特許第5845101号(P5845101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5845101
(24)【登録日】2015年11月27日
(45)【発行日】2016年1月20日
(54)【発明の名称】浮屋根式構築物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20151224BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20151224BHJP
【FI】
   E04H9/14 Z
   E04H1/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-18045(P2012-18045)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-155549(P2013-155549A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英一
(72)【発明者】
【氏名】武田 文義
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−112089(JP,A)
【文献】 実開昭54−159708(JP,U)
【文献】 実開昭57−008785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E04H 1/12
B63C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面等固定側に立設される複数本の柱と、これら柱に架設され、平面視で枠形状となるよう配置される複数本の梁と、これら梁に支持され昇降可能とされる屋根とを備えた浮屋根式構築物において、
上記各柱に対し上記各梁が昇降可能となるようにし、上記屋根が、その平面視での中央部側を構成し何らかの物体を載置可能とさせる載置台と、この載置台を上記各梁に支持させる膜体とを備え、上記固定側上に溢れた水から浮力を与えられて上記各梁を上昇させる浮体を設け、この浮体により上昇させられる上記各梁を上記載置台よりも高く位置付け可能にしたことを特徴とする浮屋根式構築物。
【請求項2】
上記浮体を上記柱に対し上下に摺動可能となるよう外嵌させたことを特徴とする請求項1に記載の浮屋根式構築物。
【請求項3】
上記梁にクッション材を外装させたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の浮屋根式構築物。
【請求項4】
上記梁よりも上記載置台が高く位置するよう、上記柱の上部側から上記載置台を吊り上げる吊り上げ体を設けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の浮屋根式構築物。
【請求項5】
上記膜体を非通水性にしたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1つに記載の浮屋根式構築物。
【請求項6】
上記膜体を通水性にしたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1つに記載の浮屋根式構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水時に、地面等固定側上に溢れた水から浮力を与えられて上昇し、その上面に人等物体を載置して保護する屋根を備えた新規な浮屋根式構築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降可能な屋根を備えた構築物には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。
【0003】
具体的には、上記公報における構築物は、地面等固定側に立設される複数本の柱と、これら柱に架設され、平面視で枠形状となるよう配置される複数本の梁と、これら梁に支持され昇降可能とされる屋根とを備えている。そして、上記屋根を昇降させることにより、この構築物において、必要な作業空間や所望の作業環境が確保できることとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−250244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、台風や津波等による洪水時には、地面等固定側上に溢れた水により人や家財などの物体が破損したり流失したりするおそれがある。そこで、これを防止するため、この物体を上記構築物の屋根上に載置すると共に、この屋根を上昇させて上記物体を保護することが考えられる。
【0006】
しかし、上記した従来の技術の構築物における屋根の上昇は、上記洪水時の水面の高さとは何ら関連なく実施されるものである。このため、仮に、上記屋根上に物体を載置したとしても、洪水時に増水した水面が上記物体に追いついて、この物体の保護が不十分になるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、通常時の構築物は、何らかの目的のために利用されるものであり、その一方、洪水時には、地面等固定側上に溢れた水から人や家財などの物体を保護するためのものとして利用できるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、地面等固定側2に立設される複数本の柱3と、これら柱3に架設され、平面視(図2)で枠形状となるよう配置される複数本の梁4と、これら梁4に支持され昇降可能とされる屋根5とを備えた浮屋根式構築物において、
上記各柱3に対し上記各梁4が昇降可能となるようにし、上記屋根5が、その平面視(図2)での中央部側を構成し何らかの物体12を載置可能とさせる載置台13と、この載置台13を上記各梁4に支持させる膜体14とを備え、上記固定側2上に溢れた水Wから浮力を与えられて上記各梁4を上昇させる浮体15を設け、この浮体15により上昇させられる上記各梁4を上記載置台13よりも高く位置付け可能にしたことを特徴とする浮屋根式構築物である。
【0009】
請求項2の発明は、上記浮体15を上記柱3に対し上下に摺動可能となるよう外嵌させたことを特徴とする請求項1に記載の浮屋根式構築物である。
【0010】
請求項3の発明は、上記梁4にクッション材17を外装させたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の浮屋根式構築物である。
【0011】
請求項4の発明は、上記梁4よりも上記載置台13が高く位置するよう、上記柱3の上部側から上記載置台13を吊り上げる吊り上げ体30を設けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の浮屋根式構築物である。
【0012】
請求項5の発明は、上記膜体14を非通水性にしたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1つに記載の浮屋根式構築物である。
【0013】
請求項6の発明は、上記膜体14を通水性にしたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1つに記載の浮屋根式構築物である。
【0014】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による効果は、次の如くである。
【0016】
請求項1の発明は、地面等固定側に立設される複数本の柱と、これら柱に架設され、平面視で枠形状となるよう配置される複数本の梁と、これら梁に支持され昇降可能とされる屋根とを備えた浮屋根式構築物において、
上記各柱に対し上記各梁が昇降可能となるようにし、上記屋根が、その平面視での中央部側を構成し何らかの物体を載置可能とさせる載置台と、この載置台を上記各梁に支持させる膜体とを備え、上記固定側上に溢れた水から浮力を与えられて上記各梁を上昇させる浮体を設け、この浮体により上昇させられる上記各梁を上記載置台よりも高く位置付け可能にしている。
【0017】
このため、上記構築物は、通常時は、東屋のような休憩所や日除けなど、何らかの目的を持ったものとして利用できる。また、上記膜体は、これが仮にネット状であるとしても、特に日除けとして有効に機能させることができる。一方、洪水時には、上記浮体の浮力により梁が上昇させられ、これに連動して上記載置台上の空間が上記膜体により取り囲まれることから、上記載置台上の人や家財などの物体は上記膜体で取り囲まれ、かつ、上記梁が手摺として働く。よって、上記構築物は、洪水時の被災物体を保護することにも利用できる。
【0018】
請求項2の発明は、上記浮体を上記柱に対し上下に摺動可能となるよう外嵌させている。
【0019】
このため、洪水時に、水に流されてきた流木など浮遊物が上記柱に直接衝突することは上記浮体により防止されて、この柱の損傷が防止される。よって、この柱に対しての上記浮体の上方への円滑な摺動が確保されることから、この浮体の浮力による梁の上昇が円滑になされて、上記物体の保護が、より確実に達成される。
【0020】
また、特に、上記浮体が緩衝機能を有する場合には、上記柱への浮遊物の衝突時の衝撃力は上記浮体により緩和され、よって、上記柱の損傷が、より確実に防止される。
【0021】
請求項3の発明は、上記梁にクッション材を外装させている。
【0022】
このため、洪水時には、上記浮体の浮力により梁と共にクッション材も上昇させられる。よって、上記載置台上の物体は上記クッション材で囲まれることから、このクッション材の緩衝機能により、上記載置台上の物体は、より確実に保護される。
【0023】
また、水に流されてきた流木など浮遊物が上記クッション材に衝突するとき、その衝撃力が緩和されて、上記梁の損傷が防止される。よって、上記載置台上の物体は更に確実に防止される。
【0024】
請求項4の発明は、上記梁よりも上記載置台が高く位置するよう、上記柱の上部側から上記載置台を吊り上げる吊り上げ体を設けている。
【0025】
このため、上記載置台を吊り上げた分、通常時の構築物の内部空間を広くでき、また、上記屋根は側面視で台形状となることから、この屋根上の水はけをよくすることができる。よって、上記構築物の内部空間が、より快適に利用できる。
【0026】
請求項5の発明は、上記膜体を非通水性にしている。
【0027】
このため、洪水時に、上記浮体の浮力により梁が上昇させられるとき、上記膜体で囲まれた上記載置台上側への水の浸入は上記膜体により防止される。よって、上記載置台上の物体の保護は更に確実に達成される。
【0028】
請求項6の発明は、上記膜体を通水性にしている。
【0029】
このため、洪水時に、上記膜体に向かう水はこの膜体を透過することから、上記膜体に与えられる水からの外力は小さく抑制される。よって、上記構築物に対する水からの外力が小さく抑制されて、この構築物の強度上、有益である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1を示し、側面図である。
図2】実施例1を示し、平面図である。
図3】実施例1を示し、斜視図である。
図4】実施例2を示し、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の浮屋根式構築物に関し、通常時の構築物は、何らかの目的のために利用されるものであり、その一方、洪水時には、地面等固定側上に溢れた水から人や家財などの物体を保護するためのものとして利用できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0032】
即ち、浮屋根式構築物は、地面等固定側に立設される複数本の柱と、これら柱に架設され、平面視で枠形状となるよう配置される複数本の梁と、これら梁に支持され昇降可能とされる屋根とを備えている。上記各柱に対し上記各梁が昇降可能となるようにする。上記屋根が、その平面視での中央部側を構成し何らかの物体を載置可能とさせる載置台と、この載置台を上記各梁に支持させる膜体とを備える。上記固定側上に溢れた水から浮力を与えられて上記各梁を上昇させる浮体とを設ける。この浮体により上昇させられる上記各梁を上記載置台よりも高く位置付け可能にする。
【実施例1】
【0033】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1〜3に従って説明する。
【0034】
図1〜3において、符号1は、浮屋根式構築物であり、通常時は、東屋のような休憩所など、何らかの目的のために利用されるものである。
【0035】
上記構築物1は、固定側2に立設される複数本(4本)の柱3と、これら柱3に架設され、平面視(図2)で矩形枠形状となるよう配置される複数本(4本)の梁4と、これら梁4に支持され昇降可能とされる屋根5とを備えている。
【0036】
上記固定側2は水平に延びる地面であり、その地中に施工されたコンクリート基礎に上記各柱3の下端部がアンカーボルトにより締結され、これら各柱3は、上記固定側2に強固に支持されている。なお、上記固定側2は、建物などの他の構築物であってもよい。
【0037】
上記各柱3は、それぞれ断面円形の金属(軽金属含む)パイプ製であって互いに同形同大とされている。これら各柱3は、平面視(図2)で、仮想矩形体の各角部に位置するよう配置され、それぞれ鉛直方向に平行に延びている。なお、上記各柱3は角パイプ製であってもよく、断面H形状等の型鋼であってもよく、樹脂製であってもよい。
【0038】
上記各梁4は、上記各柱3の上下方向の中途部にがたつきなく外嵌されて上下に摺動可能とされる短尺の摺動パイプ8と、水平方向に延びてその各端部が上記各摺動パイプ8に固着される梁本体9とを有している。これら各摺動パイプ8と各梁本体9とは、それぞれ断面円形の金属パイプ製であって、各摺動パイプ8同士と各梁本体9同士とは、それぞれ互い同形同大とされている。そして、上記各柱3に対し各摺動パイプ8が上下に摺動することにより、上記各柱3に対し上記各梁4が一体的に平行移動するよう昇降可能とされている。
【0039】
なお、上記各摺動パイプ8や梁本体9は角パイプ製であってもよく、各梁本体9は断面H形状等の型鋼であってもよく、樹脂製であってもよい。
【0040】
上記屋根5は、その平面視(図2)での中央部側を構成し人や家財など何らかの物体12を載置可能とさせる矩形板形状の載置台13と、この載置台13を上記各梁4に支持させる膜体14とを備えている。また、上記各柱3の長手方向の中途部に上下に摺動可能に外嵌され、洪水時に上記固定側2上に溢れた水Wから浮力を与えられて上記各梁4を一体的に上昇させる複数(4つ)の浮体15と、上記各柱3に取り付けられ、上記各浮体15が上記各柱3に対し所定位置以上に下方摺動することを阻止するストッパ16と、上記各梁4の梁本体9に外装されるクッション材17とが設けられている。
【0041】
上記の場合、各ストッパ16上に上記各浮体15が載置され、これら各浮体15上に上記各梁4の摺動パイプ8が載置されている。これにより、上記各梁4は所望高さに位置させられている。また、図1中一点鎖線で示すように、上記浮体15により上昇させられる上記梁4およびクッション材17は、上記載置台13よりも高く位置付け可能とされている。
【0042】
上記載置台13は、水Wに浮遊可能な板形状の台本体18と、この台本体18を密閉状に覆うシート状の表皮体19とを備えている。上記台本体18は高密度発泡ポリスチレン製であり、多少の弾性を有して緩衝機能を有している。一方、上記表皮体19は、ケナフ繊維等の天然繊維、ポリエステル(PET)等の合成繊維、もしくは無機繊維等による織物と、この織物の両面のうち、少なくともいずれか一方の面にコーティングされるポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、低発泡ポリエチレン(PE)、もしくはフッ素樹脂等の合成樹脂製表皮材とを備え、非通水性(遮水性)とされている。また、上記載置台13の表皮体19の表面には汚れ防止のための光触媒層が適宜コーティングされる。なお、上記載置台13は、水に浮遊可能なものであればよく、樹脂板やFRP板等からなる台本体18のみで形成してもよい。
【0043】
前記膜体14は、平面視(図2)で矩形枠形状をなし、その材質は上記表皮体19と同様であるが、互いに同じであることが好ましい。
【0044】
前記浮体15は円筒形状をなし、その材質は、前記載置台13の台本体18と同様である。
【0045】
前記クッション材17は、上記載置台13と同様の構造であって、上記梁4の梁本体9に外装されて水Wに浮遊可能な円筒形状のクッション本体22と、このクッション本体22を密閉状に覆うシート状の表皮材23とを備えている。上記クッション本体22の材質は、前記載置台13の台本体18と同様であり、上記表皮材23の材質は、上記載置台13の表皮体19と同様であるが、互いに同じであることが好ましい。
【0046】
前記膜体14の外縁部は上記クッション材17を介して梁4に固着手段26により固着される。具体的には、上記膜体14の外縁部は、上記クッション材17の表皮材23に溶着による固着手段26により固着されている。一方、上記膜体14の内縁部は、上記載置台13の外縁部の表皮体19に溶着による他の固着手段27により固着されている。なお、上記固着手段26,27は、縫合や接着であってもよく、フックなどの係止具で構成してもよい。
【0047】
上記梁4よりも上記載置台13が高く位置するよう、上記各柱3の上部側から上記載置台13を吊り上げる吊り上げ体30が設けられている。この吊り上げ体30は、上記載置台13の各角部を前記各柱3の上端部から吊り上げるものであり、複数本(4本)の可撓性長尺体であるケーブルで構成されている。なお、上記長尺体は、ロープ、ワイヤ、ゴム紐、チェーンなどであってもよい。
【0048】
なお、前記ストッパ16は設けなくてもよいが、この場合、上記各梁4は、上記膜体14、載置台13、および吊り上げ体30を介し上記各柱3の上端部から吊り上げられた状態とされる。また、上記各梁4が所望高さとなるよう、上記クッション材17の長さを十分長くして、その下端部を上記固定側2の上面に当接させれば、上記ストッパ16は設けなくてもよい。また、上記浮体15は上記梁4に取り付けてもよく、この場合、上記各梁4が所望高さから下降することを阻止するよう上記ストッパ16を設けてもよい。
【0049】
上記構成によれば、地面等固定側2に立設される複数本の柱3と、これら柱3に架設され、平面視(図2)で枠形状となるよう配置される複数本の梁4と、これら梁4に支持され昇降可能とされる屋根5とを備えた浮屋根式構築物において、
上記各柱3に対し上記各梁4が昇降可能となるようにし、上記屋根5が、その平面視(図2)での中央部側を構成し何らかの物体12を載置可能とさせる載置台13と、この載置台13を上記各梁4に支持させる膜体14とを備え、上記固定側2上に溢れた水Wから浮力を与えられて上記梁4を上昇させる浮体15を設け、この浮体15により上昇させられる上記梁4を上記載置台13よりも高く位置付け可能にしている。
【0050】
このため、上記構築物1は、通常時は、東屋のような休憩所や日除けなど、何らかの目的を持ったものとして利用できる。また、上記膜体14は、これが仮にネット状であるとしても、特に日除けとして有効に機能させることができる。一方、洪水時には、上記浮体15の浮力により梁4が上昇させられ、これに連動して上記載置台13上の空間が上記膜体14により取り囲まれることから、上記載置台13上の人や家財などの物体12は上記膜体14で取り囲まれ、かつ、上記梁4が手摺として働く。よって、上記構築物1は、洪水時の被災物体12を保護することにも利用できる。
【0051】
また、前記したように、浮体15を柱3に対し上下に摺動可能となるよう外嵌させている。
【0052】
このため、洪水時に、水Wに流されてきた流木など浮遊物が上記柱3に直接衝突することは上記浮体15により防止されて、この柱3の損傷が防止される。よって、この柱3に対しての上記浮体15の上方への円滑な摺動が確保されることから、この浮体15の浮力による梁4の上昇が円滑になされて、上記物体12の保護が、より確実に達成される。
【0053】
また、特に、上記浮体15が緩衝機能を有する場合には、上記柱3への浮遊物の衝突時の衝撃力は上記浮体15により緩和されて、上記柱3の損傷が、より確実に防止される。
【0054】
また、前記したように、梁4にクッション材17を外装させている。
【0055】
このため、洪水時には、上記浮体15の浮力により梁4と共にクッション材17も上昇させられる。よって、上記載置台13上の物体12は上記クッション材17で囲まれることから、このクッション材17の緩衝機能により、上記載置台13上の物体12は、より確実に保護される。
【0056】
また、水Wに流されてきた流木など浮遊物が上記クッション材17に衝突するとき、その衝撃力が緩和されて、上記梁4の損傷が防止される。よって、上記載置台13上の物体12は更に確実に防止される。
【0057】
また、前記したように、梁4よりも載置台13が高く位置するよう、柱3の上部側から上記載置台13を吊り上げる吊り上げ体30を設けている。
【0058】
このため、上記載置台13を吊り上げた分、通常時の構築物1の内部空間を広くでき、また、上記屋根5は側面視(図1)で台形状となることから、この屋根5上の水はけをよくすることができる。よって、上記構築物1の内部空間が、より快適に利用できる。
【0059】
また、前記したように、膜体14を非通水性にしている。
【0060】
このため、洪水時に、上記浮体15の浮力により梁4が上昇させられるとき、上記膜体14で囲まれた上記載置台13上側への水Wの浸入は上記膜体14により防止される。よって、上記載置台13上の物体12の保護は更に確実に達成される。
【0061】
なお、上記膜体14をネット状の膜面や、ジオシンセティック(もしくはジオグリッド)といわれるような網体として、通水性を有するようにしてもよい。この場合、上記膜体14は、その芯材となって強度の大きい織物と、この織物の外面にコーティングされる樹脂製表皮材とを備える。上記織物の材質は、前記載置台13の表皮体19の織物と同様であり、上記表皮材の材質は、上記表皮体19の表皮材と同様である。また、上記網体として、金属製のケーブルをネット状にしたケーブルネットを使用することもできる。
【0062】
上記構成によれば、洪水時に、上記膜体14に向かう水Wはこの膜体14を透過することから、上記膜体14に与えられる水Wからの外力は小さく抑制される。よって、上記構築物1に対する水Wからの外力が小さく抑制されて、この構築物1の強度上、有益である。
【0063】
以下の図2は、実施例2を示している。この実施例2は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0064】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図4に従って説明する。
【0065】
図4において、前記吊り上げ体30は設けられていない。このため、上記梁4に対し上記膜体14を介し上記載置台13が吊り下げられている。
【0066】
上記の場合、膜体14で囲まれた上記載置台13上の空間に雨水が溜まらないよう、上記載置台13と膜体14とのうち、少なくともいずれか一方を通水性にするか、少なくともいずれか一方に排水孔を形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1 構築物
2 固定側
3 柱
4 梁
5 屋根
8 摺動パイプ
9 梁本体
12 物体
13 載置台
14 膜体
15 浮体
16 ストッパ
17 クッション材
30 吊り上げ体
W 水
図1
図2
図3
図4