特許第5844943号(P5844943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5844943
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】脱硝触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/00 20060101AFI20151224BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20151224BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   B01J38/00 A
   B01D53/96 500
   B01J35/04 301F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-507820(P2015-507820)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2013059382
(87)【国際公開番号】WO2014155628
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年3月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515068100
【氏名又は名称】日高産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉河 敏和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
(72)【発明者】
【氏名】島田 裕
(72)【発明者】
【氏名】登 操生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】三宅 文博
(72)【発明者】
【氏名】森實 有一朗
(72)【発明者】
【氏名】香川 広行
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−116523(JP,A)
【文献】 特開昭62−241555(JP,A)
【文献】 特開2000−325801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硝触媒からなる被研削部材の一端部に、当該被研削部材の断面積より大きな断面積の拡開部を具備する上流固定部材を連結する一方、前記被研削部材の他端部に、当該被研削部材との連結側端部から所定寸法だけ一定断面積の流路を具備する下流固定部材を連結し、
前記上流固定部材の上流側には、研削材と気体とを混合する混合部を前記拡開部より小さな断面積の流路を有する上流側連結部材で連結すると共に前記拡開部の内方の前記被研削部材側に所定目開きのスクリーン部材を配置し、一方、前記下流固定部材の下流側には前記一定断面積より小さな断面積の下流側連結部材が連結され、当該下流側連結部材の下流側には、前記被研削部材の貫通孔を通過した研削材と当該研削材により研削された被研削物とを分離する分級部と、該分級部を介して前記混合部の気体を吸引する集塵部とを連結し、
前記集塵部による吸引により、前記混合部からの前記気体に混合された研削材を前記上流固定部材に送り、前記拡開部で流速を低下させて前記気体と研削材との混合物を一時的に滞留させた後、当該混合物を前記脱硝触媒の貫通孔及び前記下流固定部材を通過させて当該貫通孔の内壁を研削し、その後、前記分級部を介して前記集塵部で集塵する
ことを特徴とする脱硝触媒の再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の脱硝触媒の再生方法において、前記下流固定部材の前記分級部側には流路の中央部の流れを規制する規制部材を配置したことを特徴とする脱硝触媒の再生方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱硝触媒の再生方法において、前記被研削部材は、脱硝触媒の外周にダミーセルを配置したものであることを特徴とする脱硝触媒の再生方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の脱硝触媒の再生方法において、前記被研削部材を立設状態で保持して当該被研削部材の下端部を前記上流固定部材で固定すると共に、上端部を前記下流固定部材で固定することを特徴とする脱硝触媒の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所などの排煙脱硝装置で使用される脱硝触媒の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油、石炭、ガスなどを燃料とした火力発電所のボイラ及び各種大型ボイラ、その他の廃棄物焼却装置などには排煙脱硝装置が設けられており、排煙脱硝装置には、複数層の脱硝触媒が内蔵されている。
【0003】
脱硝触媒としては、一般的には、担体としてTiO等、活性成分としてV等を用い、助触媒成分としてタングステンやモリブデンの酸化物が添加されたものであり、VO−WO−TiOやVO−MoO−TiOのような複合酸化物の形態のものが使用されている。
【0004】
また、触媒形状としては、一般的には、ハニカムタイプや板状タイプが使用されている。ハニカムタイプには、基材でハニカム形状を製造した後、触媒成分をコーティングしたコート形、基材に触媒成分を混練して成形した混練形、ハニカム形状の基材に触媒成分を含浸させた含浸形などがある。板状のものとは、芯金又はセラミックスに触媒成分をコーティングしたものである。
【0005】
何れにしても、このような脱硝触媒の使用を続けていくと、触媒表面及び内部に触媒性能を劣化させる物質(以下、劣化物質という)が付着又は溶解することにより、触媒性能が低下していくという問題がある。
【0006】
そこで、従来より、脱硝触媒の再生方法が種々検討されている。
【0007】
例えば、摩耗剤により排ガス通路内面を研摩する方法(特許文献1参照)、劣化した脱硝触媒の表面部分を削り落とし新たな触媒活性面を出現させる方法(特許文献2参照)、微粒体を同伴した気体を貫通孔に通過させて異物を除去する方法(特許文献3参照)など、物理的に劣化部位や異物を除去して活性面を出現させる方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−119343号公報
【特許文献2】特開平4−197451号公報
【特許文献3】特開平7−116523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、物理的に研削等する方法は、作業が煩雑であったり、再生作業により脱硝触媒自体が割れたり破壊されたりするという問題がある。また、流路の流れ方向に亘って均一に研削できないという問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、脱硝触媒を破壊することなく、内壁を均一に研削して再生する脱硝触媒の再生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、脱硝触媒からなる被研削部材の一端部に、当該被研削部材の断面積より大きな断面積の拡開部を具備する上流固定部材を連結する一方、前記被研削部材の他端部に、当該被研削部材との連結側端部から所定寸法だけ一定断面積の流路を具備する下流固定部材を連結し、前記上流固定部材の上流側には、研削材と気体とを混合する混合部を前記拡開部より小さな断面積の流路を有する連結部材で連結すると共に前記拡開部の内方の前記被研削部材側に所定目開きのスクリーン部材を配置し、一方、前記下流固定部材の前記連結部材の下流側には、前記被研削部材の貫通孔を通過した研削材と当該研削材により研削された被研削物とを分離する分級部と、該分級部を介して前記混合部の気体を吸引する集塵部とを連結し、前記集塵部による吸引により、前記混合部からの前記気体に混合された研削材を前記上流固定部材に送り、前記拡開部で流速を低下させて前記気体と研削材との混合物を一時的に滞留させた後、当該混合物を前記脱硝触媒の貫通孔及び前記下流固定部材を通過させて当該貫通路の内壁を研削し、その後、前記分級部を介して前記集塵部で集塵することを特徴とする脱硝触媒の再生方法にある。
【0012】
かかる第1の態様では、研削材と気体との混合物は、脱硝触媒の上流側の上流固定部材の拡開部内で流速が低下して一時的に滞留した状態とされ、且つスクリーン部材を通過する際に減速されると共に分散され、下流側の一定断面積の流路を所定寸法だけ有する下流固定部材を介しての吸引力により脱硝触媒の貫通孔内に送られるので、脱硝触媒の端面を破壊することなく且つ中心部から周縁部に配置される全ての貫通孔に均一に且つ同一の流速で安定して研削材を送通することができ、貫通孔内の内壁の均一な研削が可能となる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の脱硝触媒の再生方法において、前記下流固定部材の前記分級部側には流路の中央部の流れを規制する規制部材を配置したことを特徴とする脱硝触媒の再生方法にある。
【0014】
かかる第2の態様では、下流固定部材内の径方向中央部の流速が規制部材により低減されるので、脱硝触媒の中心部から周縁部に配置される全ての貫通孔にさらに均一に且つ同一の流速で安定して研削材を送通することができ、貫通孔内の内壁のさらに均一な研削が可能となる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の脱硝触媒の再生方法において、前記被研削部材は、脱硝触媒の外周にダミーセルを配置したものであることを特徴とする脱硝触媒の再生方法にある。
【0016】
かかる第3の態様では、流速が低減する傾向が排除できない流れの周縁部にダミーセルを配置してより均一な流れである中央部のみで研削を行うので、より均一な研削が可能となる。
【0017】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの1つの態様に記載の脱硝触媒の再生方法において、前記被研削部材を立設状態で保持して当該被研削部材の下端部を前記上流固定部材で固定すると共に、上端部を前記下流固定部材で固定することを特徴とする脱硝触媒の再生方法にある。
【0018】
かかる第4の態様では、脱硝触媒を立設状態で研削するので、全ての貫通孔に対してより均一な研削が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の脱硝触媒の再生方法によれば、脱硝触媒の端面を破壊することなく且つ中心部から周縁部に配置される全ての貫通孔に均一に且つ同一の流速で安定して研削材を送通することができ、貫通孔内の内壁の均一な研削が可能となり、均一な再生ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1に係る脱硝触媒の再生方法を実施する研削装置の概略構成を示す図である。
図2図1の要部断面図である。
図3】本発明の実施形態2に係る脱硝触媒の再生方法を実施する研削装置の要部断面図を示す図である。
図4図3の被研削部材の横断面図である。
図5】実施例1の試験結果を示すグラフである。
図6】実施例2の試験結果を示すグラフである。
図7】比較例1の試験結果を示すグラフである。
図8】比較例2の試験結果を示すグラフである。
図9】実施例3の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を一実施形態に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
本実施形態で用いる研削装置の概略構成を図1に、その要部断面を図2にそれぞれ示す。
【0023】
これらの図面に示すように、被研削部材である、排煙脱硝装置などで使用された脱硝触媒1は、上流固定部材10と下流固定部材20との間に立設した状態で固定され、上流固定部材10には、上流側連結部材30を介して混合部40が接続され、混合部40には、コンプレッサー50が接続されている。一方、下流固定部材20には、下流側連結部材60を介して分級部70が接続され、分級部70には集塵部80が接続されている。
【0024】
上流固定部材10は、脱硝触媒1の下端部を固定する固定部11を具備する。固定部11は、脱硝触媒1と同等な断面積を有しており、この固定部11の上流側に連続して断面積が大きく広がった拡開部12を具備し、拡開部12の上流側は断面積が徐々に小さくなるテーパー部13を有し、さらに、テーパー部13に連続してテーパー部13の小さい側の断面積と同等な断面積を有する連結部14を具備する。そして、連結部14には、上流側連結部材30の一端が連結され、上流側連結部材30の他端部には混合部40の排出口が接続されている。なお、上流固定部材10の各流路の断面形状は矩形でも円形でもよく、部位によって異なっていてもよい。
【0025】
また、上流固定部材10の内方には、所定目開きを有するスクリーン部材15が配置されている。スクリーン部材15は、所定の目開きを有するメッシュからなり、拡開部12の内方の脱硝触媒1側に配置され、上流側連結部材30から拡開部12内への流れを遮るように配置されている。
【0026】
さらに、拡開部12の内方で固定部11側には、拡開部12から固定部11への流れを整流する円錐状又は四角錘状のテーパー部を形成する整流板16が設けられている。
【0027】
下流固定部材20は、脱硝触媒1の上端部を固定する固定部21を具備し、固定部21から所定寸法だけ一定断面積の流路を形成する直管部22を具備し、その後、断面積を徐々に小さくしたテーパー部23と、それに連続する連結部24を具備し、連結部24には下流側連結部材60が接続されている。
【0028】
また、下流固定部材20の分級部70側、具体的には、下流固定部材20の直管部22内には流路の中央部の流れを規制する規制部材25が設けられている。規制部材25の配置位置は、流路の流れが最も速い中央部であれば流れ方向の位置に限定されず、直管部22のテーパー部23側でも脱硝触媒1側でもよく、テーパー部23と直管部22との境界でもよい。規制部材25の形状は特に限定されないが、流れの中央部を規制するものであるから、脱硝触媒1の断面形状と相似する形状が好ましく、また、流れを完全に遮断するものでも、流れの大部分を遮断するが一部通過させるメッシュ部材のようなものでもよい。
【0029】
混合部40は、中央部に略漏斗形状の空間41を有し、上方に外部の空気を吸入する外気吸入口42を有する。また略漏斗形状の空間の下部は密閉した状態で上流側連結部材30と連結されている。また、混合部40の内部には、サンドブラストガン44が内部に複数台、例えば、4〜10台、本実施形態では6台備えられており、サンドブラストガン44の噴射口は略漏斗形状の空間41の下部の斜面方向にそれぞれ向けられている。このサンドブラストガン44には、エアレギュレータ46を介してコンプレッサー50が接続されると共に、研削材ホース48が接続されている。そして、サンドブラストガン44を作動させると、コンプレッサー50から供給された圧縮空気がエアレギュレータ46で所望の圧力に調整され、サンドブラストガン44に供給され、これにより、エジェクター効果が生じ、分級部70から研削材が供給される。そして、サンドブラストガン44の内部で研削材と圧縮空気とが均一に混合された状態で混合部40の内部に噴射され、噴射された研削材を含む圧縮空気は、外気吸入口42から吸入された外気と混合されて上流側連結部材30を介して上流固定部材10に搬送されることになる。
【0030】
分級部70は、公知のサイクロン分級器であり、混合部40よりも高い位置に配置されている。この分級部70は、下流側連結部材60を介して下流固定部材20と接続され、搬送パイプ72を介して集塵部80と、研削材ホース48を介してサンドブラストガン44と、それぞれ密閉した状態で連結されている。
【0031】
下流側連結部材60を介して分級部70に搬送された研削材及び研削された粉塵を含む空気は、分級部70によって、研削材と、粉塵を含む空気とに分離される。分離された研削材は、自重により分級部70の下部に落下して堆積し、研削材ホース48を介して再度サンドブラストガン44に供給されることになる。このとき、研削材ホース48の分級部70側は研削材ホース48のサンドブラストガン44側よりも高い位置にあるため、サンドブラストガン44に研削材を供給する際、コンプレッサー50からの圧縮空気の圧力が小さくてもエジェクター効果を十分に利用することができる。なお、この研削材ホース48は、可能な限り短く、弛みがない状態で取り付けることが好ましい。こうすることにより、エジェクター効果をより有効に活用することができる。一方、粉塵を含む空気は搬送パイプ72を介して集塵部80に搬送される。
【0032】
集塵部80は、公知の集塵装置である。この集塵部80は、搬送パイプ72を介して分級部70と密閉した状態で連結されている。この集塵部80の内部にはカートリッジフィルタ82と回転数の変更が可能なブロアモータ83が設けられており、空気中に含まれる粉塵を捕集することができる。また、カートリッジフィルタ82に捕集された粉塵は定期的にパルスジェットによって払い落とされ、下部に設けられている貯蔵部84に貯蔵されるため、所望のタイミングで粉塵を回収することができる。一方、カートリッジフィルタ82を通過した清浄な空気は、排気ダクトより大気中に排出される。
【0033】
以上説明した研削装置を用いて脱硝触媒1の再生を行う方法について説明する。
【0034】
脱硝触媒1は、ハニカム型触媒であり、ハニカム構造を有する円柱形状、略楕円柱形状、多角形状又は四角柱形状であり、長手方向に貫通する複数の貫通孔が格子状に配置されている。このような脱硝触媒1は、使用済みのものであり、貫通孔内壁には付着物が付着している。また、場合によっては(石炭)灰などにより閉塞している場合があるが、このような場合には、予め水洗等で閉塞部を開口した後、研削装置にセットするのが好ましい。
【0035】
このような脱硝触媒1をセットして、エアレギュレータ46の圧力を所定の圧力に調節してサンドブラストガン44を動作させ、また、集塵部80のブロアモータ83を動作させると、サンドブラストガン44から空気と共に研削材が噴射される。このとき、サンドブラストガン44の噴射口から噴射された研削材と空気との混合物は、上流側連結部材30を通過して上流固定部材10に到達する。
【0036】
ここで、上流固定部材10に入ってテーパー部13から拡開部12に到達した混合物は、流速が低下し、拡開部12内にごく短時間であるが一時的に滞留し、混合物の流れ方向の再配列が起こる。さらに、混合物は、スクリーン部材15に衝突して多方向に散乱しながら当該スクリーン部材15を通過し、拡開部12のスクリーン部材15の下流側で混合物の流れがさらに再配列される。
【0037】
一方、脱硝触媒1の上流側と下流側とでは、集塵部80による吸引により差圧が生じているので、拡開部12内に一時的に滞留した混合物が、集塵部80からの吸引力により吸引されて脱硝触媒1の貫通孔内に送られることになる。これにより、脱硝触媒1の上流側端面の破損が極力抑えられる。また、脱硝触媒1の断面の中央部から周縁部にかけて配置される全ての貫通孔に均一な量で且つ均一流速で研削材が導入されるので、全ての貫通孔の内壁を均一に研削することができる。
【0038】
さらに詳細に説明すると、脱硝触媒1の端面の破損を防止すると共に均一な研削を行うためには、まず、上流固定部材10の拡開部12内での混合物の流速をできるだけ小さくする必要があるが、上述したように、拡開部12を設けると共にスクリーン部材15を配置することにより、流れが再配列され、流速が低下し且つ均一なものとなる。
【0039】
ここで、上流固定部材10の拡開部12の断面積は、脱硝触媒1の断面積Sの3〜10倍程度が好ましく、上流固定部材10の容積は(√((3〜10)×S))程度にすることが好ましい。
【0040】
ここで、(√((3〜10)×S))は、以下の式を表す。
【0041】
【数1】
【0042】
また、スクリーン部材15の目開きは、混合物の流れを衝突により拡散して再配列する作用を有するものとすればよいが、例えば、#8〜♯40程度から選択すればよい。
【0043】
このように上流固定部材10の拡開部12内で再配列された混合物は、下流固定部材20との間、すなわち、脱硝触媒1の前後の差圧によって脱硝触媒1の貫通孔内に吸引されるのが好ましく、上流固定部材10内の圧力に対して、下流固定部材20内の圧力が、4〜8kPa低くなるように設定されるのが好ましい。
【0044】
また、脱硝触媒1を断面方向においてできるだけ均一に研削するためには、下流固定部材20の直管部22の長さをある程度確保するのが好ましい。また、直管部22のように流れ方向の断面積に変化がなくても、断面方向中央部の流れが速くなり、且つテーパー部23を介して径が断面積が小さな連結部24に連続するので、テーパー部23近傍では中央部の流れがさらに大きくなる可能性がある。これは脱硝触媒1の中央部が研削され易くなる結果となるので、本実施形態では、直管部22の内方の径方向中央部に四角形板状の規制部材25を設けている。これにより、中央部での流れが規制され、脱硝触媒1内での径方向の流れの速さが均一化され、脱硝触媒1の研削が均一化される。規制部材25は、脱硝触媒1の断面積の1/4〜1/2の面積、好ましくは、1/3程度の面積を有する大きさとするのが好ましい。なお、規制部材25の平面視の形状は脱硝触媒1の断面形状と相似する形状が好ましいが、これに限定されず、例えば、円盤状などとしてもよい。
【0045】
なお、研削材は、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、ジルコンなどセラミック系の研削材を用いるのが好ましい。脱硝触媒1の端面の破壊を極力防止するためには、研削材は、#16〜#80メッシュの粒度のものを用いるのが好ましい。
【0046】
(実施形態2)
本実施形態で用いる研削装置の要部断面を図3に、その被研削部材の横断面を図4にそれぞれ示す。なお、本実施形態は、被研削部材を変更した以外の研削装置の概要は上述した実施形態と同様であり、同一作用を示す部材には、同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0047】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、被研削部材として、脱硝触媒1の周囲にダミーセル2を配置したものを用いている。ダミーセル2は、脱硝触媒1と同一又は類似の貫通孔を有するものであり、脱硝触媒1の径方向外側に配置されている。ダミーセル2の材質は耐摩耗性を有していれば特に限定されないが、例えば、脱硝触媒1と同様なセラミックスでも、金属などの材質でもよい。
【0048】
上流固定部材10Aと下流固定部材20Aは、ダミーセル2を含めた被研削部材に合わせた大寸法の連結部11A及び24Aを具備し、規制部材25を設けない以外は、実施形態1と同様なものである。
【0049】
本実施形態では、上流固定部材10Aから被研削部材を通過して下流固定部材20Aへの研削材と空気の混合物の流れのうち、流れの速度がほぼ均一な中央部のみに脱硝触媒1が配置されることになる。一方、流れの速度がどうしても低下しがちな周縁部の混合物はダミーセル2を通過することになる。これにより、脱硝触媒1の断面方向に亘った研削状態がさらに均一になるという効果を奏する。
【0050】
ダミーセル2の面積は、大きいほど研削状態が均一化するが、ダミーセル2の面積分だけ、流量を大きくする必要があり、経済的な効率は低くなる。
【0051】
よって、脱硝触媒1の断面積の30%以下、好ましくは、5〜15%程度の面積となるように設計すれば十分な効果が発揮される。
【0052】
(試験例1)
断面外径が150mm×150mmで、長さが860mmであり、目開き6mmで、6mm×6mmの断面矩形の貫通孔を7mmピッチで400有するハニカム型の脱硝触媒1を上述した実施形態1の研削装置に配置し、研削材として#46のアルミナを用い、目標研削量100μmで研削した。この時の脱硝触媒1の前後の差圧は5.4kPaであった。
【0053】
加工後の脱硝触媒について、予め決められた所定の位置の貫通孔(83箇所)について、長さ方向の複数位置について研削率を測定した結果を、各貫通孔毎の折れ線グラフとして図5に示す(実施例1)。この結果より、折れ線グラフ間のバラツキは断面方向の研削バラツキに相当し、各折れ線グラフの長さ方向のおけるバラツキは、長さ方向の研削バラツキに相当する。なお、加工は、脱硝触媒1の出口側から研削材を導入して加工し、グラフの触媒入口側からの距離は触媒入口側(加工の出口側)からの距離を示してある。
【0054】
研削率は、以下の定義とし、目標研削量100μmは研削率3.34%に相当する。
【0055】
研削率=[(研削後の目開き−研削前の目開き)÷研削前の目開き]×100
【0056】
実施例1の研削前後の全体重量から算出した加工減率は12.23%であり、これから求めた実質研削量は102μmであった。
【0057】
また、同様にして、規制部材25のみを外して同様に試験した結果(実施例2)を図6に示す。実施例2の加工減率は100μmであった。
【0058】
比較のため、スクリーン部材15及び規制部材25の両方を外して同様に試験した結果(比較例1)、スクリーン部材15のみを外して同様に試験した結果(比較例2)をそれぞれ図7図8に示す。
【0059】
これらの結果、スクリーン部材15及び規制部材25を設けた実施形態1、規制部材25を外した実施例2と比較して、スクリーン部材15及び規制部材25の両方を外した比較例1、スクリーン部材15のみを外した比較例2では、径方向に亘ったバラツキが大きくなることが確認された。
【0060】
スクリーン部材15及び規制部材25は、径方向のバラツキを軽減する効果が大きいことがわかった。
【0061】
(試験例2)
試験例1と同様な脱硝触媒1の径方向外側に、断面積で10%となるダミーセル2を均一に配置したものを被研削部材とし、規制部材25を外した以外は、実施形態2と同様な研削装置で、試験例1と同様な試験を行った。
【0062】
加工後の脱硝触媒について、予め決められた所定の位置の貫通孔(83箇所)について、長さ方向の複数位置について研削率を測定した結果を、各貫通孔毎の折れ線グラフとして図9に示す(実施例3)。
【0063】
この結果を実施例2(図6)と比較することにより、ダミーセル2を設けることにより、径方向の研削バラツキが著しく低下することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
排煙脱硝装置の脱硝触媒の他、ボイラ設備などのセラミック製のハニカム構造の触媒に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 脱硝触媒
10 上流固定部材
20 下流固定部材
30 上流側連結部材
40 混合部
50 コンプレッサー
60 下流側連結部材
70 分級部
80 集塵部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9