(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5844908
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】液位監視器
(51)【国際特許分類】
G01F 23/26 20060101AFI20151224BHJP
【FI】
G01F23/26 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-528922(P2014-528922)
(86)(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公表番号】特表2014-526677(P2014-526677A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012065909
(87)【国際公開番号】WO2013034412
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】102011053407.5
(32)【優先日】2011年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502216886
【氏名又は名称】ベコー テヒノロギース ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(72)【発明者】
【氏名】フェルトゲン、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジンステーデン、ヨイネス
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−287998(JP,A)
【文献】
米国特許第06407557(US,B1)
【文献】
特開2008−116385(JP,A)
【文献】
特開昭63−267002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/26
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体(2)で充てん可能な貯蔵容器(4)の液位調節方法であって、電気容量が少なくとも該貯蔵容器の一定の液位範囲内で液位と相関して連続的に変化する測定コンデンサ(8)を備えた監視回路(15)によって、液位が監視され、以下のステップ:
‐測定コンデンサ(8)の電気容量を測定するステップ;
‐測定コンデンサ(8)のQ値を測定するステップ;
‐測定コンデンサ(8)のQ値に基づいて誘電体(2)の誘電率を決定するステップ;
‐測定された、測定コンデンサ(8)の電気容量および誘電体の誘電率に基づいて、貯蔵容器(4)の液位を決定するステップ;を含み、
‐液位に応じて貯蔵容器から誘電体(2)を排出させるステップと、
上記測定コンデンサ(8)のQ値は、動作基点の変化、または、監視回路(15)の回路のQ値の変化の前後の、監視回路(15)の出力電圧の差を測定することにより測定され、
上記監視回路はSCエレメントを含み、該SCエレメント(20)は、上記測定コンデンサ(8)および少なくとも1つのスイッチング部材(S5;S1、S2)を備えており、
動作基点の変化または回路のQ値の変化のために、それぞれ少なくとも1つのオーム抵抗(P1;R1、R2)が、上記少なくとも1つのスイッチング部材(S5;S1、S2)に直列に高められるか、または、前記SCエレメントのスイッチング周波数のパルス/休止比が変更されることと、を特徴とする、液位調節方法。
【請求項2】
上記誘電体(2)は、貯蔵容器内の予め設定された液位(5)に達したときに、該貯蔵容器から排出されることを特徴とする、請求項1に記載の液位調節方法。
【請求項3】
誘電体(2)で充てん可能な貯蔵容器(4)の液位監視のための監視回路(15)であって、
該監視回路(15)は、該貯蔵容器(4)に所属する少なくとも1つの測定コンデンサ(8)を備え、該測定コンデンサ(8)の電気容量は、少なくとも該貯蔵容器(4)の一定の液位範囲内で液位と相関して連続的に変化し、
該監視回路(15)は、測定コンデンサ(8)の電気容量および測定コンデンサ(8)のQ値が測定され、測定コンデンサ(8)のQ値に基づいて誘電体(2)の誘電率が決定され、測定された測定コンデンサ(8)の電気容量と、測定された誘電体(2)の誘電率とに応じて、該貯蔵容器(4)の液位が測定されるように構成され、
上記測定コンデンサ(8)のQ値は、動作基点の変化、または、監視回路(15)の回路のQ値の変化の前後の、監視回路(15)の出力電圧の差を測定することにより測定され、
上記監視回路はSCエレメントを含み、該SCエレメント(20)は、上記測定コンデンサ(8)および少なくとも1つのスイッチング部材(S5;S1、S2)を備えており、
動作基点の変化または回路のQ値の変化のために、それぞれ少なくとも1つのオーム抵抗(P1;R1、R2)が、上記少なくとも1つのスイッチング部材(S5;S1、S2)に直列に高められるか、または、前記SCエレメントのスイッチング周波数のパルス/休止比が変更されることを特徴とする、液位監視のための監視回路(15)。
【請求項4】
上記監視回路(15)は、その監視回路(15)が第1の運転状態と、第2の運転状態との間で切り換えられ、第1の運転状態において、上記測定コンデンサ(8)の電気容量が測定され、第2の運転状態において、上記測定コンデンサ(8)のQ値が測定されるように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の監視回路(15)。
【請求項5】
運転状態を切り換えるために、上記SCエレメント(20)と直列に接続された1つの抵抗(P1;R1、R2)が変更されていることを特徴とする、請求項3または4に記載の監視回路(15)。
【請求項6】
第2の運転状態において、少なくとも1つの高オーム抵抗(P1;R1、R2)が、少なくとも1つのスイッチング部材(S5;S1、S2)に直列に接続されていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の監視回路(15)。
【請求項7】
少なくとも第2の運転状態において、上記SCエレメント(20)のスイッチング時間が変更されることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の監視回路。
【請求項8】
第1の運転状態において、1つの抵抗(P1;R1、R2)は、上記スイッチング部材(S5;S1、S2)と直列に低オーム性であるか、または、分路されていることを特徴とする、請求項6に記載の監視回路(15)。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の監視回路(15)と、貯蔵容器(4)とからなる構造であって、1つの測定コンデンサ電極(8.1)が少なくとも部分的に上記貯蔵容器(4)よりなることを特徴とする、構造。
【請求項10】
凝縮液排出装置(1)から凝縮液(2)を排出するための、制御された凝縮液排出バルブ(6)であって、該凝縮液排出バルブ(6)が、請求項3〜9のいずれか1項に記載の、凝縮液貯蔵容器(4)の液位監視のための監視回路(15)を有する、凝縮液排出バルブ(6)。
【請求項11】
上記凝縮液排出バルブ(6)は、上記監視回路(15)により上記凝縮液排出バルブ(6)の開度が制御されるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の凝縮液排出バルブ(6)。
【請求項12】
少なくとも1つの凝縮液貯蔵容器(4)と、請求項10または11に記載の凝縮液排出バルブ(6)とを含む、凝縮液排出装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体、好ましくは、凝縮液で充てん可能な貯蔵容器の液位監視方法と、その方法に付属する、測定コンデンサのための監視回路とに関し、該測定コンデンサは、貯蔵容器の液位に依存して連続的に変化する電気容量を有する。さらに、本発明は、凝縮液排出バルブおよび凝縮液排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、液位監視のための様々な装置および方法が知られている。蒸気配管または圧力配管の中に発生する凝縮液を、例えば水蒸気または圧縮空気の形で相当量の気体が配管から漏れ出すことなく、凝縮液貯蔵容器に自動的に排出する凝縮液排出装置は、通常液位監視器を備えている。
【0003】
圧縮空気技術において、凝縮液排出装置は、凝縮液を圧力配管網から排出するために用いられる。凝縮液は、主として、空気圧縮機が吸引する周囲の空気の水分に由来する。凝縮液排出装置には、様々な構造形態がある。凝縮液排出装置は、原理的には、1つのバルブが開かれ、これにより凝縮液が圧縮空気配管網からその圧縮空気配管網内の圧力により圧出されることにより作動する。このような装置は、バルブの駆動方法およびエネルギー供給方法により区別されている。
【0004】
フロート式排出装置は、その中に溜まる凝縮液の中で自らの浮力により押し上げられてバルブを作動させる中空体により機能する。該バルブは、たいてい間接的にサーボ制御により流出口を開き、該流出口を通って凝縮液が押し出される。
【0005】
さらに、電気的に作動され、時間で制御されている磁気バルブが知られており、該磁気バルブは、設定可能な、しかし、予め設定された時間間隔で開く。欠点は、該磁気バルブが、液位に依存せずに、凝縮液がないときにも開くため、流出する圧縮空気により高いエネルギー損失が生じることである。
【0006】
これに対して、電気的に液位によって制御されるバルブは、溜まる液体量を、定量的な液位監視を可能にする電子センサによって検出する。所定の量に達したときに、上記バルブが開かれ、厳密にその量が、圧縮空気の損失なしに排出される。従って、電気的に液位によって制御されるバルブを有する凝縮液排出装置は、圧縮空気の損失と、これに伴う、エネルギーの損失が少ないことからとりわけ有利であり、先行技術としての地位を確立している。
【0007】
液位検出のための容量測定と、特にサーボ制御されているダイヤフラムバルブとを用いて作動する凝縮液排出装置は特に重要である。容量測定は、凝縮液が誘電体として流入するときに液位とともに変化する電気容量により、凝縮液貯蔵容器の液位を検出する。運転状況および周囲状況に応じてオイルおよび/または汚染による上記凝縮液への負荷が異なること、および、これらの追加的な成分が容量にかなりの影響を及ぼすことにより、この従来技術から知られている液位監視器は、場合によっては、実際の液位を確実に評価することができない。
【0008】
例えば、EP 039125081 B1には、圧縮空気システムに継続的に接続されている凝縮液貯蔵室と、その貯蔵室の排出部を閉鎖するダイヤフラムバルブとを備えた、圧縮空気システムまたはそれに類似するシステムから凝縮液を排出するための装置が記載され、その貯蔵室内には、異なる液位を検出する、上記ダイヤフラムバルブを電子機器および制御バルブを介して制御する、2つの容量センサが配置されている。これらの2つのセンサは、垂直に貯蔵室に突き出る、外部の端部において閉鎖されている管の中に、垂直に互いに隔てられて備えられ、該センサは、プレ制御排出部を貯蔵室から制御する制御バルブと電気的に接続されている。
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明の課題は、実際の液位をより確実に検出できる方法、および液位監視または液位制御のための回路を提供することである。 上記課題は、本発明によれば、請求項1に係る貯蔵容器の液位調節方法と、請求項6に係る貯蔵容器の液位監視のための装置と、請求項15に係る制御された凝縮液排出バルブと、請求項17に係る凝縮液排出装置とにより解決される。さらなる好ましい実施形態は、以下の説明および下位の請求項から明らかとなる。説明されている実施形態のそれぞれの特徴は、その実施形態に限定されるものではなく、任意に互いにおよび他の特徴とともに、さらなる実施形態に結合されていてもよい。
【0010】
貯蔵容器の液位調節方法が提供され、該貯蔵容器は誘電体で充てん可能である。電気容量が少なくとも該貯蔵容器の一定の液位範囲内で、液位と相関して連続的に変化する測定コンデンサを備えた監視回路によって、液位が監視される。上記方法は、以下のステップを含む: ・測定コンデンサの電気容量を測定するステップ; ・測定コンデンサのQ値を測定するステップ; ・測定コンデンサのQ値に基づいて誘電体の誘電率を決定するステップ; ・測定された、測定コンデンサの電気容量および誘電体の誘電率に基づいて、貯蔵容器の液位を決定するステップ; ・液位に応じて、例えば、予め設定された液位となったときに、貯蔵容器から誘電体を排出させるステップ。
【0011】
提案されている上記方法の有利な点は、より正確な、且つ、より確実な、質的な液位制御である。実際の液位の指標となる、測定された電気容量は、液と、溜まる誘電体の誘電率とに依存する。測定されたQ値から誘電率を導き出すことができ、これに伴い、電気容量と誘電率との2つの変数を決定することにより確実に、且つ、正確な液位の確定が可能になることが明らかになった。組成が異なる場合には異なる誘電率が導き出されるので、電気容量の検出は、せいぜい一定の予め決められた組成について、正確な、すなわち、実際の液位に相当する液位情報を提供する。本発明のQ値測定により、誘電体の組成を逆に推定することができるので、これに応じて、電気容量と液位の割り当てを補正、例えば、増やしたり減らしたりできる。電気容量およびQ値の測定により、さらに、方法の確実性を高める信頼性検査が可能となる。よって、上記1つまたは両方の測定値が所定の値を超える、または、下回ることは、機能不良または電磁波妨害の指標となりうる。
【0012】
本発明において、上記誘電体は、上記貯蔵容器を満たすことができる、任意の凝集状態にある任意の物質であり得る。好ましくは、該誘電体は、水を主成分として含む凝縮液である。追加的な成分は、例えば、オイルおよび/または固体の粒子、例えば、金属の粒子である。
【0013】
本発明の意図するところでは、Q値は、振動する系、例えば、測定コンデンサまたは監視回路の減衰の尺度である。Q値は、一般的に、振動する系において、エネルギーが、転換された損失エネルギーに対して、蓄えられ得る程度を表す。
【0014】
一実施形態では、上記測定コンデンサのQ値は、監視回路における回路のQ値の変化の前後の、監視回路の出力電圧の差を測定することにより決定される。好ましくは、上記測定コンデンサは、1つのSCエレメント内に組み入れられている。該SCエレメントは、一実施形態では、測定コンデンサ以外に、少なくとも1つの、好ましくは単極の切り替えスイッチを含み、該切り替えスイッチは、測定コンデンサを、交互に、入力電圧および出力部に接続する。SCエレメントを構成するために、2つ以上の切り替えスイッチが備えられていてもよい。該SCエレメントの基本原理は、コンデンサが、交互に、入力電圧と出力部との間で切り替えられることである。
【0015】
スイッチトキャパシタエレメント(SCエレメント)は、通常、アナログ式のフィルタ回路において用いられる。このような構造により、特定の拘束条件を遵守する場合には、遮断周波数が、例えばSCエレメントの制御周波数のみに依存するフィルタを構築することができる。SCエレメントをセンサにおいて使用することは従来知られていない。
【0016】
SCエレメントの場合には、想定される等価抵抗が、用いられているコンデンサの大きさと用いられているスイッチング周波数とに依存することが証明され得る。それゆえ、用いられているコンデンサの電気容量を、当価抵抗と、用いられているスイッチング周波数とから逆算することができ、このようにして、未知のセンサ・コンデンサの理論的な電気容量を決定することができる。
【0017】
本発明の意図するところでは、入力電圧とは、SCエレメントに印加される、電流源または電圧源側の電圧と理解される。これは、必ずしも上記回路のための電源電圧でなくてもよい。寧ろ、一変形例では、上記SCエレメントの前に、少なくとも1つの、例えば、可変抵抗が接続されていてもよい。好ましくは、入力電圧は、切り替えスイッチの接続部に印加される。
【0018】
本発明の意図するところでは、SCエレメントの出力部は、SCエレメントまたは切り替えスイッチの接続部であり、該切り替えスイッチは、入力電圧に対向する。上記コンデンサは、例えば、切り替えスイッチの共有の中央接続部に接続されている。
【0019】
一実施形態では、動作基点または回路のQ値を変更するために、それぞれ少なくとも1つのオーム抵抗が、上記少なくとも1つのスイッチング部材、特に、SCエレメントに直列に高められている。一実施形態では、該抵抗器が加えられるか、または、その抵抗器の分路が遮断される。さらなる一実施形態では、特にポテンシオメータを作用させることにより、抵抗値を変化させる。好ましい一実施形態では、上記SCエレメントの前に、可変抵抗器または選択可能な抵抗器が接続される。抵抗の変更により、監視回路の動作基点が変更される。
【0020】
物理的に理想的な部材のみが回路に関与するのであれば、スイッチング周波数のパルス/休止比の変更、または、追加の抵抗器を組み込むことによる、回路の動作基点の移動への影響はない。しかし、実際に、実存する部材では、センサ・コンデンサのQ値への関連づけを可能にする回路の特性の重大、且つ、再現可能な変化が発生することが明らかになった。この差異は、必ずしも正の変化のみ、または、負の変化のみに限られるものではなく、実際の変化の方向は、回路の動作基点の操作方法に依存する。好ましくは、“名目電気容量”と“動作基点が移動した場合に測定された電気容量”との差が評価される。その差異は、例えば、特性曲線図に示され得る。マイクロコントローラは、上記特性曲線図において、相当する一致を発見し、好ましくは、監視回路のQ値、または、コンデンサのQ値に関する評価を行い得る。また、コンデンサのQ値は、貯蔵容器内の誘電体の誘電率と相関関係にあるため、誘電体の誘電率を推測することができる。
【0021】
誘電体を液位に応じて排出することは、本発明の意図するところでは、広く解釈すべきであり、例えば、測定された液位に応じて排出の、時間、量、時点および/または頻度を選ぶことを含む。 一実施形態では、貯蔵容器内の予め設定された液位を超えるときに、誘電体が該貯蔵容器から排出されるようになっている。
【0022】
例えば、液位が定められた値を超えた場合に排出バルブが開かれる。さらに一実施形態では、液位が特定の値を下回った場合に上記排出バルブが閉じられるようになっている。さらなる好ましい実施形態では、排出バルブの流量を決める、排出バルブの開度が、測定された液位に応じて決定される。一例を挙げれば、液位が定義されている上限に達した場合には、排出バルブは最大限に開いており、液位が定義されている下限に達した場合には、排出バルブは閉じられている。
【0023】
さらに、誘電体で充填可能な貯蔵容器の液位監視のための監視回路が提案される。該監視回路は、貯蔵容器に所属する少なくとも1つの測定コンデンサを備え、該測定コンデンサは、液位に応じて連続的に変化する電気容量を有する。上記監視回路は、測定コンデンサの電気容量および測定コンデンサのQ値を測定可能であり、測定コンデンサのQ値から誘電体の誘電率を推測可能であり、測定された測定コンデンサの電気容量と、測定された誘電体の誘電率とに応じて、貯蔵容器の液位を決定可能となっている。測定コンデンサの電気容量は、一方では、貯蔵容器の液位に依存して、他方では、貯蔵容器内に溜まる誘電体の誘電特性に応じて変化する。誘電率は、測定コンデンサのQ値から算出することが可能であり、これにより液位を正確に決定することができる。本発明では、上記理由から、コンデンサの電気容量に加えて、誘電体の組成が異なっている場合に、得られたデータから液位を精密に測定するために、誘電体の誘電率をも測定することが提案される。提案されている液位監視は、従って、広範囲で、貯蔵容器内にある誘電体の組成に依存しない。例えば、上記誘電体は、異なる量のオイル成分を含む水性凝縮液である。さらに、該凝縮液は、不純物として金属の固体粒子を含んでもよい。
【0024】
特に好ましくは、上記監視回路はSCエレメントを備え、該SCエレメントを介して、液位と誘電体の誘電率とに関連して電圧が低下する。さらに、好ましくは、動作基点を変更するための手段が備えられている。該手段は、例えば、可変抵抗器または、選択可能な抵抗器であり、該抵抗器は、好ましくは、SCエレメントの前に接続されている。可変抵抗器は、例えば、ポテンシオメータ、好ましくは、電子ポテンシオメータである。
【0025】
一実施形態では、上記監視回路は、第1の運転状態と、第2の運転状態との間で切り換えが可能であり、第1の運転状態では、上記測定コンデンサの電気容量が測定可能であり、第2の運転状態では、上記測定コンデンサのQ値が測定可能となっている。特に好ましい変形例では、運転状態は、回路が稼働する動作基点により定義される。好ましくは、運転状態間の切り替えは、監視回路において、少なくとも1つの抵抗器を接続するか若しくは接続を断つこと、または、抵抗を変化させることにより行われる。
【0026】
運転状態間の切り換えが可能であることにより、少なくとも部分的に監視回路の部材を、
2つの異なる測定作業のために使用できる。有利には、監視回路の変更可能な動作基点を有する実施形態では、好ましくはSCエレメントの前に接続されている抵抗を変えることにより、コスト削減と共に、より高い集積度が達成される。
【0027】
好ましい一実施形態では、上記監視回路は、特に積分器として接続されている、1つのオペアンプを備えている。好ましくは、SCエレメントの出力部は、上記オペアンプの好ましくは反転入力部と相互接続されている。
【0028】
提案されている監視回路の有利な点は、感度が非常に高いことである。用いられている部材の寸法に応じて、測定コンデンサの電気容量の変化は、数フェムトファラッドの領域で検出され得る。
【0029】
特に好ましい一実施形態では、上記測定コンデンサの1つの測定コンデンサ電極は、少なくとも部分的に貯蔵容器、すなわち、上記誘電体を収容する容器自体よりなっている。
【0030】
例えば、上記測定コンデンサの第1のコンデンサ電極は、貯蔵容器により規定される、誘電体を収容するための容積の中、例えば中心に配置され、第2のコンデンサ電極は、好ましくは金属の貯蔵容器により定義される。好ましくは、上記測定コンデンサは、上記電極の間の間隔が、コンデンサ電極の間にある液体の誘電体に対する相当程度の毛管現象が回避されるような寸法であるように構成されている。上記間隔は、使用が予定されている誘電体に合わせた寸法となっている。好ましくは、上記コンデンサ電極の間隔は、約1cmより大きく、特に好ましくは約5cmより大きい。 上記概念“約”は、当該技術分野において通常と考えられている許容誤差範囲を表す。特に、“約”は、±10%、好ましくは±5%の許容誤差を表す。
【0031】
さらなる一実施形態では、上記貯蔵容器は、内部および/または外部において金属の被覆が設けられ、該被覆は、上記第2のコンデンサ電極を形成する。さらなる一実施形態では、貯蔵容器は金属を含むか、または、金属からなる。
【0032】
変形例では、監視回路は以下の構造を有する:1つの切り替えスイッチが、共有の中央接続部(COM‐接続部)を介して測定コンデンサの電極に接続されている。第1の切り換え可能な接続部は、可変抵抗器、例えば、ポテンシオメータに接続されている。第2の切り換え可能な接続部は、マイクロコントローラのAD入力部に接続されている。該ポテンシオメータを作動させることにより、監視回路の動作基点は変更される。上記監視回路は、ポテンシオメータが低オームである場合には第1の運転状態に、ポテンシオメータが高オームである場合には第2の運転状態にあることが好ましい。本発明の意図するところでは、“低オーム”とは、ポテンシオメータが、無視できるほど低い抵抗を有することであると理解される。そのような抵抗は、特に線路抵抗に相当し、例えば、約1Ω以上約1kΩ以下、さらに好ましくは、約1Ω以上約100Ω以下である。本発明の意図するところでは、“高オーム”とは、ポテンシオメータが、監視回路の動作基点を著しく変更する抵抗を有することと理解される。高オーム抵抗の値は、例えば、約1kΩ以上、好ましくは、約10kΩを超える。
【0033】
好ましい一実施形態では、少なくとも第2の運転状態において、上記SCエレメントのスイッチング時間が変更される。本発明の意図するところでは、スイッチング時間の変更とは、SCエレメントのスイッチング部を作動させる信号の周波数および/またはパルス幅の変更であると理解される。好ましくは、パルス幅/休止幅比は、約70%以下約50%以上の休止幅(ローレベル)に対して、約30%以上約50%以下のパルス幅(ハイレベル)、好ましくは約50%の休止幅に対して約50%のパルス幅から、著しくより狭いパルス幅/休止幅比に変更され、著しくより狭いパルス幅/休止幅比は、約99%以下約80%以上の休止幅に対して約1%以上約20%のパルス幅、好ましくは約95%の休止幅に対して約5%のパルス幅である。スイッチング時間の変更により、少なくともQ値を測定することができるか、またはより正確に測定することができる。
【0034】
さらなる好ましい一実施形態では、監視回路は2つのスイッチング部材を有する。好ましくは、第2の運転状態では、第1の抵抗器が第1のスイッチング部材と直列に接続され、第2の抵抗器が第2のスイッチング部材と直列に接続されている。特に、第1の運転状態では、上記第1の抵抗器および/または上記第2の抵抗器は分路されている。好ましくは、第1の抵抗器はSCエレメントの前に接続され、第2の抵抗器はSCエレメントの後に接続される。
【0035】
さらに、凝縮液排出装置から凝縮液を排出するための、制御された凝縮液排出バルブが提案され、該凝縮液排出バルブは、凝縮液を収容するための貯蔵容器の液位監視のための、上述した装置を備えている。好ましくは、該凝縮液排出バルブはダイヤフラムバルブを備えている。一実施形態では、上記装置により、凝縮液排出バルブの開度が調節され得るようになっている。
【0036】
さらに、少なくとも1つの凝縮液貯蔵容器と1つの凝縮液排出バルブとを含む凝縮液排出装置が提案される。例えば、該凝縮液排出装置は、圧縮空気システムの中で用いることができる。
【0037】
さらなる好ましい実施形態は、以下の図面により説明される。しかし、該図面に示されている発展形態は、限定的に解釈されるべきではなく、寧ろ、該図面に示されている特徴は、互いに、および、上述した特徴と、さらなる実施形態に組み合わせられ得る。さらに、図面の説明において挙げられている参照番号により、本発明の保護範囲が限定されることはなく、参照番号は単に図面に示されている実施例を参照するものであることは、指摘されなければならない。同一の部分、または同一の機能を有する部分は、以下、同一の参照番号により参照される。図面には以下のものが示される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】は、
図1による凝縮液排出装置の液位監視のための装置を示し;
【
図3】は、
図1による凝縮液排出装置の液位監視のための他の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、圧縮空気システムのための凝縮液排出装置1の断面図を示す。空気を圧縮するときに生じる凝縮液2は、導入管3を経由して凝縮液排出装置1に導入される。凝縮液2は、
図1に示されていない空気圧縮機が吸引する周囲の空気の水分に由来する。
【0040】
凝縮液2は、凝縮液貯蔵容器4に溜まり、定められた液位5に達した後、排出バルブ6を経由して排出される。
図1に示されている実施形態では、排出バルブ6はダイヤフラムバルブとして形成されている。
【0041】
センサ7は凝縮液貯蔵容器4の中に突出している。センサ7は、少なくとも1つの測定コンデンサ8を含み、測定コンデンサ8は、凝縮液貯蔵容器4の中の凝縮液2の液位に依存して連続的に変化する電気容量を有する。容量測定は、凝縮液2が誘電体として流入するときに発生する電気容量変化により凝縮液貯蔵容器4の液位を検出する。測定コンデンサ8は、1つのコンデンサ電極のみを有する。測定コンデンサ8が作動するために必要な第2の電極には、凝縮液貯蔵容器4の壁部の少なくとも一部分が用いられ、凝縮液貯蔵容器4は、
図2または
図3の回路に示されるように回路内に接続されている。
【0042】
例えば圧縮空気配管由来の錆、または空気圧縮機由来のオイルに起因して高度に汚染されている場合でも、本装置は非常に信頼性が高い。センサ7は、誤った測定を防ぐために、凝縮液貯蔵容器4を貫通する形で、非汚染領域9に配置される。誤った測定は、例えば被覆物に起因し、測定技術上の短絡を発生させ得る。
【0043】
上記非汚染領域9は、センサ7の周りを囲んで配置されている釣り鐘形潜水機類似の装置11により規定される。任意の高い液位の場合‐すなわち、予想される最大の液位5を超えても‐、凝縮液2は非汚染領域9、または釣り鐘形潜水機類似の装置11の中に流入しない。該センサの当該部分において、凝縮液2がセンサ7の上部に達しないため、凝縮液中の汚染物による被覆が防止される。被覆物が、導電性物質、例えば錆粒子を含む場合、センサ7の表面、および凝縮液貯蔵容器4の内面に導電性の層が形成される。しかし、非汚染領域9により、導電性被覆を介するガルバーニ電気接続、従って、センサ7と凝縮液貯蔵容器4との短絡が防止される。
【0044】
非汚染領域9は、サーボ制御されている排出バルブ6を管理するためにも必要である。バルブ膜6.1を開閉するために、バルブ6.1の上方に補助圧力を発生または消滅させるために磁気バルブ10が用いられている。凝縮液排出装置1の上述した非汚染領域9による管理は圧縮空気にて行われる。
【0045】
図2は、例えば、
図1による凝縮液排出装置1の液位を評価するために用いることができる監視回路15を示す。測定コンデンサ8は、切り替えスイッチS5と共に、SCエレメント20を構成して回路内に接続されている。切り替えスイッチS5は、マイクロコントローラ12により作動される。切り替えスイッチS5が測定コンデンサ8を、ポテンシオメータP1の後ろに配置されている入力電圧に接続すると、測定コンデンサ8には、電荷Q=C・Uが充電される。他方のスイッチング位置の場合、測定コンデンサ8は、同じ電荷を再び放電する。このようにして生じる電流は、電気容量とスイッチング周波数に依存する:I=U・C・f。ここで、Iは電流、Uは入力電圧、Cは測定コンデンサの電気容量、fはスイッチング周波数である。Rを、SCエレメントの等価抵抗とすると、I=U・Rであるため、R=1/(C・f)の関係が成立する。
【0046】
SCエレメントの後ろに接続されている抵抗R5により低下する電圧は、コンデンサC5により積分され、マイクロコントローラ12のAD変換器入力部21により読み出される。読み出された電圧により、監視回路15の第1の動作基点における、低オームP1の場合の測定コンデンサ8の電気容量が推定され得る。続くステップにおいて、P1が高オームに切り換えられ、これにより、監視回路15の動作基点は有意に移動される。P1の定義された切り換え、および、第1の動作基点における名目電気容量と、移動された動作基点の場合に測定された電気容量との算出された差により、Q値または誘電体の誘電率が評価される。このような差は、好ましくは、マイクロコントローラの特性曲線に保存される。上記マイクロコントローラの役割は、特に、上記特性曲線において該当する一致を見出し、好ましくは、測定された液位の適切な適合を行うことである。
【0047】
図3は、
図1による凝縮液排出装置1の液位監視のための監視回路15のさらなる実施形態を示す。該監視回路15により、外部の物理的影響、ここでは特に、凝縮液貯蔵容器4の液位の上昇により変化する測定コンデンサ8の電気容量を算出することができる。測定コンデンサ8は、凝縮液2を圧縮空気装置から排出するための、電気的に制御される排出バルブ6において用いられる。 監視回路15の基本原理は、測定コンデンサ8の電気容量値およびQ値が得られるように、変化する電気容量のインピーダンスを測定することである。
【0048】
図3には、マイクロコントローラ12の一般的な構造が示されている。マイクロコントローラ12には、高精度AD変換器13およびタイマ14が備えられている。タイマ14は、互いに逆位相であり、且つ、時間的に同じ長さの、2つのパルスが、重ならないように調節できるよう制御され得る。該パルスにより、スイッチング部材S
1およびS
2が作動され得る。
【0049】
監視回路15は、その1つの電極8.1が凝縮液貯蔵容器4の壁部の少なくとも一部分により形成されている測定コンデンサ8と、スイッチS1およびS2とを備えている。測定コンデンサ8と、スイッチS1およびS2とは1つのSCエレメントを構成する。さらに、オーム抵抗器R1およびR2が、スイッチング部材S1およびS2と直列に配置されている
。抵抗器R1およびR3は、スイッチング部材S3およびS4により分路され得る。監視回路15は、さらに、積分器として回路内に接続されている1つのオペアンプ16を含む。
【0050】
本方法の基本は、‐SCフィルタとも称されている‐スイッチトキャパシタフィルタの作動の仕方を参照することができる。監視回路は、スイッチS3およびS4が閉じている間、仮想接地点を有する反転積分器となることが分かる。S3およびS4が継続的に閉じており、且つ、いつもS1またはS2が閉じている状態で監視回路が運転されている場合には、上記オペアンプの出力部において‐オペアンプの非反転入力部における仮想接地と比較して‐測定すべき電気容量と積分容量との比に比例する電圧が生じる。このようにして、測定コンデンサ8の未知の電気容量の絶対値を決定することができる。
【0051】
測定コンデンサ8のQ値を決定する場合、S3およびS4が継続的に開かれる。これにより、回路のQ値は、測定コンデンサ8のQ値部分が、回路のQ値に相当するように変更される。スイッチS3およびS4が閉じている運転と比較した、出力電圧変化により、測定コンデンサ8のQ値を決定することができる。
【0052】
コンデンサ電極の間にある誘電体がオイルである測定コンデンサ8は、コンデンサ電極の間の空間が水で満たされている場合に比べて、Q値がかなり低い。その原因は、分子の異なる運動性であり、その結果、分子が、かけた電場に応じて配向するときに、配置の損失の大きさが異なる。
【0053】
マイクロコントローラ12は、測定コンデンサ8の電気容量に加えてQ値を評価し、凝縮液貯蔵容器4の中にあるオイルの割合、または、誘電体の誘電率を推定することができる。この値により、充填物の種類に依存しない、凝縮液貯蔵容器4の充填度を示す離散値を得ることができる。