(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放出口と流体連通している絞り機構をさらに備え、切換弁は高圧の液体を含有し、絞り機構は、切換弁が液体を放出口に送達する時に切換弁の中で液体を高圧に維持する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
当然のことであるが、以下の説明は本開示の特定の代表的な態様に関して詳細を提供するように意図されている。同じく当然のことであるが、添付の特許請求の範囲に記載されるような本開示の思想および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載された方法の特定の要素は、種々様々の等価物をもって代えることができる。加えて、本開示において引用される全ての出版物、例えば限定されるものではないが特許文献および特許出願は、あたかも完全に明記されているかのように本願に援用される。本明細書中で特定される範囲は、挙げられた範囲の上下限を定義する値、該範囲内のすべての離散値、および該範囲内のあらゆる離散的な部分的範囲を含むように意図される。
【0019】
本明細書中で使用される用語「リザーバ」には、ある体積の流体を保持することができる任意の容器が挙げられる。リザーバは、例えばシリンジ、ボトル、ブラダー、広口瓶、バイアルまたはキャニスタのような任意の形態の容器であってよい。リザーバは、密閉されて、周囲の外部環境に部分的または完全にアクセスできない内部空間を包囲してもよい。
【0020】
本明細書中で使用される用語「流体」には、適用されたせん断応力の下で、絶えず変形または流動する任意の物質が挙げられる。流体は、気体または液体を含むことが可能であり、さらに固体も含有することができる(例えばスラリー、懸濁液など)。
【0021】
本明細書中で使用される用語「流体連通」は、装置の少なくとも2つの構成要素の間で、直接または間接的に流体を移送することができることを意味する。この用語はさらに、構成要素間の物理的関係についても説明する。例えば、第1の構成要素は、第1の構成要素から第2の構成要素へ、またはその逆に、ある体積の流体を移送することができるように各構成要素を連結するパイプのような接続導路によって、第2の構成要素と流体連通して配置されうる。
【0022】
本明細書中で使用される用語「出口チャネル」には、リザーバの任意の開口部であって、該開口部を通して流体を低圧ポンプ入口まで直接または間接的に移送することができる開口部が挙げられる。
【0023】
本明細書中で使用される用語「低圧ポンプ入口」には、高圧ポンプ上の任意の開口部であって、該開口部を通して、流体を、該ポンプによって生じる流体圧力より低い圧力で、高圧ポンプに直接または間接的に移送することができる開口部が挙げられる。
【0024】
本明細書中で使用される用語「高圧ポンプ」には、流体を移動させ、かつ少なくとも約2.1×10
6Pa(約300ポンド毎平方インチ)の圧力をもたらす流体を生じる、任意のデバイスが挙げられる。高圧ポンプの例には、ダイレクトリフトポンプ、容積型ポンプ、速度ポンプ、浮力ポンプおよび重力ポンプが含まれる。高圧ポンプはさらに、少なくとも約2.8×10
6Pa(約400ポンド毎平方インチ)、少なくとも約1.7×10
7Pa(約2,500ポンド毎平方インチ)、少なくとも約2.1×10
7Pa(約3,000ポンド毎平方インチ)、少なくとも約2.4×10
7Pa(約3,500ポンド毎平方インチ)、少なくとも約4.1×10
7Pa(約6,000ポンド毎平方インチ)、少なくとも約1.0×10
8Pa(約15,000ポンド毎平方インチ)、少なくとも約1.4×10
8Pa(約20,000ポンド毎平方インチ)、および少なくとも約2.1×10
6Pa(約300ポンド毎平方インチ)〜約1.4×10
8Pa(約20,000ポンド毎平方インチ)以上の圧力をもたらす流体を生じることもできる。
【0025】
本明細書中で使用される用語「高圧ポンプ出口」には、高圧ポンプ上の任意の開口部であって、該開口部を通して、流体を、切換弁またはエアロゾル発生器に直接または間接的に移送することができる開口部が挙げられる。
【0026】
本明細書中で使用される用語「圧力発生器」には、流体を移動させるのに十分な圧力差を発生させる任意の構造物が挙げられる。
本明細書中で使用される用語「切換弁」には、高圧ポンプ出口と流体連通している、少なくとも1つの送達出口および少なくとも1つの放出口を含む任意の弁であって、弁が送達出口または放出口のいずれかを通して流体を移送するように構成されうるようになっている弁が挙げられる。切換弁はさらに、送達出口または放出口のいずれかを通して流体を移送するように構成可能な複数の弁を含むこともできる。
【0027】
本明細書中で使用される用語「送達出口」には、切換弁上の任意の開口部であって、該開口部を通して、流体を、エアロゾル発生器に直接または間接的に移送することができる開口部が挙げられる。これは、送達出口が、送達されるエアロゾルを生産するエアロゾル発生器と流体連通していることを意味する。
【0028】
本明細書中で使用される用語「放出口」には、切換弁上の任意の開口部であって、該開口部を通して、流体を、絞り機構に直接または間接的に移送することができる開口部が挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用される用語「エアロゾル発生器」には、任意の構造物であって、該構造物を通る液体小滴のような液体または粒子状物質のような固体が気体中に放出されて混入することにより、分散相が液体(または固体)を含み連続媒体が気体を含むようなエアロゾルを生産する構造物が挙げられる。エアロゾル発生器は、オリフィスであって、該オリフィスを通して液体小滴が気体中に放出されて混入することにより液体エアロゾルを生じるオリフィスを含むことができる。エアロゾル発生器はさらに、オリフィスであって、該オリフィスを通して気体が液体中を通過して液体エアロゾルを生じるオリフィスを含むことができる。エアロゾル発生器は、オリフィスであって、該オリフィスを通して粒子状物質のような固体が気体中に放出して混入することにより固体エアロゾルを生じるオリフィスを含むことができる。エアロゾル発生器はさらに、オリフィスであって、該オリフィスを通して気体が集合物もしくは粒子状物質または破砕性物質のような固体を通過して固体エアロゾルを生じるオリフィスを含むことができる。
【0030】
本明細書中で使用される用語「絞り機構」には、入口側と、出口側と、入口側で高圧流体を維持し、かつ出口側で低圧流体を生じるように流体の流れを制約する構造物とを有する任意の構造物が挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用される用語「高圧流体」には、限定するものではないが、少なくとも約2.1×10
6Pa(約300ポンド毎平方インチ)の圧力をもたらす任意の液体が挙げられる。高圧流体はさらに、少なくとも約2.8×10
6Pa(約400ポンド毎平方インチ)、約1.7×10
7Pa(少なくとも約2,500ポンド毎平方インチ)、少なくとも約2.1×10
7Pa(約3,000ポンド毎平方インチ)、少なくとも約2.4×10
7Pa(約3,500ポンド毎平方インチ)、および少なくとも2.1×10
6Pa(300ポンド毎平方インチ)〜約2.4×10
7Pa(約3,500ポンド毎平方インチ)の圧力をもたらすこともできる。
【0032】
本明細書中で使用される用語「制御機構」には、ポンプまたは切換弁の作動に影響を及ぼし、切換弁が送達出口または放出口のいずれを通して流体を移送するように設定されるかを調節する、任意のデバイスが挙げられる。
【0033】
本明細書中で使用される用語「放出口帰路」には、リザーバ上の任意の開口部であって、該開口部を通して流体をリザーバ内へ直接または間接的に移送することができる開口部が挙げられる。
【0034】
本明細書中で使用される用語「標的組織」には、エアロゾルが投与されるべき動物の構造体を形成している細胞の任意の凝集体が挙げられる。
本明細書中で使用される用語「患者」には、エアロゾルの投与が指示される任意の属に属する動物が含まれる。そのような対象者の一例はヒト患者のようなヒトである。
【0035】
本明細書中で使用される用語「エアロゾル」は、分散相が液体または固体を含み、連続媒体が気体を含むエアロゾルを意味する。分散相が液体を含み、連続媒体が気体を含む液体エアロゾルは、エアロゾルの一例である。分散相が粒子状物質のような固体を含み、連続媒体が気体を含む固体エアロゾルは、エアロゾルの別例である。
【0036】
本明細書中で使用される用語「化学療法剤」は、がんを治療または予防するために使用される薬学的作用物質を含む。
本明細書中で使用される用語「化学療法剤エアロゾル」は、化学療法剤を含むエアロゾルを意味する。
【0037】
本開示の1つの態様は、出口チャネルと流体連通しているリザーバと、出口チャネルと流体連通している低圧ポンプ入口と、低圧ポンプ入口と流体連通している高圧ポンプと、高圧ポンプと流体連通している高圧ポンプ出口と、高圧ポンプ出口と流体連通している切換弁であって、送達出口および放出口を有する切換弁と、送達出口と流体連通しているエアロゾル発生器と、放出口と流体連通している絞り機構とを含む装置である。
【0038】
本開示の装置において、リザーバは、液体または気体である流体を入れることができる内部空間を画成している側壁を備えた、シリンジ、または、キャニスタもしくは可撓性ブラダーのような他の容器であってよい。リザーバはさらに、セプタムで密閉された液体の入ったバイアルのような容器であって、該セプタムの一部を穿孔加工(すなわち除去)することによって出口チャネルと流体連通して配置される容器も含みうる。セプタムは、ポリマー、合金およびその他同種のもののような任意の適切な材料であって、針などの穿孔用構造物で穿孔可能であり、リザーバ内の液体が穿孔用構造物の側面を通って漏出しないように穿孔用構造物との密閉を維持する材料を含むものであってよい。例えば、リザーバは、容量20mLのガラス製バイアルであって、該バイアルに金属シールで添付されたゴム製セプタムを備えたバイアルであってよい。当業者であれば、本開示の装置において使用するのに適した他のリザーバ構成を認識しているであろう。
【0039】
上述のように、セプタムを備えたバイアルはリザーバとして使用可能である。そのようなリザーバは、好都合には、エアロゾルの生産および投与の前に液体サンプルで充填され、滅菌され、保管されていてよい。そのようなバイアルは、
図11に示されるように容積目盛りを有しており、液体サンプルの送達を監視することが可能となっている。バイアル内の液体は、該バイアルを鉛直に保持し、次いで該バイアルを反転して、バイアル中のセプタムを通過する出口チャネルまたは気体入口を形成する1つ以上の針または他の構造物の上にバイアルを押し下げることにより、装置と流体連通して配置することができる。バイアルは、入口と出口チャネルの両方の開口部がバイアルの内部にあり、かつバイアル内の液体が出口チャネルを形成する針に入ることができるまで、針に押しつけられる。装置のポンプが起動されると、液体はバイアルから引き出され、空気などの気体が、液体の体積の任意の変化を受動的に補うために、バイアルに入ることができる。これは必須である、というのも、バイアルが閉鎖系であって空気抜きによりこのリザーバの内部での大気圧の維持が可能になるからである。気体入口はさらに、リザーバおよびリザーバ内の任意の液体の汚染を回避するためにフィルタを含むことも可能であり、また気体入口から液体を離しておくために軽微な陽圧が気体入口において維持されてもよい。
【0040】
別例として、セプタムを含むバイアルが、1つ以上の針(または他の構造物)に向けて該バイアルを押し上げることにより鉛直方向にあり、出口チャネルを形成する針はセプタムを通り抜けて下方へ向かい、バイアル内の気体を含んでいる上部空間を通過して下方の液体内に達するが、気体入口チャネルを形成する針は、液体が気体入口に入るのを防止するように下方の液体内に入ることなく上部空間に留まっているとき、セプタムを含むバイアルまたは他のリザーバ内の液体は、装置と流体連通して配置されることが可能である。したがって、当業者であれば、本開示の装置においてリザーバは様々な配置方向に配置可能であることを認識するであろう。
【0041】
いくつかの実施形態では、気体入口および出口チャネルは、様々な大きさのバイアル中の様々な液体体積もしくは上部空間体積に、または装置を作動させるにつれて変化するそれらの体積に対応するために、調整可能であってよい。例えば、気体入口(または出口チャネル)は、様々な大きさのバイアル中の様々な液体体積もしくは上部空間体積、または装置を作動させるにつれて変化するそれらの体積に対応するために、リザーバを貫通する軸に対して軸方向に移動可能であってもよい。
【0042】
所望量の液体が装置へ送達された後、バイアルは装置から取り外されて廃棄されてもよい。治療薬の送達のための典型的なプロトコールには、蒸留水、生理食塩水、またはアルコールを用いた本開示の装置の送達後洗浄が含まれることも考えられる。これらの液体の滅菌サンプルが入ったバイアルまたは他のリザーバ構造物は、これらの液体の装置への送達を容易にするために前もって準備されてもよい。送達および洗浄の後、出口チャネルまたは気体入口を形成している1つ以上の針(または他の構造物)の上に安全キャップが配置されて、装置が使用されていないときの該装置の汚染を制御することができる。安全キャップは、クリップ、ねじ、スナップなどのような任意の適切な締結構造物を使用して、そのような針またはその他の出口チャネルかつ/もしくは気体入口の上の適所に締結されうる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の装置はリザーバを欠いていてもよい。加えて、いくつかの実施形態では、本開示の装置は、出口チャネルおよび気体入口のうち少なくとも1つを支持する台と、台上のねじなどの締結具と、任意選択で、リザーバが存在しない場合に締結具に取り付けることができる安全キャップとを含むことができる。別例として、台は、セプタムを備えたバイアルのようなリザーバを鉛直方向に配置されるように支持して、気体を含む上部空間がセプタムに隣接してリザーバ内で液体の上方に位置するようにすることができる。
【0043】
図11および
図12は、本開示の装置のリザーバの一実施形態を側面から示している。この実施形態では、リザーバ1101、1201は、セプタム1141、1241で密閉された目盛り付きバイアルからなる。リザーバ1101および1201の中の液体1242を通過させて低圧ポンプ入口に移送することができる出口チャネル1102、1202を含む針であって、かつ、リザーバ1101、1201から外へ移送された液体体積を補うためにリザーバ内に空気のような気体を受け入れるための気体入口1138、1238を含む針で、セプタム1141、1241を穿孔することができる。この実施形態では、装置は、リザーバ1101、1201を支持することができる、装置ハウジングなどの台1140、1240を含むことが可能であり、また、出口チャネル1102、1202および気体入口1138、1238の上に安全キャップを固定するためのねじ山1139、1239または別の適切な構造物を含むこともできる。
図11および
図12は、同軸に配置された出口チャネル1102、1202および気体入口チャネル1138、1238を形成しているチューブを示し、該2本のチューブは、該チューブの間の距離が、各チューブの周囲にセプタム1141、1241が完全な密閉を形成するのに十分であるという条件で分離されることも考えられる。
【0044】
本開示の装置では、出口チャネルは、液体が通ってリザーバから出ることができる、リザーバの任意の開口部であってよい。該出口は、リザーバから移送される液体が、エアロゾルの形成を妨げることも考えられる気泡を含まないように、鉛直に配置されたリザーバの底部に位置することが好ましい。該出口はさらに、リザーバ上の他の適切な場所に置かれてもよく、リザーバから移送される液体は、いかなる気泡または溶存気体も除去されるデガッサに入ることができる。PHENOMENEX(商標)(米国カリフォルニア州トランス)の、部品番号EHO‐5847を有しかつ4チャネル式DEGASSEX(商標)DG‐4400と記載されるDEGASSEX(商標)溶媒デガッサは、そのようなデガッサの一例である。当業者であれば、真空デガッサ、フィルタ式デガッサおよびその他のような、他の適切な種類のデガッサも認識しているであろう。
【0045】
本開示の装置では、高圧ポンプは、エアロゾル発生器を通る流量を維持して高い逆圧を生じるか、またはエアロゾルを形成するのに十分な流量で高圧流体を生じることが可能な、任意の既知の種類のものであってよい。高圧ポンプの一例は、少なくとも約2.1×10
7Pa(約3,000ポンド毎平方インチ)の液圧で毎分約16mLの液体流速を生じることが可能な高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプである。ウォーターズ(Waters)590型HPLCポンプ(ウォーターズ社(Waters Corp.)、米国マサチューセッツ州ミルフォード)は、そのような高圧ポンプの例である。当業者であれば、他の高圧ポンプも認識しているであろう。所望の流量および流圧を、ウォーターズ515型ポンプのような2つ以上のポンプを並列に作動させることにより、または流量を改善するための改良キットを使用することにより、達成することも可能である。
【0046】
その他多くの様々な種類の高圧ポンプも当分野で知られている。当業者であれば、例えば、これら様々な種類の高圧ポンプとしては、ポンプ材料が混入してはならない、またはポンプ輸送されている流体によってポンプ材料が汚染されてはならないということを念頭において、往復型ポンプ、回転型ポンプ、ローブポンプ、遠心ポンプ、ダイヤフラムポンプおよび蠕動ポンプが挙げられることを認識しているであろう。
【0047】
典型的な往復型ポンプでは、典型的には適切な逆止め弁に結合された、シリンダ内部のピストンの往復運動が、流体の流れを提供する。往復型ポンプは積極的原則(positive principle)で作動する、すなわち、各ストロークがシステムに一定体積の液体を配達する。ラジアルピストンおよびアキシアルピストンのようないくつかの種類のポンプも往復型ポンプとして分類される。これらのポンプは、動力源によってポンプに回転運動が与えられるので、回転型ポンプとして分類される場合もある。しかしながら、実際のポンプ輸送は、典型的には、シリンダセットの内部で往復運動するピストンセットによって行なわれる。HPLCの高圧ポンプは典型的には高容積の往復型ポンプである。適切な往復型ポンプは、ウォーターズ社、サイエンティフィック・システム社(米国ペンシルベニア州ステートカレッジ)およびアイデックス社(Idex, Inc.)/サファイア・エンジニアリング社(Sapphire Engineering, Inc.)から入手可能である。アイデックスのポンプは容積型ポンプである。容積型ポンプでは、シリンダ内のピストン位置は光エンコーダによって制御可能である。したがって、例えば250μLのエアロゾル用量全体は1回の「ショット」で送達可能であり、次いでシリンダは次の送達のために再装荷される。脈動は存在しない。そのようなポンプは、少なくとも2.1×10
7Pa(3,000ポンド毎平方インチ)の流体圧で約16mL/分の流体流速を生じることができることが好ましい。
【0048】
全ての回転型ポンプは、入口で流体を捕捉し、該流体を強制的に出口に通す回転部分を有する。ギア、スクリュー、ローブ(lobe)および翼(vane)が流体を移動させるために一般に使用される。回転型ポンプは固定容積形の容積型ポンプである。回転型ポンプは、出口側から入口側に戻る滑りを最小限にするために、回転部分と固定部分との間に非常に小さな空間距離を備えるように設計される。
【0049】
ローブポンプは液体を押し進めるためにローブ付きの要素またはローターを使用する。一般に、各ローターには2〜3個のローブしか存在しない。2ローブ型の要素は、一方は動力源により直接駆動され、他方は調時歯車によって駆動されて、回転させられる。該要素が回転するにつれて、液体は各ローターの2つのローブとポンプ室の側壁との間に捕捉されて、ポンプの吸込み側から吐出側まで運ばれる。液体が吸込室から出るにつれて吸込室内の圧力は低下し、さらなる液体がリザーバから吸込室内へ押し進められる。ローブは、ポンプの中心でローブどうしが接触する場所に連続的な密閉が存在するように構築される。ポンプの密閉を改善するために、ポンプのローブの外端に小さな翼が取り付けられることもある。翼は、そのスロット内に機械的に、ただしある程度自由に動くように保持される。遠心力により、翼はチャンバおよび他の回転部材に対して密着するように維持される。ゴム製ローブを備えたローブポンプは、例えば、粒子状物質または軟質塊のような懸濁固体を含有する流体を処理するために使用されてきた。
【0050】
遠心ポンプは、3つの部類すなわち:半径流型、軸流型、または混成流型に分類される。半径流型遠心ポンプは全面的に遠心力によって圧力を生じる。軸流型遠心ポンプは、液体に対する羽根車の翼の推進動作または持ち上げ動作によって圧力を生じる。混成流遠心ポンプは、一部には遠心力、一部には液体に対する羽根車の翼の持ち上げによって、圧力を生じる。遠心ポンプの2つの主要構成要素は羽根車および渦巻き構造である。羽根車は、液体速度と、渦巻室を通ってポンプ外へ放出する液体とを生じる。遠心ポンプの羽根車は、渦巻き構造から液体を放出する。該羽根車は液体をカップのように受けることはない。
【0051】
ダイヤフラムポンプは、チャンバを通って流体を移動させるためにシングルダイヤフラムまたはダブルダイヤフラムの配置構成を使用する容積型ポンプである。ダブルダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラムが前進するにつれて、流体が後方のチャンバを満たす一方で流体は前方のチャンバから出る。ダイヤフラムが後位置に移動するとき、流体は前方のチャンバに入って後方のチャンバを出る。このプロセスが繰り返されて円滑な正方向の流れがもたらされる。
【0052】
蠕動ポンプは、チューブ材料の長さに沿って液体を移動させるために、チューブ材料のシャフトまたは一部の直径を連続的に狭細化するという原理に基づいて動作する。該液体は全てチューブまたはホース内部に含まれており、ポンプとは接触しない。該ポンプは、封止部、パッキン押さえまたは弁を持たない。このことは、該ポンプが衛生的操作または無菌操作にとって理想的であることを意味している。真の容積型であれば、滑りも逆流もない。
【0053】
本開示の装置において、切換弁は、少なくとも1つの送達出口または少なくとも1つの放出口を通して流体を移送するように構成可能な、三方弁、四方弁もしくは任意の同様の弁構造、または複数の弁の配列であってよい。回転弁は、切換弁の一例、せん断型の弁であって、間にガスケットを備えた2つの平坦な表面と、それらの表面および一部分に適切な孔とを有し、該2つの表面を互いに対して移動させたときに弁作用が達成されるようになっている。切換弁は、水力駆動、空気駆動、手動駆動、ソレノイド駆動、モータ駆動またはこれらの組み合わせにより所与の構成に設置可能である。切換弁はさらに、弁の状態を切り替えるための小型ハンドルまたは類似の構造物を使用して、制御機構を介在させずに手動で始動されてもよい。切換弁の一例は、アイデックスヘルスアンドサイエンス(Idex Health and Science)(米国ワシントン州オークハーバー)のRHEODYNE(登録商標)7725型噴射弁、RHEODYNE(登録商標)7725i型噴射弁およびRHEODYNE(登録商標)9725型噴射弁のようなHPLCのための噴射弁である。RHEODYNE(登録商標)7010型の弁は切換弁の別例である。当業者であれば、切換弁の他の例を認識しているであろう。
【0054】
切換弁はさらに、エアロゾル発生器の先端から生じる噴霧の質にも影響を及ぼす。これは、噴霧されている液体の圧力が、エアロゾル発生器の先端から生じる噴霧の質(質量中央径、円錐角度)に直接作用するからである。さらに、エアロゾル中の分散相の平均質量中央径は約8μm〜約22μmの範囲にあることが好ましい。これは、切換弁と流体連通している放出口において液体により加わる圧力の上昇および低下が極めて急速に生じ、従ってエアロゾル品質は低下せず、液体流または極めて大型の液体滴の形成をもたらすことがないようにしなければならないことを意味する。したがって、切換弁が、例えば送達出口において、極めて急速であって約200ミリ秒〜約500ミリ秒で生じる圧力上昇および低下のサイクルを統御できることが好ましい。特に、送達出口または放出口のいずれを通して液体を移送するかの切替えは、約200〜500ミリ秒以下で切換弁によって行なわれることが好ましい。
【0055】
切換弁は駆動部に結合されてもよく、弁の開閉位置が制御機構により調節されうるように電気的に制御可能である。切換弁の「オン」の状態では、高圧流体は送達出口に放出されてエアロゾル発生器へ誘導される。切換弁の「オフ」の状態では、高圧流体は放出口から絞り機構内へ移送され、流体は低圧で放出される。
【0056】
本開示の装置では、エアロゾル発生器は、患者の身体の開口部の中へ挿入するため、または肺のような標的組織に隣接して配置するための大きさであってよい。そのようなエアロゾル発生器は、第1端および第2端を規定する略長尺状のスリーブ部材であって、該部材を通って長手方向に伸びる開口部を備えた部材を含むことができる。該スリーブ部材の第1端は、切換弁の送達出口または高圧ポンプ出口と流体連通するように配置される。略長尺状の挿入物も提供される。略長尺状の挿入物は第1端および第2端を規定し、スリーブ部材の長手方向に伸びる開口部の少なくとも一部分の内部に入れられる。挿入物は外側表面を備え、該外側表面には、挿入物の外側表面を取り囲んで第1端から第2端まで伸びる少なくとも1つのほぼ螺旋形の溝が設けられている。該挿入物のほぼ螺旋形の溝は、スリーブ部材によって受け取られた液体材料を通すようになされている。スリーブ部材に接続した略長尺状の本体部材も含まれうる。該本体部材は、該部材の第1端に提供された空洞であって第2端に隣接する端壁を終端とする空洞を備えている。端壁には、挿入物から受け取った液体の噴霧のためのオリフィスが提供されている。この噴霧は、液体、固体、またはこれらの混合物が空気などの気体の中に放出されて混入することによりエアロゾルを生じるのを可能にする。この種のエアロゾル発生器の例は、ペンセンチュリー社(Penn-Century, Inc.)(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)から市販されており、また例えば米国特許第5,579,758号、同第5,606,789号、同第5,594,987号、同第6,016,800号、同第6,029,657号および同第6,041,775号明細書にも記載されている。
【0057】
エアロゾル発生器はさらに、任意のオリフィスであって、該オリフィスを通して液滴などの液体が放出され、気体中に混入して液体エアロゾルを生じるオリフィスを含むこともできる。エアロゾル発生器はさらに、オリフィスであって、該オリフィスを気体が通り抜けて液体内に入って液体エアロゾルを生じるオリフィスを含むこともできる。エアロゾル発生器は、オリフィスであって、該オリフィスを通して粒子状物質のような固体が放出され、気体中に混入して固体エアロゾルを生じるオリフィスを含むこともできる。エアロゾル発生器はさらに、オリフィスであって、該オリフィスを気体が通り抜けて粒子状物質の集合物または破砕性物質のような固体内に入って固体エアロゾルを生じるオリフィスを含むこともできる。固体エアロゾルを形成するためのエアロゾル発生器は、流体が入っている導路に接続された、破砕性固形物または粒子状物質のような固体が入っている区画を有し、該固体を流体中に取り込むことができるようになっていてもよい。エアロゾル発生器はさらに、超音波プローブ要素のような要素を含み、該要素が液体小滴または粒子状物質を生成し、該小滴または粒子状物質が気体中に放出されて混入することによりエアロゾルを生じてもよい。別例として、エアロゾル発生器は加熱冷却要素を含み、該要素が液体を気化させた後に該液体を部分的に凝縮するか、または該液体を凝縮して小滴を形成し、該小滴が気体中に放出されて混入することにより液体エアロゾルを生じてもよい。エアロゾル発生器はまた、加熱冷却要素を含み、該要素が固体を気化させた後に該個体を部分的または完全に凝結して粒子状物質を形成し、該粒子状物質が気体中に放出されて混入することにより固体エアロゾルを生じてもよい。エアロゾル発生器はさらに、エアロゾルを生じる構造物の組み合わせを含むこともできる。当業者であれば、他のエアロゾル発生器構造物も認識しているであろう。
【0058】
エアロゾル発生器は、該エアロゾル発生器の一部分に接続された延長部であって、エアロゾルを通過させて放出するオリフィスまたはその他の開口部を含む延長部を含むことができる。そのような延長部は、標的組織へのエアロゾルの送達を容易にすることができる。延長部は、剛性材料または可撓性材料のような様々な材料から構築されうる。例えば、延長部は、ラミネートのような任意の可撓性材料、繊維強化ポリマー、金属および合金またはこれらの組み合わせから構築されうる。延長部は、ポリマーまたはポリマーの組み合わせ、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などから構築されうる。延長部は、チューブ材料のようなパイプ、または流体連通に適した内部通路を含むボールジョイントのような他の取り付け部品であってもよい。延長部はまた、例えば気管または外科的切開部のような体腔または開口部への挿入に対応するために関節式であってもよい。特に、エアロゾル発生器および延長部のうち少なくともいずれか一方は、例えば気管ポートのような、気管開口術または気管切開術によって作出された開口部を通して体腔内へ挿入される場合がある。エアロゾル発生器および延長部のうち少なくともいずれか一方は、単純に咽喉を下って気管内へ挿入される場合もある。延長部はさらに、標的組織へのエアロゾルの送達を促進する任意の形状を有することもできる。例えば、延長部は、標的組織に隣接させたエアロゾル発生器の配置およびエアロゾルの送達を容易にするために、丸い形状、カップ状の形状、湾曲した形状または球根状の形状を有することができる。延長部はさらに、エアロゾルの送達を容易にするため、様々な長さのものであってもよい。例えば、鼻道へのエアロゾルの送達を容易にするための延長部は、気管分岐部(carina)に隣接したエアロゾルの送達を容易にするための延長部よりも短い長さであってよい。延長部はさらに、例えば温度センサ、圧力センサまたは湿度センサのような少なくとも1つのセンサを含むこともできる。エアロゾル発生器および延長部のうち少なくともいずれか一方は、ポートを通って体腔またはその他の開口部の中へ挿入されてもよく、気管支鏡またはその他の計測器を伴っていてもよい。
【0059】
図1は、本開示の装置の一実施形態を示す。この実施形態では、リザーバ101は、該リザーバを出て出口チャネル102を通り、次いで低圧ポンプ入口103に入る液体を含んでいる。該液体はその後、低圧ポンプ入口103から高圧ポンプ104の中へと移動して、高圧ポンプ出口105に入る。該液体はその後、高圧ポンプ出口105から、送達出口107および放出口108を有する切換弁106の中へと移動する。切換弁106からの流量は、切換弁106の状態を制御する制御機構113によって調節される。切換弁106がエアロゾルを生じるように構成されると、液体は送達出口107を通ってエアロゾル発生器109の中へと入り、エアロゾルを生じる。コイルなどの可撓性コネクタ112が送達出口107とエアロゾル発生器109との間に配置されて、送達出口107から出る液体が該可撓性コネクタ112に入り、次いでエアロゾル発生器109に入るようになっていてもよい。切換弁106がエアロゾルを生じないように構成されると、液体は放出口108を通って絞り機構110に入る。その後液体は放出されて、適切な容器または導路に入ることができる。本開示の装置は約250μLからの任意体積のサンプルを送達することが可能であり、好ましい総サンプル体積は約10mL〜約20mLである。送達は、操作者によって選択された、個々の、決められた時間のアリコートの形態で行われることが好ましい。本開示の装置は約10mL〜約20mLのエアロゾル量を送達することが好ましい。さらに、本開示の装置は、任意の他の体積、例えば約10μLまたはそれ以上のサンプルを送達することも可能である。例えば、約10μLまたは約125μLの体積は、一部の患者における肺性組織および非肺性組織の両方への送達にとって望ましい。
【0060】
図2は切換弁の一例を示す。切換弁206は、高圧ポンプ入口205、送達出口207および放出口208を有する。切換弁206からの流量は、切換弁206の状態を制御する制御機構213によって調節される。切換弁206がエアロゾルを生じるように構成されると、液体は送達出口207を通り抜ける。切換弁206がエアロゾルを生じないように構成されると、液体は放出口208を通り抜けて絞り機構210に入る。液体はその後切換弁206から放出され、次いで適切な容器または導路に入ることができる。
【0061】
図3および4はエアロゾル発生器の一例を示す。ペンセンチュリー社(Penn-Century, Inc.)(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手可能なMICROSPRAYER(商標)エアロゾル発生器IA‐1B型は、そのようなエアロゾル発生器の例である。この例におけるエアロゾル発生器319、419は、
図3において最もよく分かるように、中空チューブ部材で構成された本体部材320、420を含む。本体部材320、420の第1端には、同部材の中を伸びる空洞であって、該部材の第2端に隣接して設けられた端壁330、430を終端とする空洞が提供されている。この例においては、端壁330、430には、その全長を貫通するオリフィス331、431が提供されている。
図4において最もよく分かるように、エアロゾル発生器のこの例におけるオリフィス331、431の構成は、好ましくはほぼ一定の直径の中央エリアと、その両端においてテーパ状をなすか、またはほぼ円錐形に形作られたエリアとを備えている。代替実施形態では、エアロゾル発生器は円錐形に形作られた端部を1つだけ有し、かつ平坦な別の端部を有する場合もある。そのような代替エアロゾル発生器の実施形態は、例えば米国特許第6,016,800号明細書に記載されている。ペンセンチュリー社(Penn-Century, Inc.)(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手可能なMICROSPRAYER(商標)エアロゾル発生器IA‐IC型は、そのような代替エアロゾル発生器実施形態の例である。エアロゾル発生器のこの例においては、本体部材320、420は、約4.3μm(17ゲージ)の極めて薄い壁のステンレス鋼チューブ材料であって1.5mm(0.058インチ)の外径および1.3mm(0.050インチ)の内径を備えたチューブ材料で構成されることが好ましい。しかしながら、任意の適切な構成の他の適切な材料がこの同じ目的のために利用されてもよい。
【0062】
図4に示されたエアロゾル発生器の例では、挿入物318、418はスリーブ部材317、417の内部に配置され、スリーブ部材317、417および本体部材320、420は互いに接続されてエアロゾル発生器319、419を形成している。エアロゾル発生器は、超小型エアロゾル発生器の寸法を有することが可能であり、気管内チューブ内などへの気管内挿入、気管支鏡内挿入、または気管内への直接挿入に十分小さいものとなりうる。この例のエアロゾル発生器は、スリーブ部材317、417に、内側表面に形成されたタップであるねじ切り溝433を提供することにより形成されうる。エアロゾル発生器の別例の実施形態では、チューブ端部は、硬化ピンと、小さなくぼみで固定されたねじ切り挿入物とでカシメ加工されてもよい。スリーブ部材317、417の端部も、好ましくは、ねじ切り溝433が提供される前に2.5mm(0.100インチ)の距離にわたって内径0.91mm(0.036インチ)となるように穴が開けられて、その後、穴の開いた端部には、好ましくは、挿入物318、418の第2端とスリーブ部材317の第2端との間に長さ0.51mm(0.020”)の間隔を提供するのに十分な1mm×0.025mmのテーパタップを用いてねじ切りがなされる。この例のエアロゾル発生器では、ねじ切り溝433はほぼ螺旋形であり、挿入物318、418のねじ山332、432から形成される。
【0063】
重要なことには、ペンセンチュリー社のMICROSPRAYER(商標)エアロゾル発生器IA‐1C型またはその他のエアロゾル発生器と共に使用された時、開示された装置は、長く薄いチューブ(例えば直径0.64mm(.025”))の端部からの比較的微細な噴霧の形態の、250μL程度の任意体積の液体アリコートの頓用送達に適している。エアロゾル発生器が約10mL〜約20mLのエアロゾル総体積の送達に適していることも好ましい。エアロゾル発生器はさらに、約10μL以上の体積を含む任意の他の体積のサンプルを送達するのに適している場合もある。例えば、約10μLまたは約125μLの体積は、一部の患者における肺性組織および非肺性組織両方への送達について望ましい。IA‐1Cエアロゾル発生器の先端の抵抗力は、16.2mL/分(270μL/秒)の流量が約2.1×10
7Pa(約3,000psi)の逆圧を生じ、8〜22μmの粒径分布(質量中央径)を備えた噴霧物をもたらすようになっている。送達される液体のアリコート当たりの体積は、システムがエアロゾル送達状態に維持される時間の長さに依存し、送達される総体積は、最終的にはサンプルが取り出されるリザーバの大きさのみに依存する。
【0064】
本開示の装置において、絞り機構は、圧力が絞り機構の入口側に維持されるように十分な流れ抵抗を提供する、パイプ、取り付け部品またはこれらの組み合わせであってよい。絞り機構の一例は、入口側と出口側とを含むパイプであって、パイプ内の内部通路の断面積がテーパ状をなして、入口側の内部通路の断面積がパイプの出口側の内部通路の断面積より大きくなっているものである。別例の絞り機構は、第1の断面積を有する入口、出口、および、入口と出口との間の多孔性固体であって、該多孔性固体において第1の断面積より小さい第2の断面積を示す多孔性固体を含む。本開示の装置では、絞り機構は、リザーバのような容器または廃棄物容器と流体連通している場合もある。別例として、絞り機構は、流体をドレンまたは下水系のような流体分配システムに送達することもできる。絞り機構はさらに、放出口帰路と流体連通していてもよい。
【0065】
絞り機構の一例は
図2に示されている。絞り機構210は、ほぼ円形の断面および0.13mm(0.005インチ)の直径を備えた長さ64mm(2.5インチ)の内部通路211の一部を含む、入口側215と出口側216との取り付け部品として提供されている。絞り機構の流れ抵抗は長さを調節することにより「調整する(tuned)」ことができる。換言すれば、絞り機構の抵抗は絞り機構の長さを調節することによりエアロゾル発生器の抵抗に一致させることができる。
【0066】
アップチャーチ・サイエンティフィック(Upchurch Scientific)(米国ワシントン州オークハーバー)の高圧逆圧レギュレータNo.P‐880は絞り機構の別例であり、1.4×10
7〜3.4×10
7Pa(2,000〜5,000psi)に調整可能である。
【0067】
本開示の1つの実施形態は、装置であって、切換弁は高圧の流体を含み、絞り機構は切換弁が放出口に該流体を送達するときに切換弁の中で流体を高圧に維持する装置である。
本開示の別の実施形態は、装置であって、絞り機構がほぼ円形の断面および0.13mm(0.005インチ)の直径を備えた長さ64mm(2.5インチ)の内部通路を含む装置である。
【0068】
本開示の別の実施形態は、装置であって、送達出口およびエアロゾル発生器と流体連通している可撓性コネクタをさらに含み、前記可撓性コネクタは送達出口およびエアロゾル発生器の両方を接続している装置である。
【0069】
可撓性コネクタは、チューブ材料のようなパイプ、または流体連通に適した内部通路を含むボールジョイントのような他の取り付け部品であってよい。可撓性コネクタは、ラミネートのような任意の可撓性材料、繊維強化ポリマー、金属および合金またはこれらの組み合わせから構築されうる。可撓性コネクタは、ポリマーまたはポリマーの組み合わせ、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などから構築されうる。可撓性コネクタは、接続されたエアロゾル発生器の伸張、配置および引込に適した、コイル、ジグザグなどのような任意の幾何学的形状を有しうる。コイル形態は、様々な直径、巻回数およびほぼ直線状の尾部の長さの、円形コイルを含むことができる。螺旋コイルはそのようなコイル形態の一例である。理想的には、可撓性コネクタは汚染のない流体連通に適している。
【0070】
PEEKのようなポリマーで作られたチューブ材料から構築された可撓性コネクタは、1.6mm(1/16インチ)の外径ならびにほぼ円形の断面を備えた内部通路および0.51mm(0.02インチ)の内径を有することが好ましい。
【0071】
本開示の別の実施形態は、可撓性コネクタがコイルを含む装置である。
本開示の別の実施形態は、可撓性コネクタがポリエーテルエーテルケトンからなる装置である。
【0072】
本開示の別の実施形態は、切換弁が制御機構に接続されている装置である。
本開示の別の実施形態は、制御機構が予め設定された時間間隔で切換弁を開くようにプログラムされている装置である。
【0073】
制御機構の例には、パーソナルコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ、回路、スイッチ、コンピュータ・チップおよびこれらの組み合わせが挙げられる。制御機構はさらに、液体エアロゾルの形成を調整するために、切換弁内の液体の圧力、流量および温度を調節することもできる。制御機構は、フィードバック型制御、フィードフォワード型制御またはこれらの制御型の組み合わせによって切換弁の作動および液体エアロゾルの形成に影響を与えることもできる。制御機構はさらに、切換弁の作動に影響を与えるためにファジィ論理を利用してもよい。
【0074】
制御機構は、電気スイッチまたは機械スイッチ、例えば足踏式スイッチまたは単純な指押し式スイッチを含むことができる。スイッチは、エアロゾル発生器の隣に便利なように配置した押しボタンスイッチであってもよい。レバー式スイッチを含む他のスイッチ形態が同様に使用されてもよい。スイッチは、エアロゾルの、瞬間的活性化、持続的活性化(例えばプッシュオン)および遮断活性化(例えば、プッシュオフ)を提供することができる。制御機構はさらに、少なくとも1つのセンサであって、圧力、流量、湿度、温度、液体エアロゾルのような媒体の光学密度または光吸収などのようなパラメータを監視することが可能なセンサを含むこともできる。例えば、制御機構は圧力センサを含むことも可能であり、該圧力センサからのフィードバックによって起動されることも可能である。圧力センサは、患者の気管内に配置されて、気管内の圧力が減少したときに吸入と同時に液体エアロゾルが送達されるようになっていてもよい。制御機構はさらに、液体エアロゾルの生産(および投与)を患者の呼吸周期の吸入期と協調させるためのタイマーを備えていてもよい。制御機構はさらに、患者の胸部またはその周囲に配置された時に患者の呼吸周期の吸入期に対応する信号を生成する、力変換器も含むことができる。そのような呼吸センサは市販されており、該センサには、PASSPORT(商標)ベルト型呼吸センサであるPS‐2133呼吸速度センサ(Respiration Rate)(パスコ・サイエンティフィック社(PASCO Scientific, Inc.)、米国カリフォルニア州ローズヴィル)、およびヴェルニエ・ソフトウェア・アンド・テクノロジー(Vernier Software and Technology)(米国オレゴン州ビーヴァートン)から入手可能なベルト型呼吸モニタが挙げられる。
【0075】
制御機構は、ハンドピースであって、該ハンドピースの長軸とエアロゾル発生器の長軸との間に約90°(
図6および9)、約135°(
図7および10)、約180°(
図8)または任意の他の好都合な角度を形成するようにエアロゾル発生器が配置されるように構成可能なハンドピースを含むことができる。ハンドピースはさらに、電気リード線によって制御機構に接続されるボタンスイッチまたは他のスイッチを含むこともできる。電気リード線およびスイッチは、制御機構内の回路を形成することが可能であり、装置によるエアロゾル生産を制御することができる。ボタンスイッチは、
図6〜9に示されるように親指または他の指による起動に対応するように配置可能である。ハンドピースはさらに、剛性材料または可撓性材料のハウジングを含む場合もあり、該ハウジングは手で保持されるのに適した任意の適切な形態(または形状)のものであってよい。
【0076】
図6〜9は、本開示の装置の制御機構の一実施形態を側面から示している。
図10は、本開示の装置の制御機構の一実施形態の長軸を通る断面図を側面から示している。これらの実施形態では、装置の制御機構は、内部ルーメンを画成するとともに長軸を規定する第1端および第2端を有する、ハウジング635、735、835、935、1035を含む。ボタンスイッチ634、734、834、934、1034はハウジング635、735、835、935、1035の第1端の近位に位置し、エアロゾル発生器609、709、809、909、1009もハウジング635、735、835、935、1035の第1端の近位に位置して、ハウジングの長軸およびエアロゾル発生器の長軸とで適切な角度を形成する。したがって、これらの実施形態では、ボタンスイッチ634、734、834、934、1034およびエアロゾル発生器609、709、809、909、1009は、ハウジング635、735、835、935、1035の第1端の近位に接続されている。エアロゾル発生器609、709、809、909、1009は、可撓性コネクタ612、712、912と流体連通している。エアロゾル発生器609、709、809、909、1009および可撓性コネクタ612、712、912は、ハウジング内に一部または全部が位置している長いチューブ材料によって連結される場合もあり、このチューブ材料はハウジング635、735、835、935、1035の第2端の近位でハウジングを出てもよい。ボタンスイッチ634、734、834、934、1034は、第1の電気リード線636、736、936、1036および第2の電気リード線637、737、937、1037に接続され、リード線636、736、936、1036、637、737、937、1037は制御機構に接続されて、制御機構がボタンスイッチ634、734、834、934、1034を含むようになっている。第1の電気リード線636、736、936、1036および第2の電気リード線637、737、937、1037は、ハウジング635、735、835、935、1035の内部に一部または全部が位置していてもよく、ハウジング635、735、835、935、1035の第2端の近位でハウジングを出てもよい。チューブ材料が直線状である場合、電気リード線およびチューブ材料は可撓性パッケージの中で束ねられてもよい。
【0077】
本開示の装置および方法では、エアロゾルは患者による呼吸の有無に関わらず投与可能であり、エアロゾル投与は、患者の呼吸容量、呼吸機能または呼吸器の健康状態に左右されない。これは、本開示の装置および方法が、肺機能不全の患者において実現可能と思われるよりもはるかに大きな量を安全に送達することを可能にすること、吸入器を使用できない集団(すなわち幼児、高齢者、昏睡状態または意識不明の患者など)において使用可能であること、および、エアロゾル中の分散相は、開示の装置が身体の解剖学的障壁を通過してエアロゾルを運んでいるためそのような障壁を通り抜けるために呼吸に適した範囲(例えば1〜5μm)にある必要がないことを意味している。
【0078】
制御機構はさらに、液体エアロゾルの形成を調節するために、予め設定された期間、切換弁を開くかまたは高圧ポンプを駆動するようにプログラムされてもよい。上記の予め設定される期間には、200ミリ秒のような任意の時間間隔が含まれうる。上記期間はさらに、一定の時間間隔または時間間隔の組み合わせであってもよい。例えば、ボタンスイッチを含む制御機構では、スイッチの起動により、切換弁を開くかまたは高圧ポンプを駆動するようにプログラムされた制御機構へ信号が予め設定された期間送信されることになり、次いで制御機構は、その予め設定された期間、切換弁または高圧ポンプを開くことになる。予め設定された期間が経過した後、制御機構は切換弁を閉じるかまたは高圧ポンプを停止することになる。タイマーはそのような制御機構の一例である。そのようなプログラマブル制御機構の一例は、オメガ(Omega)PTC‐15型タイマー(オメガエンジニアリング社(OMEGA Engineering, Inc.)、米国コネティカット州スタンフォード)である。
【0079】
本開示の別の実施形態は、装置であって、エアロゾル発生器がほぼ螺旋形の溝を含む装置である。
本開示の別の実施形態は、装置であって、制御機構は第1端を備えたハウジングを含み、エアロゾル発生器およびスイッチがいずれもハウジングの第1端の近位に接続される装置である。
【0080】
本開示の別の実施形態は、装置であって、送達出口およびエアロゾル発生器と流体連通している可撓性コネクタをさらに含み、前記可撓性コネクタは送達出口およびエアロゾル発生器の両方を接続しており、スイッチは電気リード線をさらに含む装置である。
【0081】
本開示の別の実施形態は、リザーバが気体入口を含む装置である。
本開示の別の実施形態は、リザーバが出口チャネルおよび気体入口を含んでいるセプタムをさらに含む装置である。
【0082】
本開示の別の態様は、装置であって、出口チャネルと流体連通しているリザーバと、出口チャネルと流体連通している低圧ポンプ入口と、低圧ポンプ入口と流体連通している高圧ポンプと、高圧ポンプと流体連通している高圧ポンプ出口と、高圧ポンプ出口と流体連通している切換弁であって、高圧の流体を含有し、かつ送達出口および放出口を有する切換弁と、切換弁に接続された制御機構と、送達出口と流体連通している可撓性コネクタと、可撓性コネクタと流体連通しているエアロゾル発生器と、放出口と流体連通している絞り機構とを含む装置である。
【0083】
本開示の別の実施形態は、装置であって、絞り機構は切換弁が放出口に流体を送達するときに切換弁の中で流体を高圧に維持する装置である。
本開示の別の態様は、装置であって、出口チャネルと流体連通しているリザーバと、出口チャネルと流体連通している低圧ポンプ入口と、低圧ポンプ入口と流体連通している高圧ポンプと、高圧ポンプと流体連通している高圧ポンプ出口と、高圧ポンプ出口と流体連通しているエアロゾル発生器とを含む装置である。
【0084】
本開示の別の実施形態は、装置であって、高圧ポンプ出口およびエアロゾル発生器と流体連通している可撓性コネクタをさらに含み、前記可撓性コネクタは高圧ポンプ出口およびエアロゾル発生器の両方を接続している、装置である。
【0085】
本開示の別の実施形態は、高圧ポンプが制御機構に接続されている装置である。
本開示の別の実施形態は、制御機構が予め設定された時間間隔で高圧ポンプを駆動するようにプログラムされている装置である。
【0086】
本開示の別の態様は、装置であって、高圧ポンプ出口およびエアロゾル発生器と流体連通している可撓性コネクタをさらに含み、前記可撓性コネクタは高圧ポンプ出口およびエアロゾル発生器の両方を接続しており、かつ、スイッチは電気リード線をさらに含む装置である。
【0087】
本開示の別の態様は、出口チャネルと流体連通しているリザーバと、出口チャネルと流体連通している低圧ポンプ入口と、低圧ポンプ入口と流体連通している高圧ポンプと、高圧ポンプと流体連通している高圧ポンプ出口と、高圧ポンプに接続された制御機構と、高圧ポンプ出口と流体連通している可撓性コネクタと、可撓性コネクタと流体連通しているエアロゾル発生器とを含む装置である。
【0088】
図13は、本開示の装置の一実施形態を示す。この実施形態では、リザーバ1301には液体が入っており、該液体は、出口チャネル1302を通ってリザーバを出て、次に低圧ポンプ入口1303に入る。該液体はその後、低圧ポンプ入口1303から高圧ポンプ1304の中へ移動し、高圧ポンプ出口1305に入る。該液体はその後、高圧ポンプ1304を作動させると、高圧ポンプ出口1304からエアロゾル発生器1309の中へ移動してエアロゾルを生じる。コイルのような可撓性コネクタ1312が高圧ポンプ出口1305とエアロゾル発生器1309との間に配置されて、高圧ポンプ出口1305から移動する液体が可撓性コネクタ1312に入り、次にエアロゾル発生器1309の中に移動するようになっていてもよい。本開示の装置は、約250μLからの任意の体積のサンプルを送達することが可能であり、好ましい総サンプル体積は約10ml〜約20mLである。送達は、好ましくは、操作者によって選択された、個々の、決められた時間のアリコートの形態でなされるか、または予め設定された時間間隔で高圧ポンプを駆動するようにプログラムされた制御機構によって調節される。制御機構は、操作者が制御するスイッチ、または例えばセンサにより起動される自動操作により、起動されうる。本開示の装置はさらに、約10μL以上の体積を含む任意の他の体積のサンプルを送達することもできる。例えば、約10μLまたは約125μLの体積が、一部の患者の肺性組織および非肺性組織の両方への送達について望ましい。
【0089】
本開示の別の態様は、装置であって、出口チャネルおよび放出口帰路と流体連通しているリザーバと、出口チャネルと流体連通している低圧ポンプ入口と、低圧ポンプ入口と流体連通している高圧ポンプと、高圧ポンプと流体連通している高圧ポンプ出口と、高圧ポンプ出口と流体連通している切換弁であって、高圧の流体を含有し、かつ送達出口および放出口を有する切換弁と、切換弁に接続された制御機構と、送達出口と流体連通している可撓性コネクタと、可撓性コネクタと流体連通しているエアロゾル発生器と、放出口および放出口帰路と流体連通している絞り機構であって、切換弁の中の流体を高圧に維持する絞り機構とを含む装置である。
【0090】
図5は、本開示の装置の別の実施形態を示す。この実施形態では、リザーバ501には液体が入っており、該液体は出口チャネル502を通ってリザーバを出て、次に圧力発生器515に入る。具体的には、液体は低圧ポンプ入口503に入る。該液体はその後、低圧ポンプ入口503から高圧ポンプ504の中へ移動し、高圧ポンプ出口505に入る。該液体はその後、高圧ポンプ出口505から、送達出口507および放出口508を有する切換弁506の中へ移動する。切換弁506からの流量は、切換弁506の状態を制御する制御機構513によって調節される。切換弁506がエアロゾルを生じるように構成されると、該液体は送達出口507を通ってエアロゾル発生器509の中へ移動し、エアロゾルを生産する。この実施形態では、延長部516がエアロゾル発生器509に接続される。コイルのような可撓性コネクタ512が送達出口507とエアロゾル発生器509との間に配置されて、送達出口507から出る液体が可撓性コネクタ512に入り、次いでエアロゾル発生器509の中へ移動するようになっていてもよい。切換弁506がエアロゾルを生じないように構成されると、液体は放出口508を通り抜けて絞り機構510に入る。液体はその後リザーバ501の放出口帰路514に入り、放出された液体がリザーバ501に入ることができるようになっている。
【0091】
放出口帰路は、流体を通過させて直接または間接的にリザーバ内へ移送することが可能な、リザーバ上に位置する内部通路または開口部を含む、取り付け部品、チューブまたは電機子であってよい。
【0092】
本開示の別の実施形態は、装置であって、絞り機構はほぼ円形の断面および0.13mm(0.005インチ)の直径を備えた長さ64mm(2.5インチ)の内部通路を含み、可撓性コネクタはポリエーテルエーテルケトンからなるコイルである装置である。
【0093】
本開示の別の実施形態は、スイッチは電気リード線をさらに含む装置である。
本開示の別の態様は、患者にエアロゾルを投与する方法であって、本開示の装置を提供する工程と、患者の標的組織に隣接してエアロゾル発生器を配置する工程と、エアロゾルを生産するために装置を作動させる工程とからなり、それによりエアロゾルが患者に投与される方法である。
【0094】
本開示の方法では、エアロゾル発生器は患者の任意の標的組織に隣接して配置することができる。これは、皮膚、眼などのような患者の身体の任意の外側部分に隣接してエアロゾル発生器を配置することにより遂行されうる。これはまた、患者の身体の開口部の中にエアロゾル発生器を挿入することによっても遂行されうる。そのような開口部は天然に存在するものでもよいし、最小限に侵襲的または侵襲的な手法によって作出されてもよい。そのような手法の例には、気管開口術、気管切開術、ミニ気管開口術、ミニ気管切開術、内視鏡的手法(scopic procedure)および観血的手法が挙げられる。場合によっては、組織に隣接して一続きの気体媒体を含んだ環境を提供することが必要な場合もある。これは、液体小滴のような液体または粒子状物質のような固体が気相中に混入してエアロゾルが形成されうることを可能にするために、十分な量の気体媒体を提供することにより、エアロゾル形成を促進するものである。そのような環境は、気体媒体を用いて身体の臓器または体腔を穏やかに膨張させることにより、該体腔または臓器内に作出(または維持)されうる。そのような環境は、粘着剤フィルムまたは部分的に開口している容器のような、剛性材料または可撓性材料の使用によって特定エリアに局所化されて、エアロゾルの送達を特定エリアに規定および制限することも可能である。エアロゾル発生器が、肺内の標的組織のような標的組織に接続している体腔または通路(例えば気管)の中への挿入によって、該標的組織に隣接して配置されてもよい。
【0095】
標的組織に隣接してエアロゾル発生器を配置するためのそのような手法はさらに、非標的組織に送達されるエアロゾルの量を最小限にすることからも、好都合である。しかしながら、ある場合には、標的組織は、エアロゾルの成分を遠位の活性部位へ送達するのを容易にする標的組織であってもよい。例えば、肺へのエアロゾル送達は、血流へのエアロゾル成分の送達をもたらしうる。同様に、神経組織へのエアロゾル送達は、遠位の活性部位へのエアロゾル成分の逆行性輸送または順行性輸送をもたらしうる。
【0096】
本開示の方法では、標的組織は患者の身体の任意の組織であってよい。例えば、そのような組織は、体腔または臓器に関連した粘液膜などの上皮組織であってよい。そのような組織はさらに、結合組織、筋組織、および神経組織であってもよい。呼吸器官内の組織、例えば肺の中の組織は、エアロゾルを投与することができる標的組織の具体例である。
【0097】
本開示の方法では、エアロゾルは患者に投与される。患者は、エアロゾルの投与を必要とする何らかの病態を有しうる。そのような病態には、がん、外傷、感染症、疼痛、遺伝的障害、高体温、脱水症、低体温および生体異物によって生じるものが挙げられる。そのような病態にはさらに、腫瘍(非悪性腫瘍など)および過形成も含まれうる。
【0098】
本開示の方法におけるエアロゾルは、分散相として液体を含むことができる。エアロゾル中の液体は、小液滴の形態である。これらの小滴はさらに、質量、または液体エアロゾルの形成と両立可能な他の物理的特性を有する固体を包含することができる。そのような固体の例には、例えば、生分解性の母材またはその他の固体材料を含む粒子、および薬学的に活性な作用物質の結晶が挙げられる。そのような固体は、エアロゾルに含めて投与される薬学的作用物質の送達または持続放出を促進することができる。エアロゾル中の液体は、水、イオンを含んでいる水溶液、ビタミンを含んでいる水溶液、緩衝水溶液、またはその他任意の種類の水溶液もしくは懸濁液であってよい。そのような液体は、例えば脱水症および電解質不均衡のような病態を有する患者に投与されうる。エアロゾル中の液体はさらに、薬学的作用物質、例えば有機小分子、ペプチド鎖、抗体、抗体断片、ポリヌクレオチドまたはこれらの組み合わせを含むこともできる。液体エアロゾルに含めることができる物質の他の例には、例えば、抗生物質、麻酔薬、気管支拡張薬、ワクチン、抗炎症剤、リポ多糖類、好中球エラスターゼ、好中球エラスターゼ阻害剤、サーファクタント、放射性同位体、エピネフリン、ヘパリン、L‐ドーパ、細胞、COX‐2阻害剤、遺伝子治療剤、マイクロ粒子およびナノ粒子が挙げられる。
【0099】
本開示の方法のエアロゾルはさらに、分散相として固体を含むこともできる。エアロゾル中の固体は、粒子状物質または破砕性物質の形態であってよい。粒子状物質はさらに、質量またはエアロゾルの形成と両立可能な他の物理的特性を有する液体を包含することができる。そのような固体の例には、例えば、生分解性の母材またはその他の固体材料を含む粒子、および薬学的に活性な作用物質の結晶が挙げられる。そのような固体はさらに、緩衝液または薬学的に活性な作用物質のような流体を含有してもよい。そのような固体は、エアロゾルに含めて投与される薬学的作用物質の送達または持続放出を促進することができる。エアロゾル中の固体はさらに、薬学的作用物質、例えば有機小分子、ペプチド鎖、抗体、抗体断片、ポリヌクレオチドまたはこれらの組み合わせを含むこともできる。固体エアロゾルに含めることができる物質の他の例には、例えば、抗生物質、麻酔薬、気管支拡張薬、ワクチン、抗炎症剤、リポ多糖類、好中球エラスターゼ、好中球エラスターゼ阻害剤、サーファクタント、放射性同位体、エピネフリン、ヘパリン、L‐ドーパ、細胞、COX‐2阻害剤、遺伝子治療剤、マイクロ粒子およびナノ粒子が挙げられる。
【0100】
本開示の方法におけるエアロゾルはさらに、連続相として気体も含む。外気以外である場合、連続相は、分散相に付随して送達される1種またはそれ以上の気体を含むことができる。例えば、エアロゾル中の気体は、純酸素または例えば空気のような他の酸素含有混合物を含むことができる。酸素ガスを含むエアロゾルは、低酸素症状を有する患者に投与されうる。エアロゾル中の気体混合物は、連続相の密度を変更して液体小滴の懸濁を促進するため、または例えば肺のような標的組織に送達されるエアロゾルの滞留時間を増大させるために、選択されることも可能である。窒素ガスは、連続相の密度を変更するかまたは標的組織中でのエアロゾルの滞留時間を増大させることができる気体の一例である。エアロゾル中の気体はさらに、1つまたは複数の薬学的に活性な作用物質を含むことができる。気体は、アルコール、エーテルまたは他の薬学的に活性な気相の分子を含むことができる。例えば、気体はエタノール、ジエチルエーテルまたは亜酸化窒素を含むことができる。
【0101】
エアロゾル中に含めて患者に投与されうる薬物および関連疾患または他の病態の例は、表1に列挙されている。
【0102】
【表1】
表2は、本開示の装置または方法を用いた患者へのエアロゾル投与が望ましい可能性のあるその他の病態(または状況)をさらに列挙している。
【0103】
【表2】
表3は、本開示の装置または方法を用いて患者へエアロゾルに含めて投与することが可能な組成物およびその他の物質、例えば生物体の例をさらに列挙している。
【0104】
【表3】
本開示の装置および方法は、抗微生物剤、例えばアモキシシリン、アンピシリン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例えばストレプトマイシン)、マクロライド(例えばエリスロマイシンおよびその類縁物)、クロラムフェニコール、イベルメクチン、リファマイシン、およびポリペプチド系抗生物質(例えばポリミキシン、バシトラシン)およびツヴィッターマイシンを送達するために使用することもできる。そのような抗微生物剤は、例えば、結核菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、酵母、セラチア、大腸菌および緑膿菌の感染症を治療するために使用することができる。
【0105】
該装置および方法は、例えば短時間作用型β
2アゴニスト、長時間作用性型β
2アゴニスト、抗コリン作用薬、コルチコステロイド、全身性コルチコステロイド、肥満細胞安定化薬、ロイコトリエン修飾物質、メチルキサンチン、β
2アゴニスト、アルブテロール、レバルブテロール、ピルブテロール、アルトホルモテロール(artformoterol)、ホルモテロール、サルメテロール、抗コリン作用薬、例えばイプラトロピウムおよびチオトロピウムなど;コルチコステロイド、例えばベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン、トリアムシノロン、メチプレドニゾロン(methyprednisolone)、プレドニゾロン、プレドニゾンなど;ロイコトリエン修飾物質、例えばモンテルカスト、ザフィルルカストおよびジレウトンなど;肥満細胞安定化薬、例えばクロモリンおよびネドクロミルなど;メチルキサンチン、例えばテオフィリンなど;配合剤、例えばイプラトロピウムとアルブテロール、フルチカゾンとサルメテロール、ブデソニドとホルモテロールなど;抗ヒスタミン剤、例えばヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、セチリジン、およびヒドロコルチゾンなど;免疫系修飾剤、例えばタクロリムスおよびピメクロリムスなど;シクロスポリン;アザチオプリン;ミコフェノール酸モフェチル;マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、例えばMMP‐9およびMMP‐2の阻害剤、ならびにこれらの組み合わせ、のような作用物質を送達するために使用することもできる。
【0106】
該装置および方法は、例えば、シクロスポリン、ヒアルロン酸、カルメロース、マクロゴール、デキストランおよびヒプロロース(hyprolose)、ナトリウムおよびカルシウム、ナトリウムおよびポビドン、ヒプロメロース、カルボマー、アミカシン、ゲンタミシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ゲルダナマイシン、ヘリマイシン(herimycin)、ロラカルベフ、エルタペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(cefalotin)/セファロチン(cefalothin)、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セホキシチン、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェプライム(cefeprime)、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ペペラシリン(peperacillin)、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェニド、プロトジル(protosil)、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム・スルファメトキサゾール配合剤、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコアマイシン(lincoamycin)、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン/リファンピシン、チミダゾール(timidazole)、ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テロナゾール(teronazole)、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、ブテナフィン、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、シクロピロックス、フルシトシン、グリセオフルビン、ゲンチアナバイオレット、ハロプロジン、トルナフタート、ウンデシレン酸、ならびにこれらの組み合わせなどの作用物質を送達するために使用することもできる。
【0107】
本開示の別の実施形態は、方法であって、標的組織が、腹腔、頭蓋腔、胃腸管、副鼻腔、骨盤腔、生殖器官、呼吸器官、胸腔および脊椎腔からなる群から選択された少なくとも1つに位置している。
【0108】
上記体腔における標的組織の例には、鼻、口腔、咽喉、耳、眼、副鼻腔、肺、胃、結腸、尿道、膀胱、子宮、膣、ファロピアン管および卵巣の組織が挙げられる。IA‐1Cエアロゾル発生器のようなエアロゾル発生器は、頭蓋腔、骨盤腔または脊椎腔へのエアロゾル送達を容易にする小さな直径(例えば0.64mm)を有することが好ましい。
【0109】
本開示の別の実施形態は、方法であって、患者が、喘息、がん、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、脱水症、糖尿病、遺伝病、低酸素症、感染症、炎症性疾患、骨粗鬆症、疼痛、パーキンソン病、呼吸窮迫症候群および外傷からなる群から選択された少なくとも1つの病態を有する。
【0110】
本開示の別の実施形態は、方法であって、標的組織が肺に位置している。
本開示の別の実施形態は、方法であって、エアロゾル発生器が患者の身体の開口部の中へ挿入される。
【0111】
本開示の別の実施形態は、方法であって、開口部が患者の身体の切開部である。
本開示の別の態様は、患者の肺へ化学療法剤エアロゾルを投与する方法であって、リザーバに化学療法剤が入っている本開示の装置を提供する工程と、患者の肺の標的組織に隣接してエアロゾル発生器を配置する工程と、化学療法剤エアロゾルを生産するために装置を作動させる工程とからなり、それにより化学療法剤エアロゾルが患者の肺に投与される方法である。
【0112】
本開示の方法では、化学療法剤エアロゾルが投与されうる。そのようなエアロゾルは少なくとも1つの化学療法剤を含むことができる。そのような化学療法剤には、急速に分裂するがん細胞を死滅させる薬学的作用物質が含まれ、また抗腫瘍薬が含まれる。そのような化学療法剤は、例えば、有機小分子、ペプチド鎖、抗体、抗体断片、ナノ粒子製剤、siRNA製剤、ポリヌクレオチドまたはこれらの組み合わせを含むことができる。液体のような流体中に含められた化学療法剤は、化学療法剤エアロゾルである液体エアロゾルを形成するために、エアロゾル化されうる。別例として、化学療法剤エアロゾルは、液体が化学療法剤(ビス‐(2‐クロロエチル)スルフィド(g)など)を含有する連続相を含む気体中にエアロゾル化される場合にも形成されうる。化学療法剤エアロゾルは、固体の化学療法剤が粒子状物質または破砕性物質として提供されてエアロゾル化されて、固体エアロゾルを形成する場合にも形成されうる。化学療法剤エアロゾルを形成するこれらの手法の組み合わせが使用されてもよい。
【0113】
本開示の別の実施形態は、方法であって、化学療法剤がシスプラチンである。したがって、本開示の方法に有用な化学療法剤の一例はシスプラチンである。他の例には、タンパク質結合パクリタキセル調製物(例えばABRAXANE(登録商標))、タキソールおよびゲムシチビン(gemcitibine)が挙げられる。
【0114】
本開示の別の実施形態は、方法であって、エアロゾル発生器が患者の身体の切開部の中に挿入される。
例えば、特別に長いカテーテルが、他の方法で到達可能と思われるよりもはるかに深い位置の生体組織検査を可能にするための専門機器および位置決めソフトウェアの助けを借りて、患者の切開部または他の開口部に挿入されてもよい。開示された装置およびエアロゾル発生器は、そのような特別に長いカテーテルを介してこの深い位置まで届くのに十分に狭小であることが可能であり、かつ、非常に長いチューブを下るように投薬量を押し進めて、化学療法剤で病変部を直接満たすこともできる。
【0115】
本開示の別の実施形態は、患者へ化学療法剤エアロゾルを投与する方法であって、本開示の装置を提供する工程と、該装置に化学療法剤を供給する工程と、患者の標的組織に隣接してエアロゾル発生器を配置する工程と、化学療法剤エアロゾルを生産するために装置を作動させる工程とからなり、それにより化学療法剤エアロゾルが患者に投与される方法である。
【0116】
本開示の別の態様は、圧力発生器と流体連通しているリザーバと、圧力発生器と流体連通している可撓接続と、圧力発生器と流体連通しているエアロゾル発生器とを含む装置である。
【0117】
ポンプは圧力発生器の一例である。加圧流体タンクは圧力発生器の別例である。プロペラは圧力発生器の別例である。内部または外部のいずれかから加圧済みの可撓性ブラダーは圧力発生器の別例である。圧力発生器はさらに、流体を移動させるために真空を適用する場合もある。当業者であればその他の圧力発生器も容易に認識するであろう。
【0118】
本開示の別の態様は、圧力発生器と流体連通しているリザーバと、圧力発生器と流体連通しているエアロゾル発生器と、エアロゾル発生器に取り付けられた延長部とを含む装置である。
【0119】
本開示の別の実施形態は、延長部が、ラミネート、繊維強化ポリマー、金属、金属合金およびポリマーからなる群から選択された少なくとも1つからなる装置である。
本開示の別の実施形態は、延長部がポリエーテルエーテルケトンからなる装置である。
【0120】
本開示の別の実施形態は、延長部がセンサを含む装置である。
本開示の別の態様は、患者に化学療法剤エアロゾルを投与する方法であって、本開示の装置を提供する工程と、該装置に化学療法剤を供給する工程と、患者の標的組織に隣接して延長部を配置する工程と、化学療法剤エアロゾルを生産するために装置を作動させる工程とからなり、それにより化学療法剤エアロゾルが患者に投与される方法である。
【0121】
本開示の別の実施形態は、方法であって、延長部が患者の身体の開口部の中に挿入される。
本開示の装置および方法はさらに、標的組織またはその他の表面に対して固体エアロゾルを生産または投与するために、乾燥粉末噴霧器と共に使用されてもよい。本開示の方法はさらに、本明細書中に開示されたいずれの装置を使用して実施されてもよい。
【0122】
装置および方法について、その特定形態に関して説明してきたが、当然ながら、添付の特許請求の範囲に記載されているような本開示の思想および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載された特定の要素の代わりに種々様々の等価物を用いることが可能である。