部材7が第一のばね部材9で時計回りに強く付勢されて時計回りに強制的に
図7(b)の半開状態まで回動する。このように、第二のばね部材8の付勢力F1で首振り部材7が
図7(a)の状態から
図7(b)の規定の角度αまで
反時計回りに回動し、第一のばね部材9の付勢力F2で首振り部材7が
図7(c)の状態から
図7(b)の規定の角度αまで時計回りに回動する。
【0057】
図8(a)(b)は、車両ボディ側の給電具4の外観を示すものであり、
図8(a)はスライドドア2(
図1)の全閉時の状態、
図8(b)はスライドドア2(
図5)の全開時の状態をそれぞれ示している。
【0058】
図8(a)(b)の如く、取付部材19の水平なベース壁17と天壁20との間の略扇状の空間内を首振り部材7が回動自在であり、取付部材19の前側且つ車両ボディ内側寄りの垂直な側壁39と、取付部材19の後側且つスライドドア寄りの垂直な側壁40とが首振り部材7に対する回動停止用のストッパ部39a,40aを兼ねている。
【0059】
図8(a)の如く、スライドドア2の全閉時に、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が車両前方に引っ張られて、首振り部材7がコルゲートチューブ6と共に第二のばね部材8(
図7)の
反時計回りの付勢力に抗して時計回りに回動して、回動始端位置で取付部材19の前側のストッパ部39aに当接して停止する。首振り部材7に固定された(一体でも可)ハーネスガイド部材10は、コルゲートチューブ6がスライドドア側に突出すること(コルゲートチューブ6が乗降口11のステップないしスカッフプレート上に露出すること)を防止している。
【0060】
図8(b)の如く、スライドドア2の全開時に、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が車両後方に引っ張られ、首振り部材7がコルゲートチューブ6と共に第一のばね部材9(
図7)の時計回りの付勢力に抗して
反時計回りに回動して、回動終端位置で取付部材19の後側のストッパ部40aに当接して停止する。ハーネスガイド部材10はスライドドア2に直交する方向を向いてコルゲートチューブ6をハーネスガイド部材10に沿ってスライドドア方向に突出させて、後方の車両ボディ部分3a(
図5)とコルゲートチューブ6との干渉を防止する。
【0061】
図9(a)(b)は、スライドドア側の給電具5の一実施形態を示すものである。
図9(a)はスライドドア2(
図1)の全閉時の状態、
図9(b)はスライドドア2(
図5)の全開時の状態をそれぞれ示している。
【0062】
このスライドドア側の給電具5は、スライドドア2のドアインナパネルに固定される合成樹脂製の取付部材(アウタ部材)45と、取付部材45に首振り自在に軸支された合成樹脂製の首振り部材14と、取付部材45に対して首振り部材14をスライドドア開き方向に時計回りに回動させる方向に付勢する巻きばね状の金属製の第三の捩りコイルばね(ばね部材)13とで構成されている。第三のばね部材13のばね力(ばね定数)は
図7の車両ボディ側の給電具4の第一のばね部材9のばね力(ばね定数)よりも弱く設定されている。また、本例において第三のばね部材13(のばね力)は
図7の車両ボディ側の給電具4の第二のばね部材8(のばね力)よりも大きく設定されている。
【0063】
取付部材45は、スライドドア2のインナパネルに沿って前後両側のブラケット46をボルトで締付固定する垂直な壁部47と、上下の水平な壁部48,49と、上下の各壁部48,49に設けられた不図示の軸部ないし軸受部とで構成されている。上側の壁部48にワイヤハーネスの不図示の複数本の電線をスライドドア側に導出させる孔部が設けられている。
【0064】
首振り部材14は上下分割式のもので、下側の分割首振り部材(14)に第三のばね部材13の上側の端部(フック部)13aを引っ掛けて固定するピン49が下向きに設けられている。第三のばね部材13の下側の端部(折り曲げ部)13bは
図9(b)の取付部材45の垂直な壁部47の前端下部に引っ掛けて固定されている。第三のばね部材13のコイル巻き部は上から下向きに時計回りに螺旋状に巻かれている。首振り部材14は、筒状の水平部分14aと、水平部分14aに連通する中空の垂直部分14bとで成り、垂直部分14bの上下に取付部材45の上下の軸部ないし軸受部に係合する軸受部ないし軸部が設けられている。軸部は環状であってもよい。
【0065】
図9(a)のスライドドア全閉時に、第三のばね部材13は首振り部材14を時計回りに後方(スライドドア開き方向)に付勢している、ないしは付勢を完了した自由状態となている。首振り部材14はワイヤハーネスのコルゲートチューブ6と共に車両ボディ側の給電具4を支点に後方に引っ張られて回動始端位置に位置する。
【0066】
図9(a)の全閉状態からスライドドア2を後方にスライドして開くに伴って、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が前方に引っ張られて首振り部材14がコルゲートチューブ部分6と共に第三のばね部材13の付勢力に抗して
反時計回りに回動終端位置まで回動して、
図9(b)のスライドドア2の全開状態となる。
図9(b)において、第三のばね部材13はコイル巻き部分が縮径方向に圧縮されて、首振り部材14を時計回りに回動させるように付勢している。
【0067】
図10〜
図14は、スライドドア2を全閉から半開を経て全開まで開く際におけるスライド構造体への給電用装置1の作用を順に示すものである。
図10はスライドドア2の全閉状態、
図12はスライドドア2の半開状態(スライドドア2の全ストロークのほぼ半分の位置まで開いた状態)、
図11は
図10と
図12との間のほぼ1/4開き状態、
図14はスライドドア2の全開状態、
図13は
図12と
図14との間のほぼ3/4開き状態をそれぞれ示している。
【0068】
各図において、鎖線6’は、車両ボディ側の給電具4の第二のばね部材8と第一のばね部材9とにより段階的な付勢すなわち角度規制をせずに(第二のばね部材8や中間部材21を用いずに)、第一のばね部材9で車両ボディ側の首振り部材7を時計回りにスライドドア閉じ方向に付勢し、第三のばね部材13でスライドドア側の首振り部材14を時計回りにスライドドア開き方向に付勢した状態を比較のために図示している。
【0069】
図10のスライドドア2の全閉時に、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が車両ボディ側の給電具4を支点に前方(スライドドア閉じ方向)に引っ張られ、車両ボディ側の給電具4の首振り部材7が軸部12を中心に時計回りに前方に傾動し、首振り部材7のハーネスガイド部材10に沿ってワイヤハーネスのコルゲートチューブ6がスライドドア側の給電具5(
図11)に向けて斜め前方にほぼ真直に配索される。
【0070】
首振り部材7は第二のばね部材8(
図7)で反時計回りに付勢されているので、第二のばね部材8を用いない鎖線6’のハーネス軌跡に比べて、スライドドア2(
図11)の開き初期時に車両ボディ3寄りのワイヤハーネスのコルゲートチューブ部分6が車両ボディ3から離れる方向に回動しやすくなって、スライドドア半開時(
図12)におけるワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の略S字状の屈曲動作の動機付けがなされている。
【0071】
図11のスライドドア2の1/4半開時に、車両ボディ側の給電具4の第二のばね部材8(
図7)がその付勢力で軸部12を中心に首振り部材7を反時計回りにスライドドア開き方向に強制的に回動させ、首振り部材7からワイヤハーネスのコルゲートチューブ部分6aがスライドドア2の厚み方向に略直交する方向に略真直に近い大きな半径で湾曲状に伸びつつ後方に押し下げられることで、ワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6aが車両ボディ3の乗降口11のステップ上ないしスカッフプレート上に突出して露出する懸念や、コルゲートチューブ部分6aの屈曲耐久性が低下する懸念が解消される。第二のばね部材8を用いない鎖線6’のハーネス軌跡に比べて車両ボディ寄りのコルゲートチューブ部分6aが一層真直に近い形状に大きな半径で湾曲している。
【0072】
図11において、スライドドア側の給電具5の第三のばね部材13(
図9)は、ワイヤハーネスのスライドドア2寄りのコルゲートチューブ部分(ワイヤハーネス部分)6dを軸部15を中心に首振り部材14と共に後方に時計回りに回動させて、車両ボディ側のコルゲートチューブ部分6aがスライドドア2の厚み方向に略直交する方向に略真直に伸びつつ後方に押し下げられる動作を促進(助長)させている。
【0073】
図12のスライドドア2の1/2半開時に、車両ボディ側の給電具4の第一のばね部材9(
図7)が強い初期ばね力(撓み初期時ないし撓む前のばね力)で首振り部材7を時計回りに前方に押して、首振り部材7の後方への反時計回りの回動を阻止しているので、スライドドア側の給電具5の第三のばね部材13(
図9)の付勢力で首振り部材14が後方へ時計回りに回動した状態を維持する。
【0074】
これによって、車両ボディ側の給電具4とスライドドア側の給電具5との間でワイヤハーネスのコルゲートチューブ6がスムーズに且つ綺麗に略S字状に屈曲して、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の座屈や折れ曲がりが防止されて、ワイヤハーネスの屈曲耐久性が高まると共に、スライドドア2の開閉操作力が低減されてスライドドア2の開閉操作性が高まる。第二のばね部材8を用いない鎖線6’のハーネス軌跡に比べて、車両ボディ3寄りのコルゲートチューブ部分(ワイヤハーネス部分)6aが大きな半径でスムーズに屈曲し、第一〜第三のばね部材8,9,13の作用で、両給電具4,5の間でワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が一層後方に押し下げられて、乗降口11のステップ上ないしスカッフプレート上へのコルゲートチューブ部分6aの露出が防止されている。
【0075】
図13のスライドドア2の3/4半開時に、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6は後方(スライドドア側の給電具5の方向)に引っ張られるが、車両ボディ側の給電具4の第一のばね部材9(
図7)の力がスライドドア側の給電具5の第三のばね部材13(
図9)の力よりも強いので、第三のばね部材13の付勢に抗してスライドドア側の給電具5の首振り部材14がワイヤハーネスのコルゲートチューブ6に引っ張られて反時計回りに前方へ回動し、車両ボディ側の給電具4の首振り部材7は
図12の1/2半開時における回動位置を維持し、鎖線6’のハーネス軌跡に比べて、第二のばね部材8の付勢力で車両ボディ3寄りのコルゲートチューブ部分6aを大きな半径で屈曲させ、且つ後方へ押し下げて、コルゲートチューブ6の屈曲耐久性を高めると共に、乗降口11のステップ上ないしスカッフプレート上へのコルゲートチューブ部分6aの突出(露出)を防ぐ。
【0076】
また、
図13において、スライドドア寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6eがスライドドア側の給電具5の首振り部材14と共に第三のばね部材13で後方へ弛みなく回動付勢されることで、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6の中間部分6fと車両ボディ部分3aとの干渉が防止される。
【0077】
図14のスライドドア2の全開時に、ワイヤハーネスのコルゲートチューブ6が後方にさらに引っ張られて、車両ボディ側の給電具4の首振り部材7が第一のばね部材9(
図7)の付勢に抗して反時計回りに後方に回動し、車両ボディ3寄りのワイヤハーネス部分(コルゲートチューブ部分)6aはハーネスガイド部材10に沿ってスライドドア2の厚み方向に突出して、後方の車両ボディ部分3aとの干渉が阻止される。スライドドア側の給電具5の首振り部材14は第三のばね部材13(
図9)の付勢に抗して
図13のスライドドア2と直交する位置からさらに前方に反時計回りに回動している。本例のハーネスガイド部材10はスライドドア2に直交する位置よりも少し後方まで回動して停止している。
【0078】
図10〜
図14においては、スライドドア2の全閉時から全開時までを説明したが、スライドドア2の全開時から全閉時にかけても、
図10〜
図14とは逆の作用(
図14〜
図10の動作)で同様な作用効果を奏する。
【0079】
なお、上記実施形態においては、車両ボディ側の給電具4に第二のばね部材8を設けたが、例えば、スライドドア側の給電具5の第三のばね部材13のばね力F3が車両ボディ側の給電具4の首振り部材7等の回動時の摩擦抵抗力よりも十分に大きければ、スライドドア2の開き初期時に車両ボディ側の給電具4の首振り部材7を強制的にほぼ0°から規定の角度α(45°程度)まで開く力が作用するので、条件によっては車両ボディ側のほぼ0°から規定の角度α(45°程度)を規制する第二のばね部材8を省略する(付勢力F1=0とする)ことも可能である。その場合、
図6の中間部材21は第二のばね部材8を省略してそのまま使用可能である。
【0080】
スライドドア2の開き初期時に車両ボディ側の首振り部材7を確実に且つスムーズにスライドドア開き方向に反時計回りに回動させるためには、第二のばね部材8を用いることが好ましい。首振り部材7をほぼ0°から規定の角度α(ほぼ45°)まで正方向に付勢する第二のばね部材8と、首振り部材7をほぼ90°から規定の角度α(ほぼ45°の位置)まで逆方向に付勢する第一のばね部材9とのなす作用効果と、その第一のばね部材9のばね力を第三のばね部材13のばね力よりも強くしたことによる作用効果は、第二のばね部材8を省略した場合よりも一層確実に発揮される。
【0081】
また、上記実施形態においては、ワイヤハーネスのハーネス保護チューブ(外装部材)として、水平方向に屈曲自在なコルゲートチューブ6を用いた例で説明したが、スライドドア2と車両ボディ3との間でワイヤハーネスの垂れ下がりを防ぐことができれば、あるいはワイヤハーネスの全長が短くて垂れ下がりの心配のない場合は、コルゲートチューブ6以外のハーネス保護チューブや他の垂れ下がり防止部材等を用いることも可能である。上記実施形態においては、コルゲートチューブを符号6で示したが、ワイヤハーネス自体(例えばハーネス保護チューブと複数本の電線とで成る)を符号6で示してもよい。