(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5844670
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】医療用具セット
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20151224BHJP
A61B 50/30 20160101ALI20151224BHJP
【FI】
A61M1/28
A61B19/02 505
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-70142(P2012-70142)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-198682(P2013-198682A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】館田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】小山 義彦
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−076213(JP,A)
【文献】
特開2007−089599(JP,A)
【文献】
米国特許第05449071(US,A)
【文献】
実開平01−130348(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3000208(JP,U)
【文献】
実開昭56−031845(JP,U)
【文献】
特表2011−526810(JP,A)
【文献】
実開昭60−058144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
A61B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、段差と、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられていることを特徴とする医療用具セット。
【請求項2】
前記支持部は、前記底部の深さの深い方の部位に設けられている請求項1に記載の医療用具セット。
【請求項3】
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記小容器は、前記容器本体を変形させることにより前記口部から液体を吸引可能なものであり、前記支持部により前記口部が支持された状態で、前記収納空間に液体を貯留したとき、該液体を吸引可能であることを特徴とする医療用具セット。
【請求項4】
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記小容器は、前記口部に装着された多孔質体を有し、
前記多孔質体は、弾性体であり、前記口部を覆うように該口部に装着されており、
前記多孔質体が変形した状態で、前記支持部により前記口部が支持されることを特徴とする医療用具セット。
【請求項5】
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記小容器は、前記口部に装着された多孔質体を有し、
前記口部は、前記多孔質体を前記容器本体に対して固定する固定部を有することを特徴とする医療用具セット。
【請求項6】
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記容器は、前記壁部により複数の収納空間に仕切られており、
前記複数の収納空間のうちの1つが前記小容器が収納される収納空間であることを特徴とする医療用具セット。
【請求項7】
前記複数の収納空間のうち、前記小容器が収納される収納空間の他の収納空間には、腹膜透析に用いる医療用チューブを交換する際に用いる医療用具が収納される請求項6に記載の医療用具セット。
【請求項8】
前記支持部は、前記底部から突出し、前記口部に挿入される突起である請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用具セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、腹膜透析による治療法は、人工腎臓による透析法に比べて、装置・器具が小型で簡易であり、治療費も安いこと、患者の負担が少ないこと等の理由から、注目されている。
【0003】
この腹膜透析法のうち、特に連続的携帯式腹膜透析法(continuous ambulatory peritoneal dialysis,以下、「CAPD」という)は、患者自身が自宅や職場で透析液のバッグの交換を行うことができるため、社会復帰がし易く、大いに注目されている。
【0004】
このCAPDは、患者の腹腔内にカテーテルチューブ(腹膜カテーテル)を留置し、このカテーテルチューブの体外端にトランスファーチューブ(医療用チューブ)を接続し、これに透析液の入った透析液バッグのバッグチューブを接続し、各チューブを通じて透析液バッグ内の透析液を腹腔内に注液し、所定時間透析を行った後、腹腔内の透析液排液を前記各チューブを通じて、排液バッグ内に回収するものである。なお、各チューブ同士の接続は、両チューブの端部にそれぞれ装着された雄、雌コネクタの嵌合により無菌的に行われる。
【0005】
ここで、トランスファーチューブは、所定期間毎、例えば、6箇月毎に、新しいものに交換する必要がある。トランスファーチューブを交換する際は、古いトランスファーチューブのコネクタをカテーテルチューブのコネクタから取り外し、カテーテルチューブのコネクタを消毒液で消毒した後、そのカテーテルチューブのコネクタに新しいトランスファーチューブのコネクタを接続する。前記カテーテルチューブのコネクタの消毒は、スポイトにより消毒液を吸入し、そのスポイトを用いて行う。
【0006】
このようなトランスファーチューブの交換に用いられる医療用具、例えば、ドレープ、ガーゼ、レンチ、スポイト等は、所定の容器に収納されている(例えば、非特許文献1参照)。なお、前記容器と、その容器に収納された各医療用具とで、医療用具セットが構成される。
【0007】
しかしながら、前記従来の医療用具セットでは、スポイトが容器内で固定されていないので、スポイトが容器内で移動し、そのスポイトが傷付いたり、また、包材から容器を取り出した際に、スポイトが容器内から落下するおそれがある。
【0008】
また、スポイトを収納する収納空間は、容器の底面に対して傾斜した傾斜面を持ち、その傾斜面にスポイトの把持部が接した状態で、スポイトが収納されている。このため、スポイトの収納空間に貯留した消毒液をスポイトで吸入する際、傾斜面に接している把持部を手で摘み上げてから消毒液を吸入するので、その作業に手間がかかるという問題がある。さらに、把持部が傾斜面に接した状態でスポイトが収納されているため、消毒液を収納空間に貯留する際に、消毒液が傾斜面を介して把持部に付着し、スポイトを把持した際に手から滑り落ちるおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】コンパクト交換トレイ操作手順(Baxter)(バクスター株式会社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、容易かつ迅速に、小容器内に液体を吸入することができ、また、容器内で小容器が移動することを防止することができる医療用具セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(
8)の本発明により達成される。
(1) 底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、
段差と、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられていることを特徴とする医療用具セット。
【0013】
(
2) 前記支持部は、前記底部の深さの深い方の部位に設けられている上記(
1)に記載の医療用具セット。
【0014】
(
3)
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記小容器は、前記容器本体を変形させることにより前記口部から液体を吸引可能なものであ
り、前記支持部により前記口部が支持された状態で、前記収納空間に液体を貯留したとき、該液体を吸引可能であることを特徴とする医療用具セット。
【0016】
(
4)
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記小容器は、前記口部に装着された多孔質体を有
し、
前記多孔質体は、弾性体であり、前記口部を覆うように該口部に装着されており、
前記多孔質体が変形した状態で、前記支持部により前記口部が支持されることを特徴とする医療用具セット。
【0018】
(
5)
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記小容器は、前記口部に装着された多孔質体を有し、
前記口部は、前記多孔質体を前記容器本体に対して固定する固定部を有する
ことを特徴とする医療用具セット。
【0019】
(
6)
底部と、該底部に立設された壁部とを有し、前記底部と前記壁部とで形成された収納空間を備える容器と、
端部に液体が出入りする口部を有し、可撓性を有する容器本体を備える小容器とを有し、
前記底部には、前記口部が前記底部に臨むように前記底部に対して前記小容器が起立した状態で、前記口部を支持する支持部が設けられており、
前記容器は、前記壁部により複数の収納空間に仕切られており、
前記複数の収納空間のうちの1つが前記小容器が収納される収納空間である
ことを特徴とする医療用具セット。
【0020】
(
7) 前記複数の収納空間のうち、前記小容器が収納される収納空間の他の収納空間には、腹膜透析に用いる医療用チューブを交換する際に用いる医療用具が収納される上記(
6)に記載の医療用具セット。
(8) 前記支持部は、前記底部から突出し、前記口部に挿入される突起である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の医療用具セット。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容器の支持部により小容器の口部が支持されているので、容器内で小容器が移動してしまうことを防止することができ、これにより、小容器が傷付いてしまうことを防止することができる。
【0022】
また、小容器は、その口部が容器の底部に臨むように底部に対して小容器が起立した状態で支持されているので、小容器により液体を吸入する際は、その小容器が前記起立したままの状態で、収納空間に液体を貯留し、小容器により液体を吸入することができる。このように、容易かつ迅速に、小容器により液体を吸入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の医療用具セットの実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す医療用具セットの容器を示す平面図である。
【
図3】
図1に示す医療用具セットのスポイトを示す図である。
【
図4】
図1に示す医療用具セットの使用例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の医療用具セットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療用具セットの実施形態を示す断面図、
図2は、
図1に示す医療用具セットの容器を示す平面図である。
図3は、
図1に示す医療用具セットのスポイトを示す図であって、
図3(a)は、側面図、
図3(b)は、縦断面図である。
図4は、
図1に示す医療用具セットの使用例を説明するための断面図である。なお、
図1および
図4は、それぞれ、医療用具セットについての
図2中のA−A線での断面図である。
【0026】
以下では、
図2中の紙面表側を「上」、紙面裏側を「下」、左側を「左」、右側を「右」として説明を行う。
【0027】
図1〜
図4に示す医療用具セット1は、腹膜透析において用いるもの、具体的には、腹膜透析に用いる医療用チューブを交換する際に用いるものである。
【0028】
図1に示すように、医療用具セット1は、容器2と、容器2に収納されるスポイト(小容器)3等の各医療用具とを備えている。なお、
図1では、スポイト3以外の医療用具は、図示されていない。
【0029】
まずは、スポイト3について説明する。
図3に示すように、スポイト3は、可撓性を有するスポイト本体(容器本体)4と、多孔質体、すなわち多孔質の弾性体として、スポンジ5とを備えている。なお、多孔質体は、弾性を有するものが好ましいが、弾性を有していないもの、すなわち硬質のものであってもよい。
【0030】
スポイト本体4は、後述する口部41からその内腔に液体を吸引して貯留し、また、内腔に貯留された液体を口部41から排出する機能を有している。この液体の吸引および排出は、それぞれ、スポイト本体4を変形させることによりなされる。
【0031】
スポイト本体4は、その先端部に液体が出入りする口部41を有している。この口部41は、液体が出入りする部位であり、スポイト本体4の口部41よりも基端側の部位に比べて、その外径および内径がそれぞれ縮径している。なお、前記液体としては、特に限定されないが、本実施形態では、例えば、消毒液である。
【0032】
また、口部41は、消毒を行う部材、本実施形態では、患者の腹腔内に留置されたカテーテルチューブの体外端に設けられたコネクタ等が、後述するスポンジ5を介して挿入し得るようになっている。
【0033】
また、スポイト本体4の各側面、すなわち、
図3中の紙面に対して表側および裏側の面は把持部を構成している。そして、この把持部には、それぞれ、スポイト本体4の軸方向と直交する方向に延在する複数のリブ42が形成されている。この各リブ42は、スポイト本体4の軸方向に沿って、等間隔で並設されている。この各リブ42は、滑り止め手段であり、スポイト本体4を把持した際、各リブ42により、スポイト本体4が滑ってしまうことを防止することができる。
【0034】
なお、スポイト本体4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような可撓性を有する各種樹脂材料等が挙げられる。
【0035】
スポンジ5は、スポイト本体4の口部41を覆うように口部41に装着されている。本実施形態では、スポンジ5は、口部41に嵌合している。
【0036】
また、スポンジ5の中央部には、スポイト本体4の軸方向に沿って延在する貫通孔51が形成されている。この貫通孔51には、消毒を行う部材や、後述する容器2の突起26等が挿入される(
図1参照)。
【0037】
なお、スポイト3は、後述する容器2の突起26によりその口部41が支持された状態で、後述する容器2の収納空間23に消毒液を貯留したとき、前記スポンジ5を介して、その消毒液を吸引することができるようになっている。
【0038】
スポンジ5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエーテルポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる発泡体等が挙げられる。
【0039】
また、前記スポイト本体4の口部41の先端部の外周部には、リブ411が形成されている。リブ411は、口部41の周方向に沿って全周に亘って延在している。すなわち、リブ411は、環状をなしている。
【0040】
このリブ411は、スポンジ5をスポイト本体4に対して固定する機能を有している。したがって、リブ411は、スポンジ5をスポイト本体4に対して固定する固定部を構成している。具体的には、スポイト3の口部41、すなわち、スポンジ5の貫通孔51に後述する容器2の突起26や、消毒を行う部材が挿入されている状態から、それを引き抜く際、リブ411により、口部41からスポンジ5が離脱してしまうことを防止することができる。
【0041】
以上説明したスポイト3は、次のように使用される。すなわち、そのスポイト本体4の口部41からスポイト本体4内に、液体、本実施形態では、消毒液を吸入する。次いで、スポイト3は、そのスポイト本体4内に消毒液を貯留した状態で、スポンジ5の貫通孔51に消毒を行う部材を挿入して、消毒を行なう。消毒を行う際は、例えば、前記部材に対してスポイト3を、スポイト本体4の軸を中心に、正逆両方向に交互に所定角度ずつ複数回、回転させる。このように消毒を行なうことで、前記部材に消毒液を十分に接触させることができる。
【0042】
消毒を行う部材としては、特に限定されないが、本実施形態では、患者の腹腔内に留置されたカテーテルチューブ(腹膜カテーテル)の体外端に設けられたコネクタ等である。すなわち、前記カテーテルチューブのコネクタには、トランスファーチューブ(医療用チューブ)のコネクタが着脱自在に接続されており、そのトランスファーチューブを交換する際、スポイト3を用いてカテーテルチューブのコネクタを消毒する。
【0043】
次に、容器2について説明する。
図1および
図2に示すように、容器2は、底部21と、底部21に立設された壁部22とを有している。容器2の形状は、本実施形態では、平面視で、長方形をなしている。なお、容器2の形状は、長方形に限定されず、この他、例えば、平面視で、正方形等が挙げられる。
【0044】
そして、容器2は、底部21と壁部22とで形成された3つの収納空間23、24および25を備えている。すなわち、容器2の内部は、壁部22により、収納空間23、24および25の3つの空間に仕切られている。収納空間23は、
図2中左下側に配置され、収納空間24は、
図2中左上側に配置され、収納空間25は、
図2中右側に配置されている。
【0045】
また、収納空間23および24と、収納空間25とを仕切る壁部22の途中の上部には、欠損部27が形成され、その欠損部27には、収納空間28が形成されている。すなわち、収納空間28は、収納空間23と、収納空間25との間に配置されている。
【0046】
各収納空間23、24、25および28の形状は、本実施形態では、それぞれ、平面視で、長方形をなしている。なお、各収納空間23、24、25および28の形状は、それぞれ、長方形に限定されず、この他、例えば、平面視で、正方形等の四角形や、三角形、五角形等の多角形や、円形、楕円形等が挙げられる。
【0047】
各収納空間23、24、25および28には、それぞれ、所定の医療用具等、本実施形態では、腹膜透析に用いられるトランスファーチューブ、すなわち、患者の腹腔内に留置されたカテーテルチューブの体外端にコネクタを介して着脱自在に接続されたトランスファーチューブを交換する際に使用する医療用具等が収納される。
【0048】
すなわち、収納空間23には、例えば、スポイト3、図示しないガーゼ等が収納される。また、収納空間24には、例えば、図示しないガーゼ等が収納される。また、収納空間25には、例えば、図示しないドレープ、レンチ等が収納される。また、収納空間28には、例えば、図示しないクランプ等が収納される。
【0049】
また、収納空間23は、液体を貯留する空間、本実施形態では、トランスファーチューブを交換する際、消毒液を貯留する空間として使用される。
【0050】
この収納空間23の底部21には、段差が形成されている。すなわち、収納空間23の底部21は、その一部が底上げされ、底部21の深さが2段階に設定されている。
【0051】
そして、収納空間23の底部21の底上げされていない部位、すなわち、底部21の深さの深い方の部位211には、スポイト3の口部41を支持する支持部として、底部21から突出し、口部41に挿入される突起26が形成されている。この突起26は、スポイト3の口部41が底部21に臨むようにその底部21に対してスポイト3が起立した状態で、口部41を支持する。この場合、突起26は、スポンジ5の貫通孔51に挿入され、そのスポンジ5が突起26に沿って変形した状態で、突起26により口部41が支持される。
【0052】
これにより、容器2内でスポイト3が移動してしまうことを防止することができ、これによって、スポイト3が傷付いてしまうことを防止することができる。
【0053】
また、トランスファーチューブを交換する際は、
図4に示すように、突起26がスポイト3の口部41に挿入され、スポイト3が起立したままの状態で、消毒液を収納空間23の底部21の深さの深い方の部位211に注入し、貯留する。そして、そのスポイト3が起立したままの状態で、スポイト3により消毒液を吸入する。これにより、容易かつ迅速に、スポイト3により消毒液を吸入する作業を行うことができる。
【0054】
また、スポイト3で消毒液を吸入する際、スポイト3が起立したままの状態のため、把持部が容器2の壁部22や段差などと接触することがなく、貯留した消毒液が壁部22や段差などを介して把持部に付着することがない。これにより、消毒液を吸入したスポイト3を把持した際に、手から滑り落ちることがない。さらに、スポイト3に消毒液を吸引した後も、スポイト3が起立したままの状態のため、一度スポイト3から手を放しても、スポイト3が貯留した消毒液の中に倒れることがない。これにより、スポイト3に消毒液を吸引した後に、一度スポイト3から手を放して、他の作業、例えば、トランスファーチューブのコネクタをカテーテルチューブのコネクタから取り外す作業を行なうことができる。
【0055】
また、収納空間23の底部21の段差は、その底部21の底上げされている部位、すなわち底部21の深さの浅い方の部位212の表面と消毒液の液面とが一致するか、または、底部21の深さの浅い方の部位212の表面よりも消毒液の液面が若干低くなるように、底部21の深さの深い方の部位211に消毒液を注入した場合に、その消毒液の深さが好適な深さになるように設定されている。これにより、消毒液を収納空間23の底部21の深さの深い方の部位211に貯留する際は、その段差を見ながら、底部21の深さの浅い方の部位212の表面と消毒液の液面とが一致するか、または、底部21の深さの浅い方の部位212の表面よりも消毒液の液面が若干低くなるように消毒液を注入することにより、容易かつ確実に、消毒液の深さを好適な深さに設定することができる。
【0056】
また、収納空間23の底部21の段差を設けることにより、消毒液の使用量、すなわち、収納空間23に貯留する消毒液の量を少なくしつつ、スポイト3により消毒液を吸入する際、確実に、スポイト本体4を把持することができる。
【0057】
前記突起26は、本実施形態では、円錐状をなし、その先端部は、丸みを帯びている。なお、突起26の形状は、これに限定されず、この他、例えば、円柱状、角柱状等が挙げられる。また、突起26の外周面は、湾曲していてもよい。
【0058】
また、突起26の寸法は、特に限定されず、スポイト3の寸法等の諸条件に応じて適宜決定されるものであるが、その高さは、0.5〜3cmであることが好ましく、0.8〜1.5cmであることがより好ましい。
【0059】
また、突起26の中心軸261に対する外周面262の傾斜角度θは、45〜90度であることが好ましく、80〜90度であることがより好ましい。
【0060】
容器2の構成材料としては、特に限定されず、例えば、紙、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミドのような各種樹脂等が挙げられる。
【0061】
なお、以上述べた医療用具セット1は、例えば、図示しない包材内に収納され、その包材は、密閉される。
【0062】
次に、医療用具セット1の使用例(作用)、すなわち、スポイト3により消毒液を吸引する作業を行う際の操作手順を説明する。
【0063】
まず、医療用具セット1を図示しない包材から取り出す。そして、容器2の収納空間23からガーゼ等を取り出し、スポイト3のみを残す。このスポイト3は、その口部41に突起26が挿入されて支持され、起立したままの状態とする。なお、消毒液に浸すガーゼについては、その収納空間23内に残したままで、底部21の深さの深い方の部位211に寄せるだけでもよい。
【0064】
次に、
図4に示すように、収納空間23の底部21の深さの深い方の部位211に、消毒液を所定量注入し、貯留する。この場合、収納空間23の底部21の深さの浅い方の部位212の表面と消毒液の液面とが一致するか、または、底部21の深さの浅い方の部位212の表面よりも消毒液の液面が若干低くなるように消毒液を注入する。
【0065】
次に、スポイト3のスポイト本体4を変形させる。すなわち、スポイト本体4の把持部を摘んで、押し潰し、その後、離すことにより、スポイト本体4内に消毒液が吸引される。なお、消毒液は、スポンジ5を透過して、スポイト本体内に流入する。
【0066】
以上で消毒の準備が完了し、この後、トランスファーチューブを交換する作業を行う。この際は、スポイト3を突起26から抜き取り、前述したよう、そのスポンジ5の貫通孔51に消毒を行うカテーテルチューブのコネクタを挿入し、そのコネクタに対してスポイト3を、スポイト本体4の軸を中心に、正逆両方向に交互に所定角度ずつ複数回、回転させる。これにより、カテーテルチューブのコネクタが消毒される。
【0067】
以上、本発明の医療用具セットを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0068】
なお、前記実施形態では、容器は、3つの収納空間を備えているが、本実施形態では、これに限らず、容器は、1つの収納空間を備えていてもよく、また、2つの収納空間を備えていてもよく、また、4つ以上の収納空間を備えていてもよい。
【0069】
また、本発明の医療用具セットは、腹膜透析において用いるもの、すなわち、腹膜透析に用いる医療用チューブを交換する際に用いるものには限定されず、例えば、外科手術等の際に用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 医療用具セット
2 容器
21 底部
211 深さの深い方の部位
212 深さの浅い方の部位
22 壁部
23、24、25 収納空間
26 突起
261 中心軸
262 外周面
27 欠損部
28 収納空間
3 スポイト
4 スポイト本体
41 口部
411、42 リブ
5 スポンジ
51 貫通孔